本日は「金輪際」なる奇妙な名前もあるEuphorbia gorgonisをご紹介します。いわゆる「タコもの」と呼ばれるユーフォルビアの中では普及種ですが、枝が短くタコものの中でも特に奇妙な姿となります。このようなタコものユーフォルビアは、海外では「Medusoid Euphorbia」と呼ばれます。ただ、日本のサイトではどういうわけか、「Medusoid」を「クラゲ」と訳すパターンが多いことが以前から気になっていました。いや、「Medusoid」はギリシャ神話の「メデューサ」から来てるのでは?という当たり前の感想が浮かびました。どうやら、「Medusoid」には確かに「クラゲ」という意味もあるようですが、ギリシャ神話から派生したもので、クラゲが本来の意味ではないでしょう。どうも、機械翻訳では文脈を無視して「クラゲ」と訳してしまいがちなようです。あるサイトによると、ギリシャ神話を訳したらメデューサがペルセウスにより討ち取られた場面が、ペルセウスがクラゲを討ち取ったと訳されてしまったという面白いエピソードが書いてありました。なんか間抜けですね。当然、「gorgonis」とはギリシャ神話のゴルゴン3姉妹から来ているのでしょう。ちなみに、メデューサはゴルゴン3姉妹の3女をさします。

Euphorbia gorgonis A.Berger, 1910
さて、ゴルゴニスの学名は1910年に命名されたEuphorbia gorgonis A.Bergerです。異名はないようです。タコものの中でも特徴的ですからね。ちなみに、A.Bergerは、ドイツの植物学者であるAlwin Bergerのことです。BergerはAgaveの分類で著名なようです。
ゴルゴニスは南アフリカの固有種で、東ケープ州のSunday RiverとZwartkops Riverの間の丘に生えます。Uniondale、Port Elizabeth、Albany Div、Grahamstownあたりのようです。
ゴルゴニスは礫だらけの丘陵に、Boophone disticha、Pachypodium succulentum、Gasteria armstrongii、Bergeranthus glenensis、Freesia alba、Crassula tetragona subsp. acutifoliaなどと共に生えるそうです。冬に乾燥する傾向があり、最低気温は平均12℃です。
2012年のP. V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』によると、E. gorgonisはE. procumbensの異名扱いされています。しかし、現在はE. gorgonisとE. procumbensとは別種とされています。問題はなぜBruynsが異名と考えたのかです。ただE. gorgonisとE. procumbensが似ているという訳ではなさそうです。Bruynsによると種の基準となるタイプ標本が行方不明で、Carter(※1)はBurtt-Davyの標本をタイプ標本として引用していますが、これは存在しないということです。どうやら、Burtt-Davyの採取した植物を基にBergerがE. gorgonisを記載したとしていますが、1910年のBergerの論文ではE. davyiの基になった植物をBurtt-Davyから入手した経緯しか書かれていないといいます。つまり、E. gorgonisはタイプ標本が存在しないため、正確にはどの植物を指しているのか分からないということです。
(※1) 2002年の図鑑、『Illustrated Handbook of Succulent Plants, Dicotyledons』のSusan Carterの論考。
(※2) Burtt-Davyはイギリスの植物学者である、Joseph Burtt-Davyのこと。
では、E. gorgonisが初めて記載された論文を見てみましょう。まだ、Euphorbia gorgonis n. sp.とあります。「nova species」、つまりは新種という意味です。外見はEuphorbia procumbentisとあります。E. procumbentisとありますが、E. procumbensの誤記でしょう。

