ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2024年01月

Mesembryanthemumは由来の古い属名ですが、かつては巨大なグループでした。しかし、徐々に分割され、LampranthusやDelosperma 、Ruschiaを始めとしたグループとなり、現在は100種類程度になっているようです。私はまったくメセンに詳しくはないのですが、Mesembryanthemumの学名に関係する論文を見つけたのでご紹介します。メセンと言うより学名について興味があるのです。
と言うわけで、本日はGideon F. Smithの2020年の論文、『(274 5) Proposal to conserve the name Mesembryanthemum vanputtenii (Lampranthus vanputtenii) (Aizoaceae) with that spelling』をご紹介します。

Mesembryanthemum pittenii L.Bolusは1929年に発表された南アフリカ原産の多肉植物です。L.Bolus(1929)は「Compton(N.B.G. 916/22)」と「van Pitten(N.B.G. 1045/25)」と言うタイプ標本(シンタイプ)を挙げています。翌年、この種は新たに創設されたLampranthusに移され、L. pittenii (L.Bolus) N.E.Br.とされました。

1967年にL.Bolusは、コレクターの名前が正しく記載されていなかったと述べ、種小名を「vanputtenii」に変更しました。採取者はJoost van Puttenで、Lambert's湾の海岸近く住んでおり、彼の所有地はVan Putten's Vleiと呼ばれていました。

「pittenii」を正書法的に修正すると、「i」を「u」に変更されます。さらに、Brummit & Powell(1992)は、「van」を含む南アフリカの姓は、姓の不可欠な部分とみなすのが一般的であるため、この単語を保持すべきであると指摘しています。

L.Bolusが1967年の修正に続いて、修正された名前であるL. vanputteniiが、南アフリカのAizoa科の種の編集に採用されました。過去50年に渡り、L. vanputteniiと言う名前が広く採用されてきたことを考慮し、そのバシオニムであるM. vanputteniiを保存することを提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
バシオニムとは正式に認められた学名のもとになった名前のことです。いわゆる異名の1つですが、実は異名にも2種類あります。例えば、緋花玉を例に取ると、正しい学名はGymnocalycium baldianumですが、これは1925年に命名されたものです。しかし、緋花玉は初めは1905年にEchinocactus baldianusと命名されているのです。これは、現在の学名に繋がる学名ですから、バシオニムにあたります。異名の種類としてはHomotypic Synonymと呼ばれます。
また、現在の学名に繋がらないものもあり、これをHeterotypic Synonymと呼びます。緋花玉では、1932年に命名されたEchinocactus sanguiniflorusや1995年に命名されたGymnocalycium rosea、2009年に命名されたGymnocalycium schreiteriなど、11のHeterotypic Synonymがあります。これらは、新種として記載されたものの、G. baldianumと同種であるとして異名になったものです。
何やら面倒くさい話ですが、命名法は重要です。しかし、種を分けるか否かは研究者だけではなく、我々趣味家からも批判がある不完全なものです。それでも、最新の研究成果を吸収しながら、徐々に積み上げられるものが学名です。近年、遺伝子解析による分子系統が盛んに行われていますから、過去にないスピードで分類が改訂される時代になりました。遺伝子解析は過去の分類法と比較すると非常に客観的ですから、研究の進んだグループでは、やがて分類とその学名は固定的となっていくでしょう。このように、Carl von Linneが2名式学名を考案してから約250年経って初めて機械的に種を決定可能となったわけですから、我々は非常に面白い時代に生きていると言えるでしょう。これからも、最新の研究成果を記事にしていこうと考えております。


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早いもので、年が明けたと思っていたら、いつの間にやら2月になってしまいます。寒い日が続きますが、まだまだ冬本番ですね。多肉植物たちも休眠するものが増えてきました。

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瑠璃塔 Euphorbia cooperi
瑠璃塔は去年初めて枝が出ました。特有の段が形成されますが、現在の環境下では中々綺麗に段が形成されません。難しいものですね。


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Euphorbia fuscoclada
こちらは花キリンのフスコクラダです。新しいトゲは美しいですね。2021年に記載されたばかりの新種です。今は目立ちませんが、良く日に当てると幹の赤味が強くなるようです。

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Aloe peglerae
ペグレラエは非常に美しいアロエですが、若いうちは生長は割と早い方です。苗を2年育てただけで、そこそこ見られる姿になりました。論文では生長は遅いと書かれていますが、かなり大型になりますから、そこまで育つには大変な時間がかかるのでしょう。

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春鶯囀 Gasteria batesiana
バテシアナは非常に格安で入手したものです。ガステリアの不人気さからあまり見かけませんが、古典植物的な風合いを持ち、独特の美しさがあります。ガステリアがもう少し流行ってくれたら、色々な種類が入手しやすくなるのですが…


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Haworthiopsis scabra var. scabra JDV 95/17 
硬葉系ハウォルチアのスカブラですが、フィールドナンバーつきの野性的な個体です。表面がざらつくだけで結節がない実に渋い見た目ですね。フィールドナンバーのJDVとは、採取者のJakobus (Kobus) D. Venterのこと。

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風車 Haworthiopsis scabra var. starkiana
硬葉系ハウォルチアのスタルキアナです。これは、特に葉が短く太いタイプです。良く日に当てると黄色くなりますが、上手く日照をコントロール出来ないため、あまり黄色くなりません。
現在はスカブラの変種とされていますが、H. starkianaと表記されることの方が多いかも知れません。しかし、スタルキアナはスカブラからざらつきを無くし、明るい色合いにしただけにも見えます。



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多肉植物ブームが長く続き、即売会などでは変わった植物も見かけるようになりました。最近は乾燥地の灌木であるコミフォラもたまに見かけます。聖書に出て来る没薬とはコミフォラの樹脂を固めたものですから、分布も中東や北アフリカが中心です。流通量が少なく生長が遅いこともあり、一般的に大変高価です。本日はこのコミフォラのお話です。と言うわけで、Emiru Birhaneらの2023年の論文、『Arbuscular mycorrhizal fungi improve nutrient status of Commiphora myrrha seedlings under drought』をご紹介します。

乾燥地の植物
没薬(Myrrh)の原料であるCommiphora myrrhaは、高さ4mになるトゲのある樹木で、主に標高250〜1300mのアカシアとコミフォラからなる低木地帯で見られます。このような乾燥地に生える樹木の苗木は、水分含量の低下や光合成速度の低下など、水不足により様々な反応を示します。植物の干魃への適応は、アーバスキュラー菌根菌(AMF)などの土壌微生物との相互作用や支援により強化されます。

菌根菌
アーバスキュラー菌根菌(AMF)は、リン酸塩や他の栄養素が不足している場合に、植物の生長を促します。AMFの共生は、乾燥条件下での植物組織内のリン、ケイ素、窒素、亜鉛、マグネシウム、銅、カルシウムの濃度を増加させ、実生の生長を促進します。また、AMFは気孔コンダクタンスと光化学系IIの効率を維持することにより、光合成効率を高めます。つまり、AMFは水と栄養素の獲得を増加させることで、樹木の苗木の定着を改善します。しかし、C. myrrhaに対するAMFの影響はまだほとんど知られていません。

実験
著者らはエチオピア北部のMekelle大学で、C. myrrhaの苗木を用いた試験を温室で実施しました。温室内の気温は、日中で平均27℃、夜間で平均22℃でした。
種子はエチオピア北西部の低地より採取され、20%過酸化水素水不足により殺菌され、その後に冷水に12時間浸漬されました。プラスチックトレイに滅菌した川砂を敷き種子を播種したところ、種子すべてが5〜15日で発芽しました。発芽後、個別にプラスチックポットに移植しました。
菌根菌はエチオピア北西部の乾燥したアカシア・コミフォラ林で、乾季に採取されました。菌根菌の種類は特定出来ませんでしたが、乾燥土壌100g中には約76個の胞子を含んでいました。この土壌をモロコシ(ソルガム)に与え増やしました。モロコシの根への菌根菌の定着率は60〜95%でした。
試験はAMFの有無と、与える水分量を4段階に分けて実施されました。


干魃耐性の強化
AMFの添加によりバイオマスの増加が認められました。細根はAMFにより長くなりました。AMFの効果は水分が少ないほど顕著でした。また、新芽と根の窒素濃度は、AMF接種により増加しましたが、水分量は影響を与えませんでした。リン濃度とカリウム濃度は、AMFと水分量が大きく影響を与えました。リンやカリウムなどの栄養素摂取量が強化されると、干魃耐性が高まります。菌根が植物の根が到達出来ない微細な土壌細孔にアクセス可能であり、水分や栄養素の取り込みを強化出来ます。
AMFの効果として葉の面積の維持が確認されました。より乾燥した環境では葉が小さくなる傾向がありますが、AMFの接種により葉があまり小さくならず大きい葉を展開出来るのです。このことにより、AMFは光合成効率の改善にも寄与していることが分かります。

最後に
以上が論文の簡単な要約となります。
論文ではAMFを採取したアカシア・コミフォラ林の表土と下層土を用いた試験も行っていましたが、今回は割愛させていただきました。
さて、当ブログはサボテンや多肉植物を中心としていますが、それらに留まらず植物学に関わる広範な記事もポツポツと書いていたりします。植物学ネタでは、植物にとって菌根菌は重要であると言うことを何度か記事にしています。ほとんどの植物は菌根菌と共生関係にあり菌と根の複合体である菌根を形成し、お互いに栄養素のやり取りをしています。
多肉植物でもWelwitschiaは菌根菌と共生関係を結んでいることが確認されており、Gymnocalyciumでは菌根菌と共生関係にあるとよく育ち、フザリウムと言う寄生カビの感染予防にもなっていることが確認されています。しかし、ほとんどの植物は菌根菌との関係について詳しいことは分かっていません。乾燥と菌根の関係は非常に興味深いもので、菌根菌の能力を計る意味でも有用だと感じます。今後も、多肉植物と菌根菌との関係についての研究がなされることを望みます。


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さて、本日は都庁前駅近くの住友ビルにある三角広場にて開催された、「サボテン・多肉植物のプレミアムバザール」に参加してきました。並ぶのは苦手なので、開場してからの参加です。
会場は広く、店舗数は非常に多いにも関わらず、余裕がある感じでした。しかし、会場はロープを張って区切っており、かなりの面積が空いていたので何かと思いましたが、おそらくは待機列のためでしょうか。1月のビッグバザールより店舗数はやや少ない感じでしたが、通路はビッグバザールより広いのでそこは良かったですね。混雑していましたが、ビッグバザールほどではない感じがします。

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出店傾向もやや異なります。お馴染みのグランカクタスやX-Plantsは参加しているみたいですが、ラフレシアリサーチやRuchiaは不参加のようです。
内容的には思ったよりバラエティー豊かな感じがしました。流行りのアガヴェも豊富でしたが、コーデックスが非常に多い印象です。あと、ビッグバザールよりサボテンを割と見かけましたね。

個人的にはいつもユーフォルビアとアロエばかりなので、少し変わったところもチャレンジしたいところです。しかし、1月のビッグバザールでは、結局ユーフォルビアを買う始末でした。今回は心を鬼にしてユーフォルビアは視界に入れないように努めました。まあ、今回はユーフォルビアはあまりなかったようですが。オトンナやティレコドンなどの冬型コーデックスも多く、気になりましたが今回はパスしました。
さて、今回の購入品は2点です。

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Adenia olaboensis
珍しくアデニアに手を出しました。と言うより、そもそもアデニア自体あまり見かけませんけどね。実生苗になると、普段見かけるAdeniaはA. glaucaくらいでしょうか。
グランカクタスにて購入。サイズの割にはそこそこしましたが、変に高騰しているOperculicaryaだのFouquieriaだのに比べたら現実的な価格です。
何やら面白い形の葉が出るみたいですから楽しみです。マダガスカル原産。

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Aloe fleuretteana
もう1点はアロエです。またアロエですが、大変美しいためどうしても我慢出来ませんでした。最近はビッグバザールでもお見かけするBaby leaf Plantsにて購入。今回は面白いものが多かったような気がします。しかし、アロエは安くていいですよね。マダガスカル原産。
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美しい斑が入ります。

さて、プレミアムバザールはこんな所でした。結局購入したのはお馴染みのお店ばかりでしたが、良い買い物が出来たので大変満足です。冬型はよく分からないのですが気になっているので、今回はかなり注目して見ました。しかし、もう少し勉強してからにします。
プレミアムバザールは明日も開催されますから、皆様も参加してみては如何でしょうか。入場料がタダなので、見るだけでも楽しめます。大江戸線は直通で会場に行けるため便利です。


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地球上の発見された生物には、基本的に名前がつけられています。英語名だったり、その原産地や地域での呼び名もあったりします。しかし、世界中で通じる名前は、ラテン語表記による学名です。しかし、この学名にもルールがあり、誰でも好きなように命名して良いわけではありません。新種の記載は大学などの研究機関に属する研究者である必要はありませんが、学術論文は決まった形式があるため、事実上は研究者にほぼ独占されているのが現状です。この新種の記載には、産地情報や花を中心とする特徴についても詳細に書かれます。しかし、それだけでは不十分で、タイプ標本を必要とします。タイプ標本は研究機関に収蔵され、新種を発見したりした場合、類似した種と比較するために、類似種のタイプ標本が参照されます。最近では標本から遺伝子を抽出するケースもあるようです。
さて、本日はタイプ標本に関するお話です。と言うわけで、Joachim Thiedeの2008年の論文、『Lectotypification of Adenium multiflorum Klotzsch (Apocynaceae)』をご紹介します。

Adenium multiflorumはモザンビークのTete近くでHW Petersが採取した標本に基づき、ドイツの植物学者であるFriedrich Klotzschにより記載されました。それが公開されたのは、Petersの豪華な6巻からなる著作である、『Naturwissenschaftliche Reise nach Mosasanbique…』(モザンビークを巡る自然史の旅)の植物学に掲載されました。出版日は1862年とされていますが、実際には1861年に出版されました。優れたモノクロの図版が添えられていました。

