ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2023年09月

サボテンは強烈な日照や厳しい乾燥など、様々な環境ストレスに耐え忍んでいます。しかし、その特徴や仕組みについては、意外にもあまり研究されていないようです。そんな中、ギムノカリキウムの環境ストレスへの耐性についての、今年出たばかりの論文を見つけました。それは、Maria E. Soto Acostaらの2023年の論文、『Adaptative Strategie in Gymnocalycium species (Cactaceae) and the Prerence of Ectomycorrhizae Associated with Survival in Arid Environments』です。早速、見ていきましょう。

Gymnocalyciumについて
Gymnocalycium属はパラグアイ、ブラジル、ボリビア、ウルグアイ、アルゼンチンに分布しており、7亜属約60種が知られています。アルゼンチンのCatamarca州には約14種のGymnocalyciumが分布しています。その中でも、Gymnocalycium亜属のG. baldianumとG. marianae、Trchomosemineum亜属のG. stellatum、Microsemineum亜属のG. oenanthemumの4種類は固有種です。研究では自生する標高と降雨量が異なるG. marianaeとG. oenanthemumを用いました。解析のために、自生地のサボテンの根を採取しました、また、2種類のサボテンの種子を採取し、播種して3.5年生植物を研究に用いました。

G. marianae
G. marianaeはAndalgalaの標高1600〜1800mに分布します。Sierra de Ambatoの北斜面に育ち、水と風による侵食を受ける起伏のある丘にあります。年間の平均降水量は約380mmで、5〜9月は乾季となり月間降水量は10mm以下です。年間平均気温は約9.5℃で、4月から10月、あるいは11月に霜が発生します。この地域の植生は乏しいようです。この地域には16世紀半ばまでインカ人が住んでいました。
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Gymnocalycium venturianum
『Cactus handbook, 1876-1951』(1951年)より。
現在、G. marianaeはG. baldianumの異名となっているようです。G. venturianumはG. baldianumの異名の1つ。


G. oenanthemum
G. oenanthemumはAmbato、San Fernando、Capayan、Catamarcaの標高500〜1000mに分布します。研究ではAmbatoのSierra de Ambatoの東斜面から採取されました。年間の平均降水量は約670mmで、4〜9月に乾季があります。
年間平均気温は15℃で4月から10月には霜が発生します。この地域は豊富な植生と野良牛がいます。G. oenanthemumは低木や草により日照から保護されることがあります。

サボテンの外生菌根
サボテンは根の内部に侵入する内生菌根と共生することが、知られています。内生菌根はアーバスキュラー菌という非常に多くの植物と共生可能な共生菌です。しかし、本研究においてサボテンでは初めて外生菌根が発見されました。また、G. marianaeの方が高い菌根菌着生率でした。
アーバスキュラー菌とは異なり、外生菌根をつくる菌類は大型のキノコをつくる担子菌や子嚢菌からなります。菌根菌は一般的に植物の水分と養分の収集、および植物の環境ストレスへの耐性が指摘されます。Gymnocalyciumで発見された外生菌根は、乾性環境への耐性に適応するために意味があるのかも知れません。

構造と成分分析
植物の表面で水分の蒸発を防ぐクチクラ層は、G. oenanthemumよりG. marianaeの方が、密度も高く厚みがありました。また、環境ストレスに耐性が上がるフラボノイドやカロテノイドも、やはりG. oenanthemumよりもG. marianaeの方が高いことが分かりました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
G. marianaeはG. oenanthemumと比較すると、日照や気温、乾燥などより厳しい環境に生えることが分かります。G. marianaeは環境ストレスに耐えるために、厚いクチクラや含有成分の高さだけではなく、外生菌根に適正を示し、より高い環境ストレス耐性を獲得しているようです。サボテンも環境に適応するために、様々な工夫をしていることが伺えますね。そう言えば、菌根についてはあまり話題とならず、残念ながらその重要度と比べてそれほど周知されていないように思います。当ブログではいくつか菌根関連の記事を書いてきましたが、これからも何か面白い論文がありましたら取り上げていきたいと思っております。


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美しい花は我々を楽しませてくれますが、中には地味で奇妙な花を咲かせる植物も存在します。基本的に花は昆虫などの花粉媒介者へのアピールですから、それなりに目立つものが多いのです。では、地味は色合いの花にはどのような意味があるのでしょうか?
日があまり当たらない森林の林床には、肉色(腐肉)と評される、赤黒い花を咲かせる植物がいくつかあります。代表的なのはラフレシアで、腐臭を出してハエを誘っていると言われています。ラフレシアは割と明るい色合いですが、Bulbophyllum属(着生ラン)、Brachystelma属(ガガイモ科の塊根植物)、Aristolochia属(ウマノスズクサ属、ツル性)の中には、暗い色合いの花を咲かせるものが多いようです。神代植物公園に行った折、大温室でAristolochiaの不思議な花を見ることが出来ました。このAristolochiaはやはりハエを呼び受粉するタイプの植物で、中には訪れたハエを閉じ込める罠を持つものもあるそうです。しかし、調べるうちに、ハエと面白い関係を結んだAristolochiaがあるという論文を見つけました。それは、Shoko Skaiの2002年の論文、『Aristolochia spp. (Aristolochiaceae) Pollinated by files breeding on decomposting flower in Panama』です。

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Aristolochia gigantea(神代植物公園)
人の顔くらいある巨大の花です。例によって肉色の花。Aristolochiaは、種類によって柑橘系だったり腐敗臭だったりと、様々な臭いで昆虫を呼びます。


この研究はパナマの乾季の森林で実施されました。観察したのは、Aristolochia maximaとAristolochia inflataです。A. maximaはフロリダ南部からパナマまで、A. infataはメキシコ南部からパナマまでに分布します。調査地では高さ10〜30mの高さで開花しました。A. maximaの花の一部は低い幹にもつきました。

A. maximaの花に訪れる昆虫の53%がMegaselia sakaieというハエで、そのうち99.7%がメスでした。19%は数種類のショウジョウバエで、そのうち58%はメスでした。訪れたハエは、花の蜜をなめる様子が観察されました。A. inflataを訪れたハエはM. sakaieのみで、すべてメスでした。ハエが花に訪れて数日後にM. sakaieの幼虫が現れ、腐った花を食べながら育ちました。

A. inflataの主要な花粉媒介者はM. sakaieですが、A. maximaは異なるようです。A. maximaの花を訪れたM. sakaieを調べると、非常に少数の花粉しか付着していませんでした。これは、M. sakaieの花を訪れてからの行動の違いによると考えられます。A. maximaの花粉媒介者はショウジョウバエである可能性がありますが、少数ですが花に来る甲虫も受粉に関与するかも知れません。

花粉媒介者はA. maximaやA. inflataの花を訪れるのは、おそらくは臭いと花の色によると思われます。Aristolochiaに関する研究のほとんどが、Aristolochiaは腐肉臭や糞便臭、キノコ臭などを模倣し、花粉媒介者のハエが騙されて花を訪れると説明しています。ハエに対するA. maximaやA. inflataの報酬は、蜜と繁殖場所の提供です。他の種類のAristolochiaでは、ハエを閉じ込めるものもあり、場合によってハエは閉じ込められたまま死んでしまうこともあります。この場合の花の蜜は花の外にあり、閉じ込められたハエの食糧にはなりません。蜜はハエをおびき寄せるためのものだからです。しかし、A. maximaやA. inflataは、ハエを閉じ込めずに蜜を与えます。これは、ハエの産卵に必要である可能性があります。ほぼメスしか訪れないM. sakaieとは対照的に、ショウジョウバエはオスも訪れます。これは、A. maximaの花が産卵だけではなく、交尾の場所でもあるからかも知れません。ハエを罠に掛けるAristolochiaより、A. maximaやA. inflataはより進んだ共生関係を示しているのかも知れません。


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Aristolochia spp.
『Monatsberichte der Koniglichen Preussische Akademie des Wissenschaften zu Berlin』(1859年)より。


以上が論文の簡単な要約です。
ハエは報酬の蜜と産卵場所のために、2種類のAristolochiaの花を訪れます。Aristolochiaからしたら、蜜だけではなく産卵行動まで含めて、滞在時間を増やして受粉率を上げているのかも知れません。特にA. inflataは、花にM. sakaieしか訪れていないことから、より深く共生関係を結んでいるようです。このような関係が進めば、やがて植物と花粉媒介者が互いに不可欠な存在となる絶対共生となるのかも知れませんね。
しかし、花を食べさせるという特殊な関係が結ばれていることに改めて驚かされます。しかし、
A.maximaの花は赤褐色でいかにもハエを呼び寄せそうな花色ですが、A. inflataの花は黄色です。個人的にはこの点が気になります。M. sakaieは黄色に強く引き寄せられたりするのでしょうか? とても不思議です。


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先日開催された「9月のサボテン・多肉植物のビッグバザール」にて、Euphorbia hedyotoidesという塊根植物を入手しました。私が入手したのは非常に小さな実生苗ですが、育つと塊根から伸びる細長い枝と、細長い葉が面白い多肉植物です。E. hedyotoidesを詳しく調べてみようとしましたが、中々調べる時間が取れないため安直に論文を探したところ簡単に見つかったので、では記事にしようということになりました。その論文は、Wernner Rauhの1992年の論文、『The growth-form of Euphorbia hedyotoides N.E.Br. (syn. E. deceriana Croiz.)』です。

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Euphorbia hedyotoides N.E.Br.

E. hedyotoidesの発見
マダガスカル南部のAmbosaryとFort Dauphinの、Didierea科の茂みには、Euphorbia hedyotoidesが見られます。1934年にL. Croizat によりEuphorbia decarianaとした記載されましたが、Leandri(1962)によると1909年にN. E. BrownによりEuphorbia hedyotoidesとしてすでに記載されていると言うことです。Euphorbia hedyotoidesはアフリカではゴム用(caoutchouc)植物として栽培されており、N. E. Brownは旧ドイツ領東アフリカのAmaniにあるManboの植物に因んでいると説明しています。

塊根と異形根
E. hedyotoidesは、高さ1〜1.5mの低木で、大きな塊根が地下にありサッカーボールくらいの大きさになる可能性があります。塊根は胚軸と一次根が膨れたものです。E. hedyotoidesは異形根性(※1)で、塊根は水を貯蔵し、塊根の上部にある側根は水を吸収します。側根は地表から数ミリメートル下に広がっています。

(※1) 異形根性(heterorhizy): 同じ個体で明らかに形態の異なる根を持つこと。

短枝と長枝
若い段階では、一次枝が高さ20〜30cmほど長く伸びます。枝の先端は短枝(brachyblast)となり、そこから放射状に新たな長枝が出て来ます。短枝は徐々に生長し、数年で3〜5cmとなります。葉は一番若い短枝から出ます。


E. hedyotoidesの花は雌雄異株ですが、稀に雌雄同株も見られます。
E. hedyotoidesの花(cyathia)は非常に小さく、ほとんどが単独につきます。花には短い葉柄があり、2つの緑がかる苞葉(cyathophyll)に包まれています。総苞(involucrum)は非常に小さく高さと厚みは2mmで、緑色の腺(grand)は直立し1mmほどです。


分類
E. hedyotoidesの分類は不明です。Leandri(1962)は、E. neohumbertiiやE. viguieriを含むEuphorbia lophogoraグループに分類しましたが、これは間違いです。著者はE. hedyotoidesをE. elliotiiと共に同じ新しいグループとすることを提案します。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
E. hedyotoidesは奇妙な枝分かれをするようですが、Rauhはこれを「hedyotoides型分岐」と呼んでいるようです。しかし、E. hedyotoidesの短枝の画像を見ていたら、何やら見覚えがあることに気が付きました。E. bongolavensisの短枝と良く似ているのです。
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Euphorbia bongolavensisの短枝(枝の先端の模様が入った部分)

Thomas Haevermansの2006年の論文では、E. hedyotoidesやE. bongolavensisを含むグループを、「pyrifoliaグループ」としており、狭義のsection Denisophorbiaに含まれるとしています。やはり、E. millotiiやE. bongolavensisも同じグループに含まれるようです。

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Euphorbia bongolavensisの「hedyotoides型分岐」
短枝から数本の長枝が出て、その長枝の先端には新しい短枝が形成されます。


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近年、コーデックス・ブームがありました。今はやや落ち着いてきましたが、今でも多肉植物の即売会ではコーデックスはまだ主役級です。ブーム初期に人気を牽引したのは、おそらくパキポディウムでしょう。国内では大量の現地球が売買されており、種の多様性の保護の観点からはやや不安になります。パキポディウムの国際取引はどのようになっているのでしょうか。2018年のワシントン条約(CITES)の附属書を見てみましょう。

CITESとパキポディウム
Pachypodium属は約25種類あり、そのすべてがCITESに記載されています。アフリカ大陸に約5種類あり、残りはマダガスカル原産です。マダガスカル原産のPachypodiumのうち3種類はCITESの附属書Iに記載され、他の種はすべて附属書IIに記載されています。

パキポディウム属の特徴
Pachypodiumは高さ15mまでの低木で、根元が大きく膨れます。Pachypodium namaquanum以外は枝分かれし、枝はPachypodium decaryi以外はトゲがあります。形態は木本状から枝分かれした低木、地下塊根まで多様です。マダガスカルの南の落葉性乾性林には、Pachypodium lamereiやPachypodium geayiのように、より樹木状となる傾向があります。

パキポディウムの国際取引
P. lamereiは最も多く取引されるPachypodiumで、長年栽培されています。Pachypodiumは主に野生および人工繁殖した植物が取引されます。野生の植物は主にマダガスカルから輸出されています。人工繁殖した植物の最大の輸出国はカナダですが、これは2007年に50000を超える大規模輸出があったためで、基本的にはマダガスカルと南アフリカから輸出されます。ドイツは野生の植物の最大の輸入国で、特に2015年にはP. densiflorumの951個体にも及ぶ野生植物の輸入がありました。人工繁殖した植物の主な輸入国は、ドイツと米国、スイスです。

附属書Iに記載された3種類
①Pachypodium ambongense
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『Bulletin del' Academie Malgache』(1922-1923年)より。この雑誌で初めて記載されました。

②Pachypodium decaryi
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『Bulletin del' Academie Malgache』(1917年)より。この雑誌で初めて記載されました。

③Pachypodium baronii 
CITES2018では、P. baronii var. baroniiとP. baronii var. windsoriiが含まれます。現在では、P. baronii var. windsoriiはP. windsoriiとなり独立種とされています。

