ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2023年03月

どれだけ小さな庭でも、そこに土があれば何かしらの雑草がたくましくも生えてきます。ガーデニングを趣味としている方なら、雑草は大なり小なり厄介な存在でしょう。私も育てている多肉植物の鉢に、どこから来たのか様々な雑草が生えてきます。早期に抜かないと根を深く張ってしまい、中々取り除くのにも手を焼くことになります。こんな趣味の範疇の園芸でも厄介な存在なのですから、農業における雑草は厄介どころの話ではないでしょう。もちろん、科学の力により除草剤なるものが開発され使用されます。しかし、たかが雑草と侮るなかれ。雑草には人間の知恵など凌駕する力があるようです。本日はその雑草が主役の話をしたいと思います。参考とするのは2003年に出版された『雑草の逆襲』(全国農村教育協会)です。早速、簡単に内容をご紹介しましょう。

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農業では雑草は実に厄介な存在です。せっかくまいた肥料を吸ってしまいますし、背丈が高くなれば日照を遮ります。あまりに雑草が蔓延ると、そこから病害虫が拡がることもあります。風通しも悪くなりカビなどによる病気も起こりやすくなります。そのため、除草剤がまかれますが、日本各地で異変が起きているというのです。雑草は本来、実に沢山の種類があります。しかし、除草剤をまいていると、何故か1種類の雑草のみが蔓延る、奇妙な光景が現れ始めたのです。
事の起こりは1980年の埼玉県のことでした。荒川堤外地の桑畑でパラコートなどのビピリジリウム系除草剤に抵抗性があるハルジオンが見つかりました。驚くべきことに、このハルジオンは通常の16倍の除草剤にも耐えることが分かりました。

では何故除草剤が効かないのでしょうか? そもそもパラコートはどのように効くのかというと、葉に光が当たると光合成しますが、その反応にパラコートが作用して活性酸素を生じて葉の組織に損傷が生じるようです。そこで、パラコートに耐性のあるハルジオンやアレチノギクの葉を切って、切り口から標識したパラコートを吸わせてみました。すると、パラコートは葉脈にはありましたが、葉の組織にはありませんでした。つまり、光合成がおきる葉の組織にパラコートが行かないため、活性酸素が生じないということのようです。
しかし、不思議なのはハルジオンのパラコート耐性が、原産地の北米ではなく日本で初めて発生したという事実です。一般的に原産地は種内の多様性が高いことから、北米でこそパラコート耐性が出てくるような気がします。ただ、ハルジオンは日本では大量発生しますが、北米では重要な雑草ではありません。これは、ハルジオンが本来は存在しない侵略者であるため、競争相手がいないだとか、北米でハルジオンにつく病害虫が日本にはいないだとか理由は色々と考えられます。そのため、ハルジオンに対し日本では北米より大量のパラコートが使われてきたということかもしれません。

さて、除草剤に限らず薬剤耐性が起きる仕組みとは、①薬剤の吸収・移行を阻害する、②薬剤を分解してしまう、③薬剤の作用部位が変異してしまう、という3つが考えられます。ハルジオンのケースは①の薬剤の吸収・移行の阻害によるものですね。
さらに、北海道や東北で、水田雑草であるミズアオイやアゼトウガラシにSU剤という除草剤に対する耐性が見られました。SU剤は植物がアミノ酸を合成する過程のアセト乳酸合成酵素(ALS)を阻害しますが、ミズアオイやアゼトウガラシはALSの変異によりSU剤が効かないと考えられているようです。つまり、③の薬剤の作用部位の変異によるものです。
また、何も除草剤抵抗性は日本だけの話ではなく、世界中で起きている現象です。しかも、複数種類の作用機序が異なる除草剤に抵抗性を獲得した雑草も現れているようです。さらには、オーストラリアのボウムギやカリフォルニアのイヌビエのように、解毒機構を発達させてほとんどの除草剤を無効化する「スーパーバイオタイプ」と呼ばれる恐ろしい雑草さえ出てきてしまっています。②の薬剤の分解によるものですね。


しかし、考えて見れば雑草とは実にたくましいもので、人類の叡智など軽々と乗り越えてしまいます。まったく異なるタイプの除草剤が開発されても、基本的にはいたちごっこで、直ぐに乗り越えられてしまうのでしょう。これは、近年重大な問題と化している抗生物質に耐性のある細菌の出現と同じ現象です。こちらも多剤耐性菌の出現により医療現場に多大な負荷がかかってしまっています。やはり、こちらも除草剤と同様に終わりのない戦いを強いられています。
除草剤自体は人体にも有害な物質ですから、使わないに越したことはないのでしょう。しかし、狭い庭ですら雑草を蔓延らせている私には、農家は広い農地を手作業で雑草を抜くべきだとはとても言えません。やはり、人間の知恵など「たかが雑草」にすら勝てないのでしょうか? こうなってしまうと、除草剤とはまったく異なる手法による、新たな除草方法が求められているのかもしれませんね。


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今年も植え替えをしなくてはならないのですが、すっかり忘れていていつの間にやら3月も終わってしまいます。あわてて植え替えようと思ったのですが、肝心の土がちょろっとしかありませんでした。仕方がないので、取り敢えず少しだけ植え替えしました。

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本日はこれだけ。

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先日、横浜にあるコーナン港北インター店で購入したばかりの多肉植物たちです。傷んだものもあった中からいいやつを選びましたが、根の状態が心配ですから最優先で植え替え。

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まずは、十二の巻から。根の張りは悪いものの、腐っている感じはありませんでした。むしろ、カラカラに乾いていて痩せているパターンみたいです。

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植え替え後。鉢も大きくしました。乱れた荒いバンドがワイルドでいい感じです。

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植え替え後のGasteria glomerata。割と良い状態でした。よく見ると根元に子供が吹いています。植え替え前は埋もれて気が付きませんでした。

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植え替え前のTulista marginata。去年、少し焦がしました。その後、調子を落としていましたから植え替えました。

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植え替え後。根張りは今一つでした。今年はきれいに育てたいものです。

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植え替え前のAloe descoingsii。Ruchiaさんから購入したので、根に問題はないでしょう。ただ、枯れ葉が邪魔なので植え替えついでに取り外します。

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植え替え後。枯れ葉を除いてすっきりしました。

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去年のクリスマスイブに木更津Cactus & Succulentフェアで購入したEuphorbia balsamifera。妙に乾きやすい土に植わっていたので気になっていました。

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根は割と貧相でしたが、弱った感じはありません。

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植え替え後。枝分かれさせてこんもりとした感じに育てたいものです。

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植え替え前のEuphorbia handiensis。去年の冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで購入しました。おそらく、E. balsamiferaと同じ業者さんから購入。

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少しネジラミがいました。根を流水でこすり洗いしましたが、通常はこの物理攻撃が一番効きます。しかし、根がゴツゴツしているため、何やらすべて取りきれた気がしません。

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植え替え後。根に殺虫剤を吹き掛けて、用土に浸透移行性殺虫剤を仕込みましたが、効果の程は分かりません。

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そういえば、庭の乙女椿が満開でした。樹は小さいですが、今年は咲き年のようです。

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普及種ですが花の形が非常に整った良い品種です。

まだまだ植え替えしなくてはならない多肉植物は沢山ありますから、徐々にやっていきます。いや、まずは用土を買い込まなくては。まあ、こんな風にぐずぐずやっていると、あっという間に夏になってしまいそうです。


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昨日はザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションの多肉植物BIG即売会に行ってきた訳ですが、せっかく新羽まで来たのですから、コーナン港北インター店にも寄りました。新羽駅からバスで折本町というバス停で降りて横断歩道を渡って直ぐにあります。ガーデン館という巨大な温室があり、特に多肉植物が豊富で、とにかく売り場が広いので数だけならトップクラスかもしれません。見映えの良い大型で高額なものから、安価なミニ多肉植物まで様々です。今回は何がありますでしょうか?

今回、新しくアガヴェ・コーナーが出来ていたのは、やはり流行を感じました。しかし、全体的には今回はまだ寒いこともあり、どうやらホームセンターで一冬越したものが多いようです。ユーフォルビアなどはやや痛みや葉先の枯れが目立ちました。しかし、エケベリアなどのベンケイソウ科は回転が良いせいか、新しいものも多かったように見受けられます。何故かSansevieriaがかなり充実しており、1つのコーナーが出来ていました。アロエも割とありやや珍しいものもありました。流石にアロエに痛みはありませんでしたが。さて、ハウォルチアやガステリアがあるコーナーを見ましたが、軟葉系ハウォルチアは割と元気なのに、何故か硬葉系ハウォルチアとガステリアは痛みが激しく買う気にはなりませんでした。とはいえ、少し面白いものもありましたから、元気なものを選んで購入しました。まあ、ホームセンターですから、多肉植物の入荷が活発になるのはこれからですよね。

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グロメラータ
Gasteria glomerata。私が去年入手して育てている株はやや白味がかり葉に丸みがあるタイプですが、こちらは緑色が強く葉が長いタイプ。こちらのタイプのほうが、van Jaarsveldが新種として記載した当時の写真の個体に近く見えます。


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十二の巻
Haworthiopsis attenuata系品種を「十二の巻」と呼びます。白いバンドの入り方は様々ですが、この個体はバンドの幅は広いものの、バンド間が広いのが大変面白い。一部、バンドが崩れて「ドーナツ冬の星座」みたいになっています。ちなみに、H. fasciataではないので注意。


昨日に続き、ザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションとコーナン港北インター店にはしごしてきました。個人的には大満足で、色々と見られて楽しかったです。
3月は先週の「春のサボテン・多肉植物のビッグバザール」もありましたし、来週にもイベントがあります。3/26には町田シバヒロという町田駅近くの公園で「つながる輪多肉petitfes.vol11」という多肉植物のイベントがあり、同日にルームズ大正堂八王子店ガーデンメッセで開催される「Succulent Blossom vol.4」という多肉植物のイベントがあります。一応行ってみる予定ですが、初めてなのでどういうイベントかはよく分かりません。もし行けたら記事にしたいと思います。