1980年にアデニウム属の改訂が行われ、PlaizierはAdenium multiflorumのタイプ標本(ホロタイプ)は破壊されアイソタイプは追跡されなかったと述べました。つまり、学名の基準となるタイプ標本であるホロタイプが失われていたため、ホロタイプに次いで重要な重複標本であるアイソタイプを探しましたが見つけられなかった、あるいはそもそも存在しなかったのです。Plaizierはタイプ標本の産地の近くで採取された保存状態の良い標本を、新たにネオタイプとして指定しました。ネオタイプはタイプ標本が失われた時に、それに代わり指定されるタイプのことです。

著者はHW Petersの著者に記載されたAdenium multiflorumの図版が、失われたホロタイプに代わるレクトタイプ(イコノタイプ)であり、Plaizierの指定したネオタイプより優先されると指摘しています。レクトタイプとは、標本の中からホロタイプに相当する1点を選ぶことで、イコノタイプとは種を指定する図版を指します。この場合は、植物標本ではなく、図版がタイプとして指定されたと言うことです。

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Adenium multiflorum
『The Flowering plants of South Africa』(1921年)より。

以上が論文の簡単な要約です。
さて、このように重要なタイプ標本ですが、時として誤りが見つかることもあります。タイプ標本に複数種が混在しているとか、タイプ標本の変更時に誤った標本を指定してしまったりと言うこともあります。タイプ標本の変更は様々なケースがありますが、標本が破損したり紛失してしまうもあります。特に第二次世界大戦により焼失してしまった標本は沢山あったりします。

ちなみに、Adenium multiflorumは上記のごとく、1961年にKlotzschにより記載されたわけですが、同じく1961年には南アフリカの植物学者であるLeslie Edward Wostall CoddによりAdenium obesumの変種とする考え方も提案されました。さらに、1974年にはイギリスの植物学者であるGordon Douglas Rowleyにより、Adenium obesumの亜種とする意見もありました。しかし、現在はAdenium multiflorumが正式な学名です。ちなみに、A. obesumの亜種とする意見は、「no basionym ref.」と書かれており、つまり「参照となるバシオニムがない」と言うことです。これは、正しい学名が引用されていないと言うことです。詳しくは分かりませんが、もしかしたら引用すべきPetersの著作を正しく引用出来ていないのかも知れませんね。


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朝晩は大部冷え込むようになりました。パキポディウムも葉を落とすものが増えています。冬なので代わり映えしない多肉植物も多いのですが、本日も我が家の多肉植物をご紹介します。

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奇怪ヶ島 Euphorbia suquarrosa
奇怪ヶ島は塊根から枝を伸ばすタイプのユーフォルビアです。まだ小さいので塊根は露出させていません。見られる塊根が出来るまであと何年かかるでしょうかね。

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Euphorbia marsabitensis
ケニアのMarasabit山原産のユーフォルビア。高地性にも関わらず、育てるのは難しくないと言われているようです。しかし、これと言った情報がないため、あまり語ることがありません。去年の秋の入手ですが、まだ生長は見られません。

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特徴的な「Y字型」のspine shieldを持ちます。トゲに連なる角質化した構造であるspine shieldですが、spine shield同士で繋がるものと繋がらないものとがあります。また、ユーフォルビアには、このように大きいトゲ2本と小さいトゲ2本のセットと、トゲは1対のみと言うものがあります。2対の場合については、「1対のトゲと1対の托葉」と見る向きもあるようです(Carter, 1994)。このようにトゲが1対のものと2対のものとがありますが、1対のトゲにもう1対のトゲが追加されたのではなく、2対のトゲから1対が省略されたと考えた方が自然ですが、どうでしょうか?

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Pachypodium densiflorum
デンシフロルムは今頃になって紅葉し、ハラハラと落葉し始めました。サイズが大きいせいか、暖房が効いていると冬でもよく開花します。しかし、今年はまだ暖房をかけていないため、葉はすべて落ちてしまうかも知れません。

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Pachypodium rutenbergianum
去年の3月にホムセンで投げ売りされていたルテンベルギアニムです。購入時は根がカリカリに乾いて駄目になっていました。現在は鉢底から根がはみ出るほどです。本来は枝が長く伸びますが、切り詰めて枝が混んだ樹形にしようと企んでいます。

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Euphorbia millotii
ミロティイはのっぺりした幹肌の花キリンです。先端付近は葉の落ちた痕跡が目立ちますが、下部に行くに従い痕跡は目立たなくなります。このトゲすらないつるつるした幹に何か意味があるのでしょうか?

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Astroloba foliorosa
フォリオロサの小型タイプです。生長は緩やかですが、これでも倍くらいの高さになりました。
そう言えば購入時のラベルには「フォリオサ」とありましたが、単純な書き間違いではないようです。海外でもA. foliosaと誤記されがちみたいですから、ラベルの名前はどうやらそこから来ているようです。また、これはフォリオロサだけの話ではありませんが、最初の命名時はAloeで、やがてHaworthiaに移され、新たに創設されたAstrolobaと言うお決まりのパターンを踏襲しています。まあ、途中で時代の徒花であったApicraも挟み、2013年にはTulistaとする意見もありましたが、結局はAstrolobaで落ち着きました。ちなみに、AstrolobaはAloeやHaworthiaより、GonialoeやTulista、Arirtaloeに近縁とされています。


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去年の神田神保町古本まつりで、植物関係の本をちょろっと何冊か購入しました。最近は思うように読書時間が取れないのですが、ようやく1冊読んだので軽くご紹介しようとかと思います。本日ご紹介するのは、W. Veevers-Carterの1984年の著作の日本語版である、『熱帯多雨林の植物誌』(平凡社、1986年)です。

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扱われる熱帯多雨林はマレーシアとインドネシアです。様々な熱帯植物が語られますが、いわゆる観葉植物の類ではないので、あまり一般的ではないものもあります。私が個人的に興味があるアリ植物や着生植物、つる植物の話もあり、大変面白く読みました。神代植物公園や板橋区立熱帯環境植物館で見たフタバガキ科植物やらジャックフルーツも登場します。こういう本を読んでいると植物園をより楽しむことが出来ます。

内容的には植生や繁殖システムと言った生態学、果実や材の利用から産業利用まで、学術的な発見の経緯、大航海時代の香辛料のためのヨーロッパ諸国同士のイザコザから東南アジアの歴史までと実に幅広いものです。
個人的に大航海時代については気になっており、何冊か本を読んでいますから、それらも絡めて背景を少し補足しましょう。まず、大航海時代はキリスト教の布教も行われましたが、その原動力は香辛料にあります。多くの香辛料は熱帯地方の原産です。その輸送はアラブ商人などを経て陸路で運ばれ、地中海貿易でヨーロッパ中に運ばれました。その香辛料交易を直に行おうとしたのが、大航海時代の目的です。その結果、香辛料交易のルートが変わってしまったため、地中海貿易の重要な港があるイタリアは、交易量が下火になってしまいます。また、香辛料交易の話では、よく取り上げられるのは胡椒ですが、本書ではチョウジとナツメグにそれぞれ1つの章が与えられています。

さて、本書の原版は1984年の出版ですから40年前の古い本ではあります。しかし、悲しいかな、すでにこの時点で様々な熱帯植物について、「すでに〜でしか見られない」と言う文言が付いてしまっています。世界野生生物基金のマレーシア委員会会長が序文を寄せていますが、短期的な利益のために失われる熱帯林を嘆き、本書を熱帯林を知り関心を持つ切っ掛けになって欲しいとの思いが語られます。本書が出版されてから40年が経ちましたが、状況は改善したのでしょうか? しかし、残念ながら、聞こえてくる声は悲観的なものばかりです。熱帯植物が、先進国の植物園の温室でしか見られないと言うような未来だけはあっては欲しくないものですね。


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乾燥地には剥き出しの岩石が見られたりしますが、岩の割れ目に多肉植物が育ったりすることは、世界中の乾燥地で知られています。通常、岩石の風化は風や雨により、それこそ万単位の時間をかけて緩やかに進行します。しかし、植物の存在により岩石は強い作用を受けることになります。その例として、メキシコのバハ・カリフォルニアの溶岩に生える象の木(Pachycormus discolor)を取りあげましょう。本日はYoav Bashanらの2006年の論文、『Primary colonization and breakdown of ingneous rocks by endemic, succulent elephant trees (Pachycormus discolor) of the deserts in Baja California, Mexico』をご紹介します。

調査地域
著者らは2002年と2005年に、ソノラ砂漠のバハ・カリフォルニア半島の中央にある2箇所を調査しました。この地域は夏の高温が特徴で、晴れた日は35〜40℃になり、良く日が当たる場所は45℃を超えます。冬は夜間の気温が3℃まで低下することがあります。植生はIdria columnaris(=Fouquieria columnaris、観峰玉) やPachycereus pringlei(cardon cacti )などが生えます。

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Pachycormus discolor
『Contribution from the United States National Herbarium』(1912-1916年)より


岩上で育つ象の木
花崗岩や玄武岩で出来た冷えた溶岩流の上で、象の木が生長していることが確認されました。岩上には他の植生は確認されませんでした。花崗岩の地域は、大きな木が岩を挟み込んでおり、1平方キロメートルあたり3.86本が生えていました。玄武岩の地域では、岩に亀裂はなく象の木は岩の中で生長し、小さな木でも引き抜くことは出来ませんでした。高さ20〜30mになる玄武岩の岩上には、高さ3m以上の成木が1平方キロメートルあたり平均8.83本生えていました。

岩石の風化
cardon cactusに関する最新の研究では、根に関係する微生物が岩石を風化させサボテンに栄養素を供給しており、裸岩上におけるサボテンの生長を可能としていることが示されました。これらの微生物が象の木の根にも存在するのかは不明です。

最後に
岩を貫通しながら育つ象の木の姿は、実に奇妙なものです。著者らは最後に微生物の存在を匂わせましたが、これは根圏にいる細菌などの微生物のことのようです。確かに根圏が発達した場合、様々な微生物が増殖し岩石にも作用することは考えられることです。しかし、私は菌根菌が重要なのではないかと考えます。植物の根と共生関係を結んだ菌根菌は、酸を出して周囲のものを溶かします。以前は菌根菌は一部の植物だけに見られるもののように言われたりもしましたが、現在ではほとんどの植物は菌根菌と共生関係を結んでいることが確認されています。当然ながら象の共生関係もまた菌根菌と共生関係にあるはずです。
象の木は岩を穿ちながら育ち、岩は侵食されて行きます。それは、わずか数十年で岩に大きな穴が開くわけですから、自然風化と比較したら大変なスピードです。象の木はやがて寿命などで枯れるものもあるかも知れませんが、象の木があった穴には象の木と微生物が作った腐食質が残り、枯れた象の木自体も腐食質となるでしょう。そこには、岩上では育たなかった植物が生えることが出来るはずです。象の木は不毛の岩上にオアシスを作り出す植物と言えるのではないでしょうか。


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土日は何やら忙しくて、記事を書いている時間が取れませんでした。仕方がないので、ちょっとだけ多肉植物のご紹介をしましょう。

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Gymnocalycium erinaceum WR 726B
去年は暑かったせいか、あまり調子はイマイチでした。どうも水切れしていたみたいです。このWR 726Bはそれほど珍しいないフィールドナンバーみたいですね。
エリナケウムは1985年の命名ですから、割と命名は新しい方です。また、2001年に記載されたG. gaponiiは、2015年にG. capillense var. gaponiiとされたりしましたが、現在はG. erinaceumの異名とされています。


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Adenia glauca
枝を切って休眠させたつもりでしたが、中々寒くならなかったせいか、新しい芽が吹いてきてしまいました。


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Euphorbia antisyphilitica
北米原産のユーフォルビアです。やはり、生長が始まってしまいました。日が弱いので徒長しそうで困ります。

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Gonialoe sladeniana
かつてはAloe sladenianaと呼ばれていましたが、2014年にゴニアロエ属が創設され、スラデニアナもゴニアロエとなりました。カキ仔を購入しましたが、発根に時間がかかってしまいました。ようやく落ち着いたところです。


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多くの多肉植物は様々な要因によってその生存を脅かされ、生息数が減少し絶滅の危機に瀕しています。しかし、絶滅危惧種は動物より植物の方が圧倒的に多いにも関わらず、動物と比べると植物は保護に関わる研究・調査や保護活動のための資金は圧倒的に少なく、非常に遅れています。現状を把握するために定期的な原産地の調査が必要ですが、絶滅危惧種であってもそのほとんどが調査もされず放置されたままです。調査されないまま、おそらく絶滅したと考えられている種もあり、調査は急務と言えるでしょう。さて、本日はそんな希少植物を危機意識を持って調査した論文をご紹介します。それは、N. N. Mhlongoらの2023年の論文、『Distribution, population structure and microhabitat profile of Euphorbia bupleurifolia』です。

E. bupleurifoliaの特徴
ソテツトウダイグサ(cycad spurge)として知られるEuphorbia bupleurifolia(鉄甲丸)は、高さ20cmほどになる多肉植物です。幾何学的に整った結節状の茎は、通常は分岐せず、直径4〜7cmの球形または亜円筒形の外観です。葉は茎の先端に房状につき、乾季には落葉します。春に新しい葉が出る直前に花が咲きます。

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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia

分布域の現地調査
E. bupleurifoliaの過去の分布を特定するために、過去採取された標本の産地情報や、撮影された画像の情報、さらには保護活動家にも連絡をとりました。その結果、33箇所の産地が特定され、そのうち31箇所が現地調査されました。2018年8月から9月の30日間に渡る調査により、わずか9箇所しかE. bupleurifoliaは発見されませんでした。うち1箇所は1個体しか見つからず、その地域では事実上の絶滅です。また、調査により発見されたE. bupleurifoliaは、合計1724個体に過ぎませんでした。

