先日、五反田TOCで開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Euphorbia handiensisという園芸店では見かけないユーフォルビアを入手しました。

Euphorbia handiensis
早速、何か良い論文はないか調べてみました。
最近では多肉植物の論文をよく読んでいるのですが、残念ながら多肉ユーフォルビアについてはほとんどありません。やはり、多肉ユーフォルビアは南アフリカ原産のものが多いです。南アフリカの多肉植物を研究する学者は、アロエやガステリアについては研究していますが、不思議なことにユーフォルビアの論文はあまり書きません。そんな傾向がありましたから、あまり期待せずに調べたところ、論文があっさりと見つかりました。カナリア諸島がスペイン領でヨーロッパの学者がアクセスしやすいからでしょうか?
さて、まずは研究者が書いた植物の簡単な紹介といった体の記事を見てみましょう。2004年のManuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoの『Euphorbia handiensis Burchard』です。
E. handiensisは多肉質な低木で、トゲのあるサボテン状の外観で、高さ1mほどになります。トゲは2~4cmで、8~14本の稜があります。花は黄緑色で赤みがかります。カナリア諸島の原産です。
E. handiensisはFuerteventura島の固有種ですが、南部のJandia半島に追いやられています。
個体群は構成も良く、比較的豊富に幼苗があります。伝統的に危機的とされてきましたが、ここ数年は安定して増加しています。しかし、部分的には家畜による被害と、違法採取が行われています。
次に2022年のMarco Critiniの論文、『Euphorbia handiensis in Barranco de Gran Valle : an endangered Fuerteventura endemic』をご紹介します。
E. handiensisは1912年にOscar Burchardにより記載されました。当時、E. handiensisは非常に一般的でしたが、植物の違法採取と海岸付近の急速な都市化で減少しました。現在、約9の地域に分布します。2004年にManuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoは回復していると報告(※1本目の解説の記事)がありましたが、少なくとも1つの地域では異なるようです。
著者は2021年8月にBarranco de Gran Valleを訪れました。標高100~150mの谷の下部で沢山のE. handiensisを観察しました。しかし、平行して走る2本の道路沿いには、E. handiensisがありませんでした。道路脇のE. handiensisは悪質な植物泥棒が、車で来て簡単に盗むことが出来ます。また、外来種のリスが種子を食べている可能性と、放牧されているヤギが環境を荒らしている可能性もあります。また、種子に寄生する昆虫の存在により、再生が行われないことも考えられます。
Barranco de Gran ValleのE. handiensisは先行きが不透明です。自然公園内にも関わらず、違法採取とヤギの過放牧が行われています。自然公園内のヤギの放牧の禁止と、違法採取を減らすためにトラックの侵入禁止などの措置を講じる必要があります。
以上がE. handiensisについての情報です。
2004年の報告の楽観的な調子と比べて、それから18年後の報告はやや悲観的です。違法採取は日本でも山野草や高山植物でも大変な問題となっており、世界中で貴重植物を悩ませる難題です。家畜の被害もやはり世界中で砂漠化や貴重な植物の食害がおきていて大問題となっています。日本でも小笠原諸島などで野生化したヤギが小笠原の固有の植物を食害し、それらの植物を食べる動物が激減しています。また、植物がなくなり土壌がむき出しになり、土が海に流出してサンゴ礁が枯死する被害も出ています。これらは中々うまい解決策がないため、基本的に後手後手になりがちです。
いずれにせよ、E. handiensisは世界でもカナリア諸島の1つの島の一部地域でしか見られない大変貴重なユーフォルビアです。E. handiensisが野生で群生する素晴らしい光景は世界で1つしかないのですから、失われてしまわないことを願っております。
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早速、何か良い論文はないか調べてみました。
最近では多肉植物の論文をよく読んでいるのですが、残念ながら多肉ユーフォルビアについてはほとんどありません。やはり、多肉ユーフォルビアは南アフリカ原産のものが多いです。南アフリカの多肉植物を研究する学者は、アロエやガステリアについては研究していますが、不思議なことにユーフォルビアの論文はあまり書きません。そんな傾向がありましたから、あまり期待せずに調べたところ、論文があっさりと見つかりました。カナリア諸島がスペイン領でヨーロッパの学者がアクセスしやすいからでしょうか?
さて、まずは研究者が書いた植物の簡単な紹介といった体の記事を見てみましょう。2004年のManuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoの『Euphorbia handiensis Burchard』です。
E. handiensisは多肉質な低木で、トゲのあるサボテン状の外観で、高さ1mほどになります。トゲは2~4cmで、8~14本の稜があります。花は黄緑色で赤みがかります。カナリア諸島の原産です。
E. handiensisはFuerteventura島の固有種ですが、南部のJandia半島に追いやられています。
個体群は構成も良く、比較的豊富に幼苗があります。伝統的に危機的とされてきましたが、ここ数年は安定して増加しています。しかし、部分的には家畜による被害と、違法採取が行われています。
次に2022年のMarco Critiniの論文、『Euphorbia handiensis in Barranco de Gran Valle : an endangered Fuerteventura endemic』をご紹介します。
E. handiensisは1912年にOscar Burchardにより記載されました。当時、E. handiensisは非常に一般的でしたが、植物の違法採取と海岸付近の急速な都市化で減少しました。現在、約9の地域に分布します。2004年にManuel V. Marrero GomezとEduardo Carque Alamoは回復していると報告(※1本目の解説の記事)がありましたが、少なくとも1つの地域では異なるようです。
著者は2021年8月にBarranco de Gran Valleを訪れました。標高100~150mの谷の下部で沢山のE. handiensisを観察しました。しかし、平行して走る2本の道路沿いには、E. handiensisがありませんでした。道路脇のE. handiensisは悪質な植物泥棒が、車で来て簡単に盗むことが出来ます。また、外来種のリスが種子を食べている可能性と、放牧されているヤギが環境を荒らしている可能性もあります。また、種子に寄生する昆虫の存在により、再生が行われないことも考えられます。
Barranco de Gran ValleのE. handiensisは先行きが不透明です。自然公園内にも関わらず、違法採取とヤギの過放牧が行われています。自然公園内のヤギの放牧の禁止と、違法採取を減らすためにトラックの侵入禁止などの措置を講じる必要があります。
以上がE. handiensisについての情報です。
2004年の報告の楽観的な調子と比べて、それから18年後の報告はやや悲観的です。違法採取は日本でも山野草や高山植物でも大変な問題となっており、世界中で貴重植物を悩ませる難題です。家畜の被害もやはり世界中で砂漠化や貴重な植物の食害がおきていて大問題となっています。日本でも小笠原諸島などで野生化したヤギが小笠原の固有の植物を食害し、それらの植物を食べる動物が激減しています。また、植物がなくなり土壌がむき出しになり、土が海に流出してサンゴ礁が枯死する被害も出ています。これらは中々うまい解決策がないため、基本的に後手後手になりがちです。
いずれにせよ、E. handiensisは世界でもカナリア諸島の1つの島の一部地域でしか見られない大変貴重なユーフォルビアです。E. handiensisが野生で群生する素晴らしい光景は世界で1つしかないのですから、失われてしまわないことを願っております。
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