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Pachypodium windsorii

人工繁殖
Pachypodiumの繁殖は種子によりますが、P. bispinosumやP. succulentumなどでは茎や根の挿し木は一般的です。ほとんどのパキポディウムは、P. lamereiに継ぎ木することも出来ます。Pachypodiumは苗床で栽培されています。また、種子はインターネット上で広く入手可能です。P. brevicauleのようないくつかの種は、アマチュアは栽培が難しく非常に生長が遅いことで知られています。

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Pachypodium bispinosum

以上がCITES2018のパキポディウムについてでした。附属書Iに記載された3種(P. windsoriiを含めると4種)は、基本的に国際取引は禁止されています。それ以外のパキポディウムもすべて附属書IIに記載されていますから、国際取引には許可が必要です。
さて、日本でパキポディウムと言えばP. graciliusです。あの丸っこい現地球はやはり大人気で、割と高額であるにも関わらずコーデックスを育てる際の入口になっています。しかし、パキポディウムは安価な実生苗が広く出回るようになり、今では誰でも育てられるコーデックスの入手種としての地位を盤石としています。さらに、最近は実生にチャレンジする趣味家も増えており、種の保存の観点からも良い傾向と言えます。やはり、種から育てた植物は愛着がわきますし、完成した現地球とは異なり育っていく姿が顕著に現れますから、育てていて楽しいでしょう。私は頻繁な水やりが苦手なので、実生はおそらく(必ず)失敗するでしょうからやりません。ですから、私は多肉植物の即売会で実生苗を購入しています。多肉植物の即売会ではP. inopinatumやP. enigmaticum、P. makayenseなど、やや珍しいパキポディウムの実生苗も入手可能です。お値段的にもそれほど高くはないので、気軽に始められるので皆様も育ててみてはいかがでしょうか?
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Pachypodium makayense

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アロエ属は2010年代前半に大幅な改訂が順次行われました。アロエ属からの分離と、アロエ属に近縁な仲間のアロエ属への統合という出来事が行われ、ハウォルチアやガステリアも絡めて整理されたのです。しかし、名前が変わってしまうと、過去に様々な文書に書かれた植物名と矛盾してしまうため、それらの文書は改訂が必要となります。その中でも特に急務なのはワシントン条約(CITES)でしょう。CITESは絶滅が危惧される動植物の国際取引を規制していますから、植物名が変わったことにより混乱をきたす可能性があるからです。そのため、アロエ属の改訂に伴い、研究者からCITESへの勧告が行われてました。それは、Olwen
M. Grace & Ronell R. Klopperの2014年の論文、『Recommendation to the CITES Plants Committee: Name changes affection Aloe and related genera』です。アロエ属の改訂に関しては、当ブログでも度々取り上げてきましたから今更かも知れませんが、その過程や勧告も重要と思い今回ご紹介する次第です。


Aloe L.は、アフリカ大陸、アラビア半島、ソコトラ島、マダガスカル、インド洋のセイシェル、マスカリン、コモロ諸島に約575種類自生します。いくつかのアロエは地中海やインド、南北アメリカの一部、カリブ海、オーストラリアに侵略的、あるいは帰化しています。多くの多肉植物と同様にアロエも愛好家により収集され、園芸的に広く使用され取引されます。

系統学的研究により、アロエ属には変更が加えられました。アロエ属に含まれていた種から、Aloidendron属、Aloiampelos属、Kumara属が独立し、逆にChortolirion属がアロエ属に統合されました。
変更は以下の通り。

1, Aloiampelos ciliaris
 旧学名
    Aloe ciliaris
2, Aloiampelos ciliaris var. redacta
 旧学名
    Aloe ciliaris var. redacta
3, Aloiampelos ciliaris var. tidmarshii
 旧学名
    Aloe ciliaris var. tidmarshii
    Aloe tidmarshii
4, Aloiampelos commixta
 旧学名
    Aloe commixta
5, Aloiampelos decumbens
 旧学名
    Aloe gracilis var. decumbens
    Aloe decumbens
6, Aloiampelos gracilis
 旧学名
    Aloe gracilis
7, Aloiampelos juddii
 旧学名
    Aloe juddii
8, Aloiampelos striatula
 旧学名
    Aloe striatula
9, Aloiampelos striatula var. caesia
 旧学名
    Aloe striatula var. caesia
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Aloiampelos striatula var. caesia

10, Aloiampelos tenuior
 旧学名
    Aloe tenuior
11, Aloidendron barberae
 旧学名
    Aloe barberae
    Aloe bainesii
12, Aloidendron dichotomum
 旧学名
    Aloe dichotoma
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Aloidendron dichotomum

13, Aloidendron eminens
 旧学名
    Aloe eminens
14, Aloidendron pillansii
 旧学名
    Aloe pillansii
    Aloe dichotoma subsp. pillansii
15, Aloidendron ramosissimum
 旧学名
    Aloe ramosissima
    Aloe dichotoma var. ramosissima
    Aloe dichotoma subsp. ramosissima
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Aloidendron ramosissima

16, Aloidendron tongaensis
 旧学名
    Aloe tongaensis
17, Kumara plicatilis
 旧学名
    Aloe plicatilis
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Kumara plicatilis

18, Aloe welwitschii
 旧学名
    Haworthia angolensis
    Chortolirion angolense
19, Aloe subspicata
 旧学名
    Haworthia subspicata
    Chortolirion subspicatum
20, Aloe barendii
 旧学名
    Haworthia tenuifolia
    Chortolirion tenuifolium
    Aloe tenuifolia
21, Aloe juppeae
 旧学名
    Chortolirion latifolium
    Aloe aestivalis

以上が勧告の内容です。
アロエ属は大きく様変わりしました。しかし、この勧告の後も改訂は続きました。簡単に解説しましょう。
1つは、マダガスカルやマスカリン諸島に分布するLomatophyllum属が、アロエ属に吸収されたことです。現在では、Lomatophyllum属に含まれていた種類同士が必ずしも近縁ではないことが明らかとなっています。
2つ目は、2014年のGonialoe属の独立です。Gonialoe属は旧学名Aloe variegataなど、3方向に葉を揃えて出すほぼトゲのないアロエで、現在3種類が認められています。また、新種が発見されていますが、学術的な検証はこれからでしょう。
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Gonialoe sladeniana

3つ目は、2014年のAristaloe属の独立です。Aristaloe属は旧学名Aloe aristataのみからなる1属1種のアロエです。
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Aristaloe aristata

4つ目は、2019年にAloestrelaが追加されたことです。これは、Aloe suzannaeがAloestrela suzannaeとして独立したものです。しかし、同じく2019年のPanagiota MalakasiらのAloidendron属の遺伝子を解析した論文では、Aloestrela属は明らかにAloidendron属に含まれることが分かりました。まだ、データベースではAloestrela属は健在ですが、いずれAloidendronとされるかも知れません。また、2014年に新規にAloidendron属とされたAloidendron sabaeumは、同論文ではAloidendron属ではなくAloe属であるとしています。こちらもこれから検証されるのでしょう。

その他の細々とした変更や追加についても、少し触れておきましょう。1つ目は、2014年にAloe haemanthifoliaがKumara haemanthifoliaとされました。2つ目は、上の一覧のNo. 20のAloe barendiiですが、現在ではAloe bergerianaとされています。ちなみに、Chortolirion tenuifolium、Chortolirion bergerianum、Chortolirion stenophyllumは同種とされ、Aloe bergerianaの異名となっています。3つ目は、上の一覧のNo. 10のAloiampelos tenuiorですが、2022年に変種であるAloiampelos tenuior var. ernstiiが新たに記載されました。
まあ、こんなところでしょうか。これからも新種は発見されるでしょうし、遺伝子解析も進行していくでしょう。しかし、いくらかの追加や変更はあるかも知れませんが、大枠は変わらないかも知れません。アロエ属は気になっているので、これからも注視していきたいと思います。


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もう9月も終わりですが、予報ではどういうわけか、しばらくは30℃を超える日もあるようです。しかし、大分過ごしやすくなってきました。多肉植物たちの様子はどうでしょうか?

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メロフォルミス錦 Euphorbia meloformis cv.
2020年夏に鶴仙園で購入したメロフォルミス錦です。当時は単頭でしたが、子が出来てかなり大きくなりました。

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Euphorbia lenewtonii
今年の6月のビッグバザールで入手したばかりですが、大部枝が増えてきました。枝が混んで面白い形になるようです。

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奇怪ヶ島 Euphorbia squarrosa
今年の春のビッグバザールで入手した実生苗です。枝が順調に伸びています。まだ塊根はツメの先ほどのサイズです。

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Euphorbia silenifolia
2020年の4月にファーマーズ三郷で購入。冬型の難物ですが、なんとか3年維持してきました。まあ、育っている実感はありませんが。


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Euphorbia sp. nova somalia hordio
謎の未記載種です。今年の3月にルームズ大正堂八王子店で購入しました。かなり生長は良いのですが、垂れ下がりながら伸びる面白いユーフォルビアです。地を這いながら育つのでしょうか? 不思議ですね。

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Euphorbia gottlebei
去年の夏にヨネヤマプランテイションの即売会で入手しました。枝分かれしない面白い花キリンです。根元から叢生するはずですが、まだ単頭です。


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Euphorbia erinacea
2020年に鶴仙園で購入しましたが、あまり育った実感に乏しいですね。去年は乾かしすぎて外の葉が枯れてみすぼらしくなりました。今年は水をたっぷり与えて、あまり乾かさないようにしたらきれいに仕上がりました。ちなみに、唐錦(A. melanacantha)の変種とされることもありますが、現在では独立種とされています。


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Haworthia triangularis
去年の秋にあったタナベフラワーのイベントで入手しました。この名前は園芸名で、おそらくはAloe triangularisから来ています。A. triangularisとは、現在のHaworthiopsis viscosaに相当します。大型でざらつかないタイプなのでしょう。


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亀甲竜 Dioscorea elephantipes
越谷のレイクタウンにある園芸店で購入しました。今はもうないみたいです。
10年くらい育てている亀甲竜ですが、ツルが伸びてきました。イモは地中に埋めれば早く大きくなりますがコルク層は発達しません。地上に出して育てればイモの育ちは遅くなりますが、コルク層が発達します。私の亀甲竜は、サイズの割にはまあまあコルク層が発達しています。最近はイモは大きいのにコルク層が薄いものは良く目にしますね。


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Agaveに引き続き、CITES2018を取り上げます。本日はメキシコの乾燥地を中心に分布するFouquieriaについてです。

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Fouquieria Kunth, 1823

Fouquieria科の唯一の種であるFouquieria属には11種類あり、メキシコと米国南部の乾燥地に見られる乾性低木です。CITES2018には3種類が記載されています。
★Fouquieria fasciculataは高さ4〜15mになる木本で、幹の下部は直径60cmまで膨れます。枝は先細りし、赤いトゲがあります。幹は基部で膨れ、円錐状に細くなるのではなく、急激に細くなります。CITESの附属書Iに記載されています。
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Fouquieria fasciculata
             (Humb. ex Roem. & Schult.)  Nash, 1903
異名 :
・Cantua fasciculata Humb.
                ex Roem. & Schult., 1819

・Bronnia spinosa Kunth, 1823

★Fouquieria purpusiiは高さ4mになることがあり、先細りになる薄緑色の幹にコルク色のマーキングがあります。CITESの附属書Iに記載されています。
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Fouquieria purpusii Brandegee, 1909

★Fouquieria columnarisはFouquieria最大種で、高さ20mになります。幹は緑色がかります。花弁は黄色が多く、柱頭は花弁より長く伸び、花は散房花穂ではなく末端穂につきます。幹は基部だけではなく、全体的に太くなります。CITESの附属書IIに記載されています。
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Fouquieria columnaris (Kellogg)
      Kellogg ex Curran, 1885

異名 :
・Idria columnaris Kellogg, 1863
・Fouquieria gigantea Orcutt, 1886

用途は、造園や観賞用の鉢植えとして、多肉植物愛好家に求められています。CITESのデータベースによると、人工繁殖した個体の取引は非常に少なく、その大部分は米国、スペイン、ドイツ、チェコ共和国により輸出されています。大きな現地球は米国から入手できる可能性がありますが高額です。
附属書Iに記載されたF. fasciculataとF. purpusiiは、生きている個体か否かを問わずすべての取引が規制されています。附属書IIに記載されたF. columnarisは、種子、花粉、切り花、組織培養された植物を除いて、取引が規制されています。
Fouquieriaは種子と挿し木から育てることが出来ますが、生長は非常に遅く広く普及しているとは言えません。種子や苗はオンライン及び、ヨーロッパや米国のナーセリーから入手出来ます。

以上がCITES2018のFouquieriaの項目です。日本ではFouquieriaの人気はイマイチですが、F. fasciculataの苗が、イベントで高額で取引されているのを見たことがあります。幹が太らず観賞価値が低いF. diguetiiやF. macdougaliiは、何故か園芸店に苗が並んだりもしました。イベントではF. columnarisやF. fasciculataの現地球も稀にありますが、やはり非常に高額です。しかし、パキポディウムやオペルクリカリアほどには流通はないようですね。日本国内に限って言えば、違法取引が問題となるレベルの人気はなさそうです。
私はFouquieriaの実生苗、あるいは挿し木苗を購入しています。しかし、中々育ちが遅く、見られるようになるまではまだまだ長い時間がかかりそうです。


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外来種は日本でも問題となっていますが、この問題は国内のみならず世界中で起きています。昔から木材やコンテナに紛れて害虫が侵入したり、ペットとして持ち込まれたアライグマやミシシッピアカミミガメが捨てられて野外で繁殖してしまっているケースなどがあります。しかし、近年ではオンライン取引により、個人的に植物を輸入するケースが増えて来ました。しかし、その中には違法なものも含まれている可能性があります。現状ではオンライン取引に対する監視の目がゆるいため、違法取引の最大の懸念点となっています。ということで、本日は植物のオンライン取引について調査した、Jacob Maherらの2023年の論文、『Weed wide web: characterising illegal online trade of invasive plants in Australia』をご紹介します。

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ホテイアオイ Pontederia crassipes
一般的にはEichhornia属とされますが、現在はPontederia属とされているようです。
『Nova genera et species plantarum』(1823年)より。


オーストラリアはすでに29000種以上に及ぶ外来植物が導入されており、在来植物は深刻な影響を受けています。そのため、オーストラリア政府は厳格な輸入措置とリスク評価を実施しています。管理措置は州政府が行い、管轄区域におけるその分類群の取引の禁止を「宣言」します。宣言された植物は、供給、販売、輸送が禁止され、違反に対しては罰金が科せられます。しかし、ウェブ取引では実店舗がなくでも良く、簡単に郵送されたりと、従来の措置を回避する可能性があります。国際郵送はあまりにも多いため、すべてを調べることは困難です。

