ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2022年12月

今年一年は主に仕事でいつも忙しく、常に疲れている感じでした。どうにも、忙しければ忙しいほど多肉植物のイベントに行ってしまいます。最近は疲れが抜けにくいというのに、イベントなんかに行くから余計に疲れるわけですが、ストレス発散の一つの手段と化しているのかも知れませんね。というわけで、止められません。まったく困ったことです。
私の育てている多肉植物は、そのほとんどが室内管理ですから霜除けなどの寒さ対策はしなくていいわけです。しかし、室内は最低気温があまり下がらないため、日照が弱い冬だというのに生長を始めてしまうウッカリ者も出てくるわけです。まあそうなるとヒョロヒョロとモヤシのように育ってしまうわけで、何かしらの対策は必要となります。水を切るのも一つの手ですが、ユーフォルビアなどは冬の間完全に断水すると根をやられてしまったりしますから、中々難しいところです。そんなこんなで、仕方がないので植物用ランプを使っています。植物用ランプは弱いという意見もあるようですが、ホリダが間延びしないのですから私にはそういう印象はありませんね。むしろ、タコものユーフォルビアなどは日焼けしてしまうものもあるくらいです。実は植物用ランプの光の強さは距離に依存します。近くでつかえば強く、全体を照らそうと離して設置すれば弱くなります。

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部屋は植物用ランプでとんでもない色になります。

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ホリダ系はランプの真下に置きます。

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花キリン Euphorbia millii cv.
矮性白花品種。枝は柔らかいので伸びると垂れます。室内に取り込むのに邪魔なので伸びた枝をカットしました。しかし、枝を切ると新しい枝が増えてどんどん混んでいきます。


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花キリンは一年中花を咲かせます。

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Haworthiopsis koelmaniorum
日に当たると透き通った窓が美しいのですが、光線が柔らかく葉色が緑色になる冬がコエルマニオルムの最も美しい季節です。


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噴煙竜 Euphorbia neohumbertii
幹の模様が面白い噴煙竜ですが、葉の落ちた跡が由来です。強光には少し弱い感じがあります。


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噴火竜 Euphorbia viguieri
噴火竜の紅葉した葉が美しいですね。噴煙竜と似ていますが、見た目ほど近縁ではありません。同じ花キリン類ですけどね。強光が大好きです。


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Euphorbia bongolavensis
寒さに弱いのか、ボンゴラベンシスは葉を落としました。遮光を強めにして水を切らさないで育てないと、葉を落としてしまいます。


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帝王錦 Aloe humilis
帝王錦という厳めしい名前をもらっている割に、トゲも柔らかい小型アロエです。気持ち遮光強めの方がきれいに作れます。強光に当てると古い外側の葉が枯れて、貧相になりがちです。


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Euphorbia polygona var. anoplia
アノプリアは急激に稜が増えました。少し不自然な増え方ですが…


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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia
今年も鉄甲丸は無事に夏を越しました。新しい葉が出てきたようです。

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Euphorbia guillauminiana
元は半額処分品でしたが、復活して良く育ちました。当時はまだ珍しいユーフォルビアでしたね。しかし、最近でE. guillauminianaは実生苗がある程度出回ったため、大分価格も安くなりました。


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Astroloba foliolosa
フォリオロサも大分生長しました。アストロロバは面白いのですが、昔からまったく人気がありませんね。昔からあるのに人気がないから売っていないパターンです。

最近は多肉植物に関係する論文ばかり読んでいます。今年は71本の論文を読みブログの記事にしました。まあ、知らないことを知ることが出来ますから楽しくはありますが、それはそれで少し疲れました。というわけで、12月31日から翌1月2日までブログもお休みします。年始も仕事がありますから、せめて年末はゆっくりすることにしました。来年はなにやら1月からイベントがある様子です。懲りずに見に行く予定です。
では皆様、良いお年を。


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実はというほどのことではありませんが、植物に関する本をポツポツと読んだりしています。まあ、植物に関係ない本の方が多いのですけどね。しかし、読書感想文は苦手ですから、あまりブックレビューは書きません。しかし、年末だけはこの1年を振り返るために、今年のベスト10をご紹介します。
今年は131冊の本を読みました。今年は何かと忙しくこれでも例年より少ない方です。読んだのはほんどが新書です。読む分野は、生物学、社会学、西洋哲学、歴史学、考古学、文化人類学、宗教学、民俗学といったあたりが中心です。とは言うものの、新刊が良く出るのはやはり歴史でしょう。新書では日本史がやはり多く、中国史や西洋史も割とあります。哲学はあまり出ませんが、講談社現代新書が『今を生きる思想』というシリーズを出し始めたことは嬉しく思います。
さて、今年一番面白かった本は以下の通りでした。

①『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』, 秦正樹/著, 中公新書 
新型コロナウイルスの流行以来、関係する様々な陰謀論がネット空間やSNSを騒がせました。SARS-CoV-2の出自をめぐる陰謀論や、ワクチンに関する一連の陰謀論もありました。一応断っておきますが、この本は別に新型コロナ関連の陰謀論を中心に扱っているわけではありません。しかし、陰謀論そのもののメカニズムと危険性がよくわかります。時節をとらえた時事ネタではありますが、ある種の普遍性を持つ内容ですから新型コロナ以外の話題でもなお有効です。

②『「笛吹き男」の正体 東方植民のデモーニッシュな系譜』, 浜本隆志/著, 筑摩選書
いわゆる「ハーメルンの笛吹き男」に関する論考です。単なるおとぎ話の類いかと思いきや、実は実際におきていた事件であるというのです。事件そのものはオカルト的なものではなく、ドイツ騎士団の活躍により獲得した土地に、人口増によりあぶれた農民を集めて送り込むという当時のシステムが関係しているというのです。話が謎解きのように進行するので、大変楽しい時間を過ごせました。

③『曾国潘 「英雄」と中国史』, 岡本隆司/著, 岩波新書
中国史は好きですが、最後はすべてを灰塵に帰して終わりますから、何とも言えない諸行無常を感じます。本作は主に太平天国に対峙する曾国潘が話の中心です。2020年に出版された同じ岩波新書の『太平天国』も読みましたが、合わせて読むとより無情感を感じることが出来ます。中国史はエピソードがいちいち物語として優秀で、劇を見ているような気持ちになります。

④『謎の海洋王国ディルムン メソポタミア文明を支えた交易国家の勃興と崩壊』, 安倍雅史/著, 中公叢書
本を読んでいると、いやはや知らないことは幾らでもある、というより知らないことの方が多いという事実に打ちのめさせられます。己がいかに無知かを知ることは謙虚を知る契機でしょう。本作は正にそれで、メソポタミア文明を知ってはいても、ペルシャ湾の小島に数えきれないくらいのメソポタミア時代の遺跡があるという事実に驚かされます。基本的に知らないことばかり書いてあり、本にかぶり付きで読みました。

⑤『サボテンはすごい! 過酷な環境を生き抜く驚きのしくみ』, 堀部貴紀/著, ベレ出版
この本はすでに新刊が出た時に記事にしていますから、詳しくは書きませんが一つだけ。最近では学者の書くサボテンや多肉植物の本がありませんでしたから、日本にサボテン学者が生まれたこと自体、祝福すべきことですよね。
以前のブックレビューした記事はこちら。


⑥『スピノザ -読む人の肖像』, 國分功一郎/著, 岩波新書
スピノザに関しては過去に何冊か解説書を読んでいますが、まあそれほど本は出ていません。だから、今年は『スピノザ 人間の自由の哲学』(講談社現代新書)も出版されれたこともあり、スピノザを学ぶ良い機会となっています。特に本書は内容の濃い労作ですから、流し読むようなことはせずに、じっくり時間をかけて読みたい本です。年末年始に哲学はいかがでしょうか?

⑦『ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く』, 梅田孝太/著, 講談社現代新書
講談社現代新書の新しいシリーズ「今を生きる思想」の一冊。このシリーズは全体の紹介ではなく、ある一点に重点を置くような解説が特徴です。シリーズはどれも面白かったのですが、個人的にショーペンハウアーを贔屓にしているので、選ばせていただきました。まあ、ショーペンハウアー自体、解説本が出ませんから、入門書と言えど貴重ではあります。私はかつて読んだ「生の嘆き ショーペンハウアー倫理学入門」(法政大学)に非常に衝撃を受けた口なので、ショーペンハウアーというだけでやや前のめりになってしまいます。

⑧『日本の高山植物 どうやって生きているの?』, 工藤岳/著, 光文社新書
高山植物には縁がありませんが、その生態には興味があります。本州の高山植物は氷河期に分布を拡大した北方系の植物の生き残りです。受粉と受粉媒介者との関係もそうですが、植物学の知識を色々学ぶことが出来ました。実際のところ、私が学術論文を読む際の最大のネックは専門知識の欠如でした。というのも、論文は基礎知識を知っている前提で書かれがちです。正直、わからないことだらけです。私も少しずつですが、このような良書を参考に勉強しながら記事を書いていきたいものです。

⑨『ソ連核開発前史』, 市川浩/著, ちくま新書
ロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与えました。戦争が長引くにつれロシアが核兵器を使用するのではないかという懸念もされるようになりました。このロシアの核技術はソ連時代から引き継いだものです。ソ連崩壊は世界情勢がガラリと変わる出来事で、1990年前後に大量の研究書やルポルタージュが世に出されました。私も世界史の転換点として学ぶ必要性を感じ、ここ10年くらい少しずつ本を集めています。しかし、核開発は機密中の機密ですから、核技術に重点を置いた本ははじめて読みました。独裁国は現実ではなく方針に沿った発言しか許されないため、安全性に対する懸念と権威的体制は相性が悪く非常に危険です。ソ連はロシアに生まれ変わりましたが、プーチンの事実上の独裁状態ですから、ソ連時代からの危うさまで引き継いでしまいました。

⑩『南洋の日本人町』, 太田尚樹/著, 平凡社新書
ヨーロッパが香辛料を求めて大航海時代が訪れました。しかし、実際にはヨーロッパは交易に関しては完全に後進国であり、中国から東南アジア、インド、ペルシャ、アフリカ東岸まで含む超巨大交易圏がすでに発展していました。この辺りの話には非常に興味があり、過去に出た本を含め割と読んでいるほうだと思います。しかし、交易圏の日本人の存在は他の著作でも記載はありましたが、話の中心にはならず詳しくはわかりませんでした。しかし、本書を読んでみて思いの外、巨大交易圏に日本人がいたことに驚きます。

若い頃はジャンルを選ばず主に小説を読んできましたが、ここ十年ちょいは小説はまったく読まなくなりました。今は代わりに新書を中心に読んでいます。しかし、2019年から始まったSARS-CoV-2の流行は私の読書生活にも打撃を与えました。だいたい一年に150冊以上読みますから、新刊だけだと興味のある分野のものはそんなに出版されませんから、どうしても足りなくなります。ですから、春と秋の神田神保町古本祭りで毎年古本を100冊以上購入していましたが、SARS-CoV-2により古本祭りは中止が続いていました。そのせいで、私の古本在庫はついにほとんどなくなってしまいました。今年の秋の古本祭りは開催されましたが、残念ながら予定が合わず行けませんでした。というわけ、今年の読書は新刊の比率が高くなっています。毎年、60~80冊の新刊を購入しますが、いずれにせよ来年は新刊だけでは足りないでしょうから、なんとかしなければ…


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我が弱小ブログは、開設から1年経つものの閲覧者はいっこうに増えません。まあ、内容が学名の話か論文の紹介ですから、そりゃそうだといった感じです。それはそうと、ブログを始めてからGoogle Search Consoleを活用すると良いという話を聞き及んで、ダウンロードしてみました。しかし、活用法がよく分からないというか、解説されても難しくて駄目ですね。放置状態です。しかし、適当にいじっていたら、閲覧者の国籍が分かる機能があることがわかりました。とはいえ詳細はわからず、単に閲覧者数の一覧表が出てくるだけです。
面白いことに、日本人が日本語で書いたブログなんだから、見るのも日本人だろうと思ってしまいますが、意外にも閲覧者は多国籍でした。一年間の閲覧者ランキング国ベスト10は以下の通り。

1位   48427 日本
2位   553 米国
3位   282 ロシア
4位   178 インド
5位   135 台湾
6位   128 ブラジル
7位   106 イギリス
8位   84 ドイツ
9位   61 トルコ
10位   60 インドネシア

日本はともかくとして、要するにこれが多肉植物好きな国々ということなのでしょうね。イギリスやドイツ、アメリカは論文も昔からよく出ていますし、園芸情報も豊富ですからね。ここら辺は良くわかります。しかし、ロシア、インド、ブラジル、インドネシアは意外ですが、多肉植物が流行っているのでしょうか? 人口も多いので、巨大な多肉植物の市場ですね。台湾がありますが、お隣ですから日本語が分かる方ももしかしたらいらっしゃるのかも知れませんね。あと、トルコにも多肉植物好きが! 

さて、ここからは地域別に見ていきましょう。というものの、各地域の区分けは何種類もあるようで、微妙に違いがあるみたいです。私の区分けはWikipediaから引っ張ってきただけですから、苦情はWikipediaにお願いしますね。あと、国名はGoogleによる国と地域ですから、実際については知りません。

先ずは、多肉植物先進国のヨーロッパから。38カ国が私のブログを閲覧した模様。やはり、多肉植物の研究は、アフリカを植民地としていたヨーロッパに歴史があります。イギリスやドイツがかなりの多肉植物好きです。しかし、寒いロシアやラトビアが強いのは不思議です。かなりしっかりした温室が必要そうですが…
ヨーロッパは閲覧数が10以上の順位を掲載します。
1位   ロシア 282
2位   イギリス 106
3位   ドイツ 84
4位   ウクライナ 57
5位   ラトビア 52
6位   フランス 39
7位   イタリア 37
8位   オランダ 34
9位   スペイン 30
10位 スウェーデン 29
11位 ポーランド 23
12位 リトアニア 19
13位 アンドラ 18
14位 チェコ 12
15位 ブルガリア 11
他 : デンマーク、フィンランド、ノルウェー、エストニア、アイスランド、オーストリア、ベルギー、スイス、ベラルーシ、スロベニア、ハンガリー、アルバニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロ、ルーマニア、モルドバ、ギリシャ、マルタ、ポルトガル、セルビア

お次はアメリカ大陸です。カリブ海地域も含めています。27カ国が私のブログを閲覧しました。やはりアメリカ合衆国は強いですね。アメリカ大陸はサボテンの宝庫ですし、中米から北米にかけてはアガヴェやソテツ類が豊富です。Fouquieriaもアメリカ大陸原産でしたね。
1位   アメリカ合衆国 553
2位   ブラジル 128
3位   カナダ 51
4位   アルゼンチン 39
5位   メキシコ 26
6位   コロンビア 23
7位   ペルー 12
8位   エクアドル 10
9位   トリニダード・トバゴ 7
10位 ベネズエラ 6
他 : ベリーズ、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ、バミューダ、バハマ、タークスカイコス諸島、キューバ、アンティグア・バーブーダ、バルバドス、ドミニカ、グレナダ、パラグアイ、ウルグアイ、チリ

お次はアフリカです。アフリカは25カ国が私のブログを閲覧しました。多肉植物の本場ですが、閲覧数は振るわず。しかし、思ったより沢山の国の人たちが見てくれたようです。
1位   エジプト 34
2位   南アフリカ 26
3位   アルジェリア 7
4位   モロッコ 6
5位   マダガスカル 4
6位   ケニア, モザンビーク, ウガンダ 3
9位   ジンバブエ, エチオピア, マラウイ, ルワンダ, セーシェル, モーリシャス, ナイジェリア 2
他 : ザンビア、ジブチ、タンザニア、カメルーン、リビア、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、セネガル、トーゴ

最後にアジアですが、オセアニアがオーストラリアとニュージーランドしか閲覧者がいないため、アジアに含めてしまいます。日本は省いています。アジアは38カ国、オセアニアは2カ国が私のブログを閲覧しました。しかし、アジアは盛り上がってますね。タイや韓国から多肉植物が日本にも輸入されているのは知っていましたが、もはやヨーロッパと変わらないですね。
1位   インド 178
2位   台湾 135
3位   トルコ 61
4位   インドネシア 60      
5位    韓国 58
6位   フィリピン 53
7位   タイ, ベトナム 36
9位   シンガポール, オーストラリア 32
11位 マレーシア 30
12位 パキスタン 28
13位 バングラデシュ 27
14位 中国 25
15位 香港 21
16位 カザフスタン 19
17位 サウジアラビア 13
18位 イラク 10
他 : カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブータン、ネパール、スリランカ、イラン、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、イエメン、レバノン、シリア、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア、キルギス、ウズベキスタン

なんだかんだで、この一年間で実に132カ国の人が私のブログを訪れたようです。ただ、私のブログを訪れた人たちがちゃんと読めているのか正直不安です。自動翻訳は割といい加減ですから、正しく訳せていない可能性が高かったりします。私のブログは学名がやたらに登場しますから、学名を検索してたまたま私のブログがヒットしただけかもしれません。開いてみたものの読めないから閉じて他を探しているのかもしれないと思うと、何だか申し訳ない気分になります。あと、何故か不明の地域というのがあります。Googleの区分で一体どこのことを言っているのか気になります。


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ザミア・フルフラケア(Zamia furfuracea)はメキシコ原産のソテツの仲間です。日本でザミア・プミラ(Zamia pumila)の名前で販売されているのは、基本的にフルフラケアです。プミラとフルフラケアが混同されているのはおそらく日本だけで、海外の園芸サイトでは明確に別種とされています。まあ、実際のところそれほど似ているわけではないので、実際に見て間違うことはないでしょう。
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Zamia furfuracea(神代植物公園)
①葉の幅が広い、②葉の先端が丸い、③葉は皮質でぶ厚い、④黄色~褐色の短い毛がある、という特徴があればフルフラケアです。逆を言えば、プミラは葉の幅が狭く、葉の先端が尖り、葉は薄く、毛はないということになります。見分け方は簡単ですね。
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毛に被われたフルフラケアの新葉

