標高と植生は非常に強い関連があります。標高と植生などと言うと、いったい何のことを言っているのかと思われるかも知れませんが、簡単に言うと山に登ると生えている植物が変わりますねというだけのことです。山に登ると除々に気温が低下していきますから、温帯にある山に登っても、頂上のお花畑で見られる植物は亜寒帯と似ていたりします。これは、氷河期に現在の温帯域まで分布を拡大した北方の植物が、氷河期の終焉の際に涼しい山地に取り残されたものです。まあ、それほどの高地ではなくても、平地と異なる環境に適応した植物が優勢になりますから、北方からの遺存種だけではなく在来の植物にも変化があります。では、多肉植物は標高の変化により、何かしらの違いが生じるものなのでしょうか?
という訳で、本日は標高の違いとサボテンの関係を調査したD. E. Gurvichらの2014年の論文、『Diversity and composion of cactus species alnong an altitudinal gradient in the Sierras del Norte Mountains (Cordoba. Argentina)』です。早速見てみましょう。
アルゼンチンのコルドバ州のSierras del Norte山脈のサボテンの豊富さと組み合わせを明らかにすることを目的としています。標高203〜970mの55点において調査し、8属24種のサボテンが確認されました。11種類が球状、5種類が短い柱状、3種類は柱状、5種類はウチワサボテン型でした。最も頻繁に見つかったのは、81%で見つかったOpuntia sulphurea(ウチワサボテン型)と、56%で見つかったGymnocalycium erinaceum(球状)でした。1箇所でのみ見つかったのは、外来種のOpuntia ficus-indica(ウチワサボテン型)でした。次に少なかったのは、2箇所で見つかったGymnocalycium robustum(球状)、Opuntia salmiana(ウチワサボテン型)、Cereus aethiops(短い柱状)でした。
ギムノカリキウムの6種、Gymnocalycium bruchii、Gymnocalycium monvillei、Gymnocalycium erinaceum、Gymnocalycium mostii、Gymnocalycium robustum、Gymnocalycium quehlianumはコルドバの固有種であり、そのうちG. erinaceumとG. robustumはこの調査地点に固有です。
注 ) 柱状のサボテンとは、論文では「Arborescent」、つまりは「樹木状」となっています。これは、背が高くなって枝分かれする柱サボテン状の育ち方のサボテンのことです。「樹木状」と訳してしまうと、コノハサボテンと間違う可能性があるため「柱状」としました。ここで、「柱サボテン」と訳さなかったのは、「Arborescent」にはウチワサボテンであるOpuntia quimiloを含んでいたからです。ちなみに、「ウチワサボテン型」というのも、「ウチワサボテンのような」という意味ですから、O. quimiloを除外しています。
柱状のサボテン以外は全体的に1種類は確認されましたかが、柱状のサボテンは600m以上の標高には分布しませんでした。球状のサボテンでは、G. erinaceumは広い範囲の標高に分布しましたが、G. bruchii、Parodia erinacea、G. monvilleiは狭い範囲の標高に分布しました。ウチワサボテン型のサボテンは標高との関連は見られませんでした。
高い標高に特徴的なサボテンはすべて球状で、G. monvillei、G. bruchii、P. erinaceaでした。対する低地には、Stetsonia coryne(柱状)、Cleistocactus baumannii(短い柱状)、G. schickendantzii(球状)がよく見られました。
種の豊富さは、調査地点により1〜11種類と変化があり、平均5種類が観察されました。傾向としては、標高が高いほど全体の種類は減少し、柱状および短い柱状のサボテンは標高が低いほど豊富でした。
標高により形態が単調になるのはすでに報告がありますが、この研究では柱状および短い柱状の種類の減少として見られます。この結果は、形態が低温に異なる反応を示すことを示します。背が高い柱状のサボテンは、より低温に影響されます。球状のサボテンは背が低いことが低温に耐えられる要因かも知れません。球状のサボテンは低温に耐性があるものの、その特徴は暖かい環境では優位にはならないということです。著者らは、これらの標高と植生の関連を、主に低温に由来すると考えています。しかし、一般に標高が上がるとより乾燥する傾向があります。種子の発芽などを考慮するならば、標高と乾燥の関係性も調査する必要を感じているそうです。
以上が論文の簡単な要因となります。
サボテンも標高により遷移があるということが明らかになりました。この論文は調査地がアルゼンチンのSierrar del Norte山脈でしたが、他の地域ではどうでしょうか? サボテンの構成や環境が異なると違いはあるのか、あるいはサボテン以外の多肉植物ではどうかと、興味が尽きない話題かも知れません。
さて、論文では24種類のサボテンを4つの形態に分類して分析していました。一応、それらを一覧で示すことにします。
①球状のサボテン(Globose)
Echinopsis aurea
Echinopsis spiniflora
Gymnocalycium bruchii
Gymnocalycium erinaceum
Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium mostii
Gymnocalycium quehlianum
Gymnocalycium robustrum
Gymnocalycium schickendantzii
Parodia erinacea
Parodia mammulosa
②短い柱状のサボテン(short columnar)
Cereus aethiops
Cleistocactus baumannii
Echinopsis candicans
Echinopsis leucantha
Harrisia pamanensis
③柱状のサボテン(Arborescent)
Cereus hankeanus