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横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅近くにあります、ザ・ガーデン本店ヨネヤマプランテイションに行って来ました。今日と明日の2日間「多肉植物BIG即売会」が開催されたからです。まあまあ遠いので滅多に行けませんが、イベントとなれば話は別です。実に去年の夏以来のヨネヤマプランテイションですが、何か面白い多肉植物はあるのでしょうか?
あいにくの雨模様でしたが、花粉症の私にとってはこの時期の雨は逆に有り難く感じます。まあ、少し肌寒くはありましたが。さて、開店時間前に到着しました。いつも、開店時間前に始まっていますが今回もそうで、売り場はまあまあ込み合っていました。今年はイベント・スペースが広くなり、割と珍しいラインナップでした。目移りしましたが、安いものだけを購入しました。
売り場は今ブームのアガヴェ・コーナーができていたのが印象的でした。相変わらず、パキポディウムの苗も沢山ありました。珍しくサボテンも割と充実していましたね。あと、ガステリアがちょいちょいあり、少し驚きましたが。しかし、レアものは非常に高額なので断念。結局はお手頃なユーフォルビアをチョイスしました。通常、園芸店ではユーフォルビアは普及種しか見かけませんが、今回は色々と取り揃えていたのでまったく嬉しい限りです。


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Euphorbia fianarantsoaeです。花キリンは分類が混沌としていますから、勉強しなくてはと思っています。

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Euphorbia bubalinaです。「昭和キリン」の名前があります。逆鱗竜E. clandestinaに近い仲間ですがどうにも逆鱗竜は間延びしやすく苦手なのですが、昭和キリンはどうでしょうか? 詰まった良い形に育てたいものです。

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Euphorbia heterodoxaです。不思議な形ですが、これもユーフォルビアです。外見的にも、いかにもな南米原産種。しかし、E. heterodoxaの画像を漁ると、このように筋張ってはいないみたいなんですよね。むしろ、E. apparicianaの近縁種にも見えます。E. weberbaueri感が強いのですがよく分かりません。新大陸のユーフォルビアには詳しくないので詳しく調べてみる必要があります。

ということで、あまり見かけないユーフォルビアがあり園芸店の開催としては、かなり満足感の高い即売会でした。しかも、この3点は非常に安価でしたから、懐にも優しいというオマケつきです。これで大満足で帰宅するかと思いきや、実はまだ続きます。このあと、横浜市営バスに乗って、コーナン港北インター店のガーデン館を見に行くからです。せっかく遠く横浜まで来たのですから、バスで10分ほどと近いので立ち寄ります。コーナンの記事は明日まとめます。
さて、「多肉植物BIG即売会」は明日も開催されます。多肉植物好きなら見に行っても損はないと思います。


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最近、植物と菌類との関係について、幾つか記事にしています。ここで一つ、良い本がありますからご紹介します。それほど重要な話には思えないかもしれませんが、大抵の植物は菌類と共生関係を結んでいます。
さて、本日は2020年に出版された『菌根の世界』(築地書館)をご紹介します。内容はまあ実際に手にとって読んでいただくとして、菌根の基礎的な部分のみ解説させていただきます。なお、説明しにくい部分もありますから、私が一部情報を追加していますので悪しからず。

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さて、まずはキノコの話から始めましょう。キノコには大まかに分けて3つのタイプの生態があります。1つは落ち葉を分解するキノコで、身近な例ではブナシメジやツクリタケ(マッシュルーム)、えのき茸、フクロタケなどです。2つ目は木材を分解するキノコで、身近な例では椎茸や舞茸、ヒラタケ、ナメコ、キクラゲなどがあります。そして、3つ目が植物と共生関係を結ぶ菌根菌です。菌根菌では松茸やトリュフ、ポルチーニなどが有名ですが、一般的に栽培が難しく高額なキノコです。もちろん、ここに名前が出たキノコだけではなく、他にも沢山の種類のキノコがあります。これらのキノコが作る菌根を「外生菌根」と呼び、植物の根の周囲に服を着せたかのように、キノコの菌糸が被います。植物とキノコの間で栄養分のやり取りがあり、植物の生育にとって非常にプラスとなっていることが分かっています。

菌類にはキノコを作らないものもあり、一般的にカビと呼ばれています。カビには、生き物の死骸を腐らせるものと、植物に寄生するタイプの病害菌と、植物と共生するカビがあります。植物と共生するカビは、アーバスキュラー菌根と呼ばれる特殊な菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、なんと植物の根の組織にカビの菌糸が入り込んで、植物と菌が一体化してしまいますから、これを「内生菌根」と呼んでいます。アーバスキュラー菌根は痩せ地に生える植物でよく発達し、貧栄養に育つ植物にとって極めて重要な存在です。また、様々な作物などでアーバスキュラー菌根菌の接種により、植物の生育が良くなることが確認されています。アーバスキュラー菌根菌は、栽培困難な外生菌根とは異なり、相手を選ばずしかも簡単に接種できます。
さらに、驚くべきことに4億3000年前に初めて植物が陸上に進出した時、すでにアーバスキュラー菌根が存在していた可能性があります。なぜなら、上陸したばかりの植物にはちゃんとした根がないため、栄養分を上手く吸収出来ていたとは考えにくいのです。アーバスキュラー菌根菌が存在していれば、根の代わりに菌糸が栄養分を運んでいたのではないかというのです。さらに、アグラオフィトンという植物化石の仮根(まだ未発達な根)にアーバスキュラー菌根に類似な構造が観察されています。アーバスキュラー菌根菌であるグロムス菌亜門は、(おそらく遺伝子解析により)4~5億年前に近縁な菌類から分かれたと考えられており、その点においても符合します。


アーバスキュラー菌根菌は農業への応用が期待されますが、実はすでに製品化されているそうです。しかし、残念ながらあまり普及していない現実があります。なぜなら、菌根は土壌中の栄養分が少なく場合により効果が期待できるわけで、日本のような過剰に化成肥料をまく農業では効果が表に出にくからです。実験的には肥料を減らしても高い収率が期待できるということですから、使い方次第では面白いのではないかと思います。最近、サボテンにアーバスキュラー菌根菌を接種した論文をご紹介しましたが、生長が良くなり病原菌の影響を減じました。乾燥した過酷な環境に生きる多肉植物はいかにも菌根菌と関係していそうです。アーバスキュラー菌根菌の応用は効果が期待できるかもしれません。

以上のように、簡単に菌根について解説させていただきました。しかし、これはいわばさわりの部分でしかなく、内容的には様々な角度から菌根について語られています。植物と菌類の関係は様々で非常に複雑です。外生菌根の話や蘭菌の話、苔やシダの菌根の話など大変興味深い内容です。大変面白く勉強になる良い本ですからオススメします。


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最近、沖縄で海外のソテツにつく害虫が見つかりました。Aulacaspis yasumatsuiというカイガラムシの一種です。昨日、ニュースで初めて知ったのですが、沖縄は2例目で実は昨年の10月に奄美大島で発見されており、すでに700本のソテツに拡がってしまっているそうです。その増殖の早さから思いの外、大事になる可能性があります。

ニュースの元記事はこちら。
A. yasumatsuiはタイなどの東南アジア原産のカイガラムシです。繁殖力が強く世界中の温暖地に拡散してしまっています。野生ソテツの宝庫であるメキシコではA. yasumatsuiをかなり警戒しているようです。今までA. yasumatsuiが確認されたソテツはCycasだけではなく、Zamia、Dioon、Stangeria、Macrozamia、Bowenia、Encephalartosで見つかっていますから、ソテツの仲間はすべて被害に合うと考えた方が良いようです。

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Dioon spinulosum

カイガラムシはカメムシの仲間で植物の汁を吸いますが、吸われた部位は白く細胞が死んだ状態となります。大量に増えればやがて光合成が出来なくなります。葉についたA. yasumatsuiは葉をすべて取ってしまえば済みますが、幹の鱗片の間や地下部位についたA. yasumatsuiを除去するのは大変な困難でしょう。

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もし、A. yasumatsuiが鱗片の隙間に入ってしまったらと考えると、とても除去しきれる気がしません。

A. yasumatsuiがついて何もしなければ1年ほどでソテツは枯死する可能性があると言います。対策は、見える範囲にいるものは取り除くか、カイガラムシ用の殺虫剤をまくしかありません。それでも、地下部位などすべてを取り去るのは至難の技かもしれません。また、もし本土にA. yasumatsuiが定着してしまった場合、除去しても野外の他のソテツから新たなA. yasumatsuiがやって来るかもしれません。


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Zamia furfuracea

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Cycas revoluta

A. yasumatsuiは東南アジア原産ですから、寒さに弱いような気もしますがよく分かりません。そもそも、私は熱帯原産のソテツを冬は室内に取り込んでいます。温室で育てている人もいるでしょう。そうなると、もしA. yasumatsuiが寒さに弱かったとしても、冬に生き残るでしょうからA. yasumatsuiの耐寒性の有無に意味はないかもしれません。また、屋外にあったとしても、土壌中は暖かいので地下で生き残るものもあるかもしれませんし、一般的に耐寒性が高い卵で冬を越す可能性もあります。沖縄は離れているからなどと楽観視は出来ないでしょう。近年、ソテツシジミという、ソテツを食害する南方系の蝶が、1992年に沖縄で確認されてから、現在では関東地方各地で確認されるに至りました。この蝶も日本列島をじわじわ北上して来たわけです。地球温暖化により気温も上昇してきていますから、A. yasumatsuiが本土に上陸するのも時間の問題でしょう。

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Dioon edule

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Zamia integrifolia(=Z. floridana)

ソテツシジミが関東地方のあちこちで発見されているニュースを見て、まあいざとなれば芋虫を捕殺するだけなので、それほどの脅威は感じませんでした。しかし、Aulacaspis yasumatsuiは初期に気が付かず蔓延してしまうと、手に負えなくなる可能性が大です。私もソテツを何種類か育てていますから、注意しないといけませんね。


