Euphorbia susannaeは南アフリカ原産のユーフォルビアです。日本では実生苗が大量に出回っているため、すでに普及種として安価で入手可能です。瑠璃晃なる名前も付けられており、園芸店で販売されているE. susannaeに差してある名札によく書かれています。
しかし、驚くべきことに、E. susannaeは絶滅が危惧されている希少な植物であるというのです。E. susannaeを普及種だと思っている我々日本人からすると、実に意外な話です。

瑠璃晃 Euphorbia susannae
強い日照を浴びて赤みが増しています。E. susannaeは栽培下では子を盛んに吹いて群生します。しかし、私は栽培条件を厳しくしているため、あまり子を吹きません。現在、直径6cmですが、偏平な形を維持しています。

子株に花が咲いています。下の葉は雑草なので気にしないように。
さて、本日ご紹介するのはLaaiqah Jabar, Stefan John Siebert, Michele Franziska Pfab, Dirk Petrus Cilliersの2021年の論文、『Population biology and ecology of the endangered Euphorbia susannae Marloth, an endemic to the Little Karoo, South Africa』です。
論文は南アフリカのE. susannaeの自生地を調査することにより、生息環境と個体数の把握を目的としています。南アフリカの希少植物はあまり調査がなされていないため、先ずはその実態を把握するための研究と言えます。
調査によると、E. susannaeはLangebergの北麓に8亜集団が確認されました。分布の東西の幅は、わずか32kmでした。また、集団が道路などのインフラにより分断されてしまっている自生地もありました。調査では野生のE. susannaeの全個体数をカウントしておりますが、なんとE. susannaeの野生株はわずか1845個体に過ぎないことが明らかになりました。保護区域内は良いてして、人が立ち入りやすい区域では盗掘による被害が以前より知られていたそうです。また、牛の踏みつけによる損傷も観察されました。
E. susannaeの自生地は石英からなる砂利と石からなる白い土壌です。何でも、太陽光線を反射することにより土壌の温度を下げる効果があるそうです。
また、E. susannaeの3/4は日陰で生長していることが明らかになりました。その多くは低木の下で、Haworthia arachnoideaとともに育ちます。低木は茂みを作るキク科のDicerothamnus(Elytropappus) rhinocerotisが多いようです。
E. susannaeの花に訪れるのは、その86%はアリでした。E. susannaeはアリにより受粉する虫媒花である可能性が高いとされているようです。また、甲虫類(7%)やハエ(7%)もE. susannaeの花に訪れていました。少し気になったのは、ここでいう「ハエ」はハナアブを含むのかどうかです。論文では、ただ"flies"とあるだけですが、こういう英語の機微はよくわかりません。
ユーフォルビアは一般的に種子が成熟すると、種子を遠くに撥ね飛ばします。それはE. susannaeも同様で、0.6~2.5m以内に種子を飛散させるそうです。しかし、種子に綿毛をつけて風で飛ばしたり、鳥などの動物に運んでもらう他の植物の戦略と比較すると、E. susannaeの種子の分散距離は短いと言えます。これは、親株の近くの方が生育できる環境である確率が高いからかもしれません。乾燥地域の厳しく環境では、例えば低木の下の日陰以外では実生が育たない可能性が大きいでしょう。要するに、種子の落ちる場所はどこでもいいわけではないということです。
また、種子にはelaiosome(種子に着いている栄養分でアリはelaiosome欲しさに種子ごと巣に運ぶ)がないとされていることから、myrmecochory(アリによる二次散布)の可能性は低いと言われていますが確認はされていないようです。アリが地下にある巣に運んでくれると、自動的に地中に埋められることとなり、地上よりも涼しく湿った環境で発芽することができる可能性が高くなります。
どうやら、カナダとアメリカからE. susannaeが大量に世界市場への大量輸出があったようです。これは、あまりに大規模だったため、著者は組織培養による増殖の可能性があるとしています。他の方法ではここまで急激な増殖は難しいとしています。そのため、ここ10年で違法採取は緩和したと見られています。やはり、実生にしろ組織培養にしろ、大量に生産されて普及してしまえば、わざわざ違法採取株を購入する必要がなくなります。市場価格も低下しますから、違法採取の旨味も減じることでしょう。
論文の内容は以上です。今回の調査で、野生での絶滅が危惧されるE. susannaeは2000個体を切る危機的な状況であることが明らかとなりました。しかも、保護されている環境にあるのは、わずか20%に過ぎないこともわかりました。野生生物が現在置かれている状況を先ずは把握しないと、効果的な保護活動は難しいものとなります。そのため、非常に精度の高いこの調査は大変価値が高いものでしょう。貴重な野生のE. susannaeが絶滅しないことを切に願っております。
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しかし、驚くべきことに、E. susannaeは絶滅が危惧されている希少な植物であるというのです。E. susannaeを普及種だと思っている我々日本人からすると、実に意外な話です。