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Orbea variegata(上)
ガガイモ科の多肉植物で、スタペリアと同様に星型の花を咲かせます。
『Hortus botanicus panormitanus』(1877年)より、Stapelia atrataとして記載。

著者らはウェブサイトの植物取引広告を1年間監視し、植物の取引を記録しました。結果、1年間で235162件の植物広告を収集し、10000件はいずれかの州で取引が禁止されている種類でした。最も収集された違法植物は、ウチワサボテンと水草でした。ウチワサボテンは、Opuntia microdasys(金烏帽子)やOpuntia monacantha(単刺団扇)、Opuntia ficus-indica(大型宝剣)、あるいは他のウチワサボテンも取引されました。水草は、Eichhornia crassipes(ホテイアオイ)やLimnobium laevigatum(アマゾントチカガミ、アマゾンフロッグビット、現在の学名はHydrocharis laevigata)が一般的でした。また、頻繁に検出された侵入植物は、Zantedeschia aethiopica(オランダカイウ、Calla)やGazania、Hedera helix(セイヨウキヅタ、アイビー)、Lavandula stoechas(フレンチラベンダー)、Rubus fruticosus(ブラックベリー)、Orbea variegata、Azadirachta indica(インドセンダン、neem)でした。

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大型宝剣 Opuntia ficus-indica(左)
『The illustrated dictionary of gardening』(1884-1888年)より。


ウチワサボテンは簡単に増やすことが出来ますが、トゲがやっかいなため、増えすぎると最終的には処分に困ることになります。その結果、ウチワサボテンは投棄されることがあるようです。また、ウチワサボテンの処分に困り、売却したいと思っている人もいるようです。

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Calla(左上)
『Beautiful flowers』(1890年)より。


以上が論文の簡単な要約です。
オーストラリアは有袋類など固有種の宝庫です。同じように植物も固有種が多く、独自の生態系があります。オーストラリア政府も固有種を守るために、規制はかなり厳しくしているようですが、現実問題として違法な植物の取引は行われてしまっています。ウチワサボテンなどは鉢に植えていなくても、節で切ってお手軽に発送可能です。簡単に挿し木で発根しますし、乾燥地のオーストラリアでは野外でもよく育ちます。実際にオーストラリアでウチワサボテンが増えすぎて、対応に困っているという報道を見たことがあります。1年中野外でサボテンを育てられるというのは羨ましい話ですが、環境が合いすぎるというのも、それはそれで困ったことのようです。

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金烏帽子 Opuntia microdasys(右下)
しかし、刺さって抜けない芒刺のせいで、増えすぎた金烏帽子を取り除くのは大変そうです。
『The Cactaceae: description and illustrations of the catus family』(1919年)より。


さて、この違法オンライン取引はオーストラリア特有の問題ではないでしょう。インターネットは世界中のあらゆる国を結んでいますから、違法オンライン取引はすべての国で行われているのものと考えても良いかも知れません。日本ではどうでしょうか? 私にはその実態は分かりませんが、法的な問題は別にして、風潮としては違法取引に対する問題意識は薄いように感じられます。外国語の苦手な日本人は海外との取引は少ないような気もしますが、実際は分かりません。
最後に蛇足ですが、論文のタイトルの「Weed wide web」はURLのwww、つまり「world wide wide」をもじったものでしょう。wwwは世界中のウェブサイトをハイパーテキストでつなぐシステムのことらしいのですが、実質これはインターネットと同義となっているようです。ですから、「Weed wide web」は、インターネットを介したオンライン取引を示唆しています。しかし、この「Weed」とは雑草のことですが、実際には取引されるのは観賞用の植物であり、実態に合わないような気もします。よく調べると、「Weed」には雑草から転じて、庭や畑の望ましくない植物を指す意味もあるようです。ウチワサボテンは庭に植えられている時は好ましくても、敷地から逸出してしまえば生態系を脅かす「望ましくない植物」になってしまうということでしょう。


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以前、アロエとユーフォルビアについて、ワシントン条約(CITES)の附属書に記載された種を取り上げたことがあります。本日は、アメリカ大陸の主にメキシコから米国に分布するAgaveについてご紹介したいと思います。参考にしたのは、2018年に発行されたCITES2018です。早速、見てみましょう。

Agaveは250種以上からなり、うち2種類はCITESに記載されています。
・Agave parvifloraは附属書Iに記載されており、国際的な取引は禁止されています。直径15〜25cmの小型のロゼットを形成し、ワックス状にコーティングされ、白くマーキングされた濃い緑色の葉を持ちます。葉の縁には白いフィラメントがあります。花茎は高さ1.8mになり、淡い黄色の花を咲かせます。
A. parvifloraは観葉植物として栽培されます。分布はアリゾナ州南部とメキシコのソノラ砂州北部に限られるため、米国とメキシコの両方の法律で保護されています。
CITESの貿易データベースによると、A. parvifloraは生きた植物と種子が取引されています。ワシントン条約の許可した栽培場で栽培されたA. parvifloraの、主な輸出国はタイとドイツです。単に栽培個体の主な輸出国はオランダで、次がドイツとメキシコです。種子は米国から中国、日本、カナダ、オランダ、台湾、チェコ共和国へ輸出されています。


・Agave victoriae-reginaeは附属書IIに記載されています。葉は10〜15cmで、最大50cm程度の小型種です。緑色の葉の縁に沿って独特の白いマーキングがあります。葉はコンパクトな螺旋状のロゼットを形成します。花茎は高さ4mほどで、赤味がある様々な色の花を咲かせます。
A. victoriae-reginaeは観葉植物として人気があり、乾燥地の造園に利用されます。最も耐寒性が強いにも関わらず、湿潤な温帯地域での造園には適していません。
A. victoriae-reginaeの取引は人工的に繁殖させた植物で、生産量は少数です。主な輸出国はイタリア、スペイン、タイ、オランダです。


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Agave victoriae-reginae
『The Gardener's chronicle』(1875年)より


以上がCITES2018のAgaveの項目です。A. parvifloraは「姫乱れ雪」、A. victoriae-reginaeは「笹の雪」として日本でも良く知られた小型種です。Agaveはワシントン条約に記載され、国際取引が規制されている種は少ないようです。ただ、原産地における野生植物の違法採取はどの程度多く脅威なのかが気になります。
日本ではアガヴェは流行真っ盛りと言った感もありますが、タイプ違いや園芸種が人気なようで、現地球を求める動きは見られません。より強いトゲの個体を求めたり、美しい覆輪がある品種が出来たりと、園芸的にも発展しているようです。最近では特に若い人たちが積極的に実生を行っているようですが、この流れは原産地の植物の保全の観点からも推奨出来ます。


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植物の花は受粉し種子を作るための器官です。豊富な蜜や花粉は、花粉を運び受粉を手伝ってくれる受粉媒介者への報酬です。しかし、中には花そのものを食べてしまったりして、受粉を妨害してしまうような動物もいます。これを、とりあえず「送粉系撹乱」と呼ぶことにしましょう。さて、そんな送粉系撹乱の例を探してみたところ、Lophophoraを調査した論文が見つかりました。それは、Maria Isabel Briseno-Sanchezらの2022年の論文、『Biotic interaction prior to seed dispersal determine recruitment probability of peyote (Lophophora diffusa, Cactaceae), a threatened species polmllinator-dependent』です。Lophophoraは受粉にとって重要な蜜や花粉が少ない植物と言われています。報酬が少ない場合、送粉系撹乱を受けやすいような気もしますが実際はどうなのでしょうか?

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Lophophora williamsii
L. diffusaの良い図がなかったのでL. williamsiiで代用。
Echinocactus williamsiiとして記載。
『Gesambescheibung der Kakteen』(1898年)より


Lophophora diffusaはチワワ砂漠の固有種です。L. diffusaは自家受粉せず、必ず相手が必要な他家受粉花です。開花期間は長く、甲虫やバッタ、ミツバチが訪れます。果実は小さく受粉後2ヶ月ほどで成熟しますが、種子は少なく1つの果実に40個未満です。種子はエライオソーム(蟻に運んでもらうための栄養)があるため、蟻により拡散しているようです。また、種子は水が染み込まず水に浮くため、雨により流される可能性もあります。

試験はメキシコの標高1438mにあるQueretaro州Penamillerで実施されました。植生はLarrea tridentata、Fouquieria splendens、Mimosa sp.、Bursera sp.などの低木が優勢です。
L. diffusaの花の蜜量を測定しましたが、22%の花は蜜がありませんでした。最も蜜量が多い花でも0.36μL(0.00036mL)に過ぎず、平均は0.054μLであり0.1μLを超えることはほとんどありませんでした。
花には甲虫(Acmaeodera=フナガタタマムシ属)と数種類のミツバチ(Macrotera、Lasioglossum、Ashmeadiellaなど)が訪れました。観察した年により甲虫が優勢の場合もミツバチが優勢な場合もありました。また、受粉率は年により変動が激しいものの、結実はほとんどが開花した花の半分以下でした。


乾燥地では水の少なさがストレスとなり、蜜の生産に悪影響を及ぼします。蜜の減少は花と花粉媒介者の相互作用を減らし、受粉率を低下差させる可能性があります。また、L. diffusaの花粉媒介者の訪問率は非常に低く、訪問者の少なさが受粉率の低さの原因かも知れません。他とは研究では、L. diffusaの花に人工的に花粉をつけると、種子が20%も増えることが示されています。

以上が論文の簡単な要約です。
L. diffusaは蜜の量が少なく、蜜がない花まであることが分かりました。そのことが花粉媒介者である昆虫にとって魅力的ではないことは明白で、訪問者の少なさは種子生産に悪影響を及ぼしています。論文では水の少なさがストレスとなるとありますが、水の量と蜜の量には相関があるのでしょうか。そうであるならば、栽培している個体は蜜量が豊富ということになります。しかし、本来L. diffusaは乾燥地に適応しているはずです。乾燥化が進み蜜生産量が減少したというのなら分かりますが、環境に適応した結果がただ示されただけのような気がします。要するに、沢山の種子を作れない代わりに、蜜の生産を最小限にしているのかも知れません。蜜が少なかったりなかったりしても、花が咲いていればとりあえず昆虫は訪れるでしょう。群体性のミツバチなら蜜がなければ仲間を呼びませんが、単独性のミツバチなら花が咲いていれば騙されて花を訪れるでしょう。花粉を目当てに訪れることも考えられますが、花粉媒介者とは基本的に一過性の付き合いなのかも知れませんね。



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先日のビッグバザールの購入品を植え替えました。用土は様々で、乾き具合が把握出来ないため、冬や真夏以外では、なるべく早めに植え替えをするようにしています。根の状態はどうでしょうか? 

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Euphorbia hedyotoides
赤玉細粒は思うよりジメジメするので、個人的には苦手です。

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根の状態は悪くありません。
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少し塊根を埋め気味にしました。根が細いので、しばらくは水を多めにやるつもりです。

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Euphorbia beharensis
挿し木苗ですが、根はどれくらいあるでしょうか。用土は水はけが良さそうですね。

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根はチョロリとあるくらいです。まあ、問題ありません。

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Aloe calcairophila
赤玉細粒を単用するのは割と心配になります。

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根は動いていません。かなりの加湿状態でした。
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排水の良い用土に植えたので、根は動いてくれるでしょう。

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Aloe saundersiae
こちらも湿っぽい感じがします。

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根はかなり加湿でしたが、良く動いているようです。水が好きなのでしょうか? 良く見たら、子株か3つほどついていました。
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植え替えましたが、花は咲いてくれるでしょうか? 

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白磁盃 Aloe pratensis
こちらも根が心配。

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これは駄目ですね。加湿で少しやられ気味です。しかし、根元から新しい根が出ていますから、まあ大丈夫でしょう。
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根が太く荒いタイプみたいですから、大きめの鉢に植えました。しかし美しいアロエですね。

私は水はけ重視の用土で植えています。ですから、非常に乾くのが早いのは良いのですが、乾き過ぎて萎れがちになります。ですから、成長期は頻繁な水やりが必要で、やや面倒ではありますが。


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鈴木正彦・末光隆志 / 著、『「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ』(中公新書)が刊行されました。生物は利己的であるというのは基本的なことですが、共生関係など利他的な戦略は、ただ利己的であるよりも生存に有利であったりします。そんな、共生関係について生物界を広く見渡し紹介した1冊です。内容的には植物だけではありませんが、植物も扱われており、以外と本では触れられない話が多いように思われます。内容について、植物関連部分の概要だけ少しご紹介します。

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①細胞内共生説
ミトコンドリアや葉緑体は元来は細菌であったという細胞内共生説は、1970年のリン・マーグリスの『真核生物の起源』にまで遡ります。すぐに認められたわけではなく、中々受け入れられなかったとはいえ、細胞内共生説について学術レベルの内容を一般書籍で解説した本はあまりなかったと言えます。葉緑体の誕生は植物の誕生でもあるわけですから、生物の進化の歴史では非常に重要なイベントです。マーグリスの時代より研究は進んでいますから、最新の情報を得ることが出来ます。

②虫媒花と昆虫の進化
当ブログでも、サボテンや多肉植物と花粉媒介者の関係についての論文をいくつかご紹介してきました。しかし、論文は狭い範囲の的を絞った話でしたから、その基本的な有り様についてはわかりませんでした。本書では、様々な実例を挙げて花粉媒介の有り様を解説しています。共進化やアリ植物を始めとした、植物と昆虫の関係性を広く解説しており勉強になります。

③菌根菌と植物の関係
野生の植物は菌類と共生関係を結んでいるものが非常に多く、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も例外ではありません。私も何度か記事にしたことがあります。根粒菌の話だけではなく、蘭菌の話やアーバスキュラー菌の話もあり、植物と菌類の共生関係の基本的な部分を学ぶことが出来ます。

内容的には動物や菌類の話も沢山あります。しかし、このように植物だけを分けないという書き方は少し珍しいですね。研究者は基本的に1分野に突出するため、広く扱うのは中々難しいように思われます。本書は2人の専門が異なる研究者の共著で、お互いに内容を補っています。読んでいて感じたのは、植物もまた生物界の一部分に過ぎないのだという当たり前のものでした。しかし、基本的に生物学の一般書籍は、動物は動物、植物は植物に絞って書かれがちですから、その当たり前の意識が薄れがちです。私などはサボテンや多肉植物の論文に前のめりで入り込んでいるため、そのことをついつい忘れがちです。一度立ち止まって、広く見回してみるのも必要なことだと思いなしました。おすすめします。