さて、そんなフルフラケアですが、原産地のメキシコでは個体数の減少により絶滅が危惧されているそうです。そのあたりについて詳しく調べた2022年の論文、『Genetic diversity and differentiation in Zamia furfuracea (Zamiaceae) : an endangered, endemic and restricted Mexican Cycad』を本日はご紹介します。
Z. furfuraceaはメキシコ南東部の沿岸に固有のソテツで、生態的および園芸的に非常に重要です。主に牧畜地の拡大、都市開発、環境の悪化などにより減少しています。論文では6つの集団の遺伝子の多様性を確認しました。

Z. furfuraceaは世界の園芸市場で2番目に多く取引されているソテツです。そのため、違法採取にさらされてきました。さらに、開発なども影響し、過去40年で35%の減少を引き起こしました。なぜこのような調査を行う必要があるのかを説明しましょう。自生地の環境や個体数の調査は保護のための最低限の情報ですが、遺伝的多様性の調査は将来を見据えた研究と言えます。なぜなら、個体数の減少と個体群の分断が合わさると、遺伝的多様性が減少し様々な弊害が引き起こされる可能性があるからです。遺伝的多様性が失われると、やがて個体群の遺伝子が均一化してしまい、近親交配に近い状態となります。実際に野生のフルフラケアの実生の発芽率が低下している地域もあるという報告があります。
論文には述べられていませんでしたが、遺伝子が均一化してしまうと、その個体群が特定の病気に対して抵抗力がない場合、絶滅してしまいます。遺伝的多様性が豊富であれば、ある個体は病気に弱くても他の個体は抵抗性があれば問題はないわけです。実際に遺伝的に均一であったことで、危機に陥った有名な植物があります。それは、バナナです。種子ではなくて親株から出てくる子株で増やしているバナナは、遺伝的にクローンですから過去に病気の流行により壊滅的なダメージを受けてしまいました。現在我々が食べているバナナはその病気に対して耐性のある品種で、実は昔と異なる品種です。現在のバナナの品種は耐病性と輸送中の傷みにくさにより選ばれたため、以前と比べたら味や食感はあまり良くないとされているようです。とはいえ、現在のバナナもクローンで増やされていますから、やはり新たな病原菌の登場により最近では壊滅的なダメージを受ける農園も出てきてしまいました。現在、新たな耐病性品種を見つけることに躍起になっているそうです。

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Zamia furfuracea

脱線してしまったので、話を戻しましょう。
もともとフルフラケアは他のソテツと比較して遺伝子の多様性が高いとされています。しかし、都市開発などにより自生地も侵食され個体数も減少し、各個体群は孤立してしまいました。個体数は1つの個体群に100個体程度とされているようです。実際に創始者効果(※)やボトルネック効果(※※)が遺伝子解析により判明しており、遺伝的多様性は低下しています。個体群により遺伝的多様性は異なり、遺伝的多様性が高い群と低い群がありました。著者は遺伝的多様性の高い群をまずは重点的に保護すべきではないかと主張しています。

※創始者効果 : 祖先となった少数個体の遺伝子頻度の偏りに影響を受けること。
※※ボトルネック効果 : 個体数の激減により遺伝的多様性の低い集団が出来ること。


以上が論文の簡単な要約となります。
最近ではそれほど珍しくないフルフラケアですが、自生地では絶滅が危惧される希少種となってしまっています。大変悲しいことです。
しかし、研究者もなんとかしようと行動しています。例えば、Zamia integrifolia(異名Z. floridana)やZ. furfuraceaをモデルとして用いて、その繁殖効率を高めることを目的とした研究がなされています。これは、野生個体の違法採取を防ぐために、人工繁殖を確立して実生が流通してしまえは良いという考え方です。現実問題として違法採取を取り締まるだけでは効果が薄いということもあり、考えだされた現実的な方法です。このように研究者もソテツの保護に貢献していますが、自生地の破壊に対しては対策のしようがない状態です。とはいえ、保護のための情報を得るための研究は、保護活動を開始するための根拠となりますから、このような研究が行われることは非常に有用です。フルフラケアが絶滅しないことを切に願っております。

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フルフラケアの花。小さな実生苗から育てていますが、ようやく花が咲きました。


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今年の秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールでは、ラフレシアリサーチさんのブースでGymnocalycium berchtiiを購入しました。毎度、ラフレシアリサーチさんはオマケ苗をくれますが、この時のオマケはアガヴェでした。今はなんと言ってもアガヴェ・ブームですからね。しかし、オマケまでアガヴェとは驚きます。
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あくまでもオマケなので、ラベルは付いてきません。撮影許可を得てから、ラベルを撮影させていただきました。まあ、撮影しとかないと何だったか直ぐに忘れちゃいますからね。

この時のオマケ苗のラベルには、"Agave leopordii"とありました。私はアガヴェには詳しくないため、ふーんと言った感じで特に感慨も湧きませんでした。しかし、このAgave leopordiiは調べてみるとよく分からないことが次々と出てきました。今日はそんな謎を秘めたアガヴェのお話です。

「滝の白糸」?
現在、"leopordii"と言った場合、学術的に有効な学名を検索すると、Agave × leopordii W.Watsonが出てきます。画像検索するとどうやら細長い葉からフィラメントを沢山出す種類のようです。日本では「滝の白糸」という名前もあるようです。これで一見落着と思いきや、なにやら気になる論文を見つけてしまいました。それは、Figueiredo & Smithの2013年の論文、『Proposal to conserve the name Agave leopordii W.Watson against A. leopordii Rafarin (Agavaceae / Asparagaceae).』です。タイトルは「Agava leopordii Rafarinに対してAgave leopordii W.Watsonを保存する提案」と言ったところでしょうか? おやおや、なんとAgave leopordii Rafarinなる学名が存在するようです。論文の内容が気になります。しかし、残念ながら公開していない論文のようで私も読めませんから内容はご紹介できないのですが、この形式の論文は過去に幾つか読んだ経験があります。大抵は命名規約についての話でしょうから、おおよその内容の検討はつきます。
それは、
おそらくはこういうことです。命名規約では先に命名された名前が優先されます。しかし、最初に命名された名前ではない学名が流通している場合もあり、後でそのことが発覚しても学名の安定のため、あるいは混乱を避けるために流通している学名を正式な学名とした方が好ましい、ということです。実際に現在の学名を調査してみましょう。

Agave × leopordii W.Watson
まず、Agave leopordii W.Watsonからです。キュー王立植物園のデータベースでは、Agave × leopordii W.Watson  nom. cons.となっています。まず、「×」が入っていますね。これは、自然交雑種であることを示しています。交配親はAgave filifera × Agave schidigeraということです。A. filiferaは「乱れ雪」、A. schidigeraは「白糸の王妃」と呼ばれているみたいです。
次に「nom. cons.」ですがこれは保存名(保留名)と言って、命名規約を厳密に適応すると使われてきた学名を変更しなければならなくなり不都合が生じたり、学名の安定性のために学名を維持することになったという意味です。どうやら思った通りのようです。

Agave leopordii Rafarin
では、Agave leopordii Rafarinとは何者でしょうか? データベースでは、Agave leopordii Rafarin nom. rej.となっています。やはり異なる人物が同じAgave leopordiiという学名をつけていたようです。しかし、こちらは「nom.rej.」とあり、これは「廃棄名」のことです。保存名がある場合に廃棄される名前ということです。
ちなみに、このAgave leopordii Rafarinは、「滝の白糸」のことではなく、「吉祥天」Agave parryi subsp. parryiの異名です。


なぜ廃棄されたのか?
命名年を見てみましょう。

1874年 A. leopordii Rafarin nom.rej.
1875年 A. parryi Engelm.
1893年 A. × leopordii W.Watson nom.cons.

話が見えてきました。まず、1874年に「吉祥天」にA. leopordii Rafarinと命名されましたが、理由は不明ながらどうやらあまり使用されなかったようです。その翌年の1875年、「吉祥天」にはA. parryi Engelm.という学名がつけられ、主にこちらが使用されてきたということなのでしょう。ですから、命名規約上ではA. leopordii Rafarinが正しいのですが、混乱を避けるなどの理由で、A. parryi Engelm.を採用しA. leopordii Rafarinは廃棄されたということでしょう。

もしA. leopordii Rafarinが採用されていたら
ここで、もしA. leopordii Rafarinが採用された場合、「滝の白糸」につけられたA. × leopordii W.Watsonは使用が出来なくなります。同じ属で同じ種小名は存在出来ませんから、命名の早いA. leopordii Rafarinが採用されますから、「滝の白糸」は名無しなってしまいます。滝の白糸には一応、1912年に命名されたAgave × disceptata J.R.Drumm.という異名がありますが、こちらが正式な学名となるのかも知れません。
しかし、いずれにせよA. parryi Engelm.にしろ、A. leopordii W.Watsonにしろ、命名より100年以上に渡り使用されてきた名前ですか、今さらの変更は混乱の元です。過去に出された論文などの文献資料にも影響を及ぼすでしょう。私も現状維持が一番わかりやすいと思います。

幻のA. americana v. latifolia Torr.
さて、同じ名前の秘密も解明されましたから、これで一安心と思いきや、余計なことに気が付いてしまいました。吉祥天A. parryi subsp. parryiの異名をなんとなく見ていたのですが、1859年に命名されたAgave americana var. latifolia Torr.という異名に違和感があります。吉祥天の正式な学名と比較してみましょう。

1859年 Agave americana var. latifolia Torr.
1875年 Agave parryi Engelm


なぜか、A. americana var. latifoliaの方が命名が早いのです。これはおかしいですね。国際命名規約にある、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」からすれば、A. americana var. latifoliaが優先されるはずです。ちなみに、Agave americanaとはいわゆる「アオノリュウゼツラン」という巨大なアガヴェのことです。吉祥天はアオノリュウゼツランの変種じゃないのだから関係ないような気もしますが、「先取権の原理」はこの場合においても未だ有効です。変種じゃなくなったならば、Agave latifolia (Torr.) ???に変更すればいいだけです。???はA. americana var. latifoliaをA. latifoliaに変更した人の名前が入ります。後は同じ名前のアガヴェがいなければいいわけです。ところがなんと同じ学名が存在するのです。それは、1859年に命名されたAgave latifolia Karw. ex Salm-Dyckです。よくみると、なんとA. americana var. latifoliaと同じ1859の命名です。これは事情がややこしいこと極まりない! さあ、困りました。同じ年の命名の場合はどうなるのでしょうか? 論文の掲載の早い順でしょうか? 良くわかりませんね。

Agave potatorum Zucc.
とまあ、以上のようにどうでも良さそうなことを考えていたのですが、すべてをひっくり返すような事実に気が付いてしまいました。なんと、Agave latifolia Karw. ex Salm-Dyckは異名で、正式な学名は1832年に命名されたAgave potatorum Zucc.だというのです。ちなみにA. potatorumは「雷神」の名前で知られています。
なにやら状況が混沌としてきました。A. latifolia Karw. ex Salm-Dyckが異名ならば、A. americana var. latifoliaをA. latifolia (Torr.) ???でも良さそうですが、何がいけないのでしょうか? もしかしたら、昔はA. latifolia Karw. ex Salm-Dyckが使われていて、A. americana var. latifoliaは使えなかった名残かも知れません。あるいは、ややこしいので単純に混乱を避けるためかも知れません。
命名規約の知識はあまりないので、これ以上はよくわかりません。今後の宿題です。

結局、どっちなの?
さて、以上のように色々と考察してきましたが、では私の所有するアガヴェはA. leopordii Rafarinでしょうか、A. × leopordii W.Watsonでしょうか。おそらくは輸入種子由来でしょうから、種子に添付されていた名前をそのままだと思います。しかし、海外の種子業者がどちらを採用しているかは、まったく予想がつきません。実物の特徴を観察してみましょう。
あまり詳しくない私にも、アガヴェにはトゲの強いタイプと繊維が出てくるタイプとがあることはわかります。どうやら、吉祥天A. parryiはトゲタイプで、滝の白糸A. × leopordiiは繊維タイプみたいですね。
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オマケ苗。まだ小さな苗ですから、特徴は明らかではありません。しかし、トゲはなく少しですが繊維が出てきました。なるほど、ということはこれは滝の白糸Agave × leopordii W.Watsonなのでしょう。
謎はまあまあ解けました。しかし、わからないことも沢山ありますが、取り敢えずはこんなもんでしょう。アガヴェの分類についてもよく知らないため、今後少しずつ調べていきたいと思っています。



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紅彩閣というユーフォルビアがありますが、本日はその紅彩閣についてのお話です。まあ、たいした話ではありませんが。
この紅彩閣はホームセンターでも売っている普及種で、昔から国内で流通しています。いわゆるサボテンもどきの扱いでした。多肉ユーフォルビアはだいたいそんな扱いでしたけどね。よく枝が出ますが、その枝を挿し木すれば簡単に増やせます。
さて、そんな紅彩閣は園芸店では「エノプラ」という名札が付いていることが多いようです。これは、学名のEuphorbia enoplaから来ています。しかし、このE. enoplaは園芸界では使われていますが、学術的にはほとんど使用されていないことをご存知でしたか?
例えば、地球規模生物多様性情報機構に登録された標本や画像といった学術情報において、E. enoplaの使用はわずか6.4%しかありません。では、どのような名前が使われているかと言うと、Euphorbia heptagonaです。このE. heptagonaは学術情報の実に91.4%を占めています。
他のソースも見てみましょう。まず、原産国である南アフリカの絶滅危惧種のリスト(Red List)では、E. enoplaではなくてE. heptagonaでした。さらに、アメリカ国立生物工学情報センターのデータベースを見ても、やはりE. heptagonaとなっています。もはや、エノプラの名前はただの俗称、良くて園芸名でしかありません。

では、なぜE. enoplaではなくてE. heptagonaとされているのでしょうか? その理由を解説しましょう。まず大事なこととして、生物の学名にはルールがあるということです。各々が勝手に名前をつけて勝手に使用していいものではありません。すべては国際命名規約の定めたルールに従っています。
E. heptagonaの場合は、
先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」で簡単に説明がつきます。紅彩閣は過去に複数の学名がつけられてきました。年表をお示ししましょう。

1753年 E. heptagona L.
1858年 E. desmetiana Lem.
1860年 E. enopla Boiss.
1907年 E. morinii A.Berger
1915年 E. atrispina N.E.Br.


以上のように、E. enoplaの前に2回命名されています。一番早いのはE. heptagonaですね。E. enoplaより100年以上前に命名されたEuphorbia heptagona L.こそが正しい学名なのです。ここいら辺の情報は、2012年に出されたP.V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』をご参照下さいませ。

というわけで、紅彩閣の正式な名前はE. heptagonaでありE. enoplaは誤りです。また、最初に命名された学名があまり使用されずに忘れ去られていて、別の学名が使用されてきた場合もあります。その場合は名前を本来の正しい学名に戻すと混乱のもとになりますから、よく使われる学名を保存名(保留名、nom.cons.)として正式な学名とし、使われない本来の学名を廃棄名(nom.rej.)として使わない処置をしたりします。しかし、E. enoplaに関しては、あくまでも園芸上の使用でしかなく、学術的に使用されてきたという経緯はありません。ですから、今後学術的にEuphorbia enoplaが使用されることはないとお考え下さい。

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紅彩閣 Euphorbia heptagona L.



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驚くべきことに、このような年末の忙しい時節、高速バスなんぞに乗って多肉植物のイベントに行くおかしな人間もこの世の中にはいるわけです。まあ、私のことなんですけどね。本日、2022年最後の多肉植物の即売会が開催されました。千葉県で開催された木更津Cactus & Succulentフェアです。
しかし、まあ会場のかずさアカデミアホールは大変行きにくい場所にあります。交通手段は車かバスなんでしょうけど、私は日常的に運転しないので長時間の運転は苦手です。電車と路線バスの組み合わせだと、時間も合わないしバスの本数も少ないしで面倒臭いことこの上ない感じです。というわけで、高速バスしか選択肢がなかったりします。
去年は東京駅から高速バスで会場まで向かいました。今年も同じようにと考えていたのですが、知らない間に高速バス乗り場が地下二階に移動したみたいです。調べて行かなかったら、危うく東京駅前を宛もなく右往左往するところでした。しかし、地下のバスターミナルはいいですね。屋内なので冷たい風にさらされることもありませんし、係員が誘導してくれますから非常わかりやすい。
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快晴の東京湾。

そこから先は同じです。高速バスはかずさアカデミアホールの敷地内まで入って会場前で降りられるので楽チンです。私は10時半くらいに会場に到着しました。

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一年ぶりの再会。

会場の様子ですが、すでに10時からの有料の先行入場客で賑わいがありました。皆さんも好きですねぇ。なんと、整理券が配られ入場に少し時間がかかりました。会場に入ると、
去年よりもだいぶ出店が増えていました。嬉しい限りです。
さて、今回の多肉植物の傾向はどんな感じでしょうか? 去年と同じくアナナス専門店が出ており、色とりどりで目立っていました。先ずは去年、ユーフォルビアが沢山出ていたブースへ。去年は子持シンメトリカ、Euphorbia tortirama、Euphorbia phillipsioidesを購入しましたが、今年も珍しいユーフォルビアが沢山ありました。今回の購入はユーフォルビア2種類。他にもレアものが沢山ありました。

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Euphorbia ellenbeckii
エチオピア、ソマリア、ケニア原産のユーフォルビア。原産地的に、もしかしたらやや難物かもしれません。割とレア。
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Euphorbia グロエネフィカ
Euphorbia groenewardii × Euphorbia veneficaらしいです。おかしな組み合わせですね。将来の姿が気になります。

お次は幅広く様々な多肉植物を取り揃えているブースへ。お初かもしれません。ここでは、樹木アロエのAloidendron ramossimumとメキシコのソテツであるDioon eduleを購入しました。店主が実生した苗なんだそうです。しかし、恐ろしいほど安かったです。特にA. ramossimumなんて普通は高価ですからね。見た瞬間震えましたよ。
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Aloe ramossima

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どうやら枝分かれ中みたいです。
アロエ属からアロイデンドロン属に変更されました。つまり、Aloidendron ramossimumです。店主は良く締めて育てているそうで、間延びしていない良い形です。
実はA. dichotomumに次いで2種類目のアロイデンドロンです。アロイデンドロン属の詳細は以下の記事をご参考までに。

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Dioon edule

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数年前にDioon eduleの小さな実生苗が、大型のホームセンターや園芸店に並びましたが、今はまったく見かけません。気になって探したらホームセンターの片隅ですっかり変色して枯れかけしかありませんでしたから諦めていました。というわけで、D. eduleは久しぶりに見ました。その後、Dioon spinulosumは購入しましたから、Dioonもこれで2種類目です。
過去にDioonの分類と進化に関する記事を書いていますから、ご参照ください。


