多くの野生の植物は菌類と共生関係を結んでいます。積もる落ち葉を剥がすと、茸の菌糸が一面に張りめぐらされています。森の木々は地下世界に広がる菌糸により、繋がっていたりします。これを菌根と呼んでいます。菌根は不思議なもので、植物の根が菌糸の服を着ているようなもので、植物と菌類はお互いに養分をやり取りしています。この菌根は思われていたより重要であることが近年わかりつつあり、様々な研究が活発になされているようです。さて、そんな菌根ですが、サボテンに対する影響を調べた研究がありましたのでご紹介します。Domenico Prisaの2020年の論文、『Gigaspora Margarita use to improve flower life in Notocactus and Gymnocalycium plants and roots protection against Fusarium sp.』です。
この研究ではGigaspora margaritaという菌類をサボテンと共生させて、サボテンの生育とサボテンの病原菌に対する影響力を見ています。まずは、実験に使用したサボテンは、Gymnocalycium baldianum、Gymnocalycium mihanovichii、Notocactus eugeniae、Notocactus leninghausiiです。共生菌のGigaspora margaritaはグロムス門に分類されます。グロムス門は植物の8割と共生可能なグループで、アーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、植物の根の組織内に菌糸が侵入して深く結びついており、主にリン酸を集めて植物に与えています。
栽培10ヶ月後、Gigaspora margaritaのあるグループとないグループで比較したところ、Gigaspora margaritaのあるグループでは、4種類のサボテンは高さと円周、地上部と根の重量、花と果実の数、花の寿命がすべて高い値でした。これは面白い結果です。根の重量があるということは根の張りが良いということです。当然、サボテンの生長にプラスでしょう。さらに、花数については、サイズが大きく栄養状態が良ければ、花数も増えるのは道理です。しかも、花の寿命が伸びていますから、花数の多さも加算されて、結果として果実も増えています。花の寿命が長いと、それだけ受粉のチャンスが増えますからね。
次に病原菌に対する反応です。この研究では、フザリウム(Fusarium)という植物感染性のカビを接種しています。フザリウムには沢山の種類がありますが、植物寄生性のカビが複数含まれます。フザリウムは実はまとまりのあるグループではありません。菌類には完全世代と不完全世代があり、この2つの世代を繰り返しています。完全世代とは有性生殖により胞子を作る世代で、不完全世代とは分裂や出芽など無性生殖する世代のことです。このうち、不完全世代しか知られていない菌類を不完全菌と呼んでいました。不完全菌は特徴で分類することが難しく、わからないものは取り敢えず不完全菌とされてしまっていたのです。というのも、完全世代と不完全世代では姿が全く異なることが多く、しかも違う植物に寄生します。それぞれの世代がすでに発見されていても、それが同じ種類であるとはわからなかったりします。とまあ、話が脱線しましたが、Gigaspora margaritaの有無で違いはあるのでしょうか?
結果は、Gigaspora margaritaがあることにより、サボテンの死亡率の大幅な低下が見られました。G. baldianumでは死亡率3.61%が0.78%、G. mihanovichiiでは死亡率2.84%が0.21%、N. eugeniaeは死亡率2.46%が0.21%、N. leninghausiiは死亡率0.84%が0.21%になりました。つまり、アーバスキュラー菌根の存在により、有害なフザリウムの被害を減らすことが出来たのです。
植物に感染するカビは特に農作物で良く調べられており、アーバスキュラー菌根菌の存在によりFusariumだけではなく、Aphanomyces、Cylindrocladium、Macrophomina、Phytophthora、Pythium、Rhizoctonia、Sclerotinium、Verticillium、Glomusといった病原菌に対しても防御する効果があることがわかっています。アーバスキュラー菌根菌はフザリウムだけではなく、様々な病原菌に対してもサボテンを守ってくれる可能性があると言えるのではないでしょうか。今後、研究が進展した暁には、サボテン用のアーバスキュラー菌が販売される未来がやって来るかもしれませんね。
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この研究ではGigaspora margaritaという菌類をサボテンと共生させて、サボテンの生育とサボテンの病原菌に対する影響力を見ています。まずは、実験に使用したサボテンは、Gymnocalycium baldianum、Gymnocalycium mihanovichii、Notocactus eugeniae、Notocactus leninghausiiです。共生菌のGigaspora margaritaはグロムス門に分類されます。グロムス門は植物の8割と共生可能なグループで、アーバスキュラー菌根を形成します。アーバスキュラー菌根は、植物の根の組織内に菌糸が侵入して深く結びついており、主にリン酸を集めて植物に与えています。
栽培10ヶ月後、Gigaspora margaritaのあるグループとないグループで比較したところ、Gigaspora margaritaのあるグループでは、4種類のサボテンは高さと円周、地上部と根の重量、花と果実の数、花の寿命がすべて高い値でした。これは面白い結果です。根の重量があるということは根の張りが良いということです。当然、サボテンの生長にプラスでしょう。さらに、花数については、サイズが大きく栄養状態が良ければ、花数も増えるのは道理です。しかも、花の寿命が伸びていますから、花数の多さも加算されて、結果として果実も増えています。花の寿命が長いと、それだけ受粉のチャンスが増えますからね。
次に病原菌に対する反応です。この研究では、フザリウム(Fusarium)という植物感染性のカビを接種しています。フザリウムには沢山の種類がありますが、植物寄生性のカビが複数含まれます。フザリウムは実はまとまりのあるグループではありません。菌類には完全世代と不完全世代があり、この2つの世代を繰り返しています。完全世代とは有性生殖により胞子を作る世代で、不完全世代とは分裂や出芽など無性生殖する世代のことです。このうち、不完全世代しか知られていない菌類を不完全菌と呼んでいました。不完全菌は特徴で分類することが難しく、わからないものは取り敢えず不完全菌とされてしまっていたのです。というのも、完全世代と不完全世代では姿が全く異なることが多く、しかも違う植物に寄生します。それぞれの世代がすでに発見されていても、それが同じ種類であるとはわからなかったりします。とまあ、話が脱線しましたが、Gigaspora margaritaの有無で違いはあるのでしょうか?
結果は、Gigaspora margaritaがあることにより、サボテンの死亡率の大幅な低下が見られました。G. baldianumでは死亡率3.61%が0.78%、G. mihanovichiiでは死亡率2.84%が0.21%、N. eugeniaeは死亡率2.46%が0.21%、N. leninghausiiは死亡率0.84%が0.21%になりました。つまり、アーバスキュラー菌根の存在により、有害なフザリウムの被害を減らすことが出来たのです。
植物に感染するカビは特に農作物で良く調べられており、アーバスキュラー菌根菌の存在によりFusariumだけではなく、Aphanomyces、Cylindrocladium、Macrophomina、Phytophthora、Pythium、Rhizoctonia、Sclerotinium、Verticillium、Glomusといった病原菌に対しても防御する効果があることがわかっています。アーバスキュラー菌根菌はフザリウムだけではなく、様々な病原菌に対してもサボテンを守ってくれる可能性があると言えるのではないでしょうか。今後、研究が進展した暁には、サボテン用のアーバスキュラー菌が販売される未来がやって来るかもしれませんね。
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