Stetsonia coryne
Opuntia quimilo
④ウチワサボテン型のサボテン(Opuntioid)
Opuntia anacantha
Opuntia elata
Opuntia ficus-indica
Opuntia salmiana
Opuntia sulphurea
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という訳で、本日は標高の違いとサボテンの関係を調査したD. E. Gurvichらの2014年の論文、『Diversity and composion of cactus species alnong an altitudinal gradient in the Sierras del Norte Mountains (Cordoba. Argentina)』です。早速見てみましょう。
アルゼンチンのコルドバ州のSierras del Norte山脈のサボテンの豊富さと組み合わせを明らかにすることを目的としています。標高203〜970mの55点において調査し、8属24種のサボテンが確認されました。11種類が球状、5種類が短い柱状、3種類は柱状、5種類はウチワサボテン型でした。最も頻繁に見つかったのは、81%で見つかったOpuntia sulphurea(ウチワサボテン型)と、56%で見つかったGymnocalycium erinaceum(球状)でした。1箇所でのみ見つかったのは、外来種のOpuntia ficus-indica(ウチワサボテン型)でした。次に少なかったのは、2箇所で見つかったGymnocalycium robustum(球状)、Opuntia salmiana(ウチワサボテン型)、Cereus aethiops(短い柱状)でした。
ギムノカリキウムの6種、Gymnocalycium bruchii、Gymnocalycium monvillei、Gymnocalycium erinaceum、Gymnocalycium mostii、Gymnocalycium robustum、Gymnocalycium quehlianumはコルドバの固有種であり、そのうちG. erinaceumとG. robustumはこの調査地点に固有です。
注 ) 柱状のサボテンとは、論文では「Arborescent」、つまりは「樹木状」となっています。これは、背が高くなって枝分かれする柱サボテン状の育ち方のサボテンのことです。「樹木状」と訳してしまうと、コノハサボテンと間違う可能性があるため「柱状」としました。ここで、「柱サボテン」と訳さなかったのは、「Arborescent」にはウチワサボテンであるOpuntia quimiloを含んでいたからです。ちなみに、「ウチワサボテン型」というのも、「ウチワサボテンのような」という意味ですから、O. quimiloを除外しています。
柱状のサボテン以外は全体的に1種類は確認されましたかが、柱状のサボテンは600m以上の標高には分布しませんでした。球状のサボテンでは、G. erinaceumは広い範囲の標高に分布しましたが、G. bruchii、Parodia erinacea、G. monvilleiは狭い範囲の標高に分布しました。ウチワサボテン型のサボテンは標高との関連は見られませんでした。
高い標高に特徴的なサボテンはすべて球状で、G. monvillei、G. bruchii、P. erinaceaでした。対する低地には、Stetsonia coryne(柱状)、Cleistocactus baumannii(短い柱状)、G. schickendantzii(球状)がよく見られました。
種の豊富さは、調査地点により1〜11種類と変化があり、平均5種類が観察されました。傾向としては、標高が高いほど全体の種類は減少し、柱状および短い柱状のサボテンは標高が低いほど豊富でした。
標高により形態が単調になるのはすでに報告がありますが、この研究では柱状および短い柱状の種類の減少として見られます。この結果は、形態が低温に異なる反応を示すことを示します。背が高い柱状のサボテンは、より低温に影響されます。球状のサボテンは背が低いことが低温に耐えられる要因かも知れません。球状のサボテンは低温に耐性があるものの、その特徴は暖かい環境では優位にはならないということです。著者らは、これらの標高と植生の関連を、主に低温に由来すると考えています。しかし、一般に標高が上がるとより乾燥する傾向があります。種子の発芽などを考慮するならば、標高と乾燥の関係性も調査する必要を感じているそうです。
以上が論文の簡単な要因となります。
サボテンも標高により遷移があるということが明らかになりました。この論文は調査地がアルゼンチンのSierrar del Norte山脈でしたが、他の地域ではどうでしょうか? サボテンの構成や環境が異なると違いはあるのか、あるいはサボテン以外の多肉植物ではどうかと、興味が尽きない話題かも知れません。
さて、論文では24種類のサボテンを4つの形態に分類して分析していました。一応、それらを一覧で示すことにします。
①球状のサボテン(Globose)
Echinopsis aurea
Echinopsis spiniflora
Gymnocalycium bruchii
Gymnocalycium erinaceum
Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium mostii
Gymnocalycium quehlianum
Gymnocalycium robustrum
Gymnocalycium schickendantzii
Parodia erinacea
Parodia mammulosa
②短い柱状のサボテン(short columnar)
Cereus aethiops
Cleistocactus baumannii
Echinopsis candicans
Echinopsis leucantha
Harrisia pamanensis
③柱状のサボテン(Arborescent)
Cereus hankeanus
Stetsonia coryne
Opuntia quimilo
④ウチワサボテン型のサボテン(Opuntioid)
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