最近、Aloe aristataという名前の多肉植物を入手しました。綾錦の名前でも知られています。近年、アロエ属からAristaloe属になりました。
グランカクタスの佐藤さんの図鑑では2つのタイプの写真が掲載され、交配種の可能性が指摘されていました。ひとつはトゲがないタイプで、もうひとつは
ハウォルチアの禾を思わせるトゲがあるタイプでした。私が過去に入手したのは、トゲがないタイプで非常に葉が硬いものでした。最新の遺伝子解析による分類では、AristaloeはAstrolobaやTulista、千代田錦(Gonialoe variegata=Aloe variegata)に近縁ですから、葉は硬いということは当たり前のことだと思っていました。逆にトゲがあるタイプは柔らかそうですから、ハウォルチア系との交配種かもしれないなんて思ったりもしました。
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綾錦?
トゲがなく葉が硬いタイプ。


しかし、自生地の写真を幾つか見てみると、どの写真を見てもややハウォルチアに似た姿で、トゲがあるタイプの方でした。思い込みはいけませんね。ちゃんと調べるべきでした。そんな折、先日開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールでAloe aristataが販売されていましたので購入しました。
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綾錦 
Aloe aristata=Aristaloe aristata

葉はしなやかでトゲがあります。特徴的に綾錦で間違いないでしょう。では、先に入手していた葉が硬いタイプのアロエは何者なのでしょうか? 綾錦と無関係とも思えませんが、何者かとの交配種である可能性が高いように思われます。そこで、まずはAristaloe aristataを調べてみることにしました。取り敢えずは、論文を探して見ました。出てきたのは、Colin C. Walkerの2021年の論文、『Aristaloe aristata : a unique, monotypic species』です。内容の簡単に要約します。

植物学者というよりはプラントハンターであったイギリスのJames Bowieにより初めて採取された植物は、1825年にイギリスのAdrian Hardy HaworthによりAloe aristata Haw.と命名されました。他にも、1829年にAloe longiaristata  Schult. & Schult.f.、1934年にAloe ellenbergii Guillauminと命名されましたが、これらは異名となっています。
2013年にはAstrolobaやGonialoe variegata(Aloe variegata, 千代田錦)とともにTulista属とされ、Tulista aristata(Haw.) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在では認められておりません。
2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningと命名され、これが現在の綾錦の学名です。Aristata属はA. aristata1種類のみを含む属です。


 A. aristataは南アフリカ原産とレソトで、西ケープ州の東、南北ケープ、東ケープ、オレンジ自由州、KwaZulu-Natal南西部に至るまで、アフリカ南部に広く分布します。「暑く乾燥したカルー地域の砂質土壌、川沿いの森林の腐食質に富んだ日陰、レソトの高原にある草原など様々(Glen & Hardy, 2000)」であり、「標高は200mから2200m」かつ「アフリカ南部の最も寒い幾つかの地域にも発生(van Wyk & Smith, 2014)」ということですから、かなり環境の変化に対応できる様子が伺えます。
A. aristataの耐寒性が高いことは明らかですから、イングランド南部では屋外栽培も可能との報告があるそうです。著者はスコットランド中部で屋外栽培を試みましたが失敗した模様です。どうも、冬の雨がよろしくないみたいですね。

A. aristataは交配親としても使用されてきました。実は意外にもガステリア属との交配種があり、2013年にはG.D.Rowleyにより×Gastulistaとして19種類がリスト化されています。これは現在ではAristaloe × Gasteriaと見なされています。

簡単な論文の要約は以上です。
綾錦は非常に耐寒性があるとのことですが、私の交配系綾錦は氷点下でも耐えることが出来ます。ちゃんと親の性質を受け継いでいるのですね。そう言えば、私の所有する綾錦のようなものは論文にあるようにガステリア交配種なのでしょうか? 葉が硬くなる特徴はまさにガステリアの血を受け継いでいるからかもしれません。しかし、論文からヒントは貰いました。
ヒントを元にデータベースを調べ直しました。おそらくは、私の交配系綾錦は1931年に命名された× Gasteraloe Guillauminでしょう。キュー王立植物園のデータベースの× Gasteraloeは、なんと私の所有している綾錦系交配種とそっくりな画像が貼られていました。ただし、この× GasteraloeはGasteria × Aloe sensu lato(広義)であり、Aristaloeを分離出来ていない広義のアロエ属を示しています。論文で述べられていた× Gastulista G.D.RowleyはGasteria × Tulista sensu lato(広義)ですが、G.D. Rowleyの言うところのTulistaはAristaloeやGonialoeも含んだ広義のTulistaでしょう。確かに広義のTulistaにはAristaloeも含まれますが、G.D.Rowleyの主張する広義のTulista自体が認められておらず、本来は
Gasteria × Tulista sensu stricto(狭義)にのみ使用されるべきです。ですから、Gasteria × Aristaloeについての適切な学名が必要でしょう。


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