お次は今年の冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Euphorbia handiensisを購入したブースへ。そこそこのサイズのバルサミフェラが、まあまあ安い価格だったので購入。
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Euphorbia balsamifera
珍しいユーフォルビアですが、最近ではイベントで少しづつですが見かけます。カナリア諸島、モロッコ、西サハラ原産ということで、カナリア諸島原産のユーフォルビアはE. canariensis、E. handiensisに続いて3種類目。

最後にビッグバザールでもお馴染みのラフレシアリサーチさんのブースへ。今年の冬のビッグバザールでは、はじめて何も購入しませんでしたが、今回はフィールドナンバー付きのギムノカリキウムを購入しました。ワンコイン苗なので激安です。
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Gymnocalycium mihanovichii VoS 01-007
瑞雲丸と呼ばれているようです。そういえば、緋牡丹は瑞雲丸の園芸品種と言われていますが、牡丹玉の園芸品種にも見えます。詳しくないので調べる必要がありますね。

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Gymnocalycium friedrichii VoS 01-017/a
Gymnocalycium mihanovichii var. friedrichiiとされることもあるくらい、瑞雲丸と良く似ています。いわゆる牡丹玉です。しかし、現在認められている学名はGymnocalycium stenopleurumらしいです。

Ruchiaさんも来ていましたが、今回は購入しませんでした。目につくところでは、Gasteria vlokiiがありました。割とレアですが手持ちにあるのでパス。珍しいことに、結構Tulistaがありましたが以前購入したT. pumilaのvar. ohkuwaeとGM602でしたから当然買わず。
とまあ今回はこんな感じです。高いものは高いですが、探すとえらく安いものも結構ありました。今回も相場より安いものしか買いませんでしたから、懐にはまだ余裕がありましたが、荷物が多くなり過ぎました。これから、高速バスと電車を乗り継いで帰らなくてはならないため、気になるものはまだありましたが、今回は断念しました。まあ、またいつかどこかのイベントで出会えるでしょう。
去年と比べると、出店も増えていましたし、お客さんの入りも上々でした。まだ、3回目ですからこれからもっと盛り上がっていくイベントに育つといいですね。

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帰りのバスでは富士山を遠くに仰ぎ見ながら。

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去年は幾つかの多肉植物の即売会で、パキポディウムの小苗を何種類か購入したりしました。元より全種類集めるつもりはありませんでしたから、現在は手持ちにない種類を見かけてもスルーし、手持ち株の育成に重点をおいています。さて、そんなパキポディウムですが、過去には遺伝子解析による最新の論文を記事にしたことがあります。
そんな中、白い花を咲かせるパキポディウムに対する論文を見つけました。Jonas Lüthyの2008年の論文、『Notes on Madagascar's white-flowering, non-arborescent pachypodium and description of a new subspecies』です。現在のパキポディウムの分類は著者のLüthyの基準を採用していますから、Lüthyの論文は思いの外、重要です。では、早速内容に入りましょう。
花の色はパキポディウムの分類の歴史において重要な役割を果たしてきました。基本的に樹木性パキポディウムは白い花、非樹木性パキポディウムは黄色い花、さらには赤い花のP. baroniiとP. windsoriiがあります。花の色の違いにより、フランスの植物学者であるPichonはパキポディウムを3亜属に分けました。樹木性で白い花のChionopodium亜属(chion=雪)、低木状で黄色い花のChrysopodium亜属(chrysos=金)、赤い花のPorphyropodium亜属(porphyreos=紫)です。この分類は白い花を咲かせる非樹木性パキポディウムが発見される1980年代まで疑問視されませんでした。

エブルネウム P. eburneum
Boiteauは白い花を咲かせるP. rorulatumらしきパキポディウムをManandora河とMania河の合流地点近くの岩だらけの頂上で観察し、1949年以前に報告しました。しかし、Pichonは自身の分類の例外となるはじめてのケースであることを認識しましたが、それ以上の注意は払われませんでした。このBoiteauの観察は後のP. eburneumの最初の報告だったようです。実際にP. eburneumが新種として記載されたのは1997年のことでした。ただし、1980年代後半にはすでに園芸市場では取引されており、P. rorulatum albiflorumという俗称で呼ばれていました。1992年から始まった自生地の探索は幾度かの失敗の後、1996年にスイスのWalter ösliとRalph HoffmannによりIbity山で発見されました。この発見が、新種の正式な記載に繋がるきっかけでした。
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Pachypodium eburneum

イノピナツム P. inopinatum
1980年代後半に白い花を持つ低木状のパキポディウムが園芸市場に登場しました。RauhによりP. rorulatumの白花個体とされました。1993年にP. eburneumの話でも登場したWalker ösliとRalph HoffmannはVohombohitra山脈のManakana近くで自生地を発見しました。1996年にP. inopinatumとして正式に記載され、P. rorulatumとの比較がなされました。著者はP. densiflorumとの関係があると考えているようです。

新種のパキポディウム?
Ibity山でP. eburneumが発見された後、プラントハンターは別の地域の個体群を報告し、ösliはIbity山の西にあるAndrembesoa渓谷で地元の写真家が撮影した開花写真を所有しています。2004年には花の直径が7cmにもなるややトゲの強いパキポディウムが、P. cf eburneumとして流通しました。CastillonはIbity山の南の地域の自生地を報告しており、1998年にはP. eburneumがP. densiflorumやP. brevicauleと一緒に生えているところを観察しました。新たな自生地はこれからも見つかる可能性があります。

レウコキサンツム
P. brevicaule subsp. leucoxanthum ssp. nov.

2004年頃、園芸市場に新たな白い花のパキポディウムが出現しました。Andrembesoa周辺からの採取を示唆していますが、自生地はまだわかっておりません。このパキポディウムは"P. brevicaule white flower"と呼ばれていますが、花は白色から淡い黄色まで幅があります。最近の研究では種子がP. brevicauleとは異なることが明らかとされています。P. brevicauleは非常に均一であることが知られており、亜種として区別するための新しい名前が必要です。著者はP. brevicaule subsp. leucoxanthumと命名しました。これは、「白い、淡い」を表す'leucos'と「黄色」を表す'xanthos'からなります。
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Pachypodium brevicaule subsp. leucoxanthum

以上が論文の簡単な要約となります。
しかし、近年の論文では遺伝子解析の結果から、P. densiflorumは産地により遺伝子に違いがあることがわかりました。おそらく本来のP.densiflorumはP. brevicauleと近縁です。P. eburneumはややはっきりしませんが、系統的にはP. densiflorumやP. brevicauleと近縁でしょう。また、P. horombenseと分布が近いP. densiflorumは、おそらくP. densiflorumではなくP. horombenseに含まれるのでしょう。さらに、3つ目のグループはP. densiflorumとP. inopinatumとP. brevicaule subsp. leucoxanthumからなります。驚くべきことに、P. brevicaule subsp. leucoxanthumはP. brevicaule subsp. brevicauleとは近縁ではありません。しかし、これらの成果は現在の学術的な分類としては正式に採用されていません。更なる詳細な解析を必要としているのかも知れませんが、いずれパキポディウム属全体の全面的な改訂は避けられないように思われます。

ちなみに、著者がこの論文で提案したPachypodium brevicaule subsp. leucoxanthumは現在認められています。論文にあるssp.nov.とは単に新亜種という意味です。著者は種子がP. brevicauleとは異なると述べていますが、将来的には別種になるかも知れません。
また、巨大な花を咲かせるパキポディウムについてですが、Pachypodium enigmaticumのことでしょうか? 論文では簡単にしか触れられていませんから、断言できませんが…


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「親しみやすさは軽蔑を生む」(familiarity breeds contempt)とは中々含蓄のあることわざです。このことわざはイソップ童話の「キツネとライオン」という話に出てくるフレーズなんだそうです。多肉植物に当てはめれば、普及種が親しみやすさとともに軽視される傾向があるのではないでしょうか?
個人的には普及種も好きで面白いと感じていますが、どうも世の中的には異なるようで、普及種の多肉植物が手入れもされずにカリカリになっていたりするのは大変悲しいことです。安くいつでもどこでも入手可能とあらば、扱いが荒くなるのもやむ無しかも知れません。まあ、普及種はお値段的にもお手軽ですからね。
しかし、そんな普及種であっても良いものは良いのだという熱い論考に出会いました。それは、イギリスのキュー王立植物園のPeter Brandhamの1981年の『Aloe aristata : an underrated species』です。


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Aristaloe aristata=Aloe aristata

著者にとって「親しみやすさは軽蔑を生む」ということわざはAloe aristataに当てはまるとしています。日本ではあまり見かけることがないAloe aristata(現在はAristaloe aristata, 綾錦)ですが、イギリスでは昔から知られている園芸植物です。イギリスではチェーン店や園芸用品店で入手可能で、多肉植物のコレクターはわざわざ栽培する価値はないと考えています。

Aloe albiflora, Aloe bakeri, Aloe bellatula, Aloe deltoideodonta, Aloe descoingsii, Aloe dumetorum, Aloe erensii, Aloe forbesii, Aloe haworthioides, Aloe humilis, Aloe jucunda, Aloe juvenna, Aloe myriacantha, Aloe polyphylla, Aloe rauhii, somaliensis, Aloe variegataなど魅力的な小型~中型のアロエは沢山ありますが、栽培が難しいものが多いとしています。これらは根を失いやすく、入手が難しく、開花しないと言います(※)。対して、A. aristataは良く子を吹き、入手は容易です。冬は乾燥させれば良く、直径6cm程度になると定期的に開花します。花は植物に対して大きいと言います。

※私も上記の1/3の種類くらいしか育てたことはありませんが、栽培はそれほど難しくありませんでした。しかし、晴れが少なく寒冷なイギリスの気候では難しい部分もあるのでしょう。

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Aloe descoingsii

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Aloe somaliensis

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Aloe haworthioides

A. aristataの花はピンク~鈍い赤色と淡黄色~クリーム色の2色からなる、アロエ属でも独特の花を咲かせます。これを著者は"bicolor"、つまりは「二色」と表現していますが、このラテン語は種小名で良く見かけますね。
A. aristataの葉は非常に多いことが特徴です。小型種のA. haworthioidesよりも多いとしています。葉の縁には柔らかいトゲがあり、葉の先端には長い毛のような芒があります。葉の表面には斑があり、葉裏により多くあります。

A. aristataは南アフリカ原産で、東ケープ州、オレンジ自由州、レソトなど非常に広い範囲に分布します。変種としてvar. leiophyllaとvar. parvifoliaが知られていました。しかし、アロエ研究の権威であったReynoldsによりA. aristataの範囲内と見なされ、認められていません。ただ、A. aristataには起源が不明の栽培種があり、分かりやすい4つのバリエーションを以下に示します。
1, 「典型的」なフォルム。自由に子を吹く最も一般的なタイプです。狭い灰緑色の葉を持ち、葉裏にはトゲと斑点が通常はランダムに、時には縦方向へ列となります。
2, 「単純」なフォルム。直径30cm以上となる可能性があり、滅多に子を吹きません。葉は「典型的」なフォルムより長く狭く、葉裏のトゲは縦に並ぶ傾向がより顕著です。
3, 'crisp'フォルム。非常に良く子を吹くタイプで、著者は最も魅力的と表現しています。葉は短く幅広で、トゲが多く葉裏では2~3列となります。
4, 'Cathedral Peak'フォルム。葉には斑点がほとんどなく、トゲも少数です。適度に子を吹きます。このフォルムは、南アフリカのDrakensberg山脈のCathedral Peak由来のものです。典型的なA. aristataの花を咲かせるにも関わらず、ヨーロッパでは× Gastrolea bedinghausii(
A. aristata × Gasteria sp.)という誤った名前で長年栽培されています。

A. aristataはGasteriaと容易に交雑可能で、著者は沢山の交配種を作ったそうです。ガステリアとの交配種の特徴は、両親の中間的な花を咲かせることだそうです。ただし、この交配種は花粉の受粉能力に乏しいのですが、× Gastrolea bedinghausiiは花粉の受粉能力が常に90%を越え、A. aristataと変わりません。ですから、× Gastrolea bedinghausiiは交配種ではないと考えられるのです。

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A. aristata × Gasteria sp.

著者はA. aristataはきちんと育てればそれ自体が魅力的であり、交配種の作成が容易なので交配の入門としても適すると主張します。A. aristataの異なるフォルムはコレクションに値するものであり、「温室にはこれ以上植物を入れる余裕がない」という使いふるされた言い訳は使うことは出来ないと絶賛しています。著者の住むSurreyでは非常に丈夫で、過去3年間庭の明るい日陰で育ち、1978/9年の非常に厳しい冬にも耐えてきました。毎年、夏に開花します。

以上が論考の簡単な要約です。
日本では人気がないせいか、園芸店ではほとんど見られませんが、イギリス(1981年の)では一般的なようです。しかし、著者が絶賛するようにA. aristataは非常に美しい植物です。さらに、私は形態的にアロエ的ではない感じが非常に面白く思います。A. aristataが命名されたのは1825年のことで、Aloe aristata Haw.が長年正式名称でした。しかし、遺伝子解析の結果から、2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningとなり、アロエ属から分離しました。現在、アリスタロエ属は1属1種の珍種ですから、その点においてもコレクションするに値する多肉植物でしょう。


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マダガスカルには沢山の小型アロエが分布します。その中でも最小と言われるのが、Aloe descoingsiiです。一般的には「アロエ・ディスコインシー」と呼ばれたりしているみたいですが、普通にそのままラテン語読みで「アロエ・デスコイングシイ」で良いような気がします。学名は1930年から30年以上に渡りアロエ属の権威だったGilbert Westacott Reynoldsにより1958年に命名されました。つまりは、Aloe descoingsii Reynoldsです。種小名は1956年にA. descoingsiiを発見したフランスの植物学者であるBernard Descoingsに対する献名です。また、1994年には新設されたGuillauminia属とする意見があり、Guillauminia descoingsii P.V.Heathという学名がつけられましたが、翌1995年にGideon F.Smithらにより新属を提唱するに値する根拠がないとして斥けられています。

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Aloe descoingsii

A. descoingsiiは最小のアロエと言われますが、正しくは葉の長さが最も短いアロエでしょう。A. descoingsiiの主軸は意外にも太く、葉の幅は全体のサイズの割には広く、Aloe haworthioidesなど他のマダガスカル原産の小型アロエの方が非常に葉の幅は狭いものが沢山あります。A. descoingsiiは直径5cmまでで、葉は3~6cm程です。

A. descoingsiiはマダガスカル南西部のToliaraのFiherenana渓谷に分布します。標高は350mと言われます。A. descoingsiiは石灰岩の崖上の浅い土壌で育ちます。絶滅の危機に瀕していられる希少なアロエです。
しかし、このA. descoingsiiは園芸店でもまったく見かけたことがありません。希少種だからかと思いきや、何故かA. descoingsii系交配種は何度か見かけたことがあります。見た目の美しさ以外にも、増やしやすさであるとか育てやすさも関係しますから、理由は定かではありません。ただし、調べてみると、A. descoingsiiは非常に交配が盛んに行われたらしく、海外の園芸サイトでも「数えきれない程の雑種」があると書かれているくらいですから、単純に交配種が普及しているだけかも知れませんね。



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現代医学が幅を利かせているように思われる昨今ですが、未だに世界中で薬草が現役で使用されています。先端医療が行き届いていないという事実もありますが、それだけではないでしょう。伝統的な風習にも関係があります。多肉植物も医療目的で使われることがありますが、なんと驚くべきことに毒があることで有名なユーフォルビアが薬草として利用されていると言うのです。特に世界中で帰化しているEuphorbia tirucalliは薬草として世界中で栽培されています。また、アフリカでも様々なユーフォルビアが薬草として使われていますが、猛毒の矢毒キリンすら薬草なのですから驚かされます。

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矢毒キリン Euphorbia virosa

さて、本日はその矢毒キリンのベナン共和国における薬草としての利用方法について調査した、Gbodja Houehanou, Francois Gbesso, Jhonn Logbo, Jacques EvrardCharles Aguia Dahoによる『Variability between Socio-culture Groups and Generations of Traditional Knowledge of Euphorbia poissonii Pax in Benin』という論文です。

世界保健機関(WHO)によると、発展途上国の世界人口の約65~80%は、貧困と現代医学へのアクセスの困難から薬草に依存しているとしています。アフリカでは薬草は先祖代々の慣習であり、人口の80%近くが薬草を利用しています。薬草の知識は主に口伝による世代間の伝承によります。
この調査はベナン共和国のSavalou市において、Mahi族とNago族のE. virosaの利用方法を調査しました。調査は112人に対する個別インタビューによるものです。Savalouはスーダン - ギニアのサバンナ植生と湿潤熱帯の移行帯に位置しています。岩の多い土壌はE. virosaの生育には適した環境です。現地ではE. virosaは庭や畑で栽培されます。
調査の結果によると、成人のMahiや若いNagoはE. virosaを単純に毒として利用し、成人と老人のNagoは薬用とする傾向があります。また、老人のMahiはE. virosaを魔術的な医療として利用する傾向があります。しかし、統計学的には薬用あるいは毒としての利用が重要でした。調査ではE. virosaの21の用途が明らかとなりました。葉、樹皮、茎、乳液が特定の病気や症状に対して治療目的で使用されました。体の一部あるいは創傷による腫れ、麻疹、サソリ刺されなどの治療においてMahi社会では重要な用途でした。また、成人女性及び老人(女性)、若い男性のMahiは葉を使用する傾向があり、成人男性のNagoと老人Mahiは乳液、老人Nagoと若い女性Mahiは樹皮をより使用する傾向があります。


以上が論文の簡単な要約となります。
矢毒キリンの名前の通りE. virosaは毒性が高いことで知られています。しかし、それはベナンにおいても同様で、E. virosaは毒性が高いと正しく認識されているようです。それでも薬用に用いるのは、強力に人体に作用するからでしょう。それは必ずしも良い作用ばかりではないかも知れませんが…。とはいえ、E. virosaの乳液にはおそらくは未知の化合物も含まれているはずで、すでに抽出された化合物であっても薬理作用は完全に解明されてはいないはずです。このような伝統医療の解明と活用法については、まだ様々な可能性を秘めているように思えます。