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本日は待ちに待ったサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。一体、どのような面白い植物に出会えるか、楽しみにしていました。
ビッグバザールは朝早いので寝坊することもしばしばでしたが、今回は開場が10時といつもより遅いため、開場前に到着しました。相変わらず9月に入っても暑く、汗を拭きながらの開場待ちでした。

しかし、9時20分頃から整理券を配布と言っていましたが、すでに配り終えていたようで、一般待機列に並びました。今回は開始時間が遅いため、皆さん早く来たみたいですね。

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今回はいつも以上の混雑で、中々会場に入れませんでした。出店もいつもより多かったわけですが、残念ながら個人的には今回はイマイチでした。単純に私好みのものが少なかっただけとも言います。
私の好きなユーフォルビアは手持ちにあるものばかりでしたね。基本的に3000円以下しか買わないようにしていますから、塊根性のユーフォルビアは見るだけです。アストロロバ、ハウォルチオプシス、ツリスタ、ガステリアも駄目でした。パキポディウム苗は沢山ありましたが、現在は集めていません。あと、今回はアロエが少なくてあまり選ぶ余地がありませんでした。
全体的には大きな塊根・塊茎植物があちらこちらに並ぶのはいつものことです。アガヴェはあちこちにありました。相変わらず人気なようです。エケベリアを沢山並べるブースが2、3あり、こちらも人だかりがありました。ハウォルチアも結構多く、禾が美しいタイプもあちこちにあり、ちょっと気になりました。ただ、見てもあまり分からないため、もう少し勉強してからにします。

さて、本日の購入品はこちら。
今回はブースが多いせいかいつもと並びが異なり、混雑も重なったせいか少々戸惑いました。今回はお馴染みのブースからは買わず、多分初めての2 つのブースから購入しました。
まずは、ユーフォルビアを始めとした塊茎・塊根植物の苗を並べているブースへ。安いユーフォルビア苗とフォウクィエリア苗を購入。

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フォークイエリア・プルプシー
Fouquieria purpusiiです。プルプシイの苗は初めて見ました。なんと、
Fouquieriaはこれで9種類目になります。あと2種でコンプリートですが、ネットでは買わずに今まで通りにイベントでの偶然の出会いに期待することにします。

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ユーフォルビア・ベハレンシス
Euphorbia beharensisです。挿し木苗なので塊根は出来ませんが、姿が面白いので購入。

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ユーフォルビア・ヘディオトイデス
Euphorbia hedyotoidesです。可愛らしい塊根植物です。

お次はDyckiaやケープバルブが並ぶブースへ。こちらでは小さなアロエ苗を購入。最近は柔らかいタイプの小型アロエが好みです。
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Aloe calcairophila
Guillauminiaとされたこともあるマダガスカル原産のアロエ。葉が回転せず2列性のまま育つのでしょうか?

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Aloe sandersiae
調べても出てこないと思ったらスペルミスがあり、正確にはA. saundersiaeでした。かつては、Leptaloeとされていたグラスアロエです。

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白磁盃 Aloe pratensis
有名種ですが初めて見たのでうっかり購入。高地性アロエなんでしょうかね?


さて、今回はいつも以上の混雑具合で、何やら疲れました。好みの多肉植物は少なかったため、いつもより購入は控えめです。また次がありますから、無理して買うこともありませんからね。これから涼しくなっていきますが、多肉植物のイベントはあるのでしょうか? 情報収集が下手なのでイベントに気付かない可能性もありますが、出来ればあちらこちら見て廻りたいものです。というわけで、9月のサボテン・多肉植物のビッグバザールでした。


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国際多肉植物協会(I. S. I. J)の主催するサボテンや多肉植物の販売イベント、「サボテン・多肉植物のビッグバザール」がいよいよ明日(2023年9月18日)開催されます。関東最大級の多肉植物系イベントです。普段目にしない珍しい植物に出会えるチャンスです。
TOCビルが解体される予定だったのですが、資材費高騰だったか色々あったようで延期されています。それでも今年度が最後でしょう。協会も例年よりビッグバザールの回数増やしてますね。しかし、TOCビルは五反田駅から近く非常に便利だったわけですが、来年の夏とかどうなるのか気になります。電車で行きやすい場所だったらいいんですけど。
さて、いつものように入場料500円は準備しといて下さいだとか、開場前にキープするなとか色々ありますか、今回は変わった部分もあります。いつもは、9時開場で8時20分から整理券を配布していました。しかし、今回は開場が10時と遅く、整理券の配布も9時20分からですからお気をつけ下さい。


さて、今回のビッグバザールは行けるか直前まで分かりませんでした。仕事が入る可能性があったのですが、なんとか仕事が日曜日になるように調整しました。良かった良かった。前回のビッグバザールは、風邪を引いてしまい体調不良でしたから1周ぐるりと回って帰りましたが、今回は体調も万全です。じっくり見てくるつもりです。
ここで、過去のビッグバザールの購入品がどれだけ育ったか、ちょっとだけ見てみましょう。上の画像が購入時で、下が現在の画像です。

冬のサボテン・多肉植物のビッグバザール
 (2021年11月)
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Gymnocalycium prochazkianum ssp. simile VoS 1417
大分育ちましたね。塊根性ですが、購入時はまだあまりちゃんと根が張っていないとのことでした。白い粉を吹くタイプなので、日照に強いだろうと思い、あまり遮光していません。

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Pachypodium makayense
非常に太りましたが、葉が茂りすぎて何だか分かりませんね。今年、初めて開花しました。



②春のサボテン・多肉植物のビッグバザール
   (2022年4月)
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女王錦 Aloe parvula
購入時は大分寒さに当たっていたようで、真っ赤でした。赤味が抜けるのに半年以上かかりました。現在は葉も増えて絶好調です。ちょうど、花茎が上がっています。

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Haworthiopsis koelmaniorum
時期的にあまりキレイではありませんが、かなり良い形に育ったように思えます。

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Agave multifilifera
おまけでいただいたアガヴェ。ようやくアガヴェ感が出て来ました。


③夏のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2022年6月)
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Euphorbia gymnocalycioides
平たい形に育っています。難物と言われていますが、今のところ問題ありません。


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Gasteria vlokii
ガステリアは生長が遅いのですが、葉が1回転しました。後は花が咲いてくれたら嬉しいのですが…


④秋のサボテン・多肉植物のビッグバザール
    (2023年9月)
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Haworthiopsis nigra IB 12484
ニグラは大分積み重なってきましたね。地下茎から出てきた子株もニグラの顔つきになってきました。


⑤冬のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2022年11月)
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Euphorbia moratii
とにかく葉の勢いがよく、見違えるように育ちました。根元はかなり太くなっていますから、来年の植え替えが非常に楽しみです。

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Euphorbia handiensis
カナリア諸島原産のユーフォルビアです。よく開花します。


⑥新年のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年1月)
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Fouquieria leonilae
よく育っていますね。とはいえ、まだ1年目なので太くはなっていません。これからです。

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Euphorbia greenwayi
タンザニア原産なので難しいかなと思いましたが、それほど気難しくありませんでした。



⑦春のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年3月)
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Euphorbia woodii
よく育っていますね。本体のサイズが明らかに変わりました。


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Fouquieria fasciculata
こちらも非常に勢いが良いです。伸びすぎた枝はいずれカットしますから、挿し木したくなりますが、太らせるために来年まで伸ばしっぱなしで行きます。



⑧6月のサボテン・多肉植物のビッグバザール

    (2023年6月)
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Gymnocalycium ragonesei
まだ、入手してから3カ月なので目立った違いはありません。ただ、購入時は根があまり張っていませんでしたが、今は非常にしっかりと根を張りました。

さて、明日のビッグバザールでは、どんな多肉植物が見られるでしょうか? 今回は特にターゲットを決めずに行きます。何か面白いものが見られるでしょうか? 楽しみですね。


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最近、イベントや園芸店でウチワサボテンを以前より目にするようになりました。流通の兆しでしょうか? 思うにゲオメトリクスや武蔵野などのテフロカクタスが先鞭をつけたような気もします。しかし、ウチワサボテンの仲間はよく似ており、見分けるのは中々困難です。ただし、新しい枝を重ねる特徴から一目でウチワサボテンと分かります。
ウチワサボテンはOpuntia属とされてきましたが、やがていくつかの属が独立しました。しかし、ここいら辺の事情はよく分かりませんから、少しずつ調べてみることにしました。本日はウチワサボテンの分類について書かれた、Matias Kohlerらの2021年の論文、『"That's Opuntia, that was!", again: a new combination for an old and enigmatic Opuntia s. l. (Cactaceae)』をご紹介します。

Opuntia schickendantziiは、Catamarca & Tucumanの資料に基づいて1898年に記載された古くて謎めいた種で、Cylindropuntia亜属とされました。種の説明は、アルゼンチン北西部の山岳地帯とボリビアに沿って分布している、緑色で光沢のある枝、トゲのあるアレオーレ、エメラルドグリーンの柱頭を持つ黄色の花などの特徴で示されました。命名後は形態学的特徴から、Cylindropuntia属、Austrocylindropuntia属、Salmiopuntia属で暫定的に扱われました。しばしば、「地位が不確定(incertae sedis)」とされました。

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Opuntia schickendantzii
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より


2012年に遺伝子解析によりO. schickendantziiがBrasiliopuntiaのグループであることが示され、2014年にBrasiliopuntia schickendantziiが提案されました。しかし、地理的にO. schickendantziiとBrasiliopuntiaを結びつける形態学的特徴はありません。さらに、研究で使用された資料は、アリゾナのBoyce Thompson樹木園の「Lion's Tongue」と呼ばれる栽培された個体由来であることが判明しました。

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Brasiliopuntia brasiliensis
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より


著者らは2006年から2019年にかけて、南アメリカ南部の主要な生態地域を網羅するフィールドワークを実施しました。採取されたウチワサボテンの遺伝子を解析しました。解析結果を以下に示します。

               ┏━━━━Opuntia spp.
               ┃
           ┏┫        ┏━Tacinga spp.

           ┃┗━━┫

           ┃            ┗━Brasiliopuntia brasiliensis
           ┃
           ┃                ┏S. salminiana1
           ┃            ┏┫
           ┃            ┃┗S. salminiana2
           ┃        ┏┫
           ┃        ┃┗━S. salminiana3
           ┃       

           ┃    ┏┫┏━O. schickendantzii
           ┃   
┃┗┫
           ┃   
┃    ┗━S. salminiana4
           ┃
┏┫
       ┏┫┃┗━━━Tunilla spp.           
       ┃┗┫
       ┃    ┗━━━━Miquelliopuntia miquelii
   ┏┫
   ┃┗━━━━━━Consolea
   ┫ 
   ┗━━━━━━━Out group


※「spp.」とは複数種を含むという意味です。

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Salmiopuntia salminiana
『The Cactaceae vol. 1』(1919年)より

遺伝子解析の結果から分かったことは、O. schickendantziiはSalmiopuntiaに含まれるということです。さらに、4つの産地から採取したSalmiopuntia salminianaは3個体はまとまりがありましたが、1つの個体はO. schickendantziiと近縁でした。
ちなみに、2012年に解析された「Lion's Tongue」は、Brasiliopuntiaに含まれることが分かりました。このBoyce Thompson樹木園のウチワサボテンは野生のO. schickendantziiと比較した結果、特徴がまったく異なることが明らかになりました。このタイプのウチワサボテンは栽培されたものが世界中で野生化しており、オーストラリアやスペインなどでも誤ってO. schickendantziiの名前で報告されています。このウチワサボテンは「Lion's Tongue」という名前で市販されていますが、起源は不明であり交配種である可能性もあります。


以上が論文の簡単な要約です。
この論文は、あまり情報がないOpuntia schickendantziiがSalmiopuntiaに属するということを示したものです。このように、少しずつ研究は進んでいます。形態学的な分類から遺伝学的な分類に徐々に移行しつつあります。Opuntiaは分解され、現在のウチワサボテンはOpuntia sensu stricto(狭義のOpuntia)となっています。ウチワサボテンの仲間全体は今どうなっているのでしょうか? これからも、徐々に調べていくつもりです。



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常々、サボテンや多肉植物の原産地の環境を詳しく知ることができたら、栽培する上で何かしらの参考になるのではないかと考えたりもします。しかし、残念ながらサボテンや多肉植物の原産地の情報というものは、調べてもよくわからないものが多いように思われます。原産地の環境を再現出来るでもなし、試行錯誤するしかないと言われてしまえば、それまでかも知れませんけどね。まあ、純粋な興味からも知りたいとは思います。とは言うものの、よくよく考えたてみると、乾燥地が原産のサボテンや多肉植物が、まったく異なる環境の日本で育つというのも不思議な話です。サボテンや多肉植物は、どの程度の環境の違いならば許容出来るのでしょうか? その回答になるかは分かりませんが、メロカクタスの本来生える環境とは異なる土壌で栽培してその影響を調べた、Maxlene Maria Fernandes & Jefferson Rodrigues Macielの2023年の論文、『Adaptive potential of Melocactus violaceus Pffeiff (Cactaceae) to clay soils』をご紹介しましょう。

現在、地球温暖化による海面上昇が懸念されており、まず起こることとして海岸線の破壊が挙げられています。海岸線に近い沿岸地域の植物の生息地が短時間で減少してしまうかも知れません。例えば、ブラジル沿岸のrestingaと呼ばれる砂地の沿岸植物が危機にさらされる可能性があります。restingaの植物群落は、草本から森林まで、いくつかの植物相からなります。restingaは海との距離に大きく影響され、高い塩分、高温、強光、強風、栄養不足、貧者な水などに対処するために、植物は適応を示します。Melocactus violaceus Pffeiffは、restingaの絶滅危惧種の1つです。M. violaceusはrestingaと川の砂丘、つまりは砂地に生えるサボテンです。特定のタイプの土壌に適応した植物は、分散力が限られます。しかし、沿岸地域の都市化に伴い、砂地の環境を失った樹木が粘土質の土壌に進出していることが観察されています。同じrestingaの白い砂地に生えるM. violaceusはどうでしょうか?

