かつて、というか去年の12月初めに珍しくエケベリアについての記事を書きました。実はエケベリアについて調べていたわけではなく、庭に野良セダムが生えてきたのでセダムSedumについて調べていたのです。しかし、見つけた論文のタイトルは"Linnaeus's folly"、「リンネの愚かさ」という大胆なもので、内容もエケベリアがセダムに吸収されてしまうという衝撃的なものでした。その論文の紹介記事はこちらをご一読下さい。
さて、とは言うものの、論文はセダムを広く解析したもので、エケベリアは少し調べただけでした。そこで、エケベリアについてもっと詳細に調べた論文はないかと調べていたところ、参考になりそうな論文を見つけました。2019年の論文、『Phylogenetics relationships of Echeveria (Crassulaceae) and related genera from Mexico, based on DNA barcoding loci』です。非常に長い論文で、詳細を書いていると大変な長さになりますから、実際の遺伝子解析結果のみを示します。
まずは、エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。VilladiaがSedumに含まれてしまうなど、以前ご紹介した論文と傾向は同じです。そして、Clade IIとClade IIIの間にSedum corynephyllumが入るなど、エケベリアにはまとまりがありません。
┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium
┃
┃ ┏Sedum palmeri
┃ ┏━━┫
┃ ┃ ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃ ┃┏━━Sedum compactum
┃ ┗┫
┫ ┃┏━Sedum allantoides
┃ ┗┫
┃ ┃┏Villadia cucullata
┃ ┗┫
┃ ┗Villadia albiflora
┃
┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
┃┏━━━━━━━Clade I
┗┫
┃┏━━━━━━Clade II
┗┫
┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
┗┫
┃┏━━━━Clade III
┗┫
┃ ┏Clade IV-①
┗━━━┫
┗Clade IV-②

では、各クレードの詳細を見ていきましょう。Clade Iはパキフィツム(Pachyphytum)です。詳しくはわかりませんが、この論文ではパキフィツムはエケベリアの一部をなすと考えているようです。パキフィツムは非常にまとまりのあるグループですが、残念ながらこの論文では分離が悪く、種同士の関係性は不明です。横並びの18種類は、本来なら遠近があるはずですが、解析が上手くいかなかったようです。
┏P. fittkaui
┏┫
┃┗P. kimnachii
┃
┃┏P. compactum
┃┣P. brevifolium
┫┣P. viride
┃┣P. brachetii
┃┣P. glutinicaule
┃┣P. sp.
┃┣P. rzedowskii
┃┣P. viride
┗╋P. hookeri
┣P. oviferum
┣P. bracteosum
┣P. longifolium
┣P. caesium
┣P. werdermannii
┣P. machucae
┣P. contrerasii
┣P. saltense
┗P. garciae

