ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2023年05月

南アフリカは多肉植物の宝庫ですが、アフリカ東岸やマダガスカルもユーフォルビアの宝庫です。しかし、アフリカ内陸部についてはあまり話題に登らないことが多いように思われます。本日はそんなアフリカ大陸の内陸部にあるジンバブエのユーフォルビアのお話です。

本日ご紹介するのは、『Euphorbia of Matabeleland, Zimbabwe』です。ジンバブエは南アフリカの北部に一部を接する内陸国で、アフリカ大陸南部の東岸にあるモザンビーク、その左隣のジンバブ、その左隣のエボツワナ、西岸のナミビアという並びです。ちょうど、南アフリカの北を4カ国が蓋をしているような形になっています。ジンバブエのMatabeleland州は南アフリカとの国境の一部である南のリンポポ川からボツワナまで、国の西側に沿うようにあります。北部はザンベジ川からザンビアとの国境を形成します。標高は最南端の約400mから北のチザリア高原の1400mまでです。このような多様な環境に自生する、ジンバブエはMatabelelandのユーフォルビアを見ていきましょう。

①Large Tree 
◎Euphorbia ingens E.Meyer ex P.E.Boisser
E. ingensは「巨大」を意味し、高さ10mに達し、Matabelelandで最大クラスのユーフォルビアです。幹は木質化し基部から2〜4mで分岐します。枝は通常4つの稜を持ち、主幹は4〜6の稜を持ちます。柱サボテン状のユーフォルビアは、稜の角が角質化してトゲが繋がっていることがありますが、E. ingensは連続しません。茎は緑色で若い時は斑が入ることがあります。葉は若い時はありますが、基本的に残りません。花は通常黄色で、果実は暗赤色に熟してしばしば鳥に食べられます。E. ingensの乳液は魚毒あるいはトリモチの材料とされます。MatabelelandではE. ingensは岩が多い場所を始め様々な環境で育ちますが、霜が降りない地域に生えます。州全体で見られますが、Bulawayo周辺とBulawayoの南部のMatobo丘陵に集中します。

◎Euphorbia cooperi
      N.E.Brown ex A.Berger var. cooperi

E. cooperiは、N.E.Brownの義父であるThomas Cooperiにちなんで命名されました。高さ約7〜10mになります。枝は基部で肥大し膨らみます。枝は通常4〜6稜で、主幹は5〜8稜です。トゲは連続し、対になった大きいトゲと、ない場合もある小さなトゲが交互にあらわれます。花は黄色で、果実は熟すと赤色になります。E. cooperi var. cooperiの乳液は非常に毒性が高く、皮膚についたり目に入ると危険です。乳液は魚毒あるいはトリモチとして利用されます。E. cooperi var. cooperiは州の中央から南部にかけて分布します。
230528143931738
Euphorbia cooperi var. cooperi
対になった強いトゲの間に弱いトゲがあります。

◎Euphorbia cooperi N.E.Brown ex A.Berger
     var. calidicola L.C.Leach
「calidicola」は暑く乾燥した場所に生えることを意味します(※)。高さ10mに達し、主幹は3〜4(5)稜、枝は2〜3稜です。非常に多様なくびれがあり、var. cooperiと区別出来ます。花序もvar. cooperiよりわずかに長いようです。花は黄色で大きく、著者の観察では蜂、蝿、蛾、甲虫、蝶、亀虫、蟻など、沢山の昆虫を引き付けるそうです。果実は熟すと赤色になります。乳液は刺激が強く、トリモチとして利用されます。
E. cooperi var. calidicolaはMatabelelandの北西部、北部、北東部の高温になる乾燥地に生え、川沿いでよく見かけますが、それ以外の場所でも自生します。

(※1) ラテン語で「calidus」は熱いという意味です。

◎Euphorbia fortissima L.C.Leach
「fortissima」は非常に角質化した稜が強いことに由来します。高さ7mに達し、大きなトゲがあります。主幹は5〜6稜で枝は最大5mで、時折再分岐し3〜5稜です。狭い楕円形から卵形にくびれます。果実は緑色で熟すと淡い赤色に変わります。
E. fortissimaはMatabeleland北部でのみ見られ、主に非常に暑く乾燥した場所で、時には急斜面に生えます。降水量は不安定で、年間100〜1000mmの範囲で変化します。茎のくびれは1年に1つできますが、降水量の多寡によりサイズが変わります。著者の観察では毛虫が沢山つき、雑菌の二次感染により多くのE. fortissimaが枯死しました。

◎Euphorbia confinalis
     R.A.Dyer subsp. rhodesiaca L.C.Leach

「rhodesiaca」はジンバブエの旧名であるローデシアに因みます。ジンバブエ固有種で、若い時は美しい斑があります。高さは15m以上に達します。主幹は5〜7稜、枝は4〜6稜です。枝は長楕円形から卵形にくびれます。subsp. confinalisは高さ30cmほどで分岐を開始しますが、subsp. rhodesiacaは場合によっては高さ1m以上になってから分岐し始めます。稜の間は連続しており頑丈です。花は黄色で小型です。乳液は非常に有毒と言われています。
MatabelelandではBulawayoの南にあるMatobo丘陵から知られています。この地域では変化に富んでおり、E. cooperiに似た形態も見られます。一部の植物は乳液が透明で、これはE. cooperiとの交雑種である可能性があります。この地域では、個体数が減少しており、何らかのストレスがかかっていることが想定されます。著者の観察では、若い植物がほとんどなく、20年以上のものが大半でした。最も若い植物でも、高さ50cm未満の12年生のものでした。
230528143945495
Euphorbia confinalis subsp. rhodesiaca 

②Spiny Shrubs
◎Euphorbia persistentifolia L.C.Leach
高さ3mに達する多茎のトゲのある多肉質の低木です。幹と枝は通常4〜5稜で、稜の間は連続します。通常は目立つ対になった強いトゲと、その間の弱いトゲからなります。花は黄色です。
E. persistentifoliaはHwangeの南約150kmの州北部でのみ見られ、さらに100km北のザンベジ川とビクトリアの滝あたりに散在します。通常は浅い土壌で岩や石が多い環境です。


◎Euphorbia malevola L.C.Leach
      subsp. malevola

「malevola」は悪意を意味しますが、トゲに由来する名前です。高さ1〜2mの枝分かれしたトゲのある低木です。茎は灰緑色から青緑色、淡緑色または赤みがかった色まで様々で、直径は最大2.5cmです。枝は時にねじれたり螺旋状になり4〜5稜です。しばしば大理石様の模様があります。稜は不連続です。トゲはメインのトゲの間に弱いトゲがあります。花序と花は鈍いオレンジ色から淡い赤色、あるいは濃い赤色です。
Matabelelandでは、主に北部、北東部、北西部に見られ、Wankie周辺の砂岩と泥岩の土壌に育ちます。南部からの報告もありますが、著者は見たことはないそうです。


◎Euphorbia griseola F.Pax subsp. griseola
「griseola」は灰色がかった色を意味し、角質化した稜の色を指しています。通常は高さ1〜2mのトゲのある多肉質の低木です。基部から分岐し、枝の途中からも再分岐します。茎は4〜6稜で、緑色から黄緑色、斑が入ります。稜の間は連続あるいは準連続です。花序と花は黄色から緑がかる黄色です。
Matabelelandではブラワヨを中心に分布し、ボツワナ国境まで広がっています。Matobo丘陵には沢山のE. griseolaが見られます。

DSC_0166
Euphorbia griseola

③Small spiny shrubs
 ◎Euphorbia schinzii F.Pax
1890年代にスイスの植物学者で植物コレクターのHans Schinz博士に因みます。高さ30cmまでのコンパクトなトゲのある多肉植物です。太いを持ち、沢山の枝を出します。枝はほとんど4稜で、淡いオリーブグリーンから濃いオリーブグリーン、または灰緑色です。花は黄色です。
Matabelelandの南から北に散在します。


④Non-Spiny Shrubs or Small Trees
◎Euphorbia guerichiana Pax
高さ2mに達しますが、トゲのない木質の半多肉質の低木です。通常は多茎で、成熟した茎は黄褐色または淡褐色の樹皮に覆われます。若い茎は緑色ですが、後に灰色がかります。E. guerichianaは降雨量により薄緑色から青緑色の葉を出し、長さ約7〜35mmで短い葉柄があります。花は通常は黄色ですが、緑色や赤色にもなります。
Matabelelandの南部と南西部の、暑く乾燥した低地でのみ自生します。いくつかの点で、続く2種類に似ています。


◎Euphorbia espinosa F.Pax
「espinosa」はトゲがないことを示しています。高さ3mほどのトゲのない低木で、交互に広がる枝を持ち、幹は茶色かわかる樹皮に覆われます。地下に塊根がある半多肉植物です。葉は長さ44mmまでで、明瞭な縞模様があります。葉柄は通常赤みがあります。花は普通は黄色です。
Matabelelandの南から北に散在し、特に中南部から北部に豊富です。岩の多い場所によく見られますが、様々な土壌で生長しているようです。


◎Euphorbia matabelensis F.Pax
高さ4mまでの半多肉植物で、木質の低木です。多数のトゲのある尖った一次枝と二次枝を持ちます。葉は多肉質で線形から披針形です。花は黄色です。
Matabelelandの南から北に見られます。南部ではそれほど豊富ではありません。Bulawayo周辺に近づくにつれて、特にMatobo丘陵の花崗岩の丘の砂質土壌では一般的です。Bulawayoから北に向かうとE. matabelensisは散在し、Hwange国立公園では深いカラハリ砂漠にも落葉広葉樹の下で生長し、さらに北のザンベジ川とビクトリアの滝あたりに分布します。


⑤Small to very small non-spiny herbs
◎Euphorbia monteiri W.J.Hooker
      subsp. monteiri

多年生の多肉植物で、19世紀後半にアンゴラにおいて初めて採取したJ. monteiroに因みます。茎は高さ30cm以上、直径10cmになります。頂点から葉が沢山出ます。ジンバブエでは珍しく、これまでにボツワナ国境のMatabelelandな北西からのみ知られています。

◎Euphorbia transvaalensis R.Schlechter
初めて発見された南アフリカのTransvaalに因みます。高さ1.6mまでのトゲのない低木で、時に密に枝分かれします。しかし、ほとんどの植物は小さく高さ5〜25cmです。地下に塊根を形成します。若い時の枝は草本あるいは亜多肉植物で、やがて木質となります。古い茎は中空となり挿し木に向きません。環境が悪化すると、落葉さらには地上部はすべて枯れますが、やがて地下の塊根から新しい枝を出します。葉は3〜10.5cmで葉柄があります。花は黄色から緑がかった黄色です。Matabeleland全体に分布し、岩や砂が多いばしに散在します。時々、粘土質の土壌にも生えます。

◎Euphorbia davyi N.E.Brown
プレトリアの植物学者であるJ. Burtt  Davy博士に因みます。トゲのない多年生の矮性多肉植物です。いわゆるMedusoid(タコもの)です。Matabelelandでは一般的ではなく、南西部のいくつかの地域でのみ見られます。露出した岩の多い砂利の多い土壌に生えます。

◎Euphorbia trichadenia F.Pax
「trichadenia」とは毛深い腺という意味です。多年生の落葉する草本です。長さ10cmまでの塊根を発達させます。樹皮はコルク状です。枝は3〜10cmです。Matabelelandの最東部にのみ自生し、一般的ではありません。

◎Euphorbia platycephala F.Pax
「platycephala」は広いあるいは平らな頭という意味です。地下の塊根から茎を出す落葉植物です。1本以上の高さ7〜10cmほどの多肉質の茎があります。葉は長さ4.5〜7.5cmで、温室で栽培すると葉や茎は淡い黄緑色ですが、生息地ではより青みがかった緑色です。Matabelelandの最東部からのみ知られています。

◎Euphorbia oatesii Rolfe
1890年代にローデシアを旅したOates氏に因み、ジンバブエにタイプ標本の産地があります。落葉性の塊根のある草本です。根の樹皮は灰色です。根は直径45mm、長さは最大1mになります。枝は高さ20cm以上で一年性です。茎と枝は淡い緑色、黄緑色、黄色がかる赤色、または赤色で、白または黄色がかる毛に密に覆われます。葉は長さ5〜70mmで、線形から披針形、淡緑色から青緑色です。葉の上面には不規則な模様があります。Matabelelandでは北東端にのみ見られ、砂質土壌で育ちます。塊根の露出を嫌うようです。

以上のように、ジンバブエの18種類のユーフォルビアをご紹介しました。しかし、残念ながら私はほとんど未入手なため、写真をお示し出来ないのは非常に残念です。今後、何かしらのジンバブエ・ユーフォルビアを何かの拍子に入手出来ましたら、お示し出来ればと思っております。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

Euphorbia multifoliaは南アフリカ原産のユーフォルビアです。最近、入手しましたが、意外と情報がありません。論文も見つかりませんでした。仕方がないので公的なデータベース含め情報を少し漁ってみました。

230528171643306
Euphorbia multifolia
種小名は「multi+folia」で、意味は「沢山の+葉」です。


調べて出てくるのは販売サイトばかりで、肝心のE. multifolia自体の情報はあまり得られませんでした。ただし、LLIFLE というサイトに多少の情報がありました。少し見ていきましょう。
南アフリカの西ケープ州、Karoo南部のLadimithとPrince Albert、KleinとGroot SwarbergからLaingsburgの範囲に分布します。5つの個体群がありますが、一般にアクセス出来ない場所に生えるため、さらに多くの生息地がある可能性があります。Nama KarooとSucculent Karooに局地的に生え、高い標高を好み、山の斜面、急な崖、岩上でSenecio haworthiiとともに見られます。夏に葉を落とすこともあれば落とさないこともあります。しかし、干魃がおこると葉を落とします。
E. multifoliaはトゲのない多年生の多肉質な低木で、高さ15cm(〜30cm)くらいでクッション状に育ちます。E. eustaceiとよく似ていますが、E. multifoliaの葉はより細く先端が切断されたかのように見えることから区別できます。

230528171647466
葉の先端はまるでカットされたようです。

次に、南アフリカ国立生物多様性研究所(Southern African National Biodiversity Institute)の「Red List of South African Plants」を見てみましょう。2007年5月30日のJ.H.Vlok & D.Raimondoの生息地の調査によると、5つの亜集団がありますが、生息地は一般にアクセス出来ないため、さらに多くの亜集団が存在する可能性があります。どうやら、LLIFLEの記述の一部はここから来ているようですね。ちなみに、LLIFLEにある生息地の情報もこのサイトから来ているみたいです。
アクセスしやすい地域に生えるものはコレクターによりすでにかなり失われていますが、個体群の大半は容易に行くことが難しい急な崖に生えるため、違法採取によりE. multifoliaが大幅に減少したり絶滅する可能性は低いということです。

さて、続いてキュー王立植物園のデータベースで検索してみると、1941年にEuphorbia multifolia A.C.white, R.A.Dyer & B.sloaneと命名され、異名はないようです。また、「Succ. & Euphorb.: 962(1941)」において初めて記載されたらしいのですが、残念ながら当該論文を見つけることは出来ませんでした。
しかし、データベースが根拠とした資料になにやら見覚えがあります。P.V.Bruynsの2014年の論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』です。この論文は、南アフリカのユーフォルビアについて、命名者や命名年、タイプ標本についてなど、学名の根拠となる情報が収集されたものです。私もブログで度々利用させて貰っています。
タイプ標本はHerreが1939年の8月にLaingsburgからLadismithに向かう30マイルで採取したようです。Whiteら(1941年)は、同じ産地でSmithとHerreがE. multifoliaを採取し、Smithの標本をタイプ標本に指定しました。しかし、Smithの標本が失われたため、Herreの標本がレクトタイプ(※)に指定されています。

※ ) 命名される時の基準となるホロタイプが指定されていなかったり失われた際に、新たに指定されるタイプ標本。

では、E. multifoliaの分類はどうでしょうか。とりあえず、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のTaxonony browserで検索してみます。
Euphorbia subgen. Athymalus
Euphorbia sect. Anthacanthae
Euphorbia subsect. Florirpinae
Euphorbia ser. Hystrix
要するに、E. multifoliaは、ユーフォルビア属、アティマルス亜属、アンタカンタ節、フロリスピナ亜節、ヒストリクス列に分類されるということです。
ヒストリクス列にはE. bupleurifolia、E. loricata、E. multifolia、E. oxystegiaが含まれます。意外にも鉄甲丸(E. bupleurifolia)に近縁なようですね。


とまあ、とりあえずはこんなものです。大した情報はありませんでしたが、意外にもかなり厳しい環境に生えるようです。情報はないなりに、一応は調べてみるものですね。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

昨日はマダガスカルのユーフォルビアの形態と乾燥条件などの関係についての論文をご紹介しました。Margaret Evanceらの2014年の論文、「Insights on the Evolution of Plants Succulent from Remarkble Radiation in Madagascar (Euphorbia)」です。実はこの論文ではマダガスカルのユーフォルビアの系統関係についても調べられています。興味深い内容ですので、系統関係を見てみましょう。ちなみに、その植物が生える地域の降水量も添えました。育てる際の参考になるかも知れません。

