ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2023年08月

種子を作るのは植物にとって体力を消費する行為です。植物が小さいうちは沢山の種子は作れませんが、大きくなれば養分を種子生産により多く割り当てることが可能になります。しかし、その種子の品質はどうでしょうか? 植物が大きくなると、種子あたりに注ぎ込める養分も増えますが、そのようなことはあり得るのでしょうか?
本日はサボテンのサイズと種子の品質の関係を追った、C. Ceballosらの2022年の論文、『Do large plants produce more and better seeds and seedlings? Testing the hypothesis in a globose cactus, Wigginsia sessiliflora』をご紹介しましょう。

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Parodia erinaceus
=Wigginsia sessiliflora
Echinocactus erinaceus Lem.として記載。
『Gesamtbeschreribung der Kakteen』(1908年)より


研究はアルゼンチンのCordoba州のSan Pedro Norte townの近くで行われました。Wigginsia sessilifloraを185個体の果実を調査し、直径と種子の関係を調べました。W. sessilifloraは11月の短期間に咲くため、果実は同時期に熟します。種子を洗浄し3ヶ月保管してから発芽試験を実施しました。

調査したW. sessilifloraのサイズは14〜130mmでしたが、うち54%(97個体)は果実を作りませんでした。果実を生産した個体のサイズは、44〜120mmでした。分析すると、中型個体が最も多くの果実を生産していました。同様に中型個体の種子数と種子重量も最大でした。しかし、種子の発芽率はサイズと関係がありませんでした。発芽した実生は、親植物のサイズが大きいほど背が高いことが明らかとなりました。

意外にも、種子数は小型個体では少なく、中型個体では多く、大型個体では減少しました。これは、例えば樹木は幹の内部組織は生きていませんが、サボテンは大きくなるにつれて光合成しない組織の割合が増えてます。そのため、非光合成組織の維持に消費されるコストが増えてしまい、種子生産に割けるリソースが少なくなる可能性があります。

実生のサイズと形は、発芽後の苗の定着率に関係するかも知れません。大きな親から生まれた種子は、発芽させると、背が高くなり円柱状になります。背が高いと光を得やすくなる可能性があります。また、表面体積比が高くより生長率が高くなる可能性があります。その場合、大きなW. sessilifloraは種子の生産は少なくなるものの、実生の生存率が高くなるのかも知れません。

生殖可能なサイズのW. sessilifloraの50%以上は観察期間中に果実をつけませんでした。資源の節約のため、毎年繁殖するわけではなく、十分な準備が出来るまで回復させていると考えられます。

以上が論文の簡単な要約です。
植物が小さければ少量の種子、大きければ沢山の種子を作るというのは分かりやすい話です。しかし、その品質も変化するという驚きの結果でした。考察が正しいものとして内容をまとめると、小さな植物は種子数も少なく種子生存率も低い、中型の植物は種子数は多く種子生存率は普通、大きな植物は種子数は少なく種子生存率は高いということになります。生長期のサボテンはとにかく種子を沢山生産することを目指し、いわゆる数撃ちゃ当たる方式ですが、大型になり熟成した個体は個々の種子の品質を高めて生存率を高くしているのでしょう。
ただし、これはすべての種子植物がそうであるかは分かりませんから、様々な植物で追試する必要があります。果たして、W. sessiliflora特有の特徴なのか、サボテン科の特徴なのか、乾燥地の植物の特徴なのか、あるいはすべての植物の特徴なのか、現時点では分かりません。
ちなみに、論文ではWigginsia sessilifloraという名前ですが、現在ではParodia erinaceusの異名となっているようです。これはWigginsia erinaceusとも呼ばれていましたね。Wigginsia属はParodia属に吸収されて消滅したため、旧・Wigginsia属は名前がすべて変更されているので、注意が必要です。


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烏羽玉(Lophophora williamsii)は幻覚作用を持つアルカロイドを含み、その成分は法律で禁止されている国が多いようです。一般的にペヨーテ(Peyote)と呼ばれていますから、ここではペヨーテと呼ぶことにします。ところで、歴史的にその幻覚作用が宗教的に利用されてきた経緯から、アメリカ合衆国ではペヨーテの宗教的利用が許可されています。アメリカ合衆国でもペヨーテの幻覚成分は規制物質ですが、宗教的に許可されたその経緯とはどのようなものでしょうか。本日は、その経緯を辿ったMartin Terry & Keeper Troutの2017年の論文、『Regulation of Peyote (Lophophora williamsii: Cactaceae) in the U.S.A.: A historical victory of region and politics over science and medicine』をご紹介します。

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Lophophora williamsii
Anhalonium williamsiiとして記載。
『Gartenflora』(1888年)より


ペヨーテはメキシコとテキサス州の国境地帯のチワワ砂漠とTamaulipan Thornscrub地域に自生します。少なくとも6000年前に人が利用したとされます。現在、アメリカ先住民教会(NAC)におけるペヨーテの利用が行われています。
アメリカ合衆国では、アメリカインディアンによるペヨーテの使用は部族以外にはほとんど知られていませんでしたが、1人のインディアン局の職員により1912年に公表され、デモナイズ(悪しき者として、demonize)されました。それは、大麻が1930年代と1940年代に単独の個人により激しくデモナイズされた時と同じ方法でした。1954年にAldous Huxleyが『The Doors of Perception(知覚の扉)』を出版し、1955年にBeat GenerationはPeyoteの主要なアルカロイドであるメスカリンの精神活性効果を発見しました。

1960年代、1970年代に、ヒッピーを含む新しいカウンターカルチャーがあらわれました。古い価値観とは異なる若者たちの主張で、音楽や文学でも表現されました。カウンターカルチャーでは向精神薬なども利用されました。1960年代にペヨーテの規制に力がかかるようになりました。当時の状況を整理すると、まずカウンターカルチャーによる薬物に対する開放性や、ベトナム戦争における米兵の間での大麻や阿片の使用により、一般的に薬物使用が増加しました。次にペヨーテがアメリカ先住民以外に侵略され始めました。1990年代には、好ましいサイズのペヨーテの不足が気付かれ始めました。このペヨーテの不足は、NAC以外の人を式典に招待することが難しくなりました。米国麻薬取締局(DEA)による、許可されたペヨーテの使用の定義を狭める可能性があるという発表により、それはより悪化しました。

薬物による幻覚作用について、主流文化とカウンターカルチャーの間のギャップが拡大しました。1970年の規制物質法(CSA)は、薬物問題の主流文化側からの解決策でした。しかし、CSAはペヨーテを規制物質としてしまいました。米国議会は薬物問題の解決に関心があり、先住民の使用の正当性を認証せずにペヨーテを幻覚剤としました。
NACが1918年に設立されて以来、ペヨーテを合法的に使用して来ました。しかし、20世紀初頭にはペヨーテ宗教に対する禁止主義者や宗教的反対者により、激しいロビー活動が行われていました。先住民は何年にも渡りいくつか議会で主張を繰り返し、1944年のアメリカインディアン宗教自由法改正(AIRFAA)によりペヨーテの使用を禁止すべきではないということになりました。
しかし、議会は長い間、ペヨーテを中毒性が高いと見なしていました。しかし、ペヨーテに中毒性があるという主張は科学的に立証されていません。現実的には、ペヨーテを使用する儀式は連続して行われません。ペヨーテの使用頻度は多くて週1回、ほとんどのNACのメンバーは月1回かそれ以下です。このようにペヨーテの使用頻度は低く、日常的に繰り返して使用される中毒性薬物とは異なります。また、ペヨーテを
用いて定期的に儀式を行っているNACのメンバーに対する研究が行われ、神経毒性や認知障害は引き起こされていないことが確認されました。また、ペヨーテ中毒者の治療は行われたことはありません。

米国社会では、大麻はペヨーテよりはるかに良く知られており、広く使用されています。アメリカ人の49%が大麻を経験していますが、ペヨーテは約2%に過ぎません。大麻と異なり、ペヨーテは海外輸出用の観賞用植物として小規模に栽培されているだけです。ペヨーテは種子の播種から収穫まで約10年かかり、商業的な利益は少なく、ペヨーテの安全性や医学的用途のための研究は不足しています。メキシコではリウマチの痛み止めとして、局所チンキや軟膏が広く使用されています。

以上が論文の簡単な要約です。
宗教的な文脈とはいえ、幻覚成分を含むペヨーテの合法性を擁護する論文です。しかし、著者らが指摘するように、ペヨーテは大量生産が難しく時間がかかり、金にならないため、流行することはなさそうです。ペヨーテの幻覚成分はある程度のサイズにならないと蓄積しないため、効率が非常に悪いと言えます。
さて、日本ではペヨーテは規制されておりませんが、その成分は規制の対象です。つまり、ペヨーテから成分を抽出したら違法となります。とはいえ、日本にはペヨーテを利用する習慣はありませんから、特に問題にほならないのでしょう。こういうものは、基本的に文化に根ざしたものです。例えば酒は日本でも非常に長い歴史があり、日本特有の文化と文脈があります。しかし、例えば大麻などは日本に大麻文化がないため、その合法化は難しいかも知れません。それを利用するに際してのTPOがまったく存在しないため、濫用されるだろうことは想像に難くありません。慣習は文化が規定するため、文化がなければ社会の一部にはなりません。現在の日本の大麻解禁に関する話は文化を無視しており、他人への理解を求めるようなものではありません。現状の攻撃的で個人主義的な主張からは、とても大麻解禁を求める声が多数派になることは考えにくいことでしょう。


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非常に沢山の稜があるサボテンとして、縮玉や千波万波などを含むEchinofossulocactusが有名です。しかし、いつの頃からかStenocactusと呼ぶようになりました。少し気になって軽く学名を検索したところ、非常に面倒くさい話であることを察したため、その時は見なかったことにしました。しかし、そこら辺の面倒くさい話についてまとめた論文を見つけてしまい、何とはなしに読み始めたところ、やはり非常に面倒くさい話でした。説明するのも面倒くさいのですが、読んでしまった以上は記事にします。それは、L. Zahoraらの2020年の論文、『Echinofossulocactus or Stenocactus』です。ただ読むだけで忍耐力を試されますから、ご注意下さい。

始めはEchinocactusから
1841年以前、Echinofossulocactus Lawr.はEchinocactusに含まれていました。医師のLudovico Pfeifferは、1837年に出版した本でEchinocactusの中のEchinofossulocactusに相当するグループについて、波打ち圧縮された稜という形態を説明しました。

Echinofossulocactusの始まり
1841年にイギリスのガーデナーのGeorge Lawrenceは、London' s Gardeners' Magazineに、雇用主のTheodore Williams牧師のコレクションからサボテンのカタログを発表しました。その中でEchinofossulocactusが初めて登場しました。しかし、この時のEchinofossulocactusはあまりにも広い概念であり、それが後に問題となります。LawrenceはEchinofossulocactusを3つに分けており、1つ目が「Gladiatores」とラベルされた現在のEchinofossulocactus、2つ目が現在のFerocactus、3つ目はEchinocactusやFerocactus、Thelocactus、Astrophytum、Strombocactusが含まれていました。Echinofossulocactusの由来は、小さな溝や水路を表した「fossula」に由来しますが、この特徴はEchinofossulocactusだけの特徴ではないため、判別するための名前としては微妙かも知れません。また、Lawrenceはタイプ標本を指定しなかったことも問題です。

Stenocactusの登場
1898年に最も偉大なサボテンの権威の1人であるKarl Moritz Schumannは、Echinocactusの中にStenocactus亜属を確立しました。「stenos」はギリシャ語の「狭い」に由来し、特徴を表しています。

混乱の始まり
1922年にアメリカの植物学者Nathaniel Lord Britton & Joseph Nelson RoseはLawrenceの命名した「Gladiatores」ではなく、正式にEchinofossulocactus属を命名し直しました。タイプ標本はLawrenceが最初にリスト化したE. coptonogonusを選びました。
翌1923年にCarlos SpegazziniはEchinofossulocactusはハイブリッドであり、非常に長い名前のため、これは非合法名であり拒否されるべきであると提案しました。そして、Brittonrosea Speg.を提唱しました。
1926年にはC. OrcuttはSpegazziniの命名を知らなかったようで、Efossusを提案しました。タイプ標本はBritton & Roseに従いE. coptonogonusを指定しました。

Stenocactusの拡散
SchumannはおそらくEchinofossulocactusの命名を知らずにStenocactusを命名しましたが、これは亜属としての命名でした。これを属として使用したのは1929年のA. Bergerです。しかし、Bergerは属と亜属を厳密に区別していませんでした。属名としてStenocactusを使用したのは1935年のW. Marshall & F. M. Knuthでした。1937年にはHelia Bravo & J. Borgが続き、1941年にはアマチュア・コレクター向けに出版された「Cactaceae」にW. Marshall & T. M. BockがStenocactusを使用しました。

Echinofossulocactusの復権
しかし、国際命名規約が重視されるようになり、Stenocactusの正しい使用についても見直されました。1961年のBackebergなどの著者によりEchinofossulocactus Britton & Roseという名前が受け入れられ、翌年にはF. Buxbaumにも受け入れられました。

Echinofossulocactusを埋葬せよ
1980年にDavid Richard Huntは「Echinofossulocactusの正しい再埋葬」と銘打ち、Stenocactusを復活させようと、Nigel Taylorと共に出版した雑誌で主張しました。Huntによれば、Lawrenceの簡単な説明、「fossula」はE. helophorusに対応しているとしています。HuntはE. coptonogonusのレクトタイプを置き換えました。E. helophorusはEchinocactus platycanthus Link & Ottoの異名です。Echinofossulocactusを無効としました。Brittonrosea Spegazziniは受け入れられなかったので、Stenocactusを正当化する提案をしました。TaylorはHuntの考え方を支持し、1980年にE. coptonogonusとFerocactusの類似を指摘してEchinofossulocactusとFerocactusの統合を主張しました。

Stenocactusの正当化
1981年にHuntはEchinofossulocactusの最も古い有効な学名はBrittonroseaであったと過りを認めました。しかし、HuntはStenocactusを正当化しました。その提案は当時の国際植物命名法(1978年版)の第63.1条を見落としていました。また、HuntはTaylorにより指定されたレクトタイプはEchinocactus crispatus DC.であるとしました。
1982年にW. L. Tjadenは、植物委員会にStenocactusという名前を保存するための提案を提出しました。Tjadenによると、植物法第34.1条ならびに第34.3条の下で、Echinofossulocactusに対する無効性を示しました。Lawrenceの属の広すぎる概念や、SectionあるいはSubsectionの分割、スペルミスなどの正確性を指摘しました。Tjadenによれば、Lawrenceの名前は無効であり、Stenocactusが便利であることから正当化されるということです。

植物委員会の判断
TjadenのStenocactusは保存するための提案は、1987年に植物委員会で議論されました。委員会は1841年のLawrenceによるEchinofossulocactusは無効であるなどの意見に同意しませんでした。特にHuntによる再レクトタイプ化に関して、いくつかの命名法上の問題を提起しました。
Echinofossulocactusのタイプは1841年にLawrenceにより命名されて以来E. helophorusであり、1922年にBritton & Roseが新しくEchinofossulocactus Britton & Roseと命名し直した時にE. coptonogonusを指定しました。これは、1923年のBrittonrosea SpegazziniがBritton & Roseの代わりに出版され、E. helophorusが除外された時に合法となります。
植物委員会のメンバーは、7人がStenocactus、1人がBrittonrosea、3人がEchinofossulocactusが正しいと考えました。委員会のBrummittはEchinofossulocactusが正しいとしても、それはE. helophorusはEchinocactusの異名となってしまうため、Stenocactusを使用するべきであると結論付けました。

Heathの批判
P. V. Heath(1989年)は、Huntの恣意的な傾向のある議論の不正確さを説明しました。①Brittonの選択が不十分であったことを示す。②有効なレクトタイプを作成する。③Huntの選択がより優れていることを示す。④現在の使用法を維持する。という4つが必要としていますが、Huntはすべてで失敗していると言います。Heathによると、「Huntは意図的に公然と現在の使用法を歪めた」としています。そして、Echinofossulocactusは正しい名前であり、Brittonrosea、Efossus、Stenocactusは異名としました。

以上が論文の簡単な要約です。
タイプの話は分かりにくいので、少し解説します。Echinofossulocactusのタイプは、Echinofossulocactus helophorusでした。しかし、現在ではE. helophorusはEchinocactus platyacanthusの異名とされています。つまり、Echinofossulocactusの代表を事もあろうにEchinocactusを選択してしまったのです。
著者らはStenocactusではなくEchinofossulocactusを正当な学名と考えています。しかし、タイプのミスは致命的な誤りに見えます。Heathの批判や著者らの考えにも関わらず、現在の学名はすべてStenocactusとなっており、EchinofossulocactusはEchinocactusの異名とされています。Huntの考え方が認められている形です。
しかし、植物委員会の判断は意外にもばらつきました。植物委員会もいくつか問題を提起しているように、完全決着ではないのかも知れません。しかし、現状ではEchinofossulocactusはEchinocactusの異名に過ぎず、使用されない名前です。完全に終わってしまったのでしょうか? 今後、再び議論される可能性はどのくらいあるのでしょうか? 


