2025年、最後の記事はこの1年の読書の振り返りを行います。今年はバタバタしており、十分な読書時間が取れず、買ったはいいものの本を積みあげるばかりで、まだ読んでいない本が沢山あります。ですから、ランキングというほど読んではいませんが、一応面白かった本をご紹介しましょう。

第一位: 『物語化批判の哲学』
難波優輝 / 著、講談社現代新書、2025年刊行
これは実に意外性のある本で、あまり考えたことがないことが話の中心でした。哲学とありますが、それほど踏み込んだ哲学議論ではありません。もちろん、哲学者は登場しますが、心理学者や歴史学者など分野横断的です。内容は現代的というか、今私たちが生きる現実を解析したものです。我々は現実を生きるために、自身の物語を作り上げます。思うに、各社会にはそうあらねばならない、そうであるべき、そうあって欲しい、そう語らなければならない、現実や過去から逸脱した「私」が必要とされているようです。ですから、私たちは本当の「私」を表現したり語ることはなく、無意識に世界に合わせ作り上げられた「私」を語るのです。特に現代は情報の改定スピードが異様に早く、最新を追えば追うほど安定した「私」を見失ってしまうような気がします。生成AIによるリアルなフェイク画像や、2次元との狭間にあるVチューバーの流行など、「私」を取り巻く世界はあやふやであまりにもフィクショナブルです。現実とフィクションの境界はこれからますます曖昧になっていくのでしょう。果して確固たる「私」を維持出来るのでしょうか。物語的に作り上げられた非現実的な「私」は、フィクショナブルな現実とますます乖離してしまい、雲の上を歩くように生きることになるのかも知れませんね。
第二位: 『進化という迷宮 隠れた「調律者」を追え』
千葉聡 / 著、講談社現代新書、2025年刊行
これは実に良い本で、過去に書評していますから、詳細は下のリンクをご参照下さい。しかし、本書はあまり評判がよろしくないようです。「調律者」という言葉にはアレルギーがある人が多いようですが、まあ分からないでもありません。進化論に関する本では上位存在を匂わせたり、生物の自意識的な進化願望は勘違いを生みますから、割りと意識的に排除されますからね。しかし、本書ではあえてそのように書かれておりますが、勘違いはないようになっていますから、個人的には問題は感じませんでした。まあ、ない方が良いとは思いますが…。しかし、「調律者」という言葉に対して過剰反応して、オカルト本と言っている人もいますが、明らかに読んでいないのがバレバレなのは困ったものです。
第三位: 『福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会』
加藤喜之 / 著、中公新書、2025年刊行
米国はキリスト教が強い国で、政治すら宗教に引っ張られることがあります。特に福音派の拡大には目を見張るものがあります。それは、強弱はありますが大統領選にも何かしらの影響を及ぼして来ました。ドナルド・トランプもその一人で、本書で扱われるカーター、レーガン、クリントン、オバマといった歴代大統領に関しても然りです。これも、米国を理解する重要な視点です。
先の大統領選について日本でも、マスコミや知識人らが喧しく議論や意見を表明しました。私自身はやはり強引なトランプでは困るとは思いましたが、結局はトランプが大統領に再選されました。何が勝敗を分けたのか、私も興味があり色々読みましたが、新聞が大統領選後に様々な階層の人達にインタビューしていましたが、意外にもマイノリティーや社会的弱者は、女性の黒人であるハリスを必ずしも支持していませんでした。果してハリスがマイノリティーや社会的弱者を代表して何かをしてくれるのだろうかと疑問視された点もあるようです。日本の知識人たちがトランプの欠点ばかり見ていたのとは対照的に、米国国民はトランプだけではなくハリスの欠点も見ていたのです。さらに、本書を読んだならば、陰に陽に宗教が選挙に影響を及ぼしていたであろうことも、容易に推察出来ます。人間は様々な視点から多角的に見るという当たり前のことは何故か忘れがちです。私もまた視野狭窄気味の現代人の一人として、様々な視点を取り入れるべく、多様な読書を続けたいものです。
第四位: 『寄生生物の果てしなき進化』
Tuomas Alivelo / 著、草思社文庫、2024年刊行
