以前からStenocereus erucaという面白いサボテンがいることは知っていました。E. erucaは地面を這って育ち、接地面から根が出て育ちます。やがて、根元から枯れていきますが、先端は生長し続けるので移動しながら育つのです。去年、神代植物公園の大温室にて始めてS. erucaを見ることが出来ました。やはり、とても不思議なサボテンです。にわかに興味が湧き、少し調べてみると以下のことが分かりました。曰く、メキシコのソノラ砂漠に固有な2種類の柱サボテン、Stenocereus erucaとStenocereus gummosusが分布し、2種類は密接な関係があると考えられているというのです。それは、Francisco Molina-Freaner & Richardo Clark-Tapiaの2005年の論文、『Clonal Diversity and Allelic Relationships between Two Closely Related Species of Columnar Cacti from the sonolan Desert: Stenocereus eruca and Stenocereus gummosus』です。早速、見ていきましょう。
Stenocereus eruca(神代植物公園)
S. erucaはその分布がバハ・カリフォルニア半島のMagdalena平原の沿岸部の狭い範囲に限定されます。対照的にS. gummosusはバハ・カリフォルニア半島全体に広がり、カリフォルニア湾の多くの島にも分布します。
S. erucaは横に這い、不定根を出しながら育ちます。苗の定着の可能性は非常に低く、主に枝分かれによるクローンにより繁殖していると考えられています。S. gummosusは半直立性で高さ1〜1.5mで地際からアーチ型の枝を伸ばします。枝の根元から発根し、やがて枝が本体から剥離し独立します。やはり、S. gummosusも苗が見られず、クローンにより繁殖している可能性があります。
Gibson(1989)によるとS. erucaはS. gummosusから進化した可能性を指摘しました。2種類の組織を比較すると、構造的にS. erucaは自重を支えることが出来ないため、特徴的な育ち方になったようです。緩い砂漠に対応した育ち方と言えます。
著者は遺伝子の違いから、E. erucaとE. gummosusが割と新しく種分化したものと推測しました。また、E. erucaの個体毎の差が小さいことも分かりました。つまり、E. erucaはE. gummosusよりクローン増殖に依存しているということです。しかし、予想より遺伝的に多様性がありました。当初はE. erucaとE. gummosusはクローン増殖に強く依存していると考えらましたが、どうやらちゃんと種子による繁殖も行われているようです。
さて、E. erucaは海岸沿いのMagdalena平原のみ自生しますが、平原は海からの強風により砂が堆積して出来た砂丘です。E. erucaが這って育つことは、強い風に対して有効です。また、E. erucaの先端が少し上を向く特徴は、砂への埋没を避ける意味があることが観察されています。
以上が論文の簡単な要約です。
少し古い論文ですが、やはり近年の遺伝子工学の急速な発達からすると、遺伝子解析も詳細は分からない大まかなものであったことがうかがえます。しかし、その分、非常に丁寧に調べられています。
それはともかく、E. erucaの特殊なクローン増殖は興味深いものですが、E. gummosusのクローン増殖から派生していることは明らかです。しかし、私もE. gummosusのクローン増殖については知りませんでした。E. gammosusのクローン増殖しやすい特徴が受け継がれ、砂丘への適応で非常に役に立っているということも初めて知りました。このように、知らないことばかりですが、探せばいくらでも論文は出て来ます。私個人が無知なだけかも知れませんが、今後も面白い論文をご紹介出来ればと考えております。
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Stenocereus eruca(神代植物公園)
S. erucaはその分布がバハ・カリフォルニア半島のMagdalena平原の沿岸部の狭い範囲に限定されます。対照的にS. gummosusはバハ・カリフォルニア半島全体に広がり、カリフォルニア湾の多くの島にも分布します。
S. erucaは横に這い、不定根を出しながら育ちます。苗の定着の可能性は非常に低く、主に枝分かれによるクローンにより繁殖していると考えられています。S. gummosusは半直立性で高さ1〜1.5mで地際からアーチ型の枝を伸ばします。枝の根元から発根し、やがて枝が本体から剥離し独立します。やはり、S. gummosusも苗が見られず、クローンにより繁殖している可能性があります。
Gibson(1989)によるとS. erucaはS. gummosusから進化した可能性を指摘しました。2種類の組織を比較すると、構造的にS. erucaは自重を支えることが出来ないため、特徴的な育ち方になったようです。緩い砂漠に対応した育ち方と言えます。
著者は遺伝子の違いから、E. erucaとE. gummosusが割と新しく種分化したものと推測しました。また、E. erucaの個体毎の差が小さいことも分かりました。つまり、E. erucaはE. gummosusよりクローン増殖に依存しているということです。しかし、予想より遺伝的に多様性がありました。当初はE. erucaとE. gummosusはクローン増殖に強く依存していると考えらましたが、どうやらちゃんと種子による繁殖も行われているようです。
さて、E. erucaは海岸沿いのMagdalena平原のみ自生しますが、平原は海からの強風により砂が堆積して出来た砂丘です。E. erucaが這って育つことは、強い風に対して有効です。また、E. erucaの先端が少し上を向く特徴は、砂への埋没を避ける意味があることが観察されています。
以上が論文の簡単な要約です。
少し古い論文ですが、やはり近年の遺伝子工学の急速な発達からすると、遺伝子解析も詳細は分からない大まかなものであったことがうかがえます。しかし、その分、非常に丁寧に調べられています。
それはともかく、E. erucaの特殊なクローン増殖は興味深いものですが、E. gummosusのクローン増殖から派生していることは明らかです。しかし、私もE. gummosusのクローン増殖については知りませんでした。E. gammosusのクローン増殖しやすい特徴が受け継がれ、砂丘への適応で非常に役に立っているということも初めて知りました。このように、知らないことばかりですが、探せばいくらでも論文は出て来ます。私個人が無知なだけかも知れませんが、今後も面白い論文をご紹介出来ればと考えております。
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