1937年にドイツで出版された『Kakteenkunde』を見つけたのですが、残念ながらドイツ語はまったく分かりません。しかし、索引を眺めていたら、なんとユーフォルビアについて書かれた記事があるみたいです。これは内容が非常に気になります。仕方なく機械翻訳にかけてみました。若干、怪しい翻訳文ですが、86年前に書かれた実に興味深い記事です。

記事のタイトルはVon Paul Stephanの『Einige wenig bekannte Euphorbia』、つまりはポール・ステファンによる「幾つかのあまり知られていないユーフォルビア」です。おそらく、Paul Stephanはハンブルク植物園で多肉植物のコレクションの管理をした植物コレクターのことでしょう。Paul Stephanは1929年にConophytum stephaniiの種小名に献名されていますね。この記事ではポール・ステファン氏が自慢のユーフォルビア・コレクションを写真付きで紹介しています。
Euphorbia stellata Willd.
ポール・ステファン氏の解説 : 太くて短い円筒形の幹の上から多数の枝が出ます。幹の樹皮は灰褐色で棘はありません。枝は暗い緑色で褐色の棘があります。枝は上部が凹み、幅は最大2cmで一対の棘で強化されています。棘は赤褐色で長さは2~3mmです。Euph. stellataは「Berger」ではEuph. uncinata DCとされていますが、これは古い名前で有効な名前であるstellataと呼ぶ必要があります。古くから知られていますが、コレクションには滅多に見られません。

ポール・ステファン氏のコレクションの写真。何故か写真の学名は、Eu. uncinnataとなっていました。本来はstellataです。しかも、uncinataをuncinnataと誤植されています。枝が短いせいか、あまりE. stellataらしく見えませんね。むしろ、Euphorbia tortiramaに見えてしまいます。水を少なく遮光しないで育てているのかもしれません。

E. stellataは日本では飛竜の名前で知られています。E. stellata Willd.は1799年の命名、E. uncinata DC.は1805年の命名です。数年前は日本でも割と珍しいユーフォルビアで、思いの外高額でした。現在は苗が出回っており、だいぶお値段も落ち着きました。

Euphorbia tortirama
Euphorbia inermis Mill.
ポール・ステファン氏の解説 : Euph. inermis Mill.はEuph. caput-medusae L.の近縁種ですが、はるかに強力な側枝が異なる点です。caput-medusaeにある若い芽は失われています。枝の肋とこぶははるかに顕著です。幹は緑色で下部に向かうほど灰色になります。

ポール・ステファン氏のコレクション。下の私の所有している個体と良く似ています。

E. inermisは日本では九頭竜と呼ばれています。E. inermisは1768年の命名です。日本では量産されており、入手しやすいタコものユーフォルビアです。あまり強光を好まないみたいです。
Euphorbia valida N.E.Br.
ポール・ステファン氏の解説 : Euph. meloformisに最も近縁ですが色が異なります。花の残骸が残っていないため無防備です。それ以外はほぼ同じ植物で、Marlothによるとmeloformisの生長形態が異なるだけに過ぎないと言います。

ポール・ステファン氏のコレクション。花柄は残っていません。かなり大型の個体のようです。

Euphorbia validaとされる個体。花柄はあまり出ません。縞模様がよく目立ちます。現在、E. valida N.E.Br.、あるいはE. meloformis subsp. valida (N.E.Br.) G.D.Rowleyは、E. meloformis Aitonと同種とされています。原産地では、E. meloformisともE. validaともつかない中間個体が多いようです。要するに、多様な個体の中で特徴的なものをピックアップして命名されただけかもしれないのです。

縞模様がほとんどない個体。花柄は長く伸びます。validaとは、ラテン語で「validus=強い」から来ています。

Euphorbia infausta N.E.Br.は、現在はE. meloformisと同一種とされています。花柄は弱く残りにくいタイプです。

貴青玉
E. meloformisのことを貴青玉と呼んでいたみたいですが、最近ではE. meloformis系交配種のことを貴青玉と言っているみたいです。
Euphorbia Suzannae Marl.
ポール・ステファン氏の解説 : ほぼ球形で複数の稜があります。長さ10mmまでのイボがあり、マミラリアのような外見です。灰緑色。若い時は単頭で、やがて枝分かれします。
※誤植があります。種小名は本来は小文字で、さらにsuzannaeではなくsusannaeです。

ポール・ステファン氏のコレクション。こちらには、Euph. Susannae Marl.と表記されていました。良くしまった美しい個体です。イボが長くて尖るタイプ。

