アポロカクタスは紐サボテンなどと呼ばれる細長く育つサボテンで、日本では金紐(Aporocactus flagelliformis)が有名です。どうも、メキシコの雲霧林に生える植物のようです。一般的にアポロカクタスは5種類、あるいは2種類あるとされています。いったいどちらの考え方が正しいのでしょうか? 詳しく研究した論文を見つけましたから、ご紹介します。それは、Isaura Rosas-Reinholdらの2021年の論文、『Systematic study and niche differentiation of the genus Aporocactus (Hylocereeae, Cactoideae, Cactaceae)』です。
アポロカクタスは雲霧林のマツ・コナラ林で、木に着生して垂れ下がって育ちます。アポロカクタス属はLemaireにより1860年に命名されました。1メートル以上のぶら下がる、円筒形の茎とピンク色の花を持つ種類のサボテンをグループ化しアポロカクタス属としました。LemaireはCactus属だった3種類をアポロカクタス属とし、A. flagelliformis、A. baumannii、A. colubrinusからなるものでした。また、Cactus leptophisをA. flagelliformisの異名としました。しかし、Lemaireは後にA. baumanniiとA. colubrinusをCleistocactus属に移しました。さらに、1868年にLemaireはCereus flagriformisをアポロカクタス属に移しました。
1920年にBritton & RoseはLemaire(1960, 1961年)により描かれたアポロカクタス属を認識し、アポロカクタスをA.fragelliformis、A. leptophis、A. flagriformis、A. martianus、A. conzattiiの5種類としました。同様にBravo-Hollis(1978年)もこの考え方を支持しました。
しかし、1986年に国際多肉植物研究機構(IOS)のHunt & Taylorは、アポロカクタス属は2種類からなると指摘しました。1989年にHuntは「北部の種は紫がかるピンク色の花を咲かせ、南部の種はほぼ規則的な緋色の花とやや硬い茎を持つ。前者がA. fragelliformis、後者がA. martianusに相当する。」と主張しました。他の3種類は異名とされました。
問題はこれらは形態学的な特徴に基づいていますが、実際の特徴は連続的であるため種の分離は困難ということです。
そこで著者はアポロカクタス属とされる5種類の遺伝子を複数個体で解析しました。すると、アポロカクタス属は2つのグループに分けられることが分かりました。
1つのグループは、A. martianusとA. conzattiiからなり、3個体のA. conzattiiはまとまりがありました。しかし、A. conzattiiはA. martianusの一部に見えます。A. martianusの産地により特殊化したタイプがA. conzattiiなのかも知れません。
もう1つは、残りのA. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisからなります。ここでは、A. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisは区別出来ません。2個体のA. leptophisはまとまりはなく、A. flagriformisもA. leptophisも、A. fragelliformisに完全に埋没しています。
要するに、アポロカクタス属はA. martianusとA. fragelliformisの2種類からなり、他の3種類は異名となりました。1989年のHuntの指摘は正しかったと言えます。
2種類の特徴を見てみると、A. fragelliformisの花は4〜7cmでピンク色からマゼンダ、A. martianusの花は7〜12cmで淡赤色から深赤色です。また、A. conzatiiとされてきた個体には固有の特徴はないということです。
また、A. fragelliformisはSierra Madre Oriental、Queretaro、Guanajuato、Hidalgo、Pueblo北部、Veracruz中央部に分布します。A. martianusはVeracruz中央部、Pueblo南部、Oaxaca州にかけて、主にSierra Madre del Surに分布します。アポロカクタスの2種類の分布限界は、Sierra Madre OrientalとSierra Madre d el SurがメキシコのTransvolcanic Belt (メキシコ横断火山帯)と交差するVeracruz州中央部に収束します。
論文ではアポロカクタス属の近縁種との関係性も調べています。なぜなら、アポロカクタス属がDisocactusに含まれるという考え方もあるためです。
遺伝子解析の結果では、アポロカクタス属は独立した分類群であり、Disocactusに含まれないことが明らかになりました。SelenicereusとWeberocereusが非常に近縁で、アポロカクタスはこの2属と共にまとまったグループを作ります(=Hylocereoid clade)。Hyrocereoid cladeの姉妹群が、Phyllocactoid cladeです。ここには、Disocactus、Epiphyllum、Pseudorhipsalisが含まれます。さらにその姉妹群がAcanthocereus cladeで名前の通りにAcanthocereusが含まれます。
アポロカクタスがDisocactusに含まれるという考え方は、花の特徴から来ています。曰く、ハチドリにより受粉するであろう形、明るさや昼行性であるという共通点がありますが、しかしこれらは各グループで複数回進化した特徴と考えられます。
以上が論文の簡単な要約となります。