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少々忙しく記事を書く時間が中々取れません。ネタはまだあるのですが…。昨日は天気雨で降ったり止んだりでよくわからない天気でした。夕方に隙をついてサボテンの植え替えをしました。サボテンは割と放置気味でしたから、かなり荒れてましたね。

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日の出丸 Ferocactus latispinus
たぶん10年くらい前にオザキフラワーパークで購入した日の出丸。ワンコインで買ったミニサボテンでした。ほとんど植え替えしていないので、鉢が小さすぎますね。

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根は大分きつきつです。ちょっと老化気味。
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根は健康そうです。

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Gymnocalycium pungens
最近、鶴仙園で入手したばかりのサボテンです。現在はG. schickendantzii subsp. schickendantziiの異名になっていますね。

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根が少ないですが、たまにこういうことがあります。化粧砂の下に、かなり重い湿っぽい用土がありました。気付かないと加湿になりこうなっちゃいます。

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縮玉 Stenocactus multicostatus
種子がこぼれて実生が生えてきたので植えましたが、1株だけ生き残りました。そう言えば、縮玉の学名ははっきりしませんね。Echinofossulocactus multicostatusとか、Echinofossulocactus zacatecasensisとか呼ばれています。まあ、とはいえEchinofossulocactusは現在Stenocactusとされています。実はEchinofossulocactusはEchinocactusの異名扱いになってしまいました。そのあたりの話は実にややこしいので、出来れば明日記事にします。

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根の張りは非常に良いですね。

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大中小の鉢に植え替え。

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鸞鳳玉の成長点が潰れて雪だるま状態となったので、外しました。引っ越したり、まあ色々あってサボテンは大分枯らしました。残っているものも大分荒れているので、少しずつ仕立て直す予定です。


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植物にとって花は繁殖のために重要です。それは、サボテンや多肉植物も同様です。そのため、最近はサボテンの受粉に関する論文をいくつかご紹介して来ました。しかし、繁殖のためには受粉して終わりではなく、種子を作りばら撒かなくてはなりません。せっかく出来た種子がただ親植物の根元に落ちるだけでは、あまり意味はありません。あまりにも近いと、親植物と光や養分の競争をしなくてはならないからです。また、繁殖は個体を増やす目的があります。ですから、ある程度は離れた場所に運ばれて、分布を拡大出来れば最良です。ですから、種子に綿毛をつけて風で飛ばされたり、細かいトゲや毛を生やして動物の毛に付着して遠くに運ばれたりします。しかし、種子がどれだけ発芽可能な場所に運ばれるかも重要です。例えば、エライオソーム(Elaiosome)という養分をつけた種子は、蟻により種子が蟻の巣に運ばれます。蟻の巣の中は湿っているため、種子が発芽しやすい環境です。乾燥地に生えるサボテンは、種子が地下に運ばれるということは非常に意味があるでしょう。しかし、エライオソームがないサボテンもあります。種子の散布はどのように行われているのでしょうか? エライオソームがないサボテンの種子散布はどのように行われているのでしょうか? 本日はKatielle Silva Brito-Kateivas & Michele Martins Correaの2012年の論文、『Ants interacting with fruits of Melocactus conoideus Buining & Brederoo (Cactaceae) in southwestern Bahia, Brazil』をご紹介します。

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Melocactus intortus
Melocactus communisとして記載。
M. conoideusの良い図譜がなかったので、代わりにM. intortusを示しました。発達した花座に注目。
『Verhandlungen des Vereins zur Beforderung des Gartenbaues in den Koniglich Preussischen Staaten』(1827年)より


Melocactus conoideusは、石英砂利で出来たわずか10キロ平方メートルの面積に生えます。しかし、土木工事用に砂利が採掘されているため、数を減らしています。M. conoideusは絶滅危惧種に指定されていますが、その生態は詳しく調査されておりません。著者らはM. conoideusの種子の分散を調査することが、今後の種の保全のための計画において有用な情報を提供することが期待されます。
研究はブラジルのBahia州Vitoria da ConquistaにあるSerra do Periperi公園で実施されました。6月〜10月は乾燥し、11月〜3月に雨が降ります。植生は季節性の森林とステップ状サバンナの混合からなります。

M. conoideusは長さ17〜21mmの果実を一年中生産し、4月が生産のピークです。果実は多肉質で赤〜ピンクで、花座(cephalium)内で発達します。果実は熟すと花座から露出します。果実には黒い小さな種子があり、おそらくはトカゲや蟻により分散されると考えられています。
調査らはお互いに最低10m以上離れた同程度のサイズの30個体のサボテンを観察しました。M. conoideusの花座から落ちた果実に対し、7種類の蟻が集まりました。花座から落ちた果実のうち、60個の果実にをマーキングして追跡しました。60個のうち23個が蟻に来ました。蟻のうち3種類は種類散布に適した行動を示しました。

以上が論文の簡単な要約となります。
蟻による種子の散布は、エライオソームが関与します。しかし、エライオソームを持たない種子も蟻により種子が分散されることが分かります。種子ではなく、蟻が運搬出来る小さな果実も意味があるようです。


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フェロカクタス(Ferocactus)はそのトゲの強さから強棘類などと呼ばれていますが、始めはエキノカクタス(Echinocactus)に含まれていました。エキノカクタスも強棘類に含まれて呼ばれたりしますが、実際にフェロカクタスとエキノカクタスは近縁な仲間です。
何とはなしにフェロカクタスについてデータベースを漁っていたところ、Ferocactus acanthodesはFerocactus viridescensの異名とありました。おそらくですが、F. viridescensは「竜眼」のことですよね。しかし、F. acanthodesとは何者なんでしょうか。普通はF. cylindraceusを「鯱頭」と呼ぶわけですが、「鯱頭」をFerocactus acanthodesとしているサイトもあるようです。このF. acanthodesは命名が1922年のようです。引用された元の名前があり、1839年に命名されたEchinocactus acanthodesがあります。さて、ここで現在正式な学名とされるF. viridescensの命名年はと言うと1922年でした。これは、F. acanthodesと同じですが、共に命名者であるBritton & RoseがEchinocactusからFerocactusに移動させたからです。しかし、F. viridescensの由来となった引用元の学名は、1840年に命名されたEchinocactus viridescensです。おやおや、何やらおかしいのではないでしょうか? 命名年は早い方が優先されますから、命名年が早いE. acanthodesを引用したF. acanthodesが正しい学名ではないのでしょうか? そうなっていない以上は、何かがあったと言うことでしょう。調べてみました。結果として出てきたのは、Wendy Hodgsonらの2011の論文、『Proposal to reject the name Echinocactus acanthodes (Cactaceae)』です。何が問題だったのでしょう。

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Ferocactus viridescens
Echinocactus orcuttii Englem. ex Orcuttとして記載

「The West-American scientist」(1886年)より

事の起こり
Echinocactus acanthodes Lem.は、ガーデナーであるJames CourantがLemaireに贈った乾燥標本に基づいています。採取は「カリフォルニア」とありますが、カリフォルニア州なのかバハ・カリフォルニアのことなのかは分かりません。
1898年にWeberはカリフォルニア南東部とバハ・カリフォルニア北部、ネバダ州南部の内陸種に、以前から知られていたEchinocactus cylindraceusを当てました。Weberは「1846年にMonvilleで開花しました。Celsに保管されている乾燥標本を見ましたが、Engelmannが1852年にE. cylindraceusとして記述したものと完全に同一です」と述べました。

Taylorの議論
Taylor(1979年)は、WeberのMonvilleのコレクションと標本の比較に対して、Monville標本がCourantによりLemaireに贈られた乾燥標本と同種であると信じる理由はないと言う説得力のある議論を提示しました。南カリフォルニアの乾燥した砂漠の山岳地帯の内陸部で標本を収集することは、Courantの標本の1830年代でも、Monvilleの標本の1840年代でも困難だったはずです。Taylorは、むしろCourantの標本は未知の収集家により太平洋岸で入手したもので、F. viridescens、F. fordii、F. chrysacanthusなどのフェロカクタスの沿岸種の1つを示しているのではないかと言います。さらに、Monvilleの収集家が内陸部を旅したとしても、Courantのサボテンと同じ起源であるという証拠はないことを指摘しました。よってTaylorは、E. acanthodesと言う名前が、1979年にF. acanthodesとされたサボテンに適応された可能性は低いと結論付けました。従ってTaylorは、E. acanthodesは曖昧な名前とみなすことを提案しました。しかし、F. acanthodesの名前の使用は継続され、1982年にこの名前を取り上げたLyman Bensonに強く影響されたに違いありません。

名前を拒否する提案
アメリカの系統学的文献では、F. cylindraceusの使用はBensonがTaylorを取り上げたにも関わらず、徐々にF. acanthodesから移行しました。多くの著者は、E. acanthodesが「reject」されたと言う見解を維持し続けました。しかし、E. acanthodesを拒否する正式な提案はされていません。
「Intermountain Flora」の最終巻のサボテン科について検討された時に、この問題が再浮上しました。Lemaireの曖昧な決定とTaylorの議論を踏まえると、E. acanthodesをネオタイプ化(※)するか、名前を拒否する必要があります。F. cylindraceusが1979年以来、系統学的、園芸的、民族植物学的、さらには一般的な文献で使用されています。ICBN第56条に基づく却下が最善であると思われるため、この提案を検討のために提出します。この提案が受け入れられない場合、E. acanthodesはネオタイプ化する必要が生じます。また、F. cylindraceusの継続的な使用に影響を与えない可能性は高いが、沿岸部のフェロカクタスの1種の命名に悪影響を与える可能性があります。それは、「acanthodes」の名前が常に内陸種に使用されてきたため、命名の安定性をさらに破壊する可能性があります。


(※) ネオタイプ : 最初に命名された時に指定された模式標本(ホロタイプ、シンタイプ、パラタイプ)が失われた時に、原記載をもとに新たに補充した標本。新基準標本。

以上が論文の簡単な要約です。
ややこしい話のようですが、要はE. acanthodesは実際は何だったのかよくわからないから、使わないようにしましょうというだけのことです。ただ、ちゃんと名前を廃棄しておかないと、Taylorの言うところではF. cylindraceus、F. fordii、F. chrysacanthusあたりのいずれかに相当する可能性があります。そうなると、著者によってはそれらと混同してしまう可能性も出てきます。その都度訂正するよりも、ちゃんと議論して正式に名前を廃棄しておいた方が、後の混乱のもとを断つという意味においては有効でしょう。
そう言えば、フェロカクタスやエキノカクタスは、現在ややごたついていますね。いわゆる金鯱(Echinocactus grusonii)がEchinocactusから独立し
Kroenleiniaになりましたが、後の論文では遺伝子解析により、金鯱はなんとFerocactusに入ることが分かりました。また、現在は綾波(Homalocephala texensis)はEchinocactusとなっていますが、やはり遺伝子解析の結果ではEchinocactusではないようです。これらの遺伝子解析の結果はまだ反映されておらず、データベースでは金鯱はKroenleiniaで、綾波はEchinocactusのままです。しかし、いずれ訂正されるのかも知れません。今は遺伝子解析が進行中ですから、過渡期と言えます。ある意味、ダイナミックに変動する面白い時期に我々は生きているのかも知れませんね。

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進化とは基本的には効率化する傾向があります。その特徴が有利にも不利にもならないならば、不要に思えるものも残りますが、そうでないならば有利な方向へ進化します。それは多肉植物も同じで、砂漠などの乾燥地に進出したものは、環境に最適化する傾向があります。乾燥地への適応において、サボテンとユーフォルビアは最も多様化したグループでしょう。サボテンとユーフォルビアが乾燥地に対して最も最適化されているとは限りませんが、水分を貯蔵するために多肉質となり、蒸散を最低限とするために葉を無くしたり夜間に二酸化炭素を吸収したり(CAM植物)と、共通する特徴があり収斂進化の教科書的なお手本のようです。
さて、ユーフォルビアは非常に小さく地味な花を咲かせますが、サボテンは割と大きく派手な花を咲かせます。花を作るにはサイズに見合ったコストがかかりますし、貴重な水分を浪費し花からの蒸散も起こります。一般論としては、乾燥地の植物ほどコストが高い大きな花は短命になることが予想されます。乾燥地に最適化した進化として、短命な花が選択されるのではないでしょうか?
前置きが長くなりましたが、本日はサボテンの花の開花寿命を調査した、Marbela Cuartas-Dominguezらの2022年の論文、『Large flowers can be short-lived: Insights from a high Andean cactus』をご紹介しましょう。著者らはチリ中部の標高2200mのアンデス山脈の乾燥地帯で、Eriosyce curvispinaを調査しました。


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Eriosyce curvispina
Echinocactus horridus Guyとして記載
「Historia fisica y politica de Chile segun documentos adquiridos en esta republicada durante doce anos de residencia en ella y publicada bajo los auspicios del supremo gobierno」(1848年)より


まず、著者らは乾燥地の花の特性として、気温の上昇と、受粉が花の寿命に影響を与える可能性を考えました。あまり高温だと花からの水分喪失が多くなるため、開花は短い方が良いようにも思えます。しかし、実際には気温は花の寿命に関係はありませんでした。
次に受粉についてです。受粉した後も花を咲かせ続けるのは、如何にも非効率です。アルストロメリアなどいくつかの植物でこの受粉誘発性花の老化は確認されています。E. curvispinaは基本的に自家受粉しない自家不和合性ですから、他家受粉したら花を閉じればいいだけです。しかし、受粉も花の寿命には関係がないようです。サボテン科では受粉誘発性花は未確認で、Mammillaria glochidiataやM. grahamiiでもやはり受粉と花の寿命は関係がないことが確認されています。

Primack(1985)は大きな花は大量の資源が費やされているため、小さな花より長持ちするはずであると主張しました。実際に熱帯雨林に生えるラン科のPaphiopedilumでは、花の寿命は花の重量と相関がありました。しかし、水資源が乏しい乾燥地の植物は、水資源を消費するため花は短命であると予想されます。E. curvispinaは40枚以上の花弁花被片を持ち、調査地域で最も高い花の資源量があります。花が全開となった時間は約10時間でした。E. curvispinaが完全に開花した時間は、チリ中央アンデスの山地に自生する24種類の花で記録された平均花寿命4.2日よりも45%短くなっています。

