本日はElaiosmeなる種子に付いた謎の栄養分についての論文をご紹介する予定でした。Elaiosmeについて基本的なことがわかりそうな論文が見つかったのでPDFをダウンロードしたところ、何故か違う論文でした。リンク先が誤っているというか、2つの論文が逆になっているのかと、ダウンロードした論文のタイトルで検索してダウンロードしたところ、また別の論文が出てきてしまいました。もうめちゃくちゃですね。仕方がないので、論文の掲載誌に飛んでダウンロードしましたがエラーが出てしまい、時間を変えてダウンロードして下さいというメッセージが表示されてしまいました。サイト自体が駄目みたいです。いやはや、困ったことです。という訳で、本日は誤ってダウンロードしてしまった論文を、せっかくなのでご紹介したいと思います。それは、Antonio Mipanda-Jacomeの2019年の論文、『Bats and moths contribute to the reproductive success of the columnar cactus Pilosocereus leucocephalus』です。もう、タイトルからして「コウモリと蛾は〜」で始まってますからね。たまたまダウンロードしたのに、すでに面白そうです。早速内容を見てみましょう。
柱サボテンの花は釣鐘形でピンク色がかった白色、不快な臭いが特徴で、このタイプの花を「chiropterophilic flowers」と呼んでいます。論文で調査したPilosocereus leucocephalusもchiropterophilicな花を咲かせます。P. leucocephalusは過去に昼間を訪れる花粉媒介者(蜂や鳥)と夜間に訪れる花粉媒介者(コウモリや蛾)の受粉への貢献度が調査されています。P. leucocephalusの花を観察すると、鳥や蜂も花を訪れていましたが、昼間の花粉媒介者による結実は11.9%に過ぎず、夜間の花粉媒介者により88.1%が結実していました。
柱サボテンの受粉は、一般にコウモリによるものと考えられています。しかし、赤外線カメラにより蛾も柱サボテンの花を訪れていることが明らかになりましたが、蛾は花粉や柱頭に触れていないため受粉には寄与しないと考えられて来ました。
この論文では、P. leucocephalusを夜間に訪れるコウモリと蛾により、花が受粉したかを調査しました。コウモリや蛾は夜間に活動するため直接の観察は困難です。だからと言ってライトを使用すると、訪れる花粉媒介者に影響を与えるかも知れません。論文では、3.5cmメッシュの金属製のカゴによりコウモリが入れない花と、ナフタレンを花の周囲に撒いて蛾が来ないようにした花を準備しました。赤外線カメラで花を観察し、訪れた花粉媒介者の種類を特定し、実際にその花が結実したかを確認しました。
観察では、全体的な花への訪問率は、蛾は62.3%でコウモリの37.7%より高いものでした。しかし、柱頭や葯に花粉媒介者が触れた割合は、蛾は28%でコウモリほ95%でした。しかし、赤外線カメラの観察では詳細は不明瞭でしたから、蛾の訪問は過小評価されているかも知れません。
実際に花が結実したかを確認したところ、コウモリが訪れた花は100%が結実し、蛾が訪れた花は34%が結実しました。
結果としてP. leucocephalusの主要な花粉媒介者はコウモリでした。これは、コウモリが毛深く花粉を大量に運搬し、機動力に優れているためと考えられます。対して、蛾の受粉への貢献度はコウモリよりも低いものでしたが、訪れる数が多く必ずしも無視出来ない結実率でした。蛾の受粉は以前に考えられて来た以上に重要である可能性かあります。
以上が論文の簡単な要約です。
花粉媒介者がいなければ受粉出来ませんから、花粉媒介者は植物にとっては重要なファクターです。しかし、花粉媒介をするコウモリは季節により渡りをする習性があり、渡りの移動先の環境破壊によりコウモリは最近非常に数が減少しています。コウモリの数が好転する可能性は低く、将来的な柱サボテンの花粉媒介者の絶滅は時間の問題かも知れません。今回の論文の調査により、コウモリだけではなく蛾も受粉にある程度は貢献することが明らかとなりました。コウモリの減少が進んでも、受粉はゼロにはならないことは柱サボテンにとってプラスの要因です。しかし、受粉率の低下により、野生の柱サボテンの数は除々に減少していく可能性があります。そう考えるとあまり安心は出来ない現状ではあります。将来的にも巨大な柱サボテンが育つ、素晴らしい自生地の姿が見られなくなるのは悲しいことです。
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柱サボテンの花は釣鐘形でピンク色がかった白色、不快な臭いが特徴で、このタイプの花を「chiropterophilic flowers」と呼んでいます。論文で調査したPilosocereus leucocephalusもchiropterophilicな花を咲かせます。P. leucocephalusは過去に昼間を訪れる花粉媒介者(蜂や鳥)と夜間に訪れる花粉媒介者(コウモリや蛾)の受粉への貢献度が調査されています。P. leucocephalusの花を観察すると、鳥や蜂も花を訪れていましたが、昼間の花粉媒介者による結実は11.9%に過ぎず、夜間の花粉媒介者により88.1%が結実していました。
柱サボテンの受粉は、一般にコウモリによるものと考えられています。しかし、赤外線カメラにより蛾も柱サボテンの花を訪れていることが明らかになりましたが、蛾は花粉や柱頭に触れていないため受粉には寄与しないと考えられて来ました。
この論文では、P. leucocephalusを夜間に訪れるコウモリと蛾により、花が受粉したかを調査しました。コウモリや蛾は夜間に活動するため直接の観察は困難です。だからと言ってライトを使用すると、訪れる花粉媒介者に影響を与えるかも知れません。論文では、3.5cmメッシュの金属製のカゴによりコウモリが入れない花と、ナフタレンを花の周囲に撒いて蛾が来ないようにした花を準備しました。赤外線カメラで花を観察し、訪れた花粉媒介者の種類を特定し、実際にその花が結実したかを確認しました。
観察では、全体的な花への訪問率は、蛾は62.3%でコウモリの37.7%より高いものでした。しかし、柱頭や葯に花粉媒介者が触れた割合は、蛾は28%でコウモリほ95%でした。しかし、赤外線カメラの観察では詳細は不明瞭でしたから、蛾の訪問は過小評価されているかも知れません。
実際に花が結実したかを確認したところ、コウモリが訪れた花は100%が結実し、蛾が訪れた花は34%が結実しました。
結果としてP. leucocephalusの主要な花粉媒介者はコウモリでした。これは、コウモリが毛深く花粉を大量に運搬し、機動力に優れているためと考えられます。対して、蛾の受粉への貢献度はコウモリよりも低いものでしたが、訪れる数が多く必ずしも無視出来ない結実率でした。蛾の受粉は以前に考えられて来た以上に重要である可能性かあります。
以上が論文の簡単な要約です。
花粉媒介者がいなければ受粉出来ませんから、花粉媒介者は植物にとっては重要なファクターです。しかし、花粉媒介をするコウモリは季節により渡りをする習性があり、渡りの移動先の環境破壊によりコウモリは最近非常に数が減少しています。コウモリの数が好転する可能性は低く、将来的な柱サボテンの花粉媒介者の絶滅は時間の問題かも知れません。今回の論文の調査により、コウモリだけではなく蛾も受粉にある程度は貢献することが明らかとなりました。コウモリの減少が進んでも、受粉はゼロにはならないことは柱サボテンにとってプラスの要因です。しかし、受粉率の低下により、野生の柱サボテンの数は除々に減少していく可能性があります。そう考えるとあまり安心は出来ない現状ではあります。将来的にも巨大な柱サボテンが育つ、素晴らしい自生地の姿が見られなくなるのは悲しいことです。
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