Section Goniostema
Goniostema節は一般に花キリンと呼ばれ、花卉として様々な園芸品種が流通しています。その多くは木質化した枝から葉を出し、トゲがあるものも多く、塊根性のものもあります。論文では5つのクレードに分けており、それはlophogona clade、milii clade、primurifolia clade、boissieri clade、thuarsiana cladeです。

①lophogona clade
DSC_0102
Euphorbia moratii 降水量1320mm

DSC_2476
Euphorbia didiereoides 降水量856mm

DSC_1608
Euphorbia gottlebei 降水量674mm

DSC_0101
Euphorbia rossii 降水量717mm

DSC_1765
Euphorbia pedilanthoides 降水量1540mm

②milii clade
milii cladeは塊根性花キリンを沢山含みます。なお、E. miliiは命名の由来が不明であり、正確にはどの種類を示しているか分かっていませんでした。しかし、2022年の論文によると、葉の先端を切ったような形の花キリンがE. miliiであるとしています。今までE. miliiとされてきた、様々な色の花を咲かせ楕円形の葉を持つ、よく栽培される花キリンはE. splendensとなっています。

DSC_0113
Euphorbia tulearensis 降水量387mm

DSC_0108
Euphorbia cylindrifolia 降水量874mm

DSC_0109
Euphorbia ambovombensis 降水量559mm

DSC_0002
Euphorbia cap-saintemariensis 降水量422mm

_20230318_210719
Euphorbia decaryi 降水量730mm
※現在は、E. boiteauiとなっています。


DSC_2505
Euphorbia francoisii 降水量1607mm
※現在は、E. decaryiとなっています。

③primulifolia clade
この論文では、E. primulifoliaは産地によって、かなり遺伝的に異なることが分かりました。Horombe原産のE. primulifoliaはmilii cladeのE. waringiaeに近縁で、Isalo原産のE. primulifoliaもやはりmilii cladeでした。
E. primulifolia var. primulifoliaは降水量1376mm、Horombe原産のE. primulifoliaは降水量847mm、Isalo原産のE. primulifoliaは降水量792mmとかなりの違いがあります。


④boissieri clade
DSC_0116
Euphorbia viguieri 降水量1324mm

DSC_0106
Euphorbia guillauminiana 降水量1565mm

⑤thuarsiana clade
DSC_0111
Euphorbia neohumbdrtii 降水量1434mm

230521165130863
Euphorbia ankarensis 降水量1486mm
※=E. denisiana var. ankarensis

DSC_0112
Euphorbia pachypodioides 降水量1627mm

Section Denisoforbia
Denisophorbia節は、葉や茎は多肉質ではなく低木状です。E. hedyotoides(降水量708mm)やE. mahabobokensis(降水量757mm)は塊根を持ちます。 
DSC_1833
Euphorbia bongolavensis 降水量1500mm

Section Deuterocalii
Deuterocalii節は緑色のやや多肉質な茎をもつ棒状の植物です。E. alluaudiiやE. cedrorum(降水量396mm)があります。
DSC_0309
Euphorbia alluaudii 降水量780mm

昨日解説したように、やはり塊根性のものはより乾燥地に生える傾向は確かなようです。私もこの論文は非常に勉強になりました。例えば、E. pachypodioidesはあれほど高度に茎が多肉化しており、大量の水分を貯蔵していますから乾燥に強いと考えていました。しかし、E. pachypodioidesはかなり降水量が多い地域に自生していました。確かに、私はユーフォルビアは乾かし気味に育てていますが、E. pachypodioidesは葉を落としがちでしたし、今年は植え替えましたが思った以上に細根で如何にも乾燥に弱そうでした。これからは、水やりを多めに育てたいと思います。逆を言えば、塊根性のものは乾かし気味にする必要があるかも知れません。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

サボテンは砂漠の象徴であり、サボテンが生える荒野は乾燥した死の大地のように表現されたりもします。乾燥地に生えるサボテンはアメリカ大陸原産ですが、アフリカ大陸にはサボテンにそっくりなユーフォルビアが生えています。共通する水分を貯蔵した多肉質な茎と、トゲに覆われた姿は、乾燥地に適応した結果として類似した姿を取りました。これを収斂進化と言います。さて、サボテンやユーフォルビアなどの乾燥地に生える多肉植物は、当選ながら乾燥に強いと考えられますが、それは本当でしょうか? というのも、意外にもそんな基本的な事柄は今までほとんど調べられて来なかったからです。そんな基本的な事柄を調査したMargaret Evanceらの2014年の論文、「Insights on the Evolution of Plants Succulent from Remarkble Radiation in Madagascar (Euphorbia)」を見てみましょう。

多肉植物は乾燥条件により、葉や茎、根などの器官に水分を貯蔵するために肥大化させています。このような乾燥に対する形態と、気候条件の関係を調査しております。調査はマダガスカルで実施し、多肉質なユーフォルビアを対象にしています。扱われるユーフォルビアは、Goniostema節、Denisophorbia節、Deuterocalii節です。この3グループは近縁で、論文ではそれぞれの頭文字を取って「GDD clade」と呼んでいます。それぞれの節について少し解説します。

①Goniostema節は一般に花キリンと呼ばれ、花卉として様々な園芸品種が流通しています。その多くは木質化した枝から葉を出し、トゲがあるものも多く、塊根性のものもあります。

②Denisophorbia節は、葉や茎は多肉質ではなく低木状です。E. hedyotoidesやE. mahabobokensisは塊根を持ちます。 
③Deuterocalii節は緑色のやや多肉質な茎をもつ棒状の植物です。E. alluaudiiやE. cedrorumがあります。


さて、論文では葉が多肉質になるもの、サボテンのように幹が多肉質になるもの、塊茎や塊根を持つものの3つに区分しています。実際のユーフォルビアの自生地の環境を調べたところ、意外なことが分かりました。サボテン状のユーフォルビアより、塊茎・塊根を持つユーフォルビアの方がより乾燥に適応していたのです。もちろんこれは傾向ですから、すべてがそうではないかも知れません。しかし、なぜ塊茎・塊根植物は乾燥に強いのでしょうか? 著者らによると、塊茎・塊根植物は乾季には葉を落として休眠し、塊茎・塊根に貯蔵した水分で耐えることができるからだとしています。なるほど、サボテン状のものも塊茎・塊根のものも水分を大量に貯蔵出来るところは共通しますが、乾季の休眠という点においては塊茎・塊根植物の方が有利ということなのでしょう。サボテン状ユーフォルビアに貯蓄された水分は光合成に必要であるため1日単位の時間のに対する適応であり、塊茎・塊根ユーフォルビアは季節的な時間に対する適応である可能性があるとしています。

さらに言えば、その分布はサボテン状ユーフォルビアは高温と中程度の乾燥、塊茎・塊根状ユーフォルビアは低温と極度の乾燥が特徴としています。自生地の気候について一例を挙げると、サボテン状のE. pachypodioidesは平均気温25.9度、降水量1627mm、E. neohumbertiiは平均気温25.9度、降水量1434mm、E. viguieriは平均気温26.1度、降水量1324mmでした。対する塊茎・塊根状のE. rossiiは平均気温25.2度、717mm、E. cylindrifoliaは平均気温23.6度、降水量874mm、E. cap-saintemariensisは平均気温23.5度、降水量422mmでした。他の形態では、樹木状となるE. bongolavensisは平均気温26.6度、降水量1500mm、E. guillauminianaは平均気温26.5度、降水量1565mmでした。また、多肉質の棒状のE. alluaudiiは平均気温22.5度、降水量780mm、E. cedrorumは平均気温23.9度、降水量396mmでした。やはり、塊根性花キリンは降水量が少ない地域に生え、幹を太らせるタイプのユーフォルビアは相対的に降水量が多い地域に生える傾向が見受けられます。また、樹木状ユーフォルビアは乾燥にあまり強くないであろうことがわかります。さらに、意外にも棒状ユーフォルビアはかなりの乾燥地に生えるようです。ユーフォルビアはあちこちの分類群で多肉質な棒状の形態のものがあらわれ、世界中の乾燥地帯に分布します。このような形態が乾燥に強い理由は良くわかりませんが…

ただし、例外はあり塊根性ではない花キリンであるE. didiereoidesは平均気温21.0度、降水量856mmと乾燥地に生え、塊根性花キリンのE. francoisii(※)は平均気温22.9度、降水量1607mmと割と湿潤な地域に生えます。しかしその場合、それぞれの地域での何かしらの特殊な環境に適応した結果かも知れません。例えば、降水量は多いものの、土壌が礫質で排水性が極めて高い場合を考えた場合、水分の歩留まりが悪いので塊根が必要かも知れません。ですから、確実性を高めるならば、それぞれの植物の生息状況を詳しく調査する必要性があるかも知れません。

(※) E. francoisiiは現在はE. decaryiとなっています。今までE. decaryiと呼ばれていた植物はE. boiteauiとされています。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ 多肉植物へ
にほんブログ村

神代植物公園の大温室の続きです。大温室を見た後は園内を少し散策して帰りました。

DSC_0579
去年も見ましたが、やはり温室と言ったらバカでかい金鯱は定番。そう言えば、金鯱の学名は2014年にEchinocactus grusoniiからKroenleinia grusoniiになりました。ちなみに、2021年にはFerocactus grusoniiなる名前も提唱されているみたいです。

DSC_0580
吉祥天 Agave parryi var. truncata
アガヴェには詳しくないので、いったい何がトルンカタなのか不思議です。かなりの大株。吉祥天はAgave parryi var. parryiのような気がしますが…


DSC_0582
長刺白寿丸 Mammillaria geminispina

DSC_0585
益荒丸 Echinopsis rhodotricha
エキノプシスに見えませんが、ネームプレートにはそうありました。しかし、Achanthocalycium rhodotrichumという名前もあり、どうにもはっきりしません。詳しく調べてみる必要がありそうです。

DSC_0591
実が出来ています。

DSC_0587
黒龍 Pterocactus tuberosus
塊根性のサボテン。


DSC_0589
亀甲牡丹 Ariocarpus fissratus

大温室はここまで。
DSC_0594
地湧金蓮 Musella laciocarpa
「ちゆうきんれん」と読むみたいです。地面に生える金色の蓮という意味でしょうか? 如何にもなバショウ科。

DSC_0592

DSC_0595
出口にサラセニアがあり、花が咲いていました。
DSC_0596
小さなサラセニアです。サラセニアなどの食虫植物は貧栄養の湿地に生えるため、昆虫を栄養分とします。
DSC_0597
大型のサラセニアもありました。

DSC_0598
大温室を出て少しぶらぶらしました。睡蓮池はちょうど開花期でした。
DSC_0601

DSC_0602
ピンクの花もあります。

DSC_0605
ヤマブキショウマ
歩いていると何気なく野草か咲いていたりします。


DSC_0607
ユリノキ
非常に背が高い木です。モクレン科植物として有名ですが、初めて見ました。

DSC_0609
あちこちに花はあるのですが、高い場所にあるのでよく見えません。双眼鏡を持ってくれば良かったですね。

DSC_0612
ホソバタイサンボク
タイサンボクの花はよく目立ちます。

という訳で、神代植物公園のバラフェスタに行って来ました。バラももちろん良かったのですが、去年咲いていなかった大温室の植物の花を見れたのもあり大満足です。関東にも他にも植物園はいくつかあるみたいですが全く行ったことがないので、時間があれば少しずつ行ってみたいとは思っています。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

引き続き神代植物公園の大温室の話です。熱帯植物のゾーンを終え、ラン室、そしてお待ちかねの多肉植物のゾーンへ。

DSC_0539
Aristorociha cauliflora
休憩所にも鉢がいくつか置いてありました。これは花はありませんでしたが、幹が面白い。

DSC_0538
幹が錦松のように割れています。

DSC_0541
 Anguraecum florulenthum
長い踞が特徴のラン。この踞には蜜が溜まっており、非常に口が長い特定の蛾だけが蜜を吸うことができます。


DSC_0546
Coryanthes mastersiana × Stanhopea reichenbachiana
去年は蕾しか見られませんでした。説明によると、2〜3日しか咲かないので、見られたらラッキーとのこと。いわゆる、バケツラン。

DSC_0545
鉢底から不思議な花が出てきます。

DSC_0551
Stanhopea deltoides
こちらも開花中。実にラッキーでした。


DSC_0553
Draculaも咲いていました。

DSC_0554
カトレア系交配種ですが、非常につよい芳香がありました。カトレア系は香りが強いものが多いので、カトレア型のランを見かけたらとりあえず匂いを嗅いで見ます。

DSC_0556
Cirrhopetalum skeateanum
この仲間は悪臭がするものもあります。


DSC_0558
Potangis dactyloceras

DSC_0562
赤バナナがなっていました。非常に高い位置に付いているため、見上げないと分かりません。

乾燥地のゾーンに入ります。結構、植物は入れ替わっていました。
DSC_0563
Aloe branddraaiensis
葉が回転しているサイズのAloe 
branddraaiensisは珍しいですね。

DSC_0564
Pachypodium bispinosum
何やら面白い形に仕立てられたビスピノスム(ビスピノーサム)。

DSC_0567
Pachypodium succulentum
枝が暴れていますが、開花中です。

DSC_0565
Pachypodium eburneum
みっしり詰まった形です。


DSC_0569
ゲラルダンサス
一見してただのツタですが、ウリ科の塊根植物です。

DSC_0568
葉の下を覗くと巨大な塊根が見えます。

DSC_0570
中央の灌木は実はOperculicarya pachypusです。枝振りが激しいのでよく見えませんが、かなりの太さです。

DSC_0576
Encephalartos rehmannii
葉が非常に美しいソテツ。

DSC_0575
幹もなかなか美しいですね。

DSC_0577
メインの側の反対の狭いスペースに、目立たない灌木がありますが、よく見ると面白い実が生っています。Banksia integrifoliaです。バンクシアはオーストラリア原産で、火災の後に種子が飛び出す面白い習性があります。火事が頻繁に起きるオーストラリアの環境に適応しています。

ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

神代植物公園のバラフェスタに来ましたが、バラ園を十分に堪能しましたから、大温室を見に行きました。去年もこのくらいの時期に神代植物公園を訪れるました。大温室では様々な珍しい熱帯植物を見ることが出来ましたが、残念ながら開花していない植物もまあまあありました。今年はバラフェスタにあわせて来ましたが、大温室にはどんな花が咲いているでしょうか?

DSC_0503
Nepenthes boschiana
ウツボカズラです。
DSC_0502
咲いた跡か咲く前か分かりません。

DSC_0504
Aphelandra sinclariana
これから苞から花が出て来ます。


DSC_0509
Aristrochia salvadorensis
一見してただの藪になっていますが、地面を見ると花が咲いています。気付いていない人もいましたが、開花中のものは看板がありますから探して見ましょう。

DSC_0507
非常に変わった花です。ウマノスズクサ科は不思議な形や色のものが多いですよね。地際から生えるのは珍しく感じます。
DSC_0508
去年も咲いていましたが、何度見ても面白いですね。

DSC_0512
モクセンナ Cassiana suratte
如何にもなマメ科です。


DSC_0514
Aristolochia gigantea
こちらもウマノスズクサ科。去年は無かった気がします。人の顔ほどある巨大輪です。ツル植物で見上げた場所にあるため、やはり気が付きにくいですね。古い園芸図鑑に海外の植物園の写真が載っていましたが、まさか実際に目にすることができるとは驚きです。


DSC_0517
Medinilla magnifica
ノボタン科。大量に咲いています。

DSC_0515
面白い形ですね。

DSC_0521
Tacca chantrieri
いわゆるタシロイモの仲間です。去年はTaccaだ!、と身を乗り出しましたが、残念ながら咲いていませんでした。今年はその不思議な花が見られてラッキー。


DSC_0523
Clerodendrum  ugandense
シソ科植物。花が蝶に見えることから、「Blue Butterfly Flower」と呼ぶそうです。


DSC_0524
パラミツ Artocarpus heterophyllus
いわゆるジャックフルーツですが、幹から直接30kgにもなる実がなります。去年も小さい実しかありませんでしたが、木が小さいのであまり実も育たないのかも知れません。まあ、タイミングが悪いだけかも知れませんが。


DSC_0526
よく見ると、幹にアリノトリデが着けてありました。ランと同じく着生植物です。膨らんだ茎の中は迷路状の穴が空いており、アリが巣を作ります。

DSC_0528
タマリンド Tamarindus indica
東南アジアあたりの旅行記を読むとよく出て来る名前です。


DSC_0529
ヒスイカズラ Strongylodon macrobotrys
去年も咲いていましたが、2本くらいでした。今年は咲年なのか沢山咲いています。

DSC_0533

DSC_0531
すごい色合いです。

続きます。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

神代植物公園のバラフェスタの続きです。いよいよ、メイン広場を見ていきます。香りが良いものは印がついていて分かるようになっています。香りもバラの楽しみの1つですね。

DSC_0449
とにかく、一面バラか咲いています。

DSC_0450
「Double Delight」
1977年、アメリカ作出。


DSC_0453
「Queen Elizabeth」
1954年、アメリカ作出。


DSC_0456
「Elina」
1983年、イギリス作出。超巨大輪です。


DSC_0460
「Bischofsstadt Paderborn」
なんか、設置されているパネルの英名の方が間違えて「Royal Scarlet Hybrid」になっていました。1964年、ドイツ作出。

DSC_0461
「Blue Bajou」
1998年、日本作出。


DSC_0465
「Summer Snow」
1936年、アメリカ作出。


DSC_0467
「Concertino」
1976年、フランス作出。

DSC_0470
「Eridu Babylon」
2008年、オランダ作出。


DSC_0473
「Lavaglut」
1979年、ドイツ作出。


DSC_0474
「花霞」
1984年、日本作出。

DSC_0486
「Knock Out」
2000年、フランス作出。


DSC_0492
「Pomponella」
2005年、ドイツ作出。


DSC_0496
「Little Artist」
由来不明。


DSC_0500
「Honorine de Braband」
由来不明。


たっぷりバラを鑑賞したので、大温室へ向かいます。様々な熱帯植物がありますが、去年は咲いていないものもありました。今年はどんな花が見られるでしょうか?


