ビスピノスム(Pachypodium bispinosum)はアフリカ大陸原産のパキポディウムです。パキポディウムはマダガスカルで非常に多様化しましたから、やはりパキポディウムと言えばマダガスカルが本番といった感じは否めません。最近のコーデックス・ブームを牽引してきたグラキリウスは、やはりマダガスカル原産で現地球が大量に輸入されて来ました。しかし、アフリカ大陸原産のパキポディウムは今一つ目立たない存在です。しかし、これはこれで面白いので、本日はアフリカ大陸原産のビスピノスムをご紹介します。

ビスピノスムは外見的にはマダガスカル原産のパキポディウムとはかなり異なります。マダガスカルのパキポディウムは枝が太くずんぐり育ち、花が咲くと分岐します。しかし、ビスピノスムは細い枝をヒョロヒョロ伸ばし、開花とは関係なく分岐しアチコチから枝が出てきます。ですから、ビスピノスムは伸びすぎた枝を剪定しながら、まるで盆栽のように育てます。これは、P. succulentumと共通する特徴です。実はビスピノスムはスクレンツム(サキュレンタム)と見た目通り近縁で、花が咲かないと中々区別がつきにくいと言います。ビスピノスムとスクレンツムは南アフリカ南部に分布が重なり、遺伝的にも近縁です。ちなみに、遺伝的解析の結果では、ビスピノスムとスクレンツムは近縁で、この2種類に一番近縁なのはP. namaquanumということです。さて、では良く似たビスピノスムとスクレンツムの違いは何かというと、まずは花が異なります。また、スクレンツムはトゲか短いと言われています。実際に見てみます。
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Pachypodium succulentum
トゲは短く、葉の裏には毛はありません。


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Pachypodium bispinosum
トゲは長く華奢。葉の裏には少しだけ毛があります。


ビスピノスムは南アフリカの東ケープ州に分布しますが、通常は石の多い日当たりの良い場所に見られます。ビスピノスムとスクレンツムは冬は氷点下でも耐えることが出来るそうです。栽培する上では塊根を露出させて育てますが、自生地ではほとんど埋まった状態が通常のようです。我が家のビスピノスムの生育の様子を見てみます。
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2022年2月。去年の冬は葉がすべて落ちました。

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2022年7月。根元から新しい芽が吹きました。

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2023年3月。根元の枝はやたらと枝が伸びました。
購入時の写真も撮ったはずですが、なぜか見付からず…。枝は伸びましたが、思ったほど太りませんでした。とは言うものの、地下の塊根はどうなっているのか気になります。今年は植え替えるので非常に楽しみです。

ビスピノスムの学名は、1782年に命名されたEchites bispinosus L.f.から始まります。Echitesはフロリダ、中米、カリブ海地域に分布するキョウチクトウの仲間です。1837年にはPachypodium glabrum G.Donという命名もありましたが、先に命名された種小名である'bispinosus'が優先されるため、せっかく正しいくパキポディウムとしたのに認められません。1838年にはBelonites bispinosus (L.f.) E.Meyと命名されました。ちなみに、Belonitesはビスピノスムとスクレンツムのためだけに命名された属です。
さて、ビスピノスムがパキポディウムとされたのは1844年のことでした。つまり、Pachypodium bispinosum (L.f.) A.DC.です。良く見ると語尾が'-us'から'-um'に変わっています。属名が変更される時に語尾が変わることもありますが、どういう規則なのかはよくわかりません。ここら辺はラテン語そのものの規則もあるでしょうから、何やら難しそうですね。ちなみに、ビスピノスムを最初に命名したL.f.とはLinne filiusの略ですが、この'filius'は名前ではなく「息子」という意味で、学名のシステムを作ったCarl von Linneの息子です。しかし、Carl von Linneとvon Linneの息子も同じ名前なので、区別するために「リンネの息子」という表記になっているようです。
種小名の'bispinosum'は、'bis-'は「2回」とか「2度」という意味ですが、'pinos'は「松の木」ですが、正直よく分からないなあと思いました。しかし良く考えたら、これは'bis + spino'=「2本のトゲ」ですよね。実際にビスピノスムのトゲは2本がセットで生えてきます。


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