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南アフリカは多肉植物の宝庫で、その多様はアフリカでも他の追随を許しません。ユーフォルビアやアロエと言えば南アフリカかマダガスカルですし、ガステリアやハウォルアと言えば断然南アフリカでしょう。そんな多肉植物の楽園である南アフリカですが、大型の樹木のようなユーフォルビアがあちらこちらに生えています。そんな樹木状ユーフォルビアについて書かれた記事を見つけました。

本日ご紹介するのは、Sean Gildenhuysの2006年の記事、『The three most abundant tree Euphorbia species of Transvaal (South Africa)』です。
表題にあるTransvaalとは南アフリカの北部4州であるLimpopo州、Mpumalanga州、Gauteng州、North-West州にあたる地域をかつてはそう呼んでいました。このTransvaal原産のユーフォルビアは割と希少なものが多く、Euphorbia barnardii、Euphorbia clivicola、Euphorbia knoblii、Euphorbia waterbergensis、Euphorbia zoutpansbergensisは分布域が狭く個体数も少ないことが知られています。しかし、記事では分布が広く個体数が非常に多い3種類のユーフォルビアが取り上げられています。その3種類とは、Euphorbia cooperi var. cooperi、Euphorbia ingens、Euphorbia tirucalliで、どこにでも生えるためこの3種類で構成された地域もあります。この3種類は樹木状で大型となります。


Euphorbia cooperi var. cooperi
日本では瑠璃塔の名前で知られているユーフォルビアです。
学名はE. cooperiを英国に紹介した植物収集家・栽培家のThomas Cooperに対する献名です。1900年にThomas Cooperの義理の息子であるN.E.Brownは、王立植物園で栽培されている双子葉植物リストに適切な説明もなくE. cooperiを命名しました。1907年にA.Bergerは多肉ユーフォルビアのハンドブックを出版し、E. cooperiについて適切な説明を付加しました。そのため、現在の学名はE. cooperi N.E.Br. ex A. Bergerとなっています。N.E.Brownが最初に命名したものの、命名規約の要件を満たしていないため、要件を満たしたA.Bergerの名前も入っているわけです。しかし、残念ながらA.BergerのハンドブックのE. cooperiのイラストは間違っていてE. ingensが書かれています。また、Thomas Cooper自体がE. ingensとE. cooperiを混同していたようです。

さて、E. cooperi var. cooperiは約10mほどの高さになります。根元から分岐せずに、枝は上部に固まってつきます。枝は分節構造が積み重なるため、クビレが生じます。
E. cooperi var. cooperiは南アフリカに広く分布し、KwaZulu-Natal、スワジランド、North-West州、Mpumalanga、Limpopo州からモザンビーク、ジンバブエ、ボツワナまで見られます。Limpopo州のPenge地区に固有のE. grandialataと混同される可能性がありますが、E. grandialataの方がトゲが長く、E. cooperiとは異なり花序に柄があります。
E. cooperi var. cooperiの乳液は非常に毒性が高く、皮膚に触れるだけで激しい痛みを引き起こし、水ぶくれや失明の可能性すらあります。E. cooperiの原産地では、E. cooperiの乳液を加熱して「鳥もち」を作り水辺の枝に塗って鳥を捕まえます。また、漁にも使われるそうです。

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瑠璃塔 Euphorbia cooperi

Euphorbia ingens
日本では沖天閣の名前で知られているユーフォルビアです。
E. cooperi var. cooperiと時折見られるのが、Euphorbia ingensです。種小名は「巨大な」という意味で、枝が頑丈で重いことを差します。E. ingensは1831年にJ.F.Dregeにより発見され、1843年にE.Mayerにより記載されました。
E. ingensは高さ10mになり多くの枝を持つ樹木状ユーフォルビアです。E. ingensはKwaZulu-Natal、スワジランド、Mpumalanga、Gauteng、North-West州、Limpopo州、モザンビーク、ジンバブエに自生します。南アフリカにはE. ingensの近縁種はいませんが、より北部ではE. candelabrum、E. kamerunicaなどの近縁種が数種類あります。E. ingensは非常に広範囲に分布するため変動に幅があり、変種あるいは新種が分離される可能性もあります。
Transvaalのユーフォルビアの中でもE. ingensの乳液は非常に毒性が高く、皮膚への刺激性が高く火傷を引き起こします。目に入ると失明の危険性があります。ただし、地元の人は下剤(※)として利用していると言います。また、乳液は潰瘍や癌に効果があるとされているそうです。

E. ingensは材木としても利用されます。E. ingensは生長が早く干魃に強く、Limpopo州ではよく使われます。また、E. ingensは非常に頑丈な生垣として植栽されます。

※記事には詳しく書いてありませんが、おそらくは駆虫薬でしょう。砂糖を入れると書いてありましたが、おそらくかなり希釈するはずです。

Euphorbia tirucalli
日本ではミルクブッシュや緑サンゴなどの名前で知られているユーフォルビアです。
E. tirucalliは樹木状ユーフォルビアの中でも最も有名で、おそらく最も普及しています。E. tirucalliは世界中で帰化しており、その起源は定かではありません。南アフリカでは、東ケープ州からMpumalanga、North-West州、Limpopo州に分布します。E. tirucalliはトゲのない円筒形の枝が分岐する独特のフォルムの植物で、近縁種の多くはマダガスカル原産です。

E. tirucalliは1753年にCarl von Linneにより命名されましたが、タイプはインドで栽培されていた個体から作成されました。このインドのE. tirucalliはモザンビークに立ち寄った初期のポルトガル人によりもたらされた可能性があります。ただ、それ以前にすでに導入済みだったのかもしれません。種小名はインドの住民の呼び方から来ています。
E. tirucalliは低木状から高さ10mに達することもあります。E. tirucalliの乳液はやはり危険ですが、アフリカやインドでは生垣にされてきました。虫の駆除や矢毒、E. tirucalliの乳液を米と煮て鳥もちを作ります。また、乳液は不妊症やインポテンツに効果があるとされ飲まれることがありますが、これは流石に危険性が高く致命的となりかねないようです。さらに、多くの病気(淋病、梅毒など)や癌、イボなどの治療に役立つとされています。
E. tirucalliの乳液の抽出物は石油の代替品として研究され肯定的な結果が得られているそうです。また、乳液をゴムの代用品として使用されましたが低品質です。
E. tirucalliは様々な美しい園芸品種が作られており、挿し木で簡単に増やせることもあり南アフリカでは造園用として盛んに利用されています。


以上が簡単な要約となります。
しかし、毒性の高いユーフォルビアの乳液を薬としようというだけでとんでもないなあと思ってしまいます。しかし、現代の薬自体が毒から作られてきたという事実があります。毒というのは人体に強く作用していることから、作用が分かれば用法容量次第で薬となるのです。E. tirucalliは世界中に生えているせいか、乳液の中の有効成分を解析した沢山の論文が出ています。しかし、逆を言えばユーフォルビアは化学成分の論文ばかりで、植物自体についての論文が少ないのは残念です。知りたいことは山程あるわけですが…



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多肉植物好きとして以前から気になっていることがあります。それはホリダ(Euphorbia polygona var. horrida)が、自生地では寄生植物に寄生されているというのです。現在、ホリダはポリゴナ(Euphorbia polygona)の変種とされていますが、やはりポリゴナも同じ寄生植物に寄生されると言いますから、やはりホリダとポリゴナは近縁なのだろうと感じました。しかし、論文を探ってみると購入しないと読めないものしかなく、半ば諦めかけていました。しかし、最近ホリダについて色々調べていた際、多肉ユーフォルビアに寄生する寄生植物について書かれた論文を見つけました。今まで調べて読めなかった論文とは異なり、ホリダについて書かれた部分は極僅かでしたが、しかし貴重な情報を得られることは大変な僥倖です。

本日ご紹介するのはMaik  Vesteの2007年の論文、『Parasitic flowering plants on Euphorbia in South Africa and Namibia』です。早速内容に入りましょう。
南アフリカとナミビアには67種類の寄生植物が知られており、23種類は茎に寄生し、44種類は根に寄生します。主に樹木を寄生先(宿主)としていますが、Aloidendron dichotomumやCotyledon、Lampranthusなどの多肉植物を宿主とするものもあります。多肉植物ではユーフォルビアの寄生植物で高い多様性が見られます。

まずは根に寄生する寄生植物から見ていきましょう。
ヒドノラ属はアフリカ南部ではHydnora africanaとHydnora tricepsが見られ、ユーフォルビアだけを宿主としています。Hydnora africanaはケープ半島からナミビアのNama Karoo、東は東ケープ州まで広く分布します。対してHydnora tricepsは希少です。植物学者のJohann F. Dregeは1830年にNamaqualandのOkip近くでH. tricepsを発見し標本を採取しました。しかし、Johann Visserが1988年にNamaqualandで再発見するまで忘れ去られていました。分布はNamaqualandとナミビア南部の狭い地域からのみ知られています。H. tricepsはEuphorbia dregeanaに寄生し、他のユーフォルビアが近くに生えていてもE. dregeanaにのみ寄生します。Namaqualandの北西にあるPort NollothではE. dregeanaの10%、ナミビア南部では0.5%以下の寄生率であると推定されています。
Hydnoraは地下で育ち葉がないため、見つけることは中々困難です。しかし、腐敗臭を放つ異様な姿の肉質な花が、地面から地上に出て来て咲きます。悪臭は受粉のためにハエを呼んでいるのかもしれません。果実は食用となり甘味があり、南アフリカ北部のKhoi族は伝統的に利用しています。

次に茎に寄生する寄生植物を見てみましょう。
樹木の枝に寄生するヤドリギはアフリカ南部の乾燥地帯でも一般的です。寄生植物は決まった宿主に寄生しますが、中には相手をあまり選ばない種類もあります。Tapinanthus oleifoliusはAcacia、Aloe、Citrus、Ficus、Rhus、Tamarixや他の種類の寄生植物にすら寄生します。このT. oleifoliusは矢毒キリン(Euphorbia virosa)にも寄生することが知られています。

DSC_1893
矢毒キリン Euphorbia virosa

最小のヤドリギはViscum minimumで、2~3枚の葉を持ち数ミリメートルしかありません。Little Karooから東ケープまで分布します。
1981年にVisserはV. minimumが、ほぼ独占的にEuphorbia polygonaとEuphorbia polygona var. horridaに寄生することを報告しました。実験レベルでは他の28種類のユーフォルビアにも寄生させることに成功しています。しかし、野生状態では分かりません。


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ホリダ
Euphorbia polygona var. horrida(神代植物公園)

以上が論文の簡単な要約です。
ホリダに寄生する植物がいるという話を聞いた時に、驚くとともに非常に興味深く感じました。私は何故かホリダの根に寄生するのだろうと、勝手に思い込んでいました。それがまさか幹に数ミリメートルのゴミみたいなヤドリギがゴマを散らしたようにくっついているとは、予想値にしませんでした。
このように、論文を読むたびに新鮮な驚きがあります。多肉植物の意外性は、私の想像を上回るものがあります。これからも多肉植物の謎を調べて行きたいと思います。



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ついに、今年最後の多肉イベントが来週に開催されるらしいです。木更津Cactus & Succulentフェアなんですが、このイベントはいまいち知名度がないですよね。検索すると私の弱小ブログの去年の記事が上位に出てきてしまうくらいですから相当なものです。
去年の年末にも開催されましたが、本当に偶然知って行きました。しかし、何故か多肉植物のイベント一覧のようなサイトには載っていなかったので、危うくスルーしてしまうところでした。その時の記事はこちらです。

その後、今年の5月にも開催されたみたいですが、まったく気が付きませんでした。イベントに参加した人のブログを読んで、頭を抱える羽目になりました。それからは定期的に情報を収集していましたが、公式のサイトは12月に入っても去年と今年の5月のイベント情報しかありませんでしたから、今年の年末はないのかと思ってました。しかし、SABOSABO STOREさんのイベントカレンダーの12/24に「木更津C & S」って書いてあったので、おやおやと思って公式サイトを見てもまだ更新されておらず…。ギリギリまで詳細がわからないスタイルです。
しかし、最近ようやくまとめサイトにも無事に開催日が掲載され、公式サイトも更新されました。
公式サイトは以下の通り。
去年と同じく千葉県木更津市のかずさアカデミアホールで開催されます。12/24の10時から15時までですが、10時から入場できるのは有料の先行入場を申し込んだ方のみで、無料の一般入場は10時半からです。私はバスの都合もありますから、普通に10時半からですね。
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去年、木更津Cactus & Succulentフェアで入手した子吹きシンメトリカ。適当に画像を加工してみました。

さて、今年はどんな感じでしょうかね。会場は結構広いのですが、去年はまだ出店できる余裕がかる感じがします。5月のイベントには行っていないので分かりませんが、出店が去年より増えてくれると嬉しいのですが…
さて、私は今年も東京駅から高速バスで会場に向かう予定です。バス乗場が変わったらしいので、間違わないように気を付けなければ。取り敢えず見に行く予定ですから、当日の様子を記事にするつもりです。


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最近、ムランジーナという名前のユーフォルビアが多肉植物に力を入れている園芸店などに並ぶようになりました。巨大な塊根のようなものから細い枝が複数伸びる不思議な姿です。
実はこのムランジーナを見た時に、これが何なのかよく分かりませんでした。というのも、大型の多肉ユーフォルビアは幹が樹木のように硬くなりますが、ムランジーナはどうもそのようには見えません。胴切りして頭から子を吹かせたわけでもなく、木質化した幹から緑の枝を伸ばしています。どうすればこのような姿に育つのか疑問でした。ですから、初見では塊根だと勘違いしたわけです。しかし、論文を調べてみると、どうも塊根ではなく幹ということで、しかもその異様な幹が形成される理由がわかりました。というわけで、ムランジーナとは一体何者なのか論文を見てみましょう。

DSC_1762
Euphorbia mlanjeana
おそらく挿し木苗ですので、特徴的な幹は見られません。

本日ご紹介するのはJoachim Thiede, Pastor Theo Peter Campbell-Barker, Philip E. Downs & Bruce J. Hargreavesの2016年の論文、『A review of Euphorbia mlanjeana L.C.Leach (Euphorbiaceae) : its habitats on Mount Mulanje(Malawi) and new localities in Mozambique』です。

論文の内容はマラウイのMulanje山に分布するE. mlanjeanaが、モザンビークにも分布していますというものです。新たな産地の報告ですね。しかし、それだけではなく、E. mlanjeanaの命名の経緯や生態も詳しく述べられています。詳しく見てみましょう。

マラウイはマラウイ湖から西に伸びるアフリカ南東部の内陸国です。タンザニア、ザンビア、モザンビークと隣接しています。マラウイの多肉植物は約120種類が知れていますが、ジンバブエの約318種類やケニアの約380種類と比較するとかはり少なく感じます。単純に国土面積が狭いからではなく、国の大部分が標高1500m以上に位置し、気温は低く降雨量もかなり多いということです。
マラウイの植生で興味深いのはMulanje山塊で、植物の多様性が高く約69の固有分類群が知れています。E. mlanjeanaもMulanje山に分布します。"mlanjeana"はMulanje山に由来しますが、よく見ると"u"が抜けています。これは、イギリスの植民地時代の綴りの誤りで、E. mlanjeana命名当時は"u"がないMlanje山と呼ばれていたことが原因です。
E. mlanjeanaは標高1000~1980mの露出した花崗岩の斜面や平らな岩肌に生えます。

E. mlanjeanaのは1973年にL.C.Leachにより命名されましたが、不思議な幹の謎がその時点で言及されていました。どうやら、E. mlanjeanaの自生地は乾燥した草が頻繁に山火事を起こし、E. mlanjeanaは数年しか枝が存続しないように見えると述べています。要するに、家火事により幹の表面は焼け焦げて枝は枯れますが、そのうち細い枝がまた出て来て、しかしまた火事が起きて…、という繰り返しがあの異様な姿を作り出したのです。思いもよらぬ自然現象によるものでした。実生からの栽培では火事に合いませんから、現地球のような姿には育たないそうです。

長い間、E. mlanjeanaはMulanje山でのみ知られる固有種でしたが、Bruynsは2003, 2005, 2006年に2種類の新種の報告の中で、モザンビークの2つの山岳地帯に生えるE. mlanjeanaについてさりげなく言及しました。モザンビークのRibaue山脈とNamuli山塊です。

さて、以上が簡単な論文の要約です。
まさか山火事が関係しているとは思いもよらず、大変な驚きでした。しかし、最近急に輸入されるようになりましたが、もともと個体数がそれほど多くなかったかわけで、これだけの野生株が山掘りされていることはかなり不安です。タンザニアからも輸入があると聞きますから、さらに新産地が見つかったのかも知れません。しかし、山火事という偶然が長い時間をかけて作り出した自生株が急激に失われていくのかも知れません。大変悲しいことです。


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バナナは放っておくと、皮に黒い点々が出てきます。これは、スウィート・スポットと呼ばれ、甘く熟した食べ頃のサインと言われています。これは、バナナの皮に含まれるポリフェノールが酸化したものなんだそうです。しかし、困ったことに多肉植物にも黒いスポットが出来てしまうことがあります。当然これはポリフェノールではないし、食べ頃のサインでもありません。何かしらの不調のサインです。観葉植物の本を紐解くと、黒い点の原因は様々です。栽培環境が悪いせいでおこる生理障害の場合もありますが、黒星病や炭疽病などの病原菌、場合によってはカメムシなどの害虫の被害の場合もあります。
本日はこの黒い点についてのお話です。具体的にはアロエやガステリアに黒い点が出てしまうことが割とあり、これは一体何が原因なのだろう?というものです。その論考は2001年のHarry Maysによる『All that is known about Black Spot』です。早速、内容を見てみましょう。

黒い点の原因や対処法は、基本的に趣味家の経験則によるもので人により意見は異なり、科学的な見地からのものではありませんでした。著者ははじめから原因は1つではないかもしれないので、様々な可能性を探り意見をまとめてみたということを述べています。

①ストレス
日本語でストレスと言うと精神的なイメージがありますが、本来ストレスは圧力という意味もあります。植物も高温や乾燥などは植物にストレスを与えます。ただし、黒点の発生については可能性の話で確証はありません。

