紅彩閣というユーフォルビアがありますが、本日はその紅彩閣についてのお話です。まあ、たいした話ではありませんが。
この紅彩閣はホームセンターでも売っている普及種で、昔から国内で流通しています。いわゆるサボテンもどきの扱いでした。多肉ユーフォルビアはだいたいそんな扱いでしたけどね。よく枝が出ますが、その枝を挿し木すれば簡単に増やせます。
さて、そんな紅彩閣は園芸店では「エノプラ」という名札が付いていることが多いようです。これは、学名のEuphorbia enoplaから来ています。しかし、このE. enoplaは園芸界では使われていますが、学術的にはほとんど使用されていないことをご存知でしたか?
例えば、地球規模生物多様性情報機構に登録された標本や画像といった学術情報において、E. enoplaの使用はわずか6.4%しかありません。では、どのような名前が使われているかと言うと、Euphorbia heptagonaです。このE. heptagonaは学術情報の実に91.4%を占めています。
他のソースも見てみましょう。まず、原産国である南アフリカの絶滅危惧種のリスト(Red List)では、E. enoplaではなくてE. heptagonaでした。さらに、アメリカ国立生物工学情報センターのデータベースを見ても、やはりE. heptagonaとなっています。もはや、エノプラの名前はただの俗称、良くて園芸名でしかありません。
では、なぜE. enoplaではなくてE. heptagonaとされているのでしょうか? その理由を解説しましょう。まず大事なこととして、生物の学名にはルールがあるということです。各々が勝手に名前をつけて勝手に使用していいものではありません。すべては国際命名規約の定めたルールに従っています。
E. heptagonaの場合は、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」で簡単に説明がつきます。紅彩閣は過去に複数の学名がつけられてきました。年表をお示ししましょう。
1753年 E. heptagona L.
1858年 E. desmetiana Lem.
1860年 E. enopla Boiss.
1907年 E. morinii A.Berger
1915年 E. atrispina N.E.Br.
以上のように、E. enoplaの前に2回命名されています。一番早いのはE. heptagonaですね。E. enoplaより100年以上前に命名されたEuphorbia heptagona L.こそが正しい学名なのです。ここいら辺の情報は、2012年に出されたP.V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』をご参照下さいませ。
というわけで、紅彩閣の正式な名前はE. heptagonaでありE. enoplaは誤りです。また、最初に命名された学名があまり使用されずに忘れ去られていて、別の学名が使用されてきた場合もあります。その場合は名前を本来の正しい学名に戻すと混乱のもとになりますから、よく使われる学名を保存名(保留名、nom.cons.)として正式な学名とし、使われない本来の学名を廃棄名(nom.rej.)として使わない処置をしたりします。しかし、E. enoplaに関しては、あくまでも園芸上の使用でしかなく、学術的に使用されてきたという経緯はありません。ですから、今後学術的にEuphorbia enoplaが使用されることはないとお考え下さい。

紅彩閣 Euphorbia heptagona L.
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例えば、地球規模生物多様性情報機構に登録された標本や画像といった学術情報において、E. enoplaの使用はわずか6.4%しかありません。では、どのような名前が使われているかと言うと、Euphorbia heptagonaです。このE. heptagonaは学術情報の実に91.4%を占めています。
他のソースも見てみましょう。まず、原産国である南アフリカの絶滅危惧種のリスト(Red List)では、E. enoplaではなくてE. heptagonaでした。さらに、アメリカ国立生物工学情報センターのデータベースを見ても、やはりE. heptagonaとなっています。もはや、エノプラの名前はただの俗称、良くて園芸名でしかありません。
では、なぜE. enoplaではなくてE. heptagonaとされているのでしょうか? その理由を解説しましょう。まず大事なこととして、生物の学名にはルールがあるということです。各々が勝手に名前をつけて勝手に使用していいものではありません。すべては国際命名規約の定めたルールに従っています。
E. heptagonaの場合は、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」で簡単に説明がつきます。紅彩閣は過去に複数の学名がつけられてきました。年表をお示ししましょう。
1753年 E. heptagona L.
1858年 E. desmetiana Lem.
1860年 E. enopla Boiss.
1907年 E. morinii A.Berger
1915年 E. atrispina N.E.Br.
以上のように、E. enoplaの前に2回命名されています。一番早いのはE. heptagonaですね。E. enoplaより100年以上前に命名されたEuphorbia heptagona L.こそが正しい学名なのです。ここいら辺の情報は、2012年に出されたP.V. Bruynsの論文、『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』をご参照下さいませ。
というわけで、紅彩閣の正式な名前はE. heptagonaでありE. enoplaは誤りです。また、最初に命名された学名があまり使用されずに忘れ去られていて、別の学名が使用されてきた場合もあります。その場合は名前を本来の正しい学名に戻すと混乱のもとになりますから、よく使われる学名を保存名(保留名、nom.cons.)として正式な学名とし、使われない本来の学名を廃棄名(nom.rej.)として使わない処置をしたりします。しかし、E. enoplaに関しては、あくまでも園芸上の使用でしかなく、学術的に使用されてきたという経緯はありません。ですから、今後学術的にEuphorbia enoplaが使用されることはないとお考え下さい。

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