去年の夏に横浜のヨネヤマプランテイションで開催された「多肉植物BIG即売会」で、「パキポディウム・ロスラツム・ドラケイ」を入手しました。
あまり名前を聞かないパキポディウムですが、いったい何者なのでしょうか?

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Pachypodium rosulatum var. drakei

名前はカタカナ表記でしたが、つまりはPachypodium rosulatum var. drakeiということでしょう。しかし、現在var. drakeiは存在しません。まず、ロスラツムから見ていきます。
ロスラツムは1882年に命名されたPachypodium rosulatum Bakerです。2004年にJonas 
Lüthyはパキポディウム属を再構成し、ロスラツムを6亜種に分類しました。以下のものです。
P. rosulatum subsp. rosulatum
P. rosulatum subsp. bemarahense
P. rosulatum subsp. bicolor
P. rosulatum subsp. cactipes
P. rosulatum subsp. gracilius
P. rosulatum subsp. makayense


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Pachypodium rosulatum subsp. rosulatum

2013年に発表された『Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)』という論文では、パキポディウムの遺伝子を解析しています。この論文では、亜種rosulatumと亜種bemarahenseは確かに近縁ですが、他の4亜種はそれほどP. rosulatumに近縁ではなく、むしろP. densiflorumやP. brevicauleのグループと近縁でした。しかし、未だにこの論文の結果がデータベースに反映されてはいません。その理由は分かりませんが、遺伝子解析の精度なのかもしれませんし、あるいはP. densiflorumが複数種に別れる可能性の指摘が解決されていないせいかもしれません。

ところで、まったくvar. drakeiが登場しませんが、それは現在var. drakeiはP. rosulatum subsp. rosulatumと同種とされているからです。注意が必要なのは、var. drakeiはP. rosulatumの異名ではなく、亜種rosulatumの異名であることです。P. rosulatumとはすべての亜種を含んだ総称だからです。
var. drakei自体は、1907年に命名されたPachypodium drakei Costantin & Boisからはじまり、1972年(publ. 1973)にPachypodium rosulatum var. drakei (Costantin & Bois) Markgr.となりました。しかし、最終的には亜種rosulatumの異名とされました。

では、亜種rosulatumと比べてみましょう。上の画像では、亜種rosulatumも変種drakeiも、共に細長い葉を持つことが分かります。亜種rosulatumはそれなりに個体差はあるようです。しかし、変種drakeiの方がより細長い葉を持ち、葉の先端は尖りません。幹は亜種rosulatumは太くずんぐりとしていますが、変種drakeiは縦に細長いことが特徴です。どうやら、私の育てているものだけではなく、亜種drakeiは縦長に育つようです。高さも2~3mになり、P. rosulatum系では非常に大型です。このように、違いはそれなりにありますから、とりあえず名札は変種drakeiのままにしておきます。
パキポディウムは個体差が相当あることを考えたら、var. drakeiはその変異幅に入ってしまうのかもしれません。しかし、亜種bemarahenseがP. rosulatum系であることが遺伝的に解明されているように、変種drakeiが遺伝的にどうなのか気になるところです。今のところ、変種drakeiの遺伝子解析は行われていないようです。残念ながら2013年の論文以来、パキポディウムの遺伝子解析は大々的に行われていないようです。Lüthyの2004年の整理から20年近く経ちますから、そろそろ新しい見解が欲しいところです。


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