②環境
強光に当てて換気が不十分だと植物表面が痛むことがあります。さらに、高窒素肥料と水をあげすぎると、軟弱になり病原菌に弱くなる可能性があります。しかし、必ずしもこれらの条件で黒点があらわれるとは言えず、出ない場合もあります。

③土壌不足
長年植え替えをしていないと、栄養が不足して黒点があらわれると言われています。しかし、植え替えをしていなくても黒点が出ない場合も確認されており、むしろ堆肥を与えることで黒点が出るという意見もあります。

④湿度
温室内でも温度は場所や高さにより均一ではありません。また、場所によっては結露することもあります。実際に黒点の原因として過湿があげられることが多いようで、移動させて乾燥させることが推奨されています。しかし、残念ながら著者には、乾燥期に若いGasteria distichaに黒点があらわれた経験があります。逆に光に乏しく湿気の多い環境では何故か黒点は発生しませんでした。

⑤病原菌
湿度が高くなると、細菌やカビの活動は活発になります。しかし、ヨーロッパで多肉植物は冬は暗く湿った環境に置かれることになりますが、必ずしも黒点はあらわれません。

⑥種類
ガステリアでは種類により黒点が出やすい種類、出にくい種類があるという意見もあります。しかし、それも人によって傾向が異なりました。しかも、同じ種類を育てていても、黒点が出るものと出ないものがあるという報告もあります。中には株分けした片方にだけ黒点があらわれたりします。この場合の黒点は伝染性がないようです。

⑦野生株
南アフリカの東ケープ州の西部やオレンジ川北部では、野生のガステリアに黒点は滅多に見られませんでした。Hells Kloof地域のGasteria pillansiiは数ヶ月に渡り非常に乾燥した年に数個の黒点が観察されました。同じ地域で非常に雨が多かった年に、Gasteria pillansiiは水分を吸収し過ぎて膨れ上がり、裂けてしまうものもありました。腐ってしまったものもありましたが、黒点はまれにしか見られませんでした。

⑧David Cumming
より信頼性の高い情報を求めて、南アフリカの調査経験が豊富なDavid Cummingに連絡しました。Cummingは「特に東ケープ州で広い地域で一般的であると思われます。アストロロバは最も多く、ガステリアが続きます。」Cummingは黒点はストレスによるもので、それが黒点の主な原因ではなく、日和見感染の可能性があるとしています。

⑨Ernst van Jaarsveld
南アフリカの多肉植物の研究者であるvan Jaarsveldは、黒点はMontagnella(真菌=カビ)により引き起こされるとしています。3~6ヶ月ごとにオキシ塩化銅あるいはCaptanを噴霧しますが、定期的な噴霧を行っても黒点はあらわれます。

⑩Doug McClymont
ジンバブエのDoug McClymontは研究者としてではなく、半分趣味のアロエ栽培の経験を語ってくれました。アロエの黒点は、高湿度で曇天、気温18度以上、毎日雨が降るなどの条件で発生すると言います。また、昆虫による被害も加算されるようです。
Montagnella maximaやPlacoasterella rehmiiはbenzimidazolesやtriazolesといった浸透性殺菌剤は効果がありませんが、cyproconazoleとdisulphotonの混合顆粒により昆虫の害を防ぎ黒点か出来ません。しかし、非常に湿った環境では昆虫がいなくても黒点は出来てしまいます。しかし、オキシ塩化銅または水酸化第二銅の噴霧で高い効果があったようです。ただ、老化した葉は黒点が出来やすく薬剤でも効果がありません。

⑪王立園芸協会
科学的証拠を得るために、王立園芸協会の植物病理学部門に連絡しました。黒点のあるGasteria distichaの葉と根、土壌を調査してもらいました。黒点は日射、灌水、肥料などの生理的なものではないと結論付けました。ただし、黒点の周囲の組織を培養しても病原菌は見つかりませんでした。これは病原菌がいないことの証明にはならず、ただ培養が困難な病原菌だったからかもしれません。王立園芸協会の提案する最良の案は、広範囲の植物の葉の斑点に効果がある殺菌剤mancozebの使用です。

謎は深まるばかり…
冬に寒さからガステリアを守るために一切の通気を遮断して非常に湿った状態で育てている人もいますが、何故か全く黒点は出来ないそうです。
これまで見てきた意見は、全く以て相反する内容が噴出していますが、著者は黒点の原因は1つではないからだろうと考えています。結局、我々の出来ることは、殺菌剤の散布以外では、硬く締まった最適な育て方をして、ちゃんと植え替えしましょうという常識的なことくらいなものです。
黒点の謎は解明されたとは言えませんが、全く対処不能というわけでもないように思えます。もし、黒点があらわれた時には、その多肉植物は何かしらの問題を抱えているのかも知れませんね。

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アロエの古い葉にあるこの黒いスポットの原因は何でしょうか?


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ソルディダは一般的に硬葉系ハウォルチアと呼ばれる多肉植物です。ざらざらした暗い色の肌と、生長が遅いことが特徴です。ちなみに、ソルディダは生長の遅さ故か硬葉系の中では割と高価で、コエルマニオルムとソルディダは中々手が出せません。まあ、普通の園芸店では見かけることはありませんが…
さて、そんなソルディダですが、初めて学名が命名されたのは1821年と約200年前のことでした。そのため、これまでに様々な学名がつけられてきました。今日はそんなソルディダの履歴を辿ってみます。


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Haworthiopsis sordida

ソルディダが初めて命名されたのは、1821年のHaworthia sordida Haw.です。その後、1829年にAloe sordida (Haw.) Schult. & Schult.f.、1891年のCatevala sordida (Haw.) Kuntzeが知られています。また、ソルディダはスカブラと近縁と考えられ、1997年にHaworthia scabra var. sordida (Haw.) HaldaHaworthia scabra subsp. sordida (Haw.) Haldaも命名されています。しかし、結局はソルディダは独立種とされて、基本的にHaworthia sordida Haw.で呼ばれてきました。しかし、近年の遺伝子解析により、硬葉系ハウォルチアは軟葉系ハウォルチアとあまり近縁ではないことがわかってきました。硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離され、HaworthiopsisとTulistaとなりました。Tulistaは現在4種からなる小さなグループですが、それ以外の硬葉系ハウォルチアはHaworthiopsisに分類されています。ソルディダも2013年にHaworthiopsis sordida (Haw.) G.D.Rowleyとされました。現在もこの学名が学術的に正式なものですが、実際に販売される場合は未だにHaworthia sordidaの名前で流通しています。
そう言えば、ソルディダには変種がありますが、ついでに見てみましょう。


1981年にソルディダの変種としてラブラニが命名されました。Haworthia sordida var. lavrani C.L.Scottです。一時期提案されたソルディダをスカブラの変種とする考え方から、その提案者により1997年にHaworthia scabra var. lavrani (C.L.Scott) Haldaと命名されたこともあります。また、2010年には変種ラブラニを独立種とするHaworthia lavrani (C.L.Scott) Breuerもありました。しかし、やはり最終的にはソルディダの変種ということになり、ソルディダがHaworthiopsisとなったことに合わせて2013年にHaworthiopsis sordida var. lavrani (C.L.Scott) G.D.Rowleyとなりました。

変種ラブラニが命名されたことにより、ラブラニではないソルディダは区別されることになりました。単純にHaworthiopsis sordidaと言った場合、変種ラブラニとそれ以外を含んだ名前となるからです。つまり、変種ソルディダです。これは命名されたわけではなく、変種が出来たことにより自動的に出来た学名です。つまり、Haworthiopsis sordida var. sordidaです。
この、変種ラブラニ以外のソルディダは変種ソルディダになる前から、異名がつけられてきました。いわゆるHeperotypic synonymです。Homotypic synonymとは異なり、Heperotypic synonymはその種小名が受け継がれなかった学名です。それは1938年に命名されたHaworthia agavoides Zantner & Poelln.です。このアガヴォイデスはやがてソルディダの変種とされ、1950年にHaworthia sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.)となりました。さらに、ソルディダがHaworthiopsisとなったことを受けて、2016年にはHaworthiopsis sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.) Breuerとされましたが、現在では変種ソルディダの異名扱いとされています。


以上がソルディダの学名の変遷です。ハウォルチオプシスは異名が恐ろしく多いものがあり、その一覧を見てうんざりすることもありますが、ソルディダはやはり特徴的な外見なせいか見た目の変異が少ないためかは分かりませんが、異名はほとんどありません。いや、それでも結構あるだろうと思われるかも知れませんが、種小名が同じHomotypic synonymばかりですから非常にすっきりしています。他のHaworthiopsisは1種類に対して、別種としていくつもの学名がつけられていたりして非常に混乱してきたことがうかがえます。
個人的にはこのざらざらした肌と暗い色合いは好きですが、イベントで立派な株が万単位の価格て販売されていて中々手が出せませんでした。しかし、最近のビッグバザールでは小さな実生苗が安価で入手可能です。どうやら、一度に沢山実生したみたいです。これは今しか入手出来ないものかもしれません。ソルディダが安く入手出来る中々ないチャンスです。あまり売れている雰囲気はありませんでしたが、皆さんもこの機にソルディダに手を出してみてはいかがでしょうか?


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Dioonは中米からメキシコまでに分布する大型のソテツです。その涼しげで優美な葉から、日本でもDioon eduleなどはまれに栽培されることがあります。私も世界最大のソテツと言われるDioon spinulosumの苗を育てています。このDioon spinulosumについては、発見されたばかりで情報が少なかったため研究者が現地を訪れて調査したという記事を書きました。なんと1909年の論文でした。
DSC_2037
Dioon spinulosum

ソテツ自体は古代から存在する起源の古い植物です。ソテツの分類について記事にしましたが、Dioonは微妙な立ち位置にいるようです。

さて、ソテツについては何度か記事に書いてきましたが、Dioonの分類についての論文を見つけました。しかも、ただの分類ではなく、その進化と地理的な分布について考察する壮大な内容の論文です。Brian L. Dorsey, Timothy J. Gregory, Chodon Sass & Chelsea D. Spechtの2018年の論文、『Pleistocene diversification in an ancient lineage : a role for glacial cycles in the evolutionary history of Dioon Lindl.(Zamiaceae)』です。
Dioonの遺伝子を解析することにより、4つのグループにわけられることがわかりました。ソテツは古い時代から存在するにも関わらず、このグループは割と新しい時代に急速に進化したことが推測されます。

Dioonの分子系統
Dioonはメキシコの太平洋側に広く分布するWestern Clade、メキシコ南部のくびれ部分の太平洋側に固まって分布するSouthern Clade、メキシコのメキシコ湾沿いに分布するEdule Clade、Edule Cladeより南のメキシコ湾南部に分布するSpinulosum Cladeにわけられます。
下のDioonの分子系統を見ると、種分化の方向はSpinulosum Clade→Edule Clade→Southern Clade→Western Cladeとなっています。つまり、もともとメキシコ南部が起源で、北上しメキシコ湾沿いだけではなくて、やがて太平洋側にも分布が拡がったように見えます。

Dioonの分子系統
        ┏Westrn Clade
    ┏┫
    ┃┗Southern Clade
┏┫
┃┗━Edule Clade

┗━━Spinulosum Clade

Western Clade
                ┏D. sonorense1
┏━━━┫
┃            ┗D. sonorense2

┫            ┏━━━D. tomasellii1
┃┏━━┫
┃┃        ┗D. tomasellii2
┗┫
    ┃    ┏━D. stevensonii1
    ┗━┫
            ┗━━D. stevensonii2

Southern Clade
        ┏━━D. planifolium1
        ┃
┏━┫    ┏D. caputoi1
┃    ┗━┫
┃            ┗D. caputoi2

┃    ┏━D. holmgrenii1
┃    ┃
┃┏┫    ┏D. holmgrenii2
┃┃┗━┫
┃┃        ┗━━D. holmgrenii3
┃┃
┃┃┏━━━D. merolae1
┃┃┃
┣┫┃┏━━━D. merolae2
┃┃┃┃
┃┃┃┃        ┏━D. merolae3
┃┃┣┫┏━┫
┫┃┃┃┃    ┗━D. merolae4
┃┗┫┗┫
┃    ┃    ┃┏D. merolae5
┃    ┃    ┗┫
┃    ┃        ┗━D. merolae6
┃    ┃
┃    ┗━━━━D. planifolium2

┃        ┏━━D. purpusii1
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━━━D. argenteum
┃┏┫
┃┃┗━D. purpusii2
┗┫
    ┃        ┏━━━━D. califanoi1
    ┃┏━┫
    ┗┫    ┗━D. califanoi2
        ┃
        ┗━━━━D. purpusii3

Edule Clade
┏━━━D. edule1

┃┏━━━━━D. angustifolium1
┫┃
┃┃┏━━━━━━D. angustifolium2
┗┫┃
    ┃┃┏━━━━D. edule2
    ┗┫┃
        ┃┃    ┏━━━D. edule3
        ┗┫┏┫
            ┃┃┗━━━D. edule4
            ┃┃
            ┗┫        ┏━D. edule5
                ┃    ┏┫
                ┃    ┃┗━━━━D. edule6
                ┗━┫
                        ┃┏━━D. edule7
                        ┗┫
                            ┗D. edule8

Spinulosum Clade
                        ┏D. rzedowskii1
            ┏━━┫
            ┃        ┗D. rzedowskii2
┏━━┫
┃        ┃    ┏━D. spinulosum1
┃        ┗━┫
┫                ┗━━D. spinulosum2

┃            ┏━━D. mejiae1
┗━━━┫
                ┗━D. mejiae2


更新世の進化
遺伝子解析は遺伝子の変化の速度を計算することにより、どのくらい前に種同士が分かれたのかを推測することも出来ます。その推測によると、中新世後期にSpinulosum Cladeと他3Cladeが分かれ、更新世に各Cladeは急激に種類が増えたことが示唆されています。これは、一体どういうことなのでしょう?
更新世は新生代第四紀の約258万年前から約1万年前までの時代です。更新世は氷期と氷期の間の暖かい間氷期を15回繰り返しました。どうやら、この氷期の繰り返しがDioonの急激な進化に関係があるようです。
気温の急激な上昇は植物層の標高を上げます。分かりにくいので、日本の植物で例えましょう。例えば、氷期で寒かった時期に、本州に寒帯~亜寒帯の植物が分布を拡大しました。しかし、やがて温暖な間氷期が訪れると、寒帯~亜寒帯の植物は育つことが出来なくなり、山を登りはじめます。山は標高が高くなるほど気温が低下しますから、適した低い気温の標高に分布するようになります。これらの植物を私達は高山植物と呼んでいるのです。この時、高山植物はもはや平地では育ちませんから、違う山同士の植物で交配出来なくなります。つまり、それぞれの山で孤立し交わらないため、山ごとに異なる進化をして別種になっていくのです。
どうやらDioonも同じで、氷期と間氷期の繰り返しにより、標高が上がると孤立し、標高が下がると分布を拡げるということが、急速な種類の増加に繋がっていると考えられるのです。Dioonは高山植物ではありませんが、育つのに適した気温があります。暖かくなりすぎれば、最適な気温帯を求めて山を登りはじめるのです。
ソテツは生きた化石と呼ばれますが、Dioonに関しては非常に新しい種類ばかりであることがわかりました。更新世は258万年前からですから、あるいはすごい昔のような気もしてしまいますが、数億年前に誕生したソテツからみたら最近の話です。まあ、
人類誕生が600~700万年前と考えられていますから、人類よりもDioonの方が新顔です。もちろん、Dioonの祖先の誕生はさらに古い時代ですけど、生きた化石の急激な進化は意外性があります。ただの遺伝子解析による種類の遠近だけではなく、進化の理由まで考察する大変面白い論考でした。こういう良い論文があると紹介しがいがありますね。



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かつて硬葉系ハウォルチアなどと呼ばれていたHaworthiopsisやTulistaには、イボに覆われているものがあります。そもそもこのイボが何のためにあるのかすら良くわかりませんが、結節などと呼ばれることが多いようです。遺伝的には、このイボの有無は分類には関係ないみたいです。要するに、イボのある種同士が近縁というわけではないため、イボのあるグループとないグループで分けることは出来ないのです。
さて、このイボにも種類があり様々です。今日はそんなハウォルチア系のめくるめくイボの世界へご案内しましょう。

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九輪塔 Haworthiopsis coarctata IB5850
九輪塔H. coarctataと鷹の爪H. reinwardtiiは同種とされることもありますが、現在は別種とされています。私の所有株はイボが控え目です。九輪塔のイボはまるでイボの先に着色したように見えます。


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星の林 Haworthiopsis reinwardtii var. archibaldiae
鷹の爪H. reinwardtiiの変種ですが、現在は認められていない学名です。鷹の爪系のイボは横長で大型です。

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Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
コンパクトなf. kaffirdriftensisですが、イボは密に並びます。


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天守閣 × Astrolista bicarinata
AstrolobaとTulistaの自然交雑種。少し透き通るイボは、イボの由来がTulistaだと教えてくれます。


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Tulista pumila
Tulistaの代表種プミラ。Tulistaはよく見るとイボが半透明です。このプミラはイボが小さく密なタイプ。


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Tulista pumila
イボが白くないタイプのプミラ。イボは大型。


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Tulista pumila var. sparsa
プミラの変種スパルサ。イボはまばらですが、赤みを帯びた大型のイボが美しい。

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Tulista pumila var. ohkuwae
プミラの変種オウクワエ。白く大型のイボが密につき非常に目立ちます。

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Tulista kingiana
あまり見かけないキンギアナですが、イボは小さくて地味ですね。


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Tulista minor
Tulista minimaと呼ばれることもありますが、Tulista minorが正式な学名です。イボは横長で密につきます。


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Tulista minor swellense
有名な産地の個体。イボが立体的でよく目立ちます。


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Tulista marginata
マルギナタのイボは大型でたまにつながったりします。透き通った感じが好きですね。


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十二の巻 Haworthiopsis attenuata cv.
何故かH. fasciataと言われる十二の巻ですが、H. attenuata系の交配種です。白いイボはつながりバンド状になります。


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特アルバ Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが目立つ選抜交配種。


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松の雪 Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが小さく密につくタイプ。


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Haworthiopsis fasciata DMC05265
本物のファスキアタですが、普通の園芸店で入手は困難です。十二の巻とそっくりですが、アテヌアタとファスキアタは、遺伝子解析結果では近縁ではないようです。