一言に寄生生物と言っても、この場合はトコジラミなどの外部寄生や、ウイルスなどの感染症を含みます。そのため、寄生生物の生態や生活環だけはなく、様々な感染症や寄生虫症の発生も紹介しています。しかし、本書が楽しいのは著者のマダガスカルで行なったキツネザルとキツネザルの寄生虫の研究です。キツネザルにも性格の違いがあり、個体ごとに寄生虫も均一ではないというところも面白いですね。
第五位: 『チャップリンが見たファシズム』
大野裕之 / 著、中公選書、2024年刊行
チャップリンが「街の灯」を公開に合わせ世界を旅行した記録を丹念に追っています。やはり、世界的なスターであるチャップリンは行く先々で追い回される運命にあります。日本にも来ていますが、五一五事件に遭遇しています。当日の秘書が高野虎市という日本人であることを初めて知りました。
第六位: 『賽の河原-供養の宗教学』
村上晶 / 著、ちくま新書、2025年刊行
これは大変な良書で、イタコとは何か、その歴史について丹念に追っています。宗教学と銘打っていますが、民俗学的に見ても大変面白く読みました。さらに、近年の供養についても述べていますが、弔いの形も時代により変わっていくのでしょう。学びだけではなく、考えさせられる本でした。
第七位: 『世界の絶景植物』
湯浅浩史 / 著、淡交社、2024年刊行
とにかく素晴らしい世界の植物の写真を沢山見ることが出来ます。詳しい書評は以下のリンクをご参照下さい。
第八位: 『コミンテルン 国際共産主義運動とは何だったのか』
佐々木太郎 / 著、中公新書、2025年刊行
私自身が旧ソ連関係についての本を集めていたこともあり、贔屓目かも知れませんが、大変面白く読みました。本書だけでも理解出来ますが、やはりコミンテルンを中心に話が進みますから、知識があると格段に面白く感じます。ずいぶんと旧ソ連関連本を読みましたが、コミンテルンがメインという本は初めて読みました。しかし、ソ連崩壊からこれだけ経っても新しい関連本が出てくることに驚きますが、それだけ東西冷戦やソ連崩壊に重大なインパクトがあったということでもあります。
第九位: 『ローマ帝国とアフリカ』
大清水裕 / 著、中公新書、2025年刊行
西洋哲学を学ぶうちに、どうしても西洋史の基本的な教養が必要となり、西洋史の本を読み漁ることになりました。いつしか、哲学そっちのけで西洋史どころか、世界史にどっぷり浸かることになりました。西洋史では特にローマ帝国についての本は多く、今までずいぶんと読んできましたが、アフリカ大陸に関する本は初めてです。過去の本でもまったく記述がないわけではありませんが、カルタゴ以外の王国やアフリカ出身のローマ皇帝についてこれだけ詳細に語られており、大変驚かされました。まだまだ勉強すべきことはいくらでもあるということです。このような良書と出会えたことに感謝します。
第十位: 『日本の古代とは何か』
有富純也 / 編、光文社新書、2024年刊行
日本史はとにかく出版されている冊数が膨大で、なかなか前に進めません。縄文・弥生・古墳時代だけで膨大な書物を紐解く必要があり、ずいぶんと読んできたつもりですが完全に理解出来たとは言えず、不勉強極まりない状況です。まだ、江戸時代にすら到達出来ていません。それはさておき、本書の守備範囲は奈良時代と平安時代です。最近、新しいことが次々と判明しており、割りと本も出ています。日本の古代は最新の研究により変わりつつある大変面白い時代です。私も感心しきりでした。情報はあっという間に古くなってしまいます。過去の常識すら変わりうるのです。情報のアップデートには最適な本です。
最後に
さて、以上が2025年の読書ランキングでした。年末はバタバタしており、記事を書く時間が取れず30日の夜中に慌てて書いています。ですから、文章は荒れ気味で内容も淡泊なものにならざるをえませんでした。申し訳なく思います。
しかし、読書とは素晴らしい体験です。私に限らず誰しも知らないことはいくらでもあるはずです。私は今年も知らないことを知り、己の無知を知ることが出来ました。どの本も面白く叡智に溢れています。願わくば来年は読書をする時間が十全にとれて、読みたい本がいくらでも読める年であって欲しいものですね。回し車を回すハムスターの如くバタバタしているだけの、平凡極まる小市民たる私には過分な願いかも知れませんがね。
さて、これが今年最後の記事となります。色々と足りないブログではありますが、来年もぜひご贔屓にして下さると大変有り難く思います。では皆様、良いお年を。
