トウダイグサ属(Euphorbia)は、最も種数が多い属の1つとされ、基本的に毒性のある乳液があります。種類によっては、皮膚に乳液がつくと激しい炎症を引き起こしたり、目に入ると失明する可能性があると言われています。一般的に植物の毒は草食動物に対する防御策であることが知られていますが、ユーフォルビアはどうでしょうか? 植物が毒を持つと、動物も毒に耐性を持ったものが現れ、さらに異なる毒を植物が産生するようなりに、その毒に対して動物が…、という風に植物と動物で終わりのない軍拡競争が行われます。では、ユーフォルビアの毒性はそのような軍拡競争の末の産物なのでしょうか?
調べてみたところ、M. Ernstらの2018年の論文、『Did a plant-herbivore arms race drive chemical diversity in Euphorbia?』を見つけました。タイトルはズバリ、「植物と草食動物の軍拡競争はユーフォルビアの化学的多様性を促進しましたか?」です。植物と草食動物の軍拡競争により、ユーフォルビアの毒の種類が多様になったのかを検証しています。
ユーフォルビアは約2000種あり、約4800万年前にアフリカで発生したと考えられています。3000万年前と2500万年前の2回に渡り、世界中に分散しアメリカ大陸まで分散が拡大しました。ユーフォルビアの毒は多環ジテルペノイド類によります。論文では43種類のユーフォルビアの遺伝的多様性、分布、毒の成分を調査しています。
ユーフォルビアは、旧世界のユーフォルビア亜属(subgenus Euphorbia)、アティマルス亜属(subgenus Athymalus)、エスラ亜属(subgenus Esula)と、主に新世界のカマエシケ亜属(subgenus Chamaesyce)からなります。
ユーフォルビア亜属は、南アフリカやマダガスカルに分布し、柱サボテン状になるE. cooperiやE. grandicornisのように巨大に育つもの、マダガスカルの花キリン類、飛竜などの塊根性のもの、旧・モナデニウムなどがあります。また、一部は南米原産のものもあります。
アティマルス亜属は南アフリカや西アフリカ、アラビア半島の一部に分布し、E. obesaやE. polygona var. horrida、鉄甲丸(E. bupleurifolia)、群生する笹蟹丸(E. pulvinata)、E. gorgonisなどのタコものなど、よく園芸店で見かけるユーフォルビアが沢山含まれます。
エスラ亜属はヨーロッパ原産のカラフルなカラーリーフとして最近良く目にしますが、アジアにも広く分布します。
カマエシケ亜属は主に南北アメリカの原産です。
さて、当然ながら旧世界から新世界へユーフォルビアは分布を拡大したと考えられますが、4亜属をそれぞれ10種類前後を調べたところ、新世界に分布するカマエシケ亜属のユーフォルビアは含まれる毒性成分が少なく種類も貧弱でした。これは、旧世界にはユーフォルビアを食害する蛾がいますが、新世界にはいないからかも知れません。このHyles属の蛾の幼虫は、ユーフォルビアに特化しています。しかし、南アフリカとマダガスカルでは、Hyles属の蛾がいない地域でも、ユーフォルビア亜属やアティマルス亜属の植物は毒性が高いことが明らかになっています。これは、過去に存在した外敵に対するものだったのかも知れません。例えば、クロサイはユーフォルビア亜属のユーフォルビアを広く食べることが知られています。
以上が論文の簡単な要約となります。
おそらくは、現在のユーフォルビアの毒性は、食害する外敵との軍拡競争の結果としてもたらされた産物なのでしょう。しかし、新世界に渡ったユーフォルビアには、もはや軍拡競争の相手がいないため、毒性がマイルドになっていったのでしょう。
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ユーフォルビアは約2000種あり、約4800万年前にアフリカで発生したと考えられています。3000万年前と2500万年前の2回に渡り、世界中に分散しアメリカ大陸まで分散が拡大しました。ユーフォルビアの毒は多環ジテルペノイド類によります。論文では43種類のユーフォルビアの遺伝的多様性、分布、毒の成分を調査しています。
ユーフォルビアは、旧世界のユーフォルビア亜属(subgenus Euphorbia)、アティマルス亜属(subgenus Athymalus)、エスラ亜属(subgenus Esula)と、主に新世界のカマエシケ亜属(subgenus Chamaesyce)からなります。
ユーフォルビア亜属は、南アフリカやマダガスカルに分布し、柱サボテン状になるE. cooperiやE. grandicornisのように巨大に育つもの、マダガスカルの花キリン類、飛竜などの塊根性のもの、旧・モナデニウムなどがあります。また、一部は南米原産のものもあります。
アティマルス亜属は南アフリカや西アフリカ、アラビア半島の一部に分布し、E. obesaやE. polygona var. horrida、鉄甲丸(E. bupleurifolia)、群生する笹蟹丸(E. pulvinata)、E. gorgonisなどのタコものなど、よく園芸店で見かけるユーフォルビアが沢山含まれます。
エスラ亜属はヨーロッパ原産のカラフルなカラーリーフとして最近良く目にしますが、アジアにも広く分布します。
カマエシケ亜属は主に南北アメリカの原産です。
さて、当然ながら旧世界から新世界へユーフォルビアは分布を拡大したと考えられますが、4亜属をそれぞれ10種類前後を調べたところ、新世界に分布するカマエシケ亜属のユーフォルビアは含まれる毒性成分が少なく種類も貧弱でした。これは、旧世界にはユーフォルビアを食害する蛾がいますが、新世界にはいないからかも知れません。このHyles属の蛾の幼虫は、ユーフォルビアに特化しています。しかし、南アフリカとマダガスカルでは、Hyles属の蛾がいない地域でも、ユーフォルビア亜属やアティマルス亜属の植物は毒性が高いことが明らかになっています。これは、過去に存在した外敵に対するものだったのかも知れません。例えば、クロサイはユーフォルビア亜属のユーフォルビアを広く食べることが知られています。
以上が論文の簡単な要約となります。
おそらくは、現在のユーフォルビアの毒性は、食害する外敵との軍拡競争の結果としてもたらされた産物なのでしょう。しかし、新世界に渡ったユーフォルビアには、もはや軍拡競争の相手がいないため、毒性がマイルドになっていったのでしょう。
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