ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

2022年09月

本日は2013年に発表された論文『Gymnocalycium mostii aggregate : Taxonomy in the northern part of its distribution area including newly described taxa』をご紹介します。著者はチェコの植物学者であるRadomír Řepka & Peter Kouteckyです。
論文の趣旨は、Gymnocalycium prochazkianum、Gymnocalycium simile、Gymnocalycium simplexの3種について、その形態や分布、ゲノムサイズの調査により、3種の関係性を考察しています。

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Gymnocalycium prochazkianum

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Gymnocalycium prochazkianum
                                    subsp. simile
            (=G. simile)


ここで、タイトルにあります"Gymnocalycium mostii aggregate"、つまりは「ギムノカリキウム・モスティイ集群」とは何かという話をしましょう。G. mostiiとはいわゆる「紅蛇丸」のことですが、現在G. mostiiには亜種や変種が認められておりません。つまりは、黒豹丸G. mostii var. kurtzianumも、ただのG. mostiiと同一視されています。さらには、G. bicolorやG. prochazkianum、G. simile(G. prochazkianum subsp. simile)、G. simplex(G. prochazkianum subsp. simplex)も、現在ではG. mostiiに集約されてしまっているのです。気を付けなければならないのは、紅蛇丸と言った場合はG. mostiiのことですが、G. mostiiと言った場合は紅蛇丸を示すとは限らないことです。単にG. mostiiと言った場合には、G. bicolorやG. prochazkianumなども含んだ学名だからです。ただ、その場合のG. mostiiはかなりの変異幅を持っていますから、「集群」という表現となっているのでしょう。しかし、研究者は論文でもG. prochazkianumやG. bicolorの学名を使用しています。やはり、不便なのでしょうか? 必ずしもG. mostiiとする統一見解があるわけではないのかもしれません。まあ、学名なんてそのうち変わるかもしれませんけどね。
※集群 : 亜属内の何らかの集合。

さて、内容に入る前にギムノカリキウム属について、簡単に解説します。2011年の論文でPablo H. Demaioはギムノカリキウム属を7つの亜属に分けました。その1つであるScabrosemineum亜属は共通する種子の特徴があるそうです。この特徴はG. mostiiグループにも見られますが、種子の色や葯やフィラメントの色の違いにより、G. mostiiグループは8つに分けられるとされます。
G. mostii sensu stricto
        ※狭義のG. mostii
G. mostii f. kurtzianum
G. mostii var. miradorense
G. mostii subsp. valnicekianus
G. bicolor nom.inval.
        ※nom.inval.=規約に従わない無効名
    =G. mostii subsp. bicolor
G. genseri nom.nud.
        ※nom.nud.=裸名
G. prochazkianum
    =G. mostii subsp. prochazkianum
G. bicolor var. simplex nom.prov.
       ※nom.prov.=正名がつくまで有効な学名

G. mostiiグループはアルゼンチンのコルドバ州とサンティアゴ・デル・エステロ州に分布します。
G. bicolor var. simplexは"Northern bicolor"とも呼ばれ、G. bicolor(s.str.)やG. prochazkianumとは形態が異なります。しかし、種子リストではG. prochazkianumとG. bicolor var. simplexの中間的な移行形態も見られるそうです。

さて、論文では形態的な比較もしており、例えば全体のサイズはprochazkianum<simile ≦simplex、稜の数はp
rochazkianum<simile <simplex、トゲの数はprochazkianum<simile<simplex、トゲの長さはprochazkianum<simile<simplex、果実のサイズはprochazkianum>simile >simplexなど、G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの中間的な特徴を示し、G. simileの交雑により誕生した可能性を示唆しています。ただし、種内の特徴の変動幅を見た場合、意外にも交雑を疑われるG. simileよりG. prochazkianumの方が変動幅が高いことがわかりました。
次にG. prochazkianumは太く長い貯蔵根があり、G. simileも似たような根を持つことがありますが、G. simplexはわずかに肥厚することはありますが根は分岐します。

自生地ではG. simplexは平らな球形から半球形で土壌に1/2ほど埋まりますが、古い個体は完全に地上に露出します。G. prochazkianumは古い個体でも最大3/4は土壌に埋まります。G. simileは自生地の集団により、土壌に埋まったり露出したりします。
また、種子の形状ではG. simileとG. simplexはほぼ同じなんだそうです。


ここで、ゲノムサイズの解析について解説します。どうやらフローサイトメトリーにより解析を行ったようです。フローサイトメトリーはフローサイトメーター(FACS)という機器を用います。これは細胞にレーザーを当てて、その特徴を分析する機器です。FACSが優れているのは、数千~数万という細胞を短時間で解析可能であることです。
このFACSを用いた解析では、G. prochazkianum、G. simile、G. simplexは、すべて二倍体であることがわかりました。Scabrosemineum亜属は基本的に二倍体ですが、四倍体も知られていたため確認したみたいです。これは異なる倍数体同士では交配しない可能性があるため、同じ二倍体であることが交雑可能性の否定的要素の除外として重要だったみたいですね。


分布域を比較すると、G. prochazkianum、G. simile、G. simplexのそれぞれ離れており、連続していません。3種の中ではG. prochazkianumが最南端に分布します。
①G. prochazkianumはアカシアが優勢である低木地帯に生えます。低木により遮光される環境に育つことがあります。土壌は瓦礫地で花崗岩と花崗岩の崩壊物からなり、非常に低栄養で強く乾燥します。G. prochazkianumはこの極端な環境によく適応しています。太く長い貯蔵根は環境への適応により発達したのかもしれませんね。
②G. simplexはG. prochazkianumよりも北に分布し、比較的大きな分布域を持ちます。花崗岩の崩壊による砂質の土壌に育ちます。G. simplexはあまり埋まらず、直射日光にさらされます。G. simplexはG. prochazkianumと同様に栄養素の乏しい土壌です。
③G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの生息域の間に分布し、生息域は繋がっておりません。石の多い斜面の低木地帯に生えるためG. prochazkianumに地質学的条件は似ています。岩石は花崗岩質で、花崗岩が崩壊して出来た砂質の土壌でも育ち、生態学的にはG. simplexに似ています。


ここまでの内容の結論としましては、G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの自然交雑種である可能性が高いということです。
考えたこととして、これはただの雑種ではないかもし知れないということです。通常は雑種を防ぐ生態的あるいは発生学的な防壁があり、近縁種が混ざって生えていても、交雑は起きません。もし雑種が出来ても不捻と言って、雑種には発芽可能な種子が出来ないことが多いようです。しかし、ギムノカリキウム属は簡単に雑種が出来てしまい、雑種でも種子を作り増えることが出来ます。どうも自然交雑がギムノカリキウム属の進化に深く関わっているように思えます。交雑しても地理学的な隔離があれば、独立種としての道筋を辿るのではないでしょうか。そもそも、ギムノカリキウム属は短期間に進化したらしく、遺伝子解析による分離がいまいちなグループです(Demaio, 2011)。自然交雑が進化の起爆剤となっているのかもしれません。


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ダシリリオンはそもそもあまり流通していませんが、最近では実生苗がまれに販売されることもあります。そんな中、もっとも流通しているDasylirion longissimumは、じつはDasylirion quadrangulatumであるという記事を最近書きました。そもそもが海外での混乱がそのまま日本に波及した形なのですが、国内でそのことが話題に挙がることはないみたいですので、気にはなっています。

私は先ずDasylirion longissimumという名札が付いたDasylirion quadrangulatumを入手した後、正しい名札が付いたD. quadrangulatumを入手したので、結局はD. quadrangulatumを2株入手しただけでした。残念。
しかし、基本的にD. longissimum(本当はD. quadrangulatum)以外のダシリリオンはまあ見ないわけです。五反田TOCで開催されたサボテン・多肉植物のビッグバザールで、明らかD. quadrangulatumではないダシリリオンを見つけたので購入しました。それが、ダシリリオン・ベルランディエリです。


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葉は青白くトゲがあります。葉の断面が平たいことに注意。

ベルランディエリは葉の長さは120cmになり、葉はワックス状で青くトゲは不規則につきます。花茎は3.5メートルになるそうです。マイナス14℃に耐えるそうですから、ある程度のサイズになれば完全戸外栽培も可能でしょう。ベルランディエリは非常に美しい葉色を持ちますから、これからの生長が楽しみです。

ベルランディエリの学名は1879年に命名されたDasylirion berlandieri S.Watsonです。S.Watsonはアメリカの植物学者であるSereno Watsonです。種小名はフランスの植物学者であるJean-Louis Berlandierに対する献名です。Berlandierは1943年にメキシコのeast of MonterreyではじめてDasylirion berlandieriを発見しました。

ダシリリオンについては以下の記事もご参考までに。

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以前、笹蟹丸と紅キリンの関係について記事にしました。

この記事では、笹蟹丸Euphorbia pulvinataと紅キリンEuphorbia aggregataは同種であり、E. aggregataという学名はE. pulvinataの異名であるというものでした。
これは、海外のサイトを色々探った時に出てきた情報です。園芸サイトだけではなく、学術的な植物のデータを収集しているような幾つかのサイトでも、やはり2種は同種であるとありました。最終的には、『GBIF』(Global Biodiversity Information Facility)という学術的な情報に基いて、学名を収集しているサイトの情報を確認しました。
しかし、『World Checklist of Vascular Plants』というイギリス王立植物園が主宰するサイトの情報においては、E. pulvinataとE. aggregataはそれぞれ別種とされています。このサイトの情報は、正式な学名と異名について、出されている学術論文を参考にして検討する学術雑誌を出しており、新しい情報があれば改定されたりします。GBIFもWorld Checklist of Vascular Plantsを根拠としていますから、GBIFは情報が古いのかもしれません。

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笹蟹丸
Euphorbia pulvinata Marloth, 1910

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紅キリン
Euphorbia aggregata A.Berger, 1907 publ. 1906


ここで、疑問が湧きます。では、E. pulvinataとE. aggregataが同種であるという情報はどこから来たのでしょうか? 調べたところ、2012年に南アフリカの植物学者であるPeter Vincent Bruynsによる『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』という論文から来ているようです。驚いたことに、実は既に読んだことがある論文でした。World Checklist of Vascular Plantsでもこの論文を根拠としているユーフォルビアもありますから、内容をチェックしたことがあったのです。この論文の内容は、南アフリカに分布するユーフォルビアの種類と学名の妥当性を検討するというものです。問題のE. aggregataは"除外された名前"とされています。一体どういう意味なのでしょうか?
この論文においてE. aggregataは、E. pulvinataやE. feroxと同種ではないかを確認する必要があるとあります。あるいは、E. aggregataはカルー東部の広い範囲に分布し、E. pulvinataやE. feroxとの中間体である懸念を指摘しています。果たしてこの擬義が如何にして解消されたのかは私にはわかりませんが、とにかくこの論文のE. aggregataに関する記述は認められていません。その根拠を探して論文を探してみましたが、残念ながら見つけられませんでした。様々なサイトではE. aggregataについて異名の疑いを示してはいるものの、現在ではE. aggregataを承認する形となっています。

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勇猛閣
Euphorbia ferox Marloth, 1913

それでも気になるのは、やはりその根拠です。Bruynsの論文の当該部分を否定するならば、当然ながら議論があるはずです。しかし、よくよく考えて見ると、Bruynsの"懸念"が何らかの根拠に基づいているのか、その考え方の妥当性自体に誤りがないのかはわかりません。そもそもこの懸念が議論に値するものであるのかどうかすらわかりません。単純に妥当性なしとされただけのことかもしれません。とはいえ、それも確証はないため気になっている部分ですから、今後も論文の調査は行っていくつもりです。



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本日はヴロキイという名前の南アフリカ原産のガステリアをご紹介します。
ヴロキイは東ケープ州のHankey郊外のKouga地方に自生します。自然保護区の岩肌に生えるために保護の必要はないそうです。標高1000-1500メートルの石英質砂岩地の、ミネラル分が少ない砂質の腐食土壌がたまった岩の割れ目や隙間に生えます。pH4.1という非常に強い酸性条件で育つようです。生息地にはSenecio crassulifolius、Crassula atropurpurea、Crassula ericoides subsp. tortuosa、Adromischus maculatusなどが生えるそうです。

DSC_1793
Gasteria vlokii

ヴロキイは1984年に南アフリカの植物学者であるJan Vlokが、Waboomsbergの1946メートルの岩肌で発見しました。高地の湿ったフィンボス(夏に乾燥する冬の降雨地域)ではじめて発見されたガステリアということで、驚きをもって受け止められました。
ヴロキイは南アフリカの植物学者であるErnst van Jaarsveldが1987年にGasteria vlokii van Jaarsv.と命名しました。vlokiiは発見者であるJan Vlokに対する献名です。

ガステリア属は南アフリカ原産ですが、種類ごとの分布が近いものは遺伝的にも近縁であることがわかりました。以下に示すのはガステリアの遺伝子解析の結果です。ヴロキイは南アフリカ南西部のガステリアと近縁です。


┏━━━━━━━━━━G. pillansii

┃    ┏━━━━━━━━G. vlokii
┃    ┃
┃┏┫    ┏━━━━━━G. koenii
┃┃┃┏┫
┫┃┃┃┗━━━━━━G. brachyphylla
┃┃┗┫
┃┃    ┃    ┏━━━━━G. thunbergii
┃┃    ┃┏┫
┃┃    ┃┃┗━━━━━G. carinata 
┃┃    ┗┫                      var. glabra
┗┫        ┃┏━━━━━G. retusa
    ┃        ┗┫
    ┃            ┃┏━━━━G. carinata
    ┃            ┗┫
    ┃                ┃┏━━━G. langebergensis
    ┃                ┗┫
    ┃                    ┗━━━G. disticha
    ┃
    ┃    ┏━━━━━━━G. bicolor                          
    ┃┏┫                                         
    ┃┃┗━━━━━━━G. rawlinsonii                 
    ┃┃                                             
    ┗┫┏━━━━━━━G. nitida 
        ┃┃
        ┃┃         ┏━━━━G. excelsa
        ┃┃     ┏┫
        ┃┃     ┃┗━━━━G. pulchra
        ┃┃     ┃
        ┃┃┏ ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
        ┃┃┃ ┃ ┃ 
        ┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━G. polita
        ┗┫┃ ┗ ┫┏┫
            ┃┃      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
            ┃┃      ┃┃┗┫
            ┃┃      ┗┫    ┗━G. barbae
            ┃┃          ┃
            ┃┃          ┃┏━━G. armstrongii
            ┗┫          ┗┫
                ┃              ┃┏━G. glauca
                ┃              ┗┫
                ┃                  ┗━G. glomerata
                ┃
                ┃    ┏━━━━G. croucheri
                ┃┏┫
                ┃┃┗━━━━G. loedolffiae
                ┗┫
                    ┃┏━━━━G. tukhelensis
                    ┗┫
                        ┃┏━━━G. batesiana
                        ┗┫            var. batesiana
                            ┗━━━G. batesiana
                                            var. dolomitica


ヴロキイは花の形状からは、G. glauca、G. ellaphieae、G. nitidaと近縁とされてきましたが、遺伝子解析の結果からは支持されません。

世の中には多肉植物ブームなるものが、私が知らない間にあったらしいです。しかし、その時の一時の過熱はなくなったものの、どうも多肉人口が増えたせいか多肉植物自体は以前より今の方が色々入ってきているように思います。そんな中でも、何故かガステリアは見かけません。もちろん、臥牛や恐竜は見かけますけど、それ以外の種類、しかも原種となると中々厳しいところです。私もチマチマ集めてはいますが、ガステリアは現在8種類のみです。先日のビッグバザールでも、ガステリアはほぼありませんでした。しかし、ガステリアは非常に美しいので、もう少し流行って欲しいところですね。


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硬葉系ハウォルチアはハウォルチア属のHexangulares亜属とされてきました。しかし、硬葉系ハウォルチアは2013年にGordon Douglas Rowleyによりハウォルチオプシス属とツリスタ属として、ハウォルチア属から独立しました。しかし、そのハウォルチオプシス属内部をどう分類するのかという問題も出てきました。また、遺伝子解析結果からは、思いもよらぬ難問が提出されました。そこで、本日はハウォルチオプシス属の新しい分類を提案している、2016年に発表された論文『A synoptic review and new iofrageneric classification for the genus Haworthiopsis (Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』をご紹介いたします。著者は近年のアロエ類研究を先導する、南アフリカのSean D.Gildenhuys & Ronell R.Klopperです。

Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされましたが、論文は2016年ですからHaworthiopsis henriquesiiを含まない18種類について述べられております。
問題はコエルマニオルム(H. koelmaniorum)の立ち位置です。コエルマニオルムは分布はリミフォリア(H. limifolia)に近いものの、形態的にはテセラタ節(H. granulata、H. tessellata、H. venosa、H. woolleyi)に近いようにも見えます。しかし、下に示した遺伝子解析による分子系統では、ハウォルチオプシス属はガステリア属と姉妹群ですが、コエルマニオルムはむしろガステリア属よりもハウォルチオプシス属と離れて見えます。

            ┏━━━━━Gasteria
            ┃
            ┃        ┏━━Haworthiopsis
            ┃        ┃     Section Trifariae
            ┃    ┏╋━━Haworthiopsis
            ┃    ┃┃     Section Haworthiopsis
            ┃┏┫┗━━Haworthiopsis
            ┃┃┃         Section Haworthiopsis
            ┣┫┗━━━Haworthiopsis
            ┃┃             Section Virescentes
        ┏┫┗━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Haworthiopsis
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Limifoliae
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Tessellatae
        ┃┗━━━━━Haworthiopsis
    ┏┫                     Section Attenuatae
    ┃┣━━━━━━Haworthiopsis
    ┃┃                     Section koelmaniorum
    ┃┃┏━━━━━Tulista
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━━Aristaloe
┏┫┗┫
┃┃    ┣━━━━━Gonialoe
┃┃    ┃
┃┃    ┗━━━━━Astroloba
┃┃
┃┣━━━━━━━Aloe
┃┃
┫┗━━━━━━━Aloiampelos

┣━━━━━━━━Haworthia

┣━━━━━━━━Kumara

┗━━━━━━━━Aloidendron

ハウォルチオプシスを分割していますが、ガステリア属を含めて1つのグループを形成しています。同様にツリスタ属、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、アストロロバ属を1つのグループとしています。要するに、①ハウォルチオプシス+ガステリア、②コエルマニオルム、③ツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエ+アストロロバという、3群に分けられるのです。ガステリア属は非常にまとまりのあるグループなので、独立した属とされています。このように、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとすべきか微妙な立ち位置にいます。
さらに言うならば、Trifariae節、Haworthiopsis節、Virescentes節はまとまりがありますが、Limifoliae節、Tessellatae節、Attenuatae節は必ずしも単系統にはなっていません。ハウォルチオプシス属自体のまとまりのなさがうかがえます。
ただし、慎重にも論文ではさらに詳細な解析が必要であるとしています。完全決着などではなく、現時点においての評価ということなのでしょう。
では、論文におけるハウォルチオプシス属の分類と、私の各Sectionの解説を示します。