以上が論文の簡単な要約です。
少し解説します。花と気温の関係を気にするのは、花が蒸散しやすいからかも知れません。サボテンは体表から水分が逃げないように表皮を厚くするなどの仕組みがありますが、花は薄くそのような仕組みがありませんから、水分は逃げやすくなります。気温が高ければ、花自体の水分はあっという間に失われ萎れてしまいますが、実際にはサボテン本体から水分が供給され続けるため簡単には萎れないのです。
次に花の寿命についてですが、あまり開花時間が短いと受粉に悪影響があるような気がします。自家受粉する花ならば問題にはなりませんが、E. curvispinaは他家受粉する花です。著者らはE. curvispinaの花を訪れる花粉媒介者を記録しました。複数種類のミツバチと大型のハチドリが訪れましたが、2種類のミツバチで98.9%の割合に達しました。E. curvispinaの1つの花あたりの花粉媒介者の訪問数は平均16回でした。非常に短い開花時間にも関わらず、結実率は62.2%と高いものでした。高コストの花を咲かせるのは、非常に目立ち花粉媒介者を呼び寄せるのに最適な花と言えます。コストを最小限とするために開花時間を短くして、短時間で受粉すると言う戦略なのでしょう。


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植物と昆虫は非常に複雑かつ密接な関係を結んでいます。蝶や蛾の幼虫は植物を食害しますが、成虫は受粉に重要な役目を果たしたりもします。植物との関係においては、蟻に勝る高度な関係性はあまりないかも知れません。ということで、本日の議題は植物と蟻の関係についてです。
蟻は植物を食害する昆虫を捕えたりするため、植物に対してポジティブに働くこともあります。中にはアリ植物という、蟻に住処やエサを与える植物も存在し、蟻は他の昆虫を積極的に攻撃します。しかし、アブラムシから蜜を得るために、蟻がアブラムシを保護してしまうこともあります。ちょうど、サボテンと蟻の関係性について調査した論文があったのでご紹介します。それは、Katherine E. LeVanらの2014年の論文、『Floral visitation by the Argentine ant reduces pollinator visitation and seed set in the coast barrel cactus, Ferocactus viridescens』です。


植物の蟻を利用する戦略として花外蜜腺があります。花以外に蜜腺を持つ植物は、蜜を求めて訪れる蟻により害虫などが排除されます。しかし、花外蜜腺に蟻が沢山集まれば、蟻が花に来てしまうかも知れません。蟻が花にいると花粉媒介者は蟻を嫌がり近づきません。この、蟻を巡る2つ出来事はトレード・オフの関係にあります。
南カリフォルニア沿岸に自生するFerocactus viridescensは花外蜜腺を持ちます。F. viridescensを訪れる在来種の蟻(Crematogaster californica)と、外来種で侵略性のアルゼンチンアリ(Linepithema humile)を比較しました。なお、1個体のサボテンには1種類の蟻が集まります。

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(→)日の出丸の花外蜜腺

F. viridescensを最も多く訪れた花粉媒介者は、Diadasia属のミツバチでした。全体の60.4%を占めています。観察では、在来アリが占有するサボテンでは、アルゼンチンアリが占有するサボテンよりミツバチの訪問時間が62%長くなりました。さらに、アルゼンチンアリが集まるサボテンでは、果実の種子数は6〜33%減少しました。
F. viridescensはその受粉をミツバチ(Diadasia)に依存しており、アルゼンチンアリは受粉に悪影響を与えています。著者らはアルゼンチンアリが訪れたミツバチを攻撃することを観察しました。


以上が論文の簡単な要約です。
ここで言われていることは、サボテンと蟻が長い時間をかけて築いてきた共生関係を、外来種が撹乱しているということです。在来アリは花外蜜腺に引き寄せられても、受粉には影響を与えません。アリは花外蜜腺より蜜を得ることができ、サボテンはアリにより害虫を排除出来るのです。しかし、外来種であるアルゼンチンアリはサボテンとの付き合い方が分からないため、花外蜜腺だけではなく花も独占してしまいます。サボテンにとっては、害虫からは守られますが、受粉効率が低下してしまいます。アルゼンチンアリは数を増やしているということですから、将来的にはサボテンの花外蜜腺はアルゼンチンアリに占有されてしまい、サボテンは数を減らしていく可能性もあります。外来種が思わぬ影響を及ぼしかねないという実例が示された、非常に優れた論文でした。



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キダチアロエ(Aloe arborescent)は昔から普及しているアロエです。今でこそ健康食品として破竹の勢いのAloe veraに押されていますが、キダチアロエは「医者いらず」などと呼ばれ、丈夫なこともありあちこちで見かけたものです。さて、このような普及種でも、原産地では野生個体は少ないということは珍しくありません。キダチアロエの場合はどうでしょうか? 調べてみると、CITES(いわゆるワシントン条約)に関わるキダチアロエの話があるようです。それは、Gideon F. Smithの2008年の論文、『Aloe arborescens (Asphodelaceae: Alooideae) and CITES』です。早速、見ていきましょう。

CITESのための評価
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)は1975年に設立されました。CITESの附属書Iは国際取引により絶滅の危機に瀕している種、附属書IIは国際取引により脅かされる可能性のある種のためのものです。
著者はCITESの要請により、CITESでの分類のためにAloe arborescensを評価しました。これは、南アフリカ国立生物多様性研究所(SANBI)の絶滅危惧プログラム(TPS)の活動の一環として、南アフリカのレッドデータを再評価する機会にもなります。
アロエは1994年にCITESから削除されたAloe vera以外の550種類以上がCITESに記載されています。うち、22種類は附属書Iに、残りは附属書IIに記載されています(2008年)。

類似種と分布
A. arborescensに近縁とされるのは、A. hardyiやA. pluridens、A. mutabilis、A. vanbaleniiです。Glen & Hardy(2000)によると、A. mutabilisをA. arborescensの異名とする考えを示しました。これらの5種類のうち、成熟した植物でA. arborescensと間違える可能性があるのはA. mutabilisだけです。
A. arborescensは、アロエの中でも非常に広い地理的分布を持ちます。南アフリカのケープ半島から、海岸沿いに東に向かいモザンビークに達し、そこから内陸部の山地を迂回しマラウイに向かいます。2004年のGlen & Smithによると、南アフリカでは西ケープ州、東ケープ州、自由州、KwaZulu-Natal州、Mpumalanga州、リンポポ州からA. arborescensは記録されています。しかし、Kesting(2003)やMoll & Scott(1981)は、ケープ半島のA. arborescensは人為的に導入されたものであると主張しています。

判別困難と虚偽取引
さて、Aloe arborescensは分布域が広く個体数は非常に豊富です。しかし、地域によっては開発などにより減少しています。しかし、IUCNを適応すると低危険種(LC)とされており、絶滅の危機にある訳ではありません。
多くのアロエは生長後ならば互いに見分けるのは簡単です。しかし、小さな苗のうちは二葉性(distichous)であり、判別が難しくなります。税関職員が利用出来るCITESの植物ガイドでは、未成熟な苗の識別は出来ません。そのため、偽名で取引される可能性があるため、Aloe arborescensもCITESの附属書IIの記載が保持されるべきであると提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
キダチアロエ自体は特に絶滅の危機に瀕している訳ではありません。しかし、もしキダチアロエがCITESの附属書から削除され国際取引きが解禁された場合、絶滅危惧種の小さな苗をキダチアロエと偽って密輸出来てしまう可能性があるのです。ですから、CITESの附属書に記載され国際取引を制限するべきであるという提案でした。
実は薬用植物としてはAloe feroxの方が有名で、非常に古くから利用されてきたようです。日本でも法律で薬用成分が記載されているのはAloe feroxだけです。しかし、日本では暖地では露地栽培が可能なことなどにより、キダチアロエが研究されてきました。日本でキダチアロエの成分の有効性について、非常に沢山の論文が出ているようです。そのためか、論文ではアロエの違法取引は日本が想定されると言います。これはおそらくキダチアロエを指しているのでしょう。キダチアロエの抽出物を利用した製品は、日本では昔から沢山ありますが国際的には珍しいのかも知れません。
現在では、Aloe veraが非常に注目を浴びており、製品化につながるせいか、成分の有効性についての論文が世界中から出されています。Aloe veraは世界中で栽培されていますから、1994年にCITESの附属書から除外されました。このことによる苗の虚偽取引については、どの程度の影響があったかは評価されていないということです。



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ナース植物(nurse plants)と言う言葉があります。砂漠などの乾燥地では、何も遮るものがない場所ではなく、他の植物の陰で実生や小型の植物は育つのではないかという考え方です。日陰を提供する植物を看護する植物=ナース植物と呼ぶ訳です。この、ナース植物と言う言葉自体は、いくつかの論文では主題ではありませんでしたが見かけていました。ですから、ナース植物について調べた論文を探してみました。と言う訳で、本日はそんなナース植物とサボテンの関係を調査した、Enrique Juradoらの2013年の論文、『Are nurse plants always necessary for succulent plants? Observation in northeastern Mexico, including endangered and threatened species』をご紹介します。

メキシコ北東部のTamaulipas州BurgosのTamaulipan thornscrub(米国南部とメキシコ北東部の砂漠と低木林からなる地域)で、4種類のサボテン、Ariocarpus retusus、Astrophytum asterias、Mammillaria heyderi、Sclerocactus scheeriと、リュウゼツラン科植物のManfreda longifloraを調査しました。さらに、細長い円筒形の枝を支えるために物理的にナース植物を必要としている可能性があるCylindropuntia leptocaulisと、ナース植物を必要としていないように見えるEchinocactus texensisも調査しました。
主な植生は、Cordia boissieri、Forestiera angustifolia、Guaiacum angustifolium、Bernardia myricaefolia、Karwainskia humboldtiana、Prosopis laevigata、Sideroxylon lanuginosum、Acasia farnesianaなどの低木が生えます。

結果として、ナース植物の下でより頻繁に見られたのはManfledaだけでした。EchinocactusとSclerocactusはナース植物の下以外でよく見られました。他のサボテンはナース植物の下でもそれ以外でも見られました。Manfledaは100個体のうちAcasia rigidulaの下に49個体、Cordia boissieriの下に48個体、残り3個体も他のナース植物の下で見つかりました。A. rigidulaは植生の5%、C. boissieriは14%を占めるに過ぎないため、Manfledaとの強い関係性を疑わせます。

さて、以上の結果からは、サボテンは必ずしもナース植物を必要としていないことが分かります。リュウゼツラン科のAgaveでは、ナース植物が非常に重要であることがすでに判明しています。ですから、Manfledaもまたナース植物を必要としています(※)。
しかし、DurangoのCanon de Fernandez州立公園における過去の調査ではProsopis(マメ科の樹木)の下で3種類のサボテンが生育していることが分かっています。州立公園の降水量は著者らの調査地の1/3でした。著者らはより厳しい環境において、ナース植物が有効に働くと考えました。このProsopisは一般的なナース植物ですが、著者らの調査地でも自生するにも限らず、ナース植物ではありませんでした。

(※) Manfledaは現在ではAgaveに吸収されました。つまり、Manfleda longiflora=Agave longiflora。


以上が論文の簡単な要約です。
一般的にナース植物は、遮光したり温度を低下させたり、土壌の水分の蒸発を緩やかにしたり、草食動物から保護します。この論文の場合は、砂漠の中では水分が多い環境であることから、ナース植物の役割は遮光かも知れません。しかし、サボテンはナース植物の保護がなくても問題はないようです。しかし、Manfledaはサボテンよりも多肉植物として高度化しておらず、より乾燥に敏感な様子が受け取れます。また、より乾燥が厳しい環境ではサボテンでもナース植物が必要なようです。そもそも、砂漠では実生が育てるほどの水分が、サボテンがある程度育って自立出来るまで続く環境ばかりではないことは、なんとなく分かります。また、柱サボテンや大型玉サボテンなどでは、育つにつれ小型のナース植物をやがて圧迫して枯らしてしまうかも知れません。その場合、ナース植物があったかどうかは分からないでしょう。このように、ナース植物の研究は、まだまだ発展途上なようです。他にも良い論文があればまたご紹介したいと思います。


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気付けばサボテンや多肉植物の論文を随分と読み、また随分な数を記事にしました。中にはストーリー性のある実に読ませる論文もあります。本日は過去の記事の中から、ストーリー性のあるものをいくつかピックアップしてみました。興味がある記事がありましたら、リンクをクリックしてみて下さい。

①Euphorbia robecchiiでバナナを運んだ話(1954)
アフリカの植民地時代、イタリアのバナナ・プランテーションがありました。その輸送にユーフォルビアが使われたというのです。どのようにして利用したのでしょうか?


②Aloidendron dichotomumの発見(2021)
Aloidendronは巨大なアロエです。17世紀にオランダ東インド会社が南アフリカに基地を設置し、資源探査に乗り出しました。ここから、Aloidendronの歴史は始まります。それ以来、沢山の西洋人がアフリカを訪れ、Aloidendronに興味を惹かれました。


③ウンカリーナと巨鳥(2009)
Uncarinaはマダガスカル原産の塊根植物ですが、そのトゲトゲの実を運ぶ動物は不明でした。果実は丈夫で自然と種子が出てこないため、ウンカリーナの種子をばらまく役目の動物はすでに絶滅している可能性が高いのです。では、その動物とは何でしょうか?


④Dioon spinulosumを探して(1909)
この論文は、Dioon spinulosumという世界最大のソテツを探す旅の様子が描かれています。1908年に著者はメキシコを訪れ、馬に乗り巨大ソテツの自生地を探しました。その巨大さと葉の優美さは著者を感嘆させます。


⑤Gasteria baylissianaの前日譚(1999)
Gasteria baylissianaは1960年にアマチュアのTruterにより採取されましたが、1965年にbayliss大佐の採取した個体から命名されました。ガステリア属は「分類学者の悪夢」と呼ばれるほど分類が混乱していましたが、1992年にvan Jaasveldにより整理されました。van JaasveldはTruterの協力のもと野生のG. baylissianaを採取し、bayliss大佐の増やした個体と交配し、減少した自生地に移植しました。


⑥Aloe thompsoniaeは誰に献じられたのか?(2011)
Aloe thopsoniaeは1936年にGroenewaldにより命名されましたが、この「thompsoniae」とは明らかに人名から来ていますが、誰に対する献名なのでしょうか? 


⑦サボテンの違法取引について(2022)
サボテンは希少なものが多く、そのほとんどが国際的な取引はワシントン条約により規制されています。しかし、オンライン取引の普及により、違法売買が気安く行われている現状があります。著者らは違法取引に関するアンケートを実施し、我々のような趣味家の意識を調査しました。


⑧韓国におけるDudleyaの違法取引の背景(2020)
韓国の業者によるDudleyaの違法採取が近年自生地で起きていますが、その背景を探っています。その理由を正しく理解しないと、効果的な保全活動は難しいことが分かります。



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Weberbauerocereusはペルーとボリビア原産の中型の柱サボテンです。なにやら、このWeberbauerocereusはHaageocereusの異名であるという意見もあるそうです。しかし、その意見に対して反対し、Weberbauerocereusの名前を保存する提案が提出されています。それは、Paul Hoxey & Nigel Taylorの2020年の論文、『Proposal to conserve the name Weberbauerocereus (Cactaceae) with a conserved type』です。一体、どのような経緯があるのでしょうか?