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Melocactus violaceus
Cactus melocactoidesとして記載(1923年)。


著者らはM. violaceusの種子を採取し発芽させました。発芽180日後、3種類の土壌で育てました。1つ目は砂と堆肥を等量、2つ目は粘土と堆肥を等量、3つ目は砂が1/4と粘土が1/4と堆肥が1/2とした中間のものです。栽培は180日間行われ、苗のサイズが測定されました。
栽培の結果、M. violaceusの苗の生長は、砂≧砂+粘土>粘土でした。砂質土壌がM. violaceusの実生にどって理想であることが分かります。粘土質土壌でも定着する可能性はありますが、実生の初期生長に制限を課します。砂質土壌は一般的に栄養素に乏しく、生える植物は根系が特殊化しています。M. violaceusも砂粒に強く付着する非常に発達した根系を持っています。
このような根の特殊化はDiscocactus placentiformisなどの他の種類のサボテンでも見られ、根が砂粒との付着と吸収面積を増加させる物質の放出がおきる「砂結合」と呼ばれる機能を持ちます。砂結合という適応を示す植物は、リンの取り込みに不可欠なカルボキシラーゼやホスファターゼを大量に放出します。砂結合は窒素ではなく、砂質土壌ではリンの制限に適応しています。


以上が論文の簡単な要約です。
単に環境の違いだけではなく、根の特性が環境適応の結果として異なるのですから、土壌の違いはクリティカルに生長に響くというのは納得のいく話です。とはいえ、著者らの試験では粘土質土壌でもまったく育たないわけでもありませんでした。これは、環境破壊による生息地の減少に対し、M. violaceusの環境適応への可能性を示したという趣旨なのでしょう。しかし、残念ながらそう上手くは行かないかも知れません。M. violaceusが本来の砂質土壌から追い出されて、砂質土壌ではない地域への移動をしようとしたとしましょう。その場所には環境適応した生態系がすでに存在するはずですから、後から入り込むM. violaceusは元来環境適応した植物と競争しなければなりません。果たして、出来上がった生態系に入り込むことが出来るでしょうか? 



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サボテンに限らずですが、育てている鉢植えの植物の名前というものは、我々趣味家を悩ませるものです。札落ちで名前が分からないという悩みだけではなく、純血種か雑種かすら判別が難しいことがあります。ギムノカリキウムなどは、雑種が蔓延しすぎて国内の種や品種が信頼出来ない状況に陥ったこともあります。今でも、LB2178は雑種が盛んに作られ、それらがホームセンターで堂々と「LB2178」の名前で販売されてしまっています。もはや、国内のLB2178は信頼性が皆無な状態であり、趣味家が育てている個体が本物かどうかは誰にも分からないでしょう。
混乱の元は考えなしの雑な交配と、正しい名札をつける意識の薄さがあります。サボテンは原産地では希少なものが多く、ワシントン条約で国際取引が制限されています。サボテン栽培は希少植物の保存という意味もありますから、正しい名前も保存されなくては意味がありません。本日はそんな趣味家とサボテンの名前について考察したTristan J. Davisの論文、『Don't tell me, show me: the importance of maintaining data in cultivated plants』をご紹介します。

情報は大事
多くの科学的分野と異なり、サボテンと多肉植物の学術的進歩は愛好家に依存してきました。そのため、正確な情報が含まれたコレクションには、植物の分類学や保全にとって意味があります。しかし、サボテンや多肉植物の愛好家と話すと、所有する植物の情報を保存していない様々な言い訳をよく耳にします。植物の名前のような基本的な情報さえ、負担が重すぎると考える人もいます。このような考えは、植物を純粋に審美的なものとして育てたい人には受け入れられますが、それらの人が希少植物に手を出し始めると問題が生じます。個体数を減らしている希少植物に対しては、その情報を取得して保存することに責任を感じるべきです。

学名の変更
植物の学名は変わることがあるため、愛好家は分類学者を非難したりします。とはいえ、元来分類学は絶えず変化する可能性があるものです。しかし、名前が変わる度に最新の学名に名札を変更する必要はありません。なぜなら、分類学には変更の文書化がなされているためです。植物に適切な名前が書かれている限り、いつでもその後に変更された名前を知ることが出来ます。学名が変更される度に名札を変更することを好む人もいますが、必要ではありません。学名が変更される度に名札を書き換えるなら、元々の名前も併記するべきです。ある植物が亜種だとか変種とされたり、後に独立種となったりすることはよくあります。この時に、元の情報が失われるとその植物が本来何を指していたのか分からなくなってしまいます。

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Loxanthocereus(右下)

学名の誤り
そもそも名前に誤りがある場合もあります。例えば、Karel Knizeの種子コレクションではペルーのSamneから採取されたBorzicactus samnensis F. Ritterとされる植物が配布されてきました。B. samnensisは紫色の花を咲かせます。しかし、著者が育てたところ、赤橙色の花を咲かせました。特徴的にはLoxanthocereusです。産地情報から調べると、SamneからはLoxanthocereus parvitesselatus F. Ritterが分布していることが分かりました。Knizeは同じ地域から採取された他の植物とコレクションを混同した可能性があります。

入手経路とコミュニティ
どこで、いつ、誰から入手したのか、という情報はあまり評価されていません。しかし、これは最も簡単に入手可能な情報です。
また、愛好家同士のコミュニケーションの促進にも役立ちます。植物の情報は愛好家による植物に対する理解を高め、関心を持つ愛好家コミュニティによる教育にも役立ちます。


疑わしい名前
著者は誤った名前で販売されている珍しいサボテンを見つけました。Siccobacatus estevesii、Pilosocereus chrysostele、Spephanocereus leucostele、Browningia hertlingiana、Oroya peruvianaなどです。
さらに、一見して正しい種に見えたとしても、似たような特徴の別種があるのかも知れません。基本的に重要な特徴は花ですから、未開花個体を適切に識別出来たと確信することは出来ません。また、栽培環境は自然環境とは異なるため、姿が異なることもあります。

インターネット上の怪しい情報
ウェブ上の情報は不正確で誤解に満ちているため、役に立たず混乱を招くだけです。オンラインコミュニティで「専門家」とされるような人たちは、正当な理由もなく古い考えや反証された識別法に固執しています。

サボテン愛好家と研究者
情報の維持は保全にとっても重要です。正確な情報を持つ植物園の植物たちは貴重です。適切な産地情報がある植物は、植物の原産地への再導入の取り込みにも使用可能です。
また、愛好家の育てているサボテンを用いた研究もあります。例えば、Copiapoaの産地情報から気候変動にどのように反応するのかを評価する研究が知られています。
サボテン愛好家の育てている植物の情報の保存は、絶滅が危惧されている植物にとって明らかに重要です。また、資金不足に悩ませられている科学者たちにとっても、重要な研究対象となります。サボテンの大多数が気候変動、環境破壊、密猟により重大な危険にさらされていることを考えると、情報を維持する努力をするべきでしょう。


最後に
学名は常に変わる可能性があります。私のブログでは、学名の変遷を扱った記事がかなり多いのですが、経験上1種類の植物に数十もの異名があることは珍しくありません。情報が増えたり、新たに詳細な研究がなされれば、これからも学名は変更されるでしょう。我々趣味家からしたら、学名は外見上はとても不安定なものです。しかし、新基準の学名が提唱された場合、過去に命名された学名と同一でありそれらは異名である旨が記載されます。ですから、分類学者は学名がどう変更されようが、その情報に簡単にアクセス出来るため、我々趣味家のように惑わされることはないのです。
対して我々趣味家は、論文の情報を追跡するのは中々ハードルが高いように思われます。論文は公的な意味合いもあり基本的に無料で一般公開されているものがほとんどです。しかし、最近は有料の論文が多くなってしまっています。私も相当な数の論文を諦めました。しかも悪いことに、ウェブ上の情報は入り乱れており、誤りが目立ちます。信頼のおけるサイトを探すのも一苦労です。何か学名が気になる、分からない、最新情報にアップデートしたいと考えられている方も多いでしょう。

この論文では情報の重要性を語っていますが、私の管理方法は3つからなります。1 つはラベルです。ラベルには購入時に記載された学名と、あれば和名、さらに入手年月日を記入しています。2つ目はノートへの記録です。ノートにイベントや園芸店の名前と訪れた日、購入した植物の名札に記入された名前、現在認められている学名を記入します。3つ目はこのブログです。ラベルの日付を見れば、ブログやノートから入手したイベントが割り出せる仕組みとなっています。手っ取り早いのは、ブログで日付で検索したら簡単に情報が出て来ます。ブログは写真つきなので便利です。とはいえ、電子データは消えてしまう可能性がありますから、一応はノートも予備として記録しています。ご参考までに。



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マダガスカルと言えば、花キリンなどの固有のユーフォルビア、固有種のアロエ、パキポディウム、DidiereaやAlluaudia、着生ランなど、とにかく珍しい植物の宝庫というイメージです。しかし、一般的にマダガスカルと言えばキツネザルをイメージするかも知れません。私もDidierea-Alluaudia林に住むキツネザルは、果たしてあのトゲトゲの幹に掴まって平気なんだろうかと、余計な心配をしたりもしました。さて、そんな中、キツネザルと植物の関係について書かれた興味深い論文を見つけましたのでご紹介します。それは、Jen Tinsmanらの2017年の論文、『Scent marking preferences of ring-tailed lemurs (Lemur catta) in spiny forest at Berexty Reserve』です。

キツネザルのマーキング行動
キツネザルはすべての霊長類の中で、最も複雑なマーキング行動を行います。群れのナワバリや、配偶者へのアピール、同じ性別の中での順位など、様々な社会状況に香りを使用します。過去にワオキツネザルで実施された研究では、マーキングをする際の特定の植物に対する選好は見られませんでしたが、垂直な茎に対する強い選好が見られました。しかし、観察されたのは雨季の森林内で、樹上での行動でした。ワオキツネザルは乾季には、乾燥しトゲだらけのDidierea-Alluaudia林に移動します。乾季ではマーキングする植物に選好はあるのでしょうか? 

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ワオキツネザル  Lemur catta
『Histoire phyrique: naturelle et politique de Madagascar』(1890年)より


ワオキツネザルに好みあり
ワオキツネザルが出産する乾季に、Berenty保護区で観察されました。雌6頭、雄7頭、若い雄2頭の計15頭の群れを追跡しました。著者らはマーキングの跡の調査と、100例の実際のマーキング行動を観察しました。
調査では1534属の植物を確認しましたが、最も頻繁にマーキングしたのはUncarinaでした。Uncarinaは調査地域の植物の6%を占めるに過ぎませんが、マーキングされた植物の65%を占めました。Albizia、Azadiractha、Catharanthus、Celtis、Fernandoa、Moringaも、よりマーキングされました。逆に、Alluaudia、Commiphora、Euphorbiaは個体数に比較してマーキングされませんでした。

選ばれる理由・選ばれない理由
実際のマーキング行動の観察では、その65%が分岐した植物を選んでいました。Uncarinaの85%は二股に分岐しているため、ワオキツネザルに好まれているのかも知れません。
AlluaudiaやCommiphoraはトゲがあるため、避けているのかも知れません。また、ユーフォルビアはトゲがない滑らかな外見上はマーキングに適した植物でも、ワオキツネザルは避けました。ユーフォルビアの刺激のある乳液を嫌がっているのかも知れません。
興味深いことにUncarinaはの樹液は独特の臭気があります。Uncarinaの臭気がマーキングの効果に影響を与えている可能性もあります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
乾季のワオキツネザルは、マーキングする植物に好みがあることが明らかになりました。また、著者らは、ワオキツネザルが片手で枝を掴んでバランスを取りながらマーキングする行動を観察しており、それが二股の植物が選ばれる理由かも知れないと述べています。しかし、なぜUncarinaなのかは、化学的な研究と、ワオキツネザルに対する行動試験をして、確かめる必要がありそうです。



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サボテンは主に北米から南米まで広く分布しますが、その分布は均一ではなく、沢山の種類のサボテンが集まるホットスポットが存在します。メキシコにはホットスポットがありますが、南米にはサボテンと聞いてイメージするのとは異なる森林性サボテンのホットスポットが存在します。本日はそんな南米の森林性サボテンを調査した、Weverson Cavalcante Cardosaらの2018年の論文、『Anthropic pressure on the diversity of Cactaceae in a region of Atlantic Forest in Eastern Brazil』をご紹介しましょう。

Espirito Santo州はサボテンのホットスポットの1つで、13属41種のサボテンが自生します。これは、ブラジルのサボテンの31%を占めています。この41種類の在来種のうち約69%はブラジル大西洋岸森林の固有種です。さらに、その63%は着生植物であり、森林環境に依存しています。
この研究は、詳細な調査によりサボテンの分布を正確に把握し、人為的脅威が与える影響を分析することにあります。

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Brasiliopuntia brasiliensis(右上)
Opuntia brasiliensisとして記載(1919年)。


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Coelocephalocereus fluminensis
Cephalocereus melocactusとして記載(1890年)。


調査によりEspirito Santo州では、38種類のサボテンが確認されました。一部の地域では、予想よりもサボテンが減少していました。
生物多様性の優先地域であるForno Grande、Santa Lucia、Augusto Ruschi、Domingos Martins東部は、Espirito Santoの中央山岳地帯にあります。しかし、優先地域の約25%を占める山岳地帯は依然として過小評価されています。同じく優先度の高いGrande Vitoriaにある保護地域もサボテンの種類が豊富です。しかし、Espirito Santoの経済の中心地であるVitoria、Vila Velha、Serraの各自治体には大きな人為的圧力があり、森林は12%しか残っていません。

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Pilosocereus arrabidae(上)
Cephalocereus arrabidaeとして記載(1920年)。

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Melocactus violaceus(右下)
Cactus melocactoidesとして記載(1923年)。


Espirito Santoにおいては、サボテンに悪影響を与える様々な要因があります。第一に岩上性のサボテンは常に牛、山羊、馬の踏みつけに苦しんでおり、固有種の衰退に繋がっている可能性があります。さらに、Espirito Santoはブラジルの装飾用石材の主要な産地で、ブラジルの採掘のほぼ半分を占めています。Cachoeiro de ItapemirimやNova Veneciaは装飾用石材加工の中心地であり、サボテンの多様性の高いあるいは中程度の地域です。また、大規模なユーカリのプランテーションに加え、コーヒーやココア、果実など、単一栽培により、州から多くの植生が失われたました。Rhipsalisの多くは着生性で樹木に着生するため、悪影響が考えられます。さらに、鉄鉱石の輸出のための港湾ネットワークの拡大は、地上性のサボテンに圧力を加えます。生物多様性の優先地域や保護地域は違法な砂の採取が行われており、希少なブラジル固有種であるPilosocereus arrabidaeは大幅な生息地の喪失に見舞われています。

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Hatiora cylindrica(左上), 1923年
Hatiora salicornioides(右下)

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Lepismium houlletianum
Rhipsalis houlletianaとして記載(1923年)。


以上が論文の簡単な要因です。
特に解説することはありませんが、やはりと言うか、中々厳しい状況に置かれていることが分かります。開発との折り合いをどうつけるのかは、未だに解決し難い問題と言えます。
さて、せっかくですから、調査で見つかった38種類のサボテンを以下に示しましょう。

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Rhipsalis pachyptera(左), 1923年