①Section Attenuatae
・H. attenuata
・白い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。
・アテヌアタは東ケープ州に分布します。
・日本では「十二の巻」という名前の白い結節があるハウォルチオプシスが昔から販売されており、これをファスキアタとすることが多いのですが、「十二の巻」はアテヌアタ系交配種です。最近、「特アルバ」の名前で販売されている結節が目立つタイプのハウォルチオプシスはアテヌアタです。同様に結節が細かくつき繋がらない「松の雪」はやはりアテヌアタです。このように、アテヌアタ系はよく見かけますが、ファスキアタは基本的に販売しておりません。たまに専門店に並ぶくらいです。ネットでは十二の巻をファスキアタの名前で販売されていることが多いので注意が必要です。

②Section Haworthiopsis
・H. coarctata, H. fasciata, H. glauca, H.longiana, H. reinwardtii
・白
い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。白い結節を持ちロゼットを作るファスキアタ、白い結節を持ち縦長に育つコアルクタタとレインワルドティイ、結節に白くならないか結節がないグラウカ、結節がない場合もあり葉が長くなるロンギアナからなります。
・Haworthiopsis節はすべて東ケープ州に分布します。
コアルクタタをレインワルドティイに含める考え方もあります。

③Section Limifolia
・H. limifolia
・遺伝子解析では独立して見えますが、他種との関係に対する解析が不十分とのことで暫定的にリミフォリア節を設定しています。
・リミフォリアはMpumalanga州とKuwaZulu-Natal州に分布します。

④Section koelmaniorum
・H. koelmaniorum
・コエルマニオルムはLimpopo州とMpumalanga州に分布します。Limpopo州に分布するハウォルチオプシスはコエルマニオルムのみです。

⑤Section Tessellata
・H. granulata, H. tessellata, H. venosa, H. woolleyi
・テセラタは北西州と自由州唯一のハウォルチオプシスです。テセラタは北ケープ州や西ケープ州、東ケープ州にも広く分布します。グラヌラタは北ケープ州と西ケープ州に分布します。ヴェノサは西ケープ州に固有です。ウォオレイは東ケープ州に固有です。
・Tessellata節は小型で窓のあるグループです。グラヌラタはヴェノサの亜種とされてきました。同様にウォオレイはヴェノサの亜種あるいは変種とされて来ましたから、販売苗のラベルではそのような表記が多いでしょう。

⑥Section Trifariae
・H. pungens, H. nigra, H. scabra, H. viscosa
・縦長に積み重なるタイプです。ヴィスコサやニグラは三方向に葉を出して積み重なります。プンゲンスは6あるいは3方向に積み重なります。スカブラはロゼットを形成します。
・プンゲンスは東ケープ州に固有です。スカブラとヴィスコサは東ケープ州と西ケープ州に分布します。ニグラは東ケープ州と西ケープ州、さらに北ケープ州にも分布します。

⑦Section Virescentes
・H. bruynsii, H. sordida
・Virescentes節は東ケープ州に固有です。
・ブルインシイは一見して軟葉系のHaworthia retusaに似ていますが類縁関係はなく、平行進化と考えられています。

ちなみに、ハウォルチオプシス全種類の変種や異名については下記の記事にありますので、ご参照して下さい。



さて、論文の内容につきまして簡単に解説してきましたが、実は私も読んでいてモヤモヤする内容でした。まず、Tessellatae節やLimifoliae節の関係がよく分からないことです。これはさらに詳しく解析をすればわかることでしょうから今後に期待します。次にHaworthiopsis節ですが、Trifariae節やVirescentes節と入れ子状になってしまっています。どうみても、単系統ではありません。結節があるなどの特徴から分けるのは間違いなのかもしれません。

2014年のJohn C. Manning & James S. Boatwrightの
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文では、12種類のハウォルチオプシスの遺伝子解析をしています。ここでもコエルマニオルムはハウォルチオプシスの中には収まっていないため、下記の分子系統には入っていません。この論文では、コエルマニオルムはツリスタ+アストロロバ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群とされ、むしろハウォルチオプシスからは近縁ではありません。

┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━H. reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━H. nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━H. coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━H. glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━H. bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━H. sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━H. fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━H. longiana
┃┃
┃┗━━━━━━H. limifolia

┃┏━━━━━━H. venosa
┗┫
    ┗━━━━━━H. attenuata

Haworthiopsis節は2つに別れます。ファスキアタとロンギアナは近縁です。残りのレインワルドティイ、コアルクタタ、グラウカは、Trifariae属のニグラと近縁です。他のTrifariae節はわかりません。Limifolia節はここでも独立しています。Tessellata節のヴェノサはアテヌアタと近縁に見えます。
ただし、この2つの論文は分離がいまいちだったり、調べた種類が少ないため、まだ確実なことは言えないでしょう。また、調べた遺伝子によっても、解析結果に若干の違いが出るようです。更なるデータの蓄積が必要でしょう。
というわけで、わかったようなわからないような結果です。はっきりしないのは残念です。しかし、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとは近縁とは言えないという結果だけは共通します。将来、コエルマニオルムはハウォルチオプシスから独立するかもしれませんね。


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巨大な台風14号が日本列島を襲いましたが、予想に反して日本海を北上したため、関東地方は直撃を免れた模様です。しかし、これだけ距離が空いたのに中々の強風が吹きましたね。他の方のブログを拝見させていただくと、皆さん台風対策に余念がない様子で感心します。私はと言えば、情けのないことにサボテン・多肉植物のビッグバザールに行っただけで疲れはてて寝てしまい、ノーガードで台風を迎える羽目になりました。一応、多肉植物の棚はセメント・金属用接着剤で、コンクリートに固定していますから動かないはず…。まあ、ユーフォルビアの棚は園芸用ビニールを天井に張っただけなので飛んでいってしまうかもしれないとは思いましたが。
そんなことを言っている間に、なんとまた台風が直撃するという予報がありましたが、基本的に太平洋に進路をとったのでたいしたことはありませんでした。台風明けの多肉植物たちをご紹介します。

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フォウクィエリアたちは、他の多肉植物と比べて背が高くバランスが悪いので倒れる心配がありました。よりによって、端の方に置いていましたが、特に問題はありませんでした。

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台風の中、闘牛角Euphorbia schoenlandiiは開花しました。これでも、ユーフォルビアの中では大きめな花です。

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Aloe somaliensisは日焼けから回復して、本来の美しい葉を取り戻しました。来年は日焼けさせないように気を付けなければ。

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キリンドリフォリア系の花キリン類は皆元気です。葉色は赤くなっていますが、特に問題ありません。むしろ、変に遮光を強くすると、徒長する可能性が高いのでそちらの方が怖い。花キリン類は葉が日焼けして枯れ落ちても、強光に耐えられる新しい葉がすぐに生えてきますから、個人的には日焼けは怖くないのです。

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日々の多肉植物の様子を「多肉事情」などと称して度々記事にしていますが、ガステリアは生長が遅く見た目にあまり変化がないので登場しません。しかし、このGasteria carinataは若い個体なせいか、ぐんぐん伸びます。

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Euphorbia ×inconstantiaですが、根詰まりを起こしていたので植え替えました。しかし、根をやられていたので心配していましたが、残念ながら本体が枯れてしまいました。枝が生きていたので挿し木したのですが、どうやら生着したようです。

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フロリダザミアZamia integrifolia(異名:Z. floridana)は、日焼けで2枚しかない葉が枯れてしまい、小苗だしもうダメかと思いましたが、新しい葉が次々と出てきました。今年で3本目。他のソテツがフラッシュしていた時には、まったく動きがなかったのに不思議です。

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Euphorbia richardsiae
6月に鶴仙園さんで購入したミニ多肉ですが、もう既にミニ多肉のサイズではありません。しかし、リカルドシアエを検索すると、見た目が異なるものが数種類出て来ます。どれが正しいリカルドシアエなのかわかりません。それとも変異の幅に収まる話なのでしょうか?



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この3連休に鶴仙園西武池袋店で開催中の『FEHN』(FAR EAST HAWORTHIA NETWORK)に、昨日行って参りました。Plant's Workさんとのコラボで、沢山のハウォルチアが集まりました。

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こちらが最新のイベント情報です。

しかし、超巨大台風が去った後に、また直ぐに台風直撃の可能性とはひどい話です。しかも、多肉イベントの開催日に直撃予想とは、本当に台風許すまじといったところです。
さて、昨日は朝から怪しい天気でしたが、幸運にも午前中は雨に降られませんでした。開店する10時ちょいに池袋に到着しました。しかし、既に店内はかなりの混雑で、大変な賑わいでした。
宝石の様なピクタ系交配種がビッシリ並んでいたり、オリジナル交配系も様々です。ところどころ、フィールドナンバー付きの原種もあり、素晴らしい株を沢山見ることが出来ました。軟葉系はあまり詳しくありませんが、レース系も結構あったみたいです。
硬葉系ハウォルチアについては、見たことのないタイプがあり、n.n.(裸名)の名札が付いたものもありましたが、非常に気になりました。ニグラの大型タイプも目を引きました。他にも、フィールドナンバー付きのものもあって非常に面白かったです。

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H. venosa subsp. woolleyi
GM079 South of Kleinpoort 
Plant's Workさんのハウォルチアの購入品は、woolleyiです。名札では、ヴェノサ亜種 となっていますが、現在ではHaworthiopsis woolleyiが正式な学名です。woolleyiがハウォルチオプシスになり独立種とされたのは2013年と意外と最近の話です。
しかし、woolleyiははじめて見ましたから、入手出来たのは幸運でした。これだけでも来た甲斐がありました。

さて、じっくりとイベント株を見た後は、鶴仙園さんのハウォルチアを眺めます。以前来た時から大分期間が空きましたから、結構入れ替わっています。こちらも非常に面白いハウォルチアがありました。
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Haworthia marginata Just N. Ashtori
いわゆる、Tulista marginataですが、珍しいことに結節(イボ)がないタイプです。瑞鶴と呼ばれることもあります。こちらも販売しているのははじめて見ました。今回、ツリスタはTulista minor SwellensやTulista kingianaなど、思いの外ありましたね。

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Haworthia coarctata DMC06356
Farm Begelly, 12km S of Grahamstown IB5850
いわゆる九輪塔ですが、鷹の爪Haworthiopsis reinwardtiiの変種とする意見もあります。しかし、現在の正式な学名はHaworthiopsis coarctataです。

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Gymnocalycium ochoterenae v. cinereum 204B
久しぶりに来たのでサボテンも見ましたが、ついうっかり買ってしまいました。トゲが白い変種です。しかし、204Bとは何か?  おそらくはフィールドナンバーでしょうけど、前半が略されているのでなんだかわからないことになっています。これは調べるのが大変です。MAW 204bはOpuntia、ひねってKK 2046はRebutia…。これは困りましたね。

この他にも面白いハウォルチアは沢山あったのですが、今回は直前までイベントに気がつかなくて、資金も準備していなかったのでお安いものだけの購入です。まあ、秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールでは、ワンコインの多肉植物を買ったりしたので、やや余裕がありましたからね。色々と見られて楽しかったです。こういう多肉植物のイベントは楽しいものです。また、何かイベントがありましたら、記事にしたいと思っています。


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先日、五反田TOCで秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されました。私も参加して色々と珍しい多肉植物を見ることが出来て、非常に楽しい時間でした。しばらくは大人しくしているつもりでしたが、鶴仙園さんでイベントが行われるという情報を得てしまいました。なんでも、Plant's Workという山口県のハウォルチアで有名な生産者さんとコラボして、『FEHN』というハウォルチアのイベントを開催するというのです。
これは大人しくしている場合ではありません。目の保養を兼ねて、私もこれから朝イチで西武池袋9Fの鶴仙園へ行ってきます。

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鶴仙園さんのブログでイベントの告知をしています。詳細はこちらをどうぞ。

さて、告知だけではつまらないので、簡単にハウォルチアについて説明しましょう。
まずハウォルチアは「Haworthia」と書きますが、Haworthiaの命名者はフランスの植物学者であるHenri August Duvalですが、Haworthiaという属名はイギリスの植物学者・昆虫学者・甲殻類学者であるAdrian Hardy Haworthに対する献名です。読み方は「ハオルチア」、「ハオルシア」、「ハウォルチア」、「ハワーシア」など様々ですが、お好きな読み方でOKです。ちなみに私はハウォルチアが好みです。


そう言えば、ハウォルチアには軟葉系と硬葉系とがあります。軟葉系は名前の通りにさわった感じが柔らかいものが多く、透き通った「窓」と呼ばれる部分があるものと、柔らかい糸の様な「禾」(ノギ)があるレース系と呼ばれるものなどがあります。
硬葉系は名前の通り葉は非常に硬くカチカチです。「窓」を持つ種類もありますが、色はやや暗くざらざらした質感のものが多く渋い存在です。「結節」と呼ばれる白いイボを持つものもあります。
私の手持ちのハウォルチアを例として挙げます。
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軟葉系ハウォルチア(Haworthia)。
透き通った窓があります。


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軟葉系ハウォルチア(Haworthia)。
糸の様な禾があります。


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軟葉系ハウォルチア(Haworthia)。
短い禾と小さな窓が沢山あります。


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硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)。
透き通った窓がありますが、葉は硬くカチカチです。

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硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)。
暗い色合いとざらざらした質感です。


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硬葉系ハウォルチア(Tulista)。
白い結節に覆われます。


ちなみに、ハウォルチアは学術的に現在3分割されています。軟葉系ハウォルチアを「Haworthia」、硬葉系ハウォルチアは「Haworthiopsis」と「Tulista」に分けられました。ややこしいのは、単にハウォルチアと言った場合、軟葉系と硬葉系を含んだハウォルチ全体を呼ぶ「広義のハウォルチア」と、軟葉系ハウォルチアのみを示す「狭義のハウォルチア」の場合があることです。また、HaworthiopsisやTulistaも、売り場ではハウォルチアとして売られていますし、ラベルにもハウォルチア時代の古い名前で流通しています。
軟葉系と硬葉系はもともとは花が似ているから同じ仲間とされていたのですが、遺伝子解析の結果から兄弟ではなくて親戚くらいの関係に落ち着きました。血縁関係がないわけではありませんが、結局はただの他人のそら似だったみたいです。
これは、軟葉系ハウォルチアと硬葉系ハウォルチアが、虫に花粉を運んでもらうために進化した結果、花がたまたま似た形になったということです。これを収斂進化と呼びます。

イベントは2022年9月23日(金)~25日(日)の3連休の3日間です。本日が初日です。珍しいハウォルチアが沢山見られるでしょうから、興味がありましたら参加してみて下さい。もしかしたら、運命的な出会いがあるかもしれません。初心者歓迎とありますから、ハウォルチアを始める良い機会ですかね? Plant's Workの方も来られるみたいですから、色々と質問してみても良いかもしれません。
私もこれから支度をして池袋に向かいます。イベントの様子は明日記事にします。



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ポエルニッチア属は、かつてアストロロバ・ルブリフロラにつけられた旧・学名です。私もそのことについて何ら疑問を抱かなかったわけですが、アストロロバ属について調べていた際に衝撃的な論文を見つけてしまいました。Gideon F. Smithらが2018年に発表した『Proposal to conserve the name Astroloba against Poellnitzia (Asphodelaceae : Alooideae)』です。

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Astroloba rubriflora
          =Poellnitzia rubricflora

とりあえず、その内容に入る前に簡単にことの経緯を説明します。ルブリフロラは1920年にアピクラ属として命名されたアロエ類です。種小名はルブリフロラとヤコブセニアナ(ジャコブセニアナ)が命名されましたが、学名は先に命名された方が優先されますから、ルブリフロラが採用されます。下の年表はルブリフロラの学名の変遷を示したものです。現在では2000年に命名されたアストロロバ属の所属となっています。


1920年 Apicra rubriflora L.Bolus
1939年 Apicra jacobseniana Poelln.
1940年 Poellnitzia rubriflora

                    (L.Bolus) Uitewaal
1955年 Poellnitzia rubriflora
                          var. jacobseniana
                              (Poelln.) Uitewaal
1971年 Haworthia rubriflora
                                    (L.Bolus) Parr

1981年 Aloe rubriflora 
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

2000年 Astroloba rubriflora (L.Bolus)
              Gideon F.Sm. & J.C.Manning
2013年 Tulista rubriflora
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

さて、それではいったい何が問題かと言いますと、属名はアストロロバで良いのか? ということです。アピクラ属は現存しない属ですし、アロエやハウォルチアに関しては、遺伝子解析結果からも否定されています。Gordon Douglas Rowleyがルブリフロラを他のアストロロバと共にツリスタ属の所属としましたが、これは確かに遺伝子解析結果では近縁でしたが、アストロロバ属はまとまりのある群として独立させる意見が認められています。ここまでは問題ありません。
ポエルニッチア属は1940年にルブリフロラのためにオランダの植物学者であるAntonius Josephus Adrianus Uitewaalにより提唱されました。しかし、1947年に同じくUitewaalにより、アストロロバ属が提唱されました。Uitewaalはポエルニッチアとアストロロバを別属としました。アストロロバ属は白花で虫媒花ですが、ルブリフロラ(rubri=赤、flora=花)の名前の通り赤花で鳥媒花です。現在ではルブリフロラは鳥を引き付けるために特殊化したアストロロバと見なされています。しかし、その特殊性ゆえ、ルブリフロラをアストロロバから分離する考え方はいまだに健在のようです。しかし、遺伝子解析からはやはりアストロロバに含まれるという結果でした。
さて、次からが最大の問題です。良く考えたら、1940年に命名されたポエルニッチア属と1947年に命名されたアストロロバ属を比較した場合、ポエルニッチア属の方が早く命名されていますから、アストロロバ属は本来使用されるべき属名ではないというのです。つまりは、現在アストロロバ属とされている種はすべてポエルニッチア属とするのが正しいというわけです。私はポエルニッチア属はルブリフロラのためだけに創設されたため、ポエルニッチア属を基準とすべきとは考えませんでしたが、確かに言われてみればその通りです。何故そのことに気が付かなかったのか、私自身迂闊でした。では、今後はアストロロバ属を廃して、すべての旧・アストロロバをポエルニッチア属に移動させるべきなのでしょうか?