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植物の種子は地面にばらまかれたら直ぐに発芽する訳ではありません。大抵は発芽に適した時期まで休眠します。とはいっても種子の発芽可能な期間は決まっています。条件が発芽に適していない場合でも、種子が何年も耐えられるとは限りません。場合によっては毎年新しい種子が出来るので、種子の寿命はその年のみというこのもあるのでしょう。また、よくあるパターンとして、研究者が種子を良い条件で何年も保存し、種子を撒いたら発芽しましたという場合でも、実際の野生に生える植物では様々な悪条件により速やかに種子が死亡したりします。このギャップを埋めるためには、野外で種子を含む土壌を採取してきて、その土壌中にある種子が発芽するかを確認することが必要となります。かつてKumara plicatilis(=Aloe plicatilis)の種子寿命について調べた論文を記事にしたことがありますが、やはり自然状態の種子ときちんと研究室で管理された種子では発芽可能な期間が異なりました。

Kumara plicatilisの発芽についての記事はこちらをご参照ください。
さて、本日はサボテンの種子に関する論文をご紹介します。それは、Lucía Lindnw-López, Guadalupe Galíndez, Silvia Sühring, Valeria Pastrana-Ignes, Pablo Gorostiague, Angela Gutiérrez & Pablo Ortega-Baesの2018年の論文、『Do cacti soil seed banks? An evalution using species from the Southern Central Andes』です。

まずは、内容に入る前に用語の説明から。土壌中で発芽せずにいる種子を'seed bank'と言います。直訳すると「種子銀行」ですが、今回は貯蔵種子と訳させていただきます。また、論文中で土壌中の貯蔵種子を'soil seed bank'と呼び、これをSSBと略しています。貯蔵種子の区分として、種子の生存が1年以下の一過性の貯蔵種子、1年以上生存し続ける持続性貯蔵種子に分類出来ます。

過去の研究ではサボテンの種子はSSBを形成出来るとされています。しかし、これは種子の形態学的及び生理学的特性から推察された結論であって、実際の野生のサボテンの種子について調べたものではありませんでした。そこで、この論文では野生のサボテンのSSBを調査することとしたのです。

調査はアルゼンチンのサボテンの多様性が高いとされるSalta州の12の地点で実施されました。野生個体から採取された種子を地面に埋めました。土壌の採取は新しい種子が形成される前に行われました。直径10cm、深さ3cmの円筒形の金属製の筒により土壌を採取しました。また、1つの地点で裸地とナース植物の下の2点の採取が実施されました。ナース植物とは乾燥地に生え葉を繁らせ陰を作る植物で、その木陰は遮光され地面の温度を下げます。そのため、ナース植物の下は実生が生き残りやすい環境と考えられています。
残念ながら種子が少なく分析出来ないサボテンもありました。論文で分析できたのは、Echinopsis atacamensis、Echinopsis terscheckii、Echinopsis thionantha、Gymnocalycium saglionis、Gymnocalycium schickendantzii、Gymnocalycium spegazziniiの6種類でした。

さて、これらのサボテンの種子は24ヶ月後に回収した場合、生き延びたものはありませんでした。全体的な傾向としては、生存率は経過時間が長いほど低下しました。6ヶ月後ではE. thionanthaとG. spegazziniiは生存率が低下しましたが、それ以外の4種類の種子はほとんど生存率は低下しませんでした。しかし、1年後では6種類すべてで非常に生存率は低下しましたが、発芽能力がある種子が存在します。

このように、サボテンは短期間ではあるもののSSBがあることが分かりました。しかし、著者らは他の論文の報告から、単純に発芽能力が経年劣化するのではなく、病原性真菌の感染により種子が死亡している可能性も指摘しています。個別の種子を見てみると、G. schickendantziiは採取されて直ぐの種子より、6ヶ月に回収された種子の方が発芽率が良いという意外な結果でした。これは、一度種子が休眠して後熟成している可能性が指摘されます。
この研究では、ナース植物の効果は確認出来ませんでした。E. thionanthaはナース植物の下の種子は発芽率が低下しました。理由は定かではありませんが、経過時間の方がファクターとしては大きいようです。一般的にはナース植物の効果は複数の報告があります。しかし、ナース植物のアレロパシー効果により付近の種子にダメージがあった可能性も指摘されます。アレロパシー効果とは植物が様々な物質を放出して、周囲に影響を与えることを言います。この場合は、ナース植物の将来的な競争相手となる可能性のある他植物の種子が発芽しないように、ナース植物が生長阻害物質を放出しているのかもしれません。ナース植物となる植物も慎重に選ぶ必要性があったのかもしれません。


以上が論文の簡単な要約です。乾燥地の過酷な環境下でも、サボテンの種子は1年間は生存するものもあることが示されました。個人的には、流石に自生地では短期間に発芽出来ないと速やかに死亡するような気がしていました。それが、まさか短期間であろうと貯蔵種子が存在することに驚きました。多肉植物は過酷な環境に生えるものが多いので、貯蔵種子の存在が私の中で俄に面白い存在となりました。興味が出てきましたから、何か良い論文がないか調べてみたいと思います。


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植物は常に闘っています。とはいえ、動物の喰う・喰われるの関係に比べると、非常に静かで密やかな闘いです。植物は常に周囲の他の植物と、光や栄養分を巡り競いあっているのです。その闘いには植物ごとに独自の戦略があります。本日はオオブタクサの戦略を例に、植物の闘いを見てみましょう。参考としたのは1996年に出版された、鷲谷いづみによる『オオブタクサ、闘う -競争と適応の生態学』(平凡社・自然叢書)です。

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まずはオオブタクサとはどんな植物なのでしょうか。実はオオブタクサは正式な名称ではなく、実際にはクワモドキというそうです。ブタクサに似ていて(実際に近縁)、とても大きいのですから、オオブタクサの方が実態を表しているような気がしますから、以降はクワモドキではなくオオブタクサで統一します。
オオブタクサは北米原産の帰化植物で、大豆に混入して持ち込まれた可能性があるそうです。輸入された大豆は種苗用ではなく加工用ですから、どのような経緯で野外に逸出したのかは良く分かりません。河原などによく生えるのだそうです。関東地方でもかなり増えているようです。しかし、生える場所からしてあまり目につきにくいような気がします。
オオブタクサは一時期のセイダカアワダチソウのように、ある区域を埋め尽くしてしまうことがあります。オオブタクサは風媒花ですから、密集地では花が咲くと大量の花粉で周囲が黄色く見えるほどだそうです。風媒花は風任せですから、数打ちゃ当たる方式で虫媒花より多くの花粉を作り、しかも周囲にばらまきやすい構造となっています。ですから、オオブタクサは花粉症の原因の1つになっています。ちなみに、セイダカアワダチソウは虫媒花ですから、それほど沢山の花粉を作りませんし花粉をやたらに環境中にばらまいたりはしません。風媒花ではないのでそんなもったいないことはしないでしょう。セイダカアワダチソウが花粉症の原因のように言われますが、果たして本当なのでしょうか。あのように、目立つ花を咲かせるのですから、虫媒花であるのはどちらかと言われたら分かりやすい方ですよね。


さて、日本の植物からするとオオブタクサはインベーダー(侵入者)なわけですが、そもそも日本の環境中にインベーダーの入り込む余地がなければ定着しません。一般的には隙を付くのが定石で、空いたニッチに侵入する場合と、攪乱地に侵入する場合があります。ニッチとは生態的地位という分かりにくい訳語がありますが、要するにどういう場所でどんな環境かということです。空いたニッチ、つまりある環境を他の生き物が利用していない場合、競争相手がいないため簡単に侵入出来ます。次に攪乱地ですが、一般的には山火事や崩落地、洪水の跡など流動的な場所です。攪乱地では本来の生態系が崩壊していますから、様々な生き物が侵入するチャンスがあります。そのため、攪乱地では周囲より様々な生き物が見られ多様性が著しく高いことがあります。また、人工的な都市環境は本来の自然とは全く異なりますから、侵入者の比率が高い環境と言えます。しかし、オオブタクサは隙を付く戦略ではなく、あくまで競争して打ち勝つという在来の植物に真っ向勝負を挑んでいます。
※河原自体は攪乱地でもあります。

そもそも、オオブタクサは北米においても特殊な植物です。アメリカで実施された調査では、オオブタクサが生えると遷移が進まなくなるそうです。一般的に裸地には、まずイネ科の雑草など生長の早い一年草が生えてきます。その後は、先駆植物という荒れた環境に生える植物、例えばアカメガシワや松が生えます。環境は移り変わり、対応するように植物相も移り変わりますが、これを遷移と言います。オオブタクサは一年草としては非常に大型で、最大6mにもなります。背が高いと日照を独占できますから、オオブタクサは大変有利です。日照を巡る競争に勝てないのなら、オオブタクサが占有する区域では他の植物が生えることは非常に困難です。オオブタクサが生えると種の多様性は1/8にまで低下するということです。

では、なぜオオブタクサは他の雑草と競争して打ち勝つことが出来るのでしょうか? 背が高くなり太陽光を独占出来るということも確かに1つの理由ですが、オオブタクサより早く芽吹き生長する植物がいたら、オオブタクサの実生は陰となり育たないかもしれません。なぜ、オオブタクサが勝てるのか、非常に不思議です。
その理由の1つが、オオブタクサの種子のサイズが1cm近くにもなり、周辺の雑草の中では大型であることが原因だと考えられています。種子が大きければそれだけ沢山の養分を含んでいますから、発芽すると種子の沢山の養分を使って急激に生長することが出来るのです。
種子が大きいほど養分が多くなり生長が早くなりますから、他の雑草も種子を大きくした方が有利な気もします。しかし、種子の大きさは種によってバラバラですが、そこにもやはり意味があります。オオブタクサは親植物が巨大なので、大きな種子を作ることが出来るという側面もあります。しかし、それだけではないのかもしれません。
種子を作るには沢山の栄養分をつぎ込まなくてはなりませんから、親植物が種子を作れる限界があります。仮に親植物の種子につぎ込める栄養分が等量と仮定しましょう。その場合、大きな種子ならコストが高いので少数しか出来ず、小さな種子ならコストが低いので沢山作ることが出来ます。小さな種子は大量にばらまかれて、種子の養分は少ないので育たないものも多いのでしょう。しかし、実は種子のサイズは、種子に貯蔵された養分だけの問題ではありません。なぜなら、大きな種子は重いため基本的に親植物の近くに落下しますが、小さな種子は軽いため親植物から離れてあちこちに分散します。オオブタクサが同じ場所に高密度に生えるのは、種子が重くあまり拡散されないからでしょう。小さな種子はオオブタクサ集落でオオブタクサと競争する必要はなく、広く拡散してそのうちのどれかが良い条件であれば問題がないという訳です。そう考えると、必ずしも大きな種子が有利とは言えないような気がします。要するに戦略が異なるだけと言えるでしょう。