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年、神代植物公園で多肉植物展があり、ちょいと覗いてきました。その時、ポスターがあり、バラフェスタが次の週あたりからはじまることを知りました。実は神代植物公園はバラがかなりすごいらしいのです。まったく知りませんでした。また来ようとは思いましたが、残念ながら忙しく行けませんでしたから、来年こそはと思っていました。ということで、神代植物公園のバラフェスタを見てきました。


入場すると直ぐにコンクールに入賞したバラが展示されています。さすが、バラフェスタですね。
DSC_0400

DSC_0402

DSC_0404

右の道を進むと、いよいよバラ園へ。まずはコンクール苗から。小さい苗ですが、非常に変わったタイプが沢山ありました。ネームプレートはありませんから名前は分かりません。
DSC_0414
色が変わっていきます。バラっぽくない花の形です。

DSC_0415

DSC_0416

DSC_0417
細かい花が密につきます。

DSC_0418
花色が変わります。

DSC_0419

DSC_0420

DSC_0422

DSC_0423

DSC_0424

ここからは、ネームプレート付きのバラです。
DSC_0437
「モーツァルト」
小型ですが密についていいですね。


DSC_0440
名前を見るのを忘れました。みっしり詰まった形。

DSC_0435
「Rosa sericea pteracantha」
中国原産の原種バラです。赤いトゲに羽が付いています。


DSC_0442
バラソフトを食べて一休み。続きます。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

木更津Cactus & Succulentフェアは今回で行くのも3回目となった多肉植物の即売会です。出店数が毎回増え、今回は出店数が19もあるそうです。私は12月のイベントには出ましたが、5月のイベントははじめてなので、どんな多肉植物があるか楽しみです。

さて、今回は高速バスがアクアラインの渋滞により大幅に遅れるアクシデントがありました。高速を降りた時点で30分遅れでしたが、最終的に20分遅れまで挽回しました。ということで、少し遅れましたが会場に到着。出店も多く人手もいつも以上でした。

◎まず、過去2回の木更津C & Fでユーフォルビアを購入したブースへ。前回はE. ellenbeckii、前々回はE. phillipsioidesなどを購入しました。今回もユーフォルビアを購入。ユーフォルビアは割とありましたが、たまたま手元にあるものばかりでした。
230521164922273
Euphorbia f. ルブリフォリア 
何のformaやねんという話ですが、見たまんまE. francoisiiというか、E. crassicaulisです。一般には、E. francoisii var. crassicaulis f. rubrifoliaと言われ、var. crassicaulisの葉の赤味が強いタイプとされますが、ただの園芸名のような気がします。ちなみに、E. francoisiiがE. decaryiとなったことから、E. francoisii var. crassicaulisはE. decaryi var. crassicaulisとなりました。しかし、2021年にはE. crassicaulisとなり独立しました。ということで、こいつはE. crassicaulisのより赤っぽいタイプです。


◎次に関西から参加のBaby leaf Plantsさん。最近はビッグバザールにもお越しです。ビッグバザールでは絶滅種のAloe bakeriを購入しました。今回はガステリアとグラスアロエを購入。原種アロエを唸るほど並べていましたが、Garteria ellaphieaeやAstroloba bicarinata(×Astrolista bicarinata)など、渋いラインナップもありましたね。
230521165003542
Garteria acinacifolia 
ガステリアは美しいものですが、あまり人気がないせいか見かけません。G. acinacifoliaは昔からある種類ですが初めて見ました。こんな風にガステリアはちまちま集めています。

230521165020125
Aloe thompsoniae
今回はアロエは買っても1種類と決めてきました。それで購入したのはこちら。アロエ感が少し弱い小型アロエです。花がかわいいみたいです。

◎お次はユーフォルビア苗を沢山持ってきているブースへ。ワンコインからの激安実生苗が沢山あって、ついつい沢山買ってしまいました。
230521165225291
Euphorbia ramena
塊根性花キリンです。葉の感じはE. boiteaui系ではなさそうですが、何に近縁でしょうかね?

230521165237612
Euphorbia granticola 
E. mlanjeanaに似たような柱サボテン状に育つようです。

230521165156170
Euphorbia suzannae-marnirae?
店主によると、国内のE. suzannae-marniraeとして流通しているのは、特徴的にはE. ambovombensisかもしれないとのことです。ただ、これはこれで面白いので購入。どう育つでしょうか? こんな小さな苗でも花が咲いていますが、私の育てているE. ambovombensisはそれなりのサイズなのに、全く花が咲かない不思議。

230521165110909
Euphorbia makayensis 
これには少し驚きました。2021年に記載されたばかりの花キリンです。そのせいか情報がほとんどありません。名前からすると、Pachypodium makayenseと同じマダガスカル南部のMakay山が産地でしょうか?

230521165130863
Euphorbia denisiana var. ankarensis
産毛がビロードのように生えていますね。何やら面白い形に育ちそうです。E. viguieri系ではなくてE. neohumbertii系のような気もしますが、どうでしょうか?


◎去年の冬の木更津C & FでDioon eduleとAloidendron ramossimumを購入したブースへ。今回はワンコインのサボテンを購入しました。
230521165409214
Gymnocalycium bayrianum
良い色合いのバイリアヌムです。1999年にはG. spegazzinii supsp. bayrianumとする意見もあったくらいですから、天平丸に近縁なのかも知れません。


◎最後に割と気になる変わった多肉植物があるブースへ。Monadeniumやユーフォルビアの珍種がありましたがお高いですね~。安価な2鉢を購入。
230521165249621
Euphorbia venefica
E. venenificaで通っていましたが、正しくはE. veneficaであることが分かりました。正しい名札がついています。

230521165302919
Fouquieria splendens
また、ついうっかりフォウクィエリアを買ってしまいました。フォウクィエリアはもう8種類になります。もう、何でも売っていますね。


230521180420073
メチャクチャ買いました。ユーフォルビア7、アロエ1、ガステリア1、ギムノカリキウム1、フォウクィエリア1。まあ、最近は花キリンが気になるので、うち5種類は花キリンですけどね。

今回はくじ引きがありましたが、あちこちでちょこちょこ買ったので引き換え券は1枚だけ。まあ、ハズレでしたが。しかし、皆さん偉い回数くじ引きしてましたが、いったい何万円分買ったのか、いやはや羽振りが良くて羨ましいですね。対して私は小さい実生苗をちょこちょこ買っただけです。
さて、今回の木更津C & Fは、ユーフォルビアやアロエも豊富で、サボテンも多く、コーデックスもあり、偏りがなくなかなかバランスの良いラインナップでした。あと、珍しくAstrolobaもありましたね。本物のHaworthiopsis fasciataが十二の巻と並んで売ってましたが、誰も気が付かないし誰も買わないような気がします。H. attenuataではない本物のH. fasciataは割とレアなんですけどね。
感想としましては、会場が広いのでビッグバザールと比較すると人の多さの割に混んだ感じがしませんでした。良いイベントですから、これからも続いて欲しいものです。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

先日、ワシントン条約で国際取り引きが規制されているアロエについての記事を書きました。もっとも厳しく規制される附属書Iに記載されたアロエはマダガスカル原産のものばかりです。何故なのでしょうか?

CITES2018のアロエ属についての記事はこちら。

調べたところ、2014年と少し古いのですが、マダガスカルのアロエの保全状況を評価した、Solofo E. Rakotoarisoa, Ronell R. Klopper & Gideon F. Smithの論文、『A preliminary assessment of the conservation status of the genus Aloe L. in Mdagascar』です。早速、見てみましょう。

マダガスカル島には128種類のアロエが自生しますが、すべて固有種であり限られた狭い分布と個体数が少ないことが特徴です。マダガスカルのアロエは、環境破壊と人間の活動の影響を受けやすいとされますが、その保全状況は良く分かっていませんでした。様々な情報を収集し分析すると、マダガスカルのアロエの約39%が何かしらの理由で脅かされており、懸念が少ないのは4%に過ぎませんでした。しかし、最大の問題は、マダガスカルのアロエの約50%は情報が乏しく評価出来ませんでした。つまり、マダガスカルのアロエの半数について、どれだけの種が絶滅の危機に瀕しているのか不明なのです。状況は考えられているよりも悪い可能性もあるのです。

幾つかの種類を除いて、マダガスカルのアロエの分布は非常に狭いことから、山火事や違法採取に対して脆弱です。ちなみに、マダガスカルからの園芸用植物輸出の86%はアロエです。
CITES2014の附属書Iに記載されている21種類のうち、17種類はマダガスカル原産です。その他のアロエも附属書IIに記載されています。また、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックに記載されているマダガスカルのアロエは、Aloe suzannaeとAloe helenaeで、ともに絶滅危惧種です。しかし、マダガスカルのアロエの保全状況が不明なため、完全なものとは言えません。

それでは、実際のマダガスカルのアロエの保全状況を見てみましょう。ここでは、保全状況を7つに分類しています。危機の度合いは①が高く⑥が低いという並びです。ここに名前がないマダガスカルのアロエは⑦の情報不足に入ります。

①絶滅種(EW)
1, A. oligophylla
2, A. schilliana
3, A. silicicola
 
②絶滅危惧IA類(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の可能性が極めて高いもの。
1, A. acutissima v. fiherenensis
2, A. calcairophila
3, A. descoingsii
4, A. fragilis
5, A. guillaumetii
6, A. helenae
7, A. hoffmannii
8, A. ivakoanyensis
9, A. mandotoensis
10, A. millotii
11, A. mitsioana
12, A. orientalis
13, A. suzannae
14, A. virgineae

③絶滅危惧IB類(EN)
絶滅の可能性が高いもの。
1, A. andringitrensis
2, A. antonii
3, A. antsingyensis
4, A. betsileensis
5, A. capitata v. angavoana
6, A. capitata v. capitata
7, A. capitata v. silvicola
8, A. cipolinicola
9, A. conifera
10, A. delicatifolia
11, A. deltoideodonta v. brevifolia
12, A. deltoideodonta v. intermedia
13, A. edouardii
14, A. erythrophylla
15, A. fievetii
16, A. gneissicola
17, A. isaloensis
18, A. laeta
19, A. leandrii
20, A. newtonii
21, A. parallelifolia
22, A. parvula
23, A. rauhii
24, A. rosea
25, A. sakarahensis
26, A. schomeri
27, suarezensis
28, A. trachyticola
29, A. versicolor
30, A. viguieri

 ④絶滅危惧II類(VU)
絶滅の危機が増大しているもの。
1, A. acutissima v. acutissima
         (ssp. acutissima)
2, A. acutissima v. antanimorensis
3, A. analavelonensis
4, A. bellatula
5, A. compressa
6, A. deltoideodonta v. candicans
7, A. haworthioides
8, A. ibitiensis
9, A. madecassa
10, A. perrieri
11, A. vaotsanda

⑤準絶滅危惧(NT)
現在は絶滅の可能性は少ないが、生息状況の変化によっては絶滅危惧種に移行する可能性があるもの。
1, A. antandroi
2, A. bakeri
3, A. bulbillifera
4, A. capitata v. quartziticola
5, A. deltoideodonta v. deltoideodonta
6, A. macroclada
7, A. socialis


⑥低危険種(LC)
絶滅の懸念は少ない。
1, A. beankaensis
2, A. divaricata ssp. divaricata
3, A. divaricata ssp. vaotsohy
4, A. imalatensis
5, A. occidentalis
6, A. vaombe

⑦情報不足(DD)
評価するための情報がないか少ない。

以上が論文の簡単な要約です。さて、見てお分かりのように、絶滅の可能性がある種がほとんどで、絶滅の懸念が少ない低危険種はたった6種類に過ぎません。マダガスカルのアロエの危機的状況が分かります。しかし、一番の問題は情報不足が半数種に及ぶことです。情報のない種はすでに絶滅、あるいはこの瞬間にも絶滅しかけているかもしれないのです。もし、保全をするにせよ、現在のアロエの詳しい情報が必要です。調査は急務でしょう。
問題はまだあります。マダガスカルのアロエは生息地が非常に狭いため、開発などにより一気に絶滅してしまう可能性があるということです。例えば、2014年のこの論文では、Aloe bakeriは準絶滅危惧種であり、現在は絶滅の可能性は少ないとされています。しかし、2010年のCastillonの報告によると、港湾や空港開発のためにAloe bakeriの分布する岩場が切り出されてしまい、すでに絶滅していたというのです。キュー王立植物園のデータベースでも絶滅したことが示されています。このように、マダガスカルではそれほど危機になかったアロエでも、一瞬で絶滅に追いやられてしまいます。正確な調査と保全が実施されることが望ましいのですが、口で言うほど簡単ではないでしょう。知らない間に、沢山のアロエが絶滅していたなんてことならなければいいのですがね。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

先日、ワシントン条約で規制されるユーフォルビアについての記事を書きました。CITES2018からユーフォルビアの項目を抜粋しましたが、CITESには他にも沢山の多肉植物が記載されています。今日はアロエについて見てみましょう。  

流通
アロエ属はサハラ以南のアフリカ、アラビア半島、マダガスカル及びアフリカ東海岸沖の島々に、様々な環境で500種類以上が自生します。また、多くの種が野生化し帰化植物と化し、一部は侵入種と見なされています。Aloe vera以外のアロエの全種類は、CITESの附属書に記載されています。

判別
小さな多肉植物から背の高い木本までアロエは様々です。花は黄色から赤色が普通です。ほとんどの種は葉の縁に沿って鋭いトゲを持ちますが、リュウゼツランの仲間に見られる葉の先端の鋭いトゲはありません。葉は茎の末端にロゼットを形成し、古い葉が枯れ葉の「スカート」を形成することがあります。葉は簡単に折ることができ、無色のゲル状の物質があります。これは、一部の種類では酸化すると黄褐色からオレンジ色に変わります。

分類学
CITESでは、アロエ属にはAloidendron、Aloiampelos、Kumara、Chortolirionを含んだものを示しています。

用途
アロエは様々な用途に使用されます。まず、観葉植物としての人気があり、乾燥地の造園に使用されます。取り引きされる主要なアロエ製品は、Aloe veraとAloe feroxの葉のゲルで、化粧品やサプリメント、食品、香料、医薬品まで多目的に使用されます。医薬品としては、その抗酸化作用と抗菌性を利用して、皮膚や消化器の病気に使用されます。Aloe veraによる製品の世界市場は130億米ドルに達したと推定されており、取り引き量の増加することにより、Aloe veraと誤って別種のアロエが使われてしまう可能性もあります。
アロエから取れる苦い黄褐色の樹液も国際的に取り引きされ、主にAloe feroxから採取されます。

商業
商業目的の附属書Iのアロエの国際取り引きは禁止されています。ただし、人工繁殖させた植物の商取引は許可されています。
人工繁殖した附属書IIのアロエは米国、中国、ドミニカから輸出され、日本やカナダに輸入されます。Aloe feroxは南アフリカとマダガスカルから輸出され、オランダとドイツに輸入されています。南アフリカのAloe feroxは野生植物が採取されており、過去10年間で560万トンが輸出されています。Aloidendronは日本で人工繁殖され、取り引きされています。

附属書 I
附属書Iは
絶滅の恐れのある種で、取り引きによる影響を受けている、あるいは受ける可能性があるものです。学術研究を目的とした取り引きは可能ですが、輸出国・輸入国双方の許可証が必要となります。以下の種類です。

1, Aloe albida

2, Aloe pillansii

DSC_1474
3, Aloe pollyphylla

4, Aloe vossii

DSC_0160
5, Aloe albiflora

6, Aloe alfredii

_20230121_200232
7, Aloe bakeri

8, Aloe bellatula

230918132713003
9, Aloe calcairophila

10, Aloe compressa

11, Aloe delphinensis

DSC_2319
12, Aloe descoingsii

231008152432701
13, Aloe fragilis

DSC_0170
14, Aloe haworthioides

15, Aloe helenae

16, Aloe laeta

17, Aloe parallelifolia

DSC_0129
18, Aloe parvula

19, Aloe rauhii

20, Aloe suzannae


以上は附属書Iに記載されたアロエです。しかし、実はアロエのかなりの種類は、実際に調査が行われていないことから、絶滅の可能性があるか判定できていません。そこら辺の話について早速論文を見つけましたので、明日記事にする予定です。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

いよいよ、木更津Cactus & Succulentフェアが21日(日曜日)に開催されます。毎回、出店数が増えて、南関東ではビッグバザールに次ぐ規模の多肉イベントに育ちました。私は東京駅から高速バスで会場に向かう予定です。


500円を事前に払えば10時から入場できますが、10時半からは無料で解放されます。私は毎回無料の時間帯です。まあ、どちらといえばバスの時間の都合で、10時に来れないだけだったりします。
そういえば、前々回は12月の寒空の中、東京駅の前でバスを待っていましたが、なんとバス停が東京駅の地下に移動しました。新しくなった東京駅の地下バスターミナルは、バスが来るまで室内で待つことができるので、非常に楽になりました。

過去を振り替えると、はじめての木更津C & Sは2021年の12月で、Euphorbia、Gymnocalycium、Aloe、Tulistaを買いました。今と購入傾向が変わってませんね。

2022年の5月のイベントは忙しく行けませんでした。しかし、12月のイベントは行けました。購入したのはEuphorbia、Gymnocalycium、Aloe、Dioonを買いました。やはり同じようなものばかり買ってますね。ここら辺は、冬に入手してあまり生長していていませんから、これからが楽しみです。

今回のイベントには、ビッグバザールでもお馴染みの、Ruchiaさんやラフレシアリサーチさんを始め、19もの出店があります。最近のビッグバザールで沢山の珍しいアロエを持ってきていたBabyleafplantsさんや、以前Tulistaを購入したSABOTEN TARO(今井カクタス)、他にもSABOSABO STORE、ISHII PLANTS NURSERY、山城愛仙園、LILWA、などなど盛り沢山です。ビッグバザールとは出店も異なるでしょうから、5月の木更津Cactus & Succulentフェアははじめてなので楽しみです。

そういえば、公式HPの高速バスについてのリンクは切れているみたいです。会場となるかずさアカデミアホールのHPから、交通アクセスのバス時刻表をクリックして見てください。東京駅から向かう場合は、東京鴨川線に乗ります。

かずさアカデミアホールHP
高速バスのHP

来場者が増えてくれればイベントは存続出来ますし、出店も増えるでしょうから、是非皆さんにも参加して欲しいのです。会場の様子は22日(月曜日)に記事にしますね。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年の夏に横浜のヨネヤマプランテイションで開催された「多肉植物BIG即売会」で、「パキポディウム・ロスラツム・ドラケイ」を入手しました。
あまり名前を聞かないパキポディウムですが、いったい何者なのでしょうか?