5種類のアポロカクタスは2種類になりました。金紐は日本でも昔から知られている普及種ですが、思いの外、その分類は紛糾していたようです。しかし、金紐の花はよくよく見れば、細長い形と赤系統という特徴は鳥媒花の特徴をまずまず揃えています。サボテンの花には、アポロカクタスのようなタイプがそれなりにありますから、思ったよりサボテンの受粉に鳥が関わっているのかも知れませんね。
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アポロカクタスは雲霧林のマツ・コナラ林で、木に着生して垂れ下がって育ちます。アポロカクタス属はLemaireにより1860年に命名されました。1メートル以上のぶら下がる、円筒形の茎とピンク色の花を持つ種類のサボテンをグループ化しアポロカクタス属としました。LemaireはCactus属だった3種類をアポロカクタス属とし、A. flagelliformis、A. baumannii、A. colubrinusからなるものでした。また、Cactus leptophisをA. flagelliformisの異名としました。しかし、Lemaireは後にA. baumanniiとA. colubrinusをCleistocactus属に移しました。さらに、1868年にLemaireはCereus flagriformisをアポロカクタス属に移しました。
1920年にBritton & RoseはLemaire(1960, 1961年)により描かれたアポロカクタス属を認識し、アポロカクタスをA.fragelliformis、A. leptophis、A. flagriformis、A. martianus、A. conzattiiの5種類としました。同様にBravo-Hollis(1978年)もこの考え方を支持しました。
しかし、1986年に国際多肉植物研究機構(IOS)のHunt & Taylorは、アポロカクタス属は2種類からなると指摘しました。1989年にHuntは「北部の種は紫がかるピンク色の花を咲かせ、南部の種はほぼ規則的な緋色の花とやや硬い茎を持つ。前者がA. fragelliformis、後者がA. martianusに相当する。」と主張しました。他の3種類は異名とされました。
問題はこれらは形態学的な特徴に基づいていますが、実際の特徴は連続的であるため種の分離は困難ということです。
そこで著者はアポロカクタス属とされる5種類の遺伝子を複数個体で解析しました。すると、アポロカクタス属は2つのグループに分けられることが分かりました。
1つのグループは、A. martianusとA. conzattiiからなり、3個体のA. conzattiiはまとまりがありました。しかし、A. conzattiiはA. martianusの一部に見えます。A. martianusの産地により特殊化したタイプがA. conzattiiなのかも知れません。
もう1つは、残りのA. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisからなります。ここでは、A. fragelliformis、A. flagriformis、A. leptophisは区別出来ません。2個体のA. leptophisはまとまりはなく、A. flagriformisもA. leptophisも、A. fragelliformisに完全に埋没しています。
要するに、アポロカクタス属はA. martianusとA. fragelliformisの2種類からなり、他の3種類は異名となりました。1989年のHuntの指摘は正しかったと言えます。
2種類の特徴を見てみると、A. fragelliformisの花は4〜7cmでピンク色からマゼンダ、A. martianusの花は7〜12cmで淡赤色から深赤色です。また、A. conzatiiとされてきた個体には固有の特徴はないということです。
また、A. fragelliformisはSierra Madre Oriental、Queretaro、Guanajuato、Hidalgo、Pueblo北部、Veracruz中央部に分布します。A. martianusはVeracruz中央部、Pueblo南部、Oaxaca州にかけて、主にSierra Madre del Surに分布します。アポロカクタスの2種類の分布限界は、Sierra Madre OrientalとSierra Madre d el SurがメキシコのTransvolcanic Belt (メキシコ横断火山帯)と交差するVeracruz州中央部に収束します。
論文ではアポロカクタス属の近縁種との関係性も調べています。なぜなら、アポロカクタス属がDisocactusに含まれるという考え方もあるためです。
遺伝子解析の結果では、アポロカクタス属は独立した分類群であり、Disocactusに含まれないことが明らかになりました。SelenicereusとWeberocereusが非常に近縁で、アポロカクタスはこの2属と共にまとまったグループを作ります(=Hylocereoid clade)。Hyrocereoid cladeの姉妹群が、Phyllocactoid cladeです。ここには、Disocactus、Epiphyllum、Pseudorhipsalisが含まれます。さらにその姉妹群がAcanthocereus cladeで名前の通りにAcanthocereusが含まれます。
アポロカクタスがDisocactusに含まれるという考え方は、花の特徴から来ています。曰く、ハチドリにより受粉するであろう形、明るさや昼行性であるという共通点がありますが、しかしこれらは各グループで複数回進化した特徴と考えられます。
以上が論文の簡単な要約となります。
5種類のアポロカクタスは2種類になりました。金紐は日本でも昔から知られている普及種ですが、思いの外、その分類は紛糾していたようです。しかし、金紐の花はよくよく見れば、細長い形と赤系統という特徴は鳥媒花の特徴をまずまず揃えています。サボテンの花には、アポロカクタスのようなタイプがそれなりにありますから、思ったよりサボテンの受粉に鳥が関わっているのかも知れませんね。
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