次にオオブタクサは種子の目覚めが早いと言います。関東地方では2月頃だと言います。種子は暖かくなると芽を出しますが、オオブタクサは他の雑草の種子が目覚める前にいち早く芽を出すのです。これは非常に有利な戦略ですが欠点もあります。早く芽を出してしまうと、まだ寒いこともあって霜が降りたり寒波などでせっかくの実生がダメージを受けて枯れてしまうかもしれません。しかし、オオブタクサはイヤらしいことに、種子の発芽にバラつきがあり、次から次へと順次発芽するので問題がないようです。
これは非常に優れた戦略です。何でも、オオブタクサはオギ原にまで侵入しているそうですが、これは種子の目覚めの早さと関係があるかもしれません。オギやススキなどは地下茎に栄養分を貯蔵しているため、暖かくなると急激に生長します。オギは人の背丈ほどになりますから、オギ原はオギが占有することは普通です。しかし、オギが目覚める4月までにオオブタクサはすでに生長を開始しており、アドバンテージがある状態から競争を始めるのです。


今回はオオブタクサを例に取りましたが、非常に面白い生態を持っていました。しかし、他の植物も非常に多様な戦略を取っています。何となく庭に生えているように見える雑草も、実は優れた戦略の末にそこに生えているのかもしれませんね。


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昨日、五反田TOCビルで春のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。
今年は杉花粉の飛散量が大変なことになっており、花粉症の私は苦しい日々を送っています。仕事もあるプロジェクトが佳境に入り疲労が蓄積していますから、ビッグバザールに行くか悩みました。しかし、個人的に多肉植物の流行り廃りを見に行く楽しみがあり、世相の多肉植物の流行りを目撃出来るビッグバザールはどうしても行かなくてはなりません。
しかし、最近は忙しいこともあり多肉植物に割ける時間が中々取れませんから、むやみやたらに増やすのも考えものです。まあ、見るだけでも構わない位の意気込みでビッグバザールに参加しました。さて、今年のビッグバザールはどんな感じでしょうか?

毎度そうですが、整理券が配られる早い時間には行きません。だいたいは開催時間ギリギリくらいの到着なので、混雑のピークを見ることにはなります。昨日は何故か山手線が遅延しており、想定より少しだけ遅れての到着でした。しかし、今回のビッグバザールは恐ろしい混み具合で、エレベーターホールの前まで人に溢れていました。待機列の整理がいまいちで、よく分からない列が出来ていたりしてやや混乱した雰囲気でしたが…。開場してからも待機列は動かず、会場に入るまで10分くらいかかりました。大変な盛況具合です。暖かくなり新型コロナも自粛が解禁されたこともあるのでしょう。
さて、肝心の会場ですが、意外にも大混雑といった感じではありませんでした。これはあれですね。今回は待機部屋がないから廊下で余計に混雑していただけですね。しかし、多肉植物ブームはまだまだ続く感じがします。若い人が多いこともあり、今後も盛り上がっていきそうです。

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今回の入場証はこんな感じ。ちゃんと日付も入るようになりました。

さて、今回のビッグバザールですが、アガヴェ専門店が2つもありました。ここ数回のビッグバザールに出店しているお店は人だかりが凄まじく、全く売り物が見えませんでした。今、流行りのアガヴェはなんでしょうか? 気になりますが、私のような野次馬が熱心なアガヴェファンを掻き分けて見に行くのも憚られましたから断念しました。その他にも初出店とおぼしきお店もありました。また、今回はエケベリアなどのベンケイソウ科植物も割と目につきました。ピクタ系ハウォルチアも専門店が2つほどありましたし、中々人気があるようです。ビッグバザールではお世話になる可能性が高いラフレシアリサーチさんは、種子販売と輸入品と思われる抜き苗(ベアルート)が並んでいましたね。コミフォラが安かったのですが、基本的にベアルートは買わない主義なので今回は断念しました。

ここからは、購入品に入ります。例によって名前はラベル表記のままです。
①入り口直ぐ左のアロエのカット苗が売っているブースへ。今回はカラフルなアナナスも並んでいました。このブースではGonialoe sladenianaやEuphorbia greenwayiをかつて購入したことがあります。今回はFouquieriaを購入しました。基本的にFouquieria fasciculataは小苗でも高額なので買わないのですが、今回はえらく安かったので購入。

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Fouquieria fasciculata
いつの間にやらフォウクィエリアも7種類目です。私が目ざとく探しているからというより、最近は本当に何でも売っているからだと思います。

②次は大型の高級コーデックスを並べているブースへ。毎度、足下に安い苗をザルに入れて並べていますが、非常に安いユーフォルビア苗(花キリン系が多い)がありますから今回もチェックしました。やはり、安いユーフォルビア苗が豊富にありましたので購入。
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ユーフォルビア・スクアローサ
Euphorbia squarrosaの実生苗。「奇怪ヶ島」などという、凄い名前があるようです。「飛竜」E. stellataのように塊根から枝を沢山出すタイプです。


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ユーフォルビア・ウーディー
Euphorbia woodiiの実生苗。中型のタコものユーフォルビア。最近は販売されるタコものも色々増えてきました。タコものは育てるのが苦手なんですが、よく目にする種類以外は非常に高額なことが多いので、安いとつい手が出てしまいます。


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ユーフォルビア・カプサインテマリエンシス
Euphorbia cap-saintemariensisの実生苗。塊根性花キリンです。E. decaryi var. cap-saintemariensisとされたこともありますが、遺伝子解析の結果ではE. decaryiやE. francoisii系ではなく、E. tulearensisに近縁なようです。すでに花芽がありますから、近日花を御披露目出来そうです。


③次は毎回出店しているガステリアやハウォルチアなどの交配種が並ぶブースへ。毎回出店していますが、購入は今回が始めてです。タコものの小苗を1つ購入。
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神蛇丸 クラバリオイデス var. トルンカタ
Euphorbia clavarioides var. truncataの実生苗。難物との噂がありますがどうでしょうか? 現在は「飛蛮頭」(なんという名前だ!)Euphorbia clavarioidesと同種扱いされていますが、枝が水平に並ぶタイプです。ちなみに、truncataとは、ラテン語で断ち切られたという意味です。「玉扇」Haworthia truncataは、まさに'truncata'と言ったところです。

④最後は以前にEuphorbia handiensis、木更津Cactus & SucculentフェアではEuphorbia balsamiferaを購入したブースへ。
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Euphorbia viguieri var. capuroniana
これも一応は花キリンの仲間です。Euphorbia viguieri var. capuroniiとしているサイトが結構ありますが、おそらくはEuphorbia capuroniiとの混同なので誤りですよね。


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Euphorbia horrida var. norveldensis
正しくはvar. noorsveldensisです。var. norveldensisはネットでも出てきますから、どうやら誤った名前が流通しているみたいですね。また、ホリダがポリゴナの変種となったことから、2013年にEuphorbia polygona var. noorsveldensisとなりました。
しかし、ポリゴナ系はいつの間にか11変種もあることになりました。しかし、違いがよく分かりません。var. polygona、var. horrida、var. anopliaくらいは分かりますが、市販されている様々なタイプのホリダがどの変種にあたるのかさっぱり分かりません。ポリゴナ系を分類したD.H.Schnabelの論文を探してみます。

今回は冬型はほとんどなく、最近少ないパキポディウム実生苗も復活の兆しがありました。また、今回はユーフォルビアが豊富でしたから、アロエは沢山あったものの購入しませんでした。Aloe pseudoparvulaは結構気になりましたが、安い苗しか買わないと決めてきたので購入せず。原種ガステリアやアストロロバは相変わらず壊滅状態でしたが、初出店のブースで硬葉系ハウォルチアがまあまあありました。H. coarctataやH. viscosaあたりですかね。総評としては概ね満足で、色々見られて良かったです。しかし、朝方は肌寒かったものの、結構気温は上がり会場の熱気もあり正直暑かったです。この分だと夏のビッグバザールは恐ろしい地獄の暑さになりそうです。

しかし、ビッグバザールの会場となるTOCビルは3月に建て替えが始まるため、これからどうするのか気になっていましたが、夏と秋のビッグバザールもTOCで開催するようです。どうやらTOCビルの工事が6ヶ月~1年ほど延期となったことが原因とのこと。五反田TOCは行きやすくてよかったので、とりあえずはほっとしています。


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早いもので、すでに3月も半ばです。本日は五反田TOCで開催されている春のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行っています。ところで、ここのところ春めいた暖かい日が続きますが、杉も春を感じているのか花粉もいよいよ増えてきて花粉症の私は苦しい毎日ではあります。しかし、少しずつ生長する多肉植物も出てきました。嬉しいやら辛いやら…

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Dendrobium lindleyi
1本だけ早く咲きましたが、続けて3本咲いて実に華やか。そういえば、デンドロビウムに限らず蘭は根元に偽球根(pseudobulbous)があり、栄養分を貯蔵します。蘭は着生するものが多いし、かなり特殊化した植物です。

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Gasteria baylissiana
蕾は膨らんでいましたがようやく咲きました。実にかわいらしい花です。自生地ではガステリアの蜜を吸いに来た太陽鳥により受粉します。日本ではガステリアの蜜を吸いに来る生き物はいるのでしょうか?