しかし、著者はこの考え方に否定的です。アストロロバ属は1947年の命名以降一貫して使用されてきましたし、非常にまとまりのあるグループです。論文をはじめとする世界的な文献においても定着しています。そのため、アストロロバ属をポエルニッチア属に置き換えることは、決して望ましいことではなく、命名学的な安定性の観点からも利益にはならないと述べています。やはり、ポエルニッチアという1種に対応する属名をすでに確立した学名であるアストロロバ属に対応させることは、不必要な混乱と不確実性を生じるとしています。
植物の学名はある程度は見直されており、チェックを受けています。最新のチェックでは、アストロロバ属は1995年の『World Checklist of Seed Plants』により承認されており、ポエルニッチア属は2011年の『World checklist of selected plant families published update Facilitated』によりアストロロバ属の同義語であるとしています。今後もこのように見直しは行われますから、著者の意見が認められるのか、それともアストロロバ属が消滅するのか、大変気になるところです。私も注視しついきたいと思っています。



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19日に五反田TOCで開催されました秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールの続きです。昨日は多肉植物の流行り廃りや季節による変化をレポートしましたが、本日は購入品をご紹介します。今回は高いものは買いませんでしたから、点数は多目です。その代わり小さい苗ばかりですけどね。まあ、私は苗を育てるのが楽しい口なので、逆に嬉しい限りです。
※名前はラベル表記のまま


先ずはいつもお馴染みのラフレシアリサーチさんのブースです。今回は海外ソテツ苗もありましたが、私にとってはややいいお値段でしたから、見るだけに納めました。Gymnocalycium prochazkianum subsp. simileの手持ちとは異なるフィールドナンバー違いがありましたが、今回はパスさせていただきました。代わりにフィールドナンバーつきのベルクティイを購入しました。今回は変わったユーフォルビアは特にないみたいです。あと、珍しいことに、ウチワサボテンの節をばらして売っていました。
ラフレシアリサーチさんは毎回おまけがありますが、今回はアガヴェ2種類とウチワサボテンの節から1つ選べます。ウチワサボテンは育つと手に負えなくなりますから、アガヴェ苗を選びました。しかし、前におまけでもいただいたアガヴェも育てていますが、集めるつもりがないのにアガヴェ・ブームの影響かアガヴェが増えていく謎…
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Gymnocalycium berchtii TOM 6/481
初めてのTOM(
Tomáš Kulhánek)ナンバー。白い粉をまとうタイプみたいです。アルゼンチンの小型種。

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Agave leopoldii
おまけの抜き苗。実は自然交雑ではないかと言われているそうです。その場合の学名は、Agave ×leopoldiiとなります。アガヴェは丈夫で育てやすくていいですね。手がかからなくて。

次はまたまたお馴染みのRuchiaさんのブースです。結構、メセン類も出ていました。それはそうと、毎回ニグラ買えばよかったと帰宅後嘆いていましたから、今回はニグラを買いました。しかし、4系統位のニグラがあり、非常に迷いました。今回はIB(Ingo Breuer)ナンバーが付いた株を選びました。割と詰まった形です。それと、パキポディオイデスとグイラウミニアナの実生苗が並んでましたが、手持ちにありますから買いませんでした。結構、良さげな苗でしたけどね。それから、意外にもギムノカリキウムが沢山ありました。バッテリーや新鳳頭、天平丸など美しい株がありましたが、今回は変わった聞き覚えのない種類を購入しました。あと、ネオポリテリア?かなんかがありましたが、欲しかったものの育て方がよく分からないので、今回はパスしました。
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Haworthia nigra IB12484
ニグラは現在はハウォルチオプシスとなっています。非常に葉が詰まって小型に見えます。帰宅中にひっくり返してしまったので、少し土を被ってしまいました。


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帰って良く見たら、変なところから子株がはみ出しています。

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Gymnocalycium pseudquehlianum
聞いたことがない名前です。言うほど「偽のquehlianum」(pseudo+quehlianum)には見えませんが。ギムノカリキウムではpseudoと言えば、Gymnocalycium pseudo-malacocarpusでしょうか? Gymnocalycium pseudo-malacocarpusのフィールドナンバーつきの個体では、似ているタイプもないわけではありませんが、よくわかりません。

お次は以前、Euphorbia subapodaの苗を購入したブースへ。今回も多彩な品揃えで、高額なコーデックスから小苗まで揃ってます。少し他とはラインナップが異なり、色々な多肉植物が混ざって並べています。Euphorbia aeruginosa、黄刺紅彩閣などもありました。
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ユーフォルビア グロボーサ
玉鱗宝Euphorbia globosaですが、あまり見ないユーフォルビアです。しかし、玉鱗宝は大型園芸店で何度か見ていますが、球状に育ちますが細長くなってしまった徒長苗ばかりでした。今回は徒長していないので購入しました。カタツムリ付き。

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花が咲いていますが、特徴的で変わった花です。

お次はハオルチアが沢山あるSucculent Connectionさん。流行りの大きな窓のある交配種は人気で、人だかりが出来ていました。私は人のいない端のほうで、ソルディダを見ていました。ソルディダは生長が遅いこともあり、基本的にかなり高額です。しかし、こちらのソルディダは小さな実生苗を選んで抜き苗にする売り方なせいか、かなりお安い感じでした。
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Haworthia sordida
準備された箸で抜きました。根の張りは良好です。現在はハウォルチオプシスです。


最後に大きなコーデックスを並べているブースです。そこら辺は私には縁がありませんが、床に多肉植物が入ったカゴが置いてあり、なんとユーフォルビアを安く販売していました。ワンコインとは中々太っ腹です。まあ、小さな苗ですけどね。
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ユーフォルビア・ペディラントイデス
Euphorbia pedilanthoidesという花キリンです。花は開かないタイプですから目立ちません。枝が細いためか、花が地味なためかはわかりませんが痩花キリンという名前もあるみたいです。


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ユーフォルビア・ラザフィンドラトシラエ
Euphorbia razafindratsiae。葉が縮れるタイプの花キリンです。種小名はもしかしたらマダガスカルで園芸農園を営む園芸家のAlfred 
Razafindratsiraに対する献名でしょうか? しかし、残念ながらこのE. razafindratsiaeは異名で、Euphorbia mangokyensisが正しい学名とされているようです。

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ユーフォルビア・アパリキアーナ
Euphorbia appariciana。見た瞬間、南米産のユーフォルビアであることがわかりました。独特の雰囲気があります。おそらくは、ユーフォルビア亜属New World Cladeのブラジリエンセス節なのでしょう。

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ユーフォルビア・ムランジーナ
Euphorbia mulanjeana。最近、ムランジーナという名前の巨大な塊根を持つユーフォルビアが急に販売されるようになりました。海外から大量に入ってきたのでしょうか? 


さて、急な大雨で多肉植物をばらまいた話は昨日しましたが、赤玉植えで根が張っているものはいいのですが、水はけの良い軽い用土に植えられていたものは、全部衝撃で抜けました。いずれにせよ植え替えるつもりでしたし、何より抜き苗を植え付けないといけません。しかし、植え替え中にまたもや鉄砲雨が来て、中止せざるをえませんでした。来週何とかします。とりあえず、抜き苗だけでも植えられたので一安心です。購入した花キリンは一度抜けてしまっていますから、台風の突風でまた抜けそうなので室内に取り込みました。
というわけで、今回はいくつか安い苗を買いました。ハウォルチオプシスはあまりなかったので、次回に期待します。しかし、まあ思いがけずソルディダが入手出来たのはラッキーでした。無いだろう思っていた花キリンもあってこれは嬉しい誤算です。次回のビッグバザールはいつ開催されるのかはわかりませんが、いずれにせよ冬型メインでしょう。私の好みの多肉植物はあまりなさそうですが、見学がてら様子をレポートしたいですね。以上、2022年・秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールでした。



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待ちに待った秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールが昨日開催されました。いつも通り五反田TOCでの開催です。今どんな多肉植物が流行っているのか、レポートしたいと思います。

直近のビッグバザールの記事はこちら?

さて、私は流行りのアガヴェもエケベリアも買いませんが、一応は目的を設定しておきましょう。今回は厳選したいと考えていますから、せっかくですからビッグバザールでしか入手が難しいものがいいですね。私のメインであるユーフォルビアは、園芸店で流通している基本的な種類はだいたい入手したので、今回は未入手の安い実生苗以外は買わないことにしました。まあ、手持ちにないユーフォルビアは、大抵は高額なコーデックスですから無理して買う必要はないでしょう。ただ、最近は花キリンが面白く感じてはいます。まあ、ビッグバザールではあまり見た記憶がありませんが。買うとしたら、やはりツリスタとハウォルチオプシスとなります。特にツリスタは種類が少なくあまり販売していませんから、注意して探したいと思います。最近ではタイプ違いや、フィールドナンバーの付いた顔つきが異なりものも気になっています。ハウォルチオプシスの中でもあまりにも人気がない白い斑点が付くタイプ、つまりはH. fasciataやH. attenuata、H. reinwardtiiあたりはあるでしょうか? 

さて、昨日は台風の影響であいにくの雨模様と思いきや、大変良く晴れて朝から蒸し暑い1日でした。懸念された台風14号が開催日に直撃しなくて幸いでした。
そう言えば、前回は開催時間前に到着して、はじめて開場まで並びました。今までは昼前の遅い時間に行ってやや品薄感がありましたから、前回は早く行って並べたての沢山の多肉植物を見ることが出来ました。というわけで、今回も開場より早く到着しました。とは言え、9時少し前に着いたため、既にとんでもない人数が並んでいました。今回も熱気で汗を拭きながら開場を待ちます。雨が降ったせいで湿度が高く、今回は中々つらい感じでした。

さて、9時ちょうどに開場しました。全体をぐるりと回りましたが、やはりアガヴェが多いですね。
園芸店でもアガヴェを見かける事が多くなりましたし、ずいぶんと扱われる種類も増えました。調べると、アガヴェ中心の販売イベントが都内などでちょくちょく開催されている模様です。ここ2回のビッグバザールでもアガヴェ専門のブースがありました。今回は普段はアガヴェを持ってこないところも、ある程度は並べているくらいアガヴェが目立っていました。人だかりが出来ていてまったく入れないブースがあり、何かと思って裏からのぞいてみましたが、アガヴェ専門店でした。ビッグバザールのアガヴェ人気は今回が最高潮のような気がします。これからもしばらくはブームは続くのでしょうか? まあ、コーデックスも相変わらず山のようにありましたが…

エケベリアなどのベンケイソウ科は、もともとビッグバザールでは少数派ですが、今回もある程度はありました。しかし、やはり少数派です。専門店が出店するか否かにかかっている気がします。
エケベリアなどのベンケイソウ科植物のブームはずいぶんと長く続いてます。一時の過剰な多肉ブームは治まった様ですが、エケベリアの勢いは落ちませんね。アガヴェとエケベリアが圧倒的です。

秋らしさと言えば、リトープスなどのメセン類は今回沢山ありました。前回はなかったので、まだ暑い日が続きますが多肉植物はすでに秋仕様なんですね。非常に美しいのですが、基本的に放置栽培気味の私には育てられそうにありません。残念ながら見るだけです。

そう言えば、今回はギムノカリキウムはいつもよりありました。バッテリーはわりにありましたね。まあ、3~4店ですが。サボテンではやはり相変わらずコピアポアが目立ちますが、今回はエリオシケなどのやや珍しいものもありました。流行っているのでしょうか?

ハウォルチアは相変わらず窓の大きい交配系は沢山ありました。結構人気があるようです。基本的に高額な硬葉系のソルディダがあちこちにあり、やや奇妙な光景でした。流行っては…いないと思います。大型の株は万単位のお値段ですが、今回初めて小さな苗があったので購入しました。全体的に硬葉系は非常に少なく、ツリスタとガステリアは壊滅的、アストロロバは皆無でした。残念。

ユーフォルビアはお目当てのブースにはありませんでした。しかし、高額の大型コーデックスを並べているブースで、何やらワンコインのユーフォルビア苗を床に並べていましたからいくつか購入しました。前回と同じく、パキポディオイデスや群星冠は割とありましたし、最近見かけるようになったグイラウミニアナもありました。あとは、蘇鉄キリンはちらほら見かけました。それ以外は高額な塊根ユーフォルビア位ですかね。

そんなこんなで、今回は安い値段のものを9点を購入しました。正味1時間ほどの滞在でした。いつもの様に2~3鉢をビニール袋に入れて縛り、それを紙袋に詰めて帰りました。しかし、最寄り駅から家への帰宅中にゲリラ豪雨に見舞われ、紙袋があっという間にふやけて購入した多肉植物を道路にぶちまいてしまいました。ビニール袋に入れて縛ってあったので、土をばらまかないで済みましたが、中はシェイクされてしまいました。台風の影響でしょうか?しかしその後、あっという間に雨は止み晴れ渡りました。まったくもっておかしな天気です。

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購入品。ユーフォルビア5、サボテン2、ハウォルチオプシス2、アガヴェ1でした。思いの外、ユーフォルビアがありました。珍しいこともあるものです。購入品については明日記事にします。



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ツリスタ属は2016年に認められた、割と新しい分類群です。遺伝子解析の結果からは、ツリスタ属はアストロロバ属やアロエ属から別れたアリスタロエ属・ゴニアロエ属と近縁である事がわかりました。さらに、ガステリア属やハウォルチオプシス属も近縁で、ここら辺も含めと私は好きでチマチマ集めています。そんな中でもツリスタ属は4種類と少なく、産地ごとの個体差が大きくコレクションする楽しみがあります。
本日は今年の五反田TOCで開催された春のサボテン・多肉植物のビッグバザールで入手したプミラの変種オウクワエについてです。


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Tulista pumila(ohkuwai) GM 602
Vrede, NW of Anysberg
非常にイボ(結節)が発達しているタイプです。プミラ系の最優美種です。ラベルにはohkuwaiとありますが、正確にはohkuwaeですね。


学名の後の"GM602"は採取情報がわかるフィールド・ナンバーというもので、「採取人+採取番号」の組み合わせからなっています。早速調べてみました。

Field number : GM 602
Collector : Gregorz Matuszewski
Species : Mammillaria meiacantha
Locality : Mexico, Coahuilauila
                          (Huachichil, 2050m)
Date : 2002

なんと、サボテンの情報が出て来てしまいました。ちなみに、"GM 602.1"と"GM 602.2"もありますが、やはり情報はサボテンでした。ただし、採取人のGregorz Matuszewskiは主に北米で活動しているみたいですから、南アフリカ原産のツリスタの採取人としては違和感があります。
とりあえず、"GM"と"Haworthia"で調べると新たな情報が出てきました。

Field number : GM 408
Collecter : J. Gerhard Marx
Species : Haworthia pumila
Locality : Western Cape, South Africa

もちろん、これは"GM 602"の情報ではありませんが、単に「GM」と言った場合にはGregorz Matuszewskiの場合とJ. Gerhard Marxの場合がある事がわかりました。残念ながら"GM 602"の情報は見つかりませんでした。まあ、単純に探し方が悪いだけという可能性もあります。しかし、そもそもフィールド・ナンバーを検索できるサイトは、フィールド・ナンバーを収集しているだけで、すべてのフィールド・ナンバーが登録されているわけではありません。普通に見つからないこともあります。
また、このフィールド・ナンバーからは、他の情報も読み取れます。植物の学名が"Haworthia pumila"となっていますね。当然ながら現在では"Tulista pumila"です。間違っているようにも思えますが、フィールド・ナンバーは採取時点での学名で登録されますから、これで問題ありません。むしろ、学名が変わる度に登録情報を訂正するのは、あまりにも大変です。


さて、では後半の"Vrede, NW of Anythberg"を調べてみましょう。Anythbergは南アフリカ南西部にある地名です。NWはNorth Westですから、Anythbergの町から北西部が採取地名です。北西部にはAnythberg国自然公園がありますが、Vredeは良くわかりません。

さて、ではGM 602を採取したJ. Gerhard Marxとは何者なのでしょうか? 調べてみると、どうやら南アフリカの芸術家とのことです。しかも、ハウォルチアのコレクターで、原産地に自生するハウォルチアの美しい図版を書いています。Gerhard Marxの作出した交配種もあるようです。また、Euphorbia suppressa MarxやEuphorbia audissoui Marxの命名者としても知られています。

さて、ツリスタ属ははじめて命名された時はアロエ属で、やがてハウォルチア属が創設されるとそちらに移り、最終的にツリスタ属となった経緯がありますから、学名(異名)は最低でも3つはあることになります。しかし、産地による個体差が激しいこともあり、それらを別種として命名したりしたこともあり、沢山の異名が付けられてきました。
先ずはプミラの来歴を見てみましょう。これは、変種を含んだプミラ全体の学名です。やはり、アロエ→ハウォルチア→ツリスタという経緯です。しかし、アピクラ属とする意見もありましたが、このアピクラ属は現在は存在しない属名です。また、Aloe arachnoidesの変種とする意見もありましたが、これは現在のHaworthia arachnoideaのことです。また、マキシマという種小名が出てきますが、プミラをマキシマと呼ぶことが結構あります。しかし、マキシマの初命名はプミラの命名の51年後です。学名は先に命名された種小名が優先されるルールですから、当然ながらマキシマは認められません。

1753年 Aloe pumila L.
1789年 Aloe arachnoides var. pumila (L.) Aiton
1804年 Aloe margaritifera var. maxima Haw.
1809年 Haworthia pumila (L.) Duval
              Haworthia maxima (Haw.) Duval
1821年 Apicra maxima (Haw.) Steud.
2013年 Tulista pumila (L.) G.D.Rowley

いよいよ、変種オウクワエの登場です。2016年にHaworthia sparsaとHaworthia ohkuwaeが、プミラの変種とされました。これにより、変種スパルサ、変種オウクワエ、変種プミラが誕生しました。変種プミラは変種スパルサと変種オウクワエが出来たことにより、その2変種と区別するために出来た名前です。これはプミラに限らず、変種が出来ると自動的に区別するための変種が出来る決まりとなっています。
先ずは基調種である変種プミラの来歴を見てみましょう。いや、先程プミラの学名は見たじゃないかと思われるかもしれませんが、3変種を含んだプミラ全体に対する学名でした。変種プミラは他の変種を含まないため、Tulista pumilaとTulista pumila var. pumilaは同じではないということです。変種プミラの異名は私が確認しただけで23もありました。さすがにすべて書くのも意味がなさそうですから、代表的な異名であるマルガリティフェラ系のみの来歴を見てみましょう。
1840年にはツリスタ属を提唱した
Constantine Samuel Rafinesqueの名前が見えます。この時、ツリスタ属は認められませんでしたが、2013年にGordon Dougles Rowleyがツリスタ属を復活させました。また、この他にも、semimargaritifera系、granata系、semiglabrata系、subalbicans系、papillosa系、corallina系が存在しました。

1753年 Aloe pumila var. margaritifera L.
1768年 Aloe margaritifera (L.) Burm.f.
1811年 Apicra margaritifera (L.) Willd.
1819年 Haworthia margaritifera (L.) Haw.
1840年 Tulista margaritifera (L.) Raf.
1891年 Catevala margaritifera (L.) Kuntze

変種スパルサと変種オウクワエの学名は、最初はハウォルチア属の独立種でしたが、やがてツリスタ属となりプミラの変種とされました。

2006年 Haworthia sparsa M.Hayashi
              Haworthia ohkuwae M.Hayashi
2016年 Tulista pumila var. sparsa
                             (M.Hayashi) Breuer
              Tulista pumila var. ohkuwae
                             (M.Hayashi) Breuer