ただし、論文は基本情報を知っている前提で書かれているようで、説明がないので非常に分かりにくくなっています。私が情報を追加しつつ解説します。
Weberbauerocereus Backeb.は1942年にBackebergにより命名されました。その時にBackebergが記載した種が、Weberbauerocereus fascicularis (Meyen) Backeb.でした。 問題はここからです。
1980年にE. Ritterは、W. fascicularisの前身である、1833年に命名されたCereus fascicularis Meyen、あるいは1934年に命名されたCactus fascicularis (Meyen) Meyenについて、これはWeberbauerocereusではなくHaageocereusを指していたのではないかという指摘をしました。つまり、Haageocereus Backeb.は1933年の命名でありWeberbauerocereusより命名が早いため、Weberbauerocereusという属自体が無効となってしまいます。W. fascicularisも使えないということになります。
著者のうちHoxeyは2020年に、Meyenのペルーでの足取りを追い、Ritterと同じ結論に達しました。Cereus fascicularisとはHaageocereusを指しています。F. Ritterは1981年にCereus fascicularisをHaageocereus fascicularis (Meyen) F. Ritterと命名しました。ただ、Meyenの説明には混同が見られ、幼体のBrowningia candelaris (Meyen) Britton & Roseを含んでいるようです。
さて、
Cereus fascicularis Meyenをタイプとして利用することは出来ません。そのため、Weberbauerocereusを説明するためには使用出来なくなりました。しかし、Weberbauerocereus Backeb.は過去70年間に渡りサボテンに関する文献で一貫して使用されており、サボテン愛好家や植物園のラベルや植物標本のデータベース、サボテン業者のカタログなどでも使われて来ました。もし、Weberbauerocereusが保存されない場合、新しい名前をつける必要があります。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、相当に噛み砕いて情報を加味しましたが、それでも分かりにくい内容です。簡単にまとめると、Weberbauerocereusは始めて命名された時にHaageocereusをタイプ標本として説明してしまったため正当性がなくなり、Haageocereusの異名となってしまう可能性があったということです。そこで、著者らはWeberbauero属をこのまま存続させて使用することを提案しているのです。現在では、Weberbauerocereusは著者らの提案通り存続しており、Haageocereusとは別属として独立しています。

さらに情報を追加すると、Weberbauerocereusの新しいタイプは、1956年(publ. 1957)に命名されたWeberbauerocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) Backeb.です。これは、1913年に命名されたCereus weberbaueri K. Schum. ex Vaupelから来ているようです。1987年にはHaageocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) D. R. Huntも命名されていますが、認められておりません。ちなみに、1879年にはCereus fascicularis K. Schum.という命名もありましたが、これはMeyenの命名したC. fascicularisと同名なため除外された学名です。

最後に現在認められているWeberbauerocereus属8種類と、Weberbauerocereus属の名前がつけられたことがある異名を記して終わります。

Weberbauerocereus Backeb.
①W. albus
②W. cephalomacrostibas
③W. churinensis
④W. cuzcoensis
⑤W. madidiensis
⑥W. rauhii
⑦W. weberbaueri
⑧W. winterianus

異名(→現在の学名)
①W. fascicularis
 →Haageocereus fascicularis
②W. horridispinus
    →W. weberbaueri
③W. johnsonii
    →W. winterianus
④W. longicomus
 →W. albus
⑤W. seyboldianus
 →W. weberbaueri
⑥W. torataensis
 →W. weberbaueri


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先日、ここ10年ちょいくらいの、サボテンの新種についての記事を書きました。サボテンは巨大なグループで分布も広く、新種が見つかる余地はまだまだありそうです。その他の多肉植物では、何と言ってもアロエは新種が見つかる可能性が高いと言えます。アロエの新種を説明した論文を探してみたので、少し見てみましょう。まあ、サボテンの時と同じく、すべての新種を調べた訳ではなく、簡単に調べて出てきたものだけです。一応、アロエと近縁なAstrolobaやHaworthia、Gasteriaと、旧・アロエ属についても一部の情報を追加しました。

2010年
・モザンビークから南アフリカのKwaZulu-Natalにかけての地域より、新種のAloe tongaensisが記載されました。しかし、2013年にAloidendron属に移され、Aloidendron tongaensisとなりました。

2011年
・エチオピアから4種類の新種のアロエが記載されました。Aloe benishangulanaAloe ghibensisAloe weloensisAloe welmelensisです。

2012年
・北ソマリアから新種のAloe nugalensisが記載されました。
・マダガスカルから新種の3種類のアロエが記載されました。Aloe beankaensisAloe ivakoanyensisAloe analavelonensisです。
・ナミビアのBaynes山から新種のAloe huntleyanaが記載されました。
・南アフリカのMpumalngaから新種のAloe condyaeが記載されました。
・アンゴラ南西部のナミブ砂漠から新種のAloe mocamedensisが記載されました。


2014年
・マダガスカル北部から新種のAloe gautieriが記載されました。
・南アフリカのMpumalangaから新種のAloe andersoniiが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のAloe liliputanaが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria loedolffiaeが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州新種のからGasteria barbaeが記載されました。

2015年
・ウガンダから新種のAloe lukeanaが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のAstroloba cremnophilaが記載されました。

2017年
・マダガスカル北西部から新種のAloe belitsakensisが記載されました。
・マダガスカルから新種のLomatophyllum類である、Aloe maningoryensisAloe alaotrensisが記載されました。
・ケニアから新種のAloe zygorabaiensisAloe uncinataが記載されました。
・南アフリカから新種のAstroloba tenaxAstroloba robustaが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のHaworthia grenieriが記載されました。
・南アフリカの西ケープ州から新種のGasteria koelniiが記載されました。

2018年
・南アフリカのCape Provから新種のHaworthia duraHaworthia ernstiiHaworthia vitrisが記載されました。

2019年
・ソマリランドから新種のAloe sanguinalisが記載されました。

2020年
・マダガスカル東部の湿潤林から新種のAloe vatovavensisAloe rakotonasoloiが記載されました。
・インドの砂漠から新種のAloe ngutwaensisが記載されました。
・南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria visseriiGasteria camillaeが記載されました。


2021年
・アンゴラ北西部から新種のAloe uigensis が記載されました。

2022年
・南アフリカ北部から新種のLeptaloe類であるAloe hankeyiが記載されました。

2023年
・アンゴラ南部からの新種としてGonialoe borealisが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。

と言う訳で、近年のアロエ類の新種でした。基本的に調べたのは名前だけで、画像検索はしていないため、園芸的な重要度は分かりません。しかし、個人的にはゴニアロエの新種が気になります。ゴニアロエは3種類しかありませんから、新種の発見は大変な驚きです。とはいえ、論文が出たばかりですから、正式な学名として認められるかどうかはこれからでしょう。また、Aloe tongaensisは巨大なAloidendronの新種と言うことで、このような目立つ植物が今まで記載されていなかったのは不思議です。あと、Aloe ngutwaensisはインドからの新種と言うことですが、アロエの自然分布がインドまであることに驚きました。アロエの私の持つイメージでは、アフリカ大陸とマダガスカル、アラビア半島に少しあるくらいなものでした。まあ、これは勝手な思い込みで、調べれば簡単に分かることでしたね。


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マダガスカルは様々な動植物の宝庫で、非常に多くの固有種が知られています。特にユーフォルビア属の多様性には目を見張るものがあり、非常に沢山の種類の花キリンはマダガスカル原産のユーフォルビアの代表です。しかし、マダガスカルには花キリン以外のユーフォルビアも沢山ありますが、森林地帯に生える樹木型のユーフォルビアはあまり知名度がなく育てている人もあまりいないでしょう。本日はそんな非多肉植物のユーフォルビアの分類を提案したThomas Haevermansの2006年の論文、『Taxnomy of the Euphorbia pyrifolia clade』をご紹介します。

Euphorbia L.は2 番目に大きな属であり、約2000種類が知られています。しかし、1862年のBoisser以降は世界的な改訂はなく、それ以降は園芸的に重要な多肉植物のグループを扱ったものばかりです。非多肉植物あるいは半多肉植物は、「ユーフォルビア学者」(Euphorbiologists)からは無視されており、Euphorbia hedyotoidesに近い分類群の大部分もそうです。E. hedyotoidesの仲間は非公式な「Euphorbia pyrifolia group」を形成し、コレクションされる有名な種類もごくわずかです。このグループはマスカレン諸島とマダガスカルに固有です。このグループの多くは記載されておらず、この論文は命名上の知識と問題を整理するよい機会です。

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Euphorbia bongolavensis

このグループは、新しく芽の根元には葉がないかほとんどなく、葉は枝の先端に集まります。翌年、節間が極端に減少した短枝になり花を咲かせます。新しい芽は脇芽によります。このグループの生長を、Rauh(1992)は「hedyotoides型分岐」と呼んでいます。
葉は通常は落葉性で、E. elliotii以外の葉は多肉質ではありません。花は様々な形態を取ります。
このグループは、狭義のsection Denisophorbiaで、花キリン仲間(section Goniostema)の姉妹群です。

最後にpyrifoliaグループの一覧を示します。
1, E. abotii Baker, 1894
2, E. ankaranae Leandri, 1945
3, E. aprica Baill., 1886
4, E. betacea Baill., 1886
5, E. boivinii Boiss., 1849
 ・E. boivinii v. boivinii
 ・E. boivinii v. minor Leandri, 1945
 ・E. boivinii v. oreades Leandri, 1945
6, E. bongolavensis Rauh, 1993
7, E. elliotii Leandri, 1945
8, E. erythroxyloides Baker, 1883
9, E. hedyotoides N. E. Br., 1911
  =E. decaryiana Croizat., 1934
10, E. mahabobokensis Rauh, nom inv., 1995
11, E. mangorensis Leandri, 1945
12, E. martinae Rauh, 1999
13, E. physoclada Boiss., 1860
14, E. pyrifolia Lam., 1796
  =E. gracilipes Baill., 1861
15, E. rangovalensis Leandri, 1945
  =E. castillonii Lavranos, 2002
16, E. umbraculiformis Rauh, nom nud., 1994
17, E. zakamenae Leandri, 1945

以上が論文の簡単な要約です。
このpyrifoliaグループはsection Denisophorbiaの一部をなすようですが、section Denisophorbia自体は遺伝子解析によりsection Deuterocalliに近縁であることが判明しています。section Deuterocalliは、E. alluaudiiやE. cedrorumなどを含む、緑色の棒状のユーフォルビアです。そして、section Denisophorbiaとsection Deuterocalliは、花キリンの仲間であるsection Goniostemaに近縁です。3つのグループは外見こそまったく異なりますが、マダガスカル原産であり起源が同じ植物であることが分かります。
しかし、このタイプのユーフォルビアは、基本的に見かけませんし、しかも分類や命名は遅れているようです。この仲間は、現在どうなっているのでしょうか? おそらくは種類は増えていそうですが、簡単には確認出来なさそうです。なにか、まとめてくれている良い論文が出てくれていると助かるのですが…


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厳しい環境に暮らすサボテンと言えども、その繁殖のためには花を咲かせ、昆虫などの花粉媒介者を呼び寄せ種子を作る必要があります。受粉と花粉媒介者の関係について、このブログでは度々記事にしています。例えば、カップ型の白い花を咲かせる柱サボテンはコウモリにより受粉するコウモリ媒花が多く、小型の花を咲かせるFerocactusはサボテンミツバチによる受粉、夜間に開花するLophocereus scottiiは蛾媒花、管状の赤い花を咲かせるOreocereus、Cleistocactus、Matucana、Denmozaなどはハチドリにより受粉する鳥媒花だったりと、サボテンは花粉媒介者も多様です。
私は個人的に受粉生物学には多大な興味があります。サボテンの種類により様々ですから、なるべく沢山の種類について知りたいところです。とはいえ、すべてのサボテンでこのような研究がなされている訳ではありませんが、少しずつ学んで行ければと考えましたおります。
と言う訳で、調べていたら鸞鳳玉(Astrophytum myriostigma)の受粉について調査した論文が見つかりました。それは、Cristian A. Martinez-Adrianoらによる2015年の論文、『Floral visitor of Astrophytum myriostigma in La Sierra El Sarnoso, Durango, Mexico』です。早速、内容を見ていきましょう。

花への訪問者の構成と豊富さは、受粉システムの理解や生態学的にも重要です。効果的な花粉媒介者の特定は希少種の保全にとっても価値が高い研究です。サボテンの多くは自家受粉しない自家不和合性です。しかし、花を訪れる動物の全てが効率的な花粉媒介者であるとは限りません。
著者らはメキシコのDurango州、Sierra El Sarnosoにおいて、鸞鳳玉の花に来た昆虫を撮影し、どのような種類が花のどこに触れたかを記録しました。この時、花の外側に来た昆虫はカウントはされましたが、花粉媒介者とは見なされません。重要なのは、蜜が目的の採蜜者、花粉を食べる採餌者、雄しべに触れた者、花の内側に来た者です。
鸞鳳玉の花に最も多く来た昆虫は、Anamboderia属の甲虫でした。タマムシの仲間のようです。花を訪れた昆虫165匹中122匹と圧倒的な数です。そのうち112匹は花粉と蜜を食べ、6匹は蜜だけを食べました。次に多いのがミツバチの仲間で21匹です。ミツバチはDiadasia olivaceaが16匹、Ancyloscelis apiformisが3匹、Augochloropsis metallicaが2匹でしたが、すべて採蜜者でした。他にもPhaedrotettixと言うトゲバッタが19匹も訪れましたが、どうやら花そのものを食べに来たようです。また、2種類のハエも計3匹来ましたが、受粉に関与していないようです。
著者らはDiadasiaと言うミツバチが鸞鳳玉の主たる花粉媒介者であると考えているようです。一般的にDiadasiaの中にはサボテンミツバチと呼ばれる種類もおり、サボテンをよく訪れるミツバチです。ちなみに、サボテンミツバチ(Diadasia rinconis)は兜丸(Astrophytum astesias)の主要な花粉媒介者とされています。


以上が論文の簡単な要約です。
論文では訪花昆虫の行動別に重要度を分けています。著者らはミツバチの採蜜行動を評価しているようです。しかし、一般的に花粉媒介者を調べる時は、受粉したかを確認することが普通です。それは昆虫と鳥、昆虫とコウモリなどネットなどを用いサイズで花を訪れることが出来ないようにしたりして、受粉率を比較します。ただ、今回はサイズで分けることが出来ません。実験室でそれぞれの昆虫を鸞鳳玉の花と同じケージなどに入れ、花を訪れた後に柱頭についた花粉を数えるなどの確認が必要かも知れませんね。


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我々趣味家にとって、サボテンは育てるものであり、ある意味では観葉植物と言えます。しかし、世界では観賞用だけではなく、様々な用途に利用しています。例えば、ウチワサボテンを家畜の餌にしたり、色素をとるためにコチニールカイガラムシを育てたりします。また、ドラゴンフルーツの実は日本でも販売していることがあり、食べたことがある人もいるでしょう。しかし、それらのほとんどは近代以降のグローバル化が進んだ後の話で、まだ文化と呼べるものではないでしょう。考えてみれば、サボテンの自生地には大昔から人が暮らしており、身近な植物を利用して来ました。当然ながらサボテンも活用してきたはずです。簡潔にまとめられた論文を見つけましたので、ご紹介します。それは、Kamila Marques Pedrosaらの2018年の論文、『Traditional Techniques for the Management of Cactaceae in the Americas: The Relationship between Use and Conservation』です。

サボテンは季節的な干ばつの間に、人間の食糧、家畜の飼料、および薬として、管理の下で使用されます。サボテンは長い干ばつ期間中に人間が利用可能な数少ない水源の1つです。例えば、ブラジル北東部の内陸部にあるCaatingaサボテンの種類と個体数が最も豊富で、19属62種類が確認されています。Pilosocereus pachycladusやCereus jamacaru、Pilosocereus gounelleiは地元の人々に最も利用されているサボテンです。ブラジルの半乾燥地域の農村は家畜の飼育を主な生活手段としています。年間を通じて牧草が手に入らないので、サボテンが家畜の飼料として利用されています。

