アフリカの乾燥地には多肉植物となった沢山の種類のユーフォルビアが分布します。これらのユーフォルビアの外敵は、害虫以外では開発やら違法採取やらをやらかす人間くらいな気もします。しかし、以前に毒性が高いと言われる矢毒キリン(Euphorbia virosa)について調べていた時に、クロサイは矢毒キリンを食べるらしいと聞いて大変驚いたことを覚えています。最近、たまたまクロサイとユーフォルビアについて書かれた論文を見つけましたので、本日はご紹介したいと思います。それはLinda C. Heilmannらの2006年の論文、『Will tree euphorbias (Euphorbia tetragona and Euphorbia triangularis) survive under the impact of black rhinoceros (Bicornis diceros minor) browsing in the Great Fish River Reserve, South Africa?』です。

この研究は南アフリカのGreat Fish River保護区で、クロサイがユーフォルビアに与える影響を調査したものです。クロサイはCITESの附属書I類の絶滅危惧種です。調査されたEuphorbia tetragonaとEuphorbia triangularisも附属書II類で取り引きが規制されています。クロサイは非常に減少しましたが、保護のために1986年にこの保護区に約70頭のクロサイが再導入されましたが、最近は数が急速に増加しています。クロサイはユーフォルビアを食べますが、クロサイは植物を押し倒してしまうため、大きなユーフォルビアを枯死させてしまいます。クロサイの増加はユーフォルビアにどのような影響を与えたのでしょうか?

一般的に動物は採餌に用する消費エネルギーを最小にすると言われています。そのため、クロサイは押し倒しやすい小さなユーフォルビアを好む可能性があります。また、草食動物があまり訪れない「避難所」がある場合があります。実際に斜面のアカシアはキリンに採餌されずに生き残りやすいことが分かっています。
このような大型草食動物による食害は、すでに過去に沢山の報告があります。バオバブ(Adansonia digitata)はアフリカゾウにより食害され、タンザニアの国立公園では2.7%が枯死し、ジンバブエのザンベジ渓谷では4.9%が枯死しています。ケニアではクロサイがEuphorbia tirucalliを押し倒し、動物保護区ではそうとうな被害があったようです。

2ヶ月の調査で、高さ2m以上の2本のE. tetragonaと11本のE. triangularisが押し倒されました。これは、4日に1本、全体の6.7%に達する数字です。現在の死亡率から計算すると、E. tetragonaはあと8年、E. triangularisは1.5年で調査地から消滅する可能性があります。
もちろん、倒されたからと言ってそのすべてがクロサイによるものとは限らないでしょう。しかし、クロサイがいない地域も同期間観察しましたが、倒木は全体の1.2%に過ぎませんでした。
また、クロサイ以外の動物の食害も過去に報告されています。1つはヒヒ(Papio ursinus)で、若い芽を食べることがあるそうですが、これは大したダメージにはなりません。2つ目はヤマアラシ(Hystrix africaeaustralis)が樹皮を齧ることがあり、これは茎が腐敗する可能性があります。しかし、調査中にヤマアラシの食害跡は観察されませんでした。

ただ、Goddard(1968)やDudley(1997)によると、E. tirucalliやE. ingensは主に乾季に押し倒されると言います。つまり、水資源が枯渇する乾季にのみ、ユーフォルビアを水分を摂取するために食べているのかも知れません。ただし、年間を通して被害が続く訳ではなくても、現在の破壊りつからすると今年の残りの期間に被害がなかったとしても、いずれE. tetragonaとE. triangularisは消滅すると考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
クロサイが消費エネルギーを最小にするという話がありましたが、どうやら2mほどのユーフォルビアがターゲットのようです。それ以上のサイズだと押し倒すのが大変でしょうし、あまり小さいとクロサイの巨体からしたら食べ甲斐がないのでしょう。
しかし、なぜクロサイは猛毒のユーフォルビアを食べても平気なのかは分かりません。とても不思議です。
最後に。クロサイはもはや非常に稀になった希少種ですから、その保護は当たり前のことです。しかし、その保護活動が他の希少種にダメージを与えるという、大変残念な結果となりました。調査地は元々はクロサイが生息していたものの現在は絶滅し、再び導入された地域です。しかし、クロサイとユーフォルビアのバランスは取れていないようです。本来あるべきクロサイとユーフォルビアの関係とはどのようなものでしょうか。保護活動の難しさを実感します。


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