年齢分布
一般的に増殖している個体群は新たに加入する若い個体が多く、年齢が高い大型の個体は減少していきます。縦軸を個体数、横軸を年齢としたグラフでは、逆J字型(右肩下がり)になります。個体数が減少している植物は、新たに加入する若い個体が少なくなり、グラフはJ字型(右肩上がり)になります。しかし、E. bupleurifoliaは中間サイズの個体が多く、グラフは釣り鐘型となりました。これは、一般的には植物の寿命が長く、成体の生存率が高いことに起因します。調査では、実生個体は3箇所でしか見つからず、全体として若い個体の加入率は低いものでした。
釣り鐘型のサイズ曲線は、Kumara plicatilisで確認されたパターンで、Haworthiopsis koelmaniorumでも観察されています(※)。違法採取や火事により大型個体が失われると、個体数の減少を招く可能性があります。

※ ) このパターンは、実生の定着率が低くても、寿命が長い成体が種子を蒔き続けることにより維持されています。ですから、種子を生産する親個体の減少は、個体群の崩壊を招きます。


生息地に与える人為的悪影響
E. bupleurifoliaに与えられる悪影響として、もっとも一般的なのは踏みつけです。8箇所で確認されています。しかし、その影響のレベルは大したことはありません。5箇所では火災と採取の痕跡がありました。4箇所ではゴミの投棄が起こっています。3箇所ではバイクやサイクリングによる影響もありました。病気や害虫の被害は少なく、それぞれ4本と3本が影響を受けただけです。また、1個体しか見つからなかった地域、Kwazul-Natalでは農業の拡大のために生息地が消滅していると言う報告があります(Scott-Shaw, 1999)。

火災の功罪
繰り返しおこる火災はE. bupleurifoliaの生存に対する脅威の1つです。しかし、火災が発生しない3つの自然保護区では、E. bupleurifoliaの個体数は非常に少なく、火災が発生することに意味がある可能性があります。
火災が種子の発芽を促進したり(Mbalo & Witkowski, 1997)、生長を刺激すると言われています(Pfab & Witkowski, 1999b)。さらに、火災が開花を刺激している可能性があります。また、適度な火災が日照を遮るイネ科植物を燃やすことにも意味があるかも知れません。

最後に
鉄甲丸の自生地の調査により個体数が減少していることが確認されました。おそらく、鉄甲丸の場合は開発や違法採取によるダメージが大きいような気がします。場所によっては1個体のみでしたが、鉄甲丸は多くのユーフォルビアがそうであるように雌雄異株ですから、もはや種子を作ることが出来ません。ですから、その場所においては事実上の絶滅とされるのです。さらに、個体数が減少した場所では、やがて遺伝的に均一になってしまうでしょう。遺伝子の多様性が失われた場合、環境変動や病害虫に脆弱となる可能性もあります。現状においては野生の鉄甲丸に明るい未来を描くことは困難です。しかし、このように学術調査がなされたことは大変な僥倖です。保護のための第一歩としては大変重要と言えるでしょう。
さて、論文を読んでいて気になったのは、鉄甲丸の自生地での生え方です。意外にも鉄甲丸は地中に埋まりがちなようです。ほぼ頭だけを出して花を咲かせている個体もよく観察されたと言うことです。特に乾季には地中に潜り込む性質があるようです。このような生態は、E. pseudoglobosaやE. susannaeでも観察されているみたいですが、厳しい環境に対する適応なのでしょう。非常に面白い生態ですね。



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最近、また一段と寒くなり、睡蓮の水が凍るようになって来ました。いよいよ冬本番です。外に置いた多肉植物は、ただ寒さに耐えるだけの時期です。しかし、室内の多肉植物は大変元気で、花芽を膨らませていたりします。そんな、多肉植物たちを少しご紹介します。

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紅ホリダ
いわゆる紅彩ホリダ。E. heptagona(=E. enopla) × E. polygona v. horridaと言われています。紅彩閣のように沢山の枝が出ますが、枝が太すぎて混んだ感じになります。割と丈夫で放置していても育ちます。


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龍尾閣 Euphorbia griseola
E. richardsiaeの名前で入手したユーフォルビア。小さいワンコイン多肉植物でしたが、直ぐに大きくなりました。この安い多肉植物のシリーズは、名前が間違っていることがあります。しかし、ユーフォルビアは種類が多く似たものが多いため、探し出すのは非常に骨が折れます。

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Euphorbia woodii
まだまだ小さいタコものユーフォルビアです。米粒のような実生でしたが、非常によく育ってようやくタコものらしい姿になりました。
孔雀丸(E. flanaganii)に似ていると言われていますが、そもそもタコものユーフォルビア自体の分類もよく分かりません。似た種類については研究者たちの間でも議論があり、変遷しています。
1915年にN. E. Brownは、E. discreta、E. ernestii、E. flanaganii、E. flanksiae、E. gatbergensis、E. passa、E. woodiiを別種としました。1941年にWhiteらは、E. discretaとE. passaをE. woodiiの異名としました。これらの植物は、個体によりサイズや枝の数や大きさが異なるため、分類を困難としています。Whiteらの考えはそのことを踏まえてのものです。さらに、2012年のP. V. Bruynsはその考えを拡大し、これらの種の違いのすべてを個体差に過ぎないとし、上記のタコものユーフォルビアをすべてE. flanaganiiの異名としました。しかし、現在ではBruynsではなくWhiteらの考えが支持されているようです。

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Gasteria acinacifolia
ガステリアは入手機会が少ないため、多肉植物の即売会では見逃さないようにしていますが、中々めぐり逢いません。基本的に昔からの臥牛と、最近は恐竜は割と目にします。あちこちの店を回り、ビッグバザールなどのイベントに参加しても、アキナキフォリアはこの1回しか見ていません。アキナキフォリアは葉の長さが
75cmにもなるらしい大型のガステリアです。

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Haworthia mucronata v. mucronata JDV 90-111
フィールドナンバー付きのムクロナタです。ほとんど雑草のようなもので、増えやすくしかも直ぐに大きくなります。葉は柔らかくて水っぽく夏は苦手です。葉先が枯れ全体的に痩せてみすぼらしくなりますから、今が一番綺麗な時期です。

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星の林 Haworthia reinwardtii var. archibaldiae
渋い色合いの星の林です。この手の硬葉系はあまり人気はありませんが、独特の美しさがあります。現在は、
Haworthiopsis reinwardtii var. reinwardtiiの異名とされています。


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植物は種類により様々な受粉システムをとりますが、サボテンもまた種類により様々な受粉システムがあります。しかし、サボテンの多くは雌雄同株で、1つの花に雄しべと雌しべがセットになった花を咲かせます。ところが、その常識を覆す論文を見つけました。それは、Alicia Callejas-Chaveroらの2021年の論文、『Breeding system in a population of the globose cactus Mammillaria magnimamma at Valle del Mezquital, Mexico』です。サボテンの大変特殊な受粉システムを明らかとしました。

サボテンの祖先は雌雄同株
雌雄異株はサボテン科では非常に稀です。既知の1438種のうち、24種のみが雌雄異株(dioecy)、あるいは不完全異株(subdioecy)、雌性雌雄異株・雄性雌雄異株(gynodioecy)、三雌異性体(trioecy)を示します。
雌雄異株はサボテン科の中でいくつか独立に進化しています。しかし、原始的なPererkiaにも両性花を持ち、単性花を持つConsolea、Cylindropuntia、Opuntia、Echinocereus、Pachycereusなどでも雌雄同株の痕跡が見られるため、サボテン科の祖先は雌雄同株と見られています。


M. magnimammaの花
古典的な著作であるBravo-Hallis & Sanchez-Mejorada(1991)では、Mammillaria magnimamma Haw.の花について説明しています。「雌雄同株で、雌しべが雄しべより長い。」しかし、2018年に著者らは雌雄同株ではないと思われるM. magnimammaを発見しました。

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Mammillaria magnimamma
『The Cactaceae』(1923年)より。Neomammillaria magnimammaとして記載。


調査地
調査地はHidalgo州Valle del Mezquitalの標高2358mで、Acacia fernesiana、Coryphantha cornifera、C. octacantha、Cylindropuntia imbricata、Echinocereus cinerascens、Ferocactus latispinus、Myrtillocactus geometrizans、Opuntia engelmannii、O. hyptiacantha、O. lasiacantha、O. robusta、Yucca filiferaと共に乾生低木を形成します。

雄性不稔個体の発見
2018年の調査では、M. magnimammaは雌雄同株である個体とそうではない個体が混在していることが明らかとなりました。調査した107個体中、94個体は雌雄同株で、13個体は雄性不稔個体でした。雄性不稔個体は雄蕊群が機能していない状態となっていました。また、2019年の再調査においても、性的状態は年ごとに変化しないことが確認されました。
電子顕微鏡による観察では、雄性不稔個体の葯は開裂せず、花粉は奇形を示しました。花のサイズも異なり、雌雄同株の花は平均14.0mmの長さであるのに対し、雄性不稔個体の花は平均2.2mmと著しく短いものでした。

受粉数と発芽率
また、著者らの観察によると、M. magnimammaは主にミツバチにより受粉されるようです。さらに、雌雄同株の花も雄性不稔個体の花も結実することが確認されたため、雄性不稔でも雌性機能は正常であることを示しています。ただし、雌雄同株の花は平均97.5個の種子を生産したのに対し、雄性不稔個体の花は平均120.0個の種子を生産しました。種子のサイズも異なり、雄性不稔個体の種子はより大きい傾向が認められました。これらの種子を採取し播種したところ、雄性不稔個体の種子の方が発芽率が高いことが確認されました。

雄性不稔種子の優位
花粉媒介者は、雄性不稔個体の花より約2倍の頻度で雌雄同株の花を訪れました。しかし、出来た種子は雄性不稔個体の方が多いものでした。雄性不稔個体の花は生殖能力が高いと考えられます。また、雄性不稔個体の種子の方が大きく発芽率が高いことから、種子の品質が非常に高いことが分かります。対する雌雄同株の花は、一部では自家受粉している可能性もあり、その場合は種子の発芽能力が低下することも考えられます。

最後に
以上が論文の簡単な要約となります。
雌雄同株とされてきたM. magnimammaの野生個体群において、驚くべきことに雄しべや花粉が機能していない雄性不稔個体が見つかったと言うのです。さらに、雄性不稔個体は種子の数や品質において、雌雄同株個体より優れていることが分かりました。しかし、優位に見える雄性不稔個体は全体の12%に過ぎませんでした。これが何を指すのかは難しいところです。もしかしたら、雌雄同株から雌雄異株への進化の過程を、我々は目撃しているのかも知れませんね。



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去年の12月に板橋区立熱帯環境植物館に行ってきましたが、その時の撮影した写真をご紹介しています。過去、4回に渡り不定期に記事にしてきましたが、本日で最後です。喫茶店で昼食をとった後、喫茶店脇の通路にあった植木鉢にも中々面白い植物がありました。

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喫茶店の脇に巨大なヤシの葉が見えます。1階に植えられている植物です。

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マニラヤシ Veitchia merrillii
こちらは通路に置かれた植木鉢のヤシです。すっきりとした形が美しいですね。


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Pachypodium geayi ?
何気なくパキポディウムがあったりします。名札がありませんが、ゲアイっぽい感じがします。


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花キリンが沢山咲いていました。

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サンゴアブラギリ Jatropha podagrica
サンゴアブラギリの花が咲いていました。昔から有名な塊茎植物です。


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Adenium obesum
塊根植物のアデニウムです。現在、A. arabicumやA. socotranumはA. obesumの異名となっております。特徴はやや異なりますが、産地毎の変異程度と考えられているのかも知れません。


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イランイランの木
イランイランの木も開花していました。香水の原料として有名で、私も香りをかぎましたが強い芳香がありました。それほど目立たないため、気が付かずに素通りしている人ばかりでした。実に勿体ないことです。


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ミドリサンゴ Euphorbia tirucalli
ミルクブッシュとも呼ばれ園芸的に一般的ですが、ユーフォルビアですから乳液は有毒で刺激性があります。世界中の暖地に植えられ帰化していますが、何かの薬となるのではないかと盛んに研究されています。


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トゲナシハナキリン Euphorbia geroldii
トゲナシハナキリンが開花していました。あまり盛んに分岐せず、直立しない姿が面白いですね。名前のようにトゲがありません。

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トゲナシハナキリンの花は丸みがあり美しいものです。

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キンゴウカン Acacia farnesiana
マメ科植物。可愛らしい花が咲いていました。「香りアカシア」と呼ばれ、香水にも使用されるそうです。しかし、匂いをかぐのを忘れてしまいました。残念。
現在では、アカシア属ではなくVachellia属とされているみたいです。


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Plumeria pudica?
特徴的な葉はP. pudicaだと思うのですが、名前を見るのを忘れてしまいました。

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花が咲いていましたが、見上げないと分からないため、見過ごしてしまいがちな気もします。

さて、と言うわけで初めて板橋区立熱帯環境植物館に行ってきたわけですが、私個人的には非常に満足度は高かったです。本で名前だけ知っているような熱帯植物を見ることが出来ました。施設の規模は小さいのですが、熱帯森らしく密度が高く見どころは沢山ありまます。入館料は安いので私はお得感がありましたが、熱帯植物に興味がなければ面白さも半減してしまうかも知れません。私は本で読んだフタバガキ科植物だのイランイランの木の花だのが見れて感激したわけです。無闇矢鱈に本を読んできましたが、たまには読書も役に立つこともあるものですね。次はどこの植物園に行こうか思案中です。