DSC_1585
Pachypodium rosulatum var. drakei

名前はカタカナ表記でしたが、つまりはPachypodium rosulatum var. drakeiということでしょう。しかし、現在var. drakeiは存在しません。まず、ロスラツムから見ていきます。
ロスラツムは1882年に命名されたPachypodium rosulatum Bakerです。2004年にJonas 
Lüthyはパキポディウム属を再構成し、ロスラツムを6亜種に分類しました。以下のものです。
P. rosulatum subsp. rosulatum
P. rosulatum subsp. bemarahense
P. rosulatum subsp. bicolor
P. rosulatum subsp. cactipes
P. rosulatum subsp. gracilius
P. rosulatum subsp. makayense


DSC_1718
Pachypodium rosulatum subsp. rosulatum

2013年に発表された『Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)』という論文では、パキポディウムの遺伝子を解析しています。この論文では、亜種rosulatumと亜種bemarahenseは確かに近縁ですが、他の4亜種はそれほどP. rosulatumに近縁ではなく、むしろP. densiflorumやP. brevicauleのグループと近縁でした。しかし、未だにこの論文の結果がデータベースに反映されてはいません。その理由は分かりませんが、遺伝子解析の精度なのかもしれませんし、あるいはP. densiflorumが複数種に別れる可能性の指摘が解決されていないせいかもしれません。

ところで、まったくvar. drakeiが登場しませんが、それは現在var. drakeiはP. rosulatum subsp. rosulatumと同種とされているからです。注意が必要なのは、var. drakeiはP. rosulatumの異名ではなく、亜種rosulatumの異名であることです。P. rosulatumとはすべての亜種を含んだ総称だからです。
var. drakei自体は、1907年に命名されたPachypodium drakei Costantin & Boisからはじまり、1972年(publ. 1973)にPachypodium rosulatum var. drakei (Costantin & Bois) Markgr.となりました。しかし、最終的には亜種rosulatumの異名とされました。

では、亜種rosulatumと比べてみましょう。上の画像では、亜種rosulatumも変種drakeiも、共に細長い葉を持つことが分かります。亜種rosulatumはそれなりに個体差はあるようです。しかし、変種drakeiの方がより細長い葉を持ち、葉の先端は尖りません。幹は亜種rosulatumは太くずんぐりとしていますが、変種drakeiは縦に細長いことが特徴です。どうやら、私の育てているものだけではなく、亜種drakeiは縦長に育つようです。高さも2~3mになり、P. rosulatum系では非常に大型です。このように、違いはそれなりにありますから、とりあえず名札は変種drakeiのままにしておきます。
パキポディウムは個体差が相当あることを考えたら、var. drakeiはその変異幅に入ってしまうのかもしれません。しかし、亜種bemarahenseがP. rosulatum系であることが遺伝的に解明されているように、変種drakeiが遺伝的にどうなのか気になるところです。今のところ、変種drakeiの遺伝子解析は行われていないようです。残念ながら2013年の論文以来、パキポディウムの遺伝子解析は大々的に行われていないようです。Lüthyの2004年の整理から20年近く経ちますから、そろそろ新しい見解が欲しいところです。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

ワシントン条約(CITES)とは、絶滅の可能性がある野生動植物の種の国際取引に関する条約です。主に野生動植物の保護を目的としています。多肉植物は様々な要因により絶滅が危惧される種が多く、ワシントン条約で取り引きが制限されているものもあります。今日はワシントン条約に関わるユーフォルビアについて見てみましょう。ちなみに、2018年発行のCITES2018を参考にしています。

ユーフォルビア属の概要
ユーフォルビア属は約2000種からなり、「spurges」の名前で知られています。草本のspurgesは世界中の温帯・熱帯に分布します。多肉植物であるspurgesは主に南アフリカと東アフリカの乾燥地帯、熱帯アジア、南北アメリカ、マダガスカルに自生します。CITESで規制されているspurgesは多肉植物のみです。

特徴
そのほとんどが1年草か多年草の草本ですが、多肉植物や木本も含まれます。すべての種類は切断すると乳液(latex)を出し、摂取すると毒性があり、皮膚には刺激性があります。多肉植物の葉は通常は少ないか落葉性です。しばしばトゲがあり、通常は対になります。花は色のついた苞葉という葉を含んだ花序からなり、派手ではありません。多くの多肉植物になるユーフォルビアはサボテンに似ています。

ユーフォルビアの利用
ユーフォルビアは世界中で利用されています。しかし、毒性があることから、食品や医薬品としての利用は制限される可能性があります。多肉植物となるユーフォルビアは、乾燥地の造園や観葉植物てして取り引きされます。各地の伝統医学である中医学、アーユルヴェーダ、ホメオパシーなどで利用されます。イボに対する薬、あるいは利尿・下剤としてE. antisyphilitica、E. candelabrum、E. lathyris、E. neriifolia、E. resinifera、E. tirucalli、E. trigonaなど、狩猟用としてE. cooperi、E. tirucalli、E. trigona、E. unispina、生きた柵(※1)としてE. tirucalli、E. miliiなどが利用されます。E. antisyphilitica(※2)から採取されるキャンデリラワックスは、ガムベース、インク、染料、接着剤、エマルジョン、ポリッシュ及び医薬品の製造に利用されます。観葉植物としてE. pulcherrima(ポインセチア)は一般的ですが、CITESでは規制されていません。
DSC_2491
Euphorbia resinifera

(※1) おそらくは家畜を囲う柵としての利用。例えば、E. poissoniiはギニア湾沿いで家畜の囲いとして広く利用されます。

(※2) キャンデリラソウ。北米原産で鉛筆状の茎を持ち叢生します。

取り引き
CITESのデータベースによると、ほとんどの取り引きは人工繁殖させた植物であり、E. lacteaとE. miliiはタイ、オランダ、中国から輸出されています。マダガスカルの野生のユーフォルビア属(Euphorbia spp.)とE. primulifoliaは、主にフランス、米国、ドイツに輸出されています。タイと米国は人工繁殖させた附属書Iのユーフォルビアの最大の輸出国であり、最大の輸出品はE. francoisii(※3)です。抽出物などの取り引きはメキシコ原産のE.antisyphiliticaで、過去10年間で3100万kgを超えます。

(※3) 現在はE. francoisiiはE. decaryiです。今までE. decaryiと呼ばれていた植物はE. boiteauiとされています。

多肉植物のコレクターはマダガスカルから多くの矮性種、東アフリカからは新種を含む希少種を求めています。現在、コレクターに人気な種は、E. horwoodii、E. longituberculosa(※4)、E. susannae-marnierae、E. waringiae、E. bupleurifolia、E. bongalavensis(※5)、E. knuthii、E. hydrotoides、E. kondoi、E. mahabobokensis、E. razafindratsirae(※6)が含まれます。

(※4) 正式にはEuphorbia longetuberculosa。誤った学名が流通しています。
DSC_1985
Euphorbia longetuberculosa

(※5) Euphorbia bongolavensisを指していると思われます。
DSC_1833
Euphorbia bongolavensis

(※6) この名前は現在異名とされ、Euphorbia mangokyensisとなっています。
DSC_1763
Euphorbia mangokyensis

附属書 I
附属書 Iがもっとも絶滅の可能性が高く規制が厳しい種です。主にマダガスカル原産の花キリンばかりです。
附属書 Iは絶滅の恐れのある種で、取り引きによる影響を受けている、あるいは受ける可能性があるものです。学術研究を目的とした取り引きは可能ですが、輸出国・輸入国双方の許可証が必要となります。以下の10種類です。

DSC_0109
1, E. ambovombensis

DSC_0241
2, E. cap-saintemariensis

DSC_0108
3, E. cylindrifolia
(ssp. tuberiferaを含む)

DSC_2352
4, E. decaryi(※3)
(var. ampanihyensis, var. robinsonii, var. spirostichaを含む)

DSC_2505
5, E. francoisii(※3)

DSC_0102
6, E. moratii
(var. antsingiensis, var. bemarahensis, var. multifloraを含む)

7, E. parvicyathophora

8, E. quartzicola

DSC_0113
9, E. tulearensis

10, E. cremersii
(f. viridifolia, var. rakotozafyiを含む)

以上がCITESのユーフォルビアについてのページです。マダガスカル原産の花キリンばかりです。
しかし、現時点なことを言うと、この10種類がもっとも絶滅の可能性が高いというわけではないかもしれません。何故なら、多肉ユーフォルビアは自生地の調査がなされていないものが多く、情報不足な種も多いこからです。
さらにいえば、花キリンはコレクターに好まれるため多く取り引きされるため、ワシントン条約で規制されます。しかし、多くの多肉ユーフォルビアは原産地の開発などにより数を減らしているため、国際的な取り引きに制限をかけるワシントン条約では、その絶滅を防ぐことは出来ません。例えば、南アフリカ国内で絶滅危惧種に指定されている種などは、ワシントン条約で規制されていませんが非常に希少です。CITESのみが希少性あるいは絶滅危惧種を指し示しているわけではないことは知っておく必要があります。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

雨が降ったり材料が足りなかったりで遅々と進まない多肉植物置き場の整備ですが、ようやくなんとか終わりました。前回の記事はこちらです。
さて、ハウォルチアの棚ですが、塩ビ管が足りなかったので再度購入しましたが、どういうわけか色が違います。同じやつがなかったので、まあ仕方ないのです
DSC_0386
前回同様に塩ビ管カッターで切って、塩ビ管用接着剤で連結していきます。

DSC_0387
不織布をかけて遮光します。不織布なんて透過率90%とかですから、逆にいえば遮光率10%いかないくらいなわけです。まあでも、この場所は1日間日が当たるわけではないため、この程度の遮光で十分だったりします。

DSC_0388
波板を乗せて針金で固定します。

DSC_0389
台風で動かないようにコンクリート・金属用接着剤で固定します。これで終わり。いや、こんな程度のことにグダグダ1ヶ月やってたわけで、まったく…

DSC_0391
多肉植物たちもすべて外に出せました。ほぼユーフォルビアの棚。

DSC_0392
ほぼユーフォルビアの棚。

DSC_0393
何だかんだ言って、こちらもユーフォルビアだらけの棚。

DSC_0394
ここはハウォルチア、ガステリアの棚。拡張して広くなりました。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年の秋に鶴仙園でフェロシオールというギムノカリキウムの苗を入手しました。強棘が特徴的ですが、フェロシオールとは何者でしょうか?

DSC_0390

フェロシオールの学名については、よく分かりません。というのも、一般的には碧厳玉の変種とされますが、碧厳玉自体の学名が、サイトによりGymnocalycium catamarcenseだったりGymnocalycium hybopleurumだったりするからです。フェロシオールはG. hybopleurum var. ferociorを指していると言われますが、G. catamarcenseの強棘タイプを変種ferox、さらに強いタイプを変種fercociorという意見も目にしました。取り敢えずは、キュー王立植物園のデータベースを漁って、出てきた名前を調べてみましょう。

①Gymnocalycium nigriareolatum
まずはG. catamarcenseから。G. catamarcenseは現在では、G. nigriareolatumの異名とされています。G. nigriareolatumの異名とされる学名を列挙してみます。ちなみに、亜種(subspecies)や変種(varietas)、品種(forma)は認められておりません。

1934年 G. nigriareolatum Backeb.
1987年 G. pugionacanthum
                                           Backeb. & H.Till
1995年 G. catamarcense H.Till & W.Till
              G. catamarcense
                subsp. acinacispinum
                                              H.Till & W.Till
              G. catamarcense f. belense
                                              H.Till & W.Till
              G. catamarcense f. ensispinum
                                              H.Till & W.Till
              G. catamarcense f. montanum
                                              H.Till & W.Till
              G. catamarcense
                         subsp. schmidianum
                                              H.Till & W.Till
1998年 G. nigriareolatum f. carmineum H.Till
              G. nigriareolatum var. densispinum
                                              Backeb. ex H.Till
              G. nigriareolatum var. simoi H.Till
2015年 G. schmidianum (H.Till & T.Till)
                                         Mereg. & Kulhanek
2017年 G. pugionacanthum
                                  var. stejskalii Milt

ここでは、fercociorの名前は出てきません。では、次にG. hybopleurumを見てみます。G. hybopleurumはG. monvillei subsp. monvilleiの異名とされているようです。まずはG. monvilleiについて見てみましょう。

②Gymnocalycium monvillei
G. monvilleiは1922年に命名されました。Gymnocalycium monvillei (Lem.) Pfeiff. ex Britton & Roseですか、この学名は1838年に命名されたEchinocactus monvillei Lem.から来ています。G. monvilleiは亜種monvillei+亜種achirasenseからなります。
・亜種achirasense

亜種achirasenseは1993年に命名されたGymnocalycium monvillei subsp. achirasense (H.Till & Schatzl) H.Tillです。亜種achirasenseの異名は以下の通り。

1987年 G. achirasense H.Till & Schatzl
1993年 G. monvillei subsp. achirasense
                      (H.Till & Schatzl) H.Till

              G. monvillei var. echinatum Neuhuber
              G. monvillei var. chacrasense
                                                     Neuhuber
              G. monvillei var. kainradliae Neuhuber
              G. monvillei var. orientale Neuhuber
              G. monvillei f. villamercedense
                            H.Till & Neuhuber
              G. monvillei
1995年 G. horridispinum var. achirasense
                          (H.Till & Schatzl) Lode
2009年 G. horridispinum
                             subsp. achirasense
                   (H.Till & Schatzl) G.J.Charles
2010年 G. achirasense var. chacrasense
                   (Neuhuber) V.Gapon
              G. achirasense subsp. echinatum
                  (Neuhuber) V.Gapon
              G. achirasense subsp. kainradliae
                  (Neuhuber) V.Gapon
              G. achirasense subsp. orientale
                  (Neuhuber) V.Gapon
              G. achirasense subsp. villamercedense
                  (H.Till & Neuhuber) V.Gapon
2016年 G. achirasense
                              subsp. chacrasense
                  (Neuhuber) Neuhuber & V.Gapon
              G. orientale (Neuhuber)
                   Neuhuber & V.Gapon
              G. orientale subsp. kainradliae
                   (Neuhuber) Neuhuber & V.Gapon
              G.orientale var. vikulovii
                     V.Gapon & Neuhuber

・亜種monvillei
亜種monvilleiは1993年に亜種achirasenseが出来たことにより、亜種achirasense以外を区別するために自動的に成立しました。ですから命名者はいません。学名はGymnocalycium monvillei subsp. monvilleiです。異名は以下の通りです。ちなみに、この場合「E.」はEchinocactusのことです。

1843年 E. ourselianus Monv.
1845年 E. multiflorus Hook.
1895年 E. ourselianus var. albispinus
                  Hand.-Mazz. ex Pax & K.Hoffm.

