植物に関わる新刊が出ました。『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸 / 著、NHK出版新書)です。NHKの連続テレビ小説「らんまん」は大正生まれの植物学者である牧野富太郎をモデルとしたドラマですが、著者はその植物監修を担当したということです。著者が高知県立牧野植物園の標本室長だったことなど、牧野富太郎と縁があるそうです。まあ、ドラマはともかくとして、牧野富太郎について書かれた本は、その半生をドラマチックに描いたものが多いようです。しかし、本書の著者は植物学者ですから、牧野富太郎の植物学者としての仕事に焦点を当てています。実は牧野富太郎について学者が書いた本は珍しく、肝心の植物について詳しく書かれた本はあまりないようです。

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前半は、特に日本国内の植物をすでに正式に学名が命名されている植物と照合し、名前がないものには新たに命名するという、牧野富太郎の生涯の活動について詳しい解説しています。その際に、基本的な植物学の基礎知識として、学名についてのある程度詳しい解説があり、結構勉強になります。後半は植物画や標本の意味などやはり植物学に関する話が続きます。牧野富太郎と言えば細密な植物画を描いたことは有名ですし、生涯に数十万点の標本を作ったことが知られています。それらの今日的な価値とは如何なるものでしょうか?
牧野富太郎はその半生の前半は学術世界に、そして後半は教育に人生を捧げました。牧野富太郎は日本中を飛び回り、植物について語り標本の作り方を伝授しました。それにより
、アマチュアの植物観察の会は日本各地に出来て、今現在でも活動している会も沢山あるそうです。
植物学から見た牧野富太郎は新鮮で、スキャンダルやゴシップが大好きな方々に書かれた本とは一線を画す出来です。植物そのものではなく、論文や学名、新種の記載、植物画、標本など、あまり植物関係の本でも語られない学術世界が新鮮に感じますし勉強にもなります。非常に良い本でした。


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