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塊茎・塊根植物をコーデックスと呼びますが、近年の多肉植物ブームの一旦はコーデックスの奇妙な姿が目を引いたと言うこともあるでしょう。コーデックスでは、初期はパキポディウムが、最近はオペルクリカリアが人気のようです。そんな中、ドルステニアもメインストリームにはなりませんが、割りかし人気があるようで、多肉植物の販売イベントがあれば苗がかなりの割合で見られます。Dorstenia foetidaなどは、もはや普及種と呼んでも良いかも知れません。さて、本日はそんなドルステニアについてのお話です。長きに渡り正式の記載されず、裸名で呼ばれていたドルステニアがあると言います。その発見の経緯などを辿った、Alain Rzepeckyの2016年の論文、『Dorstenia horwoodii Rzepecky sp. nov. from nudum to novum, a fortyish year hiatus』をご紹介します。

70年代後半以来、小さく装飾的な葉を持つドルステニアが一部の愛好家にコレクションされて来ました。このドルステニアは、ドルステニア研究に貢献した故Frank (Francis) K. Horwood(1924-1987年)に因み、一般的にはDorstenia horwoodiiとして知られています。Horwoodはは1974年に2本の論文を提出し、片方は1970年にJohn J. LavranosとRenato Bavazzanoが収集した資料を用い、D. horwoodiiを描いています。この植物は、ソマリア北東部のNugaal州Eylの北東約5kmの石灰岩の台地で、岩の割れ目に生えているのが見つかりました。

1973年には、Horwoodは友人であるLavranosに同行し、現地で新しい植物を得て栽培することに成功しました。1985年にも、Lavranosに加え、Susan Carter、Seymour Lindenと共にEyl東の高原で観察を行いました。しかし、L. E. Newtonにより行われた植物標本の整理により、1959年にイギリスの昆虫学者であるChristopher Francis Hemmingにより同地域での収集がなされたことがわかりました。次のような注記がありました。「俗名Bogoh-uched。巨大な岩の上の小さな穴や隙間に生える、2インチまでの小さな植物。」HemmingのコレクションはDorstenia crista Englとして寄託されました。D. cristaは1989年にBerg & HijimanによりD. foetidaの異名とされました。


D. horwoodiiはD. foetidaを思い起こしますが、特徴は異なります。D. horwoodiiは高さ6cmで直径8cmの半球状の茂みを作ります。枝は短く、時間経過と共に灰色となり、密集し幅は5〜6mmです。葉は直ぐに落葉し、数は少なく枝先に集まります。

以上が論文の内容となります。
D. horwoodiiは古くに発見されていたにも関わらず学術的に正式な記載をされず、裸名として長きに渡りコレクターに知られて来ました。しかし、2016年のこの論文により正式に記載がなされました。そして、D. horwoodiiの名前は認められました。キュー王立植物園のデータベースにも名前があり、以下のように記されています。


Dorstenia horwoodii Rzepecky
First published in Cact. Succ. J. (Los Angeles) 88: 68 (2016)
This species is accepted
The native range of this species is Somalia. It grows primarily in the desert or dry shrubland biome.

D. horwoodiiのように裸名で呼ばれる多肉植物も沢山ありますが、このように正式に記載されるケースは稀なような気がします。しかも、発見の経緯まで丁寧に追っています。一般的に裸名がついた多肉植物は園芸目的の違法採取や栽培植物が起源であるため、自生地が不明なものが多く、学術的な記載が困難なのでしょう。


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去年の12月に板橋区立熱帯環境植物館に行ってきましたが、沢山の熱帯植物の写真を撮ってきたのでご紹介しています。前回までは熱帯低地林でしたが、本日は雲霧林に入ります。霧が発生する雲霧林はシャクナゲや蘭が見られます。

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非常に湿度が高く、窓が結露していました。しかし、あまりにも写真を撮りすぎたせいか、スマホが熱々に加熱してしまいました。シャッターが中々下りずブレてしまい、残念ながらほとんどの写真は駄目でした。

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ウツボカズラがよく育っていました。普通は傷みがちですが、湿度が高いせいか非常に綺麗です。

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カクチョウラン Phaius tankervilleae
立派な大型の地生ランです。洋蘭は基本的に着生種ですから、地生種自体があまり見かけません。他にもあちこちに蘭が咲いていましたが、そもそもカクチョウランはあまり見ない珍種ですね。この仲間は種類を見分けるのがとても難しいそうです。


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ジゴニシア 紫小町
聞いたことがない蘭でしたが、Zygopetalum x Aganisiaと言う組み合わせの交配種のようです。現在では、「× Zygonisia」と表記するようです。

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Coelogyne multiflora
100輪以上の花を咲かせるそうです。よく育った群生鉢は何本も花茎を出して実にゴージャスな雰囲気になります。

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Vanda
ちょうど良いタイミングでした。ヴァンダは豪華ですが、あまり家庭向きではないので憧れますね。


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Monstera deliciosa ?
ホウライショウも立派です。モンステラと呼んだ方が一般的ですね。しかし、一般的にホムセンなどで見るモンステラはM. adansoniiですが、こちらはM. deliciosaでしょうか? モンステラは詳しくないのですが、M. macrocosmと言う種類がM. deliciosaと混同されることもあると言います。しかし、M. macrocosmは学術的に記載がありません。一体、何者なのでしょうか?


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Medinilla magnifica
シャンデリアの様な花を沢山つけますが、残念ながら開花期ではありませんでした。神代植物公園の大温室では、5月のバラフェスタの時に咲いていましたね。


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Lecanopteris crustacea
こちらはウラボシ科のシダ植物ですが、変わった特徴があります。根元か膨れていますが、内部は空洞になっておりアリの巣になります。アリノスシダとも呼ばれ、何種類かあるみたいです。アリ植物は気になる存在ですが、初めて見ました。


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Hydnophytum
こちらは有名なアリノスダマです。種類は不明ですが、根元の膨らみは迷路状になっており、やはりアリの巣が出来ます。


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ヘゴ付けの蘭が沢山ありました。

さて、いよいよカメラの具合がよろしくないため、いい時間なので昼飯をとりました。熱帯環境植物館の2階にある「喫茶店クレア」と言うお店です。マレーシアなどのアジアンフードのお店です。ちょうど土日だけの営業のようです。グリーンカレーとブルーフラワーハーブティーを頼みました。
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グリーンカレーは少し辛いくらいで、ガチな店ほどではないので食べやすかったです。
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美しい青のティーです。
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レモン果汁を入れると色が変わります。
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混ぜれば紫色に変わります。しかし、酸っぱいため、ガムシロップを入れる作法のようです。個人的には青色の時がお茶らしいさっぱりした味で一番好きでしたが。

この後、カメラが復活したので、喫茶店の脇の通路で鉢植えの植物の写真を少し撮り、国際多肉植物協会の例会に向かいました。次回でラストです。


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めっきり寒くなりましたが、多肉植物たちは暖かい室内で花を咲かせているものもあります。一度葉を落とした花キリンも、新たに葉を出し始めたりしていますが、徒長しそうなので大人しくしていて欲しいのです。中々思った通りにはいかないものです。

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守殿玉
守殿玉は去年は割りかしよく生長しました。まだまだ小さいですが。ちなみに、守殿玉はG. bodenbenderianumとされているみたいです。


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Euphorbia lophogona
ロフォゴナが開花しています。花キリンの1種ですが、原種でこれ程大きく見栄えする花を咲かせるものは珍しいですね。
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新しい花芽がどんどん出て来ます。まあ、秋頃購入してからずっと咲き続けているわけですが。
見た目は何となくE. viguieriに似ていますが、遺伝的にはE. miliiに近縁です。

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1954年のLeandriの著作のロフォゴナ。この図譜を見てから気になっていた花キリンです。

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Euphorbia razafindratsirae
キュー王立植物園のデータベースや南アフリカ国立多様性研究所(SANBI)ではE. mangokyensisの異名とされています。これは、2021年のThomas Heavermansらの「Novelties in Malagasy Euphorbia (Euphorbiaceae)」の記載によるものです。しかし、サイトによってはE. mangokyensisの標本にE. razafindratsiraeが混ざっていたため混同されただけで独立種であると書かれています。ただ、そのことを指摘した1次文書が見つからないため困っています。誰がどこで主張しているか謎です。
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初めて花が咲きました。

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紅彩ロリカ
紅彩ロリカが開花しました。実に奇妙な姿です。
紅彩閣と炉裡火の交配種。

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花は紅彩閣より大きく炉裡火の血が見て取れますが、花の形は紅彩閣を感じます。

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Euphorbia tortirama
ユーフォルビアにはこのような塊根からねじれた枝を伸ばす種がいくつもありますが、違いがよく分かりません。販売サイトを見ると、何種類か混同されている気配がありますが…

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臥牛 Gasteria nitida var. armstrongii
特に芸のない普通の臥牛です。生長は良好で、花も咲かせました。2021年の論文、「Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data
」によると、遺伝子解析の結果ではvar. armstrongiiはG. nitidaとは近縁ではありませんでした。しかし、データベース上ではまだG. nitidaの変種なんですよね。論文の内容に瑕疵があるのか、審議中なのかよく分かりません。


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何時ぞやか、Euphorbia sp. nova. somalia hordioと言う名前のユーフォルビアを入手しました。「sp. nova.」は新種と言う意味ですが、実際に学術的に記載されていませんから、少し違うような気がします。どちらかと言えば、裸名(nom. nud.)じゃないの? と言う疑問もあったりします。また、情報が非常に乏しく、調べてもコピペみたいな文章ばかりで何も分かりませんでした。そこで、記事内で情報を呼びかけてみたところ、有り難いことにコメント欄に有益な情報が寄せられました。何でも試しにやってみるものですね。さて、とは言え一応は調べてみたものの、決定的に何かが分かったわけではありません。あくまでも、備忘録として現在の知り得た情報を記録しておこうと言うだけのことです。

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謎のユーフォルビア

コメントによりますと、Euphorbia sp. nova. somalia hordioは、産地に誤りがあると言われているそうです。さらに、モザンビーク原産のEuphorbia unicornisとされることもあるそうです。ただ、名前にuniがつくことが個人的に疑問であるとのことでした。確かに、uni=1つの+cornis=角ですから、これはトゲが1本であることを示しています。somalia hordioはトゲが2本ありますからね。しかし、E. unicornisはsomalia hordioに非常によく似ています。

Euphorbia unicornisの画像は以下のリンクから。

そもそも、今まで
somalia hordioに似たユーフォルビアを見たことがなかったので驚きました。E. unicornisとsomalia hordioが同一種ではないとしても、近縁であろうことは何となく分かります。E. unicornisはモザンビーク北東部の原産ですから、somalia hordioはやはりモザンビークあたりの原産なのではないかと予想されるのです。
さて、ではE. unicornisとはどのような植物であるのか調べていたのですが、そこには興味深いことが書かれていました。E. unicornisはE. corniculataに似ていると言うのです。

Euphorbia corniculataの画像は以下のリンクから。

E. corniculataはモザンビーク北部中央に分布します。E. unicornisに似ていますがトゲは2本あります。ここで、キュー王立植物園の提供する情報を見てみましょう。高さ15cmまでのトゲのある多肉質な低木で、基部から密に枝分かれして直径80cmまでの塊になります。枝は直径10-15mmで、6-8個の溝に区切られた稜を持ちます。トゲは8mmまでで可変し、spine shieldは結合し、幅5mmの連続し曲がりくねる角質の隆起があり溝で仕切られています。葉は0.75mm×0.75mmで脱落性です。


こちらは特徴がよく分かる画像です。

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Euphorbia sp. nova. somalia hordio

ユーフォルビアのトゲとトゲの間をつなぐ角質化した構造をspine shieldと呼びます。somalia hordioは色合いが派手なせいで、spine shieldが分かりにくい感じがします。この暗い色の部分がspine shieldにあたるのでしょうか。まあ、そもそもE. corniculataもspine shieldは画像ではよく分かりませんけど。

こちらは、E. corniculataの絵ですが、しなりながら育つ様子はsomalia hordioに良く似ています。

ことさら確証もなくダラダラ書いてきましたが、残念ながら良く似ている止まりです。花が明るい紅色で非常に特徴的ですから、花が咲けば何か言えるかも知れませんが、花が咲くのはいつになるやら…
これは個人的な意見ですが、somalia hordioはE. corniculataのコントラストが強いだけの個体にも見えます。どうでしょうかね? 現状では手詰まりですから、他に何か情報をお持ちの方はコメントしていただけますと助かります。


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ここ2回に渡りIpomoea属のタイプの変更を巡る論争を記事にしてきましたが、本日で終わります。事の経緯を簡単に振り返ってみましょう。
まず、2020年にEsermanらがIpomoea属のタイプを変更することを提案しました。属のタイプとはその属を代表する種を示しています。Ipomoea属は遺伝子解析により他属とされていた植物を含むものでした。そのため、旧来のIpomoea属だけを1つのグループとすることが不可能となったため、それらの属をIpomoea属が吸収して巨大に拡大したIpomoea属となったのです。Esermanらは巨大化したIpomoea属が将来的に分割された場合、Ipomoea属のタイプになっているI. pes-tigridis(キクザアサガオ)に近縁な種のみがIpomoea属となり、その他の種は新たに命名し直す必要が生じます。特にI. butatas、つまりサツマイモは作物として重要であり、名前の変更は混乱をもたらすかも知れません。そのため、サツマイモに近縁なI. triloba(ホシアサガオ)をIpomoea属の新たなタイプとした場合、Ipomoea属が分割されたとしてもサツマイモはIpomoea属として名前を変更する必要がなくなります。


次にMunoz- Rodriguezらの2023年の論文をご紹介しました。これは、Esermanらの提案に反対し、Ipomoea属のタイプの変更は必要がないとしています。それは、Ipomoea属の解析が進んでおらず、分割される見込みがないためです。