1898年 E. multiflorus var. albispinus K.Schum.
              E. multiflorus var. hybopleurus
                                K.Schum.
              E. multiflorus var. parisiensis K.Schum.
1907年 E. 
brachyanthus Gurke 
              E. multiflorus f. albispinus

                              (K.Schum.) Schella
              E. multiflorus f. parisiensis
                              (K.Schum.) Schella
1918年 G. multiflorum (Hook.) Britton & Rose

1922年 G. brachyanthum (Gurke) Britton & Rose
1929年 G. curvispinum Fric
1935年 G. multiflorum var. albispinum P.Fourn.
              G. multiflorum var. hybopleurum P.Fourn.
              G. multiflorum var. parisiensis P.Fourn.

1936年 G. grandiflorum Backeb.
              G. hybopleurum (K.Schum.) Backeb.
1957年 G. ourselianum (Monv.) Y.Ito

1966年 G. hybopleurum var. breviflorum
                   Backeb., not validly publ.
              G. hybopleurum var. centrispinum
                   Backeb., not validly publ.
              G. hybopleurum var. ferocior     
                   
Backeb., not validly publ.
1981年 G. schuetzianum H.Till & Schatzl
1990年 G. monvillei var. grandiflorum
                            (Backeb.) H.Till
              G. monvillei var. steineri H.Till
1993年
G. monvillei subsp. monvillei
                       G. monvillei subsp. brachyanthum
                                   (Gurke) H.Till
              G. monvillei var. gertrudae Neuhuber
1999年 G. monvillei var. coloratum Neuhuber
              G. monvillei var. confusa Neuhuber
              G. monvillei subsp. gertrudae
                           (Neuhuber) Neuhuber

2005年 G. megalothelon var. susannae H.Till
2006年 G. ambatoense subsp. plesnikii
                                Halda & Milt
2007年 G. multiflorum var. ourselianum
                         H.Till & W.Till
2009年 G. monvillei var. safronovii V.Gapon
2015年 G. schmidianum subsp. asperum
                       Mereg. & Kulhanek
2018年 G. ourselianum (Monv.) Papsch


ありました。1966年にG. hybopleurum var. ferociorが命名されています。しかし、「not validly publ.」とあります。これは、学術的な正式な記載ではないということです。もしこの学名が正式な記載であったとしても、1838年に命名されたE. monvillei Lemが一番早く命名されているため、いずれにせよ異名です。
ということで、フェロシオール(フェロキオル)とはGymnocalycium hybopleurum var. ferociorのことであり、現在はGymnocalycium monvillei var. monvilleiの異名とされています。では、変種feroxとは何でしょうか? せっかくですから見ていきましょう。

③Gymnocalycium castellanosii
G. hybopleurum系は基本的にG. monvilleiの異名ですが、そうではないものもあります。結論から言えば変種feroxとは、G. hybopleurum var. feroxを指します。しかし、変種feroxはG. monvillei系ではなく、G. castellanosii系とされているようです。
G. castellanosiiには、亜種ferociusと亜種castellanosiiがあります。

・亜種castellanosii
亜種castellanosiiは2005年に亜種ferociusが出来たことにより、亜種fercocior以外を区別するために自動的に成立しました。ですから命名者はいません。学名はGymnocalycium castellanosii subsp. castellanosiiです。異名は以下の通りです。

1966年 G. hybopleurum var. ferox
                        Backeb., not validly publ.

1977年 G. bozsingianum Schutz
1984年 G. ferox (Backeb.) Slaba,
                                     not validly publ.
1993年 G. castellanosii var. armillatum Piltz
              G. castellanosii var. bozsingianum
                                        (Schutz) Piltz
2005年 G. castellanosii subsp. castellanosii
2006年 G. castellanosii var. bozsingianum
                     (Schutz) Amerh. & H.Till
              G. castellanosii var. rigidum H.Till
2008年 G. castellanosii subsp. armillatum
                                 (Piltz) Papsch


ここで変種feroxが出てきました。G. hybopleurumの変種とされていますが、G. feroxという名前もあるようですが、G. hybopleurum var. feroxに由来するようです。しかし、共に「not validly publ.」、つまり有効に公開されていない名前です。
また、データベースにはありませんが、1984年にG. ferox var. ferocior (Backeb.) Slaba, nom.inval. basionym not validly publ.という名前も存在するようです。こちらは、「nom.inval.」、つまり規約に従っていない無効名という意味です。しかし、同じG. hybopleurum系ということで、変種ferociorと変種feroxが繋がりました。とはいえ、現在はまったくの別種とされています。

・亜種ferocius
亜種ferociusは2005年に命名された新しいものです。学名は2005年に命名されたGymnocalycium castellanosii subsp. ferocius (Backeb. ex H.Hill & Amerh.) G.J.Charlesです。2002年に命名されたGymnocalycium mostii subsp. ferocius Backeb. ex H.Hill & Amerh.から来ています。

そういえば、亜種フェロシウス(フェロキウス)をフェロシオールと表記しているサイトもありました。案外、フェロシオールの名前で販売されているものは、G. castellanosii subsp. ferociousなのかもしれません。しかし、残念ながら私はこのあたりについては、まったく詳しくありません。画像検索してみてもよく分かりません。実際に育ててみないと違いは分からなそうです。ネット画像は混同が起きている可能性があり、やや怪しいところです。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

神奈川県川崎市にあるタナベフラワーで、国際多肉植物協会主宰の多肉植物即売会「Succulent Station 宮崎台」が開催されました。昨年も秋に開催されており、私も硬葉系ハウォルチアやガステリアを購入しました。会場のタナベフラワーだけではなく、幾つか出店もあります。今日は国際多肉植物協会、Succulent Connection、growing jorney、たにっくん工房、X-PLANTSが参加とのこと。
本当は土曜日に行くつもりでしたが、最近寒暖の差が激しいせいか風邪をこじらせてしまい体調が悪かったため、昨日は何もせず1日安静にしていました。しかし、大人しくしていたせいか今日は体調が良いので、ちょいと見に行きました。

電車で行きましたが、東急田園都市線の宮崎台駅から徒歩10分くらいです。行き方は簡単です。宮崎台駅の南口を出て左の坂道を下って行きます。
DSC_0377
宮崎台入口という信号がある丁字路にぶつかったら右折します。

DSC_0378
長坂下という信号のある丁字路を渡り右折して、川沿いを進みます。

DSC_0379
高架が見えてきたらそろそろ到着です。

DSC_0380
ここを左折してすぐがタナベフラワーです。

DSC_0381
到着。

野外イベントで、しかも今日は雨の予報にも関わらず中々の人手でした。ビッグバザールほどの人混みはありませんが、活気がありましたね。
まずは出店しているところから。
X-PLANTSさんはコーデックスを沢山持ってきていました。Euphorbia gorgonisの苗も沢山ありました。Succulent Connectionさんは美しいハウォルチアほか、少し珍しい多肉植物や割と安価なコーデックス苗も並んでいました。未だに珍しいE. tulearensisの苗が沢山ありました。たにっくん工房さんは多種多様な多肉植物があり、私も2つほど購入。
DSC_0383
Euphorbia confinaris
E. confinaris subsp. rhodesiacaを育てているので、E. confinarisも欲しかったので購入。

DSC_0382
Haworthia attetnuata f. tanba
アテヌアタはタイプ違いを見るとついつい買ってしまいます。しかし、いくら珍しかろうがアテヌアタはアテヌアタなので安いのが救いです。東ケープ州のEnonで発見された矮性品種。現在はHaworthiopsisです。

会場のタナベフラワーさんは、温室を3つ公開しています。1つはエケベリアやセダム、2つ目はハウォルチアとエケベリア、3つ目はその他でサボテン、パキポディウム、ユーフォルビアなどがありました。また様々なサンセベリアが結構入っていたみたいです。軟葉系ハウォルチアもかなりの数でしたが、詳しくないのでよく分かりません。ギガスは少し気になりましたが、軟葉系は買わないと決めてきたので断念。しかし、硬葉系ハウォルチアがこれほど大量に見られることは少ないため楽しみにしていましたし、価格もそこいらの園芸店の半額以下でしたね。購入品は2つ。

DSC_0384
リミフォリア
Haworthiopsis limifoliaです。硬葉系ハウォルチアです。選抜品と異なり、見た通りあまり美形ではありませんが、野趣溢れる私の好みなタイプです。

DSC_0385
Euphorbia iharanae
花キリンの仲間です。独特な花が咲いていますね。似ていますが噴火竜E. viguieri系ではなく、噴炎竜E. neohumbertiiに近縁です。持ち帰るのにビニール袋に入れて縛ったので、葉がしわくちゃです。E. neohumbertiiと異なり、葉の表面に産毛が生えていますね。


エケベリアは相変わらず人気で、お店の人とのやり取りで、もう売れちゃったなんて話が聞こえてきました。いま、一番盛り上がっているアガヴェもあり、新品種はかなりの高額で取り引きされているようです。しかし、私の好きなユーフォルビアや硬葉系ハウォルチアは売れ筋ではないため、慌てて買わなくても大丈夫ですからそこは良いところです。まあ、売れ筋ではないため、あまり売っていない訳ですけどね。
今回はかなりけちったので、他にも気になるものはありましたが断念しました。しかし、結構バラエティー豊かで良いイベントでした。去年の秋より温室も充実していました。秋にもまた開催されるでしょうか?
さて、来週はいよいよ木更津Cactus & Succulentフェアが開催されます。まだ、4回目の開催ですが、回を重ねる毎に出店数もどんどん充実しています。私も体調が良ければ見に行くつもりです。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年、五反田TOCビルで開催されたサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Gymnocalycium pseudoquehlianumなるサボテンを入手しました。聞いたことがない名前なので勢いで購入しましたが、後にキュー王立植物園のデータベースで検索しても情報がないため、ずっとモヤモヤしていました。G. pseudoquehlianumとはいったい何者なのでしょうか?
インターネットで検索してもほとんどヒットせず、稀にサボテンの種類のリストが書かれたサイトに名前があるくらいです。要するに、名前以外の情報はありません。育てているものの情報がないと言っている人はいましたが…

DSC_0375
Gymnocalycium pseudoquehlianum

さて、とあるサボテンの名前を羅列しただけの海外のサイトに、気になることが書いてありました。「Gymnocalycium pseudoquehlianum n. n. zit. in Metzing - checklist, 1995」とあります。これはどういう意味でしょうか? 通常は学名の表記は「属名+種小名」、あるいは「属名+種小名+命名者」です。学術誌の場合、「属名+種小名+命名者」に続いて「論文が掲載された学術誌名、号、ページ、発行年」まで表記されます。サボテンのリストは基本的に後者のフルバージョンの記載でした。しかし、G. pseudoquehlianumはその形式に乗っ取っていません。何故なのでしょうか?
取り敢えず分かることは、G. pseudoquehlianumが裸名であることです。それは、学名の後の「n. n.(nom. nud.)」のことですが、学術的に正式な記載がなされていないことを示しています。では後半の「Metzingの1995年のチェックリスト」とは何でしょうか?

色々とあたったところ、どうやら「Allionia」という雑誌の33号、181~228ページに掲載された1995年の論文、『An annotated checklist of the genus Gymnocalycium Pfeiffer ex Mittler (Cactaceae)』を指していることが分かりました。著者はDetlev Metzing, Massimo Meregalli, Roberto Kieslingです。何が書かれているでしょうか?

表題は「ギムノカリキウム属の註釈つきチェックリスト」ですか、様々なギムノカリキウム属の種類について解説しています。肝心のG. pseudoquehlianumですが、末尾の「Catalogue names.」の項目にありました。解説としては「主に貿易リストと名前のリストに登場し、nomina nuda(裸名)です。」とあります。とにかく沢山の名前が羅列されており、個々の解説はありませんでした。要するに、園芸用の名前であり、おそらくは業者が勝手に学名風に命名したのでしょう。裸名の植物は原産地の情報もありませんから、それが未知の種なのか交配種なのかすら不明です。もし、未知の種だとしても、業者の採取ですから元を辿るのは非常に困難です。もし、採取者が判明しても、フィールドナンバー付きの植物とは異なり、いちいち細かい情報を残してはいないでしょう。まあ、密貿易や違法採取が元になっている可能性すらありますから、その場合は情報どころではありませんね。いずれにせよ、何も分からないのです。

今分かることは、おそらくは業者による「pseudoquehlianum」という名前だけです。「pseudo-」とは「偽の」という意味ですから、当然G. quehlianumに似ているということなのでしょう。私の入手したG. pseudoquehlianumはまだ小さいせいか、G. quehlianumにはそれほど似ておらず、特徴もまだはっきりしません。今後の生長を見守っていきます。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

私の好きなギムノカリキウムの何か良い論文はないかと探っていたところ、Urs Eggli & Detlev Metzingの1992年の論文、『(1045)Proposal to Conserve the Orthography of 5408a Gymnocalycium Pfeiffer ex Mittler 1844 (Cactaceae)』を見つけました。しかし、残念ながら有料の論文で読めません。タイトルはギムノカリキウム属の名前を保存するための提案です。これはいったいどういう意味でしょうか? まあ、結局は読まないと何も分からないことが分かりました。試しにギムノカリキウムについて学名を少し調べてみましたが、何も分かりません。しかし、調べていくうちに余計なことに興味が目移りして、脱線を繰り返して無駄に情報が溜まってしまいました。特に意味はないのですが、だらだら情報を開陳していきたいと思います。

★Gymnocalycium Pfeiff. ex Mittler

Gymnocalycium属は1844年に創設されました。しかし、実際には1920年代くらいまではあまり使われず、新種はEchinocactusとして命名されていました。それはそうと、1944年に初めて命名されたGymnocalyciumは何でしょうか? ざっと調べた限りでは3種類見つかりました。それは、G. denudatum、G. gibbosum、G. reductumです。

①Gymnocalycium denudatum
              (Link & Otto) Pfeiff. ex Mittler
1つ目はデヌダツムです。1828年に命名されたEchinocactus denudatus Link & Ottoが1844年にGymnocalyciumに移されました。ちなみに、1837年にはCereus denudatus Pfeiff.と命名されたこともあります。種小名の末尾が変わっていますが、属が変更された場合によくあることです。また、1907年に至ってもEchinocactus denudatus f. octogonus (K.Schum.) Schellaが命名されており、Gymnocalyciumの浸透の悪さが分かります。

そういえば、Echinopsis denudatus (Pfeiff.) Bosseという名前も1860年に命名されていますが、何故かHomotypic Synonymではなく、Heterotypic Synonymとされています。これは異名の種類の話で、現在の正式な学名につながる名前はHomotypic Synonym、つながらない名前はHeterotypic Synonymです。G. denudatumの場合、基本的には「denudatum」あるいは「denudatus」という種小名がついたものはG. denudatumにつながる正式な学名の系統です。例えば、1898年に命名されたEchinocactus megalothelon Sencke ex K.Schum.は、G. denudatumを指しているものの種小名が異なるためHeterotypic Synonymとされます。では、Echinopsis denudatusはなぜHomotypic Synonymではなく、Heterotypic Synonymなのでしょうか? それは、おそらく正しく引用されていないからでしょう。属名を変更する際は前の学名を引用して、この論文でこの人が命名した学名を変更しますと説明する必要があります。「denudatum」あるいは「denudatus」系の種小名はEchinocactus denudatus Link & Ottoから始まりますから、引用するなら1828年のLink & Ottoを引用するべきです。しかし、Echinopsis denudatusはPfeifferを引用してしまっています。そのため、Heterotypic Synonymとされてしまったのでしょう。

②Gymnocalycium gibbosum
                 (Haw.) Pfeiff. ex Mittler
2つ目はギボスムです。1816年に命名されたCactus gibbosus Haw.、1826年にはCereus gibbosus (Haw.) Sweet、1828年にはEchinocactus gibbosus (Haw.) DC.と変遷がありました。
また、G. gibbosumには2005年に亜種が出来ました。G. gibbosum subsp. borthiiです。この亜種borthiiと区別するために自動的に亜種ギボスム、つまりG. gibbosum subsp. gibbosumも出来ました。この場合、亜種gibbosum+亜種borthii=G. gibbosumですから、亜種gibbosum=G. gibbosumではないので注意が必要です。さて、亜種gibbosumには異名が沢山ありますが、その1つが1903年に命名されたEchinocactus spegazzinii F.A.C.Weber ex Speg.です。天平丸=Gymnocalycium spegazzinii Britton & Speg.を連想させますが、まったく無関係という訳でもありません。天平丸を少しだけ調べてみましょう。 早くも脱線します。

天平丸は1922年にG. spegazzinii Britton & Roseと命名されていますが、少し奇妙なことがあります。一番最初の名前は1905年に命名されたEchinocactus loricatus Speg., nom. illeg.です。1925年にはGymnocalyciumに移され、Gymnocalycium loricatum Speg.となりました。しかし、なぜわざわざG. spegazziniiと命名したのでしょうか? E. loricatus→G. loricatumの系統で良い気がします。ヒントはE. loricatusの最後に付けられた「nom. illeg.」です。これは非合法名といい、命名規約の規則に従っていない部分があるということです。その理由は分かりませんが、記載に問題があったことは明らかです。さらに言うならば、Echinocactus loricatusという学名は他のサボテンにも命名されており、しかもそちらの方が命名が早いので、いずれにせよGymnocalycium loricatumは成立しえない学名です。そして、非合法名を根拠としたG. loricatumもまた認められないのです。
ちなみに、先に命名された「loricatus」は1853年に命名されたEchinocactus loricatus Poselg.で、現在のCoryphantha pallida subsp. pallidaの異名です。しかし、思うこととして、もしEchinocactus spegazziniiがGymnocalycium spegazziniiとされていたら、天平丸の学名はG. spegazziniiではなかっただろうということです。1920年代はEchinocactusからGymnocalyciumへの移行が進んでいたので、あり得ないシナリオではなかったはずです。

③Gymnocalycium reductum
                 (Link) Pfeiff. ex Mittler
3つ目はレドゥクツムです。1822年に命名されたCactus reductusが1844年にGymnocalyciumに移されました。しかし、よく調べると、1812年にCactus nobilis Haw., nom. illeg.が命名されています。しかし、これは非合法名です。実はCactus nobilisという学名はどういうわけか、様々な人により命名されています。命名が古い順に、1771年のCactus nobilis L., nom.superfl.(=Ferocactus latispinus subsp. spiralis)、1785年のCactus nobilis Lam., nom.illeg.(=Melocactus intortus)、1812年のCactus nobilis Haw., nom.illeg.(=Gymnocalycium reductum subsp. reductum)、1891年のCactus nobilis (Pfeiff.) Kuntze, nom.illeg.(=Mammillaria germinispina)がありました。すべて現存しない学名で、括弧の中が現在の学名です。しかし、1771年のvon Linneの命名は非常に古いにも関わらず、「nom.superfl.」とあります。これは、それより早く公開された同じ名前があるというのですから不思議です。調べて限りではこれより古い学名は見つかりませんでした。なにやら気になりますね。

とまあ、時代によりGymnocalyciumはEchinocactusだったりCereusだったりしますが、ギボスムやレドゥクツムに最初に付けられたCactus属とは何者でしょうか?

