昨日はコウモリや蛾により受粉する柱サボテンについての論文をご紹介しました。論文で調査されたPilosocereus leucocephalusは夜間に開花する柱サボテンでした。夜間に咲く花は白色のものが多いのですが、サボテンは日中咲くものの方が多いでしょうし、花色も多様です。日中に花が咲くサボテンの受粉はどうなっているのでしょうか? 一般的に花の受粉は蜂の役割が大きいとされますが、アフリカの大型アロエは様々な鳥が蜜を吸いに来ますし、受粉に対する寄与は蜂よりも鳥の方が大きいことが明らかになっています。アメリカ大陸にはハチドリという花の蜜に特化した鳥が分布し、ハチドリに受粉を依存する鳥媒花も存在するはずです。という訳で、本日はP. Gorostiague & P. Ortega-Baesの2014年の論文、『Haw specialised is bird pollination in the Cactaceae?』をご紹介します。サボテンの鳥媒花に関する調査を実施しています。

一般に南アメリカでは鳥媒花のサボテンが多いとされ、主にハチドリにより受粉すると考えられています。Oreocereus属、Cleistocactus属、Matucana属、Denmoza属などの細長い管状の花は、鳥媒花として進化してきたとされています。論文で調査したサボテンは高地性のCleistocactus属で、管状の赤系統の花を咲かせます。Cleistocactus baumamniiとCleistocactus smaragdiflorusは、管状の細長い花を咲かせ、ほとんど開かず先端が少し開くぐらいです。調査地はアルゼンチンのSalta州、La Bodeguitaです。

観察の結果、C. baumanniiにはハチドリだけが訪れました。C. smaragdiflorusは、ハチドリとクマバチ(Xylocopa)、さらにミツバチが訪れました。花からは蛾の鱗粉の付着はなく、UVランプで捕獲された蛾にはCleistocactusの花粉はありませんでした。

調査された2種類のCleistocactusは赤い管状の花を持ち、典型的な鳥媒花の特徴を持ちます。この管状の花は鳥類形質(ornithophilous trait)とも呼ばれ、他の花粉媒介者に対する物理障壁として機能する可能性があります。また、鳥が訪れる花の花粉は赤いことが多いようです。

以上が論文の簡単な要約です。
論文では過去のサボテンの花粉媒介についても長々と解説されていましたが要約が難しく、話があちこちに飛んで焦点を絞れないため割愛させていただきました。
さて、内容についてですが、今回調査したCleistocactus2種は、花色的にも形状からも日中に訪れる花粉媒介者により受粉している可能性が大きいことが分かります。さらに、C. baumanniiはハチドリ以外の花への訪問者はなかったことから、この種は鳥媒花に特化しているようです。C. baumanniiの花はほとんど開かないため、細長いクチバシを差し込むことが出来るハチドリ以外は利用出来ないのかも知れません。C. baumanniiはハチドリに非常に強く依存しており、おそらくはハチドリ以外では受粉出来ないのでしょう。
調べるとサボテンも中々面白い話が沢山あるようです。他にも何か面白い論文がないか調べてみようと思います。


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