反論に対する返答
Munoz-Rodriguezらの反論に対し、Esermanらのグループからの返答がなされております。それは、2023年の論文、『Towards a collaborative approach to the systematics of Ipomoea: A response to the "Rebuttal to (2786) Proposal to change the conserved type of Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)"』です。

専門家ではない?
☆反論
Munoz-Rodriguezらは、著者グループについて、「(著者の)大多数はIpomoeaに関する分類学や体系的な研究の経験がほとんどない」と述べています。しかし、著者らはサツマイモとその近縁種についての数十年に渡る、Ipomoeaとヒルガオ科の系統学と分類学への貢献を否定するものです。著者らはIpomoeaやサツマイモに関する様々な分類スケールでの分類学と系統学に関する100以上の出版物を生み出してきました。
★感想
Munoz-Rodriguezの論文は非常に攻撃的なものでした。Esermanらのグループは40人を超える共著者からなりますが、遺伝学や生態学など様々な研究分野の研究者からなり、多方面からIpomoea属を捉えようとしました。ですから、Munoz-Rodriguezの主張は言いがかりに過ぎません。そもそも、他分野の専門家と協力して研究することは一般的です。仮にEsermanのグループにIpomoeaを専門としていない研究者がいたとしても、非難される謂れはないのです。


分割可能性について
☆反論
Munoz-Rodriguezらは「Ipomoea属内で分離された属を認識すると言うこれまでの試みはすべて失敗に終わっているため、この提案は不要である。」とし、「この提案は数百種類のIpomoea属の中に組み込まれた非単系統群の継続的な受け入れと拡張を意味している。」としています。Esermanらはこの主張に全面的に反対しています。Ipomoea属内から単系統属を分離する今までの試みの失敗が、将来的な科学的進歩の可能性を制限するべきではありません。Esermanらがここで強調しているのは、非単系統群を受け入れることはしていないと言うことです。Esermanらの提案は、研究者が複雑なIpomoeaに取り組み続け、将来的な研究をサポートすることにあります。さらに、Ipomoea属に分離可能なグループが提案されており、これからの研究により別属として復活する可能性もあります。それらを「不可能」と主張することは、入手可能なIpomoeaの重要な文献を無視する単純化した見解です。
★感想
Munoz-Rodriguezらが主張する「著者らはIpomoeaの入れ子状に非単系統の属が含まれている場合に、拡張されたIpomoea属を拒否することで、より安定した論理的か達成可能であると言う主張を裏付ける証拠や議論を何も提供していません。」としていました。しかし、Esermanらは拡張されたIpomoea属を受け入れており、否定はしていません。とは言え、確かに(将来的に)分離する可能性があるからタイプを変更するわけであり、分離する可能性がないのなら不必要な処置でしょう。ここで互いに認識の齟齬が生まれているような気がします。
Esermanらは将来的に分離可能性があるからタイプを変更する提案をし、Munoz-Rodriguezらは分離可能性があるのなら根拠を示すべきだとしているのです。そして、Esermanらは逆にMunoz-Rodriguezらが将来的な分離可能性を否定する考え方であるとしています。
基本的に水掛け論ですから、まったく噛み合いません。しかし、Munoz-Rodriguezらの主張するように、将来的な話であったとしても根拠を示すべきでしょう。Esermanらは「将来的な研究」の可能性について述べていますが、分離を提案する研究はあるにせよやや古く、Ipomoeaの系統解析の現状を踏まえてのものとは思えません。この部分はやや強い言い方をしていますが、Esermanらが主張するほど確かなものなのでしょうか?

事実誤認について
☆反論
Munoz-Rodriguezらの反論には事実誤認があります。Ipomoeaをアストリポモエア亜連とアルギレイア亜連に分けていますが、Esermanらの2014年のサンプリング数を減らした系統解析に基づいていると主張しています。しかし、この名前は2003年のStefanovicらの研究により初めて示されました。「アルギレイア亜連を含まない広義のIpomoeaが不適切にサンプリングされ、人為的に厳選された系統を使用し、誤解するように描かれている可能性があります。」とありますが、Simoesらの2022年の研究はIpomoea連内部の関係を評価することを目的としておらず、ヒルガオ科全体の系統を見るためでした。また、この2つのグループ分けは最近の結論ではなく、以前から繰り返し発見されてきたものです。また、Munoz-Rodriguezらは単一の巨大なIpomoea属を主張し、分割された属の認識を却下することを支持する先行文献として2001年のManosらの論文を引用しています。しかし、Manosらは単一の巨大なIpomoeaを主張したことはなく、Ipomoeaが単系統ではないことを実証しました。

★感想
先行文献を私は読んでいないため、ここいら辺はいまいち判断がつかないところです。ただ、Munoz-Rodriguezらは「拡大した単系統のIpomoeaを認識すること」として、1999年のWilkin、2001年のManosら、2019年・2022年・2023年のMunoz-Rodriguezらを挙げていますから、Esermanらの指摘が正しいのならManosに関しては誤りかも知れません。ただし、実例の1つの誤りを指摘しただけにも思えますが、実は文献のうち3つはMunoz-Rodriguez自身のグループなのですから、何やら手前味噌に過ぎない気もします。
ここでついでに指摘しますが、Esermanらは旧世界のアルギレイア亜連から新世界のアストリポモエア亜連にタイプを変更するための根拠の1つとして、種類の多いアストリポモエア亜連の学名の変更は大変である旨を主張しました。しかし、Munoz-Rodriguezらは、アルギレイア亜連に属するIpomoeaの方が種類が多いと反論しました。この反論に対しEsermanらが言及しないのは、私には不誠実に見えます。


将来の研究を妨げているか?
☆反論
Munoz-Rodriguezらは、EsermanらがIpomoea連の新しい分類を提供していないと主張しています。しかし、それはIpomoeaのタイプの変更に関する提案の前提ではなく、それを妨げるものであってはなりません。Esermanらが主張しているのは、将来の研究のための強固な基盤を提供するための簡単な修正であり、サツマイモの名前の変更など、望ましくない命名上の影響を与えることなく再分類を可能とします。
★感想
EsermanらはMunoz-Rodriguezらの反論に対し、直接的に返答していません。分割されると言う根拠は何でしょうか? 私としては研究が進めば、Ipomoea属が分割される可能性は普通にありそうだと思っています。しかし、それはMunoz-Rodriguezらが「将来そのような分類が作成される場合、その時が命名法の問題に対処する適切な時期となるでしょう。」と述べたように今じゃなくても良いわけです。ですから、Esermanらが主張する「妨げ」と言う主張には根拠がありません。ただし、Munoz-Rodriguezらが論文中で幾度か述べている「すべての出版物で単系統の分類群を特定することは不可能かつ不要であり失敗する運命にあると主張してきました。」などと言う言い回しは、将来的にもIpomoea属の分類が出来ないかのように受け取られても仕方がないと思われます。Esermanらの返答で、Ipomoea属の分類についてMunoz-Rodriguezらが「自信がないのかも知れませんが」などと余計な煽り文句で締めていますが、それはMunoz-Rodriguezらの消極的な姿勢から来ているのでしょう。

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Ipomoea angustisecta
『Die Vegetation der Erde』(1910年)より。
現在はI. bolusianaの異名とされています。塊根性のIpomoeaですが、将来的にIpomoea属から分割されてしまうのでしょうか?


最後に
この議論は2020年から始まりましたが、どうやら2023年にEsermanらの主張が受け入れられたようです。そのため、Munoz-Rodriguezらが反論し、それに対しEsermanらが反論したと言う流れになります。ですから、2023年に議論された話題で、まだ議論は続くかも知れません。私ですらEsermanらの主張の一部には瑕疵があるように見えますから、Munoz-Rodriguezらのグループからの再反論がなされるでしょう。しかし、言った言わないと言う部分は水掛け論となるだろうことが容易に想像され、その点は生産性がないので勘弁してほしいところです。現状においては、はっきりしないことが多いように思われ、素人の私には総合的な判断がつきかねると言ったところです。サツマイモの将来の運命は一体どうなるのでしょうか?
3回に渡り追ってきたIpomoea属のタイプの変更を巡る議論ですが、本日で取り敢えずは終わります。再反論がなされたり、新たな系統解析の結果が発表されたなら、また改めて記事にしようと考えております。


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昨日はサツマイモを含むIpomoea属のタイプを変更する提案がなされたと言う話をご紹介しました。


それは、将来的にIpomoea属が分割された時に、サツマイモ=Ipomoea butatasがIpomoea属でいられるようにと言うことでした。しかし、この提案には反論がなされています。反論があること自体は学術的に有意義なことと言えるでしょう。ただし、内容的にやや問題があるように思われます。本日はその内容を見てみましょう。


提案に対する反論
2020年に出されたIpomoeaのタイプを変更すると言う提案に対し、反論がなされています。それは、Pablo Munoz- Rodriguezらの2023年の論文、『Rebuttal to "(2786) Proposal to change the conserved type of Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)"』です。一体、何を問題としたのでしょうか?

提案の確認
まずは、反論を受けているLauren A. Esermanらの2020年の論文の内容から確認しましょう。
1. Ipomoeaは2つのグループからなり、大半を占める新世界のアストリポモエア亜連と、旧世界のアルギレイア亜連からなります。
2. Ipomoea属のタイプであるI. pes-tigridisはアルギレイア亜属に含まれます。
3. 商業的に重要なサツマイモ(I. butatas)を含むアストリポモエア亜連の種(=I.triloba)にタイプを変更するべきです。
4. 将来的にIpomoeaが分割された時に、サツマイモがIpomoeaその内に残されるために必要なことです。

提案に根拠はないと言う主張
☆主張
Ipomoea属内の分離属を認識する試みはすべて失敗に終わっています。これまで不可能であったIpomoeaの満足のいく自然な再分類が可能であると言う、この署名者グループ(その大部分はIpomoeaに関する分類学上または系統的研究の経験がほとんどない)による主張に懐疑的です。そのような分類や根拠を提出していません。
★感想
ここは正直なところ私は首を傾げました。その学術的な内容以外の部分についてです。まず、Ipomoeaの研究者以外は意見を述べてはならない、あるいは意見に重みがないかのような主張がなされています。しかし、これは誤りであると断言出来ます。ある種の権威主義であり、それは科学ではありません。あくまで、その内容に意味があり、誰が主張したかは関係がありません。実際には未だに学術世界においても権威主義は大手を振っていますが、表向きに主張するのはあまりにも馬鹿げています。

また、「署名者グループ」とは何でしょうか? Esermanらの2020年の論文では、40名を超える共著者からなるものでした。それを「署名者」と言うのは、ただ名前を貸しただけのように揶揄する目的しか見いだせません。反論はあくまでも内容で示せば良いだけの話です。


不道徳な幻想とは?
☆主張
提案を拒否する2つめの理由は、命名規則の安定性です。IpomoeaのタイプをI. trilobaに変更しても、既存のタイプであるI. pes-tigridisよりも命名上の安定性は得られません。これはMainitz(1976)により提案され、命名上の安定性を理由に数十年に渡り受け入れられています。旧世界のIpomoeaにはすべての分離属を合わせたよりも多くの種を含みます。アルギレイア亜連を含まない広義のIpomoeaが不適切にサンプリングされ、人為的に厳選された系統を使用し、誤解するように描かれている可能性があります。Esermanらの言及したアストリポモエア亜連とアルギレイア亜連は、800種以上あるIpomoeaから27種のみを含む初期の系統解析(Eserman et.al., 2014)に基づいていることに注意して下さい。したがって、拡大された単系統のIpomoeaを認識すること以外の再整理は、Munoz-Rodriguez et. al., 2019により行われたよりも沢山あり、命名上の変更が必要となることに注意することが重要です。さらに、サツマイモが「名前を失う」危険にさらされていると言う示唆は、分類学的に不安定であると言う不道徳な幻想を生み出しています。
★感想

またもや感情論が登場しました。系統に関する内容は私は確認していないため、判断出来かねます。しかし、「不道徳な幻想」とは何でしょうか? 不満があるのは分かりますが、個人のSNSではないのですからいい加減勘弁して欲しいものです。
ただし、命名法上の安定性には注意が必要です。長く使用された名前が重視されるのは著者らの指摘通りです。さらに、Esermanらの主張では新世界のアストリポモエア亜連の方が種類が多いため、アストリポモエア亜連に含まれる種をタイプとすべきであるとしています。しかし、著者らは旧世界のアルギレイア亜連の方が種類が多いと主張しています。この点は私には判断がつかない部分です。また、系統解析についてですが、Esermanらは2014年の論文による少数の解析結果に依存しているとし、その点を問題としています。私には、Esermanらが2014年の論文にのみ準拠しているようには思えませんが、いずれにせよ系統解析は道半ばで断言出来る段階ではなさそうです。


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Sweet Potato
『The sweet potato in Hawaii』(1923年)より。


引用の誤り
☆主張
著者らはIpomoeaのタイプを変更することを相談されておらず、Esermanらは誤って研究を引用しています。「アルギレイア亜連はIpomoea連における再境界の最も有用な更新に向けた障害であると考えられています…」 著者らはIpomoea連の分割を主張したことはなく、すべての出版物で単系統の分類群(属、亜属、節)を特定することは不可能かつ不要であり失敗する運命にあると主張してきました。
★感想
学術論文は協力しても良いのですが、通常は自由競争です。一々お伺いを立てる必要はありません。ですから、Esermanらは著者らのグループに相談してもしなくても構いません。
正直、言った言わないの話はどうでも良いのですが、まあとにかく著者らはIpomoea属を分割せず、と言うか事実上は出来ないので、拡張されたIpomoeaの維持を主張していることは理解出来ます。