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Rhipsalis lindbergiana(赤花), 1923年

230911222250984~2
Peleskia grandiflora(中央), 1923年

低危険種(LC)
Brasiliopuntia brasiliensis(岩生性・地上性)
Cereus fernambucensis(岩生性・地上性)
Coleocephalocereus fluminensis(岩生性)
Epiphyllum phyllanthus(着生性)
Hatiora salicornioides(着生性)
Hylocereus setaceus(岩生性・着生性・地上性)
Lepismium cruciforme(岩生性)
Lepismium houlletianum(着生性)
Lepismium warmingianum(着生性)
Opuntia monacantha(岩生性・地上性)
Pereskia aculeata(岩生性・地上性)
Pereskia grandiflora(岩生性・着生性)
Pilosocereus brasiliensis(岩生性)
Rhipsalis elliptica(着生性)
Rhipsalis floccosa(着生性)
Rhipsalis juengeri(岩生性)
Rhipsalis lindbergiana(着生性)
Rhipsalis neves-armondii(着生性)
Rhipsalis pachyptera(着生性)
Rhipsalis paradoxa(着生性)
Rhipsalis pulchra(着生性)
Rhipsalis puniceodiscus(着生性)
Rhipsalis teres(着生性)

準絶滅危惧種(NT)
Pilosocereus arrabidae(岩生性・地上性)
Rhipsalis clavata(着生性)
Rhipsalis cereoides(着生性)

絶滅危惧II類(VU)
Melocactus violaceus(地上性)
Rhipsalis pilocarpa(着生性)
Rhipsalis russellii(着生性)

絶滅危惧IB類(EN)
Coelocephalocereus pluricostatus(岩生性)
Hatiora cylindrica(着生性)
Rhipsalis pacheco-leonis(着生性)
Schlumbergera kautskyi(着生性)

絶滅危惧IA類(CR)
Coelocephalocereus braunii(岩生性)
Coelocephalocereus diersianus(岩生性)

情報不足(DD)
Rhipsalis hoelleri(着生性)
Rhipsalis sulcata(着生性)

評価されていない(NE)
Coleocephalocereus decumbens(岩生性)


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まだまだ30℃以上の日が続きますが、多肉植物たちは盛んに生長を始めています。強すぎた日照も一段落といった感じでしょうか? 今年は日照が強すぎて、多肉植物たちにも思わぬダメージが結構あったので、ようやく一安心出来そうです。そんな、最近の多肉植物たちをご紹介しましょう。

230910164107071
Zamia integrifolia(=Z. floridana)
ソテツの苗ですが、
葉の枚数が大分充実してきました。
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よく見ると、今年2度目のフラッシュです。
230910164145804
しかし、葉の先端が齧られてしまいました。ソテツは有毒なので食べる動物はあまりいないような気がします。ソテツシジミではなさそうですが、対処しないとこれから伸びる新葉もやられてしまいます。やられ方がナメクジっぽいので、誘引剤を周囲に撒いておきます。

230910165207374
Euphorbia longetuberclosa
日焼けしてしまい半日陰なや避難させていましたが、新しい枝が伸びてきました。しかし、左の枝はナメクジに舐められてしまいました。やはり、誘引剤を撒きました。


230910172719788
Dioon spinulosum
世界最大のソテツの苗ですが、今年2回目のフラッシュ。


230910172815880
Dioon edule
こちらは非常に生長が遅いことで知られるソテツですが、やはり今年2回目のフラッシュ。毛に覆われた新葉が美しいですね。


230910164619115
Uncarina roeoesliana
腰水栽培したら雑草のように伸びました。多肉植物として育てるより、野菜の土でプランターとかに植えたらよく育ちそうですね。


230910165006735
Haworthiopsis fasciata fa. vanstaadensis
ファスキアタの矮性種が開花。
230910165030946
矮性種のためか花も小型というか、短い感じがします。

230910164642927
Fouquieria diguetii
今年は非常によく育ちました。


230910164516425
孔雀丸 Euphorbia flanaganii
根詰まりで枝がポロポロ取れてしまいましたが、ようやく生え揃って来ました。


230910164543874
Euphorbia horrida var. noorsveldensis
非常に強いトゲが生えてきました。まだ小さいので普通のホリダとの違いがよくわかりません。


230910164803996
閃光閣 Euphorbia knobelii
自家受粉したものの種子はあちこちに飛散してしまい、結局芽が出たのはこれだけです。しかし、その美しい模様がはっきりしてきました。


230910164429737
瑠璃塔 Euphorbia cooperi
初めて枝が出ました。


230910172912776
闘牛角 Euphorbia schoenlandii
闘牛角が開花しましたが、よく開花するので有難みはあまりありませんが。

230910164207433
Euphorbia denisiana
傾いているのと鉢が小さいので、バランスが悪くてふらふらしています。

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棒で支えていますが、植え替えることにしました。
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少し角度を調整しました。鉢を大きくしましたが、根が張っていないため、しばらくは棒で支えておきます。


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Rhipsalisというサボテンがありますが、サボテンファンにはあまり人気がないかも知れません。Rhipsalisは熱帯性のサボテンで、多湿な環境で樹木に着生して垂れ下がるように育ったりします。栽培環境からすると、洋蘭や食虫植物の栽培と相性が良いかも知れません。私も沢山の種類があることくらいは知っていますが、イマイチ興味が持てないでいました。しかし、詳細不明であったRhipsalisの1種が近年再発見されたと知り、それ自体が大変喜ばしいことですから、ぜひご紹介したいと思った次第です。ご紹介したいのは、Weverson Cavalcante Cardosoらの2021年の論文、『Rediscovering Rhipsalis hoelleri (Cactaceae), a Critically Endangered species from Brazilian Atlantic Forest』です。

1995年に記載
Rhipsalis hoelleriはブラジルのEspirito Santo州に固有の着生サボテンです。カーマインの花により他のRhipsalisとは区別されます。R. hoelleriは1987年に採取され、ドイツのボン大学の植物園に収容された栽培標本に基づき1995年に記載されました。しかし、その正確な生息地などの情報は不明であり、保全状況は評価出来ませんでした。

230909223035108~2
Rhipsalis

新しい分布地域
著者らの調査により、R. hoelleriの分布地域を拡大することが出来ました。観察されたのは、CasteloのForno Grande州立公園、Domingos MartinsのPedra Azul州立公園、Santana Maria de JetibaのPedra do Garrafao、Santa Lucia Biological Station、Augusto Ruschi生物保護区、Santa Teresaの私有地内の森林、Morro de Sao Carlos、Vergem Altaの保護されていない地域でした。

多様性
新種として記載された情報と、新しく発見された地域の個体を比較すると、ある程度のばらつきがあり多様性があることが分かりました。花の直径は10mmとされていましたが、観察された個体は8.5〜15mmでした。この変異は、他のRhipsalisでも確認されている一般的な特徴です。花色にも変化があり、カーマインから鮮紅色(Cerise)、深紅色まで様々でした。果実の色は濃いトマトレッドで不透明とされてきましたが、ピンク色で光沢のある果実も観察されました。また、栽培していると、トマトレッドからオレンジ色まで変化することが報告されており、果実の色では種の判別は出来ない可能性があります。

生態
R. hoelleriはブラジルの春である9月から11月の間に咲きます。ヨーロッパでも同じ季節に開花することが報告されています。また、夏にあたる2月下旬に稀に開花することもあるようです。果実は成熟に6ヶ月かかると言われています。

保全状況
R. hoelleriは多くの場合、inselberg(※)に関連する特異性の高い小さな亜集団からなります。発生範囲(EOO)は1578平方キロメートルと推定され、占有面積(AOO)は36平方キロメートルであり、どちらも絶滅危惧種の閾値を下回ります。亜集団は5〜7で個体数ら少なく、観察された個体数から250個体未満と推定されました。成熟個体は多くても10個体、多くは5個体未満で、集団がひどく断片化されてしまっています。IUCNレッドリストでは絶滅危惧IA(CR)に相当します。

(※) inselbergとは、地形の侵食により露出した花崗岩や片麻岩などでできた孤立した岩の丘のことです。

以上が論文の簡単な要約です。
このような分布が狭く個体数が少ない植物は、絶滅の可能性について評価される前に、開発などで絶滅してしまうことは珍しいことではありません。保全活動において、植物は動物と比べて軽視される傾向があり、保全状況や個体数などの基本的な情報すら不明なものが大半です。しかし、そのための資金も動物に偏っており、希少な植物の調査は難しい現状があります。動物並みに調査や保全が行われて欲しいところです。でもまあ、調査が実施されただけ良かったとは思います。



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乾燥地ではほとんど雨が降らない地域もありますが、地形や立地、風向きなどにより霧が発生する場合があります。例えば、山地や海に近い場合などです。霧が発生すると、植物や土壌表面には露がつきます。植物についた露は、植物を伝って根元に集められますから、乾燥地の植物にとっては大変貴重な水分となります。では、サボテンはどうでしょうか? サボテンは葉はありませんが、代わりにトゲがあります。トゲを伝って露を集めることは可能でしょうか? というわけで、本日はサボテンと露の関係を試験した、F. T. Malikらの2016年の論文、『Hierarchical structures of cactus spines that aid in the directional movement of dew droplets』をご紹介しましょう。

アタカマ砂漠は地球上で最も乾燥した場所です。アタカマ砂漠にはCopiapoa cinerea var. haseltoniana(=C. gigantea)が自生していますが、Copiapoaのトゲが露を集めることが観察されています。また、他の地域からも露を集めるサボテンの報告があり、報告されたMammillaria columbiana subsp. yucatanensisとParodia mammulosa、さらにC. cinerea var. haseltonianaの露とトゲの関係を詳しく調べました。また、そのトゲが露を集めないと言われるFerocactus wislizeniiを比較のためにともに調べました。

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Mammillaria columbiana subsp. yucatanensis
Neomammillaria yucatanensisとして記載(上)。
Neomammillaris graessnerianaとして記載(中)。

Neomammillaria woburnensisとして記載(下)。
『The Cactaceae vol. 4』(1923年)より

サボテンを野外に置き、夜露が発生する様子をタイムラプスで撮影しました。また、トゲで集められた露がどのように吸収されるかを知るために、蛍光剤を水に混ぜた蛍光標識水にトゲを浸しました。また、MRIで断面を撮影しました。さらに、トゲの表面の微細構造を電子顕微鏡で観察しました。

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Parodia mammulosus(左上)
Malacocarpus mammulosusとして記載。
『The Cactaceae vol. 3』(1922年)より


Copiapoaのトゲは、重力に逆らっても水滴は基部に向かうことが分かりました。また、蛍光標識水はアレオーレを通って吸収されたことが分かりました。
電子顕微鏡の観察では、CopiapoaとMammillaria、Parodiaではトゲの表面は繊維状の溝からなっていました。溝は先端と基部近くでは溝の深さや細かさが異なり、粗さの勾配により水を輸送している可能性があります。F. wislizeniiのトゲの表面は、大きな逆剥けのような突起に密に覆われており、水の輸送を妨げているようです。Copiapoaのトゲの表面にも突起は観察されましたが、小さく数も少ないため、水の輸送を妨げていないことが分かります。この突起はMammillariaとParodiaでもわずかに見られましたが、トゲの表面に水滴を形成する働きが予想されます。CopiapoaとMammillaria、Parodiaのトゲは親水性で濡れ性が高く、Ferocactusのトゲは疎水性で濡れ性が低いことが分かります。


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Ferocactus wislizenii(下)
『The Cactaceae vol. 3』(1922年)より

以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地に生えるサボテンは、根からだけではなく、トゲを利用してアレオーレから水分を吸収する仕組みがあることが分かりました。サボテンが工学的な発想で研究されることは珍しく、非常に面白い論文でした。しかし、アレオーレからの吸水を知ってしまうと、その効果を試してみたくなります。どなたか、試してみたいという方はいらっしゃいませんかね? 


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「青菜に塩」という言葉があるように、植物は塩分に弱いというのが常識です。しかし、乾燥地の土壌は塩分濃度が高い傾向があります。砂漠などの乾燥地では、雨が降っても水分が川となり流れても海に注がず、途中で干上がってしまうことがあります。この時に、川は周囲の塩分を取り込みながら流れます。川が途中で干からびた場合、溶け込んだ大量の塩分が析出し、塩の結晶がキラキラ光って見えたりします。
例えば、中国の乾燥地に生える植物は耐塩性が高いものが多く、ギョリュウ(御柳、タマリクス、Tamarix chinensis)などは余分な塩分を葉から排出するため、葉に塩の結晶がついています。乾燥地は塩分濃度が高くなりがちですから、生える植物も塩分に耐えられるものが多いはずです。
当然ながら、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も、それなりに耐塩性があるのではないでしょうか? この問題に挑んだM. Derouicheらの2023年の論文、『The effect of salt stress on the growth and development of three Aloe species in eastern Morocco』をご紹介しましょう。


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Aloe vera
Aloe lazaeとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より


モロッコ東部では造園あるいは観賞用に何種類かのアロエが植栽されます。この地域は乾燥し地下水は高い濃度の塩分を含みます。そこで、アロエの耐塩性を調査しました。調査したアロエは、Aloe vera、Aloe brevifolia、Aloe arborescensの3種類です。ポットに植え、4種類の塩分濃度の水を4ヶ月与えました。塩分濃度は、3g/L、6g/L、9g/Lの3種類で、塩分を加えていない群も設定しました。一般的に塩分濃度が3g/L以下を非塩水とされています。

栽培4ヶ月後、アロエは枯れずに育ちました。アロエの葉の枚数を比較すると、塩分を加えていない群と比較して1〜2枚の差がありました。A. veraでは塩分なしと低濃度が11枚、中濃度と高濃度が10枚でした。A. brevifoliaは塩分なしと低濃度が29枚、中濃度が28枚、高濃度が26枚でした。A. arborescensは塩分なしが22枚で、低濃度が20枚、中濃度と高濃度が19枚でした。

次に葉の厚みについては、塩分濃度の影響が割と見られました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で86%、中濃度では65%、高濃度では58%でした。A. brevifoliaは低濃度では98%、中濃度と高濃度では85%でした。A. arborescensは低濃度では77%、中濃度で58%、高濃度で53%でした。

相対含水率では減少しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で90%、中濃度では77%、高濃度では75%でした。A. brevifoliaは低濃度では87%、中濃度で82%、高濃度で77%でした。A. arborescensは低濃度では78%、中濃度で70%、高濃度で81%でした。

クロロフィル含量はわずかに増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で106%、中濃度では99%、高濃度では128%でした。A. brevifoliaは低濃度では106%、中濃度で94%、高濃度で118%でした。A. arborescensは低濃度では85%、中濃度で106%、高濃度で105%でした。

ポリフェノール含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で138%、中濃度では157%、高濃度では201%でした。A. brevifoliaは低濃度では109%、中濃度で156%、高濃度で224%でした。A. arborescensは低濃度では121%、中濃度で132%、高濃度で164%でした。

糖分含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で100%、中濃度では119%、高濃度では126%でした。A. brevifoliaは低濃度では115%、中濃度で180%、高濃度で190%でした。A. arborescensは低濃度では116%、中濃度で164%、高濃度で194%でした。

多糖類含量は増加しました。塩分なしと比較して、A. veraでは低濃度で94%、中濃度では107%、高濃度では115%でした。A. brevifoliaは低濃度では115%、中濃度で202%、高濃度で211%でした。A. arborescensは低濃度では114%、中濃度で169%、高濃度で203%でした。

以上が論文の簡単な要約です。
アロエはかなり高い塩分濃度にも耐えられることが明らかとなりました。4ヶ月の試験で枯れた個体はありませんでした。しかし、葉の枚数の減少は微妙ですが、葉の厚みは大幅に減少しています。含水率の低下とも関係があるのかも知れません。いずれにせよ、高濃度の塩分でも耐えられはするものの、生長は遅くなるのでしょう。糖分とポリフェノールが増加しましたが、糖分やポリフェノールは浸透圧調整に働き脱水を軽減するそうです。

3種類のアロエの中では、Aloe brevifoliaが最も耐塩性が高いことが分かりました。葉の含水率は低下しても、葉の厚みはそれほど減少していません。また、ポリフェノールや糖分の上昇が激しく、塩ストレスに対して活発に働いているようです。
読んでいて気になったのは、3種類のアロエのそれぞれの自生地の塩分濃度です。環境への適応という意味では、Aloe brevifoliaの自生地には塩分濃度が高い地域があるのではないでしょうか? 


