最近、ムランジーナという名前のユーフォルビアが多肉植物に力を入れている園芸店などに並ぶようになりました。巨大な塊根のようなものから細い枝が複数伸びる不思議な姿です。
実はこのムランジーナを見た時に、これが何なのかよく分かりませんでした。というのも、大型の多肉ユーフォルビアは幹が樹木のように硬くなりますが、ムランジーナはどうもそのようには見えません。胴切りして頭から子を吹かせたわけでもなく、木質化した幹から緑の枝を伸ばしています。どうすればこのような姿に育つのか疑問でした。ですから、初見では塊根だと勘違いしたわけです。しかし、論文を調べてみると、どうも塊根ではなく幹ということで、しかもその異様な幹が形成される理由がわかりました。というわけで、ムランジーナとは一体何者なのか論文を見てみましょう。

DSC_1762
Euphorbia mlanjeana
おそらく挿し木苗ですので、特徴的な幹は見られません。

本日ご紹介するのはJoachim Thiede, Pastor Theo Peter Campbell-Barker, Philip E. Downs & Bruce J. Hargreavesの2016年の論文、『A review of Euphorbia mlanjeana L.C.Leach (Euphorbiaceae) : its habitats on Mount Mulanje(Malawi) and new localities in Mozambique』です。

論文の内容はマラウイのMulanje山に分布するE. mlanjeanaが、モザンビークにも分布していますというものです。新たな産地の報告ですね。しかし、それだけではなく、E. mlanjeanaの命名の経緯や生態も詳しく述べられています。詳しく見てみましょう。

マラウイはマラウイ湖から西に伸びるアフリカ南東部の内陸国です。タンザニア、ザンビア、モザンビークと隣接しています。マラウイの多肉植物は約120種類が知れていますが、ジンバブエの約318種類やケニアの約380種類と比較するとかはり少なく感じます。単純に国土面積が狭いからではなく、国の大部分が標高1500m以上に位置し、気温は低く降雨量もかなり多いということです。
マラウイの植生で興味深いのはMulanje山塊で、植物の多様性が高く約69の固有分類群が知れています。E. mlanjeanaもMulanje山に分布します。"mlanjeana"はMulanje山に由来しますが、よく見ると"u"が抜けています。これは、イギリスの植民地時代の綴りの誤りで、E. mlanjeana命名当時は"u"がないMlanje山と呼ばれていたことが原因です。
E. mlanjeanaは標高1000~1980mの露出した花崗岩の斜面や平らな岩肌に生えます。

E. mlanjeanaのは1973年にL.C.Leachにより命名されましたが、不思議な幹の謎がその時点で言及されていました。どうやら、E. mlanjeanaの自生地は乾燥した草が頻繁に山火事を起こし、E. mlanjeanaは数年しか枝が存続しないように見えると述べています。要するに、家火事により幹の表面は焼け焦げて枝は枯れますが、そのうち細い枝がまた出て来て、しかしまた火事が起きて…、という繰り返しがあの異様な姿を作り出したのです。思いもよらぬ自然現象によるものでした。実生からの栽培では火事に合いませんから、現地球のような姿には育たないそうです。

長い間、E. mlanjeanaはMulanje山でのみ知られる固有種でしたが、Bruynsは2003, 2005, 2006年に2種類の新種の報告の中で、モザンビークの2つの山岳地帯に生えるE. mlanjeanaについてさりげなく言及しました。モザンビークのRibaue山脈とNamuli山塊です。

さて、以上が簡単な論文の要約です。
まさか山火事が関係しているとは思いもよらず、大変な驚きでした。しかし、最近急に輸入されるようになりましたが、もともと個体数がそれほど多くなかったかわけで、これだけの野生株が山掘りされていることはかなり不安です。タンザニアからも輸入があると聞きますから、さらに新産地が見つかったのかも知れません。しかし、山火事という偶然が長い時間をかけて作り出した自生株が急激に失われていくのかも知れません。大変悲しいことです。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村