近年、花キリン類の分類が見直されつつあります。というのも、花キリン類は外見上の判別が難しく、非常に混乱したグループとされているからです。恐らく、これから花キリン類は大胆に整理されていくことになるのでしょう。さて、本日はそんな花キリンからEuphorbia cap-saintemariensisをご紹介します。
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Euphorbia cap-saintemariensis

まずは学名の話から始めましょう。初めて命名されたのは1970年のEuphorbia cap-saintemariensis Rauhでした。しかし、1984年にEuphorbia decaryi var. cap-saintemariensis (Rauh) Cremersとする意見もありました。しかし、E. cap-saintemariensisをE. decaryiの変種とすることは、Rauh & Buchlohにより批判され、一般にも認められませんでした。しかし、様々なサイトでは今でもE. decaryi var. cap-saintemariensisと呼ばれることもあるとされ勝ちですが、真相はただそう言う意見もあったというだけです。
しかし、ここで1つ解説が必要でしょう。E. decaryiの名前はどうやら混乱があったようで、現在E. decaryiと呼ばれる植物はE. boiteauiを指し、本来のE. decaryiとは現在E. francoisiiと呼ばれている植物のことなんだそうです。つまり、E. decaryi var. cap-saintemariensisという名前は、現在のE. francoisiiに対してではなく、本来のE. boiteauiに相当する植物に対する変種とされたということになります。
このように、E. decaryi、E. boiteaui、E. francoisiiを整理したのは、2016年のJ.-P.Castillon & J.-B.Castillonでした。しかし、CastillonらはE. decaryi var. cap-saintemariensisをE. boiteauiと関連付けることはせず、E. cap-saintemariensisとして独立する考え方を支持しました。2021年にはE. decaryiの近縁種を整理した
Haevermans & Hetterscheidも、E. cap-saintemariensisを独立種とする考え方を支持しています。
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Euphorbia boiteaui

2013年に発表されたBrian L.Dorseyらのユーフォルビアの遺伝子を解析した論文では、E. cap-saintemariensisはE. rossii、E. tulearensis、E. beharensisと同じグループとされています。また、E. ambovombensis、E. decaryi(=E. boiteaui)、E. cylindrifolia、E. francoisii(=E. decaryi)は同じグループで、E. cap-saintemariensisのグループとは姉妹群です。ということで、どうやらE. cap-saintemariensisは言うほどE. boiteauiに近縁ではないようです。
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Euphorbia tulearensis

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Euphorbia rossii

次に原産地の情報ですが、花キリンですから当時ながらマダガスカル原産です。E. cap-saintemariensisはマダガスカル島の最南端の岬にあるCap Sainte-Marie保護区に特有ですが、種小名が地名に由来することが分かります。生息地域は約0.9km2と非常に狭く、絶滅の危機に瀕しています。生息地は平らな石灰岩の台地で、風が吹きすさぶ嵐の多い地域です。E. cap-saintemariensisは完全な直射日光か、他の植物にまだらに覆われた半日陰で育ちます。Alluaudia comosa、Alluaudiopsis fiherensis、Aloe millotii、Crassula humbertiなどと共に育ちます。生息環境を見ると、Euphorbia decaryiより日照を好むことが分かります。
育て方を調べていたところ、面白いことが書かれていました。植え替え後もE. cap-saintemariensisが休眠状態だった場合、植え替えのダメージが回復する2週間程度経った後、40~50℃のお湯を与えると通常2~7日で休眠から覚めると言います。ショック療法みたいなものかもしれませんが、結構乱暴な方法ですね。

さて、種小名は「cap-saintemariensis」な訳ですが、「capsaintemariensis」とハイフンを入れない表記もよく見られます。正式にはハイフンを入れるようです。名前の由来である「Cap Saint Marie」は、「Cap Saint-Marie」とも表記されることもあります。学名とは逆のような気がしますが、この場合は「Cap」+「Saint-Marie」を表しています。 ですから学名では「cap」+「saintmarie」となっているのでしょう。まあ、意味的には「聖Marieの岬」ですから、分けるなら「聖Marie」と「岬」ですよね。ずいぶんとつまらないことを言ったかもしれません。


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