先日、ワシントン条約で国際取り引きが規制されているアロエについての記事を書きました。もっとも厳しく規制される附属書Iに記載されたアロエはマダガスカル原産のものばかりです。何故なのでしょうか?
CITES2018のアロエ属についての記事はこちら。
調べたところ、2014年と少し古いのですが、マダガスカルのアロエの保全状況を評価した、Solofo E. Rakotoarisoa, Ronell R. Klopper & Gideon F. Smithの論文、『A preliminary assessment of the conservation status of the genus Aloe L. in Mdagascar』です。早速、見てみましょう。
マダガスカル島には128種類のアロエが自生しますが、すべて固有種であり限られた狭い分布と個体数が少ないことが特徴です。マダガスカルのアロエは、環境破壊と人間の活動の影響を受けやすいとされますが、その保全状況は良く分かっていませんでした。様々な情報を収集し分析すると、マダガスカルのアロエの約39%が何かしらの理由で脅かされており、懸念が少ないのは4%に過ぎませんでした。しかし、最大の問題は、マダガスカルのアロエの約50%は情報が乏しく評価出来ませんでした。つまり、マダガスカルのアロエの半数について、どれだけの種が絶滅の危機に瀕しているのか不明なのです。状況は考えられているよりも悪い可能性もあるのです。
幾つかの種類を除いて、マダガスカルのアロエの分布は非常に狭いことから、山火事や違法採取に対して脆弱です。ちなみに、マダガスカルからの園芸用植物輸出の86%はアロエです。
CITES2014の附属書Iに記載されている21種類のうち、17種類はマダガスカル原産です。その他のアロエも附属書IIに記載されています。また、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックに記載されているマダガスカルのアロエは、Aloe suzannaeとAloe helenaeで、ともに絶滅危惧種です。しかし、マダガスカルのアロエの保全状況が不明なため、完全なものとは言えません。
それでは、実際のマダガスカルのアロエの保全状況を見てみましょう。ここでは、保全状況を7つに分類しています。危機の度合いは①が高く⑥が低いという並びです。ここに名前がないマダガスカルのアロエは⑦の情報不足に入ります。
①絶滅種(EW)
1, A. oligophylla
2, A. schilliana
3, A. silicicola
②絶滅危惧IA類(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の可能性が極めて高いもの。
1, A. acutissima v. fiherenensis
2, A. calcairophila
3, A. descoingsii
4, A. fragilis
5, A. guillaumetii
6, A. helenae
7, A. hoffmannii
8, A. ivakoanyensis
9, A. mandotoensis
10, A. millotii
11, A. mitsioana
12, A. orientalis
13, A. suzannae
14, A. virgineae
③絶滅危惧IB類(EN)
絶滅の可能性が高いもの。
1, A. andringitrensis
2, A. antonii
3, A. antsingyensis
4, A. betsileensis
5, A. capitata v. angavoana
6, A. capitata v. capitata
7, A. capitata v. silvicola
8, A. cipolinicola
9, A. conifera
10, A. delicatifolia
11, A. deltoideodonta v. brevifolia
12, A. deltoideodonta v. intermedia
13, A. edouardii
14, A. erythrophylla
15, A. fievetii
16, A. gneissicola
17, A. isaloensis
18, A. laeta
19, A. leandrii
20, A. newtonii
21, A. parallelifolia
22, A. parvula
23, A. rauhii
24, A. rosea
25, A. sakarahensis
26, A. schomeri
27, suarezensis
28, A. trachyticola
29, A. versicolor
30, A. viguieri
④絶滅危惧II類(VU)
絶滅の危機が増大しているもの。
1, A. acutissima v. acutissima
(ssp. acutissima)
2, A. acutissima v. antanimorensis
3, A. analavelonensis