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Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
ファスキアタの特殊なタイプ。イボは小さくまばらで縦に5列あります。

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Haworthiopsis glauca var. herrei RIB0217
グラウカの変種ヘレイの葉が短いタイプ。変種ヘレイとしてはイボがはっきりしています。

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Haworthiopsis glauca var. herrei
グラウカの変種ヘレイの葉の長いタイプ。イボは目立ちませんが、よく見ると縦にイボが並んでいます。


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紫翠 Haworthiopsis recendeana
現在は九輪塔H. coarctataと同種とされている
紫翠ですが、イボが白くないので目立ちません。イボ自体は非常に密につきます。

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Haworthiopsis scabra
これ以上イボが小さいとイボではなくザラ肌と呼んだほうが良さそうです。H. sordidaやH. nigraはイボではなくザラ肌ですよね。


イボの世界はいかがでしたか? 意外とイボにも色々あることがお分かりいただけたと思います。
個人的にはイボイボ系は大好物なのですが、あまり人気がないみたいで残念です。この記事を起点にイボイボ系のファンが増えて、買う人が増えたことにより園芸店にもイボイボ系が並ぶようになれば私も嬉しいのですが、そんなバタフライ・エフェクトみたいなことは難しいですかね? 今こそ、イボの復権をと密かに願っている次第。


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クマラをご存知ですか? かつて、アロエとされていたAloe plicatilisやAloe haemanthifoliaは、2013年にアロエ属から独立してクマラ属(Kumara)となりました。よって、Aloe plicatilisとAloe haemanthifoliaは、それぞれKumara plicatilisとKumara haemanthifoliaとなりました。ここらへんの学名の経緯は過去に記事にしたことがあります。以下のリンクをご参照下さい。
さらに、Kumara plicatilisの生態について書かれた論文をご紹介した記事もあります。
そんな中、A. plicatilisがクマラ属へ移動した際の学名の混乱について正しい学名に訂正すべきであると主張している論文を見つけました。その論文は、2013年のRonell R. Klopper, Gideon F. Smith & Abraham E. Van Wykによる『The correct name of Aloe plicatilis in Kumara(Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』です。しかし、この論文はことの経緯を無駄なく簡潔に述べていますが、説明がないので経緯を知らない人間にはよく分からない内容となっています。そこで、私が調べた情報を加味して、内容を再構成して解説します。最初に簡単に言ってしまうと、著者の主張はKumara distichaという学名が使われているが、これは正しい学名ではないというものです。

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Kumara plicatilis=Aloe plicatilis

一番最初にK. plicatilisが命名されたのは、1753年にCarl von LinneによるAloe disticha var. plicatilis L.でした。Aloe disticha L.つまりは後のGasteria disticha (L.) Haw.の変種として命名されたのです。
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Gasteria disticha

1786年にドイツのFriedrich Kasimir MedikusはKumara Medik.を創設し、A. disticha var. plicatilisをKumara disticha Medik.としました。しかし、Aloe distichaは後のGasteria distichaなのですから、Kumara distichaというのはおかしな名前です。
実は1768年にA. disticha var. plicatilisはA. distichaの変種ではなく独立種であるとして、オランダのNicolaas Laurens BurmanがAloe plicatilis (L.) Burm.f.と命名しましたが、これが正しい種小名です。

ですから、最初A. disticha var. plicatilisであった植物が、アロエ属から独立した際に引き継ぐべき種小名は"disticha"ではなく"plicatilis"なのです。要するに、1786年に命名されたKumara disticha (L.) Medik.は使用されるべきではなく、1768年にAloe plicatilis (L.) Burm.f.を引き継いでいる、2013年に英国のGordon Douglas Rowleyにより命名されたKumara plicatilis (L.) G.D.Rowleyが正しい学名であるというのが著者の主張です。

Kumara Medik.には非常に深刻な問題点があります。1976年にRowleyによりKumaraのタイプをKumara distichaとして指定してしまったので、KumaraとGasteriaは同義語となってしまいました。学名は先に命名された方を優先する「先取権の原理」がありますから、1809年に命名されたGasteria Duvalよりも、1786年に命名されたKumara Medik.が優先されてしまいます。要するにGasteriaのすべてをKumaraに変更しなくてはならなくなり、命名上の混乱の観点からは深刻な問題と言わざるをえません。そのため、2世紀にわたり使用されてきたGasteriaという属を保存するべきでしょう。ですから、Kumaraをガステリアの同義語とせずに、Aloe plicatilisに使用される属名とすることが重要です。

以上が論文の簡単な解説となります。
現在認められている学名はKumara plicatilisですから、著者の主張が採用されていることがわかります。
思うこととして、学名は学者の主張によりコロコロ変わりますから、その都度、我々趣味家は振り回されてしまいます。しかし、現在は遺伝的解析により、近縁関係がはっきりしてきましたから、以前ほど、思い悩まされることはなくなりました。とは言うものの、まだ学名は変わる可能性があります。すべての多肉植物の遺伝子が調べられたわけではありませんし、近縁関係が判明したところでどこで区切ってわけるべきかは議論のあるところです。しばらくは試行錯誤が続くでしょう。しかし、現在は遺伝子解析は過渡期ですから、学名も流動的で変わりやすい時代と言えます。個人的にはこれからどうなっていくのか、楽しみで仕方がありません。



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サボテンや多肉植物は乾燥に耐えるために、水分を蓄えるために厚みのある葉、太い根、太い幹など様々な適応が見られます。その中でも高度に多肉化したものとして、サボテン科が非常に有名です。そのため、サボテンは、特に大型の柱サボテンの幹の構造と光合成や貯水の関係性については研究が行われています。
しかし、その種類の多さや多様性ではサボテンと双璧をなすトウダイグサ(ユーフォルビア)科については、その手の研究は行われて来ませんでした。アフリカには沢山の種類の柱サボテン状の巨大なユーフォルビアが自生しますが、ユーフォルビアの幹の構造についての研究した論文を見つけました。それは、2018年のP. W. Rundel, K. J. Esler, T. W. Rundelによる『Canopy architecture and PAR absorption of Euphorbia cooperi in the Matobo Hills, Zimbabwe』という論文です。今回の論文で調査しているEuphorbia cooperiは、日本では「瑠璃塔」の名前で知られています。私も苗を入手して育てています。

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瑠璃塔 Euphorbia cooperi

大型の柱サボテンは、幹にひだ(稜)があります。一般的に水分を貯蔵するだけなら断面は円に近い方が有利でしょう。しかし、乾燥地に生えるサボテンが常に過不足なく水分を貯めているわけではありません。乾季が続けば水分が抜けていき縮み、雨が降ればパンパンに水分を吸収して膨れるわけです。この時に、水分の増減による収縮と膨張を稜が、アコーディオンのように柔軟に調整しているとされています。良く似た姿のユーフォルビアはどうでしょうか?

E. cooperiは10mに達する、沢山の枝が出る樹木状ユーフォルビアです。分布も広く、南アフリカのKwaZulu-Natal、スワジランド、North-West州、Mpumalanga、Limpopo州からモザンビーク、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビア、タンザニアにまで及びます。
E. cooperiは幹の上部で沢山枝分かれします。著者が観察したE. cooperiは4稜でしたが、5稜の集団もありました。断面は四角形ではなく、稜の間が凹んだ形でした。E. cooperiは段を重ねるように育ち、円錐形を重ねたような珍しい形になります。
柱サボテン
と柱状ユーフォルビアの違いは、ユーフォルビアの強く木質化した幹と柔軟性のなさです。また、サボテンは稜が浅く断面は円に近くなりますが、ユーフォルビアは稜が深く3~6稜と多様性があります。また、調査したE. cooperiの枝の平均年齢は15歳で、大型の個体では28年ものの枝もありました。

調査はジンバブエ西部のMatobo丘陵の標高1199m地点で行われました。E. cooperiには変種がありますが、調査したのはE. cooperi var. cooperiです。現地はMatobos Batholithと呼ばれる隆起した地形で、ジンバブエと南アフリカの古代の花こう岩からなります。E. cooperiは他の樹木が生えない岩だらけの斜面を好みますが、開けた落葉樹林でも見かけます。E. cooperiは、E. confinalis、E. griseola、Combretum imberbe、Commiphora marlothii、Ficus thonningiなどと共に自生します。
Matobo丘陵は、夏に雨季があり冬は乾燥します。雨季は11月から翌5月まで続き、その間に年間降水量の87%の雨が降ります。雨季の平均最高気温は10月と11月に29~30℃、平均気温は14~15℃です。冬は日中の平均最高気温は21℃ですが、夜は4℃まで下がります。

E. cooperiの幹は木質化するため光合成出来ません。しかし、大型の個体は多くの枝があるために、光合成出来る表面積は非常に大きくなります。調査した133個体の中で最大のものは、合計120mの枝長と43.5m2の光合成面積がありました。E. cooperiはサイズが大きいほど表面積も大きく、表面積が大きい分だけ水分損失が大きくなります。しかし、サイズが大きいほど体積が増すことから貯水量が大きくなり、水分損失をカバーしていることが考えられます。
次に稜がある意味です。枝の周囲の長さと断面積の比率をモデル化して、計算上の水分損失と光合成面積を算出しました。もし稜がない場合、つまり枝の断面が四角形だと、生長により貯水量は増えますが光合成面積は増えませんでした。しかし、稜がある場合は生長により体積あたりの表面積が増加しました。
若いE. cooperiは干魃に敏感である可能性がありますが、生長に従い体積が増して蒸散による水分損失率が最小となり干魃に非常に強くなります。

以上が論文の簡単な要約となります。
理屈は少し分かりにくく、大変申し訳なく思います。これでもかなり要点だけの抽出で簡素化していますが、私の理解力と文章力の限界が原因です。
さて、E. cooperiは古い幹は木質化しますが、この木質化した幹は当然ながら光合成には寄与しません。しかも、大型になるにつれ木質化は進行します。一見して大型化は光合成の効率を下げますが、E. cooperiは沢山の枝を出すことにより光合成の効率を高めているのです。しかも、稜を持つことにより表面積を増加させて、さらに光合成の効率を上昇させています。
しかし、表面積の増加は蒸散による水分損失の増加を招きます。この場合、断面が円に近いほうが貯水量が増加し水分損失率は減少しますから、稜の溝が深いと水分損失率は上昇するでしょう。ただし、これは光合成効率と水分損失率のバランスの話であって、ゼロか百かというものではないでしょう。E. cooperiの場合は、生長につれ太くなる幹は木質化しますから光合成せず蒸散も起こらないでしょう。ですから、木質化した幹は水分の貯蔵という意味では優れています。

乾燥地に生える植物は環境に適応するために、様々な戦略を取っています。その中でも、乾燥への適応度が特に高いサボテンとユーフォルビアで、その大型化に伴い柱状の類似した形状と稜による光合成効率の上昇など、非常に似ていることは不思議です。サボテンはアメリカ大陸で多肉ユーフォルビアはアフリカ大陸と地理的にも離れており、分類も近縁ではありません。それでも、これだけの共通点があるのは、サボテンやユーフォルビアの選んだ道が乾燥に対する最適解であったということを示しているのかも知れません。


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最近、Euphorbia handiensisという珍しいユーフォルビアを入手しました。E. handiensisはカナリア諸島のごく限られた地域でしか見ることが出来ません。しかし、カナリア諸島と言えばEuphorbia canariensisというユーフォルビアが有名です。普及種ですし、名前にカナリアと入っているくらいですから、カナリア諸島を代表する植物の一つでしょう。
日本では「墨キリン」なる名前もつけられているよう。私も墨キリンの苗を入手して3年になりますが、墨キリンは丈夫で育てやすいユーフォルビアです。


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墨キリン Euphorbia canariensis

本日ご紹介するのは、論文ではなくてポスターです。この場合におけるポスターとは何か、説明が必要でしょう。あらゆる学問には学術誌と学会があります。論文は学術誌に載りますが、学会では舞台上の発表とポスター発表とがあります。ポスター発表はポスターが並んだ会場で、ポスターの前で他の研究者に説明したり質問に答えたりします。というわけで、本日はそんなポスターを解説していきます。2021年に発表された、Albert J. Coello, Pablo Vargas, Emilio Cano, Richard Riina & Mario Fernandez-Mazuecosの『Biogeography and phylogeography of Euphorbia canariensis reveal alternative colonization patterns in the Canary Island』です。

E. canariensisはカナリア諸島に広く自生します。カナリア諸島は海底火山の噴火により出来た、7つの島からなる群島です。東側の島が古く、ハワイのように新しい島が次々と出来て海底プレートに乗って移動し、やがて海底に沈むというサイクルがあるようです。カナリア諸島の海底に沈んだ島は白亜紀に形成されたようです。

E. canariensisの遺伝子を解析したところ、意外なことがわかりました。E. canariensisは、同じくカナリア諸島に分布するE. handiensisや、カナリア諸島に地理的に近いモロッコ原産のE. officinarum(大正キリン、異名E. echinus)とは遺伝的に近縁ではありませんでした。E. handiensisはE. officinarumに近縁であることが確認され、アフリカ大陸からの伝播が行われたことが想定されます。
面白いのは、E. canariensisは東南アジア原産のE. epiphylloidesとE. sessilifroraに近縁でした。もちろん、これは東南アジアからカナリア諸島にダイレクトに伝播したことを示しているわけではありません。E. canariensisはE. officinarumからではなく、アジアと共通する祖先から進化したと考えるほうが妥当で、著者はアフリカやアラビア半島を経由していることを想定しています。ただし、調べた種類が少ないので、これ以上の想定は困難でしょう。
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剣光閣 Euphorbia handiensis

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大正キリン Euphorbia officinarum

以上がポスターの主な内容でした。ポスターなので内容は簡潔です。まだまだ詳細はわかりませんが、指針は得られたのではないでしょうか。
さて、個人的には色々と気になることはあります。例えば、E. canariensisはカナリア諸島に広く分布しているのに、E. handiensisは1つの島の狭い地域にしか生えないのは何故でしょうか? また、ユーフォルビア自体が種子を動物に運んでもらう機構はありませんが、それでもE. canariensisはあちこちの島に分布していることは少し不思議です。火山の噴火により出来た島ですから、昔は陸続きで伝播したというわけでもありません。ユーフォルビアの種子が風で島を渡ることはないでしょうから、例えば泥ごと鳥の足についたまま移動することはあるかもしれません。しかし、そうなるとE. handiensisの分布の謎がより難題になってしまいます。まったく、謎はつきません。


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ガステリア・エクセルサは19世紀に記載された、昔から知られているガステリアです。他のガステリアと同じく南アフリカの原産です。
私も小指の先ほどの苗を園芸店で購入して育てています。まだ、エクセルサらしさはありませんが、苗から育てていますから愛着がありますし、これからの生長が非常に楽しみです。


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Gasteria excelsa

そんな、エクセルサに関する情報を探ったところ、論文を見つけました。それは、2003年のDavid Cummingの論文、『A matter of recruiment in Gasteria excelsa Baker』です。早速、論文の内容に移りましょう。

G. excelsaはほとんどの場合、川の近くに自生します。Port Alfredの南に約50kmのAlexandria付近から、Transkeiまで見られます。
BathurstのLuthington川のほとりに沿ってG. excelsaは個体数が多く、著者はG. excelsaの種子を採取していました。この時、大量の種子が供給されているにも関わらず、芽生えがほとんどない状態でした。詳細を観察するために、Langholmeに向かって隔離された地域にあるG.excelsaの小集団が対象に選ばれました。

ここでは、狭いエリアに2つの異なる環境に、それぞれの集団があります。
1つ目は北東斜面と対応する南西斜面を持つ高さ1mの小さな尾根で、22個体の成熟したG. excelsaが見られました。G. excelsaは北東の斜面の高さ30cmの茂みの中に生えます。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~79cm、葉の幅は8~13cm、葉の長さは23~41cmでした。幼体は3本のみで、1本は2~3才、2本は3~4才と推定しました。この場所には、Crassula muscosa var. polpodaceaとCynanchum gerrardiiが見られました。
2つ目は南西の高さ25mの急な川岸で、27の成熟したG. excelsaが見られました。それほど過酷な環境ではないにも関わらず、G. excelsaは小型でした。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~45cm、葉の幅は7~8cm、葉の長さは20~30cmでした。この場所には背の高い茂みとまばらにある背の低い茂み、さらには3~4mの低木がある環境です。1才が3本、1~2才が3本、2~3才が4本、3~4才が3本と、幼体は豊富でした。
この場所には、Euphorbia pentagona、Euphorbia grandidens、Crassula lactea、Crassula muscosa var. polpodacea、Kalanchoe rotundifolia、Othonna dentata、Sansevieria hyacinthoides、Haemanthus albiflosが見られました。

著者は個体数と、1個体の1年に生産される種子の数から計算して、この地域内では1113万2275個の種子が生産されているとしました。この地域では、1年間に4個体の実生が生えているので、育つのは約30万種子に1つ程度であるとしています。
著者は湿った濾紙に100個のG. excelsaの種子を置いて、片隅を水に浸して発芽率を試験しました。すると、発芽しなかったのは2個だけでした。さらに、この2個はどうも置いた場所が悪く水分が足りていないようでした。つまり、発芽率はほぼ100%ではないかと推測しています。
種子が熟成する時期は湿潤期にあたり、発芽に適しています。しかし、人工的に種子を湿らせたら発芽するのに、野生では実生が見られないことを訝しんでいます。


以上が論文の簡単な要約となります。
大変申し訳ないのですが、私には英文の細かいニュアンスがいまいち捉えきれていないせいか、著者の疑問を今一つ理解出来かねる部分があります。私は野生環境では、実生が生えてもその後の乾燥などの要因でほとんどが枯死するだろうと割と安直に考えました。しかし、著者はそうではなくて、発芽自体がおこらないというような意味で言っているような気もします。その場合はどう考えたらよいのでしょうか? 
貯蔵種子という考え方もあります。すべての種子が一斉に発芽した場合、たまたま環境が悪化すると全滅してしまいます。しかし、発芽がばらつくことにより、良いタイミングで育つものも出て来ます。というように、実生よりも耐久性のある種子で環境の悪化をやり過ごす植物もあるのです。しかし、著者は発芽率を試験して、ほぼすべてが一斉に発芽することを確認しています。貯蔵種子ではないようにも思えますが、そう単純ではありません。種子の発芽を促す引き金は水だけではないからです。さらに、水が発芽の引き金である場合でも、水分をある一定以上吸わないと発芽しないなどの条件があるかもしれません。取り敢えずは、光や水分量などの条件を変えて、種子の発芽率が変わるかは見る必要があるでしょう。また、貯蔵種子の有効性を見るために、G. excelsaの自生地の土壌を採取して実験室で発芽するか、種子を様々な環境で保管しどのくらいの期間まで発芽能力があるかを調べることも重要です。
しかし、現状では情報が少な過ぎて良くわかりません。他にも情報がないか、もう少し調べてみるつもりです。


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五反田TOCで開催された今年の秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Gymnocalycium berchtiiというサボテンを購入しました。採取情報が含まれるフィールドナンバーつきで、'TOM6/481'とあります。どのようなサボテンなのでしょうか?

