Gymnocalycium esperanzaeは2011年に命名された、割と発見が新しいサボテンです。しかし、G. esperanzaeの命名者であるRadomír Řepkaが2012年に発表した『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』という論文では、交雑種の可能性があるという指摘をしています。

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Gymnocalycium esperanzae

論文では遺伝子解析をしていますが、その前にギムノカリキウムの分類について簡単に説明します。ギムノカリキウム属の分類は必ずしも統一見解があるわけではないようですが、ギムノカリキウム属全体の遺伝子を解析した2011年のPablo H.Demaioの論文『MOLECULAR PHYLOGENY OF GYMNOCALYCIUM (CACTACEAE) : ASSESSMENT OF ALTERNATIVE INFRAGENERIC SYSTEMS, A NEW SUBGENUS, AND TRENDS IN THE EVOLUTION OF THE GENUS』によると、以下の様な分子系統となっているようです。ギムノカリキウム属は7亜属に分けられています。今まではギムノカリキウム属は種子の特徴から分類されてきましたが、遺伝子解析の結果と一致していました。ちなみに、このDemaioの論文はŘepkaも参照としています。

            ┏━━Subgenus Gymnocalycium
        ┏┫
    ┏┫┗━━Subgenus Trichomosemineum
    ┃┃
┏┫┗━━━Subgenus Macrosemineum
┃┃
┃┗━━━━Subgenus Scabrosemineum

┫┏━━━━Subgenus Muscosemineum
┣┫
┃┗━━━━Subgenus Pirisemineum

┗━━━━━Subgenus Microsemineum

さて、それでは『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』の内容に戻ります。種子の特徴からは、G. esperanzaeはScabrosemineum亜属とされます。Scabrosemineum亜属の種子は0.6-1mmと小さく褐色、植物はしばしば大型で根はnapiform(かぶら状)とされています。
しかし、著者はG. esperanzaeは、G. bodenbenderianumとG. castellanosiiの自然交雑種ではないかと推測しています。G. castellanosiiはScabrosemineum亜属ですが、G. bodenbenderianumはTrichomosemineum亜属であり、驚くべきことにあまり近縁ではありません。G. castellanosiiとG. bodenbenderianumは広い分布域を持ちますが、その分布が重なる点にG. esperanzaeが生じているようです。
しかし、自然交雑は植物の進化において一般的なこと(Ellstrand et al.2008)であり、環境に適応して種分化の機会を生み出す力である(Anderson 1949, Arnold 1997, Rieseberg 1995, 1997, Rieseberg & Carney 1998)とする意見が多いそうです。サボテン科の進化には、自然交雑による倍数体化(遺伝子が重複)が重要とされています(Friedrich 1974, Pinkava 2002, Machado 2008, Mottram 2008)。ですから、G. esperanzaeはただの雑種ではなく、新種が生まれつつあるのかも知れないということです。交雑自体は割と新しく起きた可能性があります。

では、実際の①G. castellanosii(subsp. armillatum)、②G. esperanzae、③G. bodenbenderianumの特徴を比較してみましょう。

種                   ①                ②                ③
根                   枝分かれ    かぶら状    かぶら状
中央の棘       1-3本           0本              0本
若い棘           黒                黒                 褐色
雄しべ           ピンク        淡い緑色     淡い緑色
種子の形       丸~卵形    丸~卵形     帽子形
種子の色       黒                黒                 褐色
種子の光沢   +                  +                   +++    
種子の表面   少し凸状    少し凸状     平ら
Elaiosome    -                -                  +

G. esperanzaeの種子の特徴はG. castellanosiiと似ていますから、Scabrosemineum亜属とされたわけですが、根や棘、雄しべの色はG. bodenbenderianumに似ています。しかし、遺伝子解析の結果ではG. bodenbenderianum、G. ochoterenae、quehlianum、G. intertextumなどのTrichomosemineum亜属と近縁であることがわかりました。
つまり、伝統的な種子の分類ではScabrosemineum亜属なのに、遺伝子的にはTrichomosemineum亜属であるということです。面白いですね。
ちなみに、Elaiosomeとは種子に付いている蟻を呼ぶための栄養分のことです。これはサボテンに限らず植物の種子に広く見られるもので、蟻がElaiosomeを目的に種子を巣に運び込みます。種子は土中に入ることにより発芽しやすくなります。
生態的にはG. bodenbenderianumは砂質の平野部の低木の陰に生えますが、G. castellanosiiは低い丘の荒い砂利状に生えます。G. esperanzaeは丘や山の尾根、岩や砂利質など、G. castellanosiiに近いということです。

以上でGymnocalycium esperanzaeについての論文紹介は終了です。種子の特徴からはScabrosemineum亜属ですが、遺伝的にはTrichomosemineum亜属というちぐはぐさからは、確かに交雑を疑いたくなります。しかし、遺伝子解析も2種類の遺伝子をみただけですから、交雑を調査するための解析はしていません。ですから、まだこの結論は確実とは言えないでしょう。まだ、議論すべき点は残っているように思われます。


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