4, A. bellatula
5, A. compressa
6, A. deltoideodonta v. candicans
7, A. haworthioides
8, A. ibitiensis
9, A. madecassa
10, A. perrieri
11, A. vaotsanda
⑤準絶滅危惧(NT)
現在は絶滅の可能性は少ないが、生息状況の変化によっては絶滅危惧種に移行する可能性があるもの。
1, A. antandroi
2, A. bakeri
3, A. bulbillifera
4, A. capitata v. quartziticola
5, A. deltoideodonta v. deltoideodonta
6, A. macroclada
7, A. socialis
⑥低危険種(LC)
絶滅の懸念は少ない。
1, A. beankaensis
2, A. divaricata ssp. divaricata
3, A. divaricata ssp. vaotsohy
4, A. imalatensis
5, A. occidentalis
6, A. vaombe
⑦情報不足(DD)
評価するための情報がないか少ない。
以上が論文の簡単な要約です。さて、見てお分かりのように、絶滅の可能性がある種がほとんどで、絶滅の懸念が少ない低危険種はたった6種類に過ぎません。マダガスカルのアロエの危機的状況が分かります。しかし、一番の問題は情報不足が半数種に及ぶことです。情報のない種はすでに絶滅、あるいはこの瞬間にも絶滅しかけているかもしれないのです。もし、保全をするにせよ、現在のアロエの詳しい情報が必要です。調査は急務でしょう。
問題はまだあります。マダガスカルのアロエは生息地が非常に狭いため、開発などにより一気に絶滅してしまう可能性があるということです。例えば、2014年のこの論文では、Aloe bakeriは準絶滅危惧種であり、現在は絶滅の可能性は少ないとされています。しかし、2010年のCastillonの報告によると、港湾や空港開発のためにAloe bakeriの分布する岩場が切り出されてしまい、すでに絶滅していたというのです。キュー王立植物園のデータベースでも絶滅したことが示されています。このように、マダガスカルではそれほど危機になかったアロエでも、一瞬で絶滅に追いやられてしまいます。正確な調査と保全が実施されることが望ましいのですが、口で言うほど簡単ではないでしょう。知らない間に、沢山のアロエが絶滅していたなんてことならなければいいのですがね。
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調べたところ、2014年と少し古いのですが、マダガスカルのアロエの保全状況を評価した、Solofo E. Rakotoarisoa, Ronell R. Klopper & Gideon F. Smithの論文、『A preliminary assessment of the conservation status of the genus Aloe L. in Mdagascar』です。早速、見てみましょう。
マダガスカル島には128種類のアロエが自生しますが、すべて固有種であり限られた狭い分布と個体数が少ないことが特徴です。マダガスカルのアロエは、環境破壊と人間の活動の影響を受けやすいとされますが、その保全状況は良く分かっていませんでした。様々な情報を収集し分析すると、マダガスカルのアロエの約39%が何かしらの理由で脅かされており、懸念が少ないのは4%に過ぎませんでした。しかし、最大の問題は、マダガスカルのアロエの約50%は情報が乏しく評価出来ませんでした。つまり、マダガスカルのアロエの半数について、どれだけの種が絶滅の危機に瀕しているのか不明なのです。状況は考えられているよりも悪い可能性もあるのです。
幾つかの種類を除いて、マダガスカルのアロエの分布は非常に狭いことから、山火事や違法採取に対して脆弱です。ちなみに、マダガスカルからの園芸用植物輸出の86%はアロエです。
CITES2014の附属書Iに記載されている21種類のうち、17種類はマダガスカル原産です。その他のアロエも附属書IIに記載されています。また、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックに記載されているマダガスカルのアロエは、Aloe suzannaeとAloe helenaeで、ともに絶滅危惧種です。しかし、マダガスカルのアロエの保全状況が不明なため、完全なものとは言えません。
それでは、実際のマダガスカルのアロエの保全状況を見てみましょう。ここでは、保全状況を7つに分類しています。危機の度合いは①が高く⑥が低いという並びです。ここに名前がないマダガスカルのアロエは⑦の情報不足に入ります。
①絶滅種(EW)
1, A. oligophylla
2, A. schilliana
3, A. silicicola
②絶滅危惧IA類(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の可能性が極めて高いもの。