E. gorgonisの特徴の羅列があり、続いて「同じセクションの別の新種はE. davyiで、最近Paxにより記載されました。(※3)」という文の先に、「この種は、1908年の8月から9月に開花しました。これは、Burtt-Davy教授がPretoria周辺から私に送ってくれたおかげです。」とあります。一見して、後半の文はE. davyiについて言っているように見えます。しかし、そもそもE. gorgonisについての解説ですから、E. davyiについては前半の一文だけで、後半はE. gorgonisについて語っているような気もします。BruynsはE. davyiについての記述と捉え、CarterはE. gorgonisについての記述と捉えました。解釈が難しいところです。
(※3) Euphorbia davyiの命名者はFerdinand Albin Paxではなく、Nicholas Edward Brownが1915年に命名しています。しかし、E. davyi N.E.Br.はこの論文の出版後に命名されています。つまり、Paxの命名したE. davyiとは別種かもしれません。
という訳で、E. gorgonisについて少し調べてみました。とはいえ、Bruynsの指摘については判断に迷うところです。ここいらの詳しい事情が分かる良い論文でもあればいいのですが、中々難しいかもしれません。もう少し探ってみます。何か新しい情報が見つかりましたら、また記事にしたいと思います。
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Euphorbia gorgonis A.Berger, 1910
さて、ゴルゴニスの学名は1910年に命名されたEuphorbia gorgonis A.Bergerです。異名はないようです。タコものの中でも特徴的ですからね。ちなみに、A.Bergerは、ドイツの植物学者であるAlwin Bergerのことです。BergerはAgaveの分類で著名なようです。
ゴルゴニスは南アフリカの固有種で、東ケープ州のSunday RiverとZwartkops Riverの間の丘に生えます。Uniondale、Port Elizabeth、Albany Div、Grahamstownあたりのようです。
ゴルゴニスは礫だらけの丘陵に、Boophone disticha、Pachypodium succulentum、Gasteria armstrongii、Bergeranthus glenensis、Freesia alba、Crassula tetragona subsp. acutifoliaなどと共に生えるそうです。冬に乾燥する傾向があり、最低気温は平均12℃です。
2012年のP. V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』によると、E. gorgonisはE. procumbensの異名扱いされています。しかし、現在はE. gorgonisとE. procumbensとは別種とされています。問題はなぜBruynsが異名と考えたのかです。ただE. gorgonisとE. procumbensが似ているという訳ではなさそうです。Bruynsによると種の基準となるタイプ標本が行方不明で、Carter(※1)はBurtt-Davyの標本をタイプ標本として引用していますが、これは存在しないということです。どうやら、Burtt-Davyの採取した植物を基にBergerがE. gorgonisを記載したとしていますが、1910年のBergerの論文ではE. davyiの基になった植物をBurtt-Davyから入手した経緯しか書かれていないといいます。つまり、E. gorgonisはタイプ標本が存在しないため、正確にはどの植物を指しているのか分からないということです。
(※1) 2002年の図鑑、『Illustrated Handbook of Succulent Plants, Dicotyledons』のSusan Carterの論考。
(※2) Burtt-Davyはイギリスの植物学者である、Joseph Burtt-Davyのこと。
では、E. gorgonisが初めて記載された論文を見てみましょう。まだ、Euphorbia gorgonis n. sp.とあります。「nova species」、つまりは新種という意味です。外見はEuphorbia procumbentisとあります。E. procumbentisとありますが、E. procumbensの誤記でしょう。

E. gorgonisの特徴の羅列があり、続いて「同じセクションの別の新種はE. davyiで、最近Paxにより記載されました。(※3)」という文の先に、「この種は、1908年の8月から9月に開花しました。これは、Burtt-Davy教授がPretoria周辺から私に送ってくれたおかげです。」とあります。一見して、後半の文はE. davyiについて言っているように見えます。しかし、そもそもE. gorgonisについての解説ですから、E. davyiについては前半の一文だけで、後半はE. gorgonisについて語っているような気もします。BruynsはE. davyiについての記述と捉え、CarterはE. gorgonisについての記述と捉えました。解釈が難しいところです。
(※3) Euphorbia davyiの命名者はFerdinand Albin Paxではなく、Nicholas Edward Brownが1915年に命名しています。しかし、E. davyi N.E.Br.はこの論文の出版後に命名されています。つまり、Paxの命名したE. davyiとは別種かもしれません。
という訳で、E. gorgonisについて少し調べてみました。とはいえ、Bruynsの指摘については判断に迷うところです。ここいらの詳しい事情が分かる良い論文でもあればいいのですが、中々難しいかもしれません。もう少し探ってみます。何か新しい情報が見つかりましたら、また記事にしたいと思います。
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