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Aloe albiflora
花茎が伸びてきました。アロエらしからぬ白い花が楽しみです。


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Euphorbia phillipsioides
冬に一度咲きましたから、これで二度目の開花です。花はユーフォルビアの中でも特に小さく目立ちません。

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Euphorbia phillipsiae
こちらも少しだけ開花。


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Euphorbia greenwayi
根元から伸びてきた新芽があっという間に生長しました。勢いがあります。


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Euphorbia begardii
葉はほとんど落ちましたが、花芽がいつの間にか出ていて、1つだけ急に開花しました。花色は徐々にピンク色になります。Euphorbia primulifolia var. begardiiでしたが、最新の論文ではEuphorbia begardiiとされ独立種としています。キュー王立植物園のデータベースでも、論文を受けて学名が変更されています。

最新のユーフォルビアの論文はこちらをどうぞ。


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Euphorbia imperatae cv.
花キリンは割と一年中花が咲いたりしますが、暖かいせいか生長が始まり花芽が沢山付いています。これからが楽しみです。それはそうと、こちらも最新の論文で学名が変わりました。Euphorbia milii var. imperataeから独立しています。いままでは、すべてE. milii系にまとめる傾向がありましたが、肝心のE. miliiとは何かは混乱しはっきりしていなかったようです。


3月は多肉植物のイベントが沢山ありますが、行くか否か悩みどころです。見るだけでも楽しいので、なるべく行きたいですが花粉症が酷いので引きこもりたくもなります。そういえば、今日はつくばでザワフェス・リユニオンという多肉植物のイベントが開催されています。つくば駅の近くですから行きやすいのもいいですね。しかし、残念ながらビッグバザールと被るので行けませんが、興味はあります。被らない日にまた開催されるなら、一度見に行きたいですね。ビッグバザールの報告は明日します。お楽しみに。


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花粉を運ぶのは誰か? 植物のポリネーター(花粉媒介者)については個人的に気になっており、過去にはアロエやアガヴェについて論文を調べて記事にしました。しかし、陸上植物のライフサイクルを考えた時、ポリネーターの働きにより種子が出来るだけでは駄目で、その種子が散布される必要があります。果実を動物に食べてもらい、あちこちで糞をして糞中の種子がばらまかれるタイプのものが多いでしょう。また、オナモミのようにトゲなどにより動物の体に付着して運ばれるものも割とあります。エライオソームという栄養分が着いている種子は、蟻に巣穴に運搬してもらうタイプです。また、Uncarinaは踏みつけ種子で、果実が脚に絡み付いて踏まれる度に種子がこぼれるなんていうタイプもあります。逆に動物を利用しない植物は多くは羽があり風で散布されます。また、ユーフォルビアは種子を弾け飛ばしますが、散布すると言っても対して距離ではありません。
このように、種子の散布は様々な方法があり、植物によって様々な工夫が見受けられます。最近はこの種子の散布が気になるところです。ということで、本日はその一例を調査した論文をご紹介します。それはLaura Yanez-Espinosa, Felipe Barragan-Torres, Alejandra Berenice Ibarra & Jaime Ivan Moralesの2019年の論文、『Dispersal of Dioon edule cycad seeds by rodents in tropical oak forest in Mexico』です。この論文ではメキシコのサンルイスポトシ州の熱帯オーク林でDioon eduleというソテツの種子の行方を追跡しています。

ソテツは中生代に豊富で多様性があり、コーンごと種子を草食恐竜が食べることにより、糞として種子を拡散したと言われています。恐竜は絶滅しましたが、現在のソテツの種子は誰が運んでいるのでしょうか?
まず、実際のソテツの種子は1~3cmと大きいので、重力で落下し親植物の近くに留まります。しかし、雨により分散し、または小川の流れに乗ることもあります。とはいえ、基本的に分散力は低い種子と言えるでしょう。論文では自動撮影により種子を運ぶ動物を観察しました。結果は4種類のネズミが、Dioon eduleの種子を持ち去りました。しかし、ソテツの種子には毒があると言われています。
実際にマウスにDioon eduleの種子を与えると、神経系にダメージがあり7日後に死亡したそうです。しかし、この実験はDioon eduleの種子のみを餌とした場合です。実際に様々なものを食べている場合には、それほど問題にはならないようです。ネズミの巣穴にファイバースコープを入れて、巣穴の内部に貯蔵された種子を観察しましたが、やはり齧られて食用とされていることが分かります。
さて、せっかくの種子が食べられてしまっては意味がないような気もしますが、実際にはあちこちに貯蔵した種子のほとんどは放置される運命のようです。日本でもリスやネズミがドングリをやはりあちこちに貯蔵しますが、そのほとんどは利用されません。巣穴は地上より湿り気があり発芽に適した環境です。しかも、ネズミの糞などで周辺環境は富んでいます。何より、親株から離れた場所に移動できるメリットは計り知れません。

ネズミの種類により種子に対する行動に差があります。小型のネズミより中型のネズミの方が、Dioon eduleの種子を積極的に巣穴に運びます。これは、どういう理由でしょうか? 単純にとらえるならば、小さいネズミは大きい種子を運ぶのが大変だからです。エネルギー効率を考えた場合、大きすぎる種子は運搬にかかるコストが高くなりすぎて非効率的です。自身のサイズに見合ったより小型の種子を運搬する方が良いということになります。逆に中型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子を運搬することは大したコストがかからないのでしょう。しかし、論文では他の可能性にも言及しています。それは、種子の毒性についてです。今さら種子の毒性について蒸し返すのかと思われるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。小型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子は毒性が高すぎるのかもしれません。なぜなら、Dioon eduleの種子を同じ量食べた場合、体重の重い中型のネズミにとっては許容量ですが、体重の軽い小型のネズミにとっては致命的かもしれないからです。小型のネズミにとっては、運ぶのが大変な割にほんの少しずつしか食べられない効率の悪い食べ物です。

以上が論文の簡単な要約と言うより、一部を抜粋したものです。実は論文にはオークのドングリと比較したりとか様々な要素が含まれますが、今回は敢えて省きました。それは、種子が運ばれることのメリット・デメリットと、種子を運ぶ動物のメリット・デメリットについて重視したからです。
ネズミは何もソテツのために種子を運んでいるわけではありませんが、結果的に種子は拡散されます。しかし、そのネズミもサイズによりメリット・デメリットを天秤にかけて、自身のためだけに種子を運ぶのです。自然の中に何とも言えない絶妙なバランスが存在することに、大変驚かされますね。


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普段は本ばかり読んでいるので、積み上がった本の山が出来てしまいました。仕方がないので整理していたところ、大昔に神保町の古本街で入手したサボテンの本が出てきました。昭和28年に刊行された『サボテン綺談』(伊藤芳夫/著、朝日新聞社)です。

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タイトルに綺談とありますように、様々なサボテンに関するエピソードが語られます。ここいらへんの話も大変面白いのですが、後半の日本におけるサボテン受容、あるいは需要について書かれた日本サボテン史が個人的に大変興味深く感じます。昔のサボテンの流行はどのようなものだったのでしょうか?

模索期 1573~1865年
サボテンの渡来は非常に古いようですが、徐々に本草学者の目に止まるようになりました。しかし、「草にあらず、木にあらず」だとか「草中の異物なり」などと、変わってるなあ位の感想だったみたいです。模索期末期には様々なサボテンが海外から入ってきたようですが、育て方が分からずに丈夫なウチワサボテン以外は枯れてしまったみたいです。

黎明期 1865~1912年
明治時代に入り海外との交通が開け、流行があったようです。サボテンの斑入物が大流行し、サボテンの品評会が開かれ、早くもサボテン業者が現れました。明治末期には日露戦争の好景気により、サボテンは流行し多くのサボテン業者が出てきました。

混乱期 1912~1925年
大正時代に入ると様々な階級に普及し、東京中心だったのが関西にも拡がり、大正末期には全国に拡がりました。様々なサボテンが輸入され各業者が名前を付けたので非常に混乱した状態でした。

黄金期 1925~1942年
昭和に入りますが、この時代には研究熱心な栽培家が現れ始めました。大きなサボテン業者も現れ日本中の業者がカタログを出していたようです。

空白期 1942~1950年
太平洋戦争突入によりサボテン栽培どころではなくなり、業者も鳴りを潜めました。

復興期 1950年~
終戦後の混乱から復興までですが、戦争により多くのサボテンは珍品・銘品含め失われました。しかし、サボテンも復興の兆しがあり、若い世代も入ってきて、各所に愛好団体ができて様々な催し物が開かれています。斑入り物も流行っているそうです。

この本の出版が昭和28年、つまりは1953年ですから、終戦からまだ8年しか経っていません。まさに復興期の最中に書かれたということがわかります。とはいえ、サボテンの本が出版されるのは需要があるからです。すでに、サボテン・ファンは沢山いたということなのでしょう。しかし、このようにサボテンの歴史を知ると、それ以降も気になってしまいます。この本が出版されてから現在までのサボテンの流行はどうなのでしょうか?  ここ10年くらいは多肉植物ブームで、塊根植物、エケベリア、アガヴェなど、次から次へと流行が移り変わり、サボテンは少数派です。しかし、裾野が広がったことからサボテン人口自体は増えているような気もします。多肉植物のイベントでは若い人が非常に多いので、サボテン界にも新しい風が吹いているのかもしれませんね。


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剣光閣はスペインのカナリア諸島原産のユーフォルビアです。現在地の情報については、論文を参照に割と詳しい解説をしたことがあります。

原産地の情報についてはこちらの記事をご参照下さい。
冬に入手したこともあり完全に休眠状態でしたが、最近は日中暖かいせいか新しいトゲが出てきました。春がやって来ているという実感を感じます。

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剣光閣はスペインのカナリア諸島原産ですが、分布はカナリア諸島で2番目に大きいFuerteventura島のハンディア(Jandia)半島にあるハンディア自然公園の保護区域内の2箇所しか知られておりません。非常に狭い範囲に生える固有種です。火山の堆積谷に育ち、気候は非常に乾燥し暑く強風が吹きます。Euphorbia canariensisやAeonium sp.と共に生育します。ハエ(greenbottle flies)により受粉するそうです。
剣光閣の学名は、1912年に命名されたEuphorbia handiensis Burchardです。種小名は自生地のハンディア半島から来たのでしょう。