Tehuacan-Cuicatlan渓谷では、1400年前の柱サボテンの食糧としての記録があります。さらに、幻覚作用のあるメスカリンを含むPeyote(Lophophora williamsii)やSan Pedroサボテン(Trichocereus pachanoi)は非常に古くから儀式に使用されてきました。San Pedroサボテンは3000年以上に渡りアンデス山脈で宗教的な占いなどに使用されており、初期のChavin文化(紀元前900年頃)には驚くほどリアルなサボテンの絵が残されています。

サボテンのいくつかの種は伝統的に使用され、挿し木により維持できる種類が選択され、管理を受けている可能性があります。好ましい特性を意図的に選択することは、選抜されて野生型とは異なる姿になっているかも知れません。このように、地元住民が望む果実の大きさや甘さ、肉質などは選抜され、有用ではないサボテンは排除されてきたようです。
サボテンの管理は、目的の個体を保護し害虫などを排除し、有用なサボテンが拡大します。また、肥料や剪定などにより、個体数の増加を促進します。種子の播種や移植も行われています。


ブラジルでは、地域の経済や文化におけるサボテンの重要性から、サボテンの管理に関する研究が行われています。伝統的な管理技術が遺伝的変異とどう関係するのか、あるいはCereus jamacaruの栽培植物としての側面を理解しようとしています。C. jamacaruはブラジル半乾燥地域の地元住民により集中的に使用されるサボテンです。しかし、現在のサボテンの乱獲と、再生プロセスの欠如が環境問題を引き起こし、個体数の減少につながる可能性があることが指摘されています。

以上が論文の簡単な要約です。
意外と実例が少なく総論的な内容でした。しかし、論文にある伝統的なサボテン管理は重要な概念かも知れません。なぜなら、資源を管理し維持出来ると言うことは、再生可能ということだからです。人口が増えて人が外部から流入するようになると、伝統的な管理による資源では足りなくなり、焼畑や伐採による牧場化が行われ、やがて伝統的な管理方法は衰退し忘れ去られていきます。ところが、これらの開発では再生力がないため、次々と新しい土地を開拓し続ける必要があります。当然ながらそこには絶滅危惧種の希少なサボテンも沢山自生していますから、大変な脅威と言えるでしょう。ですから、人口規模を考慮した伝統的な管理方法が求められるのです。伝統的な管理方法ではすぐに規模を急拡大出来ないため、人口の爆発的な増加には適応は難しかったのでしょう。しかし、計画的に時間をかければ準備は可能なはずです。サボテンの未来のためにも、このような研究が発展することを望みます。


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1753年にCarl von LinneがサボテンをCactus属と命名した時には、すでにヨーロッパでもサボテンが栽培されていました。それから、沢山のサボテンが命名されてきましたが、未だに新種のサボテンが見つかっています。最近見つかったサボテンはなんだろうかと思って、少し調べてみました。と言っても、すべての新種を調べた訳ではなく、検索してすぐに出てきたものだけです。しかし、それでも2010年以降に限っても、それなりの種類は見つかりました。主に論文のAbstractだけをサラッと読んだだけですから、あまり詳しい内容は分かりません。ですから、簡単に見ていきましょう。

2012年
アルゼンチンのブエノスアイレス州からウチワサボテンの新種、Opuntia ventanensisが記載されました。しかし、現在ではOpuntia fragilisの異名とされています。

2013年
・ペルー南部からボルジカクタスの新種、Borzicactus hoxeyiが記載されました。しかし、2014年にLoxanthocereus属になり、Loxanthocereus hoxeyiとなりました。

2014年
・ペルー北部からエスポストアの新種、Espostoa cremnophilaが記載されました。
・メキシコのオアハカ州からウェベロケレウスの新種、
Weberocereus alliodorusが記載されました。
・メキシコのタマウリパス州からマミラリアの新種、
Mammillaria huntianaが記載されました。しかし、現在ではM. roseoalbaの異名とされています。

2015年
・アルゼンチンのコルドバ州からギムノカリキウムの新種、Gymnocalycium campestreが記載されました。
・メキシコ中央部でツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus heliaeが記載されました。 しかし、2021年にKadenicarpus属になり、Kadenicarpus heliaeとされています。

2017年
・エルサルバドルでディソカクタスの新種、Disocactus salvadorensisが記載されました。
・メキシコのCoahuila州からウチワサボテンの新種、
Corynopuntia deinacanthaCorynopuntia halophilaが記載されました。しかし、2018年に2種類ともGrusonia属になり、Grusonia deinacanthaGrusonia halophilaとされています。実は、Corynopuntia属は消滅し、すべてGrusonia属となっています。

2018年
・メソアメリカ地域からデアミアの新種、Deamia montalvoaeが記載されました。
・メキシコのオアハカ州からテロカクタスの新種、
Thelocactus tepelmemensisが記載されました。

2019年
・メキシコ南部からケファロケレウスの新種、Cephalocereus parvispinusが記載されました。
・メキシコのヌエボレオン州からツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus boedekerianusが記載されました。

2020年
・ペルーからリマンベンソニアの新種、Lymanbensonia choquequiraensisが記載されました。
・メキシコのハリスコ州からアカントケレウスの新種、
Acanthocereus paradoxusが記載されました。
・メキシコのシナロアからコケミエアの新種、
Cochemiea thomasiiが記載されました。
・メキシコからマミラリアの新種、
Mammillaria breviplumosaが記載されました。しかし、現在ではM. sanchez-mejoradae subsp. breviplumosaの異名とされています。
・分類が曖昧だったEchinocereus pulchellus複合体が整理され、
Echinocereus acanthosetusEchinocereus sharpiiが新種として分離されました。

2021年
・メキシコのハリスコ州南部からアカントケレウスの新種、Acanthocereus atropurpureusが記載されました。
・メキシコのバハ・カリフォルニア半島からウチワサボテンの新種、Opuntia sierralagunensisOpuntia caboensisが記載されました。
・ドミニカ共和国やハイチに自生するPilosocereusはP. polygonusとされてきましたが、新種のPilosocereus brevispinusPilosocereus excelsusPilosocereus samanensisに分解されました。

2022年
・ニカラグアからデアミアの新種、Deamia funisが記載されました。
・メキシコのサン・ルイス・ポトシ州からマミラリアの新種、Mammillaria morentinianaが説明されました。しかし、キュー王立植物園のデータベースにはまだ記載がありません。新種であるか否か、正式に審査されるのはこれからのようです。
・分類が曖昧だったMammillaria fittkaui複合体を分析し、ハリスコ州原産のMammillaria arreolaeを新種として説明しました。しかし、こちらもまだキュー王立植物園に記載はありません。

2023年
2023年に記載された新種は、まだキュー王立植物園のデータベースには記載がありません。
・ペルーからウチワサボテンの新種、Cumulopuntia mollispinaが説明されました。
・ブラジルからパロディアの新種、Parodia flavaが説明されました。
・ブラジルのリオグランデ・ド・スル州西部からパロディアの新種、Parodia hofackerianaが説明されました。

以上が調べた限りの最近の新種です。しかし、よく考えたら新種が書かれたサイトとかありそうですね。海外ではそういうデータを集めたようなサイトも多いですし。まあ、でも論文から直に名前を抽出して、データベースと照合して、自分で確かめた内容ですから、勉強になったと思うことにしました。今年に発表された種は、これから検証されて、将来的に正式にデータベースに記載されていく可能性があります。せっかく調べたのですから、これからは注視していきたいですね。


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異様な暑さが続きます。しかし、もう8月も半ばに差し掛かり、多肉植物たちもあとひと踏ん張りといったところでしょうか。サボテンたちは概ね調子が良さそうですが、ユーフォルビアは種類によっては辛そうです。

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臥牛 Gasteria armstrongii
まだ小さいのに早くも開花。時期外れなような気もしますがどうなんでしょうか? G. nitidaの変種とされていますが、遺伝子解析の結果ではG. nitidaとは近縁ではないようです。

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花は「gaster=胃」と言うガステリア属の命名とは異なり、細長い形です。

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Aloe somaliensis
去年は焦がしましたが、今年は遮光もバッチリしています。しかし、暑すぎるせいか下葉が枯れてしまいました。

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Aloe bakeri
暑くなるにつれ葉の艶がイマイチです。根にダメージがあるのかも知れません。バケリの原産地は工事用石材の採取のために爆破され更地になりました。野生絶滅種。


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女王錦 Aloe parviflora
青い小型アロエです。夏は赤味が増して紫色になりますが元気です。

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士童 Frailea castanea
10年以上植えっぱなしで、自然に個体が更新されて維持されてきました。冬でも一切保護していないので、霜に当たっても雪が積もっても割と平気みたいです。そのかわり、成長点が潰れて多頭になりやすいみたいです。


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斑入り花キリン Euphorbia imperatae cv.
花キリンは鮮やかで綺麗ですね。インペラタエは2021年にE. miliiから独立したばかりです。


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Euphorbia tulearensis 
よく日に当てると葉か小さくなり、厚みが増して強く縮れます。暑さにも乾燥にも非常に強く、地味な花が乱れ咲きしています。


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Euphorbia mlanjeana
ようやく動き始めました。現地球ではないため、あの独特の姿ではありせん。あの灰色の塊茎のようなものは山火事により焼けて出来る、原産地に特異的なものです。


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Euphorbia griseola
初めての開花です。まあ地味ですけど。

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Euphorbia venefica
E. venenificaはどうやら書き損じで、E. veneficaが正しい学名です。猛毒三兄弟はE. poissonii、E. venefica、E. unispinaですが、E. unispinaはE. veneficaと同種とする意見があります。もしそうなったら、E. sapiniiを昇格させたいところです。


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Euphorbia sapinii
猛毒三兄弟に昇格するのでしょうか?

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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia
鉄甲丸は新しい葉が伸展中に水が切れると、葉先が枯れ込んでしまいます。今年は割と気をつけたので、葉の枚数がかなり増えました。鉄甲丸は夏に弱いと言われますが、むしろ7月8月によく葉が出てしばしば開花しました。単に夏に乾燥しすぎるだけかも知れませんね。


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天荒竜 Euphorbia caput-medusae
まだ若い苗ですが開花しました。始めは枝すらない大豆くらいのサイズでしたから、よく育っています。おそらくは、遮光を強くすると枝がもっと伸びるのかも知れません。


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金輪際 Euphorbia gorgonis
金輪際はあまり使われない名前で、ゴルゴニスの方が通りがいいですね。毎年、よく花を咲かせます。


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ソテツキリン
ちょっと手に負えない感じになってきたソテツキリンです。どう仕立てるか悩んでいるうちにどんどん巨大化してしまいました。さて、どうしたものやら…



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先月は何やら体調を崩したりして、イベントもパスして大人しくしていました。しかし、最近は体調は良くなったものの、あまりの猛暑に出かける気力が湧きません。基本的に通勤と、帰宅時に駅中のスーパーによるくらいしかしていません。仕事以外では外出せず、ほぼ引きこもり状態でした。しかし、たまーにある都内での仕事がこのクソ暑い最中に入ってしまい、いやいやながら行ってきました。都内での仕事は半日でしたから、西武池袋の鶴仙園に少し顔を出してきました。以前来たのは5月のことで、やっぱり仕事の帰りでしたね。最近は鶴仙園だけを目的に出かけることもあまりなくなりました。何故か正月明けは毎年行ってますが。

さて、台風が来ている影響で曇時々雨と予報されていましたが、どういう訳か晴れ渡り非常に暑くなりました。汗を拭きながら鶴仙園を見てきました。今日は店主の鶴岡秀明さんもいらっしゃいましたね。
店前にはAloidendron dicotomumとPachypodium
geayiが沢山並んでいました。入ってすぐ左にはAgaveがありましたが、詳しくないのでよく分かりません。エケベリアも並んでいましたが、オフィシャルブログで入荷した量からすると大分少なく見えました。売れていて回転が早いみたいですね。塊根性のモナデニウムもいくつか並んでいて、まあ当たり前ですがお高いので見るだけです。私の好きなユーフォルビアはほぼ普及種、硬葉系ハウォルチアはH. glaucaとH. nigraくらいでしょうか。軟葉系ハウォルチアは相変わらず沢山ありました。サボテンは相変わらずギムノカリキウムしか見ませんでしたが、結構種類が豊富でしたね。色々気になって結構悩みました。アチラセンセの変種が気になりましたが、今回は購入せず、プンゲンスを購入。オフィシャルブログに入荷情報があった花キリンもゲットしました。


本日の購入品はこちら。
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Euphorbia ankarensis
花キリンの仲間です。E. viguieriと関連付けて説明されますが、実はE. neohumbertiiに近縁です。現在ではE. ankarensisはE. denisianaの変種とされています。
さて、オフィシャルブログの入荷情報を見ていたら、E. 
denisianaっぽいユーフォルビアが入ったみたいなので気になっていました。E. denisiana var. ankarensisの苗はすでに入手済みですから、比べて見たかった訳です。しかし、名札は変種アンカレンシスでした。ところが、アンカレンシスの特徴である葉の産毛がありません。E. denisianaのような気がします。
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葉には産毛がありません。
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こちらはvar. ankarensis。葉裏に沢山の毛があり、葉の表側にも短い毛がまばらにあります。

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プンゲンス
ギムノカリキウムはトゲが張り付くようなタイプばかり集めていましたが、今日は少し変わったところをチョイス。プンゲンスとはGymnocalycium pungensのことですが、現在はG. schickendantzii subsp. schickendantziiの異名となっているようです。しかし、「pungens」とは「刺すような」と言う意味ですが、本当にトゲが鋭いですね。トレーから鉢をとる時に指に刺さりまくりでした。
2鉢とも鉢が小さいので植え替えたいところですが、時期的によろしくないですかね。


そう言えば、西武池袋の屋上に、いつの間にか池が出来ていて、スイレンが咲いていました。
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サボテンに限らず生物は突然変異をおこして、場合によっては姿が大きく変化します。しかし、もとより環境に適応した姿が変わってしまうため、あるべき特徴がない場合、環境適応が出来ない一過性の突然変異であることが多いように思われます。死亡率がノーマルタイプより高いため子孫には広がっていかず、普通は消滅してしまいます。動物なら目立ってしまい、捕食率が高くなってしまうアルビノが有名です。サボテンでもトゲがなかったりする変異はたまにあり、園芸的には珍重されます。なにか良い論文はないか調べたところ、Richard R. Montanucci & Klaus-Peter Kleszewskiの2020年の論文、『A TAXONOMIC EVALUATION OF ASTROPHYTUM MYRIOSTIGMA VAR. NUDUM (CACTACEAE)』を見つけました。鸞鳳玉の白点がないタイプを調査した論文です。
鸞鳳玉(Astrophytum myriostigma)は、メキシコ原産の白点に覆われた美しいサボテンです。しかし、自生する鸞鳳玉の中にも、白点があまりないか、あるいはまったくないタイプも存在すると言います。サボテン図鑑では、Astrophytum myriostigma "nuda"などと表記されますが、一体どのような存在なのでしょうか? 

