Welwitschia mirabilisはナミブ砂漠に生える奇妙な植物です。生長点から出る2枚しかない葉が一生伸び続け、先端は枯れて葉が裂けるため、何枚も葉があるように見えたりします。ほとんど雨が降らない地域にも生えるため、1本の根が伸び続けて地下水を利用しているのだと言います。推定寿命は400~1500年と非常に長命な植物です。日本では「奇想天外」なる妙な名前もあります。
さて、Welwitschiaは砂漠の植物ですから、CAM植物ではないかと言われて来ました。これは光合成の方法に関する話です。少し解説しましょう。一般的に日本に自生する植物の多くはC3植物です。C3植物は取り込んだ二酸化炭素を、炭素が3つからなる物質に変換します。しかし、乾燥地の植物にはC4植物とCAM植物が多く、取り込んだ二酸化炭素を炭素が4つからなる物質に変換します。光合成するためには気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、乾燥地では日中に気孔を開くと蒸散により水分が逃げてしまいます。ですから、C4植物やCAM植物は日中は気孔を閉じていて、夜間に二酸化炭素を取り込んでおくのです。さらに、CAM植物は取り込んだ二酸化炭素を最終的にリンゴ酸に変換して水分に溶かした状態で貯蔵することが出来ます。Welwitschiaは極端な乾燥に耐えるためにCAM植物であろうと考えることは、何らおかしなことではありません。しかし、驚くべきことにWelwitschiaはCAM植物ではなく、C3植物だということが分かりました。つまりは、光合成をするために日中気孔を開いてガス交換をして、大量の水分を蒸散により失っているのです。つまりはWelwitschiaは生長が遅く不活発な印象とは裏腹に、大量の水分を地下深くから吸い上げて、吸い上げた水分を大量に蒸散により失うかなり動的な植物なのです。

奇想天外 Welwitschia mirabilis
(神代植物公園)
本日はWelwitschiaと菌との関係性を調査したK.M.Jacobson、P.J.Jacobson、O.K.Miller.Jr.の1993年の論文、『The mycorrhizal status of Welwitschia mirabilis』をご紹介しましょう。当ブログでは植物と菌との共生関係=菌根について度々取りあげていますが、多くの植物は菌類と共生関係を結び様々な恩恵を受けていることが明らかとなっています。極めて乾燥した地域に生える直根しかないWelwitschiaには菌類との共生は縁がないような気もします。しかし、何事も実際に確かめなければ確証は得られないものです。著者らはナミブ砂漠の7つの地域で、Welwitschiaの根を調べています。ただし、植物を傷付けない非破壊調査であるため、岩のひび割れに生えるWelwitschiaは流石にお手上げだったということです。
さて、先ほどから菌だとか菌類などと呼んできましたが、今回の調査はアーバスキュラー菌根菌を対象としています。アーバスキュラー菌根菌は植物の根の組織内に入り込んで、まるで植物の根と一体となったかのようなアーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は植物の80%以上で確認されている汎用性が高い菌根菌です。
さて、まずはW. mirabilisを調査した7つの地域について見てみましょう。1つ目(A)は浅い砂質土壌がある狭い渓谷で、Euphorbia phyllocladaなども生えていました。2つ目(B)は1つ目地域で乾燥した一年草が見らる場所です。3つ目(C)は広大な砂利の平野で、何百ものW. mirabilisが、干上がって固まった石膏からなる水路の跡に生えていました。他の植物はまばらで、ZygophyllumやArthraeruaなどが生え、枯れた一年草の残骸がありました。雨が降るとその時だけ一年草が生えるのでしょう。4つ目(D)はMessum川の南です。硬い石膏からなり、掘ると地下には岩がある状態でした。W. mirabilis以外ではZygophyllumのみが見られました。5つ目(E)はSamanab川の浅い岩だらけの水路と隣接する砂利からなる平野です。Zygophyllumが唯一の多年草です。6つ目(F)は5つ目の河川の土手で、ZygophyllumとStipagrostisが見られました。7つ目(G)は岩だらけですが、密に草に覆われていました。