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昨今、環境問題が声高に叫ばれてはいますが、中々どうして解決策が見つからない難題です。環境破壊や異常気象は植物の生育にも多大な影響を与えます。日本でも夏の暑さは徐々に酷くなり、熱帯のようなスコールがあったり、超大型台風が頻繁に発生したりと異変は続きますが、実際に冷夏・暖冬も含め農作物の被害は相当なものがあります。異常気象を含め気候変動は野生の植物にも様々な影響を与えるはずです。分かりやすい例では、温暖化によって高山植物の分布はかなり変動しているそうです。数十年も継続して調査されている山では、かなりダイナミックに分布や高山植物の種類が変動していることが分かりました。高山はある意味で極端な環境ですから、気候変動の影響を受けやすいように思えます。その極端な環境に適応しているので、高山植物は急激な変動には対応しにくい植物と言えるでしょう。同様に極端な環境に育つ多肉植物にも、気候変動は影響して来るはずです。本日は、そんな多肉植物の1つ、砂漠に生えるパキポディウムと気候変動の関係について考察したDanni Guo, Leslie W. Powrie, Danielle W. Boydの2019年の論文、Climate Change and Biodiversity Threats on Pachypodium Species in South Africa』です。

南アフリカ南部にはPachypodium succulentumとPachypodium bispinosumという2種類のパキポディウムが分布します。この2種類のパキポディウムは分布が重なり、一見して良く似ていますが、遺伝的にも近縁であることがわかっています。
気候変動は南アフリカにおいても重大な問題であり、特に降雨量の変動は元より乾燥地に生える多肉植物にとって深刻な脅威である可能性が高いでしょう。
さて、この研究では過去の南アフリカの気象データから、今後の気候変動をコンピューターでシミュレートし、現在の2種類のパキポディウムの分布をやはりコンピューターでシミュレートしています。


結論として、P. bispinosumは気候変動により大幅に生息地が減少することが分かりました。もともとP. bispinosumは生息域が狭いこともあり、急激に個体数が減少する可能性が高いようです。なぜなら、分布が広ければ環境も様々で中には対応出来る環境があるかもしれませんが、分布が狭いとそうはいかないでしょう。
逆にP. succulentumはそれほど生息地が減少しません。ある生息地は消滅しますが、代わりに現在P. succulentumが生息していない他の地域に分布が移動しています。生息地が広いことが幸いしているようです。
さて、気候変動のうちパキポディウムに影響を与える要因をピックアップすると、降水量の季節性、乾季の降水量、暖かい四半期の降水量が挙げられます。これらは正にも負にも影響します。重要なことは、パキポディウムに影響を与えるのは気温ではなく降水量の変動であるということです。

以上が論文の簡単な要約です。地球温暖化は何も気温が高くなるだけではなく、海水面が暖められて海流に影響したりと、蒸発した湿った空気が影響を及ぼしたりと、様々な影響があります。当然ながら、南アフリカの降水量にも影響が出てくるのでしょう。しかし、今回はパキポディウムに影響を与えうるであろう他の様々な要因については考慮されていません。論文の主張だけでは弱く、まだ絶滅のリスクについて語ることは難しいとしています。ただし、それは人間の環境に与える様々な負の影響も加算されることになりますから、パキポディウムの明るい未来を描くことは大変難しいことのように思われます。


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文庫クセジュはフランスの新書のシリーズですが、1941年に出版されている古くからあるシリーズです。日本でも1951年から白水社から翻訳されており、国内だけですでに1000点以上が出版されております。様々な内容の本がありますが、フランス独特?の癖が強くて読みにくいものが多く、一般的とは言えないかもしれません。
さて、気になる文庫クセジュはたまに購入していますが、『花の歴史』というタイトルの本を入手しましたのでご紹介します。1965年の刊行ですから、割と古い本ですね。


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あくまでも、当時のフランスの目の届く範囲の地域と出来事からなりますから、そのほとんどはヨーロッパとヨーロッパの植民地あたりの話が中心となります。内容は3部構成で、「古代の諸民族における花」、「芸術の中の花」、「花の歴史」からなります。
最初の「古代の諸民族における花」は文献や遺物から、ギリシャ、ローマ、エジプト、インドなどの古代に飾られたり植栽された植木な花を再現しています。次に「芸者の中の花」は、彫刻や絵画、文学等による花について語っています。
最後に「花の歴史」ですが、主にヨーロッパで流行した植物の話です。チューリップ・バブルの話やバラ、蘭もありますが、やはり気になるのはサボテンと多肉植物です。少し見てみましょう。

フランスではサボテンは19世紀から流行り始めました。特に第二帝政時代のメキシコ遠征により沢山のサボテンがもたらされました。しかし、それも長続きせず、19世紀末から20世紀初頭にはブームは過ぎ去ったようです。Ch.バルデにより1892年に出版された『フランスの園芸』には、サボテンはわずか一行しか記載がありませんでした。当時流行っていた菊や蘭、シダにかなりの部分を割いているそうです。しかし、それも短期間のことで、やがて愛好家が現れます。最初のサボテン愛好家協会は1890年にアンヴェルス(ベルギーのアントウェルペンのこと)に創立されました。ドイツは長い間サボテンの国になっていました。第二次世界大戦前にはサボテン熱は高まり、1935年にはサボテン協会の会員は2000人以上となり、主要な町にサボテン愛好家のグループがあったほどです。
1932年にはP.フルニエはフランスのサボテン趣味の再興を語っており、その理由を考察しています。曰く、「住居が狭くなり大抵の花は部屋で育てることは困難となったが、サボテンは置いた場所に満足している。その穏やかな不変の姿に接し、熱や苛立ちを鎮める楽しみを見つけている」とのことです。
著者はオプンチア(ウチワサボテン)は非常に丈夫だが、愛好家にあまり求められていないとしています。オプンチアは大きく育つので鉢植えで室内に置けないことが心配され、フランスの気候では花が咲きにくいことが不人気の原因のようです。ウニサボテン(Echinopsis?)は最も普通のサボテンで、栽培が容易く花を多く咲かせます。マミラリアは栽培が比較的易しく花が多く美しいことから、非常に評価されているということです。カニサボテンとクジャクサボテンは最も古くから知られたサボテンの1つで、Phyllocactus phyllanthoidesは夏の間は薔薇色の美しい花が沢山つき非常に良く  知られているそうです。
サボテンは現在では非常に細分化されましたが、はじめて学名がついたのはサボテンをすべて含むCactus属でした。この本が出版された当時はどうだったのでしょうか? 出てくる名前を現在と比較していませんが、結構変わっているものもありそうです。


さて、続いて多肉植物も少しだけ見てみましょう。Sempervivumのことを、山の岩壁に付着したアーティチョークのようと表現しています。ベンケイソウ科では、Sedum、Aeonium、Cotyledon、Crassula、Echeverie、Greenovia、Kalanchoe、Pachyphytum、Rocheaがあるとしています。メセン類は500種類、Agaveは300種類ほど知られているとしています。アオノリュウゼツランは地中海沿岸部や北アフリカ、アゾレス諸島、マデイラ諸島、南アフリカ、マウリチウス島、インド、インドシナで野生化しているそうです。Agave parryiやAgave utahensisはパリ平野でも生育しているとのこと。Agaveの近縁種としてYucca、Agaveに間違われる植物として約200種類あるAloeがあります。Sansevieriaは室内栽培植物として、またAstroloba、Gasteria、Haworthiaはフランスでもコレクションとして増えつつあるようです。euphorbes(Euphorbia)は不思議なほどサボテンに似ており、P.フルニエは「素人でなくても騙される」と述べつつ、800種類以上あるトウダイグサ科植物を分類しています。灌木性ユーフォルビア、柱状ユーフォルビア、メドゥーサ・ユーフォルビア(タコもの)、メロン形ユーフォルビア(E. meloformis、E. obesa)があるとしています。サボテン型のユーフォルビアはサボテンとして18世紀末にフランスに渡来しましたが、最近まで広まりませんでした。スタぺリアの仲間は200種類以上あり、時にサボテンに似ています。スタぺリアは開花時に乾いた音を出して破裂し、驚くほど大きい星形の肉質な花を咲かせます。しかし、不幸なことに死肉の臭いがしてハエを呼ぶので、部屋で栽培することは出来ないとしています。キク科にも多肉植物はあり、KleiniaとOthonna、Senecioが挙げられています。
以上のように多肉植物は現在の主要なものは概ねあったように思います。今では一般的なHaworthiaは当時のフランスではあまり出回っていなかったようですね。また、あまり導入されていない節があるユーフォルビアは、意外にも様々な形態のものが認識されていたことがわかります。


というわけで、58年前に出版された園芸書を少しだけご紹介しました。とはいえ、これは日本語版の出版年ですから、原版はもう少し遡るのでしょう。当時の認識は現在と異なることがありますが、意外とその差異が面白かったりします。サボテンや多肉植物以外の部分の方がヨーロッパでは園芸として長い歴史がありますから、実は今日ご紹介した部分以外の方が面白かったりします。「花の歴史」というタイトル通り、興味深いエピソードが語られます。ご紹介したいのは山々ですが、長くなってしまったので本日はここまでとさせていただきます。


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3月に入り寒暖の差が激しいなっています。朝晩は寒いのですが、日中はかなり暑くなったりします。これからは多肉植物たちの動きが活発になりそうです。3月は多肉植物のイベントも盛り沢山な上、そろそろ屋外の多肉植物置き場の整備もしなければなりません。今年の冬は何故か強風の日が多く、多肉植物置き場のビニールがビリビリに破けたので、張り替えなくては。あと、手狭になってきたので、置き場の拡張を計画中です。

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Aloe parvula
花もそろそろ終わりです。思ったより丈夫で良く育ちますから、来年の花も期待出来ます。


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Dendrobium lindleyi
非常に丈夫で放置していても毎年開花します。去年は4月に咲きましたが、今年は早いですね。やはり、今年の冬は暖かかったみたいです。あと花茎は3本出ていますから、まだまだ楽しめます。


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Ionopsis utricularioides
こちらは東京ドームで開催される世界ラン展で10年前くらい前に購入しましたが、毎年開花します。手がかからなくて楽でいい洋ランです。ヘゴに着生させて育てています。というのも、斜め上方向に新しい芽を出すため、鉢植えだと根が浮き上がってしまい鉢に入らないから育てにくいのです。


