アロイデンドロンは樹木状となるアロエの仲間です。代表種はかつてアロエ・ディコトマ(Aloe dichotoma)と呼ばれていたAloidendron dichotomumです。アロイデンドロン属は近年の遺伝子解析の結果によりアロエ属から分離されました。現在アロイデンドロン属は7種類あるとされています。その点についてはかつて記事にしたことがあります。ご参照下さい。
アロエ属とアロイデンドロン属の関係は遺伝子解析により判明していますが、アロイデンドロン属内の分類はわかっていませんでした。そんな中、アロイデンドロン属の遺伝子を解析して近縁関係を解明した論文を見つけました。Panagiota Malakasi, Sidonie Bellot, Richard Dee & Olwen Graceの2019年の論文、『Museomics Clarifies the Classification of Aloidendron (Asphodelaceae), the Iconic African Tree Aloe』です。

アロイデンドロン属はアフリカ南部の砂漠を象徴する植物です。しかし、アロイデンドロン属内の進化関係は不明でした。そこで、アロイデンドロン属を遺伝子解析することにより、属内の系統関係を類推しています。ここでは、Aloestrela suzannaeというアロエ類が出てきますが、お恥ずかしい話ですが私はこのアロエストレラ属の存在を知りませんでした。アロエストレラ属は2019年に創設されましたが、Aloestrela suzannaeだけの1属1種の属です。しかし、新種というわけではなく、1921年に命名されたAloe suzannaeが2019年にAloestrela suzannaeとなりました。

アロイデンドロン属の分子系統
┏━━━━━━Aloe
┃     (Aloidendron sabaeumを含む)


┃    ┏━━━━Aloidendron ramossimum
┃    ┃
┃┏┫         ┏━Aloidendron dichotomum 1
┃┃┃     ┏┫
┃┃┃     ┃┗━Aloidendron dichotomum 2
┃┃┃┏ ┫
┃┃┃┃ ┗━━Aloidendron pillansii 1
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━Aloidendron pillansii 2
┃┃
┗┫            ┏━Aloidendron barberae 1
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━Aloidendron barberae 2
    ┃   ? ┫
    ┃        ┗━━Aloidendron barberae 3
    ┃
    ┃    ┏━━━Aloestrela suzannae 1
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━━Aloestrela suzannae 2
    ┗┫
        ┃┏━━━Aloidendron eminens 1
        ┗┫
            ┗━━━Aloidendron eminens 2


アロイデンドロン属の系統関係は、Aloidendron sabaeum以外はまとまりのあるグループでした。しかし、論文ではA. barberaeが、A. ramossimum系統なのかA. eminens系統なのかは不明瞭でした。さらに、Aloestrela suzannaeは独立したアロエストレラ属ではなくA. eminensと近縁であり完全にアロイデンドロン属に含まれてしまうことがわかりました。また、驚くべきことにA. sabaeumはアロエ属に含まれてしまい、アロイデンドロン属とは近縁ではないことが明らかとなりました。よって、今後アロエストレラ属は消滅してアロイデンドロン属となり、A. sabaeumはアロエ属に復帰するかもしれません。しかし、論文ではAloidendron tongaensisが調べられていないようです。今後の研究が待たれます。また、A. pillansiiは2個体調べていますが、この2個体は近縁ではあるもののやや遺伝的に距離があるようです。この点も注視していく必要がありそうです。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、私が知らない間に創設されたアロエストレラ属を知らない間に否定する論文が出ていたということで、己の無知を思い知るとともにアロエ類の研究が盛んに行われていることを嬉しく思います。また、A. sabaeumの遺伝子解析の結果からは、アロエが樹木状となること=アロイデンドロンではないということを示唆しています。アロエ属であっても環境に対する適応により樹木状の形態をとる可能性があるのでしょう。そうなると、樹木状とならないというか草本に回帰したアロイデンドロン属も存在するかもしれませんね。今後の研究結果が非常に楽しみになります。


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