E. susannaeは日本では瑠璃晃と呼ばれることもありますが、あまり使われないかもしれません。私の所有個体はイボが短く丸味があるタイプです。そういえば、命名者のHermann Wilhelm Rudolf Marloth(ドイツ出身で南アフリカで活動した植物学者)の略はMarl.となっていますが、正式な学名の表記ではMarlothです。まあ、1937年の命名規約がどうなっていたかは分かりませんが。
以上がポール・ステファン氏のユーフォルビア・コレクションの紹介でした。しかし、まさか80年以上前のドイツのユーフォルビア・コレクションを写真で見られるとは思っておりませんでしたから、私も感銘を受けました。こういう記事をもっと書きたいと思うものの、中々古い時代の出版物は探しても見つからないことが多く難しいですね。一応は少しずつ探索を継続する予定です。
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記事のタイトルはVon Paul Stephanの『Einige wenig bekannte Euphorbia』、つまりはポール・ステファンによる「幾つかのあまり知られていないユーフォルビア」です。おそらく、Paul Stephanはハンブルク植物園で多肉植物のコレクションの管理をした植物コレクターのことでしょう。Paul Stephanは1929年にConophytum stephaniiの種小名に献名されていますね。この記事ではポール・ステファン氏が自慢のユーフォルビア・コレクションを写真付きで紹介しています。
Euphorbia stellata Willd.
ポール・ステファン氏の解説 : 太くて短い円筒形の幹の上から多数の枝が出ます。幹の樹皮は灰褐色で棘はありません。枝は暗い緑色で褐色の棘があります。枝は上部が凹み、幅は最大2cmで一対の棘で強化されています。棘は赤褐色で長さは2~3mmです。Euph. stellataは「Berger」ではEuph. uncinata DCとされていますが、これは古い名前で有効な名前であるstellataと呼ぶ必要があります。古くから知られていますが、コレクションには滅多に見られません。

ポール・ステファン氏のコレクションの写真。何故か写真の学名は、Eu. uncinnataとなっていました。本来はstellataです。しかも、uncinataをuncinnataと誤植されています。枝が短いせいか、あまりE. stellataらしく見えませんね。むしろ、Euphorbia tortiramaに見えてしまいます。水を少なく遮光しないで育てているのかもしれません。

E. stellataは日本では飛竜の名前で知られています。E. stellata Willd.は1799年の命名、E. uncinata DC.は1805年の命名です。数年前は日本でも割と珍しいユーフォルビアで、思いの外高額でした。現在は苗が出回っており、だいぶお値段も落ち着きました。

Euphorbia tortirama
Euphorbia inermis Mill.
ポール・ステファン氏の解説 : Euph. inermis Mill.はEuph. caput-medusae L.の近縁種ですが、はるかに強力な側枝が異なる点です。caput-medusaeにある若い芽は失われています。枝の肋とこぶははるかに顕著です。幹は緑色で下部に向かうほど灰色になります。

ポール・ステファン氏のコレクション。下の私の所有している個体と良く似ています。

E. inermisは日本では九頭竜と呼ばれています。E. inermisは1768年の命名です。日本では量産されており、入手しやすいタコものユーフォルビアです。あまり強光を好まないみたいです。
Euphorbia valida N.E.Br.
ポール・ステファン氏の解説 : Euph. meloformisに最も近縁ですが色が異なります。花の残骸が残っていないため無防備です。それ以外はほぼ同じ植物で、Marlothによるとmeloformisの生長形態が異なるだけに過ぎないと言います。

ポール・ステファン氏のコレクション。花柄は残っていません。かなり大型の個体のようです。

Euphorbia validaとされる個体。花柄はあまり出ません。縞模様がよく目立ちます。現在、E. valida N.E.Br.、あるいはE. meloformis subsp. valida (N.E.Br.) G.D.Rowleyは、E. meloformis Aitonと同種とされています。原産地では、E. meloformisともE. validaともつかない中間個体が多いようです。要するに、多様な個体の中で特徴的なものをピックアップして命名されただけかもしれないのです。

縞模様がほとんどない個体。花柄は長く伸びます。validaとは、ラテン語で「validus=強い」から来ています。

Euphorbia infausta N.E.Br.は、現在はE. meloformisと同一種とされています。花柄は弱く残りにくいタイプです。

貴青玉
E. meloformisのことを貴青玉と呼んでいたみたいですが、最近ではE. meloformis系交配種のことを貴青玉と言っているみたいです。
Euphorbia Suzannae Marl.
ポール・ステファン氏の解説 : ほぼ球形で複数の稜があります。長さ10mmまでのイボがあり、マミラリアのような外見です。灰緑色。若い時は単頭で、やがて枝分かれします。
※誤植があります。種小名は本来は小文字で、さらにsuzannaeではなくsusannaeです。

ポール・ステファン氏のコレクション。こちらには、Euph. Susannae Marl.と表記されていました。良くしまった美しい個体です。イボが長くて尖るタイプ。

E. susannaeは日本では瑠璃晃と呼ばれることもありますが、あまり使われないかもしれません。私の所有個体はイボが短く丸味があるタイプです。そういえば、命名者のHermann Wilhelm Rudolf Marloth(ドイツ出身で南アフリカで活動した植物学者)の略はMarl.となっていますが、正式な学名の表記ではMarlothです。まあ、1937年の命名規約がどうなっていたかは分かりませんが。
以上がポール・ステファン氏のユーフォルビア・コレクションの紹介でした。しかし、まさか80年以上前のドイツのユーフォルビア・コレクションを写真で見られるとは思っておりませんでしたから、私も感銘を受けました。こういう記事をもっと書きたいと思うものの、中々古い時代の出版物は探しても見つからないことが多く難しいですね。一応は少しずつ探索を継続する予定です。
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