そう言えば、入手時の名札には"Tulista ohkuwai"とありました。オウクワ"エ"ではなく、オウクワ"イ"です。ネットで検索しても、販売されているものはオウクワイが多いようです。これは、種小名が人名から来ていた場合、語尾が男性なら「-i」、女性なら「-ae」をつけるためです。しかし、人名の末尾が「-a」で終わる場合は、男女関係なく「-e」をつけることになっているため、"ohkuwai"は間違いで"ohkuwae"が正しい学名となります。



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私は多肉植物が好きで、色々育てたり調べたりしてブログに記事を書いたりしていますが、育てている多肉植物はそのほとんどがアフリカ原産です。アフリカ原産と言えば、多肉質のユーフォルビア(Euphorbia、オベサやホリダなど、ユーフォルビアは世界中に生えるが多肉植物は南アフリカとマダガスカルに多い)、パキポディウム(Pachypodium)、ハウォルチア(Haworthia, Haworthiopsis)、ガステリア(Gasteria)、アロエ(Aloe)、亀甲竜(Dioscorea elephantipes)、ボウィエア(Bowiea)などが私が育てている多肉植物です。その他にも、メセン(ConophytumやLithopsなど)、アデニア(Adenia)、オペルクリカリア(Operculicalya)、ガガイモ(Huerniaなど)、サンセベリア(Sansevieria)、クラッスラ(Curassula、アフリカ以外にも自生するが南アフリカに多い)など、アフリカは多肉植物の宝庫です。次いで多肉植物が多いのはアメリカ大陸です。サボテンは北米から南米まで分布しますし、アガヴェ(Agave)やフォウクィエリア(Fouquieria)、ディッキア(Dickia)、エケベリア(Echeveria)、シンニンギア(Sinningia、断崖の女王)もそうです。ということで、大抵の多肉植物はアフリカ大陸かアメリカ大陸原産ということになります。

しかし、多肉植物が生える砂漠や乾燥地帯は、アフリカや南北アメリカだけではありません。普段あまり意識されませんが、中央アジアには巨大な乾燥地帯と砂漠が存在します。中国北部の黄土地帯からモンゴルのゴビ砂漠、タリム盆地、タクラマカン砂漠からトルファン、さらにアラブ世界に至るシルクロード…、とてつもなく広大な乾燥地帯が広がっています。当然ながら乾燥地帯に適応した独特と植物も沢山自生しているわけです。ところが、何故か中央アジアの乾燥地帯の植物はあまり知られていません。私は興味がありましたから、少しずつ本を集めています。ということで、アジアの乾燥地帯の植物についての本の紹介と、アジアの乾燥地帯の植物についてのお話をさせていただきます。

DSC_1753
まず紹介するのは、2003年に研成社から出版された『砂漠化と戦う植物たち ━がんばる低木━』です。主に内蒙古など中国北部の乾燥地帯の植物について書かれています。アジアの乾燥地帯の植物は、サボテンの様に高度に多肉化した植物や、バオバブやパキポディウムの様な塊茎植物は基本的にはないようです。どちらかと言えビャクシン(柏槙)のような地面を這う針葉樹など、ブッシュ状となる低木が多いみたいです。
これは、個人的には色々な可能性があると考えました。アフリカやアメリカ大陸原産の多肉植物は、熱帯や亜熱帯、あるいは砂漠で進化した植物です。しかし、アジアの乾燥地帯の植物は温帯や亜寒帯の植物です。中国北部など緯度的には内蒙古は、日本で言えば東北地方から北海道あたりと同じですから、基本的に寒冷で多肉植物の生育する環境とは言えないでしょう。また、乾燥するとは言え、放置すれば草原となる程度の雨は降ったりします。むしろ、乾燥以外の部分が重要なのかもしれません。例えば、乾燥地帯のその多くはいわゆる土砂漠で、一般に黄土と言われている乾燥した黄色い土で覆われています。これが、嵐で巻き上げられて黄砂として降り注ぎます。本の表紙は「小葉錦鶏児」という低木が、根が1メートルも浮き上がってしまっても育つ様子を示しています。このように、地形が変わってしまうことがまず問題です。低く這うの植物が多いのは、低く表面積を広くとる植物は砂が押さえられて舞いにくくなりますし、這うタイプの樹木は根も縦よりも横方向に伸ばす傾向がありましたから、砂を大地に縛り付けることができているのでしょう。しかし、昔より砂嵐が増えているということです。実際に砂漠化した地域が拡大しているそうです。これは、自動車の走行により植物が踏みつけられ、しかもあちこちに轍が出来て、植物の生育が妨げられていることがあります。さらに、過放牧により砂漠化が進行していることも判明しています。

読んでいて私が気になった植物をご紹介します。先ずは、スナヤナギ(沙柳、Salix psammophila)です。スナヤナギは低木状の柳で、地面から放射状に叢生して茂みを作ります。若い株はまるでメキシコのocotillo(Fouquieria)の茂みのようです。次に四合木(Tetraena mongolica)というハマビシの仲間です。中国に1種類しかない仲間で非常に珍しい植物です。氷河期の遺存植物らしく、もはや環境に適応出来なくなっている可能性があります。高さ60センチメートル程の小さな茂みを作りますが、細い枝からは多肉質の小さな葉を出し、まるでCeraria namaquensisの様な枝振りで、Cerariaとは異なり低く育つ姿は非常に面白く見えます。


DSC_1758
次は1998年に中公新書から出版された『砂漠化防止への挑戦 緑の再生にかける夢』です。内蒙古の毛烏素砂漠で、砂漠の研究をしている研究者の記録です。砂漠の緑化は批判されることがあります。それは、元々あった砂漠という環境を破壊するからです。しかし、内蒙古では砂漠化は人為的に起きていますから、やはり人為的に砂漠化を防止しなければなりません。一度砂漠化してしまうと、土壌を大地に押さえつけていた植物が消えることにより、砂が舞って移動してしまい植物すら生えることが出来ない砂漠がどんどん広がってしまいます。人間の活動により砂漠化が起きて、その砂漠化により人間が住めなくなり、他の生物も住めなくなるわけですから、対策が必要です。
砂漠と一口に言っても様々な環境があります。流動砂丘は砂が常に動き回りますから育つ植物を選びます。
毛烏素砂漠では沙蒿というヨモギの仲間の植物が生えます。根が深く砂が移動してしまっても、根がむき出しになっても耐えられます。砂蒿が砂を固定すると、やがて他の植物も生えてきますが、そうなると沙蒿はお役御免でやがていなくなります。砂漠でも遷移がおきるわけです。砂が移動しなくなると、臭柏というビャクシンが生えてきます。地面を這うように、まさに砂地を覆うように放射状に枝を伸ばします。

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2007年に岩波ジュニア新書の『砂漠化ってなんだろう』です。ジュニア新書は児童向けというわけではなく高校生位を対象にしています。ある程度は持説が入ってくる岩波新書とは異なり、ジュニア新書は入門書ですからニュートラルなものが多いように思われます。本書も砂漠化の仕組みや砂漠植物の生態についての詳しい解説があります。また、塩害についての非常に詳しい解説もあります。
内蒙古ではまったく雨が降らないわけではないため、実験的に柵で家畜や車が入れない様にしただけで、猛烈な勢いで植物が生えてくるそうです。そういう意味において、砂漠化の拡大阻止は他の砂漠地域よりは簡単に出来そうです。ただし、中央アジアの乾燥地帯で厄介なのは、その塩分濃度の高さです。中央アジアは広くしかも盆地状なので、川があっても水が海まで到達しません。雨が降った時だけ出現する涸れ川(ワジ)が多いのですが、砂漠の塩分を溶かしながら流れ、やがて砂漠に消えます。このようなことが毎年続きますから、やがて川の終点に塩分が集積して塩の結晶が出来たりします。そのため、大なり小なりの耐塩性がないと、「青菜に塩」の如く萎れてしまい育ちません。

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次は研成社が1998年に出版された『シルクロードに生きる植物たち』です。近年、中国政府の人権侵害により大変な国際問題と化している新疆ウイグル自治区ですが、このかつてのシルクロードのど真ん中を植物学者が一周した記録となっております。

新疆の代表的な植物はギョリュウ(御柳、タマリクス、Tamarix chinensis)です。日本では江戸時代から知られており、高さ7メートル程になる樹木です。ギョリュウは非常に耐塩性が高く、塩腺という器官から塩分を排出出来ます。なんと、8%もの塩分を含む塩傷地でさえもギョリュウを栽培することに成功しているそうです。ギョリュウに限らず、新疆に生える植物は耐塩性が高いことが特徴と言えます。著者も塩が吹き出して白くなった大地に生える、多くの植物を観察しています。個人的に興味深いのはマオウ(麻黄、Ephedra)です。エフェドリンという成分を含み、麻黄湯などとして風邪のひき始めに使用したりします。マオウは一見して葉がなく、多肉質の棒状の茎を持つ緑色のブッシュです。実はマオウはソテツやイチョウと同じ裸子植物ですから、非常に古い時代に出現した植物の生き残りと言えます。一度、育ててみたい植物です。

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最後にトンボ出版より1996年に出版された中国天山の植物』です。フルカラーの贅沢な大型版の本で、天山山脈周辺の美しい風景を含む素晴らしい写真が満載です。天山山脈ですから高山植物の写真も沢山ありますが、天山山麓の塩生荒原や礫だらけのゴビ砂漠の砂漠植物も多く掲載されています。乾燥に耐えるために、葉を小さくあるいは完全に失った種が見られます。

美しい写真を見ていて、大変良いと感じたのはScorzonera muriculataです。高さ50センチメートル程度の多年草で、葉はほとんどなく、枝分かれしたトゲ状の緑色の枝が、非常に密に絡まる様子が美しい。実はキク科で黄色い小さなタンポポの様な花が咲き、やがて綿毛のついた種が出来ます。
次はLycium ruthenicum(黒果枸杞)というナス科の植物です。高さ20-150センチメートルの灌木で、白くトゲのある枝から多肉質の小さな葉を沢山出します。
次はIljinia regeliiは高さ50センチメートル程度のアカザ科の半灌木です。小さなソーセージ形の多肉質の葉を密に出す面白い植物です。
その他にも葉が退化した茎で光合成する多肉質の植物が沢山あります。アカザ科のAnabasis aphylla(無葉仮木賊)、Haloxylon ammodendronがなかなか面白い植物です。Anabasis aphyllaは高さ20センチメートル程度の半灌木です。茎は緑色の節があり非常に形良く叢生します。観賞価値が高そうな植物ですが、殺虫成分を含み食べると非常に毒性が高いと言います。Haloxylon ammodendronは高さ9メートルになる亜高木で、節のある細い茎が紐の様に伸びます。耐塩性が高く砂丘の固定を目的として植林されているそうです。

最後にAtraphaxis spinosaという高さ20-60センチメートルのタデ科の小灌木です。枝先には鋭いトゲがあり、丸く小さい多肉質の葉が茎に沢山出ます。カナボウノキの仲間(亜流木など)のミニチュアのようで面白い雰囲気です。

以上で中央アジアの乾燥地帯の植物についての話は終了します。しかし、以上で挙げさせていただいた植物はあまりに馴染みがないもので、ネットで検索しても画像が皆無というものが多いでしょう。ギョリュウやマオウは国内でも販売されていますが、それ以外は入手が不可能だと思われます。貴重な砂漠植物が盗掘されるようでは困りますから、輸入されないことは悪いことではありませんが、防砂を目的として苗を人工的に栽培されているものなどは、その園芸的な価値について一考しても良いのではないかと私は思いました。記事ではいくつかの中央アジアの乾燥地に生える多肉植物を少しご紹介しました。しかし、現在までほとんど知られおらず、一般向けの本も潤沢とは言いがたいと思います。昔から気にはなっている分野ですので、もう少し本を探ってみたいと思っています。




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中国天山の植物
建美, 清水
1996-03-20


Gymnocalycium esperanzaeは2011年に命名された、割と発見が新しいサボテンです。しかし、G. esperanzaeの命名者であるRadomír Řepkaが2012年に発表した『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』という論文では、交雑種の可能性があるという指摘をしています。

DSC_1747
Gymnocalycium esperanzae

論文では遺伝子解析をしていますが、その前にギムノカリキウムの分類について簡単に説明します。ギムノカリキウム属の分類は必ずしも統一見解があるわけではないようですが、ギムノカリキウム属全体の遺伝子を解析した2011年のPablo H.Demaioの論文『MOLECULAR PHYLOGENY OF GYMNOCALYCIUM (CACTACEAE) : ASSESSMENT OF ALTERNATIVE INFRAGENERIC SYSTEMS, A NEW SUBGENUS, AND TRENDS IN THE EVOLUTION OF THE GENUS』によると、以下の様な分子系統となっているようです。ギムノカリキウム属は7亜属に分けられています。今まではギムノカリキウム属は種子の特徴から分類されてきましたが、遺伝子解析の結果と一致していました。ちなみに、このDemaioの論文はŘepkaも参照としています。

            ┏━━Subgenus Gymnocalycium
        ┏┫
    ┏┫┗━━Subgenus Trichomosemineum
    ┃┃
┏┫┗━━━Subgenus Macrosemineum
┃┃
┃┗━━━━Subgenus Scabrosemineum

┫┏━━━━Subgenus Muscosemineum
┣┫
┃┗━━━━Subgenus Pirisemineum

┗━━━━━Subgenus Microsemineum

さて、それでは『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』の内容に戻ります。種子の特徴からは、G. esperanzaeはScabrosemineum亜属とされます。Scabrosemineum亜属の種子は0.6-1mmと小さく褐色、植物はしばしば大型で根はnapiform(かぶら状)とされています。
しかし、著者はG. esperanzaeは、G. bodenbenderianumとG. castellanosiiの自然交雑種ではないかと推測しています。G. castellanosiiはScabrosemineum亜属ですが、G. bodenbenderianumはTrichomosemineum亜属であり、驚くべきことにあまり近縁ではありません。G. castellanosiiとG. bodenbenderianumは広い分布域を持ちますが、その分布が重なる点にG. esperanzaeが生じているようです。
しかし、自然交雑は植物の進化において一般的なこと(Ellstrand et al.2008)であり、環境に適応して種分化の機会を生み出す力である(Anderson 1949, Arnold 1997, Rieseberg 1995, 1997, Rieseberg & Carney 1998)とする意見が多いそうです。サボテン科の進化には、自然交雑による倍数体化(遺伝子が重複)が重要とされています(Friedrich 1974, Pinkava 2002, Machado 2008, Mottram 2008)。ですから、G. esperanzaeはただの雑種ではなく、新種が生まれつつあるのかも知れないということです。交雑自体は割と新しく起きた可能性があります。

では、実際の①G. castellanosii(subsp. armillatum)、②G. esperanzae、③G. bodenbenderianumの特徴を比較してみましょう。

種                   ①                ②                ③
根                   枝分かれ    かぶら状    かぶら状
中央の棘       1-3本           0本              0本
若い棘           黒                黒                 褐色
雄しべ           ピンク        淡い緑色     淡い緑色
種子の形       丸~卵形    丸~卵形     帽子形
種子の色       黒                黒                 褐色
種子の光沢   +                  +                   +++    
種子の表面   少し凸状    少し凸状     平ら
Elaiosome    -                -                  +

G. esperanzaeの種子の特徴はG. castellanosiiと似ていますから、Scabrosemineum亜属とされたわけですが、根や棘、雄しべの色はG. bodenbenderianumに似ています。しかし、遺伝子解析の結果ではG. bodenbenderianum、G. ochoterenae、quehlianum、G. intertextumなどのTrichomosemineum亜属と近縁であることがわかりました。
つまり、伝統的な種子の分類ではScabrosemineum亜属なのに、遺伝子的にはTrichomosemineum亜属であるということです。面白いですね。
ちなみに、Elaiosomeとは種子に付いている蟻を呼ぶための栄養分のことです。これはサボテンに限らず植物の種子に広く見られるもので、蟻がElaiosomeを目的に種子を巣に運び込みます。種子は土中に入ることにより発芽しやすくなります。
生態的にはG. bodenbenderianumは砂質の平野部の低木の陰に生えますが、G. castellanosiiは低い丘の荒い砂利状に生えます。G. esperanzaeは丘や山の尾根、岩や砂利質など、G. castellanosiiに近いということです。

以上でGymnocalycium esperanzaeについての論文紹介は終了です。種子の特徴からはScabrosemineum亜属ですが、遺伝的にはTrichomosemineum亜属というちぐはぐさからは、確かに交雑を疑いたくなります。しかし、遺伝子解析も2種類の遺伝子をみただけですから、交雑を調査するための解析はしていません。ですから、まだこの結論は確実とは言えないでしょう。まだ、議論すべき点は残っているように思われます。


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2021年に開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、あまり見かけないギムノカリキウムを入手しました。ラベルには「Gymnocalycium esperanzae VoS 1791」とありました。どうやら輸入物ということですが、どう見ても実生苗ですから海外のファームで播種されたもののようです。あまり情報はないようですから、少し調べてみました。

DSC_1746

名札には「VoS 1791」とあります。これは、フィールド・ナンバーと言って、採取情報がわかります。調べてみましたが、"VoS"は採取人の名前の略で、この場合は「Volker Schädlich」の略です。VoSナンバーは略されがちですから、「VoS 1791」では調べても詳細はわからない可能性が高いので、Gymnocalycium esperanzaeのフィールド・ナンバーの一覧を見てみました。そしてヒットしたのが、"VoS 14-1791"です。

Field number: VOS 14-1791
Collector: Volker Schädlich
Species: Gymnocalycium esperanzae
Locality: Corral de Isaac, La Rioja, Argentina
Altitude: 519m
Date: 2014


フィールド・ナンバーを調べると、採取人や採取地点などの情報がわかります。場合によっては、高度や採取年月日も記載されています。

次にGymnocalycium esperanzaeの学名を調べてみました。学名は2011年に命名されたGymnocalycium esperanzae Řepka & Kulhánekです。命名者は正確には、Radomír Řepka & Tomáš Kulhánekのことです。どうやら、論文の記載に際して"TOM 09-436/1"(=RER 434)というフィールド・ナンバーの個体を元にしたようです。早速、調べてみました。

Field number: TOM 436.1
Collector: Tomáš Kulhánek
Species: Gymnocalycium esperanzae
Locality: W of Nuevo Esperanza, La Rioja, Argentina

エスペランザエという種小名は、"
Nuevo Esperanza"という地名から来ていることがわかります。

しかし、Gymnocalycium esperanzaeは産地によっては白い粉に覆われます。Gymnocalycium esperanzaeは生息域が狭い割に、個体差が大きいとされているようです。
このように色々と情報を漁っていたところ、エスペランザエに関する面白い論文を見つけました。その内容は明日、記事にする予定です。議論を呼ぶ内容で大変興味深いものです。



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昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑭Haworthiopsis scabra
                (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia scabra Haw., 1819
→Aloe scabra (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala scabra (Haw.) Kuntze, 1891