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群星冠 Euphorbia stellispina
花芽が上がって来ましたが、群星冠のトゲは花由来です。花が咲かないとトゲが出ません。去年は正月明けには開花しましたから、今年は非常に遅い開花です。群星冠はアフリカのユーフォルビアには珍しく非常に低温に強いため、あまり気温は開花に関係がないような気がします。群星冠はトゲがまばらになりがちです。実は密にトゲをつけるチャレンジ中ですから、新しいトゲが出てほっとしています。


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去年の開花は経緯を追っています。

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Gasteria baylissiana
花芽が膨らんで来ました。小型種なので花茎も短いようです。


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花は小さくてかわいらしいですね。

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Fouquieria columnaris
新しい葉が生えて来ました。Fouquieriaの中では非常に葉が柔らかいせいか、葉ダニが蔓延して葉が萎れて生長がいまいちでした。今年は気を付けたいものです。


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Fouquieria leonilae
正月明けに購入したので、ずっと葉なしでしたがはじめて葉がお目見えしました。

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Euphorbia gamkensis
緑豆くらいのサイズの苗でしたが、冬の間に小豆くらいにはなりました。

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Tulista marginata
葉が回転し始めました。生長すると葉の形が変わるでしょうから、これからが楽しみです。

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Mirabilis jalapa
葉が急激に伸びて来ました。「ミラビリス・ジャラパ」の名前で販売していますが、要するにただのオシロイバナです。何故かネットでは高額で販売されていましたから、あまりにバカバカしいので記事にしたことがあります。しかし、未だに高額で販売されているようです。自分で種を取ってきて撒いた方が早いし、直ぐに大きくなりますから、わざわざ買うものではありませんよね。


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以前、Aloe parvulaについて調べていた時に、嫌石灰植物という言葉を知りました。嫌石灰植物とはケイ酸植物とも言われるようです。最近、イネ科植物などケイ素要求性が高い植物があるという記事を書いたことがあります。取り込んだケイ素で植物は体を補強しています。逆にトマトはほとんどケイ素を吸収しませんが、どうやらトマトは石灰を吸収して体を補強しているみたいです。そのため、トマトはカルシウム要求性が高く、カルシウムが不足すると尻腐れになるそうです。また、バラやカラタチもトゲにカルシウムを蓄積しているようです。しかし、残念ながら日本ではアルカリ性土壌ではまともに植物を育てるのは難しいようです。それは、どうしてでしょうか?

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Aloe parvula

ここで、森林総合研究所の2011年のレポートを見てみましょう。それは、香山雅純、山中高史、青木菜保子による『石灰質土壌に移植されたカシ2種の外生菌根菌の接種効果』です。九州には石灰岩地が多く石灰を採掘しています。そして、鉱山の採掘跡地は緑化が義務付けられているそうです。しかし、そもそも石灰岩地は自然に樹木が生えにくい土地ですから植樹が難しいのです。なぜなら、多量のカルシウムにより土壌が強いアルカリ性となっており、その影響で鉄やマンガン等の微量元素の吸収が抑制され、リンがカルシウムと結合してしまい植物が利用出来ないのです。そのため、石灰岩地の植生は構成が異なります。樹木では、低い標高の石灰岩地の主要樹種であるアラカシや、標高の高い石灰岩地にみられるウラジロガシが知られています。アラカシやウラジロガシはブナ科の植物ですが、ブナ科の植物は菌類と共生関係を結んでおり植物の根に菌糸がまとわりつく菌根を形成します。石灰岩地では菌類菌が分泌する酸により、カルシウムと結合したリンを溶かして植物が活用出来るようなるそうです。
さて、この研究ではアラカシとウラジロガシのドングリを植えて、菌根を形成する茸であるツチグリとニセショウロを培養したものを接種しました。①茸を接種しないグループ、②ツチグリを接種したグループ、③ニセショウロを接種したグループで、10ヶ月栽培しました。1グループあたり10本の個体数で実験しています。土壌のpHは7.03で弱アルカリ性です。

気になる結果は以下のようになりました。
ウラジロガシ
①接種していないグループでは、葉は0.5倍と減ってしまいました。幹と枝は2.5倍と微増、根は1.0倍と変化無しでした。
②ニセショウロを接種したグループでは、葉は1.1倍、幹と枝は2.1倍、根は1.8倍とすべて微増しました。
③ツチグリを接種したグループでは、葉は5.1倍、幹と枝は9,9倍、根は6.4倍とすべて著しく生長しました。

アラカシ
①接種していないグループでは、葉は0.7倍と減ってしまいました。幹と枝は1.4倍、根は1.2倍と共に微増しました。
②ニセショウロを接種したグループでは、葉は3.0倍、幹と枝は3.6倍、根は2.5倍とすべてで増加しました。
③ツチグリを接種したグループでは、葉は7.6倍、幹と枝は9.8倍、根は6.6倍とすべて著しく生長しました。

というように、アラカシもウラジロガシも、菌根菌の接種により生長が促進されました。ここから2つのことが読み取れます。1つは、石灰岩地に生える=アルカリ性土壌に強いと思われるアラカシやウラジロガシが、菌根菌がいないとまともに生長出来ないということです。というよりも、菌根菌と共生しているから石灰岩地で育つことが出来ていたのでしょう。2つ目は、ニセショウロよりツチグリの方が効果的であったことです。これは、ニセショウロがアルカリ性土壌に弱いので、ニセショウロ自体が上手く育たないのでしょう。もしかしたら、嫌石灰植物は共生する菌類がアルカリ性に弱いということもあり得るのかもしれません。
しかし、植物と菌類との共生関係は思った以上に重要であることがわかります。サボテンも菌類との共生が有効であるという論文を昨日記事にしました。他の様々な多肉植物も知られていないだけで、地下では菌類と共生関係を結んでいるのかもしれませんね。



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多くの野生の植物は菌類と共生関係を結んでいます。積もる落ち葉を剥がすと、茸の菌糸が一面に張りめぐらされています。森の木々は地下世界に広がる菌糸により、繋がっていたりします。これを菌根と呼んでいます。菌根は不思議なもので、植物の根が菌糸の服を着ているようなもので、植物と菌類はお互いに養分をやり取りしています。この菌根は思われていたより重要であることが近年わかりつつあり、様々な研究が活発になされているようです。さて、そんな菌根ですが、サボテンに対する影響を調べた研究がありましたのでご紹介します。Domenico Prisaの2020年の論文、『Gigaspora Margarita use to improve flower life in Notocactus and  Gymnocalycium plants and roots protection against Fusarium sp.』です。

この研究ではGigaspora margaritaという菌類をサボテンと共生させて、サボテンの生育とサボテンの病原菌に対する影響力を見ています。まずは、実験に使用したサボテンは、Gymnocalycium baldianum、Gymnocalycium mihanovichii、Notocactus eugeniae、Notocactus leninghausiiです。共生菌のGigaspora margaritaはグロムス門に分類されます。グロムス門は植物の8割と共生可能なグループで、アーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、植物の根の組織内に菌糸が侵入して深く結びついており、主にリン酸を集めて植物に与えています。

栽培10ヶ月後、Gigaspora margaritaのあるグループとないグループで比較したところ、Gigaspora margaritaのあるグループでは、4種類のサボテンは高さと円周、地上部と根の重量、花と果実の数、花の寿命がすべて高い値でした。これは面白い結果です。根の重量があるということは根の張りが良いということです。当然、サボテンの生長にプラスでしょう。さらに、花数については、サイズが大きく栄養状態が良ければ、花数も増えるのは道理です。しかも、花の寿命が伸びていますから、花数の多さも加算されて、結果として果実も増えています。花の寿命が長いと、それだけ受粉のチャンスが増えますからね。

次に病原菌に対する反応です。この研究では、フザリウム(Fusarium)という植物感染性のカビを接種しています。フザリウムには沢山の種類がありますが、植物寄生性のカビが複数含まれます。フザリウムは実はまとまりのあるグループではありません。菌類には完全世代と不完全世代があり、この2つの世代を繰り返しています。完全世代とは有性生殖により胞子を作る世代で、不完全世代とは分裂や出芽など無性生殖する世代のことです。このうち、不完全世代しか知られていない菌類を不完全菌と呼んでいました。不完全菌は特徴で分類することが難しく、わからないものは取り敢えず不完全菌とされてしまっていたのです。というのも、完全世代と不完全世代では姿が全く異なることが多く、しかも違う植物に寄生します。それぞれの世代がすでに発見されていても、それが同じ種類であるとはわからなかったりします。とまあ、話が脱線しましたが、Gigaspora margaritaの有無で違いはあるのでしょうか?
結果は、Gigaspora margaritaがあることにより、サボテンの死亡率の大幅な低下が見られました。G. baldianumでは死亡率3.61%が0.78%、G. mihanovichiiでは死亡率2.84%が0.21%、N. eugeniaeは死亡率2.46%が0.21%、N. leninghausiiは死亡率0.84%が0.21%になりました。つまり、アーバスキュラー菌根の存在により、有害なフザリウムの被害を減らすことが出来たのです。
植物に感染するカビは特に農作物で良く調べられており、アーバスキュラー菌根菌の存在によりFusariumだけではなく、Aphanomyces、Cylindrocladium、Macrophomina、Phytophthora、Pythium、Rhizoctonia、Sclerotinium、Verticillium、Glomusといった病原菌に対しても防御する効果があることがわかっています。アーバスキュラー菌根菌はフザリウムだけではなく、様々な病原菌に対してもサボテンを守ってくれる可能性があると言えるのではないでしょうか。今後、研究が進展した暁には、サボテン用のアーバスキュラー菌が販売される未来がやって来るかもしれませんね。


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ビスピノスム(Pachypodium bispinosum)はアフリカ大陸原産のパキポディウムです。パキポディウムはマダガスカルで非常に多様化しましたから、やはりパキポディウムと言えばマダガスカルが本番といった感じは否めません。最近のコーデックス・ブームを牽引してきたグラキリウスは、やはりマダガスカル原産で現地球が大量に輸入されて来ました。しかし、アフリカ大陸原産のパキポディウムは今一つ目立たない存在です。しかし、これはこれで面白いので、本日はアフリカ大陸原産のビスピノスムをご紹介します。