★Cactus L.

現行の学名のシステムは1753年にCarl von Linneにより作られましたが、Cactus属はその1753年にvon Linneにより命名されました。おそらく、当時知られていたサボテンはすべてCactus属だったのでしょう。結局、Cactus属から様々な属が独立し、最終的には消滅した現存しない属です。実はCactus属は現在Mammillariaの異名とされています。最初に命名されたサボテンは後のMammillariaだったのかもしれません。少し調べてみましょう。ただし、1753年のvon Linne以降もCactus属は命名され続けたので、膨大な種類があります。さすがにそのすべてとはいきませんが何種類か見てみましょう。

やはり、1753年当時に知られていたサボテンはすべてCactus属だったようです。様々なタイプのサボテンが所属していました。どうやら、団扇サボテンと柱サボテンが多かったみたいです。例えば、団扇サボテンではCactus tuna L.(=Opuntia tuna)、Cactus opuntia L.(=Opuntia ficus-indica)、Cactus cochenillifer L.(=Opuntia cochenillifera)、Cactus curassavicus L.(=Opuntia curassavica)、Cactus moniliformis L.(=Consolea moniliformis)などがあり、柱サボテンはCactus hexagonus L.(=Cereus hexagonus)、Cactus pervianus L.(=Cereus repandus)、Cactus heptagonus L.(=Stenocereus heptagonus)、Cactus pentagonus L.(=Acanthocereus tetragonus)、Cactus lanuginosus L.(=Pilosocereus lanuginosus)、Cactus royenii L.(=Pilosocereus polygonus)などがあります。他にも、Cactus pereskia L.(=Pereskia aculeata、杢キリン)、Cactus phyllanthus L.(=Epiphyllum phyllanthus)、Cactus triangularis L.(=Selenicereus triangularis) 、Cactus grandiflorus L.(=Selenicereus grandifloras、大輪柱、夜の女王)、Cactus flagelliformis L.(=Aporocactus flagelliformis、金紐)などもあります。また、玉サボテンはあまりないようで、Cactus melocactus L.(Melocactus caroli-linnaei)、Cactus mammillaris L.(=Mammillaria mammillaris)は見つけました。こんな状態で、なぜMammillaria属が旧Cactus属を代表しているのかは、よく分かりません。不思議ですね。

★Cereus Mill.
ついでに現在では柱サボテンが所属するCereusについても調べてみました。なんと、Cereus属はvon Linneが学名のシステムを作った翌年、1754年に命名されています。では、1754年に命名された種類はなにかと思い調べてみましたが、何故か見つかりません。不思議なことに、Cereus属の命名者であるPhilip Millerにより命名され認められた最初の学名は1768年でした。この14年のブランクにはどのような意味があるのでしょうか?
 

取り敢えず、Cereus属の基本的な情報から。1768年にMillerにより命名されたCereusは、現在ほとんど存在しません。別の属になりCereus名義の学名は異名となっています。すべて調べた訳ではありませんが、1768年に命名されたCereusたちは、現在Selenicereus、Stenocereus、Aporocactus、Harrisia、Pilosocereusなどになっているようです。現存するMillerが命名したCereusは、Cereus hexagonusやCereus repandusくらいかもしれません。どうにも歯切れが悪い言い方なのは、Cereusは異名だらけで数百種類あり、とてもではありませんがすべてを調べることは出来なかったからです。ちなみに、現在のCereusは30種くらいの小さな属です。

_20230511_222604
「The Gardeners Dictionary」

さて、では命名年の謎に迫ります。1754年にPhilip Millerが出版した『The Gardeners Dictionary』を見てみましょう。そこでは、Cereusは13種類が解説されています。しかし、学名はよく分かりません。というのも、「CEREUS」という名前は使われていますが、種小名がありません。ラテン語で特徴を羅列しているだけです。つまり、当時記載された13種が現在の何というサボテンに該当するのかがよくわからないのです。まとめると、Cereusという属名は提案されましたが、von Linneのシステムに乗っ取っていないため、1754年に命名された13種は認められなかったようです。

★Echinocactus Link & Otto
Echinocactusは1827年に命名されました。しかし、そのうち現在残っているのはEchinocactus platyacanthus Link & Ottoだけみたいです。同じく1827年に命名されたEchinocactus acuatus Link & Ottoは、現在Parodia erinaceusとなっています。


長々と書き連ねて来ましたが、まあこんな感じです。元は何の話だったのかすっかり忘れてしまい、あちらこちらと脱線しながら調べました。まあ、興味の赴くままの実にまとまりのない話です。
しかし、少し調べただけで、サボテンの学名は謎だらけでした。なんとなく分かるものもありますが、まったく分からないものもあります。ごく稀にこういった細かい部分を調べあげた論文もありますが、私のようにただ検索するだけではなく、実際の関係する論文をすべて読み込んでいるわけですから大変な労力が必要です。しかし、サボテンの学名はその異名の多さが物語るように、古い時代の学名には何かしらの問題を抱えていることは珍しくありません。調べられていないだけで、今後訂正が必要な名前のサボテンも沢山あるのでしょう。面白そうな論文がありましたら、ご紹介出来ればと思います。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

植物にも病気になるものがあり、場合によっては病気が原因で枯れてしまうこともあります。症状は様々で、その原因も様々です。植物の病原菌の大半は真菌、細菌、ウイルスが原因です。真菌とはカビやキノコの仲間のことですが、その多くは落ち葉や動物の遺骸を腐らせ分解しますが、一部は生きた植物に感染します。植物寄生性の細菌は葉に茶色い斑点を作ったりしますが、このような斑点は生理障害や葉焼けなどが原因の場合もあります。植物にウイルスが感染すると、葉に斑模様が現れ花が縮れるなどの症状が現れます。昔はこのようなウイルス斑が入った植物を珍しがって高値で取引されたこともあります。
さて、このような植物に感染する病原菌に興味を持ち何冊かの本を読んだりしましたが、2019年に非常に良い本が出版されたのでご紹介します。日本植物病理学会による『植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース』(講談社ブルーバックス)です。少しだけ内容を見てみましょう。

_20230509_225603

植物は動けないからといって無抵抗な訳ではありません。まず、植物の葉には病原菌から見ると非常に分厚いクチクラ層や細胞壁があり、簡単に侵入することは出来ません。いったいどのように侵入しているのでしょうか?
まず、カビから見ていきましょう。カビは付着器という器官を持ち、そこから穴を開けて侵入します。穴を開ける仕組みも巧妙です。付着器には粘性の高いグリセロールが溜まっており、水が流入すると膨れ上がります。その圧力は自動車のタイヤの空気圧の40倍にもなるそうです。その高い圧力で葉の表面に穴を開けているのです。
次に、非常に小さな細菌では葉に穴を開けることば出来ませんから、植物の気孔から侵入します。植物は光合成のために二酸化炭素を取り込まなくてはならないため、気孔という穴を開閉する必要があります。しかし、気孔は細菌を感知すると閉じてしまうのだそうです。そのため、細菌は植物ホルモンの類似物質や様々な毒素を分泌して気孔を開かせるのです。


植物はただ硬くなるだけではありません。病原菌に侵入を許したとしても、様々な防御機構があります。
その1つが、ファイトアンティシピンと呼ばれる抗菌性の化学物質群です。常に存在するものや、病原菌の侵入により活性化するものなど様々です。ファイトアンティシピンとして有名なのは、お茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールです。しかし、病原菌はファイトアンティシピンを分解する物質を作って対抗するものもあります。
また、植物は病原菌に攻撃されると、様々なタンパク質を分泌します。例えば、17のタイプがあるPRタンパク質は、カビの細胞壁の成分であるキチンやグルクンを分解するキチナーゼやグルカナーゼといった酵素や、カビや細胞に抗菌性を示すディフェンシンやチオチン、卵菌に抗菌性を示すPR-1やソーマチン様タンパク質、ウイルスに対するリボヌクレアーゼなど様々です。

さらに、極端な植物の防衛策として、過敏感反応があります。過敏感反応は病原菌の周囲の植物の細胞が自ら死を選び、自分もろとも病原菌に対抗する反応です。これは、生きた細胞内でしか生きられないような、完全に寄生性の病原菌には非常に有効です。しかし、毒素を撒き散らしながら組織を浸潤するような病原菌の場合、逆に病原菌が活性化してしまいます。

思いもよらぬ対抗策もあります。実験用の植物の細胞の内外の糖分の出し入れに関わるタンパク質に変異がが入った場合、何故か細菌に感染しやすくなることがわかりました。詳しく調べると、細菌に感染するとこのタンパク質は活性化して急速に糖分を細胞内に吸収します。細菌は細胞内ではなく細胞の間に潜むため、細胞外の糖分が失くなると栄養分が足りなくなります。ある種の兵糧攻めのようなものです。

以上はごく一部の要約です。実際には詳しいメカニズムも解説されます。さらに言うならば、以上の話は本の前半のみの内容です。これ以上に激しい植物と病原菌とのせめぎあいがあります。
しかし、どうやら植物の病原体は環境中にいくらでもおり、動かない植物ですが常にそれらの病原体と激しい攻防を繰り返しているようです。この本を読んで、私の持っていた植物のイメージは完全に変わってしまいました。大変、勉強になる本ですのでぜひ一読してみて下さい。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

アロエの多くは、長い管状の橙・赤系統の花を咲かせ、蜜を求めて訪れた鳥により受粉する鳥媒花と考えられています。また、一部のアロエは比較的短い管状の白色かクリーム色の花を咲かせますが、これらは昆虫により受粉する虫媒花とされます。
_20230222_235018
Aloe parvula

DSC_2432
Aloe albiflora

しかし、実際に観察や受粉の確認を調査されたアロエは少ないのが現状です。過去の研究は非常に重要な知見ですが、それを証拠に未調査のアロエについて語ることは果たして出来るのでしょうか? 私は一部の結果からすべてを結論付けることは非常に危ういと思います。ですから、花粉媒介のシステムについて何か面白い論文はないか探ってみました。見つけたのが、C. Botes, P. D. Wragg, S. D. Johnsonの2009年の論文、『New evidence for bee-pollination systems in Aloe (Asphodelaceae: Aloideae), a predominantly bird-pollinated genus』です。

一般的にアロエの受粉には鳥が重要であり、蜜蜂はアロエの受粉に寄与しない、いわゆる蜜泥棒(盗蜜者)とされています。しかし、著者らは蜜蜂とアロエの関係を見直しています。論文で観察されたのは、淡いピンクがかったクリーム色の花を咲かせるAloe minimaと、明るい緑がかった黄色の花を咲かせるAloe linearifoliaです。自生地はアロエの蜜を訪れる太陽鳥が複数種分布する地域だそうです。
さて、まずは実験的にこれらのアロエの花を自家受粉させてみましたが、ほとんど種子は出来ませんでした。次にアロエを網で覆い鳥が入れない状態にした場合、蜜蜂は網目から侵入しアロエの蜜を吸いました。この場合は鳥の受粉への影響がない状態ですが、アロエは種子が出来ました。さらに、自家受粉はほとんどしないことも確認済みですから、これらのアロエは蜜蜂により受粉していることが明らかになったのです。
ということで、著者らは考えられていた以上にアロエの受粉には蜜蜂が重要かも知れないとしています。
花の特徴を調べたところ、2種類とも花は紫外線を反射しました。動物は目で捉えられる波長が異なるため、紫外線を見ることが出来る昆虫にとっては、紫外線の反射は意味があるようです。また、これらのアロエの花は揮発性物質を放っており、その香りは人間の鼻でもわかる強さです。香りはテルペノイドとベンゼノイドが主要なものでしたが、A. minimaは6種類、A. linearifoliaは実に17種類の香り物質が検出されました。実際にA. linearifoliaの方が香りは強いそうです。このような花の特徴は虫媒花の特徴とされているようです。


以上が論文の簡単な要約です。以前にも記事にしましたが、Aloe feroxの花の受粉は主に蜜を吸う専門家である太陽鳥ではなく、蜜を専門としない日和見の鳥が受粉の主体であるという面白い結果でした。この時、蜜蜂は受粉に寄与しないことが確認されています。しかし、Aloe feroxは巨大アロエであり、むしろ特殊な例かもしれません。この論文からは、多くの中型~小型アロエの受粉に蜜蜂が関与している可能性すらあるのです。今後、もっと沢山の種類のアロエの受粉について調査がなされるべきでしょう。
また、論文で調査されたクリーム色や薄い黄色などの淡い色合いで香りがある花には、一般的に蛾が訪れる蛾媒花が多い傾向があります。夜間の調査も必要ではないかと感じました。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

まだ外に出せていない多肉植物があったので、慌てて出しました。また、新しい多肉植物置き場を作る予定でしたが、そちらも進めます。
まずは、ユーフォルビア置き場です。こちらは、ミニフレームの骨組みを利用しています。まあ、実際には大失敗でした。なにやら骨組みがしっかり固定できず、直ぐに抜けちゃうんですよね。付属のビニールを被せると安定するみたいです。しかし、いやはや困った…。仕方がないので、コンクリート・金属用の接着剤をたっぷり連結部品の穴に仕込んで、無理やり固定しました。また、斜交いがないので異様にぐらついてしまい空中分解しかねないので、波板と針金で強引に固定しました。上に透明の浪板を乗せたいのですが、たまたまちょうどいいサイズがきれていたので、とりあえずはビニールを張ります。

DSC_0345
ぐらつくので、横面にも斜交いを入れました。
DSC_0346
ビニールを張ると水ががたまってしまうので、ビニールヒモを渡しておきます。また、不織布を2枚重ねにして、少し遮光します。
DSC_0348
ビニールを張りました。

お次はハオルチア置き場です。こちらは資材が集まらず、まだしばらくかかります。意外とポリカ板とか塩ビ管の連結パーツが入手困難でした。もう面倒なので波板を乗せてしまいます。見た目は悪いですが仕方ありません。
DSC_0352
四方エルボ13A
DSC_0353
三方エルボ13A
DSC_0354
塩ビ管VP13
DSC_0355
塩ビ管カッターで黙々と切断します。
DSC_0357
こんな感じ。
DSC_0358
塩ビ管用の接着剤で連結します。面白いことに、塩ビ管の表面を溶かして接着するタイプみたいです。

_20230508_193019
しかし、うっかり塩ビ管の本数が足りていませんでした。慌てて買いにいきましたが、暗くなったので中断した上、翌日は雨で作業出来ず。来週にまた延期です。
そういえば、13日(土)と14日(日)に神奈川県川崎市にあるタナベフラワーで、Succulent Stationという多肉植物の即売会が開催されます。タナベフラワーのHPは以下の如くです。

去年の10月にも開催されました。その時の記事は以下をご参照までに。

去年のイベントは冬に向かうラインナップで冬型球根もあったりしましたが、今回は5月で暖かくなったので去年より様々な多肉植物がみられるかもしれません。まだ行くかは決めていませんが、週末は雨になりそうなんですよね。実に微妙です。とはいえ、外作業も出来なさそうですから、見に行ってもいいかもしれません。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

植え替えが終わってからは、未だに室内にあった多肉植物を慌てて屋外に出したり、新しい多肉植物の棚を整備したりと割と慌ただしい日々でした。しかし、昨日は雨で何も出来ず、色々進まず困ってしまいます。さて、連休中は仕事があったりして、あまり多肉植物を見れていませんが、少しだけ我が家の多肉植物の現状をご紹介します。

DSC_0361
Pachypodium makayence
初めての開花です。
現在の正式な学名はP. rosulatum subsp. makayenceですが、遺伝子解析結果からP. rosulatumとはそれほど近縁ではないことが明らかになっています。