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Gymnocalycium berchtii TOM6/481

さて、まずは自生地の情報を調べてみましょう。
G. berchtiiはアルゼンチンの固有種で、San Luisに自生します。生息範囲が狭いにも関わらず、個体数は豊富だということです。また、海抜700~1200mに生えます。
G. berchtiiは平野部の草原で育ちます。気候は温暖で乾燥しており、夏に雨が降ります。岩盤の薄い土壌に育ちます。G. berchtiiは小さく、石の間に潜るように生えます。
生息地には、Gymnocalycium lukasikii、Gymnocalycium lukasikii subsp. emilii、Gymnocalycium ochoterenae、Gymnocalycium achirasense、Acanthocalycium spiniflorum、Echinopsis aurea、Opuntia sulphurea、Notocactus submammulosusが生えます。より低地では、Gymnocalycium borthii、Echinopsis leucantha、Pterocactus tuberosus、Austrocylindropuntia salmiana、Cereus aethiopsなども生えます。いくつかの生息地ではGymnocalycium sutterianumが生えます。
自生地ではヤギが放牧されていますが、ヤギが草を食べて光が差し込みやすくなり、G. berchtiiはとっては逆に恩恵を受けているということです。

育て方はどうでしょうか? 私は特に何も気にせずに育てていますが、酸性の堆肥を好むとされています。石灰岩が豊富だと生長が止まるらしいです。嫌石灰植物なのでしょうかね。生長は非常に遅いのですが、花は咲きやすいと言います。最大でも6cmくらいの小型種です。

ここからは、学名について調べてみましょう。学名は1997年に命名されたGymnocalycium berchtii Neuhuberです。
2005年に命名されたG. natalie Neuhuberと近縁とされることがありますが、G. natalieはG. berchtiiの異名と見なされています。同様に、1999年に命名されたGymnocalycium poeschlii Neuhuberや2010年に命名されたG. morroense 
Kulhánek、2015年に命名されたG. berchtii var. natalieは、いずれもG. berchtiiの異名とされています。
種小名の'berchtii'は、フィールドナンバーのLBでも知られるオランダのLudwig Berchtに由来するということです。


最後にフィールドナンバーについて見てみましょう。しかし、'TOM6/481'は調べても良くわかりません。'TOM'はTomáš Kulhánekの略ですが、後半のナンバーがさっぱりです。まあ、わからないことも普通にあります。しかし、一応ですが試しに'TOM06/481'で調べたところ、情報が少し出てきました。'1 - 2.8km S of Los Chanares, San Luis, Arg'とのことです。フィールドナンバーは 大事な情報なのに、何故か省略され勝ちなのは困ったものです。

小型で扁平な私好みのギムノカリキウムですが、意外と栽培にはうるさい部分もあるようです。とはいえ、これは水が硬水のヨーロッパでは気を付けなければならないかも知れませんが、基本的に水道水が軟水の日本では気にする必要はないでしょう。しかし、ギムノカリキウムにはこういう暗い色合いのものがいくつかありますが、非常に独特で面白く感じます。近縁種をコレクションしたくなりますね。


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千代田錦は日本国内でも昔から流通しているアロエの仲間です。しかし、最近は人気がないためかあまり見かけませんでした。ところが、何やらどこかのファームが大量に実生したみたいで、大型の千代田錦が園芸店に並んでいました。私も今年の3月に購入して育てています。千代田錦は葉が三方向に綺麗に並び、斑が非常に美しい多肉植物です。もっと人気が出ても良いような気がします。

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千代田錦 Gonialoe variegata

それはそうと、千代田錦は遺伝子解析の結果、2014年にアロエ属ではなくなりました。じゃあなんだと言われたらゴニアロエ属Gonialoeだということになります。やはりアロエに近縁ではありますが、アストロロバ属Astrolobaや新設されたツリスタ属Tulistaやアリスタロエ属Aristaloeとグループを形成します。

さて、そんな千代田錦ですが、何か情報はないかと論文を漁っていたところ、2003年に出されたPaul I. Forsterの『Variations on Aloe variegata, the partridge-breast Aloe』という論文を見つけました。表題の"partridge"とは「ヤマウズラ」のことですが、羽の模様からの連想でしょうか? タイガーアロエとも呼ばれます。

論文の内容に移りましょう。この論文が出された時点ではまだGonialoeではありませんから、論文の時の学名であるAloe variegataで解説します。
A. variegataは1685年にSimon van der Stelが南アフリカのNamaqualandに遠征した時に発見されました。Simonはオランダのケープ植民地の総督でした。どうやら、A. variegataは西洋で知られているアロエの最初の種類のひとつでした。この時の資料にA. variegataのイラストがありましたが、1932年まで出版されませんでした。

※補足説明 : van der Stelの調査の詳しい事情は、私も過去に調べたことがあります。Aloidendron dichotomumの最初の発見に関する記事でした。その記事では以下のような経緯を説明しています。
1685年から1686年にかけて、van der Stelはナマクア族の土地で銅資源を探索する遠征を行いました。遠征隊は1685年の10月にCopper(=銅)山脈に到着しました。遠征隊に同行した画家のHendrik Claudiusにより、遠征中の地理、地質学、動物、植物、先住民の絵が描かれました。その中には、A. dichotomumの絵も含まれていました。
また、遠征隊の日記が作成されましたが、van der StelもClaudiusも資料を出版しませんでした。これらの資料は1922年に、何故かアイルランドの首都ダブリンで発見されました。そして1932年にWaterhouseにより出版されました。

A. variegataを学術的に記載したの1753年のCarl von Linneですが、リンネ以前の最も初期の引用は1690年で、1689年には粗雑な図解がありました。A. variegataの園芸への導入は、1700年にアフリカ南部のコレクターから種子を受け取ったCasper Commelinであると考えられています。A. variegataは1753年にリンネにより記載されましたが、その種の基本となるタイプ標本※は指定されず、いくつかの引用からなっています。CommelinのA. variegataの図解や説明の中で、1706年の「Plantae Rariores et Exotica」の図をA. variegataのレクトタイプ※※として選択しました。この図は、2000年にGlen & hardyにより、イコノタイプ※※※として誤用され、2001年のNewtonはA. variegataはタイプ化されていないと誤って述べています。

※タイプ標本 : 新種を記載する際の、その生物を定義する標本(ホロタイプ)。
※※レクトタイプ : ホロタイプが失われたり、指定されていない場合に指定された標本。

※※※イコノタイプ : 新種指定の基準となった図のこと。

Aloe variegataの異名として、1804年に命名されたAloe punctata Haw.、1908年に命名されたAloe variegata var. haworthii A. Berger、1928年に命名されたAloe ausana Dinterが知られています。このA. ausanaは特に優れたタイプとされていたようで、葉がより直立して斑が大きいとされていたようです。しかし、このタイプが現在でも栽培されているかは定かではありません。

A. variegataはナミビア南部と南アフリカの西ケープ州、東ケープ州、自由州、北ケープ州に分布します。分布が広いため、様々な生息地で見かけることが出来ます。生育環境は主に粘土や花崗岩由来の土壌の低木地で見られます。雨は夏と冬に降り、気温は氷点下近くから夏には38℃を超えることもあります。

A. variegataは他のアロエとの交配種は少なく、1998年にForster & CummingによるAloe 'lysa'(A. variegata × A. bakeri)やAloe 'Versad'(A. variegata × 不明)が作出されています。また、オーストラリアのAtilla Kapitanyにより、生息地由来の種子より斑のない個体が得られ、Rudolf Schulzにより'Splash'の名前で販売されましたが、子株は斑入りに戻る可能性があります。
A. variegataはガステリアの交配親として利用されてきました。その多くは名前がなく、交配親もわかりません。主な品種は以下のものが知られています。
× Gasteria 'Orella'(A. variegata × G. batesiana)
× Gasteria 'Agate Chips'(A. variegata × G. bicolor var. bicolor)
× Gasteria mortolensis(A. variegata × G. acinacifolia)
× Gasteria pethamensis(A. variegata × G. carinata var. verrucosa)
× Gasteria pfrimmeri(A. variegata × G. sp.)
× Gasteria radlii(A. variegataあるいはA. serrulata × 不明)
× Gasteria rebutii(A. variegata × G. sp.)
× Gasteria sculptilis(A. variegata × G. ×cheilophylla)
× Gasteria smaragdina(A. variegata × G. ? candicans)


以上が論文の簡単な要約となります。
アロエよりガステリアとの交配が盛んなのは何故でしょうか。思うに、千代田錦はアロエ属よりもガステリア属の方が近縁なので、交配がスムーズなのかも知れませんね。
しかし、千代田錦の登場は18世紀から19世紀のヨーロッパの園芸界に、それなりのインパクトを与えたようです。1801年にSimsは「このアロエには非常に望ましい点が結合している」と述べ、1976年にはNobleが「おそらく英国で最も有名なアロエ」と見なし、非常に高い評価を受けています。久しぶりに千代田錦が流通したのですから、せっかくですから日本でも千代田錦の美しさを見直す時が来ているのではないでしょうか。


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12月に入りいよいよ寒くなってきましたが、私の多肉植物は室内管理のものが多いので、これから開花期を迎えるものもあります。逆に室内でも休眠に入る多肉植物もあり、最低気温や日照の長さなど、植物によって感じ方が異なるのでしょう。
しかし、最近は忙しくて中々多肉たちをゆっくり眺める時間がありません。通勤時間を利用して論文を読んで記事を書いていますが、お疲れ気味のため文章が荒れがちなのは自覚しています。じっくり休みたいところですが、中々休めません。なんと年始も仕事なのでせめて年末は休みを取りたいものです。
さて、いくつかのユーフォルビアに花芽が出たり、開花しています。しかし、ユーフォルビアの花はまあ目立ちませんね。

DSC_1992
紅彩閣 Euphorbia heptagona
エノプラの名前で売られ勝ちな紅彩閣ですが、いたってユーフォルビアらしい地味な花です。


DSC_1993
紅彩ロリカ
紅彩閣と炉裡火(E. loricata)との交配種。姿も面白いですが、花のつきかたも面白いですね。

DSC_1994
Euphorbia phillipsioides
ソマリアものですが暑さにも強くて丈夫です。花芽が出てきました。ユーフォルビアでは少し珍しい暗い色の花が咲きます。ユーフォルビアは花が小さいものが多いのですが、フィリプシオイデスは特に小さくだいたい1~2mmくらいです。

DSC_2005
Pachypodium eburneum
エブルネウムは夏に幹が凹んで生長が完全に止まってしまいました。根もぐらぐらしていて、水の吸収が出来ていないみたいでした。その後、遮光強めで様子見していましたが、葉の生長は止まったままですが、幹の凹みも元通りになり、根もしっかり張り直したようです。まったく、心配させてくれます。

DSC_2006
Euphorbia silenifolia
難物シレニフォリアが今年も無事に夏を越しました。しかし、右の枝だけが葉が伸びて、左枝からは葉が出ませんでした。しかし、室内に取り込んだところ、葉のなかった左枝から葉が出て来て、右枝からは葉が出ないで古い葉が枯れはじめました。不思議です。


DSC_2007
Euphorbia obesa
オベサにツボミが着いています。とはいえ、ほぼ一年中咲いていますから、あまり有り難みはありませんが…


DSC_2002
玉鱗宝 Euphorbia globosa
ユーフォルビアでは珍しい長いことに、花茎を伸ばして花を咲かせます。実は9月に入手してからじわじわずっと咲いています。そういうものなのでしょうか?


DSC_2003
良くみると花茎の先端に子株がついています。来年暖かくなってきたら挿し木します。

DSC_2004
面白い形の花も咲いています。

DSC_1998
Aloe haworthioides
花茎が伸びてきました。


DSC_1999
まだツボミですが、咲いても小さく目立ちませんけどね。

DSC_2008
Zamia furfuracea
フルフラケアは12月に入ってから室内に取り込みました。葉が邪魔なので縛ってあります。しかし、こいつとも長く付き合いとなりました。


DSC_2009
相変わらず花が咲いていますが、いつ枯れるのかも良くわかりません。

というわけで、12月の多肉事情でした。最近、急に寒くなりましたが、一部の多肉植物はまだ外栽培だったりします。まあでも、多肉植物の室内取り込みが遅れに遅れて、11月末にようやく終わっていたので取り敢えずは一安心です。
そう言えば、今年は正月三が日に初詣に行きたいのですが、どうやら無理そうです。もう何年も行けていないのですがね…



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ベンケイソウ科の最新の遺伝子解析結果を示した2020年の論文、Linnaeus's folly -phylogeny, evolution and classification of Sedum (Crassulaceae) and Crassulaceae subfamily Sempervivoides』を昨日に引き続き解説します。
DSC_1996
昨日の記事に載せた庭の野良セダムとは別種のセダム。こちらもいつの間にか生えてきた野良セダムです。一体どこからやってくるのでしょうか?

ベンケイソウ科は、クラッスラ亜科、カランコエ亜科、センペルビブム亜科に分けられます。
センペルビブム亜科は、まずTelephium cladeがあり、Orostachys, Hylotelephium, Meterostachys, Sinocrassula, Kungia, Phedimus, Rhodiola, Umbilicusが含まれます。次にSempervivumとJovibarbaはひとつのグループをなします。主にヨーロッパ原産です。昨日はAcre cladeについて詳細を解説しました。Acre cladeはほぼセダム属からなりますが、エケベリアやグラプトペタルムが含まれるという驚くべき結果でした。本日は②Leucosedum cladeと③Aeonium cladeの詳細を見てみましょう。


ベンケイソウ科の分子系統
                ┏①Acre clade
            ┏┫
            ┃┗②Leucosedum clade
            ┃
            ┣━③Aeonium clade
        ┏┫
        ┃┗━Sempervivum/Jovibarba
    ┏┫
    ┃┗━━Telephium clade
┏┫
┃┗━━━Kalanchoe亜科

┗━━━━Crassula亜科

②Leucosedum cladeの分子系統
    ┏━━━北米原産種
    ┃
┏┫        ┏Sedum mucizonia
┃┃        ┃※北米・ヨーロッパ原産種
┃┗━━╋Sedum wilczekianum
┫            ┃※北米原産種
┃            ┗Sedum dasyphyllum
┃                      var. glanduliferum
┃                ※北米・ヨーロッパ原産種
┗━━━━ユーラシア大陸原産種


Leucosedum cladeは、Acre cladeとともにセダム属を形成しています。
北米原産種は、Sedum spathulifolium, Sedum spathulifolium subsp. purdyi, Sedum oregonensis, Sedum oreganum, Sedum debile, Sedum pumilaが含まれます。
ユーラシア大陸原産種には、ヨーロッパと北アフリカ原産のSedum brevifolium, Sedum gypsicola, Sedum hirsutum subsp. hirsutum、ヨーロッパとアジアと北アフリカ原産のSedum dasyphyllum, Sedum rubens, Sedum cepaea、ヨーロッパとアジア原産のSedum pallidum, Sedum magellense、ヨーロッパ原産のSedum stefcoが含まれます。
Leucosedum clade最大の問題はユーラシア原産種にPrometheumが含まれていることです。問題部分の分子系統を見てみましょう。

            ┏Prometheum chrysanthum
        ┏┫※アジア原産種
        ┃┗Prometheum serpentinicum
    ┏┫    ※アジア原産種
    ┃┣━Prometheum sempervivoides
    ┃┃    ※アジア原産種
┏┫┗━Prometheum thymphaeum
┃┃        ※ヨーロッパ原産種
┫┗━━Sedum hispanicum
┃            ※ヨーロッパ・アジア原産種
┗━━━Sedum microcarpum
                ※ヨーロッパ・アジア原産種

ご覧の通り、Prometheumは完全にセダムの一部です。もし、エケベリア属やプロメテウム属を温存しようとすると、Acre cladeやLeucosedum cladeは非常に細分化されてしまい、収拾がつかなくなるでしょう。要するにPrometheumはセダムに吸収されるということです。

③Aeonium clade
Aeonium cladeはまとまりのあるグループです。しかし、驚くべきことにここにもセダムが紛れ込んでしまっているのです。分子系統を見てみましょう。
Monanthesはまとまりがまったくないので、Aeoniumに吸収されるか、一部がAichrysonに吸収され種類が減ることになるでしょう。しかし、最大の問題はセダムが混入していることです。


                            ┏Aeonium nobile
                        ┏┫
                        ┃┗Aeonium  decorum
                    ┏┫
                    ┃┗━Aeonium aureum
                ┏┫
                ┃┃┏━Monanthes anagensis
                ┃┗┫
                ┃    ┗━Monanthes polyphylla 
            ┏┫              
subsp. amydros
            ┃┃    ┏━Aichryson palmense
            ┃┃┏┫
            ┃┃┃┗━Aichryson punctatum
        ┏┫┗┫
        ┃┃    ┗━━Monanthes icterica
        ┃┃
        ┃┃        ┏━Sedum jaccardianum
        ┃┗━━┫
    ┏┫            ┗━Sedum surculosum 
    ┃┃                               
var. luteum
    ┃┃            ┏━Sedum pubescens
┏┫┗━━━┫
┃┃                ┗━Sedum caeruleum
┃┃
┫┗━━━━━━Sedum modestum

