本日は小ネタです。『Southern African Journal of Botany』という学術誌に、研究の要約が掲載されていました。今回は、南アフリカの花の受粉に関する2つの記事をご紹介します。記事のタイトルにあるポリネーターとは、花の花粉を運ぶもの、つまりは花粉媒介者のことを指します。
1本目は、アフリカで花の蜜を吸うことに特化した鳥であるタイヨウチョウの、花の色に対する好みを調査したA. Heystekらの2013年の記事、「Flower color preference of sunbird pollinators」です。
植物が別種に進化する際、花色などに変異が生じる可能性がありますが、花粉媒介者の好みにより新たなタイプが維持されるかが決定されるのかも知れません。花色の多型はフィンボスのEricaで頻繁に生じ、Orange-breasted Sunbird(Anthobaphes violacea)による採蜜により受粉します。調査では白とピンク色の二色性の花を咲かせるErica perspicuaを観察し、花を訪れるタイヨウチョウを記録しました。タイヨウチョウは花から隣の花へ移動しながら採蜜しますが、色ではなく距離が近い花へ移動し採蜜しました。花色を考慮しないのであれば、二色性の花の多型が維持される可能性は低くなります。しかし、タイヨウチョウが最初に選ぶ花は87%がピンク色の花でした。タイヨウチョウが訪れた花の受粉率は花色で違いはありませんでした。
以上が記事の内容ですが、タイヨウチョウはアロエやガステリアの受粉に関与するため、私も気になる存在でした。記事を読んだ感想としては、おそらくはタイヨウチョウには花色に対する好みがあるのでしょう。しかし、それよりも少ない移動距離で効率的に採蜜する行動が優先された結果として、タイヨウチョウの持つ花色に対する好みがマスクされてしまった可能性があります。
2本目は、養蜂が鳥媒花に及ぼす影響を調査したS. Geerts & A. Pauwの2009年の記事、『Does farming with native honeybee affect bird pollination in Cape fynbos?』です。
飼育されたミツバチは、自然環境の在来植物や花粉媒介者に悪影響を及ぼすことが知られています。野外の自然環境下で養蜂の影響がテストされた研究はありませんが、養蜂により環境中のミツバチが自然な数より多くなり過剰になる可能性があります。記事ではミツバチの巣箱を南アフリカのフィンボス地域に設置し、野生のヤマモガシ科植物を対象に観察しました。主に蜜が利用出来るのか、採蜜する鳥の数、鳥の多様性、ミツバチの豊富さを、巣箱の設置前後で比較しました。結果として、環境中のミツバチの数を増やすことは出来ましたが、蜜の利用可能性、鳥の個体数、鳥の多様性に変化はありませんでした。ミツバチの密度が高い場所では、サトウガラという鳥は減少しましたが、単なる傾向であり重要なものとは見なされません。ヤマモガシ科植物の豊富な蜜は、資源をめぐる競争の可能性を排除するようです。ミツバチが影響を与える場合は、蜜の量が制限されるような環境が考えられます。よって、ミツバチが環境中に増えたとしても、ヤマモガシ科植物とその蜜を食べる鳥には悪影響はないと結論づけます。
以上が記事の内容となります。ミツバチは花の受粉にとって重要なことは知っていましたが、競合する採蜜者に影響を及ぼす可能性をすっかり失念していました。確かにミツバチが増えて蜜を独占してしまえば、競合に負ける花粉媒介者が現れるでしょう。しかし、その場合に、競争相手として想定されるのは、同じ採蜜性の在来のハチでしょう。移動距離から考えても、鳥の方が範囲が広く、花がないなら容易に他の地域に移動してしまいます。また、蜜が豊富ヤマモガシ科植物ではなく、蜜に制限がある小型〜中型の花ではどうでしょうか? より影響が強く出るのような気がします。少し気になることもあります。それは、採蜜=受粉ではないということです。動物が蜜を求めて花を訪れたとしても、雄しべや雌しべに訪蜜者が触れなければ受粉は起こらない訳で、植物からすればただの蜜泥棒ということになります。記事にあるヤマモガシ科植物はミツバチにより受粉しているのでしょうか? 気になることが沢山ありますね。