タイプの変更は時期尚早
☆主張
署名者(Esermanら)はさらに次のように続けてもいます。「命名法がより安定した論理的な分類の発展を妨げるべきではないと考えており、Ipomoeaのタイプをアストリポモエア亜連に含まれる種に置き換えることを提案します。」 著者らはIpomoeaの入れ子状に非単系統の属が含まれている場合に、拡張されたIpomoea属を拒否することで、より安定した論理的か達成可能であると言う主張を裏付ける証拠や議論を何も提供していません。タイプの変更は、Ipomoeaの分類学と系統発生の研究が行われ、Ipomoeaの生物学、進化、形態が何らかの形で異なることが実証された後にのみ考慮されるべきです。
★感想
煩わしいので著者らの煽りは無視して進めます。実はこの部分は非常に重要な話です。確かに現状において、Ipomoeaの分類はあまりにも分からないことばかりです。ですから、Ipomoea属を分割すると言う話が近々で起きるとはとても思えず、今やらなくてはならないことかと聞かれると微妙な気もします。将来的に詳細が明らかとなってから考慮したら良いと言う著者らの主張は、私には正論に思えました。


まとめ
この論文の要点は、単純にIpomoea属のタイプを変更する必要はないと言うことです。まず、現状において、Ipomoea属が現時点においては分割される可能性は低いため、分割される可能性を考慮してタイプを変更するのは意味がないとしています。これらの著者らの主張は、傾聴に値するもののように思われます。しかし、Ipomoea属が将来的には分割される運命にあるような気もしています。この反論を受けて、Ipomoea属のタイプの変更を主張したEsermanらが反論に返答しています。記事がまたもや長くなりすぎたため、ここで切ります。明日がこの一連の記事の締めになります。


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塊根植物にイポメアと言うものがあります。綴りは「Ipomoea」なので正確にはイポモエアですが、それはともかくこれは分類的にはヒルガオ科植物です。ですから、塊根性のIpomoeaも朝顔のような花を咲かせます。そして、Ipomoeaの代表種と言えば、何と言ってもSweet potato、つまりはサツマイモでしょう。サツマイモの学名はIpomoea butatasですからね。考えるに、多年生で芋が生長し続けるのが塊根性Ipomoeaで、1年ごとに芋を新しく作り直すのがサツマイモと言うことになるのでしょうか。と言うことで、本日はサツマイモを含めたIpomoeaの話です。調べてみると、近年Ipomoeaを巡って研究者たちが何やら激論を交わしているようです。そして、話の中心にサツマイモがいるのです。一体、どういうことなのでしょうか? これは、サツマイモに限らずすべての植物の分類に関わる重要な話です。長くなりますが、ぜひご一読下さい。

Ipomoeaのタイプを変更する提案
事の発端となったのは、Lauren A. Esermanらの2020年の論文、『(2786) Proposal to change the conserved type Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)』です。実に総勢41人の研究者の連名による論文です。話が複雑なので適宜私の解説を交えながら、簡単に要約していきます。

Ipomoeaのタイプはルコウソウ
Ipomoeaはヒルガオ科最大の属で、650〜900種程度があります。Ipomoeaは形態的に明確な違いがないため、その分類と命名には問題があり、長い議論の歴史があります。現在の学名のシステムを作ったvon Linneは17種のIpomoeaを記載しましたが、Ipomoea quamoclit(ルコウソウ)だけが1737年のvon Linneの初期の記述と一致します。現在の二名式学名は1753年にvon Linneが発表しましたから、それ以前の話になりますね。そのため、最も早いIpomoeaの記述として、ルコウソウは理想的なIpomoea属のタイプとなります。属のタイプは、その属を代表する種を指し示すものです。

Quamoclitの分離
その後にIpomoeaからQuamoclit属を分離させる提案がなされ、何百種類ものIpomoeaの名前を組み替えられる羽目になりました(Roberty, 1952)。詳しくは分かりませんが、Ipomoea属のタイプであるルコウソウがQuamoclit属になってしまったので、Ipomoea属は廃棄されてしまったのかも知れません。そうなると、ルコウソウと近縁ではない膨大な種は新たな命名が必要となってしまいます。
しかし、MainitzがI. pes-tigridis(キクザアサガオ)と共にIpomoea属を保存することを提案し受け入れられましたため、混乱は収まりました(1981, 1982)。近縁種が少ないルコウソウをIpomoea属のタイプとする危険性からの措置と思われます。


Ipomoeaの遺伝子解析
近年では分子系統解析の成果により、より安定した分類法が確立されつつあります。Ipomoea属内で、狭義のIpomoeaは側系統であり、その中に10属が入れ子状になっていました。その10属とは、Argyreia(オオバアサガオ属)、Astripomoea、Blinkworthia、Lepistemon、Lepistemonopsis、Mina、Paralepistemon、Rivea、Stictocardia、Turbinaです。つまり、これらの10属はIpomoeaに組み込まれてしまっており、分離することが出来ないのです。
これらの成果により、Ipomoeaの正体に関する議論は、さらに深まりました。Wilkinはイポモエア連(※連とは科の下、属の上の分類群、Ipomoeeae)のすべてを狭義のIpomoea属に含めることを提案しました。これは2019年には、Munoz-Rodriguezらにより取り上げられました。属を超えた分類を提案せず、Ipomoea属を約900種まで増加させました。


2つのIpomoea
遺伝子解析から、イポモエア連は2つのグループに分割可能です。ここでは、仮の名前として、非公式名「Astripomoeinae」(アストリポモエア亜連)と「Argyreiinae」(アルギレイア亜連)としています。前者は新熱帯のIpomoeaで、後者は旧世界に分布するIpomoeaです。ここで問題が生じます。それは、Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオが、アルギレイア亜連に含まれてしまうと言うことです。

サツマイモの危機
Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオがアルギレイア亜連に含まれるならば、もしIpomoea属が分割された場合、Ipomoea属はアルギレイア亜連に含まれる種だけになり、アストリポモエア亜連に含まれる種はIpomoea属ではなくなります。その場合、約600種もの名前の変更が必要となります。アストリポモエア亜連には観賞価値の高い種も含み、経済的に重要な作物であるサツマイモ(I. butatas)の名前も変更しなくてはならないのです。サツマイモは数千〜数万の品種があり、年間9000万トン以上生産される重要な作物です。サツマイモの名前の変更は、混乱を招き、生産する企業などに無駄な出費を強いるかも知れません。

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Sweet Potato
『Sweet Potato Culture for profit.』(1896年)より。


タイプの変更の提案
この問題は、Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオがアルギレイア亜連であることが原因です。膨大な名前の変更を避けるため、アルギレイア亜連もアストリポモエア亜連も、巨大なIpomoea属に含めることを支持します。また、Ipomoea属のタイプをアストリポモエア亜連に含まれる種に置き換えることを提案します。将来的にIpomoeaが分割される場合でも、アストリポモエア亜連に含まれる種がタイプならば、より種類が少ないアルギレイア亜連に含まれる種の名前を変更するだけで済みます。そして、サツマイモの名前の変更を避けることが出来るのです。

新しいタイプはホシアサガオ
Ipomoeaのタイプであったキクザアサガオは、遺伝子解析により他のIpomoeaの大部分と遠縁であることが示唆されています。ここでは、キクザアサガオの代わりにI. triloba(ホシアサガオ)をIpomoea属のタイプとすることを提案します。Woodらの分子系統学的研究により、ホシアサガオがサツマイモに近縁であることが判明しています。したがって、この提案されたタイプにより、経済的に最も重要な種の命名法の不安定化を避け、将来的にIpomoeaの分類を再評価することが可能となります。
ここで、なぜサツマイモをIpomoea属のタイプとしないかと言えば、それは命名年が早いものが優先されるからです。サツマイモの命名は1753年のConvolvulus butatas L.でありかなり早いのですが、初めはIpomoea属ではありませんでした。ちなみに、サツマイモがIpomoea属とされたのは1793年のことで、Ipomoea butatas (L.) Lam.です。対するホシアサガオは、1753年に命名された、Ipomoea triloba L.です。


何故、分割される可能性があるのか?
属の分割の話は分かりにくいでしょうから、解説します。まず、伝統的に植物の分類は花の構造を指標としてきました。ですから、花を見ればどの分類群に入るか分かるのです。遺伝子解析の結果でも、基本的には花の構造による分類は正しいことが確認されています。ただし、花の構造による分類にも問題があります。
1つは、分類群同士の関係が分からないことです。あるグループ内で共通する構造があると言うところまでは分かります。しかし、異なるグループ間で比較しようとすると、何を基準として採用して良いのかが分からないのです。これは、植物がどのように進化したかが分からない限り、当て推量とならざる得ません。ですから、遺伝子解析により伝統的な植物の分類は否定され、基本的に一新されたのです。
2つめは、花の特徴が共通する分類群内の分類が難しいことです。花の構造が同じである以上は、何かしらの共通した形質を新たな指標とする必要があります。しかし、その形質は共通祖先から始まるものなのか、種ごとに個別に獲得したものなのかが判別出来ません。例を挙げれば、植物ではないのですが、イタチで見てみましょう。イタチの仲間は骨格を見れば、直ぐに分かります。そして、伝統的な分類では、魚食性の種は歯や頭蓋の特徴が共通する1つのグループとされていました。しかし、それは各グループで魚食性の種類が、似た特徴をそれぞれ進化させただけだったのです。いわゆる収斂進化と呼ばれるもので、最適化されると類似してくると言うだけの話です。つまり、植物も収斂進化なのかどうかが見た目では判別出来ませんから、花の特徴が共通する分類群内の分類はとても難しいのです。
以上のことを踏まえれば、Ipomoea属内の分類は困難であることが分かります。遺伝子解析により属内分類が明らかとなりつつありますが、あまりにもIpomoea属は種類が多すぎて、そのすべてを明らかとすることは難しいかも知れません。しかし、将来的には分かりません。いつか肥大化したIpomoea属は分割されるかも知れません。その時に、サツマイモを含むグループだけがIpomoea属となるのでしょう。


まとめ
ややこしい話でしたが、これは分類群の安定に関する話です。遺伝子解析によりIpomoea属は他属とされてきた複数のグループと区別出来ないことが判明しました。そのため、それらのグループをIpomoea属に加入させることにより、Ipomoea属は巨大に膨れ上がったのです。そして、膨れ上がったIpomoea属は将来的に分割される可能性があります。その場合、Ipomoea属のタイプがキクザアサガオであるため、キクザアサガオを含むグループが真のIpomoea属となり、サツマイモを含むグループはIpomoea属ではなくなってしまうのです。それを避けるために、Ipomoea属のタイプを変更しましょうと言う提案でした。
さて、この提案には反論がなされています。とは言え、記事があまりにも長くなってしまったので、続きは明日にしましょう。


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私の2024年一発目の多肉植物イベントは、ビッグバザールです。本日開催されたので行ってきました。
前回のビッグバザールは、どうにも全体的に高くて敵わんなあと言った感じでした。苗でも4000〜6000円するなら、わざわざ苗を買う必要がないような気がします。私がビッグバザールで買うのはユーフォルビア苗かアロエと相場が決まっていますが、今回はいつもは買わないようなものにチャレンジしようかなと思っていました。

開場前に並ぶつもりはありませんでしたが、午前中に帰宅する腹積もりでした。しかし、急遽所要が出来てしまったため、結局TOCについたのは昼前になってからでした。おそらくはこれでも人はかなり減っていたはずですが、まあまあの混雑具合でしたね。
さて、私が買いがちなユーフォルビアや硬葉系ハウォルチアあたりは、よく見るラインナップでした。変わったものを買うつもりでしたが、変わったものはやはり高額でしたね。今回は見るだけとしました。まあ、それほど気になる多肉植物がなかったと言うこともあります。次回に期待しましょう。

それでも、一応は購入したものもあります。相変わらずの花キリンと、ギムノカリキウムです。
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特守摩天竜 実生
「魔」ではなく、なぜか護摩の「摩」となっていました。1cmくらいの非常に小さい苗です。並び的にグランカクタスさんの苗です。
それはそうと、魔天竜はGymnocalycium mazanenseと言われていますが、現在はG. hossei ssp. hosseiの異名とされています。しかし、G. hosseiは海外ではやや混乱しているみたいですね。調べてみます。ただ、この「特守魔天竜」は何者なのかはよく知りません。選抜品種なのか何かと交雑しているのか気になりますね。


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ユーフォルビア・ワリンギアエ
Euphorbia waringiaeです。そこそこしましたが、まあそれなりのサイズですから不満はありません。まだ塊根は地下に埋まっています。毎度、変わったユーフォルビア苗を並べてくれるX-Plantsさんの苗です。しかし、E. waringinaeは初めて見ました。実生の塊根性花キリンでは、E. cylindrifoliaやE. cap-saintemariensisあたりがありました。E. waringiaeはこれ1つだけしたが。あと、E. multifoliaを沢山実生したみたいです。

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この白い幹肌が良いですね。
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この長い葉が特徴ですが、よく見ると地味な花が咲いていました。E. cylindrifolia系ですね。

というわけで、新年一発目の多肉イベントはビッグバザールでした。都庁前駅近くで開催されるプレミアムバザールが月末にありますから、新年早々、イベント続きですね。そう言えば、プレミアムバザールのパンフレットを入口で配っていましたね。
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1月27日と28日の10時から。
新宿住友ビル三角広場にて開催。
カフェ、レストランもあり、キッチンカーも2台来ます。50台のテーブルでお弁当も食べられます。会場内にトイレもあります。


何でも、会場費がタダらしく、そのため今回は入場料が要らないそうです。大江戸線の都庁前駅から近く、直通通路があるそうなので楽そうではあります。果たしてどのようなイベントになるのでしょうか? まあ、ビッグバザールの延長戦のようなものかも知れませんけど。


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年末年始は2023年を振り返っていましたが、そろそろブログも平常運転に戻ります。早速、正月明けの我が家の多肉植物の様子を少しご紹介します。

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Euphorbia ramena
ラメナが開花しました。苞は4枚あるように見えますが、ハート型の2枚の苞からなります。

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Euphorbia ankarensis
アンカレンシスの葉が落ちました。実に奇妙な姿です。
アンカレンシスは現在はE. denisiana var. ankarensisとされています。しかし、一般的にアンカレンシスは葉に産毛がありますが、この個体の葉はツルツルです。特徴的にはE. denisiana var. denisianaに見えます。

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葉の落ちた跡が幾何学模様のように見えますね。

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Gymnocalycium ochoterenae var. cinereum
武勲丸の変種です。現在はG. ochoterenaeの1タイプに過ぎないとされ、基本種に含まれています。「cinereum」は灰色と言う意味ですが、肌の色から来ているとされます。しかし、個人的には違いがよく分かりません。我が家のキネレウムはトゲが白い傾向がありますが、本来は根本が黒くなります。最近、このタイプがよく出回っています。

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Gasteria baylissiana
小型のガステリアはあまり人気がありませんが、大型種とは異なる面白さがあります。バイリシアナは大変可愛らしい花を咲かせます。
バイリシアナは、発見当時は割と個体数が少なかったようですが、現在はどうでしょうか? 


