昔は今の様に多肉植物は沢山売られていませんでしたから、私もサボテンを集めたりしていました。枯らしたり引っ越したりして置き場がなかったりと、まあバタバタして今では極少数を維持するだけになりました。その後は公私で忙しく、永らく園芸店からも足が遠退いていました。しかし、最近知らない間に多肉ブームがあったらしく、図鑑でしか見たことがない珍しい多肉植物が売られるようになり、3年前くらいから多肉植物を再開したわけです。時代はベンケイソウ科やアガヴェ、コーデックスが流行りですが、サボテンも地味に今まで見なかった様な種類が売られていたりします。私もギムノカリキウムの平たく育つものは、見かけるとついつい購入してしまいます。
そんな中、園芸店ではまず見かけないギムノカリキウムをイベントで入手しました。それが、プロチャズキアナムです。個人的な話で申し訳ないのですが、私は学名はラテン語読みが好みなので、以降は「プロカズキアヌム」と記述させていただきます。

さて、プロカズキアヌムは1999年に発見されましたから、割と新しい種類です。いや、20年以上前だろうと思うかもしれませんが、サボテンの学名の命名自体は1753年から始まっていますから、まだ新種が見つかるということに驚きがあります。それはそうとして、プロカズキアヌムの学名は最初は1999年に命名されたGymnocalycium prochazkianum Šormaです。しかし、海外含めてプロカズキアヌムはあまり情報がありません。仕方がないので、プロカズキアヌムの原産地の情報を探すために、採取情報が記載されているフィールドナンバーを探してみました。そこで、プロカズキアヌムを命名したŠormaが採取したとおぼしき採取個体の情報を見つけました。

Field number: VS 141
Collector: Vladimír Šorma
Species: Gymnocalycium prochazkianum
Locality: Quilino, Cordoba, Argentina
Altitude: 600m


このVS141が1999年にプロカズキアヌムが命名された際の個体かもしれませんね。
ここで、一旦私の所有個体を紹介します。


DSC_1656
Gymnocalycium prochazkianum

DSC_1657
Gymnocalycium prochazkianum
                                         subsp. simile VoS1417

下の個