最近、Euphorbia handiensisという珍しいユーフォルビアを入手しました。E. handiensisはカナリア諸島のごく限られた地域でしか見ることが出来ません。しかし、カナリア諸島と言えばEuphorbia canariensisというユーフォルビアが有名です。普及種ですし、名前にカナリアと入っているくらいですから、カナリア諸島を代表する植物の一つでしょう。
日本では「墨キリン」なる名前もつけられているよう。私も墨キリンの苗を入手して3年になりますが、墨キリンは丈夫で育てやすいユーフォルビアです。


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墨キリン Euphorbia canariensis

本日ご紹介するのは、論文ではなくてポスターです。この場合におけるポスターとは何か、説明が必要でしょう。あらゆる学問には学術誌と学会があります。論文は学術誌に載りますが、学会では舞台上の発表とポスター発表とがあります。ポスター発表はポスターが並んだ会場で、ポスターの前で他の研究者に説明したり質問に答えたりします。というわけで、本日はそんなポスターを解説していきます。2021年に発表された、Albert J. Coello, Pablo Vargas, Emilio Cano, Richard Riina & Mario Fernandez-Mazuecosの『Biogeography and phylogeography of Euphorbia canariensis reveal alternative colonization patterns in the Canary Island』です。

E. canariensisはカナリア諸島に広く自生します。カナリア諸島は海底火山の噴火により出来た、7つの島からなる群島です。東側の島が古く、ハワイのように新しい島が次々と出来て海底プレートに乗って移動し、やがて海底に沈むというサイクルがあるようです。カナリア諸島の海底に沈んだ島は白亜紀に形成されたようです。

E. canariensisの遺伝子を解析したところ、意外なことがわかりました。E. canariensisは、同じくカナリア諸島に分布するE. handiensisや、カナリア諸島に地理的に近いモロッコ原産のE. officinarum(大正キリン、異名E. echinus)とは遺伝的に近縁ではありませんでした。E. handiensisはE. officinarumに近縁であることが確認され、アフリカ大陸からの伝播が行われたことが想定されます。
面白いのは、E. canariensisは東南アジア原産のE. epiphylloidesとE. sessilifroraに近縁でした。もちろん、これは東南アジアからカナリア諸島にダイレクトに伝播したことを示しているわけではありません。E. canariensisはE. officinarumからではなく、アジアと共通する祖先から進化したと考えるほうが妥当で、著者はアフリカやアラビア半島を経由していることを想定しています。ただし、調べた種類が少ないので、これ以上の想定は困難でしょう。
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剣光閣 Euphorbia handiensis

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大正キリン Euphorbia officinarum

以上がポスターの主な内容でした。ポスターなので内容は簡潔です。まだまだ詳細はわかりませんが、指針は得られたのではないでしょうか。
さて、個人的には色々と気になることはあります。例えば、E. canariensisはカナリア諸島に広く分布しているのに、E. handiensisは1つの島の狭い地域にしか生えないのは何故でしょうか? また、ユーフォルビア自体が種子を動物に運んでもらう機構はありませんが、それでもE. canariensisはあちこちの島に分布していることは少し不思議です。火山の噴火により出来た島ですから、昔は陸続きで伝播したというわけでもありません。ユーフォルビアの種子が風で島を渡ることはないでしょうから、例えば泥ごと鳥の足についたまま移動することはあるかもしれません。しかし、そうなるとE. handiensisの分布の謎がより難題になってしまいます。まったく、謎はつきません。


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