カクチペス(Pachypodium cactipes)はマダガスカル原産のパキポディウムの1種です。学名は1895年にPachypodium cactipesと命名されましたが、2004年にはロスラツムの亜種とされPachypodium rosulatum subsp. cactipesとされています。国内ではカクチペスのラベルがついた実生苗を見かけることがあります。しかし、このカクチペスについて、その原産地について疑問を投げ掛けた論文を見つけました。それは、Jean-Philippe Castillon, Jean-Bernard Castillon, Solo H. J. V. Rapanarivoの2021年の論文、『Correction d'une erreur a propos de Pachypodium cactipes K. Schum』です。

論文の概要は、P. cactipesのタイプ標本はTolanaro地方 ではなく、Mahajanga州で採取されたものというものです。それに従うと、P. cactipesはP. rosulatumと同種あるいは亜種ということになるとあります。また、Tolanaro(Fort-Dauphin)のパキポディウムはP. cactipesと間違われているということです。

詳しく内容を見てみましょう。
K. Schumannは1895年にタイプ標本のない最小限の説明でP. cactipesを命名しました。後の1907年にP. cactipesはCostantin & Boisにより取り上げられ、タイプ標本J. M. Hildebrandt3114であることを確認しました。この標本は後にRapanarivoとLeeuwenbergによりレクトタイプ化され 、P. cactipesのタイプ標本とされています。この標本は詳細な産地は不明ですが、相当するTambohoranoとBesalampyの間のRanobe川付近ではP. rosulatumが見られます。
Costantin & Boisは同じ記事でP. cactipesをP. rosulatumの異名としました。1934年のPierrier de la Bathieや1949年のPichonも異名であると確認しました。
ただし、P. rosulatumのタイプ標本Baron256は調べると、なんとP. horombenseに相当することがわかりました。しかし、P. horombenseとP. rosulatumという学名は、1世紀に渡り広く知られているため、1999年にLeeuwenbergとRapanarivoは現在知られているため組み合わせが正式な学名となるように変更しました。

Luthyは2004年にP. rosulatumを分類しました。北西部にはsubsp. rosulatum、Isaloにはsubsp. gracilius、Berevo(Tsiribihinana)にはsubsp. bicolor、Makayにはsubsp. makayense、Fort-Dauphinにはsubsp. cactipes、Bemarahaにはsubsp. bemahenseが分布します。ただし、それほど分離しているわけではないようです。P. cactipesはP. rosulatumの分布の南端で、Tolanaroから1000km以上離れたMahajanga州に由来します。
著者はP. cactipesはP. rosulatum subsp. rosulatumと同種であると考えています。また、Bemarahaの石灰台地がBesalampyまで途切れることなく続いているため、P. rosulatum subsp. bemahenseと同一種である可能性も指摘されているそうです。

さて、著者はTolanaroのパキポディウムがカクチペスではないことを明らかにしましたが、ではカクチペスの産地とされてかたTolanaroのパキポディウムとは何でしょうか。それは、1907年に命名されたPachypodium rosulatum f. stenantha Costantin & Boisです。これは、誤ってvar. stenanthaと表記されることもあります。また、1934年に同じ種にP. rosulatum var. delphinense H. Perrierと命名されたこともあるようです。しかし、f. stenanthaは現在認められている学名ではありません。しかし、著者はf. stenanthaをロスラツム系ではなく、独立した別種とすべきと考えています。P. rosulatumとの形態学的な違いや、f. stenanthaの地理的孤立からの考えのようです。
また、最新の遺伝子解析についても最後に少し触れていますが、これはBurgeらの2013年の論文、
Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)』ですね。なんで知っているかというと、すでに記事にしているからです。
この論文では、P. rosulatum系は、subsp. rosulatumとsubsp. bemahensieは近縁でしたが、subsp. makayense、subsp. gracilius、subsp. bicolor、subsp. cactipes(著者の言うTolanaroに分布するP. stenantha)はP. rosulatumとは近縁とは言いがたい結果でした。著者はこのP. rosulatumの亜種の独立と、f. stenanthaを復帰すべきとしています。

論文の内容は以上です。私も2013年の論文を読んで、ロスラツム系のまとまりのなさを知り、学名の大幅な改変が必要ではないかと感じました。それは、研究者たちも同じでしょう。しかし、現在でもロスラツム系は健在です。いつかロスラツム系が解体される時は来るのでしょうか?
また、著者の提唱するPachypodium stenanthum (Costantin & Bois) J. B. Castillon, J. P. Castillon & Rapanarivo, comb. et stat. nov.はいつか正式な学名として記載されるのでしょうか。その場合は、P. rosulatum subsp. cactipesはP. rosulatum subsp. rosulatumに吸収されてしまうのでしょうか。大変気になる話題ですから、私も注視していきたいと考えております。


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