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Gasteria carinata
カリナタの花が咲いていますが、膨らみが小さくあまり胃(gaster)のような形ではありません。花茎はもう1本伸びています。

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乙姫の舞扇 Kumara plicatilis
去年の夏は暑かったみたいで、葉の枚数がずいぶんと減ってしまいました。水不足かも知れませんね。育て方が厳しすぎるせいか、中々育ちません。美しい茎を見ることが出来るのは何年先でしょうか。

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Aloe haworthioides
去年は日差しが厳しすぎるため、強く遮光したのですが、そのせいか徒長気味かも知れません。

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ハウォルチオイデスの小さく地味な花が咲いています。あまりにも目立たないので、いつの間にやら咲いていつの間にやら咲き終わっていたりします。


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去年の12月24日に行った板橋区立熱帯環境植物館で撮影した写真です。普段見ることが出来ない珍しい熱帯植物が沢山ありました。本日は熱帯低地林のラストです。

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コモチクジャクヤシ Caryota mitis
フィッシュテールパームと呼ばれる面白い形の葉を持つヤシ。スリランカでは糖蜜をとるようです。
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花が咲いていました。
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上の方には果実もなっています。実は2階の通路から近く、よく観察することが出来ます。
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2階から見ると、実にたわわに実っていることが分かります。
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果実は成熟すると黒みが増します。たまたまですが、良いタイミングでした。それほど頻繁に見られるものではないでしょうから。

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何気なく巨大なリュウビンタイの葉が茂っていたりします。ネームプレートはないので、知らないと素通りしてしまいますよね。葉をかき分けて見ると、根元に塊根があります。暗くて上手く撮れていませんでしたが。

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ちょっとした滝がありました。このような飛沫がかかるような場所には、周囲とは異なる植物が生えていたりします。ここでは、コウトウシュウカイドウが生態展示されていました。

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コウトウシュウカイドウ Begonia fenicis
八重山諸島などに分布するベゴニアです。渓流沿いの岩上に生えますから、滝の飛沫のかかる場所に植えるのは理にかなっています。


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熱帯では、このように背が高い樹木に着生したり、つる植物が巻き付いたりします。熱帯の雰囲気がよく出ていますね。

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ルンフソテツ Cycas rumphii
一見してヤシに見えるソテツです。高さ10メートルにもなるそうですが、幹は細く葉の雰囲気もありヤシに似ていますね。非常に分布が広いソテツで、種子が海流に乗って移動すると言われています。

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パラゴムノキ Hevea brasiliensis
ゴム産業のために世界中にプランテーションが作られ、森林破壊の原因の1つになった植物です。


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アブラヤシ Elaeis guineensis
パームオイルを採るためにプランテーションで栽培されるヤシです。パームヤシとも呼ばれています。ゴム産業が下火になってからは、アブラヤシかプランテーションの主役となったのでしょうか。他の油糧作物より油の収率は良いとされています。アブラヤシは2種類ありますが、こちらは西アフリカ原産のギニアアブラヤシですね。産業利用されるのはギニアアブラヤシの方です。

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カレーリーフ Murraya koenigii
ちょっと驚きました。これがあのカレーの木かと。
オオバゲッキツとも呼ばれているようです。香りの強い葉を香辛料として利用していますが、そのようなタイプの香辛料はミカン科が多いような気がします。カレーリーフもミカン科ですが、一見して山椒の仲間かなと思いました。山椒もミカン科ですからね。しかし、山椒ではないとのことです。ナンヨウザンショウと言う名前もあるようですが。
さて、かつて読んだ『香辛料の民俗学』(中公新書)では、カレーの木として出てきました。何でも、カレーの木の話をすると、カレーは木に生るものではないと説教されてしまうとのこと。

ちなみに、カレーリーフはMurraya属から分離され、現在はBergera koenigiiとなっています。Bergera属は1属1種の単形属です。

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オオベニゴウカン?
名札を見忘れたので何だか分かりませんが、外見的にはネムノキっぽいので、オオベニゴウカン(大紅合歓)かなあと思います。2階まで届くサイズなのでヒネム(緋合歓)ではないはず。沢山開花していました。
ちなみに、オオベニゴウカンの学名はCalliandra haematocephalaです。ボリビア原産ですが、世界中の暖地に移植されています。

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モクセンナ Senna surattensis
如何にもなマメ科植物です。ちょうど開花していました。樹形がよく花が咲くため世界中の暖地に移植されています。

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パパイヤ?
2階の通路からパパイヤらしき植物の花が見えました。日本だと高さ2〜3メートルになり、秋頃に青い実が実り寒さで枯れてしまいます。たまにスーパーでパパイヤの青い実が売っていることもあります。私はピーラーで細く削ってサラダにしたりして食べています。しかし、流石に熱帯環境植物館では2階までくるサイズに育っています。冬に枯れませんからね。

ここから先は雲霧林に入ります。とは言え、熱帯低地林は実はすべて見ていません。写真の撮りすぎでスマホのバッテリーが激減してしまったので、ショートカット出来る空中歩道を渡りました。まあ、また来ればよいだけのことです。バッテリーはあった方が良さそうですけどね。とりあえず、キリが良いので本日はここまでとしましょう。続きはまたそのうちにまとめます。


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去年の年末にシマムラ園芸で、Euphorbia antisyphiliticaと言うユーフォルビアを入手しました。いわゆる、キャンデリラソウと呼ばれる植物で、かつてはロウをとるために乱獲されていました。その後には、石油ベースのロウがメインになり、キャンデリラソウはお役御免となったわけです。しかし、現在では化粧品や食品関係でキャンデリラのロウが使用されているそうです。さて、そんなキャンデリラソウですが、ロウだけではなく、様々な用途での利用が期待されているようです。果たして近年のキャンデリラソウ研究はどうなっているのか、いくつか論文を見繕ってみたので簡単に見ていきましょう。

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キャンデリラソウ Euphorbia antisyphilitica

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ロウが点々と付着します。

活性物質の同定
キャンデリラソウの学名は「抗梅毒」と言う意味らしく、かつては性病の薬として利用されてきたようです。その実際の効果の程は不明ですが、古くから利用されてきたことだけは分かります。Shailendra Sarafらの1994年の記事、「Antihepatotoxic principles of Euphorbia antisyphilitica」によると、インドのJhabua地区の部族の間では、E. antisyphiliticaが肝疾患の治療に使用されているとあります。キャンデリラソウは米国からメキシコの原産ですから、恐らく古くから移植されていたと言うことなのでしょう。この記事では、キャンデリラソウの成分を分析して、エラグ酸とジメチルエラグ酸を抗肝毒性のある活性物質として同定しています。また、近年ではキャンデリラソウからはエラジタンニンと言う新しい抗真菌活性物質も分離されています(J. A. Ascacio-Valdes et.al., 2013)。

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Euphorbia antisyphilitica
『Madrono; a West American journal of botany』(1955-1956年)より。サン・アンドレス山脈で撮影されました。


エラグ酸とは何か
エラグ酸は非常に期待される成分のようで、沢山の論文が出ています。例えば、メタボリックシンドロームに対するエラグ酸の効果についての総説(K. Naraki et.al., 2023)や、癌に対する効果が期待出来ると言う論文(M. Cizmarikova et.al., 2023: M. Golmohammadi et.al., 2023)も豊富です。それに留まらず、エラグ酸とその加水分解物は、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗炎症、抗高脂血症、抗鬱薬様活性があると言います(D. D. Evtyugin et.al., 2020)。
さて、エラグ酸は野菜や果物やナッツに含まれるようです。しかし、これらの食糧作物からエラグ酸を抽出することは、あまり良いアイディアとは思えません。食糧作物は食糧として利用したほうが良いことは明らかだからです。出来るならば、食糧にならない専用の作物が良いと言うことになるでしょう。キャンデリラソウからのエラグ酸抽出が非常に優れていると言う論文(J. A. Ascacio-Valdes et.al., 2010)も出ています。果物や野菜のエラグ酸は含まれる量が少ないのかも知れませんね。そのため、キャンデリラソウはエラグ酸抽出のための作物として有効なのでしょう。


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Candelilla
『Saguaroland Bulletin』(1975年)より。庭に移植されたもののようです。


何故、キャンデリラソウなのか
キャンデリラソウが他の作物より優れているのは、何も有用成分を含んでいるからだけではありません。例え有用成分を沢山含んでいても、病害虫に弱かったり、常に灌水して乾かないように気を付けなければならなかったり、生長が遅かったりした場合、実用には至らないでしょう。その点、キャンデリラソウは非常に丈夫ですから、産業化しやすい作物と言えます。
その観点から言えば、如何にもバイオ燃料の原料としても使えそうです。何故ならバイオ燃料は単純に大量のバイオマスが必要だからです。ある論文(S. Johari & A. Kumar, 2013)では、キャンデリラソウの利点として、食糧作物と燃料が競合すべきではないという点と、普通の作物が育てにくい乾燥地で栽培できるという点を挙げています。また、キャンデリラソウが非常に丈夫である点から、本来は作物に不適な乾燥地にある劣化した石灰質土壌で、何と水がないからと塩水を撒いて育てた論文(J. C. Dagar et.al., 2012)もあります。耕作不適地を有効利用出来るメリットは計り知れません。

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Candelilla
『Breves apuntes de botanica』(1930年)より。


キャンデリラソウの収量を増やす
キャンデリラソウは割と手がかからず、乾燥地に植えっぱなしでも育ちますが、それでも出来るだけ収量は増やしたいものです。とは言え、頻繁に水や肥料を撒かなくてはならないのなら、わざわざキャンデリラソウを育てる利点はあまりないでしょう。簡単な方法としては、鉄分を多く与えるとキャンデリラソウから回収出来るロウとバイオ燃料の収量が改善されると言います(N. K. Mehrotra & S. R. Ansari, 1999)。手間がかからず、収量が上がる良い方法です。

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Candelilla
『Proceeding of the United State National Museum』(1967年)より。Euphorbia ceriferaとして記載されました。


食品分野への応用
キャンデリラソウは薬用植物、あるいはバイオ燃料としてだけではなく、食品分野にも応用が考えられています。利用するのはキャンデリラソウから採れるロウで、キャンデリラ・ワックスと呼ばれています。キャンデリラ・ワックスは可食可能なフィルムや食品のコーティング、あるいは食品添加物を含む様々な用途への利用が期待されています(N. E. Aranda-Ledesma et.al., 2022)。また、食品のコーティングと言う観点からは、キャンデリラ・ワックスにより果物の保存に使うと言う例もあります。例えば、鮮度が直ぐに落ちてしまうため、取引量が少ないパッションフルーツをキャンデリラ・ワックスでコーティングすると保存性が上がるとか(E. Sanchez-Loredo et.al., 2023)、直ぐに腐ってしまうブラックベリーをキャンデリラ・ワックスによりコーティングしようと言う研究(A. Ascencio-Arteaga et.al., 2022)や、トマトの品質をキャンデリラ・ワックスによる食品コーティングにより保とうと言う研究(J. Ruiz-Martinez et.al., 2020)など、盛んに研究が行われています。

最後に
キャンデリラソウは、ユーフォルビア属の中ではカマエシケ亜属(Subgenus Chamaesyce)に含まれます。カマエシケ亜属のユーフォルビアは一年草が多く、例えばニシキソウの仲間は日本を含め世界中に分布します。その他にはポインセチアやハツユキソウ、カラーリーフとして花壇に植栽されるE. cotinifoliaなどの多肉植物ではないユーフォルビアが知られています。カマエシケ亜属では、多肉植物であるキャンデリラソウは珍しい部類と言えるでしょう。
さて、キャンデリラソウは様々な有用成分を含み、様々な用途での産業利用が考えられています。今までの長い利用の歴史から、その安全性と利便性が分かっているということも大きいのかも知れません。しかし、キャンデリラソウは本日ご紹介した以外にも沢山の用途が研究されています。ワックスを抽出した後の残渣から、異なる成分を抽出する方法など、キャンデリラソウの用途可能性は無限にあるかのようです。現在はおそらくキャンデリラ・ワックスが主たる用途ですが、他にも産業利用出来そうなネタが沢山あるのです。今後のキャンデリラソウの動向から目が離せませんね。今後は、何気ない手に取った商品に、キャンデリラソウの名前がさり気なく書かれているかも知れません。


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昨日の続きです。去年の12月24日に板橋区立熱帯環境植物館で撮影した写真をご紹介しています。素晴らしい熱帯植物が無限にあるかのように植えられていました。

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ウチワヤシ Licuala grandis
非常に美しい団扇というか扇のような形の葉を持つヤシです。オウギヤシとも呼ばれるようです。


