玉鱗宝Euphorbia globosaは南アフリカ原産のユーフォルビアです。玉を重ねるように育ち独特の姿となります。先月五反田TOCで開催された秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールで購入しましたが、ユーフォルビアの中ではやや珍しい部類と言えます。しかし、玉鱗宝自体を見たのは初めてではなく、何度か園芸店で見かけていました。しかし、どうも玉鱗宝は徒長しやすいらしく、新しい球が針のように細長くなってしまっていました。そのため、なかなか手が出せずにいたのですが、ようやく徒長していない玉鱗宝を入手することが出来ました。
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玉鱗宝
Euphorbia globosa

そういえば、Euphorbia pseudoglobosaという玉鱗宝と似た育ち方をする種類もあります。"pseudo-"はラテン語で「偽の」という意味ですから、玉鱗宝Euphorbia globosaに似ているという意味ですね。しかし、E. pseudoglobosaは、玉鱗宝ほどきれいな球形にはなりません。表面に凹凸が少なくツルツルした玉鱗宝と比べて、E. pseudoglobosaはイボが目立ちます。見分けるのは難しくありません。
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Euphorbia pseudoglobosa

玉鱗宝の学名は、1826年に命名されたEuphorbia globosa (Haw.) Simsです。玉鱗宝はユーフォルビアでは珍しく、初めて命名された時はユーフォルビアではありませんでした。初めて命名された時は、1823年のDactylanthes globosa Haw.でした。このDactylanthesは現存しない属名ですが、Dactylanthes hamata(=Euphorbia hamata)、Dactylanthes patula(=Euphorbia patula)、Dactylanthes tuberculata(=Euphorbia tuberculata)を含んでいました。また、1859年にはMedusea globosa (Haw.) Klotzsch & Garcheという学名がつけられたこともあります。Meduseaもまた現存しない属名で、主にタコものユーフォルビア(メドゥソイド)を含んだグループでした。
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花は特徴的です。

1906年にはEuphorbia glomerata A.Bergerと命名されましたが、これは認められておりません。しかし、属名の変更ならいざ知らず、A.Bergerの命名より83年も前に命名された玉鱗宝にわざわざ新たに学名をつけたのは何故なのでしょうか? 今から100年以上前の話でインターネットもありませんから情報が得にくかったのかもしれません。この場合、最低1959年のMedusea globosaとした論文を読んでいる必要がありますが、印刷された関係論文をすべて集めるのは中々困難だったことは想像に固くありません。まあ、単純に別種と考えて新たに命名しただけの可能性もありますが、このような経緯は学名からだけではわかりませんからどうにも気になってしまいます。1906年のA.Bergerの論文を読めばいいだけなのですが、古いもの故に誰かが紙の印刷物を電子ファイルにして公開してくれていないと読むことは出来ません。

E. 
glomerataの情報はイギリス王立植物園によるもので、その記載は"Sukkul. Euphorb.:104(1906)"によるものです。一応、期待しないで探してみたところ、なんと当該論文が画像ファイルでアップされていました。親切な人ありがとう。学術誌のタイトルは"Sukkulenta Euphorbien"で、Alwin Bergerが執筆しているもののようです。内容はドイツ語なので良くわかりませんが、とりあえず104ページを見てみます。すると、何故か見出しは太字で"E. globosa Sims"とあります。なんだ、A.Bergerは玉鱗宝についてよく知っているじゃあないですか。しかも、その後ろに"Dactylanthes globosa Haw."、"E. glomerata Hort."とありました。学名の変遷までばっちり抑えています。しかし、良く見るとE. glomerata Hort.とあります。これは、Hort.が命名したE. glomerataを異名として、A.Bergerが記載したように見えます。では、なぜ一般的にはE. glomera Hort.ではなく、E. glomera A.Bergerとされているのでしょうか。大変不思議です。もしかしたら、Hort.の記載に何か問題があったのでしょうか? わかりませんが、A.Bergerがこの学術誌を正式な形で報告したということに意味があるのかもしれませんが、憶測ばかりで何もわかりません。私はここでギブアップです。

さて、当該論文には1906年当時の玉鱗宝の写真が記載されています。こういうものは滅多に目にするものではないでしょう。せっかくですから当時の写真を掲載してみました。

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Sukkulenta Euphorbien,1906 : Alwin Berger
大型の株です。100年以上前の現地球でしょうか?




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