変種スカブラ
Haworthiopsis scabra var. scabra

異名
Haworthia tuberculata Poelln., 1931
→Haworthia scabra var. tuberculata
                              (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia scabra var. johanii M.Hayashi, 2001
→Haworthia johanii (M.Hayashi) Breuer, 2010
→Haworthiopsis scabra var. johanii
                                     (M.Hayashi) Breuer, 2016

変種モリシアエ
Haworthiopsis scabra var. morrisiae
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia morrisiae Poelln., 1937
→Haworthia scabra var. morrisiae
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

変種スタルキアナ
Haworthiopsis scabra var. starkiana
                       (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia starkiana Poelln., 1933
→Haworthia scabra subsp. starkiana
                        (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthia scabra var. starkiana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

変種ラテガニアエ
Haworthiopsis scabra var. lateganiae
                     (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia lateganiae Poelln., 1937
→Haworthia starkiana var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

DSC_1595
Haworthiopsis scabra

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Haworthiopsis scabra var. starkiana

⑮Haworthiopsis sordida
                  (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia sordida Haw., 1821
→Aloe sordida (Haw.)
              Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala sordida (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia scabra var. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia scabra subsp. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997

変種ソルディダ
Haworthiopsis sordida var. sordida
異名
Haworthia agavoides
                  Zantner & Poelln., 1938
→Haworthiopsis sordida var. agavoides
   (Zantner & Poelln.) Breuer, 2016

変種ラブラニ
Haworthiopsis sordida var. lavrani
                   (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia sordida var. lavrani
                                   C.L.Scott, 1981
→Haworthia scabra var. lavrani
                    (C.L.Scott) Halda, 1997
→Haworthia lavrani
              (C.L.Scott) Breuer, 2010

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Haworthiopsis sordida

⑯Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala tessellata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997

変種テセラタ
Haworthiopsis tessellata var. tessellata

異名
Haworthia engleri Dinter, 1914
Haworthia parva Haw., 1824
→Aloe parva (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia pseudotessellata Poelln., 1929
Haworthia pseudogranulata Poelln., 1937
Haworthia minutissima Poelln., 1939
Haworthia tessellata var. coriacea
                              Resende & Poelln., 1942
Haworthia coriacea
               (Resende & Poelln.) Breuer, 2010

変種クロウシイ
Haworthiopsis tessellata var. crousii
        (M.Hayashi) Gildenh. & Klopper,2016
異名
Haworthia crousii M.Hayashi, 2001


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Haworthiopsis tessellata

⑰Haworthiopsis venosa
               (Lam.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe venosa lam., 1783
→Haworthia venosa (Lam.) Haw., 1821
→Catevala venosa (Lam.) Kuntze, 1891
Aloe recurva Haw., 1804
→Apicra recurva (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia venosa subsp. recurva
                            (Haw.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia recurva (Willd.) Haw., 1812 
→Catevala recurva (Willd.) Kuntze, 1891
Aloe tricolor Haw., 1804
→Apicra tricolor (Haw.) Willd., 1811
Aloe anomala Haw., 1804
→Apicra anomala (Haw.) Willd., 1811
Haworthia distincta N.E.Br., 1876

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Haworthiopsis veonosa

⑱Haworthiopsis viscosa
         (L.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Aloe viscosa L., 1753
→Apicra viscosa (L.) Willd., 1811
→Haworthia viscosa (L.) Haw., 1812
→Catevala viscosa (L.) Kuntze, 1891
→Tulista viscosa (L.) G.D.Rowley, 2013
Aloe triangularis Lam., 1783

変種ヴィスコサ
Haworthiopsis viscosa var. viscosa

異名
Aloe triangularis Medik., 1784
Aloe rigida Ker Gawl., 1810
Apicra tortuosa Willd. 1811
Aloe pseudotortuosa Salm-Dyck, 1817
Haworthia pseudotortuosa Haw., 1819
Haworthia asperiuscula Haw., 1819
→Aloe asperiuscula
              (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala asperiuscula
                        (Haw.) Kuntze, 1891

→Haworthia viscosa f. asperiuscula
                         (Haw.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa
                        var. asperiuscula

                            (Haw.) Breuer, 2016
Haworthia concinna Haw., 1819
→Aloe concinna
            (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia cordifolia Haw., 1819
→Aloe cordifolia
          (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala cordifolia (Haw.) Kuntze, 1891
Haworthia indurata Haw., 1821
→Aloe indurata
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia torquata Haw., 1826 publ. 1827
→Aloe torquata 
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subtortuosa
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia tortuosa Sweet, 1830
Haworthia beanii G.G.Sm., 1944
→Aloe viscosa f. beanii
                        (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa var. beanii
                           (G.G.Sm.) Breuer, 2016
Haworthia viscosa f. subobtusa
                          (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia viscosa subsp. derekii-clarkii
                                              Halda, 1998


変種ヴァリアビリス
Haworthiopsis viscosa var. variabilis
          (Breuer) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia viscosa var. variabilis
                                         Breuer, 2003
→Haworthia variabilis
                         (Breuer) Breuer, 2010
→Haworthiopsis variabilis
                          (Breuer) Zonn., 2014


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Haworthiopsis viscosa

⑲Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016

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Haworthiopsis woolleyi

以上がハウォルチオプシス属、全19種類です。異名が多いのは属名が変わったからだけではなく、同種に異なる学名がつけられたことが原因の1つです。それは、産地ごとの外見的な違いを別種と判断したこともあるのしょう。ただし、それが遺伝的に異なるとは限らず、環境が厳しいので育ちが悪いだけだったりもしますから、間違いも起こりやすくなります。また、記事を読んでいただけたならお分かりの様に、活発に命名されたのが1800年代と古いことがわかります。当然ながら現在と異なりネットで情報をやり取り出来ません。ですから、情報収集も不完全で遅くなります。例えば、イギリスの雑誌に発表された論文が、フランスやドイツ、アメリカに届くまでタイムラグがあります。しかも、紙の出版物ですから、世界中の学術誌をすべて収集は困難ですから、すべての論文を確認して命名することもまた困難となります。これらのことから、当時からあったであろう混乱が現在にまで及んでいたりします。非常に困った問題です。



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昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑤Haworthiopsis glauca
              (Baker) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia glauca Baker, 1880
→Catevala glauca (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997

変種グラウカ
Haworthiopsis glauca var. glauca
異名
Haworthia carrissoi Resende, 1941

変種ヘレイ
Haworthiopsis glauca var. herrei
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia herrei Poelln., 1929

→Haworthia glauca var. herrei
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia reinwardtii var. herrei
                                 (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia armstrongii Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. armstrongii
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
Haworthia jacobseniana Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jacobseniana
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia jonesiane Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jonesiane
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia eiyae Poelln., 1937

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Haworthiopsis glauca var. herrei

⑥Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra subsp. granulata
                             (Marloth) Halda, 1997

変種スコエマニイ
Haworthiopsis granulata var. schoemanii
                      (M.Hayashi) Breuer, 2016
異名
Haworthia schoemanii M.Hayashi, 2003

⑦Haworthiopsis henriquesii (Resende)
         Gideon F.Sm. & Vasco Silva, 2019

異名
Haworthia henriquesii Resende, 1941


⑧Haworthiopsis koelmaniorum
                        (Oberm. & D.S.Hardy)
                Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia koelmaniorum
                              Oberm. & D.S.Hardy, 1976
→Haworthia limifolia var. koelmaniorum
                (Oberm. & D.S.Hardy) Halda, 1997
→Tulista koelmaniorum
       (Oberm. & D.S.Hardy) G.D.Rowley, 2013

変種ムクムルトリイ
Haworthiopsis koelmaniorum
                   var. mucmurtryi
               (C.L.Scott) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia mucmurtryi C.L.Scott, 1984
→Haworthia koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 1999
→Tulista koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013
→Haworthiopsis mucmurtryi
                           (C.L.Scott) Zonn, 2014

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Haworthiopsis koelmaniorum

⑨Haworthiopsis limifolia
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia limifolia Marloth, 1910


変種リミフォリア
Haworthiopsis limifolia var. limifolia

異名
Haworthia marlothiana Resende, 1940
Haworthia limifolia var. striata
                  Pilbeam, unknown publication
→Haworthiopsis limifolia var. striata
                               (Pilbeam) Breuer, 2016

変種ウボンボエンシス
Haworthiopsis limifolia var. ubomboensis
                           (I.Verd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia ubomboensis I.Verd., 1941
Haworthia keithii
                  (G.G.Sm.) M.Hayashi, 2000

変種ギガンテア
Haworthiopsis limifolia var. gigantea
                (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. gigantea
                                      M.B.Bayer, 1962
→Haworthia gigantea
               (M.B.Bayer) M.Hayashi, 2000

変種グラウコフィラ
Haworthiopsis limifolia var. glaucophylla
                            (M.B.Bayer) Breuer, 2010
異名
Haworthia limifolia var. glaucophylla
                                            M.B.Bayer, 2003
→Haworthia glaucophylla
                             (M.B.Bayer) Breuer, 2010

変種アルカナ
Haworthiopsis limifolia var. arcana
            (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                 G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. arcana
           Gideon F.Sm. & N.R.Crouch, 2001
→Haworthia arcana
       (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                     Breuer, 2013

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Haworthiopsis limifolia

⑩Haworthiopsis longiana
                 (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia longiana Poelln., 1937

→Haworthia pumila subsp. longiana
                                   (Poelln.) Halda, 1997

⑪Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Catevala nigra (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia viscosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1998

変種ニグラ
Haworthia nigra var. nigra
異名
Haworthia schmidtiana Poelln., 1929
→Haworthia schmidtiana
              var. elongata Poelln., 1938
→Haworthiopsis nigra var. elongata
                    (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
Haworthia ryneveldii Poelln., 1939
Haworthia nigra f. angustata
                         (Poelln.) Pilbeam, 1983

変種ディヴェルシフォリア
Haworthiopsis nigra var. diversifolia
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia diversifolia Poelln., 1937

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Haworthiopsis nigra

⑫Haworthiopsis pungens
                   (M.B.Bayer)
       Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia pungens M.B.Bayer, 1999
Tulista pungens (M.B.Bayer)
                           G.D.Rowley, 2013

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Haworthiopsis pungens

⑬Haworthiopsis reinwardtii
      (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe reinwardtii Salm-Dyck, 1821
→Haworthia reinwardtii
                (Salm-Dyck) Haw., 1821
→Catevala reinwardtii
             (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

変種レインワルドティイ
Haworthiopsis reinwardtii var. reinwardtii
異名
Haworthia reinwardtii var. zebrina
                                      G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. zebrina
                 (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1977

変種ブレビクラ
Haworthiopsis reinwardtii var. brevicula
                       (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia reinwardtii var. brevicula
                                         G.G.Sm., 1944
→Haworthia brevicula
                         (G.G.Sm.) Breuer, 2010

品種オリバケア
Haworthiopsis reinwardtii f. oliviacea
            (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. oliviacea
                                          G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. oliviacea
                                       M.B.Bayer, 1976
→Haworthia oliviacea
                        (G.G.Sm.) Breuer, 2010
→Haworthiopsis reinwardtii var. oliviacea
                            (G.G.Sm.) Breuer, 2019

品種カルムネンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. chalumnensis
        (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. chalumnensis
                               G.G.Sm., 1943
→Haworthia reinwardtii f. chalumnensis
          (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

品種カフィルドリフテンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016  
異名
Haworthia reinwardtii var. kaffirdriftensis
                               G.G.Sm., 1941
→Haworthia reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

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Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

本日はここまで。異名が非常に多いため、どうしても記事が長くなってしまいます。明日に続きます。


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多肉植物は沢山の種類があり、様々な分類群に所属します。そのため、多肉植物の種類は何種類あるのか、膨大過ぎてよく分かりません。しかし、1つのグループ=属レベルならば、調べることも可能です。
というわけで、私は今までオペルクリカリア属(Operculicarya)やダシリリオン属(Dasylirion)、フォウクィエリア属(Fouquieria)、アストロロバ属(Astroloba)について、果たして何種類あるのかを記事にしてきました。最近、ハウォルチオプシス属(Haworthiopsis)について書かれた論文を読んでいたところ、硬葉系ハウォルチアと呼ばれていたハウォルチオプシス属は18種類と書かれていました。その程度の種類なら調べられますし、論文が書かれた2016年から6年経って種類数は変わったのか興味があります。ということで、果たしてハウォルチオプシス属は何種類あるのかを、記事にしてみました。

先ずは、ハウォルチオプシス属が誕生するまでの経緯を見てみましょう。
スウェーデンのCarl von Linneによって現在使われる二名式学名というシステムが作られたのが、1753年のことでした。このときはハウォルチオプシス属はまだ存在せずに、最初はアロエ属でした。その後、1809年にフランスのHenri August Duvalによりハウォルチア属が創設され、ハウォルチオプシス属もハウォルチア属とされました。日本ではあくまで園芸上での話ですが、ハウォルチア属を軟葉系と硬葉系に分けています。軟葉系は現在のハウォルチア属で、硬葉系は現在のハウォルチオプシス属とツリスタ属に相当します。
ちなみに、1786年にドイツのFriedrich Kasimir Medikusにより創設されたカテバラ属、1811年にドイツのCarl Ludwig Willdenowにより創設されたアピクラ属という属もありましたが、アロエ属やハウォルチオプシス属の一部からなるグループでしたが、現在では存在しない属名です。
1840年にオスマン帝国生まれでアメリカで活動した
Constantine Samuel Rafinesqueがツリスタ属を提唱しましたが認められませんでした。しかし、2013年にイギリスのGordon Douglas Rowleyはハウォルチア属を解体し3属に分けました。解体されたハウォルチア属は、ハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、ツリスタ属となり、忘れ去られていたツリスタ属は79年の年月を経てついに日の目を見ました。このとき、ツリスタ属にはアストロロバ属やハウォルチア属の一部も含まれていたので、ハウォルチオプシス属はツリスタ属とされた異名を持つ種類も存在します。現在ではツリスタ属は4種類まで減少し、含まれていたハウォルチア属はハウォルチオプシス属とされました。この時、ツリスタ属からハウォルチオプシス属への移動は、南アフリカのJames Boatwright & John C. Manningや、同じく南アフリカのSean D. Gildenhuys & Ronell R. Klopperによるものです。この南アフリカの研究者たちは、遺伝子解析という新しい武器により、次々と新しい見解を公表しており目が離せません。

ハウォルチオプシス属の経緯
1753年 Aloe L.
1786年 Catevala Medik.
1809年 Haworthia Duval
1811年 Apicra Willd.
1840年 Tulista Raf.
2013年 Haworthiopsis G.D.Rowley

それでは、いよいよハウォルチオプシス属の種類を見ていきます。最初に言ってしまうと、現在学術的に認められているハウォルチオプシス属は19種です。最新の情報では、Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされました。これからも、ハウォルチオプシス属は増える可能性はあるのでしょうか?
また、異名もすべてを網羅できているのかは分かりませんが、できただけ盛り込みました。あと、変種に対する異名も調べました。異名が多い種類では、場合によっては異名で流通している種もあるでしょうから、自分の育てているハウォルチオプシスは正式な学名か見比べて見ると異なるかもしれません。また、学名は変更されてきた経緯からわかります通り不変のものではなく、常に見直され改定を受けるものです。この記事の一覧も、やがて古くなり通じなくなるのでしょう。


①Haworthiopsis attenuata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe attenuata Haw., 1804
→Apicra attenuata (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia attenuata (Haw.) Haw., 1812
→Catevala attenuata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthiopsis attenuata (Haw.) 1997


変種アテヌアタ
Haworthiopsis attenuata var. attenuata

異名
Aloe redula Ker Gawl., 1807
Aloe subulata Salm-Dyck, 1822
→Haworthia subulata (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala subulata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
Haworthia clariperla Haw., 1827 publ. 1828
→Haworthia attenuata f. clariperla
                        (Haw.) M.B.Bayer, 1976
Aloe clariperla Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subattenuata
        Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subattenuata
(
Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subattenuata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891
Haworthia tisleyi Baker, 1880
→Catevala tisleyi (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia argyrostigma Baker, 1896
Haworthia britteniana Poelln., 1937
Haworthia attenuata f. caespitosa
                  (A.Berger) Pilbeam, 1983

変種グラブラタ
Haworthiopsis attenuata var. glabrata
                (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2015

異名
Aloe glabrata Salm-Dyck, 1834
→Haworthia glabrata
                       (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala glabrata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
→Haworthia attenuata var. glabrata
               (Salm-Dyck) M.B.Bayer, 2012
Aloe redula Jacq., 1804
→Apicra redula (Jacq.) Willd., 1811
→Haworthia redula (Jacq.) Haw., 1812
→Catevala redula (Jacq.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. redula
                                  (Jacq.) Halda, 1997
→Haworthia attenuata var. redula
                          (Jacq.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia attenuata var. redula
                         (Jacq.) G.D.Rowley, 2015
Aloe rugosa Salm-Dyck, 1834
→Haworthia rugosa (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala rugosa (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

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Haworthiopsis attenuata

②Haworthiopsis bruynsii
          (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia bruynsii M.B.Bayer, 1981
→Haworthia retusa var. bruynsii
                    (M.B.Bayer) Halda, 1997


③Haworthiopsis coarctata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia coarctata Haw., 1824
→Aloe coarctata
                     (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala coarctata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Breuer, 2016

変種コアルクタタ
Haworthiopsis coarctata var. coarctata
異名
Haworthia greenii Baker, 1880
→Catevala greenii (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia coarctata var. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia reinwardtii var. greenii
                                          (Baker) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. greenii
                                         (Baker) Breuer, 2016
Haworthia peacockii Baker, 1880
→Catevala peacockii (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia chalwinii Marloth & A.Berger, 1906
→Haworthia coarctata f. chalwinii
               (Marloth & A.Berger) Pilbeam, 1983
Haworthia fallax Poelln., 1932
Apicra bicarinata Resende, 1937
Haworthia resendeana Poelln., 1938
→Haworthiopsis resendeana
                   (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016
Haworthia fulva G.G.Sm., 1943
Haworthia baccata G.G.Sm., 1944
Haworthia musculina G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctatoides
                                 Resende & Viveiros,1948
Haworthia coarctata f. conspicua
                        (Poelln.) Pilbeam, 1983 

変種テヌイス
Haworthiopsis coarctata var. tenuis
                        (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                              G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctata var. tenuis
                         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1973
Haworthia tenuis (G.G.Sm.) Breuer, 2010
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                (G.G.Sm.) Breuer, 2016

変種アデライデンシス
Haworthiopsis coarctata var. adelaidensis
                           (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. adelaidensis
                                                     Poelln., 1940
→Haworthia coarctata subsp. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. bellula
                                (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthia coarctata var. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia adelaidensis
                                     (Poelln.) Breuer, 2010

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Haworthiopsis coarctata

④Haworthiopsis fasciata
                    (Willd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Apicra fasciata Willd., 1811
→Haworthia fasciata (Willd.) Haw., 1821
→Aloe fasciata (Willd.)
     Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Catevala fasciata (Willd.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. fasciata
                                      (Willd.) Halda, 1997