全体的な特徴は7つ目以外は、Welwitschiaと他の種類の植物が2~10mも離れて生えていたことと、降雨量が0~100mmと非常に少ないことです。また、7つ目だけは降雨量が150~200mmと比較的雨が降る環境でした。
A、D、Fでは5つのサンプルでは菌根を確認出来ませんでした。また、CとEでは菌根を持たないものもありましたが、よく発達した菌根を持つものもありました。FとGはすべての個体で菌根が確認されました。
また、土壌中の菌根菌の胞子を調べたところ、W. mirabilisの菌根がない個体では胞子は見つかりませんでした。また、Gにおいては菌根がよく発達し、胞子濃度も非常に高いものでした。
W. mirabilisにどのようにして菌根菌が広まるのか、2つのシナリオがあります。1つは風で胞子が拡散する可能性です。しかし、平野部の地面は石灰質で覆われており、飛んできた胞子が定着することは難しいかもしれません。そうなると、雨が降った時だけ生える一年草の根に感染した菌根菌が由来なのでしょう。なぜなら、一年草が生えるくらい雨が降り、W. mirabilisの周囲に一年草の枯れ草がある場合にW. mirabilisに菌根が見られたからです。
以上が論文の簡単な要約となります。極めて厳しい環境に生えるW. mirabilisには、通常の手段では菌根菌も近寄ることが出来ないことが分かります。しかし、一年草が生える環境では、一年草から菌根菌がやってくるのです。しかし、極地の植物であるWelwitschiaですら、菌根を形成することがあるということに驚きます。ただ、この論文では菌根の存在を確めはしましたが、菌根菌がWelwitschiaに如何なる恩恵をもたらしているのかは、まったく不明です。とは言うものの、それを確めるにはWelwitschiaをポットに植えて人工的に菌根菌を接種したグループとしていないグループを比較する必要があります。しかし、根が極めて長いWelwitschiaのポット栽培は中々困難かもしれません。また、差がはっきりするくらい栽培するとなると、生長が遅いため非常に長期間の栽培が必要でしょう。1年ならまだしも5年10年、あるいはそれ以上となる可能性もあります。あまり、現実的とは言えないかもしれませんね。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村

にほんブログ村
さて、Welwitschiaは砂漠の植物ですから、CAM植物ではないかと言われて来ました。これは光合成の方法に関する話です。少し解説しましょう。一般的に日本に自生する植物の多くはC3植物です。C3植物は取り込んだ二酸化炭素を、炭素が3つからなる物質に変換します。しかし、乾燥地の植物にはC4植物とCAM植物が多く、取り込んだ二酸化炭素を炭素が4つからなる物質に変換します。光合成するためには気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、乾燥地では日中に気孔を開くと蒸散により水分が逃げてしまいます。ですから、C4植物やCAM植物は日中は気孔を閉じていて、夜間に二酸化炭素を取り込んでおくのです。さらに、CAM植物は取り込んだ二酸化炭素を最終的にリンゴ酸に変換して水分に溶かした状態で貯蔵することが出来ます。Welwitschiaは極端な乾燥に耐えるためにCAM植物であろうと考えることは、何らおかしなことではありません。しかし、驚くべきことにWelwitschiaはCAM植物ではなく、C3植物だということが分かりました。つまりは、光合成をするために日中気孔を開いてガス交換をして、大量の水分を蒸散により失っているのです。つまりはWelwitschiaは生長が遅く不活発な印象とは裏腹に、大量の水分を地下深くから吸い上げて、吸い上げた水分を大量に蒸散により失うかなり動的な植物なのです。

奇想天外 Welwitschia mirabilis
(神代植物公園)