鸞鳳玉の分類
その前に、鸞鳳玉の現在の分類について軽く触れておきます。鸞鳳玉の学名は、1839年に命名されたAstrophytum myriostigma Lem.です。亜種はsubsp. myriostigmaと、1932年に命名されたsubsp. quadricostatum (H. Moeller) K. Kayserの2つだけが認められています。var. strongylogonumが有名ですが、命名者のBackebergはタイプ標本を指定しなかったため、現在ではA. myriostigma subsp. myriostigmaの異名とされています。というより、Backebergの説明は我々がイメージする丸みを帯びたタイプとは異なるため、そもそも別のものを指しているのかも知れません。また、var. potosinum、あるいはsubsp. potosinumはsubsp. myriostigmaの異名に、var. tamaulipense、あるいはsubsp. tamaulipenseはsubsp. quadricostatumの異名とされています。白点がないタイプは1925年にvar. nudumとされましたが、現在では認められておりません。ちなみに、var. coahuilense、あるいはsubsp. coahuilenseは、Astrophytum coahuilenseとして独立種となりました。

2つの"nuda"タイプ
白点がないヌード植物は、メキシコの中央高原とJaumave渓谷北部で発生します。Hoockの1993年のSan Luis Potosiでの観察では、ヌード植物とまばらに白点があるセミヌード植物は互いに近接して育っていました。ヌード植物とセミヌード植物は、低木の陰になる場所に優先的に自生していました。さらに、著者らによる2019年のJaumave渓谷北部の観察では、やはり同様の環境が見られ、逆に白点のあるタイプは完全に太陽光にさらされていました。
中央高原とJaumave渓谷では遺伝的交流はなく、まったく個別にヌードタイプが発生したと考えられます。中央高原の鸞鳳玉はsubsp. myriostigmaで、Jaumave渓谷の鸞鳳玉はsubsp. quadricostatumと推定されています。

標高が上がるとよりヌードに
2004年のHoock & Kleszewskiの観察によると、ヌード植物の集団は、標高1700m以上の高地でのみ発生すると言います。しかも、標高が上がるにつれヌード植物が増加する傾向が見られました。また、太陽光を浴びる場所に生えたヌード植物は、しばしば淡い黄色で部分的に赤味を帯びていました。著者らはアントシアニンによるものと考えましたが、アントシアニンはサボテンには存在しません。サボテンの作る赤色の色素はベタシアニンです。

ヌード植物は日照に弱い
光合成色素のクロロフィルは過度な太陽光線により変性しやすく、ヌード植物の色はクロロフィル変性によるストレスにさらされていることが分かります。鸞鳳玉の白点は日照を和らげる働きがあり、白点がないヌード植物はアガヴェなどの陰で育ちます。また、完全な日照にさらされたまだ小さなヌード植物は、今後の生長は難しいと見られました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
他にも論点はありましたが、はっきりしない感じがあり割愛させていただきました。さて、どうやら、いわゆる"nuda"タイプの鸞鳳玉は、亜種と言えるほど独立してはいないようです。過去に観察されたvar. nudumアレオーレが赤味を帯びるだとか言われていました。しかし、自生地のヌード植物を観察すると、アレオーレが赤味があるものも灰色のものもあり、ヌード植物特有の共通した特徴とは言えないようです。
しかし、鸞鳳玉の白点の効果を考えれば、ヌード植物は通常の日照では枯れてしまうはずです。ですから、ヌード植物は偶発的に発生してもやがて消滅するはずですが、意外にも他の植物の陰で上手く生き残っているところが非常に面白いですね。サボテンも思いの外、強かに環境に適応しているのです。


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2日続けて烏羽玉ネタで記事を書きましたが、何と今日も烏羽玉ネタです。本日は烏羽玉の学名である、Lophophora williamsiiに関するお話しです。本日、ご紹介するのはAnton Hoferの2021年の論文、『Proposal to conserve the name Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyck (Lophophora williamsii) against E. williamsianum Lem. (Cactaceae)』です。
論文はほぼ解説はないため、最初に簡単に烏羽玉の学名についてお話しします。烏羽玉の学名は、1894年に命名されたLophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coult.ですが、初めて命名された時はEchinocactusでした。と言うより、L. williamsiiが命名された時にLophophora属が誕生したのです。現在の学名の元になったのは、1845年に命名されたEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckです。学名は「属名+種小名」が基本ですが、その後に命名者(正式に記載した人)がついたほうが正式な形です。この場合、Lem.とかSalm-Dyckは命名者の略された名前です。Lem.はLemaireのことですが、E. williamsiiは始めLemaireが命名したものの、内容に不足があったのかSalm-DyckがLemaireを引用して詳しく説明したので、Lem. ex Salm-Dyckとなったのでしょう。最終的には、J. M. CoultがE. williamsiiをLophophora属としたため、Lophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coultとなったのです。属名が変わると引用される前の学名の命名者を( )で表します。前置きが長くなりましたが、内容を見てみましょう。


Prince Joseph Salm-Reifferscheidt-Dyckは、1845年にEchinocactus williamsiiについて説明しました。Salm-Dyckはフランスのサボテン業者と非常に良好な関係を築いており、Freres Cels社からE. williamsiiを購入したようです。Celsによる種の説明がない場合、Salm-Dyckはラテン語とドイツ語の完全な説明でE. williamsiiを有効に公開しました。1894年にJohn M. CoulterはEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckをオリジナルとして引用し、Lophophora J. M. Coultを樹立しました。この学名は科学者やアマチュアまで、世界中で受け入れられています。Lophophoraにはアルカロイドを含むため、Lophophora williamsiiの名前は世界中の薬物法に記載されています。

しかし、Salm-Dyckの命名の2年前にEchinocactus williamsianum Lem.が1843年に公表されています。しかし、後のLemaireはSalm-Dyckの公開したE. williamsiiを使用しています。E. williamsianumの名前は170年に渡り見過ごされてきており、キュー王立植物園のデータベースにも記載がありません(2021年当時)。
ここでは、Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckを、国際命名規約のArt14.2に従い、Echinocactus williamsianum Lem.に対して保存することを提案します。提案が受け入れられない時は、一般的に流通した名前を、これまで知られていなかった名前に変える必要があり、世界中の薬物法の記載された名前も変えなくてはなりません。

以上が論文の簡単な要約です。
少し分かりにくい話ですが、命名が早い名前が優先されると言う「先取権の原理」に関する話です。内容は知られていなかったE. williamsianumと言う学名が存在していたため、E. williamsiiが廃棄されてしまうのを防ごうと言う提案でした。まだLophophoraではなくEchinocactusとなっていますから、現在の学名には関係がないように思われるかも知れませんが、実は関係があるのです。なぜなら、属名を変更する場合、どの学名を変更するのかを明らかにするために、旧・学名と記載年などを引用する必要があるからです。E. williamsiiが廃棄されてしまうと、E. williamsiiを引用して命名されたL. williamsiiも自動的に廃棄されてしまうのです。ですから、著者はまったく使用されてこなかった、と言うか知られてすらいなかった名前は廃棄して、今まで使用されてきた名前を保存しましょうと提案したのです。我々趣味家もこの提案には賛成でしょう。やはり、私も親しみのある名前が良いような気がします。


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昨日は日本で入手した烏羽玉(Lophophora williamsii)の遺伝子と幻覚成分を分析した論文をご紹介しました。本日は烏羽玉の原産地における、烏羽玉と兜丸との意外な逸話をご紹介します。それは、Martin Terryらの2007年の論文、『A Tale of Two Cacti-The Complex Relationship between Peyote (Lophophora williamsii) and Endangered Star Cactus (Astrophytum asterias).』です。

兜丸は絶滅危惧種
一般に兜丸(Astrophytum asterias)はStar cactusと呼ばれ、米国テキサス州南部やメキシコのタマウリパス州に固有の絶滅危惧種のサボテンで、テキサス州では3つの個体群で4000個体未満しか自生していません。兜丸はコレクターに大変な人気があり、個体数が少なく採取の脅威が高いことから、米国では1993年に絶滅危惧種とされています。また、CITESの附属書Iに記載されており国際取引は禁止されています。しかし、種子から容易に育てられるにも関わらず、野生植物の採取が行われています。
さて、烏羽玉(Lophophora williamsii)と希少な兜丸の分布はテキサス州南部のリオグランデ川下流域とタマウリパス州北部で重複します。このことが、思わぬ問題を引き起こしていると言うのです。

ペヨーテの利用
烏羽玉は原産地ではペヨーテと呼ばれていますが、一般的にペヨーテは麻薬取締局およびテキサス州公安局により規制されています。しかし、ペヨーテ信仰を持つアメリカ先住民教会(NAC)に対してはその利用を許可しており、認可された業者のみがペヨーテを扱うことができます。伝統的なペヨーテの採取方法は、地際から切断し根を残します。このことにより、地上部分が復活する可能性があります。

兜丸の混入
認可された業者は事業所のペヨーテ・ガーデンでペヨーテを栽培していますが、どういう訳か兜丸も混じっており、ペヨーテを購入した客にお土産として配られています。客は兜丸を栽培しますが、採取時に根が痛むことからいずれ枯れてしまいます。認可業者が兜丸を積極的に集めることはなく、地元の人たちが採取したペヨーテを買い取りますが、その時に混入するようです。1年に採取されるペヨーテが200万個体とされていますが、もしそのうちの0.1%が混入した兜丸だった場合、年間2000個体の兜丸が失われることになります。非常に個体数を減らしている兜丸には大変なダメージです。

以上が論文の簡単な要約です。
栽培される兜丸は烏羽玉にあまり似ていませんが、野生個体は少し似ている場合もあるようです。自生地の烏羽玉や兜丸は地面に半分埋まっており、頭だけが見えていたりします。また、栽培される兜丸は園芸的に選抜されていますが、野生の兜丸は白点も少なく土埃で汚れており、一見して見間違います。論文に示された自生地の写真では中々見分け辛い場合もあることが分かります。採取時にはわかりそうなものですが、いちいち仕分けたりはしないのでしょう。
さて、このように意外なことで兜丸が、ある意味とばっちりを受けてしまっていることが分かりました。しかし、宗教的儀式が関係し、しかも混入が原因ですから、これは中々解決が難しい問題かも知れません。



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烏羽玉(Lophopiora williamsii)はトゲがなく、何やらモチモチしている柔らかいサボテンで、様々な姿をとるサボテンの中でもかなり変わった部類でしょう。特筆すべきは、烏羽玉には幻覚作用のあるメスカリンと言う物質が含まれており、大昔から呪術師に使われて来たと言うことです。現地ではペヨーテと呼ばれています。しかし、この幻覚作用は日本で栽培されているものには、ほとんど含まれていないと言われています。原産地の烏羽玉は生長に時間がかかり、見た目よりも長く生きているため、メスカリンを沢山蓄積しているのだなどと言われたりしますが、本当かどうかは分かりません。ただ、鉢栽培した烏羽玉はただひたすらに苦いだけだそうです。そのためか、日本では法律で規制されておりません。そこら辺の事情を知りたかったのですが、中々見当たらないので、代わりに烏羽玉に関する面白そうな論文を見つけました。それは、Masako Araganeらの2011年の論文、『Peyote identification on the basis of differences in morphology, mescaline content, and trnL/trnF sequence between Lophophora williamsii and L. diffusa』です。日本発の論文です。
内容に入る前に、現在のLophophoraの分類を見てみましょう。キュー王立植物園のデータベースによると、現在認められているLophophoraは4種類あり、変種や亜種は認められておりません。1つ目は、1894年に命名されたL. williamsiiです。日本では烏羽玉と呼ばれ、タイプによって大型烏羽玉や仔吹き烏羽玉が園芸上では区別されています。また、銀冠玉はL. williamsii var. decipiensとする人もいるようです。L. decipiensと書かれたサイトもありましたが、おそらくは学術的に記載された学名ではないと思います。いずれにせよ、
現在ではL. williamsiiと同種とされています。2つ目は1967年に命名されたL. diffusa、翠冠玉と呼ばれています。3つ目は1975年に命名されたL. fricii、最後は2008年に命名されたL. alberto-vojtechiiです。ちなみに、現在はL. friciiを銀冠玉としているようです。ただし、この論文ではLophophoraは、L. williamsiiとL. diffusaの2種類があると言う立場のようです。CITESなどの情報からそう判断したようですが、2011年当時は4種類とも命名されていましたが、命名されただけでまだ認められていなかったのかも知れません。

L. williamsiiはメスカリンを含み、L. diffusaは含まないという報告があります。L. williamsiiは原産地ではペヨーテと呼ばれ、伝統医学や宗教的儀式で広く使用されます。著者らは日本国内ではL. williamsiiが規制されていないため、規制する必要があると言います。その場合、メスカリンを含有したL. williamsiiを確実に見分けられなければなりません。そのため、著者らは日本国内で入手したL. williamsiiおよびL. diffusaの遺伝子とメスカリン濃度を測定しました。

結果として過去の報告通り、調べた4個体のL. diffusaからはメスカリンは検出されませんでした。対して10個体のL. williamsiiからは22.2〜48.3mg/gのメスカリンが検出されました。また、大型烏羽玉と呼ばれる2個体からも12.7mg/gと35.4mg/gのメスカリンを、1個体の仔吹き烏羽玉からも25.0mg/gのメスカリンを検出しました。さて、問題はかつて銀冠玉と呼ばれたタイプで、何とメスカリンは検出されませんでした。メスカリン以外の特徴も見てみましょう。
花色は烏羽玉と大型烏羽玉はパールピンク、銀冠玉はピンクか深いピンク、L. diffusaは白花です。電子顕微鏡で表面の構造を見た場合、表面の微小突起が烏羽玉と大型烏羽玉、仔吹き烏羽玉は小さく、銀冠玉は大きく、L. diffusaは中間くらいでした。遺伝子のタイプは4つに分かれており、烏羽玉はAタイプ、大型烏羽玉はAタイプおよびBタイプ、仔吹き烏羽玉はAタイプ、銀冠玉はCタイプ、L. diffusaはDタイプでした。

以上が論文の簡単な要約となります。
しかし、その特徴を見ると、かつて烏羽玉と呼ばれていた種は2つに分離出来ます。このメスカリンを含まないタイプは要するにE. friciiにあたる種類のことなのでしょう。様々な特徴が異なるため、別種とするのが妥当と言えます。
しかし、この論文では栽培された烏羽玉からもメスカリンは検出されています。すべてが現地球とも思えませんから、栽培品でも幻覚成分は含まれていることが分かります。まあ、それが麻薬として使用できる濃度のメスカリンが含まれているかは別問題でしょう。この検出量が多いのか少ないのか分かりませんが、あるいは問題にならない量かも知れません。いずれにせよ、日本にはペヨーテの利用方法に関する知識や習慣が皆無なので、安くもない烏羽玉を齧ろうとする人はいないとは思いますけどね。まあ、日本の烏羽玉は殺ダニ剤をタップリ吸っているでしょうから、違う意味で食べるのは危険な感じがします。
始めに書きましたが、栽培個体と野生個体でメスカリン含有量が異なるのか興味があり、無駄にアレコレと烏羽玉を調べてしまったので、ネタはもう少しだけあります。せっかくですから明日も烏羽玉の記事を書く予定です。



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テキーラはアルコール度数の高いお酒として有名ですが、これはAgaveの絞り汁を発酵させて作られます。しかし、Agaveに近縁でメキシコなど分布も似ているDasylirionを利用したsotolと言うお酒があるらしいと知り、少し調べてみました。本日はJuan Manuel Madrid-Solorzanoらの2021年の論文、『La produccion de sotol: revision de literatura sistematica』を少し見てみましょう。

sotolはメキシコ北部で生産される伝統的な飲み物です。年間約52万リットルのsotolが生産されていると推定されます。sotolは年平均5%の割合で成長しています。原材料はsotol=Dasylirionですが、22種類のうち高い炭水化物含有量を持ち発酵に適した6種類があり、そのうち3種類はsotolの味や香りに適したD. cedrosanum、D. leiophyllum、D. duranguesisがあり、他にD. wheelei、D. texanum、D. serekeがあります。
利用されるDasylirionはメキシコ北部の米国と国境を接するチワワ州に生え、乾性低木と草原が優勢で州の面積の約65%を占めます。また、州の面積の75%は年間降水量300〜500mmの半乾燥あるいは乾燥気候からなります。

sotolはNOM-159-SCFI-2004と言う生産を規制する基準があり、チワワ州、コアウイラ州、デュランゴ州で共有されています。sotolの生産とマーケティング認証、および規制機関となることを目指す2つの協会があります。2006年に設立されたCMSと、2018年に設立されたCCSです。
CMSの推定によると3州には250の生産者がおり、52年リットルのsotolを生産しています。