次はClade IIです。Clade IIはすべてエケベリアからなります。Series Urbiniaeとありますが、属の下の分類でウルビニア列です。著者はこのウルビニア列をエケベリアからの独立を提案しているようです。しかし、やはりセダムが入れ子状に混じりますから、中々難しいところです。解決策は非常に細分化して新しい属を作りまくるか、すべてをセダムとしてしまうかです。
┏━━━E. cuspidata var. cuspidata
┏┫
┃┗━━━E. cuspidata var. zaragozae
┏┫
┃┃┏━━━E. chihuahuensis
┃┗┫
┃ ┃┏━━E. lilacina
┃ ┗┫
┃ ┗━━E. unguiculata
┃
┃ ┏━━━E. pulidonis
┃┏┫
┫┃┃┏━━E. elegans
┃┃┗┫
┃┃ ┃┏━E. potosina
┃┃ ┗┫
┃┃ ┃┏E. halbingeri var. halbingeri
┃┃ ┗┫
┃┃ ┗E. simulns
┗┫
┃ ┏━━E. juliana
┃┏┫
┃┃┃┏━E. tobarensis
┃┃┗┫
┃┃ ┗━E. turgida
┗┫
┃┏━━E. tolimanensis
┗┫
┃┏━E. agavoides
┗┫
┃┏E. colorata f. colorata
┗┫
┗E. colorata
現在の学術的なデータベースではどうなっているでしょうか? イギリスのキュー王立植物園のデータベースでは、Villadia、Pachyphytumはまだ健在です。立ち位置の怪しいSedum corynephyllumもそのままです。ただし、Urbiniaeはエケベリアの異名扱いで正式に認められた属ではありません。今後、このあたりはダイナミックに変わる可能性があります。
続きます。
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さて、とは言うものの、論文はセダムを広く解析したもので、エケベリアは少し調べただけでした。そこで、エケベリアについてもっと詳細に調べた論文はないかと調べていたところ、参考になりそうな論文を見つけました。2019年の論文、『Phylogenetics relationships of Echeveria (Crassulaceae) and related genera from Mexico, based on DNA barcoding loci』です。非常に長い論文で、詳細を書いていると大変な長さになりますから、実際の遺伝子解析結果のみを示します。
まずは、エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。VilladiaがSedumに含まれてしまうなど、以前ご紹介した論文と傾向は同じです。そして、Clade IIとClade IIIの間にSedum corynephyllumが入るなど、エケベリアにはまとまりがありません。
┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium
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┃ ┏Sedum palmeri
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┃ ┃ ┗Sedum frutescens
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┃ ┃┏━━Sedum compactum
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┫ ┃┏━Sedum allantoides
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┃ ┃┏Villadia cucullata
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┃ ┗Villadia albiflora
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┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
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┃┏━━━━━━━Clade I
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┃┏━━━━━━Clade II
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┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
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┃┏━━━━Clade III
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┃ ┏Clade IV-①
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┗Clade IV-②

では、各クレードの詳細を見ていきましょう。Clade Iはパキフィツム(Pachyphytum)です。詳しくはわかりませんが、この論文ではパキフィツムはエケベリアの一部をなすと考えているようです。パキフィツムは非常にまとまりのあるグループですが、残念ながらこの論文では分離が悪く、種同士の関係性は不明です。横並びの18種類は、本来なら遠近があるはずですが、解析が上手くいかなかったようです。
┏P. fittkaui
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┃┗P. kimnachii
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┃┏P. compactum
┃┣P. brevifolium
┫┣P. viride
┃┣P. brachetii
┃┣P. glutinicaule
┃┣P. sp.
┃┣P. rzedowskii
┃┣P. viride
┗╋P. hookeri
┣P. oviferum
┣P. bracteosum
┣P. longifolium
┣P. caesium
┣P. werdermannii
┣P. machucae
┣P. contrerasii
┣P. saltense
┗P. garciae

次はClade IIです。Clade IIはすべてエケベリアからなります。Series Urbiniaeとありますが、属の下の分類でウルビニア列です。著者はこのウルビニア列をエケベリアからの独立を提案しているようです。しかし、やはりセダムが入れ子状に混じりますから、中々難しいところです。解決策は非常に細分化して新しい属を作りまくるか、すべてをセダムとしてしまうかです。
┏━━━E. cuspidata var. cuspidata
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┃┗━━━E. cuspidata var. zaragozae
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┃┃┏━━━E. chihuahuensis
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┃ ┃┏━━E. lilacina
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┃ ┗━━E. unguiculata
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┃ ┏━━━E. pulidonis
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┫┃┃┏━━E. elegans
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┃┃ ┃┏━E. potosina
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┃┃ ┃┏E. halbingeri var. halbingeri
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┃┃ ┗E. simulns
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┃ ┏━━E. juliana
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┃┃┃┏━E. tobarensis
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┃┃ ┗━E. turgida
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┃┏━━E. tolimanensis
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┃┏━E. agavoides
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┃┏E. colorata f. colorata
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┗E. colorata
現在の学術的なデータベースではどうなっているでしょうか? イギリスのキュー王立植物園のデータベースでは、Villadia、Pachyphytumはまだ健在です。立ち位置の怪しいSedum corynephyllumもそのままです。ただし、Urbiniaeはエケベリアの異名扱いで正式に認められた属ではありません。今後、このあたりはダイナミックに変わる可能性があります。
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