Fouquieriaは米国とメキシコの乾燥地に生える砂漠植物です。Fouquieriaは一般的に水分を貯蔵する塊根や塊茎、多肉質な葉などを持ちません。一部の種類は塊茎を持ちますが、相当な大きさにならないと幹は太りませんし綺麗な壺型には育ちません。栽培されたFouquieriaは、枝を切り詰めて盆栽のように幹を太らせますが、これは自然な姿ではありません。水分を貯蔵する手段がないFouquieriaが乾燥地に生き残るための戦略は、乾季には葉を落として休眠し、雨が降れば急激に育つというものです。そのため、ほとんど生長が見られない年もあるようです。Fouquieriaは非常に長寿な植物と言われていますが、生長しない年があるのならば年輪が出来ておらず、Fouquieriaの正確な年齢が分からないかも知れません。という訳で、本日のお題はFouquieriaの幹の年輪は正確な年齢を表しているのか? という問題についてです。参考にするのは、Keith T. Killingbeckの2017年の論文、『Are growth rings accurate fingerprints of plant age in a stem-succulent, drought deciduous shurb growing in the Chihuahuan Desert?』です。

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Fouquieria splendens

米国とメキシコにあるチワワ砂漠とソノラ砂漠の象徴的な植物であるOcotillo(Fouquieria splendens)は2世紀以上の年齢に達する長寿命な低木と言われています。しかし、これまでに測定されたOcotilloは、最も古いものでも105歳にしかなりません。Ocotilloの年輪が正確な年齢を表しているのか分からないため、著者は調査を行いました。
温帯の植物は季節性の落葉をするため、1年に1つの年輪が出来ます。しかし、砂漠植物は雨が降らなければ生長せず、または雨が降れば1年に複数回生長することもあります。つまり、年輪が出来ない年、あるいは年輪が複数出来る年がある可能性もあります。
さて、調査はチワワ砂漠のNew Mexico州南部のJordana盆地Summerford山の麓で行われました。Ocotillo苗の枝の生長を記録し、年輪を数えました。

同い年のOcotilloでも生育が異なり、すべての枝の合計の長さは、最大の個体で1369cm、最小の個体で173cmでした。サイズは約8倍の差がありますが、年輪を数えるとまったく同じ本数でした。つまり、Ocotilloは生育の良し悪しでは年輪に違いはなく、1年に1本の年輪ができることが確認されました。これにより、Ocotilloの年齢を数えることが出来ます。

過去に計測された年輪は104歳でしたが、著者は107歳の年輪を計測しています。もっと古いであろう個体のサンプルもありましたが、残念ながら中央が抜けており年輪を正確に測定出来ませんでした。著者は非常に大量の枝を有する個体もいることから、より古い年齢のOcotilloが存在すると考えているそうです。

以上が論文の簡単な要約となります。
Ocotilloは温帯域の樹木と同様に、1年に1本の年輪を刻むことが分かりました。Fouquieriaは実際に育てていれば分かりますが、生長中であっても乾けば素早く葉を落とし休眠します。ですから、休眠中はまったく生長出来ません。また、葉を落として休眠してから雨が降れば、新しい葉が出て来て生長を開始します。おそらくは、野生でも葉を落としたり新しく葉を出したりを繰り返しているはずです。しかし、それでも年輪は増えたりはしないのです。通常は生長が止まったら新しい年輪が出来るような気がします。不思議ですね。さて、この研究により年輪が正確な年齢を表していることが明らかになりましたが、最も高齢なOcotilloは何歳かという謎はまだ未解明です。Ocotilloはいったい何歳まで生きるのでしょうか? 多肉植物はまだまだ謎だらけです。


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