論文では、sotolに関する過去に公開された論文や公文書などを調査しています。いくつかの論点があります。
①苗床
醸造のために野生のDasylirionを伐採することは、生態系に悪影響を与えます。かと言って、植林は水分不足や牛の放牧などのために、苗の生存率が低く上手くいきません。ですから、農業生産は重要です。しかし、実験室レベルでの薬品による発芽前処理なの関する発芽試験などはありましたが、実際の生産農家に適した方法や、苗の育成などについての研究はありませんでした。商業的な育成方法の確立と、野生のDasylirionの再生方法を研究する必要があります。
②農業
発芽前処理の進歩は商業プランテーションの創設につながる可能性があります。また、D. cedrosanumの種子から作られる小麦粉は、非常に栄養価が高いことが知られています。また、Dasylirionはフルクタン(水溶性食物繊維)含有量が多く、食品および製薬原料として使用出来ます。

以上が論点の簡単な要約です。
Agaveのみならず、Dasylirionでもお酒が作られており驚かされました。ただ、sotolはまだ個人の経験により作られている部分が大きく、工程や発酵に関わる微生物についての理解も進んでいません。産業化と言う面ではまだまだなのでしょう。Agaveほど研究も進んでいないようですから、Dasylirion特有の有効成分が見つかるかも知れませんね。



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サボテンや多肉植物の自生地での減少や、違法取引について度々記事にしていますが、論文を調べる中で「plant bindness」なる用語に出会いました。直訳すると「植物失明」ですが、これでは意味がわからないので「植物盲目症」と意訳しました。この用語に出会った文脈としては、希少な絶滅危惧種であっても動物と植物とでは、関心の高さも、保護活動のための資金もまったく異なると言うことです。要するに、「植物盲目症」とは、動物と比較すると植物は非常に軽視される傾向があり、存在するはずなのに見えていないかのように扱われると言う現実を表現した言葉です。本日は、そんな「植物盲目症」が違法な野生生物取引(IWT)を助長しているのではないかと言う疑いを検証した、Jered D. Marguliesらの2019年の論文、『Illegal Wildlife trade and the persistence of "plant bindness"』をご紹介します。

植物盲目症の実害
違法な野生生物取引(IWT)に対する政策は近年重視されており、国際的な会議や法令の制定、世界銀行の計画と1億3100万米ドルの予算など、様々なプログラムがあります。しかし、これらの取り組みは「植物盲目症」であり、その政策と研究は植物を無視しています。
生物学的な保全に関して、「植物盲目症」は依然として進行中の問題です。その資金の獲得に関しても重大な偏見があり、特に大型の動物はその危機に対する評価でも資金面に関しても過大評価されています。植物はその危機に関しても資金面でも過小評価されています。しかし、植物は生態学的には非常に重要で、過大評価されている動物の生存を支える働きがあります。
学問的にも植物学は動物学と比較すると、数十年に渡り衰退をし続けています。植物の絶滅を評価する努力は非常に遅れており、脊椎動物は68%が評価されているのに対し、植物はわずか8%しか評価されていません。
保全のための資金や法律にも不均等があります。例えば、米国の絶滅危惧種法に記載されている種の57%は植物ですが、絶滅危惧種保護のための連邦資金の4%未満しか植物に対して下りていません。

米国における保護活動と植物盲目症
保全科学における「植物盲目症」は動物に特権を与えており、米国連邦野生生物保護法の最も古い部分の1つであるLacey法でも確認出来ます。つまり、米国の最も初期の連邦野生生物保護法に「植物盲目症」が組み込まれており、動物保護の特権化を暗黙のうちに強化することになりました。Lacey法は植物を無視しており、象牙などの動物由来の輸入品には適応されましたが、海外の熱帯から採取された蘭などの絶滅危惧種の輸入品には適応されませんでした。Lacey法は1900年に制定されましたが、ここに植物が組み込まれたのは2008年のことでした。ただし、これは木材の資源としての取引に関するものでしかありません。
米国の最も重要な野生生物法の1つは、植物は「野生生物」には含まれないと主張しています。実際には植物は連邦野生生物法の下で保護されていますが、連邦法の定義では植物は野生生物とは見なされません。これらのことにより、植物保護のための資金と保護のための優先事項に影響を及ぼしています。


IWT対策は人気のある動物に集中
2018年に開催された野生生物の違法に関するロンドン会議では、象やサイ、大型ネコ科動物にスポットライトが当てられ、植物に関しては木材の商取引についての話題があっただけでした。国際的なメディアも、注目するのは大型の哺乳類だけです。
植物の違法取引の脅威にも関わらず、CITES(ワシントン条約)の交渉の占める割合は非常に小さいものです。また、違法な植物取引を研究するための資金は不十分です。米国や英国の野生生物保護のための基金は、人気のある一部の動物に偏り、植物と不人気の動物には与えられません。これらのIWT対策・野生生物保護のための基金は、始めから植物を除外していることが多く、野生植物の研究や保護に関するNGO活動などを難しくしています。

無視される植物のIWT
特定の植物分類群は過去数十年に渡り違法に取引されてきましたが、これらの植物に対する研究は不足しています。ソテツは地球上で最も絶滅の危機に瀕している分類群の1つですが、IWTに関する文献ではほとんど注目されていません。同様にサボテンはIWTが非常に強力な脅威であるにも関わらず注目されていません。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
法制上、植物が野生生物から除外されている現実は、保護活動や認知バイアスに強い影響を与えていることは間違いないのでしょう。しかし、それだけではなく、動物を特別視する傾向は我々も社会習慣的にバイアスが思考に染み付いています。これは、何も植物に限ったことではなく、動物でも可愛かったり美しいものは注目を集め重視され、可愛くなかったり美しくないものは無視されます。結局は人間の好みにより野生生物はその生存権を左右され、人気がないものは絶滅しても心は傷まないのです。人間は身勝手な理由で野生生物を滅ぼして来ましたが、人気種に対してだけ保護活動をするのですから、その身勝手な本質はあまり変わってはいないのでしょう。


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サボテンや多肉植物を沢山育てていると温室が欲しくなります。しかし、真夏の温室は地獄のような暑さになってしまいます。あまりにも暑いとサボテンですら生理障害がおきると言われますが、実際のところはどうなんでしょうか? 言われているのは野生のサボテンなので、熱波やら強烈な日照やら干ばつやらもあるわけで、気温上昇だけが原因ではないような気もします。中々そこら辺の良い論文はまだ見つかっていませんが、代わりに熱々になった蒸し風呂のような温室で、サボテンへの影響を研究した日本人による論文を見つけました。本日は、そのToshihide NAGANOらの1980年の論文、『Temperacture of Cacpi Grown in the Cactus-house in Aichi Prefecture』をご紹介します。

温度は植物にとっても重要で、分布を制限する要因です。光合成や様々な酵素活性、原形質流動などのいくつかの生理学的プロセスは42〜45℃を超える温度では分解し始めるため、高等植物はこれより低い温度で生存します。強い日照ストレスを受けた植物の葉は外気温より温度が高くなります。例えば、葉の温度がモーリタニアのPhoenix dactyliferaで53.3℃、スペインのLonicera implexaで47.7℃、米国のOpuntia sp.で45.0℃、ブラジルはCaatingaのOpuntia inamoenaで45.0℃、広島のLiliodendron tulipiferia(ユリノキ)で50.4℃が測定されています。

この研究は愛知県大口市のサボテンハウスで1978年と1979年に実施されました。名古屋近郊では湿度の高い温室で栽培されたサボテンは、中央アメリカで栽培されるサボテンの2〜3倍の成長率があります。
研究は8月に実施されましたが、外気温が32〜33℃の時に温室内は52〜55℃に達しました。実際に測定された最高温度は、Gymnocalycium mihanovichiiの57.3℃でした。これは、過去に報告された無傷な高等植物の最高温度です。他にも、Gymnocalycium denudatum var.  paraguayseが55.6℃、Astrophytum asteriasが56.0℃、Echinocactus grusoniiが54.5℃、Ferocactus flavovirensが54.5℃、Mammillaria angularisで57.0℃を記録しました。50℃を超える温度でも、Hamatocactus setispinus var. orcuttiiやG. denudatum var. paraguayseなどは花を咲かせました。つまり、厳しい環境下でもサボテンハウスのサボテンは、正常な生理活性を保持しているように思われます。

以上が論文の簡単な要約です。
温室栽培している方は、50℃なんて普通に超えるし、当たり前のことのように思われるかも知れません。しかし、当たり前のことも正確に記録し公表されることに意味があります。
しかし、40年以上前の論文ですから、学名がよくわからないものや、今と名前が、変わってしまっているものもあります。Echinocactus grusonii(金鯱)が、2014年にKroenleinia属としてEchinocactus属から独立したことは有名ですが、Hamatocactus属がThelocactus属に吸収されて消滅したことはあまり知られていないかも知れません。また、論文に出て来るMammillaria angulariaはM. compressaの異名となっています。あと、G. denudatum var. paraguayeは一体何者なんでしょうか? 現在のG. paraguayenseのことなのでしょうか? よくわかりません。
さて、この論文は1980年のもので、実際の測定は1970年代末です。当時と比較すると、近年の気温の方が高いでしょうから、温室の温度もさらに上がりそうです。外気温が33〜34℃の時にとありますが、私の住む街も、すでに今年は39℃を超える日もありました。異常な暑さが続きますが、多肉植物も参ってしまいそうですね。


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Aloe glaucaは南アフリカ南西部に分布するアロエで、葉の縁に並ぶ赤褐色のトゲが特徴です。このA. glaucaの名前には何やら曰くがあるようです。まあ、A. glaucaの命名が18世紀という時点ですでに嫌な感じがします。Carl von Linne(Linneaus)が現在のニ名式学名を公表したのは1753年ですが、それからしばらくは種の記載はラテン語で特徴のみ記したようなものも多く、それが現在のどの種類にあたるのか不透明だったりします。そのため、ここらへんはつつくと大変面倒くさい話になります。という訳で、本日はAloe glaucaの学名に関するGideon F. Smithの2018年の提案、『Proposal to conserve the name Aloe glauca (Asphodelaceae: Alooideae) with a conserved type』をご紹介します。

1753年にLinneausがAloe perfoliata var. "κ"の特徴をラテン語で、「κ。アフリカのアロエ、葉は灰色: 背中の縁と上部にトゲがある、花は赤色。Commelijnの図譜(※1)75t. 24. hort. 2. p. 23. t. 12.」と示しました。その後にもリンネによりこのラテン語のフレーズは繰り返し使われましたが、花色については示されませんでした。1701年のCommelijnの図譜には花序が含まれていませんでしたが、1703年に追加された図譜では花が描かれました。これらの植物は現在のA. glaucaと一致します。

(※1) オランダの植物学者のCasper Commelijn。

リンネによるAloe perfoliata var. "κ"の公表から15年後(1768年)、MillerによりAloe glauca Mill.と命名されました。MillerはAloe feroxと解釈されてきたCommelijnの図譜をA. glaucaに含めました。Millerは生きた植物を観察していましたが標本は引用していません。Millerはラテン語で「アロエの茎は短い、葉は2つに分かれトゲは端で曲がる、花は直立」と説明しました。しかし、MillerがA. feroxを引用したため、必然的にA. glaucaとA. feroxは同義語となってしまいます。ただし、Millerのラテン語の説明の、葉の二列性や花が頭頂花序については、A. glaucaもG. feroxも何故か該当しないことには注意が必要です。
ちなみに、1789年にはAitonがAloe perfoliata var. glauca (Mill.) Aitonを、1804年にHaworthがAloe glauca Haw.を命名しています。


A. glaucaはCommelijnの図譜があるため、それがレクトタイプ(※2)です。しかし、Millerの命名したA. glauca Mill.はCommelijnのA. feroxを引用しており、深刻な矛盾をきたす可能性があります。

(※2) 正式な標本がないか行方不明、2種類混じる場合に、改めて選定される標本。


Aloe glaucaという名前が維持されることは望ましく、命名上の安定性のためにも必要です。文献でも一貫してAloe glaucaが使用されています。例えば、Berger(1908年)、Groenewald(1941年)、Reynolds(1969年)、Bornman & Hardy(1971年)、Newton(2000年)、Grace(2011年)、Van Whyk & Smith(2014年)などがあります。
もし、Aloe glaucaという名前が使われない場合、1800年に命名されたAloe rhodacantha DC.が使用されることになります。この名前は使用されておらず、特にBergerやReynoldsによる影響力の強い文献により異名とされてきました。


以上が論文の簡単な要約です。
アロエ・グラウカはその命名は非常に古いものの、タイプ標本がありません。現在使用されている慣れ親しんだ学名を命名したMillerが、誤った図譜を引用してしまったことから、Aloe glaucaの名前が誤った学名として異名に陥る可能性があるのです。その場合、まったく使用されていないAloe rhodacanthaが採用されます。これは、命名規則では命名が早い名前が優先されるからです。
このような、非常に古い時代の誤りは結構あるみたいです。調べるのも中々大変だと思います。しかし、Aloe glaucaのように親しまれた名前の場合、その変更が混乱を招く原因となる可能性もあります。例えば、Euphorbia francoisiiと呼ばれてきた花キリンは、実はEuphorbia decaryiであることが分かりました。しかし、E. decaryiの名前で呼ばれてきた花キリンがすでにあり、こちらはEuphorbia boiteauiが正しい学名であるとされました。おそらくは、2種類が混同されて誤った組み合わせが使われて来たのでしょう。この誤りは、学術的には正されました。とはいえ、過去の論文において、Euphorbia decaryiの名前が出た場合、本来のE. decaryiのことを示しているのか、E. boiteauiとなった旧・E. decaryiを示しているのかがよく分からなくなりました。この場合は明らかな混同ですから、誤った組み合わせを保存出来る可能性はおそらくありません。ただ、その論文(Castillon & Castillon)を読んだ学者のコメントがあり、ややこしいので古い学名は廃棄して、新しく命名し直した方が良いのではないか?という思わぬ感想でした。命名規則上で可能か否かは分かりませんが、混乱の是正と言う意味においては、聞くに値する意見のようにも感じました。



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近年、遺伝子解析が植物にも適応され、サボテンも盛んに解析が行われています。そのため、サボテンの分類は大幅な改訂が進んでいます。
本日は、まず2000年にAlexander B. Doweldによるサボテンの名前に関する2つの提案をご紹介します。その後、その提案がどうなっているかを提示して終わりたいと思います。では、まず2つの提案から見ていきましょう。

Proposal to conserve the name Brasilicactus against Acanthocephala (Cactaceae)
C. Backenbergは、定義が曖昧なNotocactusからいくつかの種を分離し、1938年にAcanthocephala Backeb.を設立しました。しかし、数年後にAcanthocephalaが、1842年に命名されたAcanthocephalus Karelin & Kirilov(キク科植物)の同音異義語であることに気が付きました。そのため、Backenbergは1941年にAcanthocephala Backeb.をBrasilicactus Backeb.に置き換えました。そして、一般的なのはBrasilicactusの方で、サボテンの研究者やサボテン愛好家の間で使用されました。
最新の命名規則を照らし合わせると、AcanthocephalaはAcanthocephalusの同音異義語とは見なされず、Brasilicactusは異名となります。AcanthocephalaとAcanthocephalusは異なる分類群に属し、分布もまったく異なり、混同される可能性は低いでしょう。しかし、1938年以降のサボテン研究ではAcanthocephalaは使用されておらず、受け入れられていません。著者は、Brasilicactusから使用歴が皆無なAcanthocephalaに命名を変更することを回避し、現在のBrasilicactusを保存してはどうかと提案しています。
以上が1つめの提案の内容です。この論文の趣旨は、BackenbergがAcanthocephalaとAcanthocephalusを同音異義語として、Acanthocephalaを退けたものの、新しい命名規則では同音異義語とは見なされないため、にわかに廃棄されたはずのAcanthocephalaが正当な学名として復活してしまうことを避けようとするものです。