変種ファスキアタ
Haworthiopsis fasciata var. fasciata

異名
Aloe subfasciata
      Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891

変種ブロウニアナ
Haworthiopsis fasciata var. browniana
                (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia browniana Poelln., 1937
Haworthia fasciata f. browniana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976

DSC_1544
Haworthiopsis fasciata

どうやら記事が長過ぎるようで、文字入力時に変なタイムラグが発生するため記事を分割します。というわけで、続きます。しかし、異名が多い…



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逆鱗竜は南アフリカ原産の非常に丈夫なユーフォルビアです。ただし、引き締まった美しい姿を維持するのは中々困難なように思えます。
逆鱗竜はとにかく生長が早く、冬でも日中暖かいと生長を始めてしまいます。しかし、冬は日照が不足勝ちなので、節が伸びたようなだらしない姿になってしまいます。それだけならいいのですが、日照の多い真夏でも徒長してしまうので困っています。
一応、ホリダと同じように育てていますから、割と厳しめなはずなんですけどね。

DSC_1708
逆鱗竜の実生苗。こちらは真夏に徒長してしまいました。
幹の下部と比べて上部の鱗片が縦長になっています。無遮光で雨に当てない栽培ですが、週1回の水やりでもこうなってしまいました。それこそ、用土が完全に乾いたらではなく、限界まで水をやらない方がいいのかもしれません。


逆鱗竜の学名は1804年に命名されたEuphorbia clandestina Jacq.です。
分類学的には、ユーフォルビア属(Euphorbia)、アティマルス亜属(Subgenus Athymalus)、アンタカンタ節(Section Anthacanthae)、フロリスピナ亜節(Subsection Florispinae)、トレイシア列(Series Treisia)ということになります。トレイシア列と言えば、逆鱗竜
に良く似たE. bubalina(昭和キリン)、E. pubiplans、E. clava(式部)などが含まれます。

フロリスピナ亜節の分子系統(抜粋)
    ┏━━━━━━━━Series Meleuphorbia
    ┃
    ┃        ┏━━━━━E. pillansii
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┗━━━━━E. pseudoglobosa 2
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━━━━━E. pseudoglobosa 1
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗━━━━━E. mammillaris 2
    ┃┃
    ┣┫    ┏━━━━━E. heptagona 2
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━━E. heptagona 1
    ┃┣┫
┏┫┃┗━━━━━━E. susannae
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━━━E. clandestina
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━━━━E. pubiglans
┃┃
┃┃┏━━━━━━━E. bubalina 2
┃┃┃
┃┣╋━━━━━━━E. bubalina 1
┃┃┃
┃┃┗━━━━━━━E. clava
┃┃
┃┗━━━━━━━━Series Rhizanthium

┗━━━━━━━━━Series Hystrix

メレウフォルビア列(Series Meleuphorbia)とされた、E. heptagona(紅彩閣)、E. susannae(瑠璃晃)、E. pillansii、E. pseudoglobosa(稚児キリン)も分子系統では近縁であるように見えます。とても不思議です。



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今年はとんでもない猛暑があり、しかもそれがあまりに急だったため、十分に日差しに慣れていない多肉植物たちは大なり小なりダメージがあったようにも思われます。しかし、ようやく9月に入り日差しも心持ち優しくなり、涼しい日も出てまいりました。多肉植物たちも立ち直り、またようやく生長を開始するものもあります。そんな9月の多肉植物たちをご紹介します。

DSC_1714
矢毒キリン Euphorbia virosa
今年初めて生長開始しました。矢毒キリンのゴツいトゲも、出始めは鮮烈に赤く美しいものです。


DSC_1715
スバポダ Euphorbia subapoda
スバポダは塊根性ですが、まだまだ貧弱なので埋めたまま太らせ中です。葉の勢いは大変良いので、これからが楽しみです。再来年、植え替え予定です。

DSC_1712
闘牛角 Euphorbia schoenlandii
花芽がちらほら出てきました。冬型と言われる闘牛角ですが、夏越しは上手くいった模様です。


DSC_1721
魔界玉 Pachypodium rosulatum
                             subsp. makayense
赤い幹肌が特徴の魔界玉ですが、葉が繁り過ぎて見えません。生育が盛んで嬉しい限りです。


DSC_1722
ブレビカリクス Pachypodium brvycalyx
ブレビカリクスは小苗にしては巨大な葉が出ています。まだ苗ですが、パキポディウムも種類によって違いが見えてきて面白いものです。


DSC_1720
エブルネウム Pachypodium eburneum
エブルネウムはどうにもシャキッとしない感じです。


DSC_1730
女王錦 Aloe parvula
女王錦は購入時、真っ赤で中々元に戻りませんでした。購入時、おそらくは相当の寒さに当てていたのではないでしょうか。現在では赤みは抜け、生長しています。


DSC_1728
インファウスタ Euphorbia infausta
Euphorbia meloformis系とされるユーフォルビアですが、赤い花が咲いています。

DSC_1723
ディオーン・スピロヌス Dioon spironus
大型ソテツのディオーン・スピロヌスですが、5月以来の再フラッシュです。生長が良いので、来年は植え替える予定です。


DSC_1731
ザミア・フルフラケア Zamia furfuracea
7月に花芽が出てきてからはや2ヶ月。花茎が伸びていますが、完成形はよく分かりません。


DSC_1748
そう言えば、いつも※欄で貴重なご意見を戴いている多肉植物の大先輩におすすめされていた炭化鶏糞を撒いてみました。どうにも、色が良くない多肉がいくつかあるので、炭化鶏糞にはかなり期待しています。焼いてあるため鶏糞特有の嫌な臭いもなく、カビが生えたりしないということです。

そう言えば、19日は祝日ですが、五反田TOCで秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールが開催されます。私もフィールドナンバー付きの変わり種がないか見に行く予定です。面白いヘンテコな多肉植物があればいいのですが、さて今回はどうでしょうか? 当日の会場の様子をレポートしますからお楽しみに。



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パキポディウムには沢山の種類がありますが、その中でもロスラツム系は亜種が沢山あり一大グループを形成します。そんなロスラツム系の中でも亜種グラキリウスが人気で、現地球が盛んに輸入されています。最近では亜種カクチペスの実生苗も大型園芸店では、まれに販売されるようになりました。多肉植物の即売会に行けば亜種マカイエンセも入手は可能です。しかし、ロスラツムそのものである亜種ロスラツムは何故か話題に挙がりません。不思議です。まあ、単に流行りではないというだけかもしれませんけど。まあ、そんなロスラツムを入手した事もあり、とにかくそんなロスラツムについて少し調べてみました。

DSC_1718
Pachypodium rosulatum subsp. rosulatum

DSC_1719
やや縦長に育ちます。
ロスラツムの学名は1882年に命名されたPachypodium rosulatum Bakerです。マダガスカルのパキポディウムでは、一番早くに命名されました。

ロスラツムには亜種があります。
①カクチペスは1895年にPachypodium cactipes K.Schum.と命名されましたが、2004年にはロスラツム亜種のPachypodium rosulatum subsp. cactipes (K.Schum.) Lüthyとなりました。
②マカイエンセは2004年にPachypodium makayense Lavranosと命名されましたが、同年にロスラツム亜種のPachypodium rosulatum subsp. makayense (Lavranos) Lüthyとされました。
③グラキリウスは1934年にPachypodium rosulatum var. gracilius H.Perrierと命名されましたが、1999年にはPachypodium gracilius (H.Perrier) Rapan.、2004年にはPachypodium rosulatum subsp. gracilius (H.Perrier) Lüthyとされました。
④ビカラーは1997年にPachypodium bicolor Lavranos & Rapanarivoと命名されましたが、2004年にPachypodium rosulatum subsp. bicolor (Lavranos & Rapanarivo) Lüthyとされました。
⑤ベマラヘンセは2004年に命名されたPachypodium rosulatum subsp. bemarahense Lüthy & Lavranosです。

DSC_1581
Pachypodium rosulatum subsp. cactipes

DSC_1574
Pachypodium rosulatum subsp. makayense

また、ロスラツム変種ドラケイは、1907年にPachypodium drakei Costantin & Bois、1972年(publ. 1973)にはPachypodium rosulatum var. drakei (Costantin & Bois) Margr.とされました。しかし、現在はロスラツムと同種とされています。
DSC_1585
Pachypodium rosulatum var. drakei

また、かつてロスラツムの変種とされたことがあるものの、現在では独立種とされているパキポディウムもあります。
ホロンベンセは1922-1923年(publ. 1924)にPachypodium horombense Poiss.と命名されましたが、1973年にPachypodium rosulatum var. horombense (Poiss.) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在では認められておりません。
また、イノピナツムは1996年にPachypodium inopinatum Lavranosと命名されましたが、1998年にPachypodium rosulatum var. inopinatum (Lavranos) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在では認められておりません。


パキポディウム属の分子系統(抜粋)
            ┏━━━P. ebruneum
            ┃
            ┃┏━━P. brevicaule subsp. brevicaule
        ┏╋┫
        ┃┃┗━━P. densiflorum
        ┃┃
        ┃┗━━━P. horombense
        ┃
    ┏┫┏━━━P. inopinatum
    ┃┣┫
    ┃┃┗━━━P. brevicaule subsp. leucoxantum
    ┃┃
    ┃┗━━━━P. rosulatum subsp. bicolor
┏┫
┃┃┏━━━━P. rosulatum subsp. gracilius
┃┣┫
┃┃┗━━━━P. rosulatum subsp. cactipes
┫┃
┃┗━━━━━P. rosulatum subsp. makayense

┃┏━━━━━P. rosulatum subsp. rosulatum
┗┫
    ┗━━━━━P. rosulatum subsp. bemarahense

上の分子系統はロスラツムの近縁種の部分を抜粋し、簡略化したものです。亜種ロスラツムに最も近縁なのは亜種ベマラヘンセです。他のロスラツム亜種は異なる枝にありやや離れます。亜種マカイエンセ、亜種カクチペス、あるいは亜種グラキリウスは、もしかしたら分岐の根元にあるのかも知れず、一概にロスラツム系ではないとは言えないのかもしれません。しかし、素人目には独立種とした方が自然に思えます。さらに、亜種ビカラーに至っては、見てお分かりの通りブレビカウレ(恵比寿笑い)やデンシフロラム(シバの女王の玉櫛)に近縁に見えます。
2004年にLüthyにより、5種のパキポディウムがロスラツムの亜種とされました。それから18年たちました。そろそろ見直す時期に来ているようにも思えますが、どうでしょうかね? 



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フォウクィエリアをぼちぼち集めています。まあ、あまり熱心に探しているわけではなくて、イベントなどで苗があったら買うかもしれないくらいの勢いです。私の好きなユーフォルビアやギムノカリキウム、ハウォルチオプシスといった面々が最優先ですから、まあ後回しですね。あと、何故か私は現地球が少し苦手です。完成された現地球より、苗から育てたいという気持ちがあるからかもしれません。苗は現地球の様な迫力はありませんが、大抵の植物は苗の頃は生長著しいので、日々生長して変化していく様子を見る楽しみがあります。そんな中で、数年前はフォウクィエリアと言えば立派な現地球が売られることが多かったように思われます。しかし、最近では苗も少しずつ見かけます。特にFouquieria digdtiiやFouquieria macdougaliiはある程度は量産されているようで、苗が園芸店にもまれにですが並ぶようになりました。


Fouquieria macdougaliiは一般的には、「マクドガリー」と呼ばれているようです。例によってうるさい事を言いますが、この読み方について少し調べて見ました。私はラテン語読みで「マクドウガリイ」と読みますが、語源にさかのぼる派もいるそうなので、語源も調べて見ました。まあ、見た感じから人名だろうと思いましたがやはりそうで、砂漠植物の研究者であるD.T.MacDougalに対する献名でした。"MacDougal"は「マクドウガル」あるいは「マクドゥーガル」と読むのが一般的らしいので、語源にこだわるなら「マクドウガリー・マクドウガリイ」あるいは「マクドゥーガリー・マクドゥーガリイ」となります。

DSC_1716
Fouquieria macdougalii
葉の形がFouquieria diguetiiと異なり矢じり型で、葉柄が長く伸びます。

マクドウガリイはメキシコのソノラ砂漠に自生します。岩の多い平原や斜面、丘の中腹、溶岩地、メサ(卓状大地)、砂地といった様々な種類の土壌に生えます。
Fouquieriaを現地では"ocotillo"と呼ぶことから、Fouquieria属を"ocotillo family"と称することもあります。マクドウガリイは"Tree ocotillo"と呼ばれ、砂漠の代表的な灌木の一つです。現地ではBursera confusa、Olneya tesota、Cercidium praecox、Cercidium microphyllum、Prosopis velutina 等とともに砂漠の植生の主要構成メンバーなんだそうです。自生地にはサボテンも生えており、Lophocereus schottii、Stenocereus thurberi、Stenocereus alamosensisが見られます。

マクドウガリイの学名は1903年に命名されたFouquieria macdougalii Nashです。Nashはアメリカの植物学者であるGeorge Valentine Nashのことで、ニューヨーク植物園のキュレーターでした。Nashはバハマ、南フロリダ、ハイチで植物の調査を行いました。

そう言えば、フォウクィエリアは真っ赤な非常に目立つ花を咲かせますが、ハチドリによって受粉するそうです。そこで、思い出したのは、南アフリカではガステリアがタイヨウチョウにより受粉するということです。北アメリカとアフリカと大きく離れた場所で、それぞれの土地で花の蜜を主要な餌とすると鳥がいて、それぞれの土地でその鳥に受粉を依存する多肉植物がいるという偶然に驚かされます。フォウクィエリアとガステリア、ハチドリとタイヨウチョウはまったく近縁ではないことも自然の妙を感じさせますね。


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近所の書店に行ったところ、サボテンについて書かれた新刊が出ていたので購入しました。この手の本は趣味家か生産者さんが書いたりしがちですが、珍しく本書は研究者が書いたサボテンの本です。どうも、現在日本ではサボテンの研究者は著者位しかいないみたいです。
それはそうとして、早速読んでみることにしました。もしかしたら、研究者の書いた本なんて難しくて読めないと思ってしまいますが、誰でもわかるように書かれた本です。これは経験上ですが、ベレ出版の出す本は分かりやすい代わりに毎度薄味な内容が多い感じがします。まあ、これはその分野に関して素人でも読めるように書かれていることは分かりますから、一概に悪いことではありません。しかし、本書はベレ出版にしては割りと内容も詰まっていて、しかも分かりやすいので良い塩梅だと思います。
内容に移りましょう。本書はサボテンの基礎をまんべんなく学ぶことが出来ます。過去に出ているサボテンの本では、サボテンが水を貯蔵する仕組みやトゲとは何かといったトピックについては書かれていましたが、それらはあくまで「説」であって、実際に確かめられたものではなかったようにも思われます。しかし、さすがは研究者だけあって、実証的な説明がなされています。
DSC_1734

例えば、サボテンのトゲは葉が由来と言われたりします。しかし、木の葉サボテンでは葉とトゲの両方出ます。また、サボテンの種類によっては棘座(アレオーレ)をスライスして顕微鏡で観察すると、小さな葉が隠されていたりするようです。では、サボテンのトゲとは一体何者なのでしょうか?
また、サボテンの乾燥に耐える仕組みについても、非常に様々なことが判明していることがわかりました。組織の配置や仮導管の仕組み、根が乾燥に耐えるための仕組みなど、知らなかったことだらけでした。
個人的にはCAM植物に関する話は、非常に興味深く読ませていただきました。サボテンはCAM植物と言われ、乾燥に適応した光合成システムを持っています。(※CAM植物については過去に記事にしましたから、お時間があればぜひ読んでみて下さい。)

CAM植物は二酸化炭素をリンゴ酸の形で貯蔵出来ますが、どうやらサボテンではそれだけではないみたいです。詳細は本を読んでいただくとして、このように最新の科学による話題は尽きません。
その他にも、サボテンの本場メキシコに行った話もあります。今でもメキシコはあまり治安がよろしくないと言われますけど、著者も中々怖い目にあっているようです。私はメキシコと言えば、チワワ砂漠だとかサン・ルイス・ポトシだとか、憧れの地名が浮かびますけど、実際に行くとなると躊躇してしまいますけどね。
さて、本書はサボテン好きでも知らないような最新の知見が満載です。私は砂漠植物学、ひいては広く植物学全体に興味がありますが、面白いことが沢山書いてあって大変ためになりました。サボテン好きならば読んで損は無いと思います。




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2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文の紹介の続きです。今日はアンタカンタ節の残り3亜節、メデュセア、ブセウデウフォルビウム、ダクティランテスを紹介します。メデュセア亜節はいわゆる「タコもの」で、ユーフォルビアの中でも特に変わった姿をしています。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━★Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━Section Pseudacalypha

┗━━━━━Section Antso

Section Anthacanthaeの分子系統

    ┏━━★①Subsection Medusea
    ┃
┏┫┏━★②Subsection Pseudeuphorbium
┃┗┫
┫    ┗━★③Subsection Dactylanthes

┃┏━━Subsection Florispinae
┗┫
    ┗━━Subsection Platycephalae

①Subsection Medusea
分子系統を見て感じるのは、種数の割に分岐が少ないことです。これは、メデュセア亜節が最近分岐したからかもしれません。論文はアティマルス亜属のそれぞれ節の関係性、あるいはアンタカンタ節の中の亜節の関係性を見ることを目的としていますから、種ごとの分離はいまいちとなることもあります。例えるなら、大きい定規で測ってみるものの、目盛りが大きすぎて細かい部分は測れないようなものです。
メデュセア亜節は、その姿から「タコもの」とか「メデュソイド」などと呼ばれます。

E. namaquensisは南アフリカ原産の亜低木で
太い幹から短い枝が伸びて枯れて残ります。E. namibensisはナミビア原産で、「蛮童子」と呼ばれます。太い幹から多肉質の枝を伸ばします。E. filiferaは南アフリカ原産で、「魔女の簪」と呼ばれます。太い幹から多肉質の枝を伸ばし、先端からは細長い葉を出します。E. caput-medusaeは南アフリカ原産で、「天荒竜」と呼ばれます。大型のタコもので、太く長い多肉質の枝を伸ばします。
DSC_1568
荒天竜 Euphorbia caput-medusae

E. restitutaは南アフリカ原産で、縦長に育ち細い多肉質の枝を伸ばします。E. fasciculataは南アフリカ原産で、「歓喜天」と呼ばれます。「闘牛角」と似ていますが、枯れ枝はやがて脱落します。E. schoenlandiiは南アフリカ原産で、「闘牛角」と呼ばれます。棍棒状に育ち、枯れた枝が長く残ります。
DSC_1497
闘牛角 Euphorbia schoenlandii

