多肉植物は言うまでもなく乾燥地に適応した植物です。大抵は水分を貯蔵することが出来る塊根や塊茎、あるいはサボテンのように植物全体で水分を貯めるものもあります。また、夜間に二酸化炭素を吸収するC4植物やCAM植物も、乾燥に対抗する手段の1つでしょう。さて、そんな多肉植物は乾燥に適応したことにより、非常に多様化したのだと言われているようそうです。それは果たして本当なのかを論証したJamie Thompsonらの2023年の論文、『Did succulent diversify in response to aridity? Evolutionary analyses of major succulent lineages around the world』を見てみましょう。

多肉植物は様々な分類群からなり、一見似ていてもお互いに近縁という訳ではありません。乾燥に適応するために結果として似たような姿となっただけです。これを収斂進化と言います。また、多肉植物は同じ分類群の中で、繰り返し独立に進化してきました。
約29万種の被子植物のうち、約12500種、あるいは推定3〜5%が多肉植物とみなされています。多肉植物は83科690属に分布します。多肉植物の分類群のいくつかは、植物の中でも最も高い多様化率を示すものもあり、急激に多様化していると考えられています。代表的な多肉植物は、ハマミズナ科(Aizoaceae、メセン科、マツバギク科、ツルナ科)2200種類以上、リュウゼツラン科(Agavaceae)300種類以上、ツルボラン亜科(Alooideae、=アロエの仲間)700種類以上、ガガイモ科(Asclepiadoideae)2900種類以上、サボテン科(Cactaceae)1500種類以上、ベンケイソウ科(Crassulaceae)1500種類以上、トウダイグサ属(Euphorbia)2000種類以上が含まれ、非常に多様化していることが分かります。しかし、1属1種の単型科のHalophytaceaeや13種類からなるMoringaceaeなどのように、必ずしも多肉植物が多様化する訳ではありません。

環境の乾燥化により多様化したと考えられる多肉植物ですが、いつ乾燥化したのかを知るための古代の気候の信頼性の高い情報や、多肉植物の化石の欠如により、仮説を検証することは困難とされてきました。そこで、著者らは多肉植物の7つの分類群の進化をシミュレーションし、多肉植物化した時期を推定します。単系統のグループと、複数の多肉植物群を含むグループを比較し、多肉植物が多様化を促進するかを評価します。また、中新世に大気中の二酸化炭素が減少したという仮説がありますが、この仮説が多肉植物のCAM植物化と関係するかを評価しました。

二酸化炭素濃度と各多肉植物の分類群の系統発生をシミュレーションにより評価したところ、必ずしも二酸化炭素濃度が多肉植物の進化と関係しているとは限らないことが明らかとなりました。しかし、個別に見ていくと、ガガイモ科は二酸化炭素濃度の変化により種分化しており、トウダイグサ属は種分化と絶滅が両方起きるパターンを示しました。さて、地球上で二酸化炭素が減少したのは約1500万年前までと考えられていますが、この時代に多様化のブレイク・ポイントを持つのは、ガガイモ科とトウダイグサ属でした。ガガイモ科は1500万年前から急激に種分化し、ユーフォルビア属はやや減少しました。
最も初期の種分化の促進は、始新世(5600万年前〜3390万年前)でベンケイソウ科とユーフォルビア属で回復します。漸新世(3390万年前〜2300万年前)にはハマミズナ科、サボテン科、ユーフォルビア属が回復します。中新世(2300万年前〜530万年前)ではすべてのグループで回復します。鮮新世(530万年前〜260万年前)ではリュウゼツラン科以外が回復します。更新世(260万年前〜1万1700年前)では、ガガイモ科とサボテン科のみが回復しました。計算上では中新世に多肉植物のグループの3分の2が誕生しています。


シミュレーションによると、乾燥化により多肉植物の種分化は促進されていました。強い乾燥レベルではリュウゼツラン科、ツルボラン亜科、一部のトウダイグサ属が種分化し、弱い乾燥化レベルではガガイモ科、サボテン科、残りのトウダイグサ属が種分化しました。
サボテン科とツルボラン亜科では多肉植物のグループの方が圧倒的に豊富でした。トウダイグサ属以外は、乾燥化により急激に種分化し多様化したと考えられます。トウダイグサ属はグループ内で複数回の多肉植物化が起きているようです。リュウゼツラン科とガガイモ科は乾燥化により急激に多様化し絶滅率が低いことが特徴です。ハマミズナ科は多肉植物化により種分化が促進されていませんが、多肉植物化した種の絶滅は少ないようです。ベンケイソウ科は多肉植物化することにより絶滅率は高くなったものの、不釣り合いなほど種分化は急速でした。


以上が論文の簡単な要約となります。
いくつかの多肉植物の分類群について、シミュレーションにより種分化を推定しました。しかし、これは現在あるデータから推測されたものですから、データが増えれば変わりうる一時的なものかも知れません。論文にあるグラフを示していないので分かりにくいとは思いますが、要するに仮説はまあ大体当てはまる傾向はあるみたいです。まだ説明がつかないことも沢山あるみたいですから、今後の進展に期待します。


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