1, A. acutissima v. fiherenensis
2, A. calcairophila
3, A. descoingsii
4, A. fragilis
5, A. guillaumetii
6, A. helenae
7, A. hoffmannii
8, A. ivakoanyensis
9, A. mandotoensis
10, A. millotii
11, A. mitsioana
12, A. orientalis
13, A. suzannae
14, A. virgineae
③絶滅危惧IB類(EN)
絶滅の可能性が高いもの。
1, A. andringitrensis
2, A. antonii
3, A. antsingyensis
4, A. betsileensis
5, A. capitata v. angavoana
6, A. capitata v. capitata
7, A. capitata v. silvicola
8, A. cipolinicola
9, A. conifera
10, A. delicatifolia
11, A. deltoideodonta v. brevifolia
12, A. deltoideodonta v. intermedia
13, A. edouardii
14, A. erythrophylla
15, A. fievetii
16, A. gneissicola
17, A. isaloensis
18, A. laeta
19, A. leandrii
20, A. newtonii
21, A. parallelifolia
22, A. parvula
23, A. rauhii
24, A. rosea
25, A. sakarahensis
26, A. schomeri
27, suarezensis
28, A. trachyticola
29, A. versicolor
30, A. viguieri
④絶滅危惧II類(VU)
絶滅の危機が増大しているもの。
1, A. acutissima v. acutissima
(ssp. acutissima)
2, A. acutissima v. antanimorensis
3, A. analavelonensis
4, A. bellatula
5, A. compressa
6, A. deltoideodonta v. candicans
7, A. haworthioides
8, A. ibitiensis
9, A. madecassa
10, A. perrieri
11, A. vaotsanda
⑤準絶滅危惧(NT)
現在は絶滅の可能性は少ないが、生息状況の変化によっては絶滅危惧種に移行する可能性があるもの。
1, A. antandroi
2, A. bakeri
3, A. bulbillifera
4, A. capitata v. quartziticola
5, A. deltoideodonta v. deltoideodonta
6, A. macroclada
7, A. socialis
⑥低危険種(LC)
絶滅の懸念は少ない。
1, A. beankaensis
2, A. divaricata ssp. divaricata
3, A. divaricata ssp. vaotsohy
4, A. imalatensis
5, A. occidentalis
6, A. vaombe
⑦情報不足(DD)
評価するための情報がないか少ない。
以上が論文の簡単な要約です。さて、見てお分かりのように、絶滅の可能性がある種がほとんどで、絶滅の懸念が少ない低危険種はたった6種類に過ぎません。マダガスカルのアロエの危機的状況が分かります。しかし、一番の問題は情報不足が半数種に及ぶことです。情報のない種はすでに絶滅、あるいはこの瞬間にも絶滅しかけているかもしれないのです。もし、保全をするにせよ、現在のアロエの詳しい情報が必要です。調査は急務でしょう。
問題はまだあります。マダガスカルのアロエは生息地が非常に狭いため、開発などにより一気に絶滅してしまう可能性があるということです。例えば、2014年のこの論文では、Aloe bakeriは準絶滅危惧種であり、現在は絶滅の可能性は少ないとされています。しかし、2010年のCastillonの報告によると、港湾や空港開発のためにAloe bakeriの分布する岩場が切り出されてしまい、すでに絶滅していたというのです。キュー王立植物園のデータベースでも絶滅したことが示されています。このように、マダガスカルではそれほど危機になかったアロエでも、一瞬で絶滅に追いやられてしまいます。正確な調査と保全が実施されることが望ましいのですが、口で言うほど簡単ではないでしょう。知らない間に、沢山のアロエが絶滅していたなんてことならなければいいのですがね。
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