E. braunsiiは南アフリカ、ナミビア原産で、「仏面キリン」と呼ばれます。塊根から卵型の多肉質の枝が群生し、枯れた花柄が残ります。E. crassipesは南アフリカ原産で、「倶利伽羅玉」と呼ばれます。縦長に育つタコものです。E. deceptaは南アフリカ原産で、「緑鬼王」と呼ばれます。枝の短いタコものです。E. flanaganiiは南アフリカ原産で、「孔雀丸」と呼ばれます。細い多肉質の枝を伸ばす小型のタコものです。
DSC_0446
孔雀丸 Euphorbia flanaganii

E. hypogaeaは南アフリカ原産で、「螺髪竜」と呼ばれます。細長いイボに被われた縦長の多肉植物で、先端から葉を出します。E. procumbensは南アフリカ原産で、枝が長く伸びるタコものです。E. anbipolliniferaは南アフリカ原産で、小型のタコものです。E. breviramaは南アフリカ原産で、小型で枝が短いタコものです。E. haliiは南アフリカ原産で、縦長に育つ鱗片状の幹を持ちたす。葉は細長い鞭のようです。E. aridaは南アフリカ原産で、「白仏塔」と呼ばれます。タコものですが、下部が木質化して縦長に育ちます。E. davyiは南アフリカ原産で、「蛇鱗丸」と呼ばれます。小型のタコもので、塊根性です。E. esculentaは南アフリカ原産で、「閻魔キリン」と呼ばれます。太く枝を出す大型のタコものです。E. friedrichiaeは南アフリカ、ナミビア原産で、「白鬼塔」と呼ばれます。棍棒状の幹から尖った短い枝を伸ばし、枯れた後残ります。E. melanohydrataは南アフリカ、ナミビア原産で、「多宝塔」と呼ばれます。短い枝が密につきます。E. multicepsは南アフリカ原産で、「多頭キリン」と呼ばれます。本体が見えないほど丸い枝が密につきます。E. dregeanaは南アフリカ原産で、棒状で枝分かれしてブッシュ状となります。

                ┏━E. namaquensis 2
            ┏┫
            ┃┗━E. namibensis
        ┏┫
        ┃┗━━E. filiflora
    ┏┫
    ┃┗━━━E. caput-medusae 2
    ┃
    ┃┏━━━E. caput-medusae 1
┏╋┫
┃┃┗━━━E. restituta
┃┃
┃┃┏━━━E. fasciculata
┃┗┫
┃    ┗━━━E. schoenlandii

┃        ┏━━E. braunsii
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━E. crassipes 1
┃┏┫
┃┃┗━━━E. decepta 2
┃┃
┃┃┏━━━E. flanaganii
┣┫┃
┃┣╋━━━E. hypogaea 2
┃┃┃
┃┃┗━━━E. procumbens
┃┃
┃┗━━━━E. albipollinifera

┃┏━━━━E. brevirama
┣┫
┃┗━━━━E. crassipes 2

┃┏━━━━E. hallii
┣┫
┃┗━━━━E. namaquensis 1

┣━━━━━E. arida

┣━━━━━E. braunsii

┣━━━━━E. clavarioides

┣━━━━━E. davyi 2

┣━━━━━E. davyi 1

┣━━━━━E. esculenta

┣━━━━━E. friedrichiae

┣━━━━━E. hypogaea 1

┣━━━━━E. melanohydrata

┣━━━━━E. multiceps 2

┃┏━━━━E. multiceps 1
┗┫
    ┃┏━━━E. decepta 1
    ┗┫
        ┗━━━E. dregeana

②Subsection Pseudeuphorbia
③Subsection Dactylanthes

プセウデウフォルビア亜節は高度に多肉化した低木です。
E. celataは南アフリカ、ナミビア原産で、塊根性でわずかに地上に枝を出します。E. quadrataは南アフリカ、ナミビア原産で、やや幹が太る低木です。E. hamataは南アフリカ、ナミビア原産で、「鬼棲木」と呼ばれます。幹が太り、多肉質の枝を伸ばす低木です。E. pedemontanaは南アフリカ原産です。E. gariepinaは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ原産で、「鬼ヶ島」と呼ばれます。多肉質の枝は枝分かれしてブッシュ状となります。E. indurescensはアンゴラ原産です。E. monteiroiは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ、ジンバブエ、ボツワナ原産で、「柳葉キリン」と呼ばれ、棍棒状の幹を持ち細長い葉を出します。
E. lignosaは南アフリカ、アンゴラ、ナミビア原産で、多肉質の枝は叢生します。

ダクティランテス亜節は、塊根あるいは地下根茎です。
E. bruynsiiは南アフリカ原産です。E. patulaは南アフリカ原産で、短い多肉質の枝が密集します。E. polycephalaは南アフリカ原産で、塊根から多肉質の枝を伸ばします。E. globosaは南アフリカ原産で、球状の多肉質の枝を重ねます。E. wilmaniaeは南アフリカ原産で、現在ではE. patula subsp. wilmaniaeとされています。「海蜘蛛」と呼ばれることもあります。E. pseudotuberosaは南アフリカ、ボツワナ原産で、やや多肉質の葉を出します。E. trichadeniaは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ、ボツワナ、スワジランド、ジンバブエ原産で、塊根から葉を出します。
  
                ┏━━E. celata 1
            ┏┫
            ┃┗━━E. quadrata
        ┏┫
        ┃┃┏━━E. hamata 1
        ┃┗┫
        ┃    ┗━━E. pedemontana
        ┃
        ┃    ┏━━E. gariepina
        ┃    ┃
┏②┫┏╋━━E. indurescens
┃    ┃┃┃
┃    ┣┫┗━━E. monteiroi
┃    ┃┃
┃    ┃┗━━━E. lignosa
┃    ┃
┃    ┃┏━━━E. celata 2
┃    ┗┫
┃        ┗━━━E. hamata 2

┃                ┏━E. bruynsii
┃                ┃
┫            ┏╋━E. patula
┃            ┃┃
┃            ┃┗━E. polycephala
┃            ┃
┃        ┏╋━━E. globosa
┃        ┃┃
┃        ┃┣━━E. wilmaniae 1
┃    ┏┫┃
┃    ┃┃┗━━E. wilmaniae 2
┃    ┃┃
┗③┫┗━━━E. pseudotuberosa
        ┃
        ┗━━━━E. trichadenia


最近、ユーフォルビアの系統分類①~⑨という記事を書きましたが、情報が不足していました。その不満があった部分について、ユーフォルビアの系統分類⑩~⑫という形で追加で記事にすることが出来て、モヤモヤとしていた心残りが消えました。一安心です。しかし、また論文を見つけてしまったら記事にするかも知れないなんて考えていたら、なんと情報が少なかったカマエシケ亜属の系統分類について書かれた論文を見つけてしまいました。しかし、カマエシケ亜属は基本的に草本で多肉植物ではありません。世界中に分布しますが、主に雑草とされるものが多く、記事を書く私も楽しくありませんが、記事を読む方々もおそらくは楽しくはないでしょう。というわけで、カマエシケ亜属についての記事化は断念しました。
DSC_1732
日本の代表的なカマエシケ亜属のユーフォルビアであるコニシキソウ。コンクリートの隙間やひび割れから生えてくる、踏みつけに強い雑草。

多肉植物については、最近パキポディウム属とアロエ類(アロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属等)、ユーフォルビア属の系統分類を調べた論文を紹介してきました。しかし、多肉植物はまだまだ沢山の種類があり所属する分類群も多岐にわたります。論文もそれぞれの分類群を調べたものがあります。もし、面白い論文を見つけましたら、また記事にしていきたいと思います。



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2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文紹介の続きです。今日は、アンタカンタ節についてですが、記事が長くなりすぎるため、2つに分けました。フロリスピナ亜節とプラティケファラ亜節についてですが、この2つは姉妹群である程度まとまったグループのようです。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━★Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━Section Pseudacalypha

┗━━━━━Section Antso

Section Anthacanthaeの分子系統
    ┏━━Subsection Medusea
    ┃
┏┫┏━Subsection Pseudeuphorbium
┃┗┫
┫    ┗━Subsection Dactylanthes

┃┏━━★Subsection Florispinae
┗┫
    ┗━━★Subsection Platycephalae

Subsection Florispinaeの分子系統
Subsection Florispinaeは有名な多肉ユーフォルビアが沢山含まれます。ホリダや紅彩閣のようにトゲのあるもの、花柄が残りトゲのように見えるバリダ、トゲがなく高度に多肉化したオベサ、多肉化した茎から大きな葉を伸ばす鉄甲丸、塊根から多肉質の茎を出す稚子キリン、塊根から多肉質ではない葉を出すシレニフォリアなど形態は様々です。基本的には南アフリカ原産で、乾燥に耐えるために高度に多肉化しています。

E. pentagonaは「大王閣」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲのあるサボテンのような多肉植物で、高さ3mになり叢生します。E. pulvinataは「笹蟹丸」と呼ばれ、レソト、スワジランド原産です。高さ1.5mの叢生してクッション状となります。紅キリンE. aggregataと笹蟹丸は同種とされる向きもありましたが、現在ではそれぞれ独立種とされているようです。
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笹蟹丸 Euphorbia pulvinata

E. meloformisは南アフリカ原産の、枯れた花柄が残りトゲのように見える球状の多肉植物です。E. meloformisの亜種あるいは変種として、有名なバリダはE. meloformisに吸収されました。ちなみに、「貴青玉」はE. meloformis系と言われる由来不明の交配種です。
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Euphorbia meloformis

E. cumulataは南アフリカ原産で、トゲのあるサボテンのような多肉植物で叢生します。E. mammillarisは「鱗宝」と呼ばれ、南アフリカ原産です。まばらにトゲのあるサボテンのような多肉植物で叢生します。ちなみに、鱗宝の白化個体を「白樺キリン(ミルクトロン)」と呼び、こちらの方がよく見かけます。
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白樺キリン(ミルクトロン) Euphorbia mammillaris cv.

E. obesa subsp. symmetricaは南アフリカの球状の多肉植物で、現在はオベサの亜種ではなくE. symmetricaとして独立しました。E. obesa subsp. obesaは南アフリカ原産の多肉植物です。この場合のsubsp. obesaはsubsp. symmetricaと区別するための名前ですが、subsp. symmetricaが亜種ではなくなった以上はsubsp. obesaも役目を終えました。現在はただのE. obesaです。
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Euphorbia obesa

E. feroxは「勇猛閣」あるいは「金碧塔」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲのあるサボテンのような多肉植物ですが、トゲが強いことが特徴です。
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勇猛閣 Euphorbia ferox

E. jansenvillensisは南アフリカ原産で、トゲはありませんが、多肉質で叢生します。E. tubiglansと同種とされることもあるようです。E. polygonaは南アフリカ原産で、変種ホリダE. polygona var. horridaの方が有名です。大なり小なり白い粉に被われ、トゲのある太い幹を持つ多肉植物です。
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ホリダ Euphorbia polygona var. horrida

E. stellispinaは「群星冠」と呼ばれ、南アフリカ原産です。独特の先端が星形の花柄が特徴です。
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群星冠 Euphorbia stellispina

E. pillansiiは南アフリカ原産の多肉植物で、E. meloformis系交配種と呼ばれる「貴青玉」によく似ています。枯れた花柄が残りますが、先端で分岐します。E. pseudoglobosaは「稚児キリン」と呼ばれ、南アフリカ原産です。楕円を重ねたように育ち、塊根性です。
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稚児キリン Euphorbia pseudoglobosa

E. heptagonaは「紅彩閣」と呼ばれ、南アフリカ原産です。一般的にはE. enoplaと呼ばれていますが、E. heptagonaが正式な学名です。トゲがあり、叢生します。
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紅彩閣 Euphorbia heptagona

E. susannaeは「瑠璃晃」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲはなく球状でやがて群生します。
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瑠璃晃 Euphorbia susannae

E. clandestineは「逆鱗竜」と呼ばれ、南アフリカ原産です。棍棒状のトゲのない多肉植物で、頂点から細長い葉を出します。E. pubiplans、E. bubalina(昭和キリン)、E. clava(式部)、E. multifolia、E. loricata(炉裡火)は共に南アフリカ原産で、逆鱗竜によく似ています。
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逆鱗竜 Euphorbia clandestine

E. bupleurifoliaは「鉄甲丸」と呼ばれ、南アフリカ原産です。鱗片状の多肉質の茎から葉を出します。
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鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia

E. tuberosaは「鬼縮」あるいは「羊玉」と呼ばれる塊根性植物で、南アフリカ原産です。E. sileniforiaは南アフリカの塊根植物で、細長い葉を出します。
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Euphorbia sileniforia

                                ┏━E. pentagona
                            ┏┫
                            ┃┗━E. pulvinata
                        ┏┫
                        ┃┗━━E. meloformis 1
                    ┏┫
                    ┃┣━━━E. cumulata
                ┏┫┃
                ┃┃┗━━━E. mammillaris 1
                ┃┃
                ┃┗━━━━E. meloformis 2
                ┃
                ┃┏━━━━E. obesa
                ┣┫                     subsp. obesa
                ┃┗━━━━E. obesa 
            ┏┫                          subsp. symmetrica
            ┃┗━━━━━E. ferox
        ┏┫
        ┃┗━━━━━━E. jansenvillensis 1
        ┃
    ┏┫        ┏━━━━E. polygona 2
    ┃┃    ┏┫
    ┃┃    ┃┗━━━━E. polygona 1
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━━E. stellispina
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━━━━━E. jansenvillensis 2
    ┃
    ┃        ┏━━━━━E. pillansii
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┗━━━━━E. pseudoglobosa 2
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━━━━━E. pseudoglobosa 1
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗━━━━━E. mammillaris 2
    ┃┃
    ┣┫    ┏━━━━━E. heptagona 2
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━━E. heptagona 1
    ┃┣┫
┏┫┃┗━━━━━━E. susannae
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━━━E. clandestina
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━━━━E. pubiglans
┃┃
┃┃┏━━━━━━━E. bubalina 2
┃┃┃
┃┣╋━━━━━━━E. bubalina 1
┃┃┃
┃┃┗━━━━━━━E. clava
┃┃
┃┃    ┏━━━━━━E. tuberosa 2
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━━━━E. tuberosa 1
┫┗┫
┃    ┗━━━━━━━E. silenifolia

┃    ┏━━━━━━━E. multifolia
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━━E. loricata 2
┣┫
┃┗━━━━━━━━E. loricata 1

┣━━━━━━━━━E. bupleurifolia

┗━━━━━━━━━E. oxystegia

系統の分岐を見ていると、思いもよらぬことがあります。例えば、勇猛閣E. ferox、大王閣E. pentagona、笹蟹丸E. pulvinataはトゲがあり叢生する生態の共通性から、近縁であることはわかります。しかし、やはり良く似た紅彩閣E. heptagonaとは特に近縁ではなく、E. obesaやE. meloformisの方が近縁という驚くべき結果でした。また、紅彩閣E. heptagonaは瑠璃晃E. susannaeと近縁というのも不思議ですね。

そう言えば、E. jansenvillensisは2個体を調べていて、それぞれの位置は離れているように見えます。しかし、良く見ると両個体とも分岐の根元にあり、実は近縁であることがわかります。これはむしろ図の配置とか書き方の問題です。
困惑するのは鱗宝E. mammillarisの立ち位置です。鱗宝も2個体を調べていますが、完全に異なる枝に乗っています。これは大変な驚きで、解析の分離が良くなかったという理由でなければ、鱗宝は2種類あることになります。

E. pillansiiはバリダというか、E. meloformis系交配種と言われる貴青玉に良く似ていますが、なんと稚児キリンと近縁とあります。共通点がないようにも思えますから、面白い結果です。


Subsection Platycephalaeの分子系統
半多肉植物で高さ9mまでの低木、あるいは塊根植物です。ボツワナとジンバブエから西アフリカとエチオピアまで、サハラ以南に分布します。
E. omarianaはエチオピア原産で、塊根性(?)です。E. platycephalaはマラウイ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の塊根植物です。E. grantiiはブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ザイール、ザンビア原産の樹木です。

    ┏━E. omariana
┏┫
┃┗━E. platycephala

┗━━E. grantii


そう言えば、フロリスピナ亜節は形態的に4グループに分けられてきました。E. multifolia、E. loricata、E. bupleurifolia、E. oxystegiaはSeries Hystrixとされてきましたが、分子系統でもまとまったグループです。塊根性のE. tuberosaとE. sileniforiaはSeries Rhizanthiumですが、分子系統でも近縁です。外見的に良く似たE. clandestine、E. bubalina、E. pubiplans、E. clavaはSeries Treisiaですが、特徴の異なる旧来はSeries MeleuphorbiaとされたE. heptagona、E. susannae、E. pillansii、E. pseudoglobosaも分子系統では近縁です。それ以外の種はSeries Meleuphorbiaですが、同じ枝に乗っており、ある程度まとまったグループです。
というわけで、旧分類はおおよそは正しいみたいですが、異なる部分も出て来ているようです。

本日はここまでです。明日はタコものと呼ばれるSubsection Meduseaを中心にご紹介します。



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私はユーフォルビアが好きでチマチマ集めていますが、とにかくユーフォルビアは種類が多く多様なので、今一つ掴み所がないような気がしていました。ではユーフォルビアとは何かと聞かれると、具体的な種類を挙げてみだり、毒があります位しか言えないことに気が付きました。そこで、最近ではユーフォルビアについた書かれた論文を少しずつ読んだりしています。
先週、というか8月22日から30日までの9日間に渡り、ユーフォルビアについての論文の長い紹介をしました。この時紹介したのは、2013年に発表された『
Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文でした。

ただし、この論文はユーフォルビア節(柱サボテン状のユーフォルビア)を中心としたものでしたから、園芸店でよく目にするホリダE. polygona var. horridaや瑠璃晃E. susannae、オベサE. obesa、孔雀丸E. flanaganiiなどのユーフォルビアについては、わずか4種類を調べただけでした。ですからこの部分、つまりはリザンチウム亜属について調べた論文を探していました。
それが、2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文です。調べているのは、Subgenus Athymalus、つまりアティマルス亜属です。この場合のSubgenus Athymalus=Subgenus Rhizanthiumのことです。学者によりAthymalusだったりRhizanthiumだったりしますが、この論文ではAthymalusを採用しています。
さて、今日からこの論文の内容を何回かに分けて紹介しようと思います。「ユーフォルビアの系統分類」はその⑨の続きとして、その⑩というナンバリングから開始したいと思います。

では、実際の論文の内容を見てみましょう。
Subgenus Athymalusは約150種で、ほとんどが多肉植物ですが樹木もあります。旧世界の乾燥地に限定して分布します。ほとんどがサハラ以南のアフリカ原産で、マカロネシアと西アフリカ、いくつかはアラビア半島、マダガスカル、23種はアフリカの角付近に固有、72種は南部アフリカ原産です。そのうち、60種は南アフリカの固有種ということです。この論文では、Subgenus Athymalusのうち88種類について、核リボソームITSと葉緑体のndhF領域を分析しました。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━★⑥Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━★⑤Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━★④Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━★③Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━★②Section Pseudacalypha

