Euphorbia pulvinataは、日本では笹蟹丸の名前でお馴染みの多肉植物です。普及種ですから非常に安価で購入出来ます。育てやすく見た目も面白いので、ユーフォルビアの入門種と言えます。たまたまですが、そんなE. pulvinataを題材とした論文を見つけたので、ご紹介します。それは、Luambo Jeffrey Ramarumoらの2019年の論文、『Euphorbia pulvinata Marloth: A useful succulent plant species in Vhembe Biosphere Resesve. Limpopo Province, South Africa』 です。

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笹蟹丸 Euphorbia pulvinata

この研究は南アフリカのLimpopo州Vhembe生物圏保護区の、Nzhelele地域のVhulaudziと隣接する村で実施されました。調査エリア内の人口は30683人でした。調査はEuphorbia pulvinataの利用方法について、30歳以上の無作為に選ばれた120人で実施されました。その内訳は、伝統医9人、薬草師21人、ハンター11人、農民31人、その他一般人48人でした。アンケートした120人全員がE. pulvinataを利用していました。

アンケートの結果として、まずは住民のE. pulvinataの利用方法から見ていきます。参加者の35.8%がトリモチを作るため、25%は家畜の薬として、17.5%は昆虫のトラップ、9.2%は観賞用、6.7%は儀式や魔術目的、5.8%が接着剤としてE. pulvinataを利用しました。アンケートによるとたまたまではなく、積極的にE. pulvinataを利用しており、内容は創造的かつ動的なものでした。
次に利用部位を見てみると、乳液は59%で利用され重要でした。乳液はトリモチや接着剤として利用されます。他には、家畜の薬に根が利用されました。また、トゲや花はあまり利用されませんでした。

以上が論文の簡単な要約です。
内容的には民族学的な調査でした。しかし、このような自生地における利用方法は、希少植物の保護を考える上での基本的な情報として重要です。著者らもその点を言及しています。
多肉植物は様々な要因で数が減少しており、保護が必要なものが多くあります。しかし、保護区を設定して、取引を法律で規制してもあまり意味はありません。保護活動に従事する人材や、違法採取や違法取引の取り締まりも必要です。さらには、この論文のように地元で植物を利用している人たちとの折り合いも必要です。この場合は、単に禁止するのではなく、地元の人を保護活動に従事するための人材として採用したり、なるべく野生個体を使わなくて良いように栽培を支援する活動など考えられることは沢山あります。
E. pulvinataは園芸用途としては普及種ですから、違法採取は問題とはならないかも知れません。自生地に住む人たちの利用もそれほどの脅威ではないかも知れませんが、今後の人口増による開拓、家畜の踏みつけなどが起きるかも知れません。このような調査は今後も実施されるこが望まれます。


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