DSC_0347
Zamia furfuracea
手持ちのソテツの中では今年初フラッシュ。フルフラケアの新葉は黄金の毛に覆われており美しいものです。日本では何故かZamia pumilaの名前で販売されています。

DSC_0368
Operculicarya borealis
長い鉢に植え替えましたが、中々好調です。塊根が長く伸びるので、プレステラでも塊根の先端が底についてしまい、どうしても浅植えになり塊根が少し出てしまっていました。とはいえ、より深い鉢に植えようとすると無駄にデカイ鉢になってしまいます。

DSC_0369
ということで、こんな縦長のビニールポットに植えました。プレステラ120でも高さ13cmくらいですが、このビニールポットは高さ20cmもあります。深植えしても余裕です。

DSC_0370
Pachypodium rutenbergeanum
捨て値で入手した訳あり品ですが、葉が沢山出てきました。下の写真が3月末の入手時で、なんと根が干からびていました。しかし、これだけ葉が動いていますから、根も伸びているでしょう。

DSC_2429

DSC_0371
Uncarina roeoesliana
葉が出てきましたが、中々屋外に出せなかったので日照不足みたいです。

DSC_0363
Cycas nongnoochiae
今年の正月明けビッグバザールで購入した種子ですが、すっかり忘れていて3月くらいに撒きました。4月末くらいまで動きがありませんでしたが、濁った汁が出てきたので腐ったかなと思っていました。放置していたら、いつの間にか根が出ていました。
タイ、ラオス原産の熱帯ソテツ。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

本日は「金輪際」なる奇妙な名前もあるEuphorbia gorgonisをご紹介します。いわゆる「タコもの」と呼ばれるユーフォルビアの中では普及種ですが、枝が短くタコものの中でも特に奇妙な姿となります。このようなタコものユーフォルビアは、海外では「Medusoid Euphorbia」と呼ばれます。ただ、日本のサイトではどういうわけか、「Medusoid」を「クラゲ」と訳すパターンが多いことが以前から気になっていました。いや、「Medusoid」はギリシャ神話の「メデューサ」から来てるのでは?という当たり前の感想が浮かびました。どうやら、「Medusoid」には確かに「クラゲ」という意味もあるようですが、ギリシャ神話から派生したもので、クラゲが本来の意味ではないでしょう。どうも、機械翻訳では文脈を無視して「クラゲ」と訳してしまいがちなようです。あるサイトによると、ギリシャ神話を訳したらメデューサがペルセウスにより討ち取られた場面が、ペルセウスがクラゲを討ち取ったと訳されてしまったという面白いエピソードが書いてありました。なんか間抜けですね。当然、「gorgonis」とはギリシャ神話のゴルゴン3姉妹から来ているのでしょう。ちなみに、メデューサはゴルゴン3姉妹の3女をさします。

DSC_1911
Euphorbia gorgonis A.Berger, 1910

さて、ゴルゴニスの学名は1910年に命名されたEuphorbia gorgonis A.Bergerです。異名はないようです。タコものの中でも特徴的ですからね。ちなみに、A.Bergerは、ドイツの植物学者であるAlwin Bergerのことです。BergerはAgaveの分類で著名なようです。
ゴルゴニスは南アフリカの固有種で、東ケープ州のSunday RiverとZwartkops Riverの間の丘に生えます。Uniondale、Port Elizabeth、Albany Div、Grahamstownあたりのようです。
ゴルゴニスは礫だらけの丘陵に、Boophone disticha、Pachypodium succulentum、Gasteria armstrongii、Bergeranthus glenensis、Freesia alba、Crassula tetragona subsp. acutifoliaなどと共に生えるそうです。冬に乾燥する傾向があり、最低気温は平均12℃です。


2012年のP. V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』によると、E. gorgonisはE. procumbensの異名扱いされています。しかし、現在はE. gorgonisとE. procumbensとは別種とされています。問題はなぜBruynsが異名と考えたのかです。ただE. gorgonisとE. procumbensが似ているという訳ではなさそうです。Bruynsによると種の基準となるタイプ標本が行方不明で、Carter(※1)はBurtt-Davyの標本をタイプ標本として引用していますが、これは存在しないということです。どうやら、Burtt-Davyの採取した植物を基にBergerがE. gorgonisを記載したとしていますが、1910年のBergerの論文ではE. davyiの基になった植物をBurtt-Davyから入手した経緯しか書かれていないといいます。つまり、E. gorgonisはタイプ標本が存在しないため、正確にはどの植物を指しているのか分からないということです。

(※1) 2002年の図鑑、『Illustrated Handbook of Succulent Plants, Dicotyledons』のSusan Carterの論考。
(※2) Burtt-Davyはイギリスの植物学者である、Joseph Burtt-Davyのこと。

では、E. gorgonisが初めて記載された論文を見てみましょう。まだ、Euphorbia gorgonis n. sp.とあります。「nova species」、つまりは新種という意味です。外見はEuphorbia procumbentisとあります。E. procumbentisとありますが、E. procumbensの誤記でしょう。
_20230507_010737
E. gorgonisの特徴の羅列があり、続いて「同じセクションの別の新種はE. davyiで、最近Paxにより記載されました。(※3)」という文の先に、「この種は、1908年の8月から9月に開花しました。これは、Burtt-Davy教授がPretoria周辺から私に送ってくれたおかげです。」とあります。一見して、後半の文はE. davyiについて言っているように見えます。しかし、そもそもE. gorgonisについての解説ですから、E. davyiについては前半の一文だけで、後半はE. gorgonisについて語っているような気もします。BruynsはE. davyiについての記述と捉え、CarterはE. gorgonisについての記述と捉えました。解釈が難しいところです。

(※3) Euphorbia davyiの命名者はFerdinand Albin Paxではなく、Nicholas Edward Brownが1915年に命名しています。しかし、E. davyi N.E.Br.はこの論文の出版後に命名されています。つまり、Paxの命名したE. davyiとは別種かもしれません。

という訳で、E. gorgonisについて少し調べてみました。とはいえ、Bruynsの指摘については判断に迷うところです。ここいらの詳しい事情が分かる良い論文でもあればいいのですが、中々難しいかもしれません。もう少し探ってみます。何か新しい情報が見つかりましたら、また記事にしたいと思います。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

今年の3月にEuphorbia heterodoxaなるユーフォルビアを入手しました。棒状の奇妙な多肉植物です。しかし、調べて見ると特徴が今一つ符合しません。さらに言うならば、このような棒状のユーフォルビアは1つの種類を調べても、ネット上の画像では明らかに複数種と思われるものが出て来てしまいます。これは一体どういうことなのでしょうか?
DSC_2310

DSC_2311 
ご覧の通りあまり特徴がありません。いや、棒状で特徴的ではないかと思われるかもしれませんが、そう上手くはいかないのです。実はユーフォルビアはこのような棒状の形態のものが沢山あり、アフリカ大陸、マダガスカル、カナリア諸島、オーストラリア、南アメリカなど、それぞれの地域で異なる種類の棒状ユーフォルビアが自生しているのです。
その中でも有名なのはTirucalli節のEuphorbia tirucalli(ミルクブッシュ、緑珊瑚)やDeuterocalli節のEuphorbia alluaudiiなどでしょう。しかし、それらはツルッとした見た目で、このような縦に筋が入るものはそれほど多くはありません。見た瞬間に南アメリカ原産、つまりはユーフォルビア亜属New World Cladeだと思いました。さらに、ただ棒状なだけではなく、縦に筋状の角(rib)があることが特徴的です。とりあえずは、Euphorbia heterodoxaを調べてみましょう。

E. heterodoxaはユーフォルビア亜属New World CladeのStaciydium節です。E. comosaなど基本的に草本で、E. heterodoxaだけは多肉質になります。しかし、E. heterodoxaには特徴的なribがありません。これは明らかに別種です。よく調べると、ある国内の販売サイトでは、ribある棒状ユーフォルビアにE. heterodoxaの名前を付けて販売しているようです。どこかで混同があったのかもしれません。

外見的にはEuphorbia phosphorea(夜光キリン)によく似ています。しかし、E. phosphoreaの仲間は皆よく似ています。E. phosphoreaはユーフォルビア亜属New World CladeのBrasilienses節に分類されます。しかし、Brasilienses節は皆ribがある棒状の多肉植物で、ネットの画像からは違いがいまいち分かりません。また、数種類が混同されているようで、まったく信頼がおけません。
困った時の論文頼みということで、論文を漁ってみたところ、Brasiliense節の新種と、既存種を説明した論文を見つけました。2018年の『A new species molecular phylogeny of Brazilian succulent Euphorbia sect. Brasilienses』です。
論文には分かりやすく、茎を切断した断面と花の写真がありました。見分けるポイントのようです。とりあえず、ribの数が少ないE. sipolisii、E. tetrangularisは異なります。残るはE. phosphoreaとE. attastoma、E. holochlorinaです。せっかくですから、Brasiliense節5種類の見分け方を記します。
① ribは4つ
    1 ) Cynthiumと腺(glands)は赤色で付属物がある。
          →Euphorbia sipolisii
    2 ) Cynthiumと腺は緑色で直立した付属物がある。
          →Euphorbia tetrangularis
②ribは6~8つ
    1 ) 明るい緑色の枝。1~2つのcyathiaがある。
          壺型の総苞。
          →Euphorbia holochlorina
    2 ) 緑色または黄色がかった枝。
          2つ以上のcyathia。釣り鐘型の総苞。
        Ⅰ, ribは6~8。通常5つ以上のcyathia。
          →Euphorbia phosphorea
        Ⅱ, ribは6つ。通常は2~4のcyathia。
          →Euphorbia attastoma
とまあ、こんな感じにまとめられていましたが、少し分かりにくいですね。ちなみに、私の入手したユーフォルビアのribは8つですから、Brasilienses節ではE. phosphoreaが該当します。cyathiaは1つの節に10個はついています。ただし、枝の色は深い緑色で少しイメージが異なります。しかし、日照により変わりそうですから、あまり当てに出来る指標ではないようにも思えます。

続けてRichard Riinaらの2015年の論文、『Euphorbia from Brazil: the succulent section Brasilienses』を見てみましょう。まだ、2015年にはE. tetrangularisは発見される前ですから記述はありませんが、他の4種類については詳しい説明があります。
・E. attastoma
    ribは6面で表面は凹む。
    3つのribから節が生じ、同じ節に到達する。
    古い枝は木化する。
    総苞茎は釣り鐘型。
    子房は赤色か赤色/黄色/緑色。
・E. holochlorina
    ribは6面で表面は凹む。
    3つのribから生じ、同じ節に到達。
    木化しない。
    総苞茎は壺型。
    子房はほぼ緑色。
・E. phosphorea
    ribは8~9面で表面は少し凹む。
    3つのribのうち2つが、次の節に到達する。
    3番目のribが異なる節に集まる。
    主幹は木化する。
    総苞茎は釣り鐘型。
    子房は赤色、赤色/黄色か赤色/緑色。
・E. sipolisii
    ribは4面で表面は凹まない。

    3つのribのうち2つが、次の節に到達する。
    3番目のribが異なる節に集まる。
    木化しない。
    総苞茎は釣り鐘型。
    子房は赤色か赤色/黄色。
おやおや、先の論文と異なりE. phosphoreaのribは8~9となっています。しかし、その場合でも一番近いのはE. phosphoreaですね。ribと節の関係の説明が分かりにくいので、実際の写真で見てみます。
_20230505_215935
下の矢印の節から3本のribが上に伸びていますが、そのうち1本が上の矢印の節に合流しています。

実はEuphorbia weberbaueriもよく似ています。
E. weberbaueriはユーフォルビア亜属New World CladeのEuphorbiastrum節ですが、基本的には木本が多いようです。ribがあり棒状のものは、E. pteroneuraとE. weberbaueriがありますが、E. pteroneuraは短い枝が連なり特徴が異なります。
しかし、E. weberbaueriについてはあまり情報がありません。仕方がないので、E. weberbaueriが新種として記載された1931年の『Repertorium specierum novarum regni vegetabilis』を見てみましょう。
_20230505_235653
内容は前半がラテン語、後半はドイツ語ですからよく分かりません。古い雑誌ですから文字のかすれや黄ばみ、汚損が激しくPDFをWordに上手く変換出来ず、コピペも文字化けしてしまい機械翻訳が出来ませんでした。ただ、最後に類似種の判別の仕方が記載されていました。それによると、E. weberbaueriとE. phosphoreaは似ているが、E. phosphoreaには腺に2つの角のある付属肢がある、とあります。これが何を指しているのかよく分かりませんが、キュー王立植物園のデータベースにあるE. phosphoreaの写真には、確かに節には突起物があります。花茎の跡でしょうか? やはりよく分かりません。
しかし、私が入手したユーフォルビアの枝の深い緑色はE. weberbaueriに似ていますが、E. phosphoreaほど細かい特徴が分かりません。GBIF(地球規模生物多様性情報機構)に示されたペルーで撮影された写真を見ると、「
3つのribのうち2つが、次の節に到達する。3番目のribが異なる節に集まる。」というEuphorbia phosphoreaと同じ特徴があるようです。E. phosphoreaはブラジル原産ですから、ペルーで撮影されたからにはE. weberbaueriである確実性の高い情報です。おそらく間違いないでしょう。

ということで、調べきれませんでした。それでも、一応はE. phosphoreaとE. weberbaueriのどちらかだろうとあたりはつけました。しかし、花が咲けば見分けられるかもしれません。E. phosphoreaは赤色と緑色、あるいは赤色と黄色といった2色だったりしますが、赤色単色のものもあります。対してE.weberbaueriは赤褐色です。花の形は異なるでしょうから、咲けば分かるでしょう。しかし、今年中の開花は難しそうですから、はっきりするのはしばらく先になりそうです。
しかし、棒状ユーフォルビアは調べて出てくる画像は様々でかなり混乱しているようです。一度、その他の棒状ユーフォルビアについても調べてみたいと思っています。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

昨日、午前中は都内で仕事でした。せっかくですから、帰りに鶴仙園西武池袋店に寄ってみました。実に3ヶ月ぶりです。前回に来た時は2月でまだ寒かったため、割と冬のラインナップでしたが、すっかり暖かくなったGWの入荷具合はどうでしょうか? 何か面白いものがあるか楽しみです。

DSC_0344

さて、昨日は快晴で大変暑くなりました。いよいよ、多肉植物の季節ですね。
店の入って左にはアガヴェコーナーが出来ており、アガヴェブームは鶴仙園にも波及しています。エケベリアや少し季節外れのメセンもまだありました。気になる硬葉系ハウォルチアは少なく、軟葉系のきらびやかな交配種は相変わらず大量にありました。硬葉系はH. coarctata、H. scabra、H. sordida、H. glauca var. herrei位でしたが、どれもフィールドナンバー付きの珍しいものです。Tulista、Astrolobaはありませんでした。ガステリアは臥牛や恐竜などの交配種が1つのコーナーが出来る位ありましたが、私の好きな原種はありませんでした。ユーフォルビアもまあまああり、E. feroxやE. obesa、E. polygona var. horridaあたりの普及種と、高額な塊根種もありました。今回はサボテンはあまり熱心に見ませんでしたが、私の好きなギムノカリキウムは、瑞昌玉、バッテリー、新鳳頭、LB2178あたりはありましたね。

さて、今回の購入品はこちら。名前はラベル表記のままです。
DSC_0350
H. scabra v. scabra JDV 95/17 Prince Alfred Pass
フィールドナンバー付き。私の手持ちのスカブラは葉が短く太いタイプですが、こちらは葉が細くおそらくは渦を巻くように伸びるタイプです。Plant's Work苗。

DSC_0349
Euphorbia francoisii var. classicaulis
実生苗。E. francoisiiと呼ばれるものは実はE. decaryiであり、今までE. decaryiと呼ばれてきたものはE. boiteauiと訂正されました。そのため、E. francoisii var. classicaulisはE. decaryi var. classicaulisとなりました。しかし、2021年にE. classicaulisとなり独立種となっています。

DSC_0351
Euphorbia obesa
我が家のオールド・オベサが先日亡くなったので、新しいオベサも購入。手持ちのオベサは先月植え替えましたが、根はやられていたものの上は固かったので大丈夫かと思いましたが、腐れが入っていたらのでしょう。なにやら、急に大量の茶色い汁が吹き出してきて、あっという間にカビにおおわれてしまいました。ちょっと、ブログに写真を載せるのは憚られる見た目なため、写真は止めておきます。オベサはこれで3代目ですが、ある程度縦に長くなると腐っちゃうんですよね。鉢が大きくなって水分のバランスが悪くなったのでしょうか? まあ、とにかくこのオベサとも10年以上の長い付き合いになるのでしょう。たにっくん工房苗。


という訳で、実に久しぶりの鶴仙園でした。流石にGWで電車の混雑具合は大変なものでした。しかし、帰ってからは新しい多肉植物の棚を整備しなくてはなりません。いやはや、疲れた1日でしたね。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

