去年、五反田TOCビルで開催されたサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Gymnocalycium pseudoquehlianumなるサボテンを入手しました。聞いたことがない名前なので勢いで購入しましたが、後にキュー王立植物園のデータベースで検索しても情報がないため、ずっとモヤモヤしていました。G. pseudoquehlianumとはいったい何者なのでしょうか?
インターネットで検索してもほとんどヒットせず、稀にサボテンの種類のリストが書かれたサイトに名前があるくらいです。要するに、名前以外の情報はありません。育てているものの情報がないと言っている人はいましたが…

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Gymnocalycium pseudoquehlianum

さて、とあるサボテンの名前を羅列しただけの海外のサイトに、気になることが書いてありました。「Gymnocalycium pseudoquehlianum n. n. zit. in Metzing - checklist, 1995」とあります。これはどういう意味でしょうか? 通常は学名の表記は「属名+種小名」、あるいは「属名+種小名+命名者」です。学術誌の場合、「属名+種小名+命名者」に続いて「論文が掲載された学術誌名、号、ページ、発行年」まで表記されます。サボテンのリストは基本的に後者のフルバージョンの記載でした。しかし、G. pseudoquehlianumはその形式に乗っ取っていません。何故なのでしょうか?
取り敢えず分かることは、G. pseudoquehlianumが裸名であることです。それは、学名の後の「n. n.(nom. nud.)」のことですが、学術的に正式な記載がなされていないことを示しています。では後半の「Metzingの1995年のチェックリスト」とは何でしょうか?

色々とあたったところ、どうやら「Allionia」という雑誌の33号、181~228ページに掲載された1995年の論文、『An annotated checklist of the genus Gymnocalycium Pfeiffer ex Mittler (Cactaceae)』を指していることが分かりました。著者はDetlev Metzing, Massimo Meregalli, Roberto Kieslingです。何が書かれているでしょうか?

表題は「ギムノカリキウム属の註釈つきチェックリスト」ですか、様々なギムノカリキウム属の種類について解説しています。肝心のG. pseudoquehlianumですが、末尾の「Catalogue names.」の項目にありました。解説としては「主に貿易リストと名前のリストに登場し、nomina nuda(裸名)です。」とあります。とにかく沢山の名前が羅列されており、個々の解説はありませんでした。要するに、園芸用の名前であり、おそらくは業者が勝手に学名風に命名したのでしょう。裸名の植物は原産地の情報もありませんから、それが未知の種なのか交配種なのかすら不明です。もし、未知の種だとしても、業者の採取ですから元を辿るのは非常に困難です。もし、採取者が判明しても、フィールドナンバー付きの植物とは異なり、いちいち細かい情報を残してはいないでしょう。まあ、密貿易や違法採取が元になっている可能性すらありますから、その場合は情報どころではありませんね。いずれにせよ、何も分からないのです。

今分かることは、おそらくは業者による「pseudoquehlianum」という名前だけです。「pseudo-」とは「偽の」という意味ですから、当然G. quehlianumに似ているということなのでしょう。私の入手したG. pseudoquehlianumはまだ小さいせいか、G. quehlianumにはそれほど似ておらず、特徴もまだはっきりしません。今後の生長を見守っていきます。


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