┗━━━━━★①Section Antso

一応、用語を説明しておきますが、"Subgenus"は「亜属」のことで、ユーフォルビア属はEsula亜属、Athymalus(=Rhizanthium)亜属、Chamaesyce亜属、Euphorbia亜属にわかれます。"Section"とは「節」をあらわしますが、属の下には亜属、節、亜節、列、亜列と小分類があります。「列」は"Series"ですが、今回の論文では出てきません。

系統図を見るとわかりますが、Section Antsoが根元にあります。Section Somalica、Section Crotonoides、Section Lyciopsisは一つのグループを形成します。Section Anthacanthaeは非常に多様で、5亜節からなります。本日はAnthacanthae節以外について解説させていただきます。


            ┏━━━━━Section Anthacanthae
            ┃
            ┃                ┏E. larica
            ┃            ┏┫
            ┃            ┃┗E. masirahensis
        ┏┫        ┏┫
        ┃┃        ┃┗━E. rubrisemminalis
        ┃┃    ┏┫
        ┃┃    ┃┃┏━E. balsamifera
        ┃┃    ┃┗┫            subsp. adenensis
        ┃┗⑥┫    ┗━E. balsamifera
        ┃        ┃                    subsp. balsamifera
        ┃        ┗━━━E. meuleniana
        ┃
    ┏┫            ┏━━E. hamaderoensis
    ┃┃            ┃
    ┃┃        ┏╋━━E. marie-cladieae
    ┃┃        ┃┃
    ┃┃┏⑤┫┗━━E. socotrana
    ┃┃┃    ┃
    ┃┃┃    ┗━━━E. scheffleri
    ┃┃┃
    ┃┃┃            ┏━E. benthamii
    ┃┗┫        ┏┫
    ┃    ┃        ┃┗━E. crotonoides
    ┃    ┃┏④┫
    ┃    ┃┃    ┣━━E. caperonioides
    ┃    ┃┃    ┃
    ┃    ┃┃    ┗━━E. insarmentosa
    ┃    ┃┃
    ┃    ┗┫        ┏━E. cuneata
    ┃        ┃    ┏┫
    ┃        ┃    ┃┗━E. smithii
┏┫        ┃    ┃
┃┃        ┗③┫┏━E. bongensis
┃┃                ┃┃
┃┃                ┗╋━E. matabelensis
┃┃                    ┃
┃┃                    ┗━E. oatesii
┃┃
┃┃            ┏━━━E. acalyphoides
┫┃        ┏┫
┃┃        ┃┗━━━E. species
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━━━E. hadramautica
┃┗②┫
┃        ┗━━━━━E. longituberculosa

┗━━━━━━①━E. antso


①Section Antso
E. antsoはマダガスカル原産の、半多肉質の樹木です。高さ4-15mとなり、時にわずかに塊茎状となります。

②Section Pseudocalypha
Section Pseudocalyphaはほとんどの種が北東アフリカとアラビア半島原産です。多肉植物を含みます。
E. acalyphoidesはアンゴラ、チャド、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、タンザニア、イエメンの原産です。一年草または亜低木ということです。E. speciesは何のことを言っているのか良くわかりません。"species"はそのまま「種」という意味ですから種小名としては違和感があります。E. hadramauticaはエチオピア、オマーン、ソマリア、ソマリア、イエメンの原産です。ケニアには移入された可能性があります。多肉質の亜低木で、多肉質の幹から波打つ葉を出し、まるでドルステニアのようです。E. longituberculosaは、確かにその名前で流通していますが、『World Checklist of Vascular Plants』ではヒットしません。おそらくは、E. longetuberculosaのことを言っているものと推測します。E. longetuberculosaはジブチ、エチオピア、ケニア、オマーン、ソマリア、イエメンの原産です。多肉質の茎から枝分かれする細い枝を伸ばします。

③Section Lyciopsis
Section Lyciopsisは高さ0.1-5mの低木が多く、北東アフリカとアラビア半島に分布します。
E. cuneataはベナン、チャド、ジブチ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ケニア、ギニア、モザンビーク、ナイジェリア、オマーン、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、タンザニア、トーゴ、イエメンの原産です。細い幹の樹木ですが、塊根があります。E. smithiiはオマーン原産の樹木です。E. bongensisはケニア、ルワンダ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの原産の塊根植物です。E. matabelensisはアンゴラ、ボツワナ、ケニア、マラウイ、モザンビーク、ソマリア、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の樹木です。E. oatesiiはザンビア、ジンバブエ原産の塊根植物です。

④Section Crotonoides
Section Crotonoidesは高さ0.5-1.5mの一年草で、茎はたまに木質またはわずかに多肉質です。東アフリカ原産です。
E. benthamiiはアンゴラ、マラウイ、ナミビア、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の一年草です。E. crotonoidesはアンゴラ、ボツワナ、エチオピア、ケニア、マラウイ、モザンビークナミビア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の一年草です。E. caperonioidesとE. insarmentosaはナミビア原産ですが、情報がありません。

⑤Section Somalica
0.2-8mの樹木で、東アフリカ原産です。
E. hamaderoensisはソコトラ原産ですが、情報がありません。E. marie-cladieaeはソコトラ原産の樹木です。E. socotranaはソコトラ原産の樹木です。E. scheffleriはエチオピア、ケニア、タンザニア、原産の樹木です。ソマリアでは移入された可能性があります。

⑥Section Balsamis
E. laricaはイラン、オマーン、イエメンの原産で、多肉質の棒状の茎を持つ植物(Pencil-stem)で、枝分かれして叢生します。E. masirahensisは調べたところ、現在ではE. laricaと同種とされているようです。E. rubrisemminalisはイエメンの亜低木で、Pencil-stemとされています。E. balsamifera subsp. adenensisは現在では、E. adenensisとして独立しました。オマーン、サウジアラビア、ソコトラ、ソマリア、スーダン、イエメン原産の半多肉植物です。幹が太る。E. balsamifera subsp. balsamiferaはカナリア諸島、モロッコ、西サハラ原産で幹が太る。E. meulenianaはイエメン原産の低木です。E. laricaとE. rubrisemminalisは良く似たPencil-stemですが、非常に系統的に近縁です。葉は非常に小さいのですが、葉の大きいE. balsamiferaやE. meulenianaから進化した可能性があります。

前の論文では園芸店で見る有名種がなかったことから、今回の論文はそこを紹介すると言っておきながら、今日の内容はどうにもそぐわない感じになってしまいました。しかし、切のいいところでまとめようとすると、どうしてもこうなってしまいます。どうか、ご容赦の程を。
明日はオベサやホリダ、バリダ、笹蟹丸などのお馴染みのユーフォルビアが登場します。



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あれは確か2020年のことだったと思いますが、園芸店でたまたま火星人を見かけました。「火星人」とは塊根植物の名前で、本当に火星人が出没したわけではありません。私が見た火星人は、水で膨らむタイプの種まきポットに植えられていて、3cmくらいの鉢に植えられていました。火星人自体はそれほど珍しくありませんが、火星人は巨大に育ちますから、塊根が1cmくらいの小苗は初めてだったので購入しました。まあ、ワンコインだったこともありますが…
まあ、とにかく種まきポットは水はけ等もろもろ良くないので、直ぐに植え替えました。しかし、何故か大量のネジラミが蔓延っており辟易しました。

DSC_0809
今年、植え替えましたが、これは植え替え前。何故か斜めに傾いてます。

DSC_0811
根詰まりの度合いが激しく、鉢を破壊しないと抜くことが出来ませんでした。抜く時に塊根を痛めて乳液が出てしまいました。しかし、塊根が太るのが早い。
あと、ネジラミは根絶していました。


DSC_1707
現在の様子。蔓が暴れていますが、あまり勢いはありません。もう少し遮光強めにした方がいいのでしょうか?

DSC_1706
しかし、火星人の画像を検索すると、塊根の形が縦長に育ったものと、丸く育ったものとがあります。この違いは何が原因でしょうか? 良くわかりません。

火星人はかつてはガガイモ科とされていましたが、現在はキョウチクトウ科に吸収されました。科以下については良くわかりません。NCBI Taxonomy browserでは、Asclepiadoidead、Asclepiadeae、Fockeeaeとされているみたいです。これは、果たしてガガイモ亜科、ガガイモ連、フォッケア(フォクケア)亜連でいいのでしょうか? いまいち自信がありません…
ちなみに、FockeeaeはFockea属とCibirhiza属からなります。

火星人の学名は1895年に命名されたFockea edulis (Thunb.) K.Schum.です。K.Schum.はドイツの植物学者でサボテンの研究で知られるKarl Moritz Schumannのことです。サボテン同好学会(後のドイツ・サボテン学会)の会長でした。
Fockea属とされるまでの経過は以外の通りです。

1794年 Pergularia edulis Thunb.
1819年 Echites edulis (Thunb.) Thunb.
1842年 Chymocormus edulis (Thunb.) Harv.
1895年 Fockea edulis (Thunb.) K.Schum.


ちなみに、火星人には他にも異名があります。
1838年 Brachystelma macrorrhizum E.Mey.
1844年 Fockea cylindrica R.A.Dyer
1933年 Fockea glabra Decne.


Fockea属は1839年に創設されました。Chymocormus属も提唱されましたが、わずか3年差で早く命名されたFockea属が正式な属名となりました。
1839年 Fockea Endl.
1842年 Chymocormus Harv.
かつてFockea属と命名された種は18種類あるとされていたみたいですが、どんどん種が統合されて現在では6種類になりました。F. edulisは南アフリカ原産ですが、ほかの5種は南アフリカからケニアやタンザニアなどのアフリカ大陸東側に分布します。

一応、Fockea属の全種類の命名年と学名のリストを示します。
1839年 Fockea capensis Endl.
1893年 Fockea angustifolia K.Schum.
              Fockea multiflora K.Schum.
1895年 Fockea edulis (Thunb.) K.Schum.
1908年 Fockea comaru (E.Mey.) N.E.Br.
1916年 Fockea sinuata (E.Mey.) Druce




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スペクタビリスは非常に大型になるアロエです。しかし、スペクタビリスは昔から他のアロエと混同されてきました。その経緯について調べましたので、ひとつ記事とさせていただきます。2010年のKlopper & Gideon F.Sm.『Asphodelaceae : Alooideae : Reinstatement of Aloe spectabilis Reynolds』と、2021年のColin C.Walker『Aloe spectabilis - a splend South African species』というスペクタビリスについてのレビューを参照にして、ことの経緯を見てみましょう。

著名な植物学者であるAlwin Bergerは、1908年に権威のあるアロエについてのモノグラフを出版しました。これは、数十年にわたりアロエの分類の標準的な作品でした。Bergerはスペクタビリスを、Aloe ferox Mill.に含めました。しかし、1937年にGilbert Westacott Reynoldsはスペクタビリスを識別し、Bergerの見解は間違いであること、そして新種としました。つまり、Aloe spectabilis Reynoldsです。

それからなんと63年後の2000年にGlen & D.S.Hardyは、スペクタビリスをAloe marlothiiと同種であるとしました。確かにスペクタビリスはマルロシイによく似ており、分布も類似します。スペクタビリスはこのまま吸収されて消えてしまうのでしょうか?

しかし、2010年にRonell R. Klopper & Gideon F. Smithが『アロエ・スペクタビリスの復活』と称して、Aloe marlothiiとAloe spectabilisの特徴を比較しています。Klopper & Gideon F.Sm.と言えば、Aloianpelos属やAloidendron属を創設した研究者ですね。スペクタビリスとマルロシイの特徴を比較すると以下のようになります。

Aloe marlothii
花序 : 斜めから水平、30-50cm、20-30本
花柄の色 : 緑色から赤褐色
内側の花被片の頂点 : 淡~深紫色
フィラメントの伸長部 : 淡~深紫色

Aloe spectabilis
花序 : ほぼ直立、25cm前後、10-14本
花柄の色 : 暗褐色からほぼ黒色
内側の花被片の頂点 : くすんだ光沢のある黒色
フィラメントの伸長部 : オレンジ色

 花が咲かないと、マルロシイとスペクタビリスは区別出来ないと言われていますが、確かに花の特徴が決め手なようです。

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昨年の12月に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、例によってラフレシア・リサーチさんで激安のAloe pegleraeを購入した際、おまけでいただいたAloe spectabilisの抜き苗です。アロエを買っておまけでアロエを貰うというのも、何やら不思議な感じがします。
直ぐ
に植え付けましたが非常に丈夫で、真冬に植えたにも関わらずあっという間に根が張ったことには驚きました

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2022年8月。葉が旋回を始めました。アロエは若い時は葉は二列性(左右に葉が並ぶ)ですが、生長すると葉はぐるぐる回りながら生えます。

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トゲはかなり強いみたいです。そういえば、マルロシイは「鬼切丸」と呼ばれますが、スペクタビリスは「鬼王錦」という名前もあるそうです。サボテンでは名前に「錦」とついた場合は斑入り品種を指しますが、アロエでは斑入り品種のことではなく、斑入り品種ではなくても普通に「○○錦」という名前がつきます。

スペクタビリスは巨大アロエで、高さ5mに達します。幹は木質となりますが、有名な巨大アロエであるAloidendron属とは異なり、枝分かれせず単幹で葉は巨大になり頭でっかちな見た目になります。花は枝分かれして巨大で、鳥や昆虫の蜜源として重要です。
スペクタビリスはKwaZulu-Natalの固有種です。冬は氷点下まで下がる可能性があるそうです。面白いことに、1900年に自由州の農場にスペクタビリスが3本植えられたそうですが、現在では3万本以上に増えてしまったそうです。

今回の記事に出てくる3種類のアロエの学名と記載年について一応記しておきます。
1768年 Aloe ferox Mill.
1905年 Aloe marlothii A.Berger
1937年 Aloe spectabilis Reynolds



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ボルシーはアルゼンチン原産のギムノカリキウムの一種です。現在では九紋竜Gymnocalycium gibbosumの亜種とされているようです。

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Gymnocalycium gibbosum subsp. borthii

九紋竜の学名は1844年に命名されたGymnocalycium gibbosum (Haw.) Pfeif. ex Mittlerです。しかし、この種小名gibbosumが最初に命名されたのは1816年のことです。gibbosum系の学名は以外の様な経過をたどりました。
1816年 Cactus gibbosum Haw.
1826年 Cereus gibbosum (Haw.) Sweet
1828年 Echinocactus gibbosum (Haw.) DC.
1844年 Gymnocalycium gibbosum
                                       (Haw.) Pfeif. & Mittler


G. gibbosumには沢山の異名がありますが、現在は認められておりません。あまりに異名が多いので、亜種、変種、品種を除いたリストを以下に示します。
1828年 Cereus reductus DC.
1830年 Echinocactus nobilis Haw.
1837年 Echinocactus mackieanus Hook.
1850年 Echinocactus leucodictyus Salm-Dyck
1925年 Gymnocalycium brachypetalum Speg.
              Gymnocalycium chubutense (Speg.) Speg.
1931年 Echinocactus brachypetalum
                                          (Speg.) Werderm.            
1995年 Gymnocalycium mackieanum
                   (Hook.) Metzing, Mereg. & R. Kiesling
2006年 Gymnocalycium dubniorum Halda & Milt

さて、次にボルシーの学名は2005年に命名されたGymnocalycium gibbosum subsp. borthii (Kloop ex T.Hill) G.J.Charlesです。初めて命名されたのは、1987年のGymnocalycium borthii Kloop ex T.Hillですが、上記の如く2005年にG. gibbosumの亜種とされました。



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シャボテン新図鑑
shabomaniac!
2022-05-22

ギラウミニアナはマダガスカル原産の花キリンの仲間です。花は地味で花キリン感は薄いのですが、木質の幹からトゲが出るあたりはいかにも花キリンです。私は入手してからまだ2年ですが、いまだに育て方に迷いがあります。ネットの情報では、ギラウミニアナの育て方と言いながら多肉植物の基本的な育て方が記載されており、ギラウウミニアナの育て方ではないように見受けられます。

そういえば、私は"guillauminiana"を「グイラウミニアナ」とラテン語読みしてしまいますが、なんで「ギラウミニアナ」と呼ばれているのでしょう? この種小名はフランスの植物学者であるAndré Louis Joseph Edmond Armand Guillauminに対する献名ですが、このGuillauminはフランス語ではおそらく「ギヨマン」と読むみたいですから、名前の読みかたならば「ギヨマニアナ」ですね。まあ、読み方なんて本来はどうでもいい話ですから、なんと読んでも一緒なんですけどね。以降、個人的なこだわりで、例によってラテン語読みのグイラウミニアナでいかせていただきます。

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2020年3月。園芸店で冬を越した苗で、根鉢が崩れて用土が半分くらいしかない状態でした。しかし、大特価の半額お値引き品という札に釣られて、ついつい購入してしまいました。今にして思えば危険な賭けでした。グイラウミニアナは寒さに弱いと聞きますから、そのままお亡くなりになる可能性も大でしたからね。

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2020年6月。購入時、すぐに植え替えましたが、それからわずか3ヶ月で開花しました。葉色も良く順調です。

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2022年8月。2年経って枝分かれしていますが、葉色の薄さが気になります。今年は異常な暑さで日差しが強すぎて多肉たちにもダメージがありましたが、おそらくはグイラウミニアナもその影響があったのでしょう。

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ただし、水やりについては良くわかりません。花キリンはやや水多めの方がいいような気もしますが、グイラウミニアナはどうでしょうか? 枝のつまった形の良いグイラウミニアナにするためには、あまりじゃぶじゃぶ水やりしない方がいいような気もしますが…

そういえば、グイラウミニアナは花キリンEuphorbia miliiの仲間と言われています。2013年にユーフォルビア属の遺伝子解析したPhylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文では、花キリン類はゴニアステマ節に分類されています。そこでは20種類ほど花キリン類を調べているようですが、残念ながらグイラウミニアナは調べていません。一応の証拠が欲しいので、マダガスカルのユーフォルビアを調べた2014年の『Insights on the Evolution of Plant Succulence from a Remarkable in Madagascar (Euphorbia)』という論文では、グイラウミニアナは噴火竜Euphorbia viguieriと近縁とあります。むしろ、近縁に見えるEuphorbia milii系とはそれほど近縁ではないようです。面白いですね。しかし、いずれにせよグイラウミニアナは花キリン類=ゴニオステマ節であることは間違いないと言えます。

グイラウミニアナの学名は1942年に命名されたEuphorbia guillauminiana Boiteauです。Boiteauはフランスの植物学者であるPierre Louis Boiteauのことです。Boiteauはマダガスカルのハンセン病療養所で働いていましたが、やがて現地語を学んだことにより、現地の伝統医療を知り薬草を研究しました。やがて、かつてマダガスカルに存在したメリナ王国の女王の親類の植物学者であるAlbert Rakoto Ratsimamangaと協力し、マダガスカルの薬草の研究所であるIMRAを設立しました。Boiteauは戦乱によりフランスに帰国しましたが、IMRAは現在も活動しているそうです。



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