瑠璃晃 Euphorbia susannae
強い日照を浴びて赤みが増しています。E. susannaeは栽培下では子を盛んに吹いて群生します。しかし、私は栽培条件を厳しくしているため、あまり子を吹きません。現在、直径6cmですが、偏平な形を維持しています。

子株に花が咲いています。下の葉は雑草なので気にしないように。
さて、本日ご紹介するのはLaaiqah Jabar, Stefan John Siebert, Michele Franziska Pfab, Dirk Petrus Cilliersの2021年の論文、『Population biology and ecology of the endangered Euphorbia susannae Marloth, an endemic to the Little Karoo, South Africa』です。
論文は南アフリカのE. susannaeの自生地を調査することにより、生息環境と個体数の把握を目的としています。南アフリカの希少植物はあまり調査がなされていないため、先ずはその実態を把握するための研究と言えます。
調査によると、E. susannaeはLangebergの北麓に8亜集団が確認されました。分布の東西の幅は、わずか32kmでした。また、集団が道路などのインフラにより分断されてしまっている自生地もありました。調査では野生のE. susannaeの全個体数をカウントしておりますが、なんとE. susannaeの野生株はわずか1845個体に過ぎないことが明らかになりました。保護区域内は良いてして、人が立ち入りやすい区域では盗掘による被害が以前より知られていたそうです。また、牛の踏みつけによる損傷も観察されました。
E. susannaeの自生地は石英からなる砂利と石からなる白い土壌です。何でも、太陽光線を反射することにより土壌の温度を下げる効果があるそうです。
また、E. susannaeの3/4は日陰で生長していることが明らかになりました。その多くは低木の下で、Haworthia arachnoideaとともに育ちます。低木は茂みを作るキク科のDicerothamnus(Elytropappus) rhinocerotisが多いようです。
E. susannaeの花に訪れるのは、その86%はアリでした。E. susannaeはアリにより受粉する虫媒花である可能性が高いとされているようです。また、甲虫類(7%)やハエ(7%)もE. susannaeの花に訪れていました。少し気になったのは、ここでいう「ハエ」はハナアブを含むのかどうかです。論文では、ただ"flies"とあるだけですが、こういう英語の機微はよくわかりません。
ユーフォルビアは一般的に種子が成熟すると、種子を遠くに撥ね飛ばします。それはE. susannaeも同様で、0.6~2.5m以内に種子を飛散させるそうです。しかし、種子に綿毛をつけて風で飛ばしたり、鳥などの動物に運んでもらう他の植物の戦略と比較すると、E. susannaeの種子の分散距離は短いと言えます。これは、親株の近くの方が生育できる環境である確率が高いからかもしれません。乾燥地域の厳しく環境では、例えば低木の下の日陰以外では実生が育たない可能性が大きいでしょう。要するに、種子の落ちる場所はどこでもいいわけではないということです。
また、種子にはelaiosome(種子に着いている栄養分でアリはelaiosome欲しさに種子ごと巣に運ぶ)がないとされていることから、myrmecochory(アリによる二次散布)の可能性は低いと言われていますが確認はされていないようです。アリが地下にある巣に運んでくれると、自動的に地中に埋められることとなり、地上よりも涼しく湿った環境で発芽することができる可能性が高くなります。
どうやら、カナダとアメリカからE. susannaeが大量に世界市場への大量輸出があったようです。これは、あまりに大規模だったため、著者は組織培養による増殖の可能性があるとしています。他の方法ではここまで急激な増殖は難しいとしています。そのため、ここ10年で違法採取は緩和したと見られています。やはり、実生にしろ組織培養にしろ、大量に生産されて普及してしまえば、わざわざ違法採取株を購入する必要がなくなります。市場価格も低下しますから、違法採取の旨味も減じることでしょう。
論文の内容は以上です。今回の調査で、野生での絶滅が危惧されるE. susannaeは2000個体を切る危機的な状況であることが明らかとなりました。しかも、保護されている環境にあるのは、わずか20%に過ぎないこともわかりました。野生生物が現在置かれている状況を先ずは把握しないと、効果的な保護活動は難しいものとなります。そのため、非常に精度の高いこの調査は大変価値が高いものでしょう。貴重な野生のE. susannaeが絶滅しないことを切に願っております。
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