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第一位: 『物語化批判の哲学』
難波優輝 / 著、講談社現代新書、2025年刊行
これは実に意外性のある本で、あまり考えたことがないことが話の中心でした。哲学とありますが、それほど踏み込んだ哲学議論ではありません。もちろん、哲学者は登場しますが、心理学者や歴史学者など分野横断的です。内容は現代的というか、今私たちが生きる現実を解析したものです。我々は現実を生きるために、自身の物語を作り上げます。思うに、各社会にはそうあらねばならない、そうであるべき、そうあって欲しい、そう語らなければならない、現実や過去から逸脱した「私」が必要とされているようです。ですから、私たちは本当の「私」を表現したり語ることはなく、無意識に世界に合わせ作り上げられた「私」を語るのです。特に現代は情報の改定スピードが異様に早く、最新を追えば追うほど安定した「私」を見失ってしまうような気がします。生成AIによるリアルなフェイク画像や、2次元との狭間にあるVチューバーの流行など、「私」を取り巻く世界はあやふやであまりにもフィクショナブルです。現実とフィクションの境界はこれからますます曖昧になっていくのでしょう。果して確固たる「私」を維持出来るのでしょうか。物語的に作り上げられた非現実的な「私」は、フィクショナブルな現実とますます乖離してしまい、雲の上を歩くように生きることになるのかも知れませんね。
第二位: 『進化という迷宮 隠れた「調律者」を追え』
千葉聡 / 著、講談社現代新書、2025年刊行
これは実に良い本で、過去に書評していますから、詳細は下のリンクをご参照下さい。しかし、本書はあまり評判がよろしくないようです。「調律者」という言葉にはアレルギーがある人が多いようですが、まあ分からないでもありません。進化論に関する本では上位存在を匂わせたり、生物の自意識的な進化願望は勘違いを生みますから、割りと意識的に排除されますからね。しかし、本書ではあえてそのように書かれておりますが、勘違いはないようになっていますから、個人的には問題は感じませんでした。まあ、ない方が良いとは思いますが…。しかし、「調律者」という言葉に対して過剰反応して、オカルト本と言っている人もいますが、明らかに読んでいないのがバレバレなのは困ったものです。
第三位: 『福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会』
加藤喜之 / 著、中公新書、2025年刊行
米国はキリスト教が強い国で、政治すら宗教に引っ張られることがあります。特に福音派の拡大には目を見張るものがあります。それは、強弱はありますが大統領選にも何かしらの影響を及ぼして来ました。ドナルド・トランプもその一人で、本書で扱われるカーター、レーガン、クリントン、オバマといった歴代大統領に関しても然りです。これも、米国を理解する重要な視点です。
先の大統領選について日本でも、マスコミや知識人らが喧しく議論や意見を表明しました。私自身はやはり強引なトランプでは困るとは思いましたが、結局はトランプが大統領に再選されました。何が勝敗を分けたのか、私も興味があり色々読みましたが、新聞が大統領選後に様々な階層の人達にインタビューしていましたが、意外にもマイノリティーや社会的弱者は、女性の黒人であるハリスを必ずしも支持していませんでした。果してハリスがマイノリティーや社会的弱者を代表して何かをしてくれるのだろうかと疑問視された点もあるようです。日本の知識人たちがトランプの欠点ばかり見ていたのとは対照的に、米国国民はトランプだけではなくハリスの欠点も見ていたのです。さらに、本書を読んだならば、陰に陽に宗教が選挙に影響を及ぼしていたであろうことも、容易に推察出来ます。人間は様々な視点から多角的に見るという当たり前のことは何故か忘れがちです。私もまた視野狭窄気味の現代人の一人として、様々な視点を取り入れるべく、多様な読書を続けたいものです。
第四位: 『寄生生物の果てしなき進化』
Tuomas Alivelo / 著、草思社文庫、2024年刊行
一言に寄生生物と言っても、この場合はトコジラミなどの外部寄生や、ウイルスなどの感染症を含みます。そのため、寄生生物の生態や生活環だけはなく、様々な感染症や寄生虫症の発生も紹介しています。しかし、本書が楽しいのは著者のマダガスカルで行なったキツネザルとキツネザルの寄生虫の研究です。キツネザルにも性格の違いがあり、個体ごとに寄生虫も均一ではないというところも面白いですね。