ビスピノスムは外見的にはマダガスカル原産のパキポディウムとはかなり異なります。マダガスカルのパキポディウムは枝が太くずんぐり育ち、花が咲くと分岐します。しかし、ビスピノスムは細い枝をヒョロヒョロ伸ばし、開花とは関係なく分岐しアチコチから枝が出てきます。ですから、ビスピノスムは伸びすぎた枝を剪定しながら、まるで盆栽のように育てます。これは、P. succulentumと共通する特徴です。実はビスピノスムはスクレンツム(サキュレンタム)と見た目通り近縁で、花が咲かないと中々区別がつきにくいと言います。ビスピノスムとスクレンツムは南アフリカ南部に分布が重なり、遺伝的にも近縁です。ちなみに、遺伝的解析の結果では、ビスピノスムとスクレンツムは近縁で、この2種類に一番近縁なのはP. namaquanumということです。さて、では良く似たビスピノスムとスクレンツムの違いは何かというと、まずは花が異なります。また、スクレンツムはトゲか短いと言われています。実際に見てみます。
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Pachypodium succulentum
トゲは短く、葉の裏には毛はありません。


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Pachypodium bispinosum
トゲは長く華奢。葉の裏には少しだけ毛があります。


ビスピノスムは南アフリカの東ケープ州に分布しますが、通常は石の多い日当たりの良い場所に見られます。ビスピノスムとスクレンツムは冬は氷点下でも耐えることが出来るそうです。栽培する上では塊根を露出させて育てますが、自生地ではほとんど埋まった状態が通常のようです。我が家のビスピノスムの生育の様子を見てみます。
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2022年2月。去年の冬は葉がすべて落ちました。

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2022年7月。根元から新しい芽が吹きました。

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2023年3月。根元の枝はやたらと枝が伸びました。
購入時の写真も撮ったはずですが、なぜか見付からず…。枝は伸びましたが、思ったほど太りませんでした。とは言うものの、地下の塊根はどうなっているのか気になります。今年は植え替えるので非常に楽しみです。

ビスピノスムの学名は、1782年に命名されたEchites bispinosus L.f.から始まります。Echitesはフロリダ、中米、カリブ海地域に分布するキョウチクトウの仲間です。1837年にはPachypodium glabrum G.Donという命名もありましたが、先に命名された種小名である'bispinosus'が優先されるため、せっかく正しいくパキポディウムとしたのに認められません。1838年にはBelonites bispinosus (L.f.) E.Meyと命名されました。ちなみに、Belonitesはビスピノスムとスクレンツムのためだけに命名された属です。
さて、ビスピノスムがパキポディウムとされたのは1844年のことでした。つまり、Pachypodium bispinosum (L.f.) A.DC.です。良く見ると語尾が'-us'から'-um'に変わっています。属名が変更される時に語尾が変わることもありますが、どういう規則なのかはよくわかりません。ここら辺はラテン語そのものの規則もあるでしょうから、何やら難しそうですね。ちなみに、ビスピノスムを最初に命名したL.f.とはLinne filiusの略ですが、この'filius'は名前ではなく「息子」という意味で、学名のシステムを作ったCarl von Linneの息子です。しかし、Carl von Linneとvon Linneの息子も同じ名前なので、区別するために「リンネの息子」という表記になっているようです。
種小名の'bispinosum'は、'bis-'は「2回」とか「2度」という意味ですが、'pinos'は「松の木」ですが、正直よく分からないなあと思いました。しかし良く考えたら、これは'bis + spino'=「2本のトゲ」ですよね。実際にビスピノスムのトゲは2本がセットで生えてきます。


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ケイ素と言ってもあまりぴんとこないかもしれませんが、実はケイ素自体は地球の地殻の30%弱を占めるくらい大量に存在します。ガラスや水晶は二酸化ケイ素ですから、実は大変身近な存在です。半導体やシャンプーなどに入っているシリコンはケイ素が原料です。流石に植物には関係なさそうですが、大いに関係があります。身近な例ではイネ科の植物には大量のケイ素が取り込まれており、細胞の中に小さな水晶の結晶としてケイ素が存在します。イネ科の雑草が生い茂る草地に入ると皮膚に切り傷がついたりしますが、これは取り込まれたケイ素が原因で切れるのだと言われています。という訳で、植物とケイ素には関係があります。それはどんな関係か、昭和62年(1987年)に出版された『ケイ酸植物と石灰植物』(農文協)を参考にして見ていきましょう。

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日本の土壌は火山灰由来のものが多いのですが、雨が多く火山灰は透水性が良いため、土壌中のケイ素は溶脱してアルミニウムの割合が高くなります。アルミニウムはリン酸と結合してしまうため、地力を著しく落とします。そういう意味においては、日本の土壌は農作物を育てるのに適さないと言えます。土壌から流出したケイ素は河川水に溶け込みますが、 この溶けたケイ素を上手く利用したのが水田です。

そもそも、稲の栽培にはケイ素は不可欠です。なぜなら、水田にケイ素が不足すると生育が遅れ、さらに稲が倒れてしまい健全な生育が困難となるからです。ですから、地力が落ちた水田には、製鉄でできるスラグ(鉱滓)を投入します。スラグの主成分はケイ酸カルシウムですから、非常にケイ素が豊富です。ケイ素が豊富であると、茎や葉がしっかりするだけではなく、いもち病などに強くなることがわかっています。実は稲の葉や茎の15%以上がケイ素からなるわけで、稲は選択的にケイ素を吸収していることがわかります。

稲は強力にケイ素を吸収する希な例ですが、調べると多くの作物にケイ素は関係してきます。例外としてトマトがあり、ほとんどケイ素を吸収しませんから、ケイ素を与えても生長が良くなることはありません。しかし、実験的にケイ素が存在しない条件でトマトを育てると生育に問題が出てくるそうです。全くないというのも良くないのでしょう。さて、他の例を見てみるとキュウリが上げられています。キュウリは稲ほどではないにしろ、ある程度はケイ素を吸収するみたいです。実験的にケイ素を除くと生育に問題が出て、ウドンコ病にかかりやすくなりました。逆にキュウリはケイ素を与えるとウドンコ病に強くなります。実際に私もキュウリにケイ酸カルシウムを与えたところ、葉のサイズが大きくなり厚みが出て、茎に生えるトゲが非常に強くなって触ると刺さって痛いくらいでした。しかも、毎年発生するウドンコ病が出なくなったことには驚きました。あとは、個人的にはオクラの生育が非常に良好になった経験はあります。

という訳で植物もケイ素が必要なのだという話でした。しかし、この本はかなり専門的で盛り沢山な内容ですから、上記の内容は触りに過ぎません。このような良質な本は少ないので大変貴重です。
さて、私が稲の中にあるケイ素を知ったのは、実は園芸関係の話ではなく考古学でした。考古学では稲自体は腐ってしまうため、出土しません。たまたま炭になった炭化米がたまたま見つかった場合のみ、古代に稲作を行っていたと判断されてきました。しかし、上手く炭になった米があって、それがたまたま見つかることは中々ありません。炭化米が見つかっていないから、稲作が行われていなかったとは言いがたいのです。研究者が考えたのは、稲の中にあるケイ素を探すことです。イネ科植物の中には結晶となったケイ素があり、これをプラント・オパールと呼びます。イネ科と言っても種類によりプラント・オパールの形が異なり見分けることが可能です。そこで、遺跡の周囲を調べると、高い密度でプラント・オパールが見つかる場所が見つかったのです。昔は稲穂は地際から刈り取らず、穂刈りしていました。ですから、水田には稲の葉や茎由来のプラント・オパールが大量に残されることになります。このような手法で古代の水田跡を見つけているという話は大変な驚きで、大したものだと感心したものです。
この本を読んだことで、考古学と園芸が繋がりました。本を読んでいるとこのような偶然があり、より読書を楽しむことが出来ます。園芸関係で良い本がありましたら、また紹介させていただきます。


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2年くらい前は、まだコーデックス・ブームの余韻が残っていたのか、パキポディウムの苗があちこちに売っていました。五反田TOCのビッグバザールでも、今よりパキポディウムの実生苗が沢山並んでいました。現在のアガヴェ・ブームはまだ来ていない頃合いです。私もビッグバザールや大型園芸店で何種類かパキポディウムの実生苗を購入しましたが、今日はそのうちの1つであるPachypodium brevicalyxをご紹介します。まずは、我が家のP. brevicalyxの苗の様子から。

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2022年3月。トゲばかりが目立ちます。

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2022年7月。春先の新しい葉に加え、真夏にも新しい葉が生えてきました。

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2022年9月。葉は大きく強い印象です。

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2023年1月。まだ葉は落ちません。

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2023年2月。葉はだいぶ落ちましたが、まだ残っています。どうやら、春までこのまま持ちそうです。しかし、幹はかなり太りました。

P. brevicalyxがはじめて命名されたのは1934年のことで、P. densiflorumの変種とされました。つまりは、Pachypodium densiflorum var. brevicalyx H.Perrierです。1949年には独立種とされ、Pachypodium brevicalyx (H. Perrier) Pichonとされました。しかし、現在はPachypodium densiflorumと同種とされています。P. densiflorumとは葉が先細りとなり葉柄が短く、萼が短いなどの特徴の違いがあります。
'brevicalyx'とは、ラテン語で'brevis'=「短い」と'calyx'=「萼」という意味です。
しかし、P. densiflorumの花のサイズはかなり変動があり、P. brevicalyxはその範囲に入ってしまうということです。分布は標高200mにあるP. densiflorumの自生地のわずかに北西部ということで、P. densiflorumと分布が連続していることからも同種である可能性が高くなります。

しかし、P. brevicalyxは遺伝子が解析されていませんから、外見的特徴だけから判断するのは危険です。最近はあまりパキポディウムの遺伝子解析をしている論文は見かけませんから、P. brevicalyxの分類はまだ確定していないように思われます。また、そもそもP. densiflorum自体が多数の系統がある可能性があるため、P. brevicalyxの立ち位置はどうなるのか今後の研究の進展を待ち望んでおります。



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