近所の書店に行ったところ、サボテンについて書かれた新刊が出ていたので購入しました。この手の本は趣味家か生産者さんが書いたりしがちですが、珍しく本書は研究者が書いたサボテンの本です。どうも、現在日本ではサボテンの研究者は著者位しかいないみたいです。
それはそうとして、早速読んでみることにしました。もしかしたら、研究者の書いた本なんて難しくて読めないと思ってしまいますが、誰でもわかるように書かれた本です。これは経験上ですが、ベレ出版の出す本は分かりやすい代わりに毎度薄味な内容が多い感じがします。まあ、これはその分野に関して素人でも読めるように書かれていることは分かりますから、一概に悪いことではありません。しかし、本書はベレ出版にしては割りと内容も詰まっていて、しかも分かりやすいので良い塩梅だと思います。
内容に移りましょう。本書はサボテンの基礎をまんべんなく学ぶことが出来ます。過去に出ているサボテンの本では、サボテンが水を貯蔵する仕組みやトゲとは何かといったトピックについては書かれていましたが、それらはあくまで「説」であって、実際に確かめられたものではなかったようにも思われます。しかし、さすがは研究者だけあって、実証的な説明がなされています。
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例えば、サボテンのトゲは葉が由来と言われたりします。しかし、木の葉サボテンでは葉とトゲの両方出ます。また、サボテンの種類によっては棘座(アレオーレ)をスライスして顕微鏡で観察すると、小さな葉が隠されていたりするようです。では、サボテンのトゲとは一体何者なのでしょうか?
また、サボテンの乾燥に耐える仕組みについても、非常に様々なことが判明していることがわかりました。組織の配置や仮導管の仕組み、根が乾燥に耐えるための仕組みなど、知らなかったことだらけでした。
個人的にはCAM植物に関する話は、非常に興味深く読ませていただきました。サボテンはCAM植物と言われ、乾燥に適応した光合成システムを持っています。(※CAM植物については過去に記事にしましたから、お時間があればぜひ読んでみて下さい。)

CAM植物は二酸化炭素をリンゴ酸の形で貯蔵出来ますが、どうやらサボテンではそれだけではないみたいです。詳細は本を読んでいただくとして、このように最新の科学による話題は尽きません。
その他にも、サボテンの本場メキシコに行った話もあります。今でもメキシコはあまり治安がよろしくないと言われますけど、著者も中々怖い目にあっているようです。私はメキシコと言えば、チワワ砂漠だとかサン・ルイス・ポトシだとか、憧れの地名が浮かびますけど、実際に行くとなると躊躇してしまいますけどね。
さて、本書はサボテン好きでも知らないような最新の知見が満載です。私は砂漠植物学、ひいては広く植物学全体に興味がありますが、面白いことが沢山書いてあって大変ためになりました。サボテン好きならば読んで損は無いと思います。




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