第五位: 『チャップリンが見たファシズム』
大野裕之 / 著、中公選書、2024年刊行
チャップリンが「街の灯」を公開に合わせ世界を旅行した記録を丹念に追っています。やはり、世界的なスターであるチャップリンは行く先々で追い回される運命にあります。日本にも来ていますが、五一五事件に遭遇しています。当日の秘書が高野虎市という日本人であることを初めて知りました。
第六位: 『賽の河原-供養の宗教学』
村上晶 / 著、ちくま新書、2025年刊行
これは大変な良書で、イタコとは何か、その歴史について丹念に追っています。宗教学と銘打っていますが、民俗学的に見ても大変面白く読みました。さらに、近年の供養についても述べていますが、弔いの形も時代により変わっていくのでしょう。学びだけではなく、考えさせられる本でした。
第七位: 『世界の絶景植物』
湯浅浩史 / 著、淡交社、2024年刊行
とにかく素晴らしい世界の植物の写真を沢山見ることが出来ます。詳しい書評は以下のリンクをご参照下さい。
第八位: 『コミンテルン 国際共産主義運動とは何だったのか』
佐々木太郎 / 著、中公新書、2025年刊行
私自身が旧ソ連関係についての本を集めていたこともあり、贔屓目かも知れませんが、大変面白く読みました。本書だけでも理解出来ますが、やはりコミンテルンを中心に話が進みますから、知識があると格段に面白く感じます。ずいぶんと旧ソ連関連本を読みましたが、コミンテルンがメインという本は初めて読みました。しかし、ソ連崩壊からこれだけ経っても新しい関連本が出てくることに驚きますが、それだけ東西冷戦やソ連崩壊に重大なインパクトがあったということでもあります。
第九位: 『ローマ帝国とアフリカ』
大清水裕 / 著、中公新書、2025年刊行
西洋哲学を学ぶうちに、どうしても西洋史の基本的な教養が必要となり、西洋史の本を読み漁ることになりました。いつしか、哲学そっちのけで西洋史どころか、世界史にどっぷり浸かることになりました。西洋史では特にローマ帝国についての本は多く、今までずいぶんと読んできましたが、アフリカ大陸に関する本は初めてです。過去の本でもまったく記述がないわけではありませんが、カルタゴ以外の王国やアフリカ出身のローマ皇帝についてこれだけ詳細に語られており、大変驚かされました。まだまだ勉強すべきことはいくらでもあるということです。このような良書と出会えたことに感謝します。
第十位: 『日本の古代とは何か』
有富純也 / 編、光文社新書、2024年刊行
日本史はとにかく出版されている冊数が膨大で、なかなか前に進めません。縄文・弥生・古墳時代だけで膨大な書物を紐解く必要があり、ずいぶんと読んできたつもりですが完全に理解出来たとは言えず、不勉強極まりない状況です。まだ、江戸時代にすら到達出来ていません。それはさておき、本書の守備範囲は奈良時代と平安時代です。最近、新しいことが次々と判明しており、割りと本も出ています。日本の古代は最新の研究により変わりつつある大変面白い時代です。私も感心しきりでした。情報はあっという間に古くなってしまいます。過去の常識すら変わりうるのです。情報のアップデートには最適な本です。
最後に
さて、以上が2025年の読書ランキングでした。年末はバタバタしており、記事を書く時間が取れず30日の夜中に慌てて書いています。ですから、文章は荒れ気味で内容も淡泊なものにならざるをえませんでした。申し訳なく思います。
しかし、読書とは素晴らしい体験です。私に限らず誰しも知らないことはいくらでもあるはずです。私は今年も知らないことを知り、己の無知を知ることが出来ました。どの本も面白く叡智に溢れています。願わくば来年は読書をする時間が十全にとれて、読みたい本がいくらでも読める年であって欲しいものですね。回し車を回すハムスターの如くバタバタしているだけの、平凡極まる小市民たる私には過分な願いかも知れませんがね。
さて、これが今年最後の記事となります。色々と足りないブログではありますが、来年もぜひご贔屓にして下さると大変有り難く思います。では皆様、良いお年を。
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