Proposal to conserve the name Eriocactus against Eriocephala (Cactaceae)
C. Backenbergは、1938年にEriocephala Backeb.を命名しましたが、1753年に命名されたEriocephalus L.(キク科)の同音異義語と考えたため、1941年にEriocactus Backeb.としました。
後は基本的に上の提案と同じです。命名規則により使用されていないEriocephalaが復活してしまうため、Eriocactusの名前を保存しましょうという提案です。

さて、このように、命名規則を厳密に適応すると、かつて廃棄されたはずの名前が浮かび上がってしまい、慣れ親しんだ名前が廃棄されてしまいます。ですから、AcanthocephalaとEriocephalaではなく、BrasilicactusとEriocactusをこれからも使用したいということです。
では、現在のBrasilicactusやEriocactusの学名はどうなっているのでしょうか? AcanthocephalaやEriocephalaに取って代わられてしまったのでしょうか?
ここからは、キュー王立植物園のデータベースを参照にします。それによると、現在はBrasilicactusもEriocactusも使用されておりません。では、Acanthocephala、Eriocephalaとなったかと言うとそれも間違いで、BrasilicactusもEriocactusもParodiaに吸収されてしまいました。いや、それどころではありません。現在のParodiaには、Notocactus、Brasilicactus、Eriocactus、Malacocarpusといった属が吸収されました。割と新しく(1999〜2000年)命名されたBoliricactus、Peronocactus、RitterocactusもParodiaに吸収されました。BrasilicactusやEriocactusの名前を保存しようという働きも虚しく、すべてはParodiaになってしまいました。これが残念な結果であるかは分かりませんが、慣れ親しんだ名前が使われなくなるのは悲しいことです。しかし、これからもサボテンの再編成は進行し、名前も次々と変わってしまうのでしょう。昔ながらのサボテン好きな私は、慣れるのに時間がかかりそうです。



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愛知県春日井市はサボテンの町として知られています。私は訪れたことはありませんが、名前だけは知っていました。さて、いつものように論文を漁っていたところ、この春日井市を取り上げたレポートを見つけました。海外の学術誌に掲載されたDavid I. Bacsekによる『The Cactus City, Kasugai, Japan』です。なんと2023年、今年発表されたばかりのものです。

著者は日本中を旅していましたが、インターネットでサボテンの形の彫像があることを知り、それが当時滞在していた名古屋から近い春日井という街にあることが分かりました。春日井には有名なサボテンと多肉植物の苗床があることや、ウチワサボテンが一般に利用されていることを知りました。

著者はインターネットではそれ以上は分かりませんでしたが、ウチワサボテンの利用の経緯は著者予想していたシナリオとは異なるものでした。
台風Veraは1959年9月末、大変な猛威をふるい、現在の名古屋市を壊滅させました。これらの地域は最大4ヶ月間浸水し、病気の蔓延や飲料水や食料品の不足が起こりました。農地や鉄道の破壊による経済的なダメージももたらしました。(※伊勢湾台風のこと)
当時の農家は、副業として栽培していたサボテンを新しい食料源として選択しました。

1960年代に日本でサボテンブームを迎えた時、50軒以上の農家がサボテンを生産していましたが、その後は老朽化によりほんの一握りまで減少しました。後藤さん(※後藤カクタスの後藤容充さん)の祖父は、伊勢湾台風を経験し食料難を乗り切るためにウチワサボテン栽培に参加した農家の一人でした。

サボテン農家が街から消えてしまうことを危惧し、地元のレストランと協力してウチワサボテンを使った食品の開発するプロジェクトが始まりました。地元で有名なサボテン農家の後藤さんは、2006年に春日井市の商工会議所と立ち上げた「春日井サボテン」プロジェクトのために、食用サボテンのための温室を設置しました。著者は温室を見学させてもらいました。プロジェクトが始まってから17年経ちますが、後藤さんはサボテンの食品利用の促進だけではなく、その健康上の利点を認められ学校でのオプションの食材として正式に導入する法案が可決したことを喜んでいます。

春日井市で利用されるウチワサボテンは、コチニールサボテン(Opuntia cochenillifera)と呼ばれ、メキシコ、カリブ海地域、パナマ、キューバ、プエルトリコに分布します。抗酸化物質、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD(主に果実に含まれる)を含みます。食物繊維やビタミンが豊富で機能性食品と言えます。

後藤さんの目標は、乾性植物を育ててその人気を高めるだけではなく、誰もが農業の美しさと、これらのサボテンの健康上の利点を体験する機会を作ることであると著者に話してくれました。この街は食用サボテンの生産の中心地に成長し、人々が農業と乾性植物を祝う場に育ち、誰もがサボテンの街、春日井の魔法を体験する機会を得る事ができます。

以上が簡単な要約となります。
しかし、非常に面白いレポートでした。掲載誌はサボテンの利用についての研究を掲載している『Journal of Professional Association for Cactus Development』です。バックナンバーを見てみると、やはりウチワサボテンの利用や効率的な栽培についての研究が多いようです。このような社会活動的な話はメインではないため目を引きます。しかし、日本のサボテン農家が街と共に国際ジャーナルで話題になることは非常に珍しい事です。昔からサボテン栽培が普及している日本ですから、サボテンの歴史についてもう少し語ってくれる人がいてくれたらなあとは思いました。


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マミラリア属(Mammillaria)は、非常に種類が多くあるものの、陵が突出してイボ状でその先に柔いトゲがあり、また花の特徴も割と似ています。しかし、種類が多いだけに、遺伝子解析では単系統であることを疑わせるものもあります。それは、Cristian R. Cervantesらの2021年の論文、『Evaluting the monophyly of Mammillaria series Supertextae (Cactaceae)』です。

今回は論文から遺伝子解析結果のみを抽出しました。詳しく見てみましょう。グループAからグループJまでの10グループに分けました。グループJは内容が複雑ですから、別枠で詳細を示しました。
ただ、論文の図のサボテンの学名が異様に小さな文字で書かれており、マミラリアに詳しくないので学名はスペルミスがあるかも知れません。

                             ┏━━A
                               ┏┫
                               ┃┗━━B
                           ┏┫
                           ┃┗━━━C
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                       ┃┗━━━━D
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                   ┃┗━━━━━E
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               ┃┗━━━━━━F
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           ┃┗━━━━━━━G
       ┏┫
       ┃┗━━━━━━━━H
   ┏┫
   ┃┗━━━━━━━━━I
   ┫ 
   ┃    
   ┗━━━━━━━━━━J
           
グループA
このグループは、グループBとグループDと分離出来ていない種があります。M. haageanaは、Aの中でも遺伝的にやや離れた2種類があり、グループBにも3種あるように見えます。M. lanataはグループAとグループDで見られ、2種類に分けられるかも知れません。M. albicanataは、3亜種はグループAに含まれますが、subsp. oaxacanaは個体によりグループAとグループBに分けられます。著者らは何やら交雑の可能性を考えているようです。
含まれる種類: M. crucigera、M. erinacantha、M. columbiana、M. haageana、M. albicanata、M. lanata


グループB
含まれる種類: M. dixanthocentron、M. flaricentra、M. supertexta、M. haageana、M. albicanata

グループC
含まれる種類: M. spinosissima、M. magnifica、M. backebergiana、M. rekoi

グループD
含まれる種類: M. geminispina、barchmannii、cadereytensis、M. parkinsonii、M. klissingiana、M. grusonii、M. rhodantha、M. penisularis、M. lindsayi、M. mammillaris、M. magnimamma 、M. voburnensis、M. carnea、M. polyedra、M. karrlinskiana、M. mystax、M. melanocentra、M. lanata

グループE
含まれる種類: M. prolifera、M. picta、M. pectinifera、M. glassii、M. plumosa、M. perezdelarosa、M. bombycina、M. pottsii、M. vetula ssp. gracilis

グループF
含まれる種類: M. microhelia、M. elongata、M. decipiens、M. moelleriana、M. hermandezii、M. longimamma

グループG
含まれる種類: M. zactecasensis、M. jaliscana、M. mercadensis、M. rettigiana、M. nazasensis、M. brachytrichion、M. pennispinosa、M. sinistrohamata、M. lasiacantha、M. gasseriana、M. stella de tacubaya、M. weingartiana、M. senilis

グループH
含まれる種類: M. humboldtii、M. herrerae、M. candida

グループI
含まれる種類: M. zephyranthoides、M. oteroi、M. sphacelata、M. beneckei

グループJ
グループJには、OrtegocactusやNeolloydia、Coryphantha、Escobaria、Pelecyphoraがマミラリアと入れ子状に現れます。しかも、EscobariaやCoryphanthaはまとまりがありません。まあ、c. viviparaやC. hesteriは論文ではコリファンタとしていますが、コリファンタというよりエスコバリアとしてのほうが有名かも知れません。

                       ┏━グループK
                   ┏┫
                   ┃┗━Ortegocactus macdougalii
               ┏┫
               ┃┃┏━M. tetrancistra
               ┃┗┫
               ┃    ┗━M. guelzowiana
               ┃ 
           ┏┫┏━━Neolloydia conoidea
           ┃┗┫
           ┃    ┗━━M. luethyi
       ┏┫
       ┃┃┏━━━M. wrigntii
       ┃┗┫
       ┃    ┗━━━M. barbata
   ┏┫
   ┃┃    ┏━━━Coryphantha vivipara
   ┃┃┏┫
   ┃┃┃┗━━━Coryphantha hesteri
   ┃┗┫
   ┃    ┗━━━━Escobaria zilziana
   ┃
   ┫ ┏━━━━Pelecyphora aselliformis
   ┃┏┫
   ┗┫┗━━━━Escobaria chihuahuensis
    ┃
       ┃┏━━━━Coryphantha pallida
       ┗┫
           ┗━━━━Coryphantha durangensis

グループK
M. patonii、M. mazatlanensis、M. cerralboa、M. neopalmeri、M. insularis、M. thornberi、M. armillata、M. fraileana、M. albicans、M. blossferdiana、M. mahiniae、M. poselgeri、M. halei、M. pondii、M. schumannii、M. boolii

驚くべき結果ですが、遺伝子解析は絶対ではなく、あくまで確率の高い分岐を採用しているだけです。2000年代初めくらいの遺伝子解析は精度が今ひとつでした。しかし、この論文は2021年ですから、精度は高そうです。また、種分化が短期間に起こると分離が甘くなりがちですが、マミラリアは細かい部分まで分離出来ているのでその問題もなさそうです。
さて、この結果を信じるならば、マミラリア属とはグループAからグループIまでのことです。なぜなら、他の属と入れ子状になっており、マミラリア属だけを分離出来ないからです。もし、グループJのマミラリアもマミラリア属に含めるならば、OrtegocactusやNeolloydia、Coryphantha、Escobaria、Pelecyphoraをマミラリア属にしなくてはいけなくなります。そうしないのならば、OrtegocactusやNeolloydia、
Coryphantha、Escobaria、Pelecyphoraは、明らかに分類が間違っています。グループJのマミラリアを含め、再編する必要があります。1〜6属に分類し直す方が自然かも知れません。

などと考えていた時に、現在の学名はどうなっているのか気になりました。早速、キュー王立植物園のデータベースを漁って見ました。すると驚くべきことに、2020〜2022年くらいにかけて、マミラリアとマミラリアに近縁な仲間の大幅な再編成がすでに行われていました。やはり、マミラリア属はグループAからグループIまでに限定されるようです。
では、グループJのマミラリアだった連中は、Cochemia属に変更されました。ちなみに、Ortegocactus属とNeolloydia属は現在はなくなり、やはりCochemia属にまとめられています。
次にCoryphantha viviparaやCoryphantha hesteriは、Pelechyphora属になっています。ちなみに、Escobaria属は消滅しPelecyphora属に吸収されました。よくよく調べると、Encephalocarpus strobiliformis(松毬玉)もPelechyphoraになっていました。
Coryphantha属は健在です。C. pallidaの位置にあるようです。

という訳で、オルテゴカクタス属、ネオロイディア属、エスコバリア属、エンケファロカルプス属は消滅し、マミラリア属、コケミア属、ペレキフォラ属、コリファンタ属に再編されました。大変な変わりようです。気づかない内にこのような再編成があちこちで行われているのかも知れません。サボテンの分類も、色々調べてみる必要がありそうです。



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昨日から引き続き猛暑の中のギムノカリキウムの様子を見てみましょう。

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武勲丸
Gymnocalycium ochoterenae系と言われている武勲丸です。暑さにも負けず、新しいトゲを出しています。
そう言えば、同じくG. ochoterenae系のバッテリーは良く見かけますが、武勲丸は見かけませんね。


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Gymnocalycium vatteri
バッテリーも元気です。暑い中、よく開花します。
トゲがあまり強くなく、全体的に陵が角張らない昔のタイプです。最近は強刺タイプのバッテリーが人気みたいですね。G. vatteriだとか、G. ochoterenae subsp. vatteriだとか言われますが、最近は単なるG. ochoterenaeに含まれる傾向みたいです。


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Gymnocalycium intertextum
インターテクスツムは強光にも強く、強いトゲを出しています。
G. bodenbenderhanum subsp. intertextumとも言われますが、最近ではG. ochoterenaeと同種とされています。ただし、インターテクスツムの名前がついているものが、すべてインターテクスツムかは怪しいとも言われます。私の所有個体は長刺タイプですが、海外のサイトでは強刺タイプが一般的なようで、同じ種類かは分かりません。まあ、かなり変異が激しいようなので、すべて同一種かも知れませんけどね。


230730105543789
Gymnocalycium ochoterenae var. cinereum
オコテレナエ変種キネレウムも暑さに負けず元気です。ある程度の強光にも耐えています。
しかし、キネレウムのトゲは黒っぽいはずですが、ご覧のようにトゲが白いので、やや怪しい感じがします。最近、大量に流通しているのはこのタイプなんですよね。なんとなく守殿玉に似ているような気もします。


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守殿玉
守殿玉は暑くなってから動き出しました。
Gymnocalycium bodenbenderianumと言われます。


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瑞昌玉
瑞昌玉もちらほら花を咲かせています。
竜頭などと共に、Gymnocalycium quehlianum系とされているようです。


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瑞昌玉
こちらの瑞昌玉も元気ですが、中々花を咲かせてくれません。
ネットやホームセンターでは、このような特徴がはっきりしないものもよく目にします。


230730105632749
鳳頭
少し焦がしてしまいました。しかし、トゲは動いています。
G. quehlianum系。


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新鳳頭
新鳳頭もゆっくり育っていますが、中々大きくなりません。少し厳しくし過ぎなのでしょうか?
G. quehlianum系。


230730105613463
竜頭
竜頭も順調に育っています。割と丈夫みたいですね。
G. quehlianum系。我が家の竜頭は、割と陵が多いタイプです。


この暑いさなかの、我が家のギムノカリキウムの育ち具合をご紹介しました。しかし、写真を取り忘れたものが結構あって、記事を書きながらアレもないコレもないなんて感じになりましたが、まあ取りこぼした連中はまた今度ご紹介します。


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