多肉植物好きとして以前から気になっていることがあります。それはホリダ(Euphorbia polygona var. horrida)が、自生地では寄生植物に寄生されているというのです。現在、ホリダはポリゴナ(Euphorbia polygona)の変種とされていますが、やはりポリゴナも同じ寄生植物に寄生されると言いますから、やはりホリダとポリゴナは近縁なのだろうと感じました。しかし、論文を探ってみると購入しないと読めないものしかなく、半ば諦めかけていました。しかし、最近ホリダについて色々調べていた際、多肉ユーフォルビアに寄生する寄生植物について書かれた論文を見つけました。今まで調べて読めなかった論文とは異なり、ホリダについて書かれた部分は極僅かでしたが、しかし貴重な情報を得られることは大変な僥倖です。
本日ご紹介するのはMaik Vesteの2007年の論文、『Parasitic flowering plants on Euphorbia in South Africa and Namibia』です。早速内容に入りましょう。
南アフリカとナミビアには67種類の寄生植物が知られており、23種類は茎に寄生し、44種類は根に寄生します。主に樹木を寄生先(宿主)としていますが、Aloidendron dichotomumやCotyledon、Lampranthusなどの多肉植物を宿主とするものもあります。多肉植物ではユーフォルビアの寄生植物で高い多様性が見られます。
まずは根に寄生する寄生植物から見ていきましょう。
ヒドノラ属はアフリカ南部ではHydnora africanaとHydnora tricepsが見られ、ユーフォルビアだけを宿主としています。Hydnora africanaはケープ半島からナミビアのNama Karoo、東は東ケープ州まで広く分布します。対してHydnora tricepsは希少です。植物学者のJohann F. Dregeは1830年にNamaqualandのOkip近くでH. tricepsを発見し標本を採取しました。しかし、Johann Visserが1988年にNamaqualandで再発見するまで忘れ去られていました。分布はNamaqualandとナミビア南部の狭い地域からのみ知られています。H. tricepsはEuphorbia dregeanaに寄生し、他のユーフォルビアが近くに生えていてもE. dregeanaにのみ寄生します。Namaqualandの北西にあるPort NollothではE. dregeanaの10%、ナミビア南部では0.5%以下の寄生率であると推定されています。
Hydnoraは地下で育ち葉がないため、見つけることは中々困難です。しかし、腐敗臭を放つ異様な姿の肉質な花が、地面から地上に出て来て咲きます。悪臭は受粉のためにハエを呼んでいるのかもしれません。果実は食用となり甘味があり、南アフリカ北部のKhoi族は伝統的に利用しています。
次に茎に寄生する寄生植物を見てみましょう。
樹木の枝に寄生するヤドリギはアフリカ南部の乾燥地帯でも一般的です。寄生植物は決まった宿主に寄生しますが、中には相手をあまり選ばない種類もあります。Tapinanthus oleifoliusはAcacia、Aloe、Citrus、Ficus、Rhus、Tamarixや他の種類の寄生植物にすら寄生します。このT. oleifoliusは矢毒キリン(Euphorbia virosa)にも寄生することが知られています。

矢毒キリン Euphorbia virosa
最小のヤドリギはViscum minimumで、2~3枚の葉を持ち数ミリメートルしかありません。Little Karooから東ケープまで分布します。
1981年にVisserはV. minimumが、ほぼ独占的にEuphorbia polygonaとEuphorbia polygona var. horridaに寄生することを報告しました。実験レベルでは他の28種類のユーフォルビアにも寄生させることに成功しています。しかし、野生状態では分かりません。

ホリダ
Euphorbia polygona var. horrida(神代植物公園)
以上が論文の簡単な要約です。
ホリダに寄生する植物がいるという話を聞いた時に、驚くとともに非常に興味深く感じました。私は何故かホリダの根に寄生するのだろうと、勝手に思い込んでいました。それがまさか幹に数ミリメートルのゴミみたいなヤドリギがゴマを散らしたようにくっついているとは、予想値にしませんでした。
このように、論文を読むたびに新鮮な驚きがあります。多肉植物の意外性は、私の想像を上回るものがあります。これからも多肉植物の謎を調べて行きたいと思います。
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南アフリカとナミビアには67種類の寄生植物が知られており、23種類は茎に寄生し、44種類は根に寄生します。主に樹木を寄生先(宿主)としていますが、Aloidendron dichotomumやCotyledon、Lampranthusなどの多肉植物を宿主とするものもあります。多肉植物ではユーフォルビアの寄生植物で高い多様性が見られます。
まずは根に寄生する寄生植物から見ていきましょう。
ヒドノラ属はアフリカ南部ではHydnora africanaとHydnora tricepsが見られ、ユーフォルビアだけを宿主としています。Hydnora africanaはケープ半島からナミビアのNama Karoo、東は東ケープ州まで広く分布します。対してHydnora tricepsは希少です。植物学者のJohann F. Dregeは1830年にNamaqualandのOkip近くでH. tricepsを発見し標本を採取しました。しかし、Johann Visserが1988年にNamaqualandで再発見するまで忘れ去られていました。分布はNamaqualandとナミビア南部の狭い地域からのみ知られています。H. tricepsはEuphorbia dregeanaに寄生し、他のユーフォルビアが近くに生えていてもE. dregeanaにのみ寄生します。Namaqualandの北西にあるPort NollothではE. dregeanaの10%、ナミビア南部では0.5%以下の寄生率であると推定されています。
Hydnoraは地下で育ち葉がないため、見つけることは中々困難です。しかし、腐敗臭を放つ異様な姿の肉質な花が、地面から地上に出て来て咲きます。悪臭は受粉のためにハエを呼んでいるのかもしれません。果実は食用となり甘味があり、南アフリカ北部のKhoi族は伝統的に利用しています。
次に茎に寄生する寄生植物を見てみましょう。
樹木の枝に寄生するヤドリギはアフリカ南部の乾燥地帯でも一般的です。寄生植物は決まった宿主に寄生しますが、中には相手をあまり選ばない種類もあります。Tapinanthus oleifoliusはAcacia、Aloe、Citrus、Ficus、Rhus、Tamarixや他の種類の寄生植物にすら寄生します。このT. oleifoliusは矢毒キリン(Euphorbia virosa)にも寄生することが知られています。

矢毒キリン Euphorbia virosa
最小のヤドリギはViscum minimumで、2~3枚の葉を持ち数ミリメートルしかありません。Little Karooから東ケープまで分布します。
1981年にVisserはV. minimumが、ほぼ独占的にEuphorbia polygonaとEuphorbia polygona var. horridaに寄生することを報告しました。実験レベルでは他の28種類のユーフォルビアにも寄生させることに成功しています。しかし、野生状態では分かりません。

ホリダ
Euphorbia polygona var. horrida(神代植物公園)
以上が論文の簡単な要約です。
ホリダに寄生する植物がいるという話を聞いた時に、驚くとともに非常に興味深く感じました。私は何故かホリダの根に寄生するのだろうと、勝手に思い込んでいました。それがまさか幹に数ミリメートルのゴミみたいなヤドリギがゴマを散らしたようにくっついているとは、予想値にしませんでした。
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