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ユーフォルビアは世界中に分布し、雑草だったり樹木だったり、あるいは多肉植物や塊根植物だったりと非常に多様性があります。しかし、傷つけると乳液が出るという特徴は共通します。さて、ユーフォルビアの乳液は大なり小なり毒性がありますが、その高い生理活性を薬として利用出来ないかという試みは、近年でも盛んに行われています。ヨーロッパ原産の草本種が使われることが多いのですが、日本ではミドリサンゴあるいはミルクブッシュと呼ばれるEuphorbia tirucalliもよく使われます。これは、E. tirucalliが世界中で帰化しており、各地で実際に利用されていることも関係があるのでしょう。しかし、さらに調べると、意外にもEuphorbia neriifoliaという多肉植物について、その利用が様々に研究されていることに気が付きました。ちょうど、E. neriifoliaについて整理した論文を見つけましたので、ご紹介しましょう。それは、Chinmayi Upadhyaya & Sathish Sの2017年の論文、『A Review on Euphorbia neriifolia Plant』です。

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『Species Plantarum』(1753年)の表紙
植物の学名の歴史はここから始まりました。この書籍においてEuphorbia neriifolia L.が記載されました。つまり、最初に現在の命名システムを適応して命名された最初のユーフォルビアの1つがE. neriifoliaなのです。


Euphorbia neriifoliaの特徴
Euphorbia neriifoliaは南アジア原産の多肉植物で、インドトウダイグサの木(Indian spurge tree)などと呼ばれます。インドのデカン半島全体に見られ、乾燥した岩の多い丘陵地帯で良く見かけます。現在はインド、スリランカ、ミャンマー、バングラディシュ、タイ、ボルネオを除くマレーシア地域で地元住民により栽培され帰化しています。
E. neriifoliaは直立したトゲのある多肉植物です。枝分かれした低木で、高さ2〜6m、あるいはそれ以上に育つこともあります。モンスーンの時期を除いて、1年の大半は葉がありませんが、葉は通常10〜18cmと大きく30cmに達することもあります。

一般的にユーフォルビアの乳液は有毒であり、皮膚に水疱を引き起こしたり、目に入ると重度の浮腫を引き起こす可能性があります。また、ユーフォルビアの葉や根は漁に魚毒としつ利用されることもあります。乳液が付いてしまったら、流水で洗い流すことが有効です。

伝統的な用途
古代のvaidhya(アーユルヴェーダの医師)は、E. neriifoliaの乳液を利用しました。耳痛、肝臓、脾臓、梅毒、水疱瘡、ハンセン病などに使用されました。
E. neriifoliaの乳液はアーユルヴェーダにおいて喘息の薬とされており、乳液と蜂蜜の混合液は喘息薬として家庭薬として利用されています。また、ギー(バターオイルの1種)と乳液を混ぜ、梅毒、内臓閉塞、長期間続く熱帯による脾臓と肝臓の肥大に対して与えられます。バターとともに使えば、潰瘍や疥癬、腺腫脹の化膿防止になります。マルゴサ油(インドセンダンからとれる油)と混合したものはリウマチに使用されます。
黒胡椒と混ぜた根はサソリ刺されや蛇咬傷に、内外から使用されます。茎は灰で焼かれ、蜂蜜とホウ砂を含む飲み物は去痰に使用されます。

薬学的な用途
下剤や駆風剤(ガス抜き)として使用し、食欲を改善し、腹部のトラブル、気管支炎、腫瘍、白斑、痔、炎症、脾臓の肥大、貧血、潰瘍、発熱、慢性呼吸疾患に有用です。
ある研究ではE. neriifoliaの葉の抽出物は、免疫を刺激し、強力な鎮痛剤、抗炎症剤、軽度をCNS(中枢神経)抑制剤、創傷治癒活性があることが分かりました。
乳液は関節炎に対する経口の有効性と安全性を確認しました。
E. neriifolia抽出物をモルモットの創傷治癒活性について評価したところ、コラーゲンおよびDNA量の増加を示し、上皮および血管の増加を示しました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
E. neriifoliaはインドでは伝統的にアーユルヴェーダで利用されてきたようです。近年では薬理学的な研究も行われています。しかし、E. neriifoliaはインド以外でも広く南アジア周辺でも栽培されていると言います。単純にインドのアーユルヴェーダの知識が伝わっただけなのか、それぞれの場所により固有の利用方法が発達したのか気になります。
また、論文中の毒性の話はあくまでユーフォルビア全般の話であり、E. neriifoliaの毒性ではないことも気になります。書かれている毒性は、アフリカ原産の柱サボテン状のユーフォルビアについての症状だろうとは思います。様々に利用されていた経緯から、その毒性についても知りたいところです。
E. neriifoliaは伝統医学により利用されて来ましたが、科学的な研究はそれほど進んでいないような印象は受けます。将来的には薬学的作用も詳しく解析されるでしょう。


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なんでも、スペインには野生化したアロエが生えているそうです。当然、外来種ということになります。今まではAloe feroxであると言われてきたそうですが、実は違うのではないかという話があります。それはPere Aymerich & Jordi Lopez-Pujolの2023年の論文、『On the presence of Aloe × caesia Salm-Dyck and A. ferox Mill. in the eartern Iberian Peninsula』です。早速、内容を見てみましょう。

野良アロエの報告
スペインのイベリア半島東部にAloe feroxと思われるアロエが野生化しています。著者らはこのアロエがAloe × caesiaではないかと考えています。Aloe ×caesiaとは、A. feroxとA. arborescensの自然交雑種で、分布が重なる地域で自然発生します。外観はかなり多様性があるようです。A. ×caesiaは地中海地域では園芸用に使用されてきましたが、地中海地域で栽培されるのはA. feroxによく似た姿のものです。ただし、A. feroxのように単幹ではなく、A. arborescensのように複数のロゼットからなります。そのため、密集した集団を作ります。A. × caesiaの花はクリーム-オレンジ色/赤色の2色からなり、A. feroxのようなオレンジ/赤色の単色ではありません。

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Aloe × caesia
Aloe fulgensとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より


地中海地域のアロエ
A. × caesiaは、サルデーニャ島では長い間外来植物として知られ、シチリア島では帰化植物と見なされています。南フランスの地中海沿岸のフレンチ・リヴィエラでは、庭から逸出したA. × caesiaが比較的一般的になっています。データベースではA. × caesiaが地中海諸国の大部分で「導入された」としていますが、これは明らかに栽培植物のことを指しています。「Flora iberica Gremes」(2013)では、「Flora Europaea」(1980)でイベリア北東部からの報告があるものの、それが本当に庭からの逸出であるかを疑っています。「Flora Europaea」では、南東フランスまたは北スペインの海岸沿いにA. × caesia、A. spectabilis、A. maculataが見つかると書いています。しかし、この記述は北東イベリアではなく、プロヴァンスで知られていたアロエに由来しているだけかも知れません。
イベリア半島のA. × caesiaの確実な最初のデータは、2017年にAlacant/Alicanteで確認された繁殖個体です。これは、実際にこの区画の所有者により投棄された植物が由来であることが確認されています。他にも確認されていますが、投棄あるいは古い庭の跡地かも知れません。

Aloe × caesia vs. Aloe ferox
A. × caesiaは報告は数年前ですが、以前から見つかっていましたが、誤ってA. feroxとして識別された可能性があります。イベリア半島ではA. feroxの報告は、バルセロナ(2008)、Vinaros(2017)、Reus(2019)だけです。しかし、これらが本当にA. feroxであるか確認されておらず、逆にA. × caesiaである可能性を示唆する証拠があります。
Vinarosの個体は2つのロゼットが接近して育っているため、複数のロゼットからなる1個体である可能性があります。しかし、花序は13〜14本の枝からなり、A. × caesiaにもA. feroxにも該当しない特徴です。また、残念ながら他の2つの報告は画像がないため、詳細を調査しました。
2000年以降、バルセロナの都市部にあるMontjuicの丘では、小さな半帰化集団があります。これは、多くのアロエを含む多肉植物のコレクションがある市立庭園に由来しているようです。一見してA. feroxを彷彿とさせます。ロゼットの密集する傾向がありますが、孤立したものもあります。しかし、著者らはおそらく、これらはA. × caesiaであろうとしています。Montjuicの丘のアロエは急斜面に生えるため、はっきりと確認出来ませんでした。また、A. feroxは自家受粉しないため、種子繁殖している可能性があるMontjuicの丘のアロエには該当しません。また、A. feroxはタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花であり、地中海では受粉しません。ただし、ミツバチにより受粉する可能性はあります。また、多くのアーチ型の葉には辺縁歯がありますが、これはA. × caesiaでは一般的がA. feroxでは見られません。
ReusのA. feroxについては2014年に撮影された画像がありましたが、葉はA. × caesiaの特徴である下向きのアーチ型の葉が見られます。この集団は2023年ではなくなっていました。
現在までの情報からはAloe feroxは確認されず、Aloe × caesiaである可能性が高いと言えます。


以上が論文の簡単な要約です。
どうやら地中海地域では、A. × caesiaは園芸的に一般的なようです。ですから、園芸植物の逸出が帰化したアロエが由来なのは共通しているようですね。
日本ではAloe arborescensが昔から好まれていて、一部は逸出して野生化していますが、大抵は種子繁殖しているものは見たことがありません。それは、1個体のみの逸出ばかりで、付近に受粉可能な個体がないからでしょう。まあ、適切な花粉媒介者がいないような気もしますから、個体が複数でも難しく思えます。何と言っても、開花は主に冬ですから、昆虫もいません。沖縄などの暖地ではどうなのか分かりませんが…


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Harrisia属は森林性サボテンで、細長く紐状に伸び月下美人のように大きな花を咲かせます。そのうちの1種であるHarrisia adscendensの名前には、何やら一悶着あった模様です。ということで、本日はAlan R. Franckの2015年の論文、『Proposal to conserve the name Cereus adscendens (Harrisia adscendens) against C. platygonus (Cactaceae)』をご紹介しましょう。

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Harrisia adscendens
『The Cactaceae descriptia and illustration of plant of cactus family』(1920年)より


Cereus platygonusはBerlin Garden由来の出所不明資料に記述があります。しかし、その標本は見つかっていません。タイプ標本がベルリンにあった場合、第二次世界大戦により1943年に破壊された可能性があります。また、C. platygonusは栽培されている植物から記載された場合、標本は作られなかった可能性もあります。著者はC. platygonusの元資料と一致するのは、Harrisia adscendensとして知られるブラジルのCaatinga原産のサボテンであるとしています。

SchumannはCleistocactus属とされるいくつかの種とともに、C. platygonusを広義のCereus属series Graciles(列)に分類しました。CleistocactusとHarrisiaは、どちらもTrichocereus亜属とされますが、これらの関係は曖昧です。SchumannはC. platygonusは12〜15本の剛棘があるとし、Riccobono(1909)は幼時生長と解釈しました。剛棘はHarrisiaなどの多くのサボテンの幼時の茎に見られます。

RiccobonoはC. platygonusをEriocereus属としましたが、後にBritton & RoseはHarrisia属としました。学名はHarrisia platygonaとなりました。Britton & RoseはH. platygonaは、H. adscendensの丸みを帯びた目立つ稜(ribs)と比較して、平らで幅広い稜を持つとして区別しました。Britton & Roseは、ニューヨーク植物園でH. platygonaの小さな生きた植物を研究することについて言及しました。現在、C. platygonusとされるニューヨーク植物園の3つの標本は、H. adscendenrsと特徴が一致します。標本のうち1つはBritton & Roseの言及したものに由来する可能性があります。これは、「1901年、パリのSimonの植物」というラベルがあり、おそらく園芸家のCharles Simonから購入したものです。Britton & RoseはC. Simonのカタログに対し言及があります。2つ目は、Alwin Berger多肉植物ハーバリウムの「K. Sch. 99」とラベルがあり、Schumannの試料由来である可能性があります。

Harrisia platygonaがHarrisia adscendensと同種であった場合、優先される名前はH. platygonaです。しかし、H. platygonaという名前は、現在H. adscendensと呼ばれる植物とリンクした文献はありません。H. platygonaという名前はBritton & Roseの後は放棄され、2012年のFranckにより最近コメントされただけです。H. adscendensという名前を使用した文献は豊富にあり、レクトタイプ化されています。論文でもH. platygonaは参照されず、H. adscendensの名前が長く使用されています。ICN14.2条に従い、Cereus adscendensはCereus platygonusに対して保存されることを提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
何やら長々と説明されましたが、要するにC. platygonusは割と起源があやふやですが、記述された特徴からはH. adscendensと思われるも、長く使われてきたH. adscendensを使用しましょうというだけの話です。しかし、最後の提案はCereusになっていますが、これは元の名前の命名年が早い方に優先権があるため重要だからです。分かりやすく年表にしてみましょう。