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Hopea odorata
熱帯雨林を構成する有名な樹種であるフタバガキ科植物です。本を読むとやたらにフタバガキ科と言う名前が出て来ますが、実際に見たことはありませんでした。根元だけの写真ですが、板根をつくるタイプの植物だからです。まだまだですが、少し板根化し始めているように見えます。


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何となく巨大なビカクシダがあったりします。

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セイロンニッケイ Cinnamomum verum
いわゆるシナモンです。強い匂いがありますが、クスノキの仲間ですから納得出来ます。実際の植物は初めて見ました。
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シナモンの葉は葉脈が目立ち観賞価値がありそうですね。

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ゴバンノアシ Barringtonia asiatica
面白い形の種子から発芽しています。種子はヤシの実のように海を漂うタイプです。しかし、この面白い種子から芽が生えた姿が面白がられて、たまに販売されていますが、やがて種子は朽ちてなくなり、木も巨大に育ちます。ですから、インテリア代わりの観葉植物としての寿命は短く、育てきれなくていずれ廃棄される運命にあります。隣に親木がありますが、日本では珍しい生長後の姿です。


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アマメシバ Sauropus androgynus
面白い花が咲いているなあと思いましたが、調べたらコミカンソウに近縁な仲間のようです。まあ、確かにそんな感じですね。スケール感はまったく異なりますが。ちなみに、漢字では「天芽芝」と書くようです。
国内でも健康食品化したことがあるようですが、気管支炎を誘発するらしく、販売中止となっています。しかし、実際に自生地では食用とされており、加熱調理の過程で毒性が分解すると言われているようです。

さて、現在ではBreynia androgynaとなっているそうですが、何やら少し事情が込み入っているみたいですね。コミカンソウ関連はごちゃごちゃしていてよく分かりません。

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Trevesia palmata
「スノーフレーク・ツリー」と呼ばれているようで、氷の結晶のような形の面白い葉を持ちます。葉は1メートルほどあります。ウコギ科らしい切り込みがある面白い葉です。

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サトウヤシ Arenga pinnata
樹液から砂糖を取る有名なヤシです。しかし、熱帯環境植物館はヤシが多いですね。植物園と言えど国内ではあまりヤシは見かけませんから、国内では貴重なものもあるのかも知れません。ただ、私がヤシに詳しくないため、それを実感出来ないことが悔やまれます。

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Alsomitra macrocarpa
ハネフクベと呼ばれる空を飛ぶ羽がついた種子を飛ばす植物です。たまにテレビで取り上げられていますね。
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羽のついた種子はグライダーのように高さ30〜40メートルから滑空します。

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ククイノキ Aleurites moluccanus
種子に油が沢山含まれるため、灯油にされたことからキャンドル・ツリーと呼ばれます。調べて出てくる画像と葉の形が異なりますが、これはおそらく異形葉性を示しているのでしょう。植物が若い時と成熟してからとで、葉の形が異なることは珍しいことではありません。異形葉性を示しやすいウコギ科ではなく、トウダイグサ科と言うことです。


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ビワモドキ Dillenia indica
植物分類学の本を読んでいた時に、ビワモドキ科と言う名前があり気になっていました。身近なビワモドキ科植物がありませんからね。私は初めて見ましたが、赤味がある幹が特徴的です。
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葉は強い葉脈があり、ビワの葉を連想させるからビワモドキなのでしょう。

すべての植物を撮影しているわけではありませんが、気になる植物が多すぎて中々進めません。ここまでで、実は温室入口から最初の角まで来ただけです。撮った枚数が多すぎて、載せていない写真もあります。しかし、終わりませんから先に進みます。と言っても、本日はここまでとしましょう。


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去年のクリスマス・イブに国際多肉植物協会の東京例会に出席しました。とは言うものの、実はメインの目的は植物園にあります。最近、植物園に行こうとアチコチ調べていたのですが、例会の会場は板橋区立熱帯環境植物館でしたから、ちょうど両方行けるので一挙両得だったのです。と言うわけで、去年の年末に行った板橋区立熱帯環境植物館の体験記です。長くなるので、記事は何分割かにします。

板橋区立熱帯環境植物館は焼却炉の熱で暖かくしている施設です。暖房要らずで温室を加温出来ますから、熱帯植物の栽培には最適です。
私も図鑑でしか見たことがない沢山の熱帯植物を見ることが出来ました。写真はもう大量に撮りましたから、ちょっとずつ記事にしていくつもりです。

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入口。この日は小中学生が無料の日でした。中に入ると子供が結構いましたね。

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地下一階からスタートしますが、最初の部屋は水槽が並ぶミニ水族館になっていました。

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クラゲもいました。

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淡水フグ。中々出て来てくれませんでした。

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ナイフフィッシュを直に見たの初めてです。

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オウギバショウ Ravenala madagascariensis
さて、階段を登ると、いよいよ熱帯林の温室が始まります。階段近くには大きなオウギバショウがありました。タビビトノキと呼ばれることが多いですよね。まだ小さいので、本来の美しい姿ではありません。


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ヒトデカズラ Philodendron selloanum
葉柄の跡が独特で良く目立ちます。あまりヒトデカズラとは呼ばれず、セロームの名前でよく観葉植物にされます。茎は自立しないので、地面をニョロニョロ数メートル這っていました。本来は樹木の幹に寄りかかって育つ登攀植物ですよね。
しかし、ネットではP. selloumと言う名前で流通していますが、実際にはP. selloanum、つまり「セロアヌム」です。さらに言えば、現在の正式な学名はP. bipinnatifidumだったりしますが、あまり知られていないように思われます。

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セロームの葉
地植えのせいか葉も巨大です。


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ウナズキヒメフヨウ Malvaviscus penduliflorus cv.
メキシコからコロンビア原産のアオイ科植物。下向きに花が咲くことから、「頷き」と命名されてようです。1日花なので、上手くタイミングが合いませんでした。本来は赤花です。また、フヨウと言っても、Hibiscusではありません。

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アダン Pandanus odoratissimus
いわゆるタコノキの仲間です。トカラ列島以南の海岸沿いに生えます。命名年からするとP. odoratissimusは1801年とかなり早いのですが、「nom.illeg.」、つまり命名規則の誤用があると言うことで、現在は保留名です。そのため、1804年に命名されたP. utilisがアダンの学名になっています。

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アダンの気根
アダンは枝や幹から気根を出して、地面に付くと根を張り独特の見た目になります。


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マカダミアナッツ Macadamia tetraphylla
誰も行かない階段脇にマカダミアナッツの鉢がありました。実がならないと目がいかないかも知れません。しかし、一般的にマカダミアナッツはM. integrifoliaとされていますが、こちらはM. tetraphyllaです。マカダミア属は4種類あるわけですが、皆同じようにマカダミアナッツとして食用になるのでしょうか?


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オヒルギ Bruguiera gymnorhiza
マングローブを形成する樹種の1つです。あまり目にする機会はありませんよね。

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上からオヒルギを見ていたら、巨大淡水エイであるヒマンチュラ・チャオプラヤが見えました。上からも見られることを知らない方も多そうです。

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他の樹木を突き破ってそそり立つ巨大なヤシの木がありました。ヤシはまったく分からないので、名前は分からず。

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キンカチャ Camellia chrysantha
中国原産の照葉樹。カメリア属ですから椿やお茶の仲間ですね。椿の原種には黄色系の色素がないため、大分騒がれたようです。しかし、残念ながら寒さに弱く日本では庭で育てられません。実はお茶としても利用されてきたようです。どのような風味なのでしょうか? ちなみに、現在の学名はC. petelotiiとなっています。

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バニラ Vanilla 
高額な香辛料ベスト3に入るバニラですが、熱帯のランの実から取れます。バニラのあの黒いつぶつぶは種子だったりします。種類は分かりませんが、バニラ属は100種類以上ありますから、私には判別出来ません。一般的なV. planifoliaと言うことになるのでしょうか?
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バニラは蔓性で天井まで伸びています。

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ムラサキモクワンジュ Bauhinia purpurea
熱帯温室はとにかく見上げると様々な発見があります。マメ科らしき面白い葉の樹木がありました。ムラサキソシンカと言う名前の方が一般的なようですね。
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面白い形の葉。若い葉は食用とされ、酸味が強いそうです。

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ハスノハギリ Hernandia 
これがハスノハギリかと少し興奮しました。そのせいかブレブレになってしまいました。H. nymphaeifoliaだったでしょうか。忘れてしまいました。ハスノハギリは南方系の海岸植物です。遺伝子解析によるAPG分類体系がほぼ完成しましたため調べていたのですが、ハスノハギリ科は身近に近縁種がないので、いつか見てみたいと思っていました。


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モモタマナ Terminalia catappa
暖地の樹木ですが、果実が浮くので海流に乗って分布を広げるのです。ヤシやマングローブと同じですね。東南アジアの熱帯林について書かれた本には良く登場する木です。

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Osmoxylon lineare
初めて見た知らない植物です。ヤツデと同じウコギ科植物と言うことです。葉の切れ込みが激しいですね。

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開花中でした。

実は以上の植物は、順路の始まり付近に植えられていたものだけです。かなりの密度で沢山の熱帯植物が植えられていました。ですから、同じ場所に10分以上ウロウロしていましたから、大分不審者風だったかも知れません。
板橋区立熱帯環境植物館はそれほど大きな施設ではありませんが、注意して見れば実に面白いものです。それなりに人は入っていたにも関わらず、私のように立ち止まり観察したりラベルを確認する人は見かけませんでした。実に勿体ないことです。植物園は事前知識があるとより楽しむことが出来ます。知らなければただの風景ですが、知っていればそこは宝の山になります。熱帯林について書かれた本やら図鑑やらを2、3冊読むだけで世界が一変します。皆様も植物園に出かけてみては如何でしょうか?


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明けましておめでとうございます。
新年早々、どうかと思いますが、私にとって2023年はある意味ではあまり良い年ではありませんでした。と言うのも、何故かしょっちゅう風邪をひいてしまい、何回か軽い怪我をしたりと、体調面においては全くもってツイてない1年でした。まあ、新型コロナには罹らずじまいでしたし、入院するような病気や怪我をしたわけではありませんから、大したことはないとも言えます。しかし、体調が悪く見送った多肉植物の即売会もありました。今年は良い1年を送れたら幸いです

おまけに、年間の閲覧数の多かった記事のランキングを発表しましょう。内容を見ると残念ながらあまり論文の解説は入っていませんね。あと、やはり今年の記事はありません。古いものばかりですね。当時はまだ手探り状態でしたから、少し恥ずかしい感じもします。

1位 猛毒に注意!!
閲覧数 7649
ユーフォルビアと言えば、何と言ってもその毒性が有名です。しかし、意外と毒性について書かれていることは稀です。残念ながら、この記事でもあまり毒性そのものについて書かれてはいません。そこで、最近になって実際の症例を取り上げた記事も書いています。


2位 アンボボンベンシスを育てる
閲覧数 7282
大した記事ではないのですが、何故か閲覧数が多かった記事です。もしかしたら、タイトルからアンボボンベンシスの育て方指南の記事と勘違いされただけかも知れません。記事はアンボボンベンシスの基本情報を書いただけの簡単なものです。
しかし、アンボボンベンシスの育て方って何でしょうね? 改めて考えるとよく分かりません。夏は少し遮光して、用土を加湿にし過ぎないように、冬は霜に当てないで暖かく…。要するに一般的な多肉植物の育て方ですよね。


3位 よくわかるムランジーナ(2016)
閲覧数 6839
これは、割と新し目な記事です。ムランジーナと言う名前の巨大なユーフォルビアが市場に突如として出現したのですが、その特異的な姿の出来方についての論文解説記事です。国内ではムランジーナを取り上げたのは、割と早い方ではないでしょうか。



4位 ザミア・プミラとザミア・フルフラケア
閲覧数 6418
ブログ初期の記事です。実はプミラとフルフラケアの違いが分からなかったので、色々調べていたのですが、その調べる過程からなんとなーくブログをやってみようと思いつきました。ある種のキッカケのようなものです。
その後、フルフラケアがフラッシュしたので新たな記事を書き、ついでに原産地の画像リンクを貼りました。リンクが切れていたので貼り直しましたが、見ればフルフラケアとプミラの違いは明らかです。



5位 ユーフォルビア・オベサについて語ろうではないか!
閲覧数 5541
我がブログのタイトルにもなっているユーフォルビア・オベサについて語った記事です。他愛のない内容ですが、この記事がきっかけで論文を記事にするようになりましたから、そういう意味においては転換点だったのかも知れません。



6位 狗奴子キリン激太りの怪
閲覧数 5437
私の育てている狗奴子キリンは、正直あまり育ちが良くないもので、閲覧数が多いのは気恥ずかしくもあります。


7位 ユーフォルビア・オベサ・ドットコム
閲覧数 5394
これは、ブログタイトルで検索された数です。つまり、偶然ではなく意図して見て下さる方が沢山おられたと言うことですから、実に有り難い話ですね。励みになります。


8位 怪魔玉はよく分からない…
閲覧数 5016
ユーフォルビアの代表的な交配種の1つである怪魔玉についての記事です。まあ、基本的な情報だけの当たり障りのない記事です。


9位 2022年の多肉植物のイベントを振り返る(2023年1月)
閲覧数 4415
この記事だけは2023年に書いた記事ですが、内容的には2022年を振り返ったものです。2022年の私が行った多肉植物のイベントについてです。これは、2023年版も書きましたから、そちらも是非ご参照下さい。今年も同じくらいの時期にイベントが開催される可能性が大ですからね。


10位 瑞昌玉とはなんぞ?
閲覧数 4066
瑞昌玉についてまとめた記事です。この記事では、竜頭、鳳頭についても種としては同じかも知れないとしました。まあ、一般論ですが。実はその後にも、武勲丸、バッテリー、インターテクスツムについて、あるいは怪竜丸と守殿玉についてもまとめています。是非、ご参照下さい。





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