┗━━━━━━━Hypagophytum
                                       abyssinicum


分類学の属は、まとまりがあることが重要です。Aeonium cladeのセダムを温存するならばエオニウムはセダムに吸収されてしまいますし、エオニウムを温存するならばAeonium clade内のセダムはセダムを名乗ることは出来なくなります。しかし、センペルビブム亜科は、①Acre clade+Leucosedum clade、②Aeonium clade、③Sempervivum+Jovibarba、④Telephium cladeの4つに分かれているように見えます。①Acre clade+Leucosedum cladeがセダム属として、②Aeonium cladeはセダム属ではないとする方が自然に感じます。その場合、Aeonium cladeに含まれるセダムは別の属に移動するか新しい属を新設する必要があります。

さて、以上で論文の簡単な解説は終了です。著者は論文に挑戦的な「リンネの愚かさ」というタイトルをつけました。セダム属は現在の生物の分類体系と学名のシステムを造り上げたCarl  von Linneが1753年に命名しました。しかし、当時のリンネが記載したセダムは現在の分類のあちこちの種類を含んだものでした。これを持って「リンネの愚かさ」であるとしているのです。
しかし、セダムがまとまりのないグループであり、エケベリアなどいくつもの属がセダムに吸収されてしまうかもしれない可能性が出て参りました。これは大変な驚きです。とはいえ、調べられたエケベリアは1種類に過ぎません。少し気になったので調べてみたところ、エケベリアについて調べた論文を見つけましたから、そのうちご紹介したいと思います。


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ベンケイソウ科の植物は手軽な多肉植物として、昔から栽培されてきました。ベンケイソウと言われてもぴんとこないかもしれませんが、ベンケイソウ科にはここ数年大人気のエケベリア属Echeveriaをはじめ、クラッスラ属Crassula、センペルビブム属Sempervivum、セダム属Sedum、カランコエ属Kalanchoe、エオニウム属Aeonium、オロスタキス属Orostachys、アドロミスクス属Adromischus、コチレドン属Cotyledonなどが含まれます。
この内、セダムはベンケイソウ科最大のグループで、約470種が知られています。セダムは日本ではマンネングサなどと呼ばれ昔から栽培されてきましたが、丈夫で耐寒性が高いので屋外で野生化しています。私の自宅にも得体の知れないセダムがいつの間にか生えてきました。本日はそんなセダムを含むベンケイソウ科植物の現在の分類に一石を投じる内容の論文をご紹介します。

論文の経緯として、以下に示す流れがあります。近年の遺伝子解析技術の進展により、多肉植物の分類にも遺伝子解析が応用されるようになりました。最近では多肉植物を遺伝子解析した沢山の論文が出されています。それはベンケイソウ科植物も同様で、沢山の種類があるセダムもデータが蓄積されてきました。

DSC_1997
庭に蔓延る謎のセダム

ご紹介するのは、Thibaud F. E. Messerschmid, Johannes T. Klein, Gudrun Kadereit & Joachim W. Kadereitの2020年の論文、『Linnaeus's folly -phylogeny, evolution and classification of Sedum (Crassulaceae) and Crassulaceae subfamily Sempervivoides』です。論文のタイトルは「リンネの愚かさ」というとんでもないものですが、当たり前ですが内容と関係があります。

論文の内容に入る前に一般的なベンケイソウ科の分類を示します。3つの亜科に分かれており、ほとんどはセンペルビブム亜科に含まれます。
①クラッスラ亜科
    Classula, Tillaea
②カランコエ亜科
    Adromischus, Cotyledon, Kalanchoe, Tylecodon
③センペルビブム亜科
    Aeonium, Sempervivum, Orostachys,
    Sedum, Dudleya, Echeveria, Graptopetalum
    など28属


ここからは論文の内容に移ります。まずは遺伝子解析の結果を示します。クラッスラ亜科とカランコエ亜科は系統の根本にあり、センペルビブム亜科とは分離できています。
センペルビブム亜科は、まずTelephium cladeがあり、Orostachys, Hylotelephium, Meterostachys, Sinocrassula, Kungia, Phedimus, Rhodiola, Umbilicusが含まれます。アジア原産のものが多いようです。ただし、OrostachysとHylotelephium、Meterostachysは明らかに同属です。将来的に統合される可能性が高いでしょう。
次にSempervivumとJovibarbaはひとつのグループをなします。主にヨーロッパ原産です。
Aeonium cladeとLeucosedum clade、Acre cladeについては主題に関わることなので、詳細を見ていきましょう。
ベンケイソウ科の分子系統
                ┏①Acre clade
            ┏┫
            ┃┗②Leucosedum clade
            ┃
            ┣━③Aeonium clade
        ┏┫
        ┃┗━Sempervivum/Jovibarba
    ┏┫
    ┃┗━━Telephium clade
┏┫
┃┗━━━Kalanchoe亜科

┗━━━━Crassula亜科

まずはAcre cladeから見てみましょう。
Acre cladeは世界中に分布します。原産地ごとにグループを作る傾向がありますが、アジア原産種でも2系統あったりします。基本的にAcre cladeはLeucosedumとともに、セダム属のグループです。

Acre cladeの分子系統
            ┏━━北米原産種
        ┏┫
        ┃┗━━Macaronesia原産種
    ┏┫
    ┃┃        ┏Sedum farinosum
    ┃┗━━┫    ※Macaronesia原産
┏┫            ┗Sedum anglicum
┃┃                    ※ヨーロッパ原産
┃┗━━━━ヨーロッパ原産種

┣━━━━━アジア原産種①

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━アフリカ原産種

┣━━━━━Sedum multiceps
┃                     ※北米原産
┣━━━━━アジア原産種②

┗━━━━━Sedum acre
     ※ヨーロッパ、アジア、北米原産


アメリカ原産種37種類、Macaronesia原産種2種を調べていますが、Macaronesiaとはヨーロッパや北アフリカに近い大西洋の島々のことです。Macaronesia原産種として、Sedum lancerottense, Sedum nudumが調べられています。
ここはSedumとVilladiaが入れ子状となっています。Sedum①にはSedum plicatum, Sedum reniforme, Sedum andinum, Sedum jurgensenii, Sedum goldmanii, Villadia albifloraが含まれ、Villadia①にはVilladia imbricata, Villadia recurva, Villadia nelsonii, Villadia minutifloraが含まれます。Sedum①とVilladia①は姉妹群で近縁です。しかし、V. albifloraは完全にSedum①に含まれてしまっています。
Villadia②はVilladia①と近縁ではありません。Villadia②はVilladia aristata, Villadia misera, Villadia pringleiが含まれます。つまり、Villadiaはまったくまとまりがない属ですから、おそらくはSedumに吸収されてなくなる可能性が高い属です。
Sedum②はSedum hemsleyanum, Sedum oxypetalum, Sedum guatemalense, Sedum greggiiが含まれます。
EcheveriaとGraptopetalumは近縁ですが、ともにSedumの中に埋め込まれてしまっています。LeucosedumやThompsonellaとともに、Sedumに吸収されてしまう可能性が大です。

Acre clade, 北米原産種の分子系統
                ┏━Sedum①
            ┏┫
            ┃┗━Villadia①
            ┃
            ┃┏━Sedum chloropetalum
            ┣┫
        ┏┫┗━Sedum quevae
        ┃┃
        ┃┣━━Sedum bourgaei
        ┃┃
        ┃┗━━Sedum retusum
    ┏┫
    ┃┣━━━Villadia②
    ┃┃
    ┃┃        ┏Sedum trichromum
    ┃┣━━┫
    ┃┃        ┗Sedum alamosanum
    ┃┃
┏┫┗━━━Sedum alexanderi
┃┃
┃┃            ┏Sedum compactum
┃┣━━━┫
┃┃            ┗Sedum obcordatum
┃┃
┃┗━━━━Sedum oxacanum

┣━━━━━Sedum②

┣━━━━━Sedum palmeri

┣━━━━━Lenophyllum acutifolium

┣━━━━━Sedum versadense

┃            ┏━Echeveria fulgens
┃        ┏┫
┃        ┃┗━Graptopetalum bellum
┃        ┃
┃        ┣━━Sedum clavatum
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━Sedum commixtum
┃    ┃┃
┣━┫┗━━Thompsonella minutiflora
┃    ┃
┃    ┗━━━Sedum corynephyllum

┣━━━━━Sedum fuscum

┗━━━━━Macaronesia原産種

その他の地域で調べられた種は以下の通りです。
ヨーロッパ原産種は、Sedum sexangulare, Sedum alpestre, Sedum grisebachii var. horakiiが含まれます。
アジア原産種①は、Sedum erythrospermum, Sedum morrisonense, Sedum nokoense, Sedum formosanum, Sedum alfredii, Sedum emarginatum, Sedum polytrichoides, Sedum makinoi, Sedum baileyi, Sedum bulbiferum, Sedum sarmentosum, Sedum lineare, Sedum triactina, Sedum trullipetalum, Sedum obtrullatum, Sedum oreades, Sedum multicauleが含まれます。
アジア原産種②は、Sedum uniflorum subsp. oryzifolium, Sedum uniflorum subsp. Japonicum, Sedum zentaro-tashiroi, Sedum tosaense, Sedum mexicanum(アメリカにも分布)が含まれます。
アフリカ原産種は、Sedum ruwenzoriense, Sedum mdyeri-johannisが含まれます。
ユーラシア大陸原産種は、Sedum tuberiferum, Sedum borissovae, Sedum apoleiponはヨーロッパ原産、Sedum ursiはアジア原産、Sedum urvillei, Sedum annuum, Sedum laconicumはヨーロッパとアジア原産です。

取り敢えず、Acre cladeについては以上となります。しかし、驚くべきことに、エケベリアがセダムに吸収される可能性が指摘されています。この2020年の論文の意見が採用された場合、センペルビブム亜科は大幅な改変を受けることになるでしょう。おそらくは、Acre cladeはすべてセダム属とされてしまうのではないでしょうか。なぜなら、学名は先に命名された名前を優先とする「先取権の原理」があるからです。
1828年に命名されたEcheveria D.C.より、1753年に命名されたSedum L.が優先されます。将来的にエケベリアという名前は学術的に消滅し、園芸でしか用いられない俗名に零落してしまうのでしょうか?
記事が
長くなってしまいましたので、明日に続きます。


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先日、五反田TOCで開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Euphorbia handiensisという園芸店では見かけないユーフォルビアを入手しました。
DSC_1983
Euphorbia handiensis

早速、何か良い論文はないか調べてみました。
最近では多肉植物の論文をよく読んでいるのですが、残念ながら多肉ユーフォルビアについてはほとんどありません。やはり、多肉ユーフォルビアは南アフリカ原産のものが多いです。南アフリカの多肉植物を研究する学者は、アロエやガステリアについては研究していますが、不思議なことにユーフォルビアの論文はあまり書きません。そんな傾向がありましたから、あまり期待せずに調べたところ、論文があっさりと見つかりました。カナリア諸島がスペイン領でヨーロッパの学者がアクセスしやすいからでしょうか?

さて、まずは研究者が書いた植物の簡単な紹介といった体の記事を見てみましょう。2004年のManuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoの『Euphorbia handiensis Burchard』です。
E. handiensisは多肉質な低木で、トゲのあるサボテン状の外観で、高さ1mほどになります。トゲは2~4cmで、8~14本の稜があります。花は黄緑色で赤みがかります。カナリア諸島の原産です。
E. handiensisはFuerteventura島の固有種ですが、南部のJandia半島に追いやられています。
個体群は構成も良く、比較的豊富に幼苗があります。伝統的に危機的とされてきましたが、ここ数年は安定して増加しています。しかし、部分的には家畜による被害と、違法採取が行われています。

次に2022年のMarco Critiniの論文、『Euphorbia handiensis in Barranco de Gran Valle : an endangered Fuerteventura endemic』をご紹介します。
E. handiensisは1912年にOscar Burchardにより記載されました。当時、E. handiensisは非常に一般的でしたが、植物の違法採取と海岸付近の急速な都市化で減少しました。現在、約9の地域に分布します。2004年に
Manuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoは回復していると報告(※1本目の解説の記事)がありましたが、少なくとも1つの地域では異なるようです。
著者は2021年8月にBarranco de Gran Valleを訪れました。標高100~150mの谷の下部で沢山のE. handiensisを観察しました。しかし、平行して走る2本の道路沿いには、E. handiensisがありませんでした。道路脇のE. handiensisは悪質な植物泥棒が、車で来て簡単に盗むことが出来ます。また、外来種のリスが種子を食べている可能性と、放牧されているヤギが環境を荒らしている可能性もあります。また、種子に寄生する昆虫の存在により、再生が行われないことも考えられます。
Barranco de Gran ValleのE. handiensisは先行きが不透明です。自然公園内にも関わらず、違法採取とヤギの過放牧が行われています。自然公園内のヤギの放牧の禁止と、違法採取を減らすためにトラックの侵入禁止などの措置を講じる必要があります。

以上がE. handiensisについての情報です。
2004年の報告の楽観的な調子と比べて、それから18年後の報告はやや悲観的です。違法採取は日本でも山野草や高山植物でも大変な問題となっており、世界中で貴重植物を悩ませる難題です。家畜の被害もやはり世界中で砂漠化や貴重な植物の食害がおきていて大問題となっています。日本でも小笠原諸島などで野生化したヤギが小笠原の固有の植物を食害し、それらの植物を食べる動物が激減しています。また、植物がなくなり土壌がむき出しになり、土が海に流出してサンゴ礁が枯死する被害も出ています。これらは中々うまい解決策がないため、基本的に後手後手になりがちです。
いずれにせよ、E. handiensisは世界でもカナリア諸島の1つの島の一部地域でしか見られない大変貴重なユーフォルビアです。E. handiensisが野生で群生する素晴らしい光景は世界で1つしかないのですから、失われてしまわないことを願っております。


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最近、Aloe aristataという名前の多肉植物を入手しました。綾錦の名前でも知られています。近年、アロエ属からAristaloe属になりました。
グランカクタスの佐藤さんの図鑑では2つのタイプの写真が掲載され、交配種の可能性が指摘されていました。ひとつはトゲがないタイプで、もうひとつは
ハウォルチアの禾を思わせるトゲがあるタイプでした。私が過去に入手したのは、トゲがないタイプで非常に葉が硬いものでした。最新の遺伝子解析による分類では、AristaloeはAstrolobaやTulista、千代田錦(Gonialoe variegata=Aloe variegata)に近縁ですから、葉は硬いということは当たり前のことだと思っていました。逆にトゲがあるタイプは柔らかそうですから、ハウォルチア系との交配種かもしれないなんて思ったりもしました。
DSC_1921
綾錦?
トゲがなく葉が硬いタイプ。


しかし、自生地の写真を幾つか見てみると、どの写真を見てもややハウォルチアに似た姿で、トゲがあるタイプの方でした。思い込みはいけませんね。ちゃんと調べるべきでした。そんな折、先日開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールでAloe aristataが販売されていましたので購入しました。
DSC_1990
綾錦 
Aloe aristata=Aristaloe aristata

葉はしなやかでトゲがあります。特徴的に綾錦で間違いないでしょう。では、先に入手していた葉が硬いタイプのアロエは何者なのでしょうか? 綾錦と無関係とも思えませんが、何者かとの交配種である可能性が高いように思われます。そこで、まずはAristaloe aristataを調べてみることにしました。取り敢えずは、論文を探して見ました。出てきたのは、Colin C. Walkerの2021年の論文、『Aristaloe aristata : a unique, monotypic species』です。内容の簡単に要約します。

植物学者というよりはプラントハンターであったイギリスのJames Bowieにより初めて採取された植物は、1825年にイギリスのAdrian Hardy HaworthによりAloe aristata Haw.と命名されました。他にも、1829年にAloe longiaristata  Schult. & Schult.f.、1934年にAloe ellenbergii Guillauminと命名されましたが、これらは異名となっています。
2013年にはAstrolobaやGonialoe variegata(Aloe variegata, 千代田錦)とともにTulista属とされ、Tulista aristata(Haw.) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在では認められておりません。
2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningと命名され、これが現在の綾錦の学名です。Aristata属はA. aristata1種類のみを含む属です。


 A. aristataは南アフリカ原産とレソトで、西ケープ州の東、南北ケープ、東ケープ、オレンジ自由州、KwaZulu-Natal南西部に至るまで、アフリカ南部に広く分布します。「暑く乾燥したカルー地域の砂質土壌、川沿いの森林の腐食質に富んだ日陰、レソトの高原にある草原など様々(Glen & Hardy, 2000)」であり、「標高は200mから2200m」かつ「アフリカ南部の最も寒い幾つかの地域にも発生(van Wyk & Smith, 2014)」ということですから、かなり環境の変化に対応できる様子が伺えます。
A. aristataの耐寒性が高いことは明らかですから、イングランド南部では屋外栽培も可能との報告があるそうです。著者はスコットランド中部で屋外栽培を試みましたが失敗した模様です。どうも、冬の雨がよろしくないみたいですね。

A. aristataは交配親としても使用されてきました。実は意外にもガステリア属との交配種があり、2013年にはG.D.Rowleyにより×Gastulistaとして19種類がリスト化されています。これは現在ではAristaloe × Gasteriaと見なされています。

簡単な論文の要約は以上です。
綾錦は非常に耐寒性があるとのことですが、私の交配系綾錦は氷点下でも耐えることが出来ます。ちゃんと親の性質を受け継いでいるのですね。そう言えば、私の所有する綾錦のようなものは論文にあるようにガステリア交配種なのでしょうか? 葉が硬くなる特徴はまさにガステリアの血を受け継いでいるからかもしれません。しかし、論文からヒントは貰いました。
ヒントを元にデータベースを調べ直しました。おそらくは、私の交配系綾錦は1931年に命名された× Gasteraloe Guillauminでしょう。キュー王立植物園のデータベースの× Gasteraloeは、なんと私の所有している綾錦系交配種とそっくりな画像が貼られていました。ただし、この× GasteraloeはGasteria × Aloe sensu lato(広義)であり、Aristaloeを分離出来ていない広義のアロエ属を示しています。論文で述べられていた× Gastulista G.D.RowleyはGasteria × Tulista sensu lato(広義)ですが、G.D. Rowleyの言うところのTulistaはAristaloeやGonialoeも含んだ広義のTulistaでしょう。確かに広義のTulistaにはAristaloeも含まれますが、G.D.Rowleyの主張する広義のTulista自体が認められておらず、本来は
Gasteria × Tulista sensu stricto(狭義)にのみ使用されるべきです。ですから、Gasteria × Aristaloeについての適切な学名が必要でしょう。


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