本日はWelwitschiaと菌との関係性を調査したK.M.Jacobson、P.J.Jacobson、O.K.Miller.Jr.の1993年の論文、『The mycorrhizal status of Welwitschia mirabilis』をご紹介しましょう。当ブログでは植物と菌との共生関係=菌根について度々取りあげていますが、多くの植物は菌類と共生関係を結び様々な恩恵を受けていることが明らかとなっています。極めて乾燥した地域に生える直根しかないWelwitschiaには菌類との共生は縁がないような気もします。しかし、何事も実際に確かめなければ確証は得られないものです。著者らはナミブ砂漠の7つの地域で、Welwitschiaの根を調べています。ただし、植物を傷付けない非破壊調査であるため、岩のひび割れに生えるWelwitschiaは流石にお手上げだったということです。
さて、先ほどから菌だとか菌類などと呼んできましたが、今回の調査はアーバスキュラー菌根菌を対象としています。アーバスキュラー菌根菌は植物の根の組織内に入り込んで、まるで植物の根と一体となったかのようなアーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は植物の80%以上で確認されている汎用性が高い菌根菌です。
さて、まずはW. mirabilisを調査した7つの地域について見てみましょう。1つ目(A)は浅い砂質土壌がある狭い渓谷で、Euphorbia phyllocladaなども生えていました。2つ目(B)は1つ目地域で乾燥した一年草が見らる場所です。3つ目(C)は広大な砂利の平野で、何百ものW. mirabilisが、干上がって固まった石膏からなる水路の跡に生えていました。他の植物はまばらで、ZygophyllumやArthraeruaなどが生え、枯れた一年草の残骸がありました。雨が降るとその時だけ一年草が生えるのでしょう。4つ目(D)はMessum川の南です。硬い石膏からなり、掘ると地下には岩がある状態でした。W. mirabilis以外ではZygophyllumのみが見られました。5つ目(E)はSamanab川の浅い岩だらけの水路と隣接する砂利からなる平野です。Zygophyllumが唯一の多年草です。6つ目(F)は5つ目の河川の土手で、ZygophyllumとStipagrostisが見られました。7つ目(G)は岩だらけですが、密に草に覆われていました。
全体的な特徴は7つ目以外は、Welwitschiaと他の種類の植物が2~10mも離れて生えていたことと、降雨量が0~100mmと非常に少ないことです。また、7つ目だけは降雨量が150~200mmと比較的雨が降る環境でした。
A、D、Fでは5つのサンプルでは菌根を確認出来ませんでした。また、CとEでは菌根を持たないものもありましたが、よく発達した菌根を持つものもありました。FとGはすべての個体で菌根が確認されました。
また、土壌中の菌根菌の胞子を調べたところ、W. mirabilisの菌根がない個体では胞子は見つかりませんでした。また、Gにおいては菌根がよく発達し、胞子濃度も非常に高いものでした。
W. mirabilisにどのようにして菌根菌が広まるのか、2つのシナリオがあります。1つは風で胞子が拡散する可能性です。しかし、平野部の地面は石灰質で覆われており、飛んできた胞子が定着することは難しいかもしれません。そうなると、雨が降った時だけ生える一年草の根に感染した菌根菌が由来なのでしょう。なぜなら、一年草が生えるくらい雨が降り、W. mirabilisの周囲に一年草の枯れ草がある場合にW. mirabilisに菌根が見られたからです。
以上が論文の簡単な要約となります。極めて厳しい環境に生えるW. mirabilisには、通常の手段では菌根菌も近寄ることが出来ないことが分かります。しかし、一年草が生える環境では、一年草から菌根菌がやってくるのです。しかし、極地の植物であるWelwitschiaですら、菌根を形成することがあるということに驚きます。ただ、この論文では菌根の存在を確めはしましたが、菌根菌がWelwitschiaに如何なる恩恵をもたらしているのかは、まったく不明です。とは言うものの、それを確めるにはWelwitschiaをポットに植えて人工的に菌根菌を接種したグループとしていないグループを比較する必要があります。しかし、根が極めて長いWelwitschiaのポット栽培は中々困難かもしれません。また、差がはっきりするくらい栽培するとなると、生長が遅いため非常に長期間の栽培が必要でしょう。1年ならまだしも5年10年、あるいはそれ以上となる可能性もあります。あまり、現実的とは言えないかもしれませんね。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント