Euphorbia resiniferaはサボテンに似た多肉質なユーフォルビアで、多肉質なユーフォルビアでは珍しくアフリカ北西部に分布します。日本では「白角キリン」という名前もあります。このE. resiniferaはその樹液を薬としていたと言われています。かつて北アフリカに存在したNumidiaの王の従医であるEuphorbusがE. resiniferaを薬として使用したことから、Euphorbiaという名前がついたらしいのです。
さて、このE. resiniferaはその分布により表現型(姿形)に違い(=多形)があると言われています。本日はそのE. resiniferaの多形について調査したHassane Abd-dadaらの2023年の論文、『Phenotypeic diversity of population of an endemic Moroccan plant (Euphorbia resinifera O.Berg)』をご紹介します。

E. resiniferaはモロッコ原産のユーフォルビアで、高さ1mほどに育ち、枝が密につき直径0.5〜2mのマット状の茂みを作ります。そのため、土壌侵食を防ぐ働きがあるようです。また、小さな黄色い花はミツバチを引き寄せます。E. resiniferaの蜜は付加価値が高く、養蜂業が営まれ年間300トンの蜂蜜を生産しています。
しかし、近年では開発の影響によりE. resiniferaの数が減少しています。E. resiniferaはモロッコ固有種ですから、保護のために対策を講じる必要がありますが、まずはその多様性についての調査が不可欠です。著者らはE. resiniferaの表現型について調査しました。

230715093946951
Euphorbia resinifera

2019年にモロッコに分布する12箇所のE. resiniferaが調査されました。様々な17部位の表現型が測定されました。例えば、トゲの長さは1.95mm〜3.88mm、ブッシュの直径は83〜196.6cm、果実は0.05〜0.17gなど、表現型に差がありました。
表現型に基づく分析により、E. resiniferaは3つのグループに分けられることが分かりました。ただし、特徴が近いものが分布が近いとは限りませんでした。調査地はいくつか山脈がありますが、山ごとに表現型が似ているということもなく、その違いは標高、降水量、気温に関係性がありませんでした。

以上が論文の簡単な要約です。
調査の結果は思わぬもので、これといった傾向がありませんでした。例えば日本は南北に長いため、同じ種類でも分布の最北端と最南端では、かなり表現型が異なることがあります。しかし、この場合はその中間はグラデーションのように特徴が移り変わります。また、気温や降水量により、表現型が局地的に変わることも観察されています。
しかし、不思議なことに、E.resiniferaでは様相が異なります。山頂から麓まで生えていない限り、基本的に好ましいある一定の範囲の標高に生えるため、山同士で植物は行き来が出来ません。つまり、
山は自然の障壁で、山ごとに特徴が異なったりもしますが、それもありません。大変不思議です。
ただ、もとより多様性が高く、様々なタイプが生えてくるだけかも知れません。つまり、様々な環境に適応するために、最初から多様になっているとしたらどうでしょうか? 例えば、乾いた環境でも様々なタイプの実生が生えますが、生き残るのは乾燥に強いものだけが生き残るという場合です。異なる環境では、その環境に最も適したものだけが生き残るのです。論文では環境と表現型の関係を否定していますが、表現型と環境適応は必ずしも関連があるとは限りません。最終的には遺伝子解析を行い、その結果と表現型と環境適応を照らし合わせて、総合的に理解する必要があるでしょう。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村