植物に関わる新刊が出ました。『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸 / 著、NHK出版新書)です。NHKの連続テレビ小説「らんまん」は大正生まれの植物学者である牧野富太郎をモデルとしたドラマですが、著者はその植物監修を担当したということです。著者が高知県立牧野植物園の標本室長だったことなど、牧野富太郎と縁があるそうです。まあ、ドラマはともかくとして、牧野富太郎について書かれた本は、その半生をドラマチックに描いたものが多いようです。しかし、本書の著者は植物学者ですから、牧野富太郎の植物学者としての仕事に焦点を当てています。実は牧野富太郎について学者が書いた本は珍しく、肝心の植物について詳しく書かれた本はあまりないようです。

_20230503_220201

前半は、特に日本国内の植物をすでに正式に学名が命名されている植物と照合し、名前がないものには新たに命名するという、牧野富太郎の生涯の活動について詳しい解説しています。その際に、基本的な植物学の基礎知識として、学名についてのある程度詳しい解説があり、結構勉強になります。後半は植物画や標本の意味などやはり植物学に関する話が続きます。牧野富太郎と言えば細密な植物画を描いたことは有名ですし、生涯に数十万点の標本を作ったことが知られています。それらの今日的な価値とは如何なるものでしょうか?
牧野富太郎はその半生の前半は学術世界に、そして後半は教育に人生を捧げました。牧野富太郎は日本中を飛び回り、植物について語り標本の作り方を伝授しました。それにより
、アマチュアの植物観察の会は日本各地に出来て、今現在でも活動している会も沢山あるそうです。
植物学から見た牧野富太郎は新鮮で、スキャンダルやゴシップが大好きな方々に書かれた本とは一線を画す出来です。植物そのものではなく、論文や学名、新種の記載、植物画、標本など、あまり植物関係の本でも語られない学術世界が新鮮に感じますし勉強にもなります。非常に良い本でした。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

今年の植え替えもこれで終了します。なんだかんだで136鉢(たぶん)にもなりました。過去に浅い鉢に植えていたものは、ほとんど深い鉢に植え替えました。

DSC_0288
Euphorbia alluaudii
購入時はミニ多肉だったので小さい鉢に植え替えましたが、急成長して鉢が小さくなりました。とはいえ、購入時よりふた回りくらいは大きな鉢なんですけどね。E. alluaudii subsp. oncocladaとして入手しましたが、亜種オンコクラダは節が膨れるため特徴が異なります。入手時は小さかったので特徴がはっきりしていないだけかと思いましたが、生長しても膨れてこないので、ただのE. alluaudiiでした。どうも、国内ではE. alluaudiiがオンコクラダとして流通しているみたいですね。鶴仙園西武池袋店にて入手。

DSC_0301
根はかなり細かいタイプです。流石に鉢が小さすぎます。
DSC_0309
植え替え後。どのよう育つのか楽しみです。

DSC_0287
Euphorbia meloformis
バリダですが、老化してしまい花が咲きません。現在、バリダはメロフォルミスに含まれてしまっています。つまり、E. validaあるいはE. meloformis var. validaは異名とされています。タイプの異なる2株を育てていますが、何故かこちらだけ調子がいまいちです。
DSC_0299
根の具合はそれほど悪くはありませんでした。
DSC_0319
植え替え後。生長はしているものの、鈍っているのは確かです。子を外して育てた方がいいかもしれませんね。

DSC_0321
Dasylirion quadrangulatum
一般的にはD. longissimumの名前で流通している、最も普及しているダシリリオンです。この名前の誤りは日本だけの話ではなく、海外でも同じです。というより、海外での誤った名前で日本に種子が入ってきていることが、日本国内の混乱の原因です。とはいえ、海外ではその誤りを指摘しているサイトがそれなりにあります。埼玉県は越谷市のシマムラ園芸にて入手。

DSC_0332
太い根がありますが、鉢が浅いので底で渦巻いてしまっています。
DSC_0338
植え替え後。苗のうちは水はたっぷりやった方がいいみたいですね。乾かしぎみにすると、葉先が枯れ混んでみすぼらしくなります。

DSC_0323
Gymnocalycium erinaceum WR726B
エリナケウムはギムノカリキウム感が薄く、なにやら面白いですね。鶴仙園西武池袋店にて入手。
DSC_0329
根の状態も良好です。
DSC_0335
植え替え後。今年もよく育ちそうです。

DSC_0326
白磁ホリダ 
ホリダの選抜タイプの子。去年親から外しましたが、浮き上がってしまい、根がむき出しです。

DSC_0327
植えた時には根はほぼない状態でしたから、根は意外と生長しました。
DSC_0337
植え替え後。しっかりと深植えしました。

DSC_0324
Pachypodium drakei
P. rosulatum var. drakeiとされることもあります。しかし、ドラケイは現在ではE. rosulatumの異名とされてします。ロスラツムより葉や幹が細長く育つタイプです。冬の間に全ての葉が落ちませんでした。ヨネヤマプランテイションにて入手。

DSC_0330
根は非常に勢いがあります。明らかに鉢が狭かったことが分かります。
DSC_0333
植え替え後。一気に鉢増ししました。

DSC_0325
Gonialoe sladeniana
アロエ属から分離したゴニアロエ属3種のうちの1種類です。根がないカット苗を購入しました。ビッグバザールにて入手。
DSC_0328
鉢に用土を入れて上に置いておきましたが、しっかり初根しました。正月明けに入手したので、ほとんど根なんか出ていないだろうと思っていました。
DSC_0336
植え替え後。根は生えてきましたが、しばらくは甘やかしておきます。

DSC_0322
Euphorbia subapoda
塊根系の花キリンです。冬の間、小さい葉が出たり枯れたりしていて不調でしたから、根の状態をチェックします。ビッグバザールにて入手。
DSC_0331
根に問題はありませんでしたが、根ジラミはいました。水で荒い落としましたが、塊根の隙間は洗えないので取りきれたような気がしません。
DSC_0334
植え替え後。塊根を少しだけ出しました。しばらくはこんな感じで太らせようと思います。

DSC_0339
Euphorbia heterodoxa (?)
E. heterodoxaの名前で入手したユーフォルビアですが、おそらくは誤りです。おそらくは、E. phosphorea、E. attastoma、E. weberbaueriあたりです。詳しく調べてみて記事にする予定です。3月にヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会にて入手。
DSC_0340
小さい鉢に無理やり詰め込まれていました。さすがに根が混みすぎて伸びる余地がありません。
DSC_0342
植え替え後。2鉢に分けました。しかし、なんで7本も寄せ植えしたのか不思議です。まあ、1本だけだと貧相な見た目になるのは分かりますが…

という訳で植え替えは終了です。しかし、まだ外に出せていない多肉植物もあります。外の多肉植物置き場を、そろそろ本当にどうにかしないといけません。GW中に一気に方をつける腹積もりでしたが、残念ながら仕事が入ってしまいました。いやはや、土日になんとかしたいところですが…


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

3月後半に植え替えを始めましたが、いつの間にかに5月になってしまいました。それでも、流石にもう終わりです。しかし、休みの日ごとに植え替えてきましたが、他の雑用で1日潰れてしまい遅れがちです。そのせいで、なんとまだ室内から出せていない多肉植物すらあります。新しく多肉植物置き場を作りたいのですが、全く手をつけていません。GW中に少しどうにかしたいとは思っていましたが、仕事が入ってしまいました。なかなかどうして上手くいかないものです。まあ、うち1日は都内で午前仕事なので、帰りに池袋に寄って鶴仙園で多肉植物を見てくるつもりです。

DSC_0285
Kumara plicatilis
かつてのAloe plicatilis。大量入荷したらしく、二子玉川のプロトリーフで激安で入手しました。ネット相場の半分以下でした。

DSC_0286
根の勢いが強く、はみ出してしまいます。
DSC_0302
細かい根は冬の間に枯れてしまいます。
DSC_0311
植え替え後。5号鉢に植えました。締めて育てているため、生長は非常に遅い。しかし、アロエの中でも強光線には非常に強いですね。

DSC_0284
Gonialoe variegata
倒してしまい抜けたので、植え替えます。鉢のバランスが悪いのが気になっていました。

DSC_0300
根はかなり死んでしまいました。少し鉢の乾きが悪かったのかもしれません。
DSC_0310
植え替え後。すでに芽は動き始めています。特に問題はないでしょう。
DSC_0308
ついでに子を外しました。

DSC_0290
Gasteria disticha
ディスティカは1753年にCarl von Linneにより初めて学名がついたガステリアです。しかし、素晴らしいガステリアですね。ビッグバザールにて入手。

DSC_0293
良く見ると古い花茎から子株が出ています。胡蝶蘭ではたまにありますよね。
DSC_0295
根の状態は良好です。
DSC_0315
植え替え後。子株をいつ外すか悩みどころです。

DSC_0289
Gasteria baylissiana
小型のガステリアです。バイリシアナは花は小さいのですが、大変かわいらしいので好きなガステリアです。ファーマーズ三郷店にて入手。

DSC_0296
根の状態は非常に良いですね。
DSC_0314
植え替え後。こうした次々と増えるタイプのガステリアはどう仕立てるのが正解なんでしょうね? まあ、正解なんてないのかもしれませんが…

DSC_0312
Aloiampelos striatula var. caesia
アロエからアロイアンペロスになりました。寒さに強いため、冬の間も盛んに生長して、ついに自重を支えきれなくなりました。鉢も小さいので直ぐに倒れてしまいます。ビッグバザールにて入手。

DSC_0313
根は鉢いっぱいでした。
DSC_0318
植え替え後。倒れない鉢に植え、支柱を立てました。先端が曲がっていますが、いずれ日の方向を向くでしょう。しかし、このままだだらだら伸ばすより、ある程度は切り戻しながら育てるべきでしょうか?

DSC_0291
怪竜丸
最近ではGymnocalycium basiatrumと言われているらしいです。かつてはG. bodenbenderianumとされて輸入されていました。鶴仙園西武池袋店にて入手。
DSC_0292
なにやらヒョロヒョロと徒長したユーフォルビアが生えてきました。何者でしょうか?
DSC_0297
根の張りは素晴らしいですね。やはり、駄温鉢はサボテンに適した鉢なのかもしれません。細根の勢いが違います。
DSC_0298
謎の実生はなんとタコものユーフォルビアでした。徒長していたのではなく、タコものの枝だった訳です。
DSC_0305
植え替え後。駄温鉢は良いのですが、サイズ的に合わないので、見た目は悪いですがプレステラ120に植えました。
DSC_0316
謎の実生も植えました。しかし、種子ができそうなタコものはなさそうですが、一体何者なのでしょうか?

ということで、相変わらず植え替えに勤しんでおりますが、明日で植え替えは一応終了します。いやはや、長かったですね。多肉植物も外に出さないといけませんから、もう少しバタバタします。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

植物の種子はある程度は保存出来るものが多く、種の保存にとって種子の長期保存は有効な手段である可能性があります。種の保存には幾つかの方法がありますが、採取した植物を栽培して維持することは植物園や大学などの研究機関の重要な仕事です。しかし、同じ種類の植物でも遺伝的な多様性があることが本来の姿ですが、このような栽培個体は遺伝的な多様性が低いことが問題です。自生地での野生植物の消滅により栽培植物を移植しようとした場合に、その全てが株分けした遺伝的に均一なクローンだったり、血縁関係にある兄弟ばかりでは、種子が出来なくなりやがて消滅してしまいます。解決策は自生地と同じくらい遺伝的多様性を栽培植物で維持出来れば良いのですが、ただ1種類の植物を維持するだけで大変な労力と場所と資金がかかってしまいます。当然それは専門知識を持つ研究者が行わなければなりませんから、地球上の絶滅の危機に瀕している植物すべてをというのは明らかに無理でしょう。しかし、原産地から種子を回収して保存しておけば、将来の絶滅に備えることが可能です。沢山の種子を採取しておけば遺伝的多様性も保たれますし、人工的に栽培する場合と異なり場所も手間もかかりません。ですから、種子の保存に関しては興味があります。
確か、種の保存を目的として、実際に様々な植物の種子が凍結保存されていると聞いたことがあります。しかし、その凍結種子を撒いて植物が育ったという話は聞いたことがないため、気になっていました。なぜなら、一般的に生物を凍結すると細胞内の水分が凍ってしまい、氷の結晶が出来て細胞が破壊されてしまいます。解凍した肉や魚から赤い汁(ドリップ)が出るのは、これが原因です。種子は水分が少ないので細胞の破壊は免れるのでしょうか? また、凍った水分は凍結した時間が長くなると、やがて液体になる融解を経ずに直接気体になります。これを昇華と呼びますが、凍結種子は大丈夫なのでしょうか?

とまあ前提が長くなりましたが、要するに凍結種子が本当に芽生えるのかが気になっていた訳です。せっかくだから、多肉植物で何か関係がありそうな論文を探してみたところ、面白そうなものを見つけました。S.R.Cousins, E.T.F.Witkowski, D.J.Mycockの2014年の論文、『Seed strage and germinatiom in Kumara plicatilis, a tree aloe endemic to mountain fynbos in the Boland, south-western Cape, South Africa』です。タイトルの通りKumara plicatilisの種子を温度を変えて保存し、生存率を確認しています。ちなみに、このKumara plicatilisとは、いわゆるAloe plicatilisのことで、2013年にアロエ属から分離しクマラ属となりました。日本では「乙姫の舞扇」というあまり使われない名前もあります。

_20230501_010503
Kumara plicatilis

まず、実験の基本的な前提から見ていきましょう。K. plicatilisの新鮮な種子は2010年12月にRawsonville/Worcester近くの40個体から採取されました。採取した種子は茶色の紙袋に入れて実験室で3ヶ月保管されました(※1)。空の種子は除かれました。2400個の種子を300個×8に分け、さらにそれぞれを20個を1本の密封容器に入れました。
種子は4つの温度で、4ヶ月及び9ヶ月保管されました。設定された温度は、マイナス80度、4度、25度、研究室内の4つです。期間は12月から2月で、ヨハネスブルグでは夏にあたるそうです。

※1 ) K. plicatilisの種子は種子が出来た後、直ぐに種子を撒くとあまり発芽しません。ある程度の後熟期間を必要としています。

結果を見ていきましょう。
まずは発芽率です。12時間で昼と夜が切り替わる培養機で、日中は25度、夜間は15度に設定して発芽させました。マイナス80度で保存された種子は、保存期間に限らず発芽が早く、平均5.9日でした。逆に研究室内で保存された種子は平均7.8日で発芽しました。
また、18週間の間に発芽しない種子は、種子の生存を確認する試験(テトラゾリウム試験)を実施しました。つまり、試験後の種子は、①発芽した種子、②空になった死亡種子、③テトラゾリウム試験により生存を確認した種子、④テトラゾリウム試験により死亡を確認した種子、の4種類です。重要な①と③、さらには①と③を足した生存率を見ていきましょう。
4ヶ月保存した種子では、マイナス80度で①90.4%+③4.8%=95.2%、4度では①87.6%+③10.0%=97.6%、25度では①78.0%+③14.0%=92.0%、室内では①80.4%+③16.4%=96.8%でした。4ヶ月保存では種子を冷やした方が発芽率は良く、室内保存では種子の生存率は高いものの発芽率は低下しました。
次に9ヶ月
した種子では、マイナス80度で①39.6%+③52.4%=92.0%、4度では①39.2%+③50.0%=89.2%、25度では①79.6%+③15.2%=94.8%、室内では①88.8%+③4.8%=93.6%でした。不思議なことに、9ヶ月の保存では発芽率は種子を冷却した方が発芽率が低下したのです。

さて、著者らは①発芽率+③生存種子を重視しており、長期の低温条件が種子の休眠を誘発する可能性を指摘しています。一般的に秋に出来た種子が直ぐに発芽せず、一度低温にさらされることにより、春に種子が休眠から目覚めるというプロセスがあります。しかし、この場合は逆ですが低温による休眠の可能性も論文になっているようです。著者らは長期冷蔵は種子にとって環境ストレス要因であるとしておきながらも、逆に休眠状態に入ることは種子寿命を伸ばす可能性を上昇させるとしています。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、この論文にはまだ曖昧な部分があります。それは、テトラゾリウム試験で生存しているとは一体どういう意味を持つのかということです。胚乳や子葉が生存していても、幼根や幼芽の原器あるいは胚軸にダメージがあれば生存していても発芽は出来ないでしょう。生存していても発芽出来ないのなら、冷却による長期保存の利点はありません。著者らは種子寿命が伸びると言っていますが、発芽しない種子を一体どうしようというのでしょうか? よくわかりません。種子から胚を摘出して組織培養するのなら、あるいは可能なのかもしれませんが。
さて、論文を読むと実際に行われている種子の凍結保存に対して、ある種の疑念が湧きます。将来のために凍結された種子たちは将来、果たして無事に発芽出来るのでしょうか? もちろん、これはK. plicatilisというと1種類の植物に対してだけの結果です。しかし、凍結保存された種子たちが、その全ての種類で発芽試験が実施されているとは思えません。しかも、種の保存を目的とした場合、4ヶ月や9ヶ月どころではなく、最低でも数十年という保存期間が必要なはずです。種子の冷凍保存は本当に長期保存に最適な方法なのでしょうか? 個人的には組織培養したカルスを液体窒素につけておけば、何十年も保存可能なはずです。確かに組織培養に移行するのは手間がかかりますが、確実性は高い気がします。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

このページのトップヘ