ポエルニッチア属は、かつてアストロロバ・ルブリフロラにつけられた旧・学名です。私もそのことについて何ら疑問を抱かなかったわけですが、アストロロバ属について調べていた際に衝撃的な論文を見つけてしまいました。Gideon F. Smithらが2018年に発表した『Proposal to conserve the name Astroloba against Poellnitzia (Asphodelaceae : Alooideae)』です。

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Astroloba rubriflora
          =Poellnitzia rubricflora

とりあえず、その内容に入る前に簡単にことの経緯を説明します。ルブリフロラは1920年にアピクラ属として命名されたアロエ類です。種小名はルブリフロラとヤコブセニアナ(ジャコブセニアナ)が命名されましたが、学名は先に命名された方が優先されますから、ルブリフロラが採用されます。下の年表はルブリフロラの学名の変遷を示したものです。現在では2000年に命名されたアストロロバ属の所属となっています。


1920年 Apicra rubriflora L.Bolus
1939年 Apicra jacobseniana Poelln.
1940年 Poellnitzia rubriflora

                    (L.Bolus) Uitewaal
1955年 Poellnitzia rubriflora
                          var. jacobseniana
                              (Poelln.) Uitewaal
1971年 Haworthia rubriflora
                                    (L.Bolus) Parr

1981年 Aloe rubriflora 
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

2000年 Astroloba rubriflora (L.Bolus)
              Gideon F.Sm. & J.C.Manning
2013年 Tulista rubriflora
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

さて、それではいったい何が問題かと言いますと、属名はアストロロバで良いのか? ということです。アピクラ属は現存しない属ですし、アロエやハウォルチアに関しては、遺伝子解析結果からも否定されています。Gordon Dougles Rowleyがルブリフロラを他のアストロロバと共にツリスタ属の所属としましたが、これは確かに遺伝子解析結果では近縁でしたが、アストロロバ属はまとまりのある群として独立させる意見が認められています。ここまでは問題ありません。
ポエルニッチア属は1940年にルブリフロラのためにオランダの植物学者であるAntonius Josephus Adrianus Uitewaalにより提唱されました。しかし、1947年に同じくUitewaalにより、アストロロバ属が提唱されました。Uitewaalはポエルニッチアとアストロロバを別属としました。アストロロバ属は白花で虫媒花ですが、ルブリフロラ(rubri=赤、flora=花)の名前の通り赤花で鳥媒花です。現在ではルブリフロラは鳥を引き付けるために特殊化したアストロロバと見なされています。しかし、その特殊性ゆえ、ルブリフロラをアストロロバから分離する考え方はいまだに健在のようです。しかし、遺伝子解析からはやはりアストロロバに含まれるという結果でした。
さて、次からが最大の問題です。良く考えたら、1940年に命名されたポエルニッチア属と1947年に命名されたアストロロバ属を比較した場合、ポエルニッチア属の方が早く命名されていますから、アストロロバ属は本来使用されるべき属名ではないというのです。つまりは、現在アストロロバ属とされている種はすべてポエルニッチア属とするのが正しいというわけです。私はポエルニッチア属はルブリフロラのためだけに創設されたため、ポエルニッチア属を基準とすべきとは考えませんでしたが、確かに言われてみればその通りです。何故そのことに気が付かなかったのか、私自身迂闊でした。では、今後はアストロロバ属を廃して、すべての旧・アストロロバをポエルニッチア属に移動させるべきなのでしょうか?

しかし、著者はこの考え方に否定的です。アストロロバ属は1947年の命名以降一貫して使用されてきましたし、非常にまとまりのあるグループです。論文をはじめとする世界的な文献においても定着しています。そのため、アストロロバ属をポエルニッチア属に置き換えることは、決して望ましいことではなく、命名学的な安定性の観点からも利益にはならないと述べています。やはり、ポエルニッチアという1種に対応する属名をすでに確立した学名であるアストロロバ属に対応させることは、不必要な混乱と不確実性を生じるとしています。
植物の学名はある程度は見直されており、チェックを受けています。最新のチェックでは、アストロロバ属は1995年の『World Checklist of Seed Plants』により承認されており、ポエルニッチア属は2011年の『World checklist of selected plant families published update Facilitated』によりアストロロバ属の同義語であるとしています。今後もこのように見直しは行われますから、著者の意見が認められるのか、それともアストロロバ属が消滅するのか、大変気になるところです。私も注視しついきたいと思っています。



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