個人的にツリスタ属が好みでチマチマ集めていますが、現在ツリスタ属は4種類なので全種類簡単に集まりました。あとは変種やフィールドナンバー付きを集めるくらいです。Haworthia pumilaとHaworthia marginataは、2013年にGordon Douglas RowleyによりTulista pumilaとTulista marginataとされました。しかしその後にGideon F.Sm & Moltenoにより2017年にはTulista kingiana、2018年にはTulista minorがツリスタ属に追加されました。そのため、海外のサイトではT. marginataやT. pumilaはツリスタ属としていても
、T. minorやT. kingianaはハウォルチア属としていることもあります。国内では残念ながらツリスタ属自体に対する認識がそもそもあまり無いのが現状で、4種類すべてがハウォルチア属としていることが多いように思われます。
Tulista kingiana
さてそんな中、今年の7月初めにT.kingianaを入手したことにより全4種類が集まりましたが、その都度学名などの情報を調べて記事にしました。この時、学名の情報はイギリス王立植物園のデータベースを参考としましたが、その根拠は特に意識していませんでした。しかし、最近多肉植物の論文を漁っているため、キンギアナをツリスタ属とした論文を見つけました。早速読んでみたところ、何やら意外なことが書かれており、単純に属名の変更というどちらかと言えば地味な論文にしては面白い内容でしたのでご紹介します。
ご紹介する論文は2017年のGideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる『A new combination in Tulista, T. kingiana (Asphodeloideae, Xanthorrhoeaceae / Alooideae, Asphodelaceae)』です。早速簡単にご紹介しましょう。
2003年のTreulein et al.や2013年のGrace et al.、2014年のManning et al.によるアロエ類の系統発生研究により、Haworthia s.l.(sensu lato=広義の)は3分割されることが示されました。Haworthiaは、Haworthia s.s.(sensu stricto=狭義の)、Haworthiopsis G.D.Rowley、Tulista Rafinesqueの3グループが確立され広く受け入れられました。
このうち、Tulistaは5種類を含むと考えられています。つまり、T. marginata (Lamarck, 1783) G.D.Rowley, 2013、T. minima (Aiton, 1789) Boatwr. & J.C.Manning, 2014、T. opalina (Hayashi, 2001) Breuer, 2016、T. pumila (Linnaeus, 1753) G.D.Rowley, 2013です。しかし、5番目の種であるHaworthia kingiana Von Poellnitz, 1936については、ツリスタ属として命名はされていますが、その学名が有効ではないと言います。どういうことなのでしょうか?
2013年のG.D.Rowleyや2016年のBreuerの論文では、H. kingianaをツリスタ属としました。しかし、これらはVon Poellnitzの1936年の報告を引用してそれを基に命名しました。しかし、Von Poellnitzの1936年の報告は国際命名規約(ICN)に乗っ取ったものではありませんでした。つまり、G.D.RowleyやBreuerにより命名されたTulista kingianaは、引用元に誤りがあるため正式には認められないというのです。これは、ICNの第41.5条に基づいて有効ではないとされるそうです。
そこで著者はHaworthia kingianaが規約に乗っ取り正式に報告されたVon Poellnitz, 1937を引用して、Tulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.として新たに記載しました。
※comb.nov.=combination nova、他の所属になったことを示す。
学名の根拠となった元になった学名(Basionym)は、Haworthia kingiana Von Poellnitz, 1937で、Tulista kingiana (Poelln.) G.D.Rowley, 2013やTulista kingiana (Poelln.) Breuer, 2016は規約に従わない無効名です。
ここまでが論文の内容です。私はG.D.Rowleyが2013年にツリスタ属を復活させた時に、T. kingianaは含まれていなかったものだと勘違いしていましたが、実は命名自体はされていたわけです。しかし、このような経緯は学名を調べただけではわかりませんから、個人的には非常に面白い話でした。
補記 : 論文ではツリスタ属は5種類としていますが、現在学術的に認められているツリスタ属は4種類です。T. opalinaはT.minorの異名とされています。しかし、将来的にT. opalinaが認められる可能性はあります。
また、T. minimaは現在ではT. minorが正しい学名となっています。これについては個人的に前々から頭を悩ます問題でした。T. minorが正式な学名であることは知っていますが、その理由や根拠となると全く説明出来ないのです。そんな中、そこら辺について書かれた論文を見つけましたので、私が何にそんなに悩んでいたのかを含め明日ご紹介したいと思います。
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、T. minorやT. kingianaはハウォルチア属としていることもあります。国内では残念ながらツリスタ属自体に対する認識がそもそもあまり無いのが現状で、4種類すべてがハウォルチア属としていることが多いように思われます。
Tulista kingiana
さてそんな中、今年の7月初めにT.kingianaを入手したことにより全4種類が集まりましたが、その都度学名などの情報を調べて記事にしました。この時、学名の情報はイギリス王立植物園のデータベースを参考としましたが、その根拠は特に意識していませんでした。しかし、最近多肉植物の論文を漁っているため、キンギアナをツリスタ属とした論文を見つけました。早速読んでみたところ、何やら意外なことが書かれており、単純に属名の変更というどちらかと言えば地味な論文にしては面白い内容でしたのでご紹介します。
ご紹介する論文は2017年のGideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる『A new combination in Tulista, T. kingiana (Asphodeloideae, Xanthorrhoeaceae / Alooideae, Asphodelaceae)』です。早速簡単にご紹介しましょう。
2003年のTreulein et al.や2013年のGrace et al.、2014年のManning et al.によるアロエ類の系統発生研究により、Haworthia s.l.(sensu lato=広義の)は3分割されることが示されました。Haworthiaは、Haworthia s.s.(sensu stricto=狭義の)、Haworthiopsis G.D.Rowley、Tulista Rafinesqueの3グループが確立され広く受け入れられました。
このうち、Tulistaは5種類を含むと考えられています。つまり、T. marginata (Lamarck, 1783) G.D.Rowley, 2013、T. minima (Aiton, 1789) Boatwr. & J.C.Manning, 2014、T. opalina (Hayashi, 2001) Breuer, 2016、T. pumila (Linnaeus, 1753) G.D.Rowley, 2013です。しかし、5番目の種であるHaworthia kingiana Von Poellnitz, 1936については、ツリスタ属として命名はされていますが、その学名が有効ではないと言います。どういうことなのでしょうか?
2013年のG.D.Rowleyや2016年のBreuerの論文では、H. kingianaをツリスタ属としました。しかし、これらはVon Poellnitzの1936年の報告を引用してそれを基に命名しました。しかし、Von Poellnitzの1936年の報告は国際命名規約(ICN)に乗っ取ったものではありませんでした。つまり、G.D.RowleyやBreuerにより命名されたTulista kingianaは、引用元に誤りがあるため正式には認められないというのです。これは、ICNの第41.5条に基づいて有効ではないとされるそうです。
そこで著者はHaworthia kingianaが規約に乗っ取り正式に報告されたVon Poellnitz, 1937を引用して、Tulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.として新たに記載しました。
※comb.nov.=combination nova、他の所属になったことを示す。
学名の根拠となった元になった学名(Basionym)は、Haworthia kingiana Von Poellnitz, 1937で、Tulista kingiana (Poelln.) G.D.Rowley, 2013やTulista kingiana (Poelln.) Breuer, 2016は規約に従わない無効名です。
ここまでが論文の内容です。私はG.D.Rowleyが2013年にツリスタ属を復活させた時に、T. kingianaは含まれていなかったものだと勘違いしていましたが、実は命名自体はされていたわけです。しかし、このような経緯は学名を調べただけではわかりませんから、個人的には非常に面白い話でした。
補記 : 論文ではツリスタ属は5種類としていますが、現在学術的に認められているツリスタ属は4種類です。T. opalinaはT.minorの異名とされています。しかし、将来的にT. opalinaが認められる可能性はあります。
また、T. minimaは現在ではT. minorが正しい学名となっています。これについては個人的に前々から頭を悩ます問題でした。T. minorが正式な学名であることは知っていますが、その理由や根拠となると全く説明出来ないのです。そんな中、そこら辺について書かれた論文を見つけましたので、私が何にそんなに悩んでいたのかを含め明日ご紹介したいと思います。
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