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1本目は、アフリカで花の蜜を吸うことに特化した鳥であるタイヨウチョウの、花の色に対する好みを調査したA. Heystekらの2013年の記事、「Flower color preference of sunbird pollinators」です。
植物が別種に進化する際、花色などに変異が生じる可能性がありますが、花粉媒介者の好みにより新たなタイプが維持されるかが決定されるのかも知れません。花色の多型はフィンボスのEricaで頻繁に生じ、Orange-breasted Sunbird(Anthobaphes violacea)による採蜜により受粉します。調査では白とピンク色の二色性の花を咲かせるErica perspicuaを観察し、花を訪れるタイヨウチョウを記録しました。タイヨウチョウは花から隣の花へ移動しながら採蜜しますが、色ではなく距離が近い花へ移動し採蜜しました。花色を考慮しないのであれば、二色性の花の多型が維持される可能性は低くなります。しかし、タイヨウチョウが最初に選ぶ花は87%がピンク色の花でした。タイヨウチョウが訪れた花の受粉率は花色で違いはありませんでした。
以上が記事の内容ですが、タイヨウチョウはアロエやガステリアの受粉に関与するため、私も気になる存在でした。記事を読んだ感想としては、おそらくはタイヨウチョウには花色に対する好みがあるのでしょう。しかし、それよりも少ない移動距離で効率的に採蜜する行動が優先された結果として、タイヨウチョウの持つ花色に対する好みがマスクされてしまった可能性があります。
2本目は、養蜂が鳥媒花に及ぼす影響を調査したS. Geerts & A. Pauwの2009年の記事、『Does farming with native honeybee affect bird pollination in Cape fynbos?』です。
飼育されたミツバチは、自然環境の在来植物や花粉媒介者に悪影響を及ぼすことが知られています。野外の自然環境下で養蜂の影響がテストされた研究はありませんが、養蜂により環境中のミツバチが自然な数より多くなり過剰になる可能性があります。記事ではミツバチの巣箱を南アフリカのフィンボス地域に設置し、野生のヤマモガシ科植物を対象に観察しました。主に蜜が利用出来るのか、採蜜する鳥の数、鳥の多様性、ミツバチの豊富さを、巣箱の設置前後で比較しました。結果として、環境中のミツバチの数を増やすことは出来ましたが、蜜の利用可能性、鳥の個体数、鳥の多様性に変化はありませんでした。ミツバチの密度が高い場所では、サトウガラという鳥は減少しましたが、単なる傾向であり重要なものとは見なされません。ヤマモガシ科植物の豊富な蜜は、資源をめぐる競争の可能性を排除するようです。ミツバチが影響を与える場合は、蜜の量が制限されるような環境が考えられます。よって、ミツバチが環境中に増えたとしても、ヤマモガシ科植物とその蜜を食べる鳥には悪影響はないと結論づけます。
以上が記事の内容となります。ミツバチは花の受粉にとって重要なことは知っていましたが、競合する採蜜者に影響を及ぼす可能性をすっかり失念していました。確かにミツバチが増えて蜜を独占してしまえば、競合に負ける花粉媒介者が現れるでしょう。しかし、その場合に、競争相手として想定されるのは、同じ採蜜性の在来のハチでしょう。移動距離から考えても、鳥の方が範囲が広く、花がないなら容易に他の地域に移動してしまいます。また、蜜が豊富ヤマモガシ科植物ではなく、蜜に制限がある小型〜中型の花ではどうでしょうか? より影響が強く出るのような気がします。少し気になることもあります。それは、採蜜=受粉ではないということです。動物が蜜を求めて花を訪れたとしても、雄しべや雌しべに訪蜜者が触れなければ受粉は起こらない訳で、植物からすればただの蜜泥棒ということになります。記事にあるヤマモガシ科植物はミツバチにより受粉しているのでしょうか? 気になることが沢山ありますね。
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