1850年 Cereus platygonus
1908年 Cereus adscendens
1909年 Eriocereus platygonus
1920年 Harrisia adscendens
              Harrisia platygona

以上のように、命名が一番早いのはC. platygonusです。ですから、このC. platygonusを受け継いだH. platygonaが規約上は正しい名前ということになります。しかし、著者はC. platygonusではなくC. adscendensを正式な名前とすることを提案しているのです。2023年現在、Harrisia adscendensが正式な学名となっており、Harrisia platygonaあるいはCereus platygonusは異名とされています。この提案は認められているようです。


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いくつかやらなきゃと思っていたことがあるのですが、何だかんだで後回しになっていました。正直、すっかり忘れていたのですが、1つ気付いたので一気に片付けてしまいます。

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Gasteria disticha
花茎から芽が出ました。胡蝶蘭ではたまにありますが、ガステリアでは初めてみました。冬に開花してから、いつか外そうと思いつつ忘れていました。今日外します。

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玉鱗宝 Euphorbia globosa
やはり花茎の先に芽が出ました。そこからさらに花茎が伸びて開花したりしてましたね。こちらも外します。


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闘牛角 Euphorbia schoenlandii
短い枝はやがて枯れて残りますが、長い枝はどうやら脇芽みたいです。3本外しました。


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こんな感じです。

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赤玉単用で挿し木。こちらはガステリア。

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同じく赤玉に挿し木。こちらは玉鱗宝。

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こちらは闘牛角。

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Euphorbia furticosa
フルティコサは日差しにはかなり強い方ですが、今年は少々異常でしたね。日焼けして腐ってきてしまいました。

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腐った部分と駄目そうな子は外しました。しかし、全体的に黄色くなってしまい、今後が少々危ぶまれますね。

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兜丸 Astrophytum astesias
何だかんだで20年くらいの付き合いのある兜丸です。環境が度々変わってダメージのあるサボテンが多かったにも関わらず、まったく変わりありません。生長が遅いのが逆に良かったのかも知れません。今日は何年ぶりか分かりませんが、本当に久しぶりに植え替え。

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根はギチギチでしたね。根が弱いって書いてあるサイトもありますが、そんな感じはしませんね。
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雨が吹き込むせいか、白点はほとんど取れてしまいました。アストロフィツムの中では育てにくいようなことも言われますが、非常に丈夫です。育つのは遅いのは確かですが。まあ、冬は霜に当ててしまっているので、余計に生長が遅いのかも知れません。

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鸞鳳玉 Astrophytum myriostigma
先週、親から外した子です。切断面が乾いたので植え付けました。動かないように針金で固定しております。


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士童 Frailea castanea
平鉢に半野良状態で勝手に増えたり死んだりして更新していましたが、面白い株を鉢上げしました。

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実はこれで1個体で全部繋がっています。根元は塊根のように肥大化しています。直径は4cmくらいですが、本来はどのくらい大きくなるんでしょうか? 冬に霜やら雪にやられて枯れがちなので、あまり大きくなったのは見たことがなかったりします。


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サボテンやアガヴェと言えば砂漠に生えているイメージですが、砂漠と言ってもサラサラした砂が舞う砂丘ばかりではありません。サボテンに限らず乾燥地に生える多肉植物が生えるのは、実際には硬く締まった土砂漠だったりします。乾燥の具合も様々で、うっすら草が生えるサバンナ/ステップ気候も見られます。そのため、砂漠では火災が発生することがあります。最近、Euphorbia mlanjeanaという多肉植物が沢山輸入されていますが、巨大なゴツゴツした塊から枝を伸ばす奇妙な姿をしています。これは度重なる火災で焼かれながらも、その都度再生して生き延びてきた証です。しかし、サボテンの自生地でも火災は発生するはずですが、サボテンを始めとした砂漠植物たちはどのように火災を対処しているのでしょうか? ということで、本日はDante Arturo Rodriguez-Trejoらの2019年の論文、『Plant responses to fire in a Mexican arid shrubland』をご紹介しましょう。

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Echinocactus platycanthus
Echinocactus visnagaとして記載。
『Curtis's botanical magazine』(1851)より


研究はメキシコのPuebla州とOaxaca州にあるTehuacan-Cuicatlan生物圏保護区において行われました。保護区の低木林のうち最大面積はDasylirion lucidumを含むバラ色低木林て、調査地はこの中で行われました。斜面にはEchinocactus platyacanthusやAgave potatorumが生え、平野部には針葉樹(ビャクシン)であるJuniperus deppeanaが生えます。
保護区では火災はそれほど頻繁ではなく、2013年から2016年の間に報告されただけで26件の森林火災がありました。

調査地域で最も豊富なのはDasylirion lucidumで、100メートル四方に286本もありました。火災によりすべての個体が焦げており、すべての葉は焼けています。ロゼットの低い部分は平均0.6メートルでした。しかし、その生存率は97.7%に達しました。大きな個体ほど新しい葉をよく出しました。火事のあとでもよく開花し、火事に見舞われなかった個体との差はありませんでした。
Dasylirionの葉は可燃性は高いものの、早く燃え尽きるため火力は弱くなり、生長点は守られます。また、Dasylirionの茎はは肥厚環と呼ばれる形成層を有し、断熱作用があります。


調査地域では少ないJuniperus deppeanaは、100メートル四方に1.8本しかありませんでした。しかし、調査地域で最も背が高い植物でした。最大5.8メートルに達します。火災後、その25.5%が枯死しました。生き残った木のうち、55.2%は根元から新芽を出しました。
Juniperusの厚い樹皮は耐火性がありますが、乾燥により樹皮の生産は減少し薄くなります。


調査地域ではあまり見られないEchinocactus platyacanthusは、100メートル四方に2.1本ありました。しかし、調査地域で最も直径のある植物でした。最大の個体は高さ1.3メートルでした。火災後、4.8%が枯死しました。しかし生き残っているサボテンも活力はありませんでした。サボテンの高さの平均89.1%が壊死しました。
サボテンは水分が多く火に抵抗性があります。しかし、他の調査では、Ferocactus wislizeniiでは火災により棘が失われると、昆虫やネズミ、ウサギや家畜により食害され枯死することが知られています。また、棘は過度の過熱や霜害から生長点を保護する働きがあります。サボテンは棘の喪失がその後の生存率を左右します。


Agave potatorumは割と豊富で、100メートル四方に17.6本ありました。火災後、10%が枯死しました。生き残っているAgaveはすべて発芽し、新しい葉を出しました。
Agaveの葉の多肉質でクチクラ層が非常に厚いなどの特徴は、可燃性を低下させ耐火性を高めます。また、Agaveの古い葉は、火災から受ける熱から本体を守ります。


以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地では火災が起きやすく、自生する植物も火災に適応した生態系を持ちます。Tehuacan-Cuicatlan生物圏保護区では、異なる分類群の4種類の植物を調査しましたが、すべてである程度火災に適応していることが分かりました。調査地ではDasylirionが優勢なのは、火災に対する強さも関係があるのかも知れませんね。
しかし、サボテンは割とダメージが強いようですが、これはサボテンの形も関係するような気もします。球状の玉サボテンではいくら大きくても、光合成する表面積の大半を焼かれてしまいます。枝を出すタイプでもありませんから、復活は中々難しそうです。これが柱サボテンならば、根元は木質化していきますから上部が無事ならば問題なさそうです。また、ウチワサボテンならば、茎が焼かれても新しい芽が沢山吹いて直ぐに復活可能かも知れません。サボテンの形状による耐火性の違いも気になります。何か良い論文がないか調べてみるつもりです。


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植物は様々な環境に適応して分布しています。一地点にしか生えない植物ばかりではなく、大抵の植物はある程度の広さの地理的分布を持っています。しかし、必ずしも分布域が均一な環境とは限りません。当然ながら、植物はそれぞれの環境にある程度は適応していることが想定されます。本日はサボテンの環境適応の一端を調査した、Karen Baukらの2016年の論文、『Germination characteristic of Gymnocalycium monvillei (Cactaceae) along its entire altitudinal range』をご紹介しましょう。

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Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium multiflorumとして記載。
『Adissonia』(1918年)より


Gymnocalycium monvilleiは、アルゼンチンのCordoba山脈に固有のサボテンで、非常に広い高度分布を持ちます。過去に低地のG. monvilleiが調査され、発芽率は40%と低く、発芽にあまり光やは必要としていないようです。しかし、G. monvilleiは標高1900m付近に多く、それより高い(〜2200m)やより低い(〜800m)では減少していきます。高度により日照、温度、土壌の水分量などに重大な違いがあり、種子の発芽に影響を与える可能性があります。
G. monviするの自生地の平均温度は高高度で10.3℃、低高度で16.5℃でした。暖かい月の平均気温は、高高度で15℃、低高度で24℃でした。標高1900mを超えると雪が降ります。
G. monvilleiは1〜7個の果実をつけ、200〜4000個の種子を作ります。著者らは5つの標高に生える同じサイズ(10cm)のG. monvilleiから種子を採取しました。各高度から20個体を選びました。
種子は採取から1年後に播種されました。温度は25℃と32℃で試験しました。また、種子の発芽に光が必要かも確認しました。

種子は32℃よりも25℃でより発芽率が高いことが、すべての高度で確認されました。熱阻害を受けている可能性があります。
25℃の発芽率は、最も標高が高い2230mが80%を超え非常に高く、1940mで70%以上、1555mで60%以上、1250mで約20%でした。しかし、878mでは50%以上でした。著者らは、より寒い場所では種子の熟成が遅く、長い熟成期間が種子の品質にプラスの影響を与えた可能性があるということです。
種子の発芽には光が必要であることが分かりました。1250〜2230mではほぼ同じ結果でしたが、878mだけは発芽率が低下しました。


以上が論文の簡単な要約です。
最もG. monvilleiが多い標高1900m付近から採取された種子のポテンシャルが高いことが期待されましたが、結果は異なりました。意外にも最も標高が高い地点の種子が高かったのです。実際の自生地では冬の寒さなどの、論文では試験していないパラメーターの影響もあるのかも知れません。ただ、高い標高の種子ほど発芽率が高いのは、種子の品質に関係があるのかも知れません。また、不思議なことに最も標高が低い878m地点の種子だけは、全体の傾向に従っていません。これは、種子の品質ではなく、G. monviが低地に適応して進化したからかも知れません。もしかしたら、G. monvilleiは低地の集団と1250m以上の集団の2つが、遺伝的に隔離されているのかも知れません。種子の光に対する発芽率も低地だけは異なります。これは、何やら気になりますね。


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以前、サボテンの地理的二分法仮説をご紹介しました。地理的二分法仮説とは、熱帯のサボテンはサボテンの花を専門とする特定の少ない種類の花粉媒介者により受粉し、温帯のサボテンは様々な花を訪れる沢山の種類の花粉媒介者により受粉するというものでした。その関連で、亜熱帯アンデス山脈に分布するオレオケレウスの受粉について調査した論文がありましたから、ご紹介しましょう。それは、Daniel M. Larrea-Alcazar & Ramiro P. Lopezの2011年の論文、『Pollination biology of Oreocereus celsianus (Cactaceae), a columnar cactus inhabiting the high subtropical Andes』です。

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Oreocereus celsianus
Pilocereus brunnowiiとして記載。
『The illustrated dictionary of gardening』(1895年)より


柱サボテンのコウモリ媒花
一般的に熱帯域に生える柱サボテンは、蜜食のコウモリによるコウモリ媒花であるとされています。コウモリ媒花の特徴は、夜間に咲き、蜜が多く、開いたカップ状の形、強い香りが挙げられています。温帯の柱サボテンは、夜行性のコウモリや蛾、昼行性のミツバチやハチドリの両方で受粉していることが示されています。しかし、熱帯アンデスに分布するOreocereus celsianusの自生地は標高が高く、コウモリが分布しない可能性があります。O. celsianusの花粉媒介者はどのような動物なのでしょうか。

調査地点
調査はアンデス山脈中部のPrepunaで実施されました。Prepunaの標高は2000〜3300mです。平均気温は高度に応じて約12〜19℃の範囲でした。冬は寒くマイナス10℃になります。調査地点はボリビアの3140mにあるPrepunaで、O. celsianusの大きな集団があります。調査は夏の開花期に行われました。
O. celsianusは、ボリビア、ペルー、アルゼンチン北部の高地アンデス山脈に育ちます。枝分かれした円柱状のサボテンで、高さ6mになります。Trichocereus tacaquirensisやTrichocereus werdermannianusと混じって育ちます。O. celsianusは白い毛とトゲに覆われます。


花の訪問者たち
O. celsianusの花は約3日間咲きます。初日は日没(16〜18時)に咲き、4日目の正午に閉じました。花は漏斗型で紫がかるピンク色、弱いニオイを発します。O. celsianusは雌雄同体で、自家受粉もするサボテンです。しかし、他家受粉の方が受粉率は高いようです。また、夜間および昼間の花粉媒介者を制限した場合、夜間の訪問者よる受粉は少なく、昼間の訪問者による受粉が多いことが分かりました。
O. celsianusの最も重要な花への訪問者は、ハチドリでした。ハチドリは日中に花を訪れました。花を訪れた3種類のハチドリの中でも、ジャイアントハチドリ(Patagona gigas)の訪問頻度が高いことが分かりました。
また、2種類のミツバチと1種類のスズメバチも日中に訪問しました。しかし、ミツバチやスズメバチは柱頭に触れないため、ただの花粉泥棒として活動していることが分かりました。また、2種類のアリがスズメバチが開けた穴から花に侵入し、蜜泥棒として活動していました。夜間には2種類の蛾が花を訪れただけでした。

調査では開花し始めた16時〜18時のハチドリの訪問が、受粉にとって重要であることが分かりました。また、調査地であるPrepunaではP. gigasが広く分布し、OreoceusだけではなくTrichocereusの花にも訪れます。P. gigasがO. celsianusの最も重要な花粉媒介者と考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
Oreocereus celsianusは標高の高い地域に生えるサボテンで、熱帯性とは言えません。しかし、標高を無視すれば地理的には熱帯域と言えます。O. celsianusは主にP. gigasにより受粉することから、地理的二分法仮説を肯定する結果と言えます。様々な花粉媒介者が訪問することはないのです。
O. celsianusはコウモリがいない環境で、ハチドリ媒花に適応したサボテンのようです。しかし、P. gigasの好みは分かりませんが、一般的にハチドリ媒花は赤く細長い花が多いように思われます。また、O. celsianusのかすかな香りは、コウモリ媒花だった時代の名残りでしょうか。これは、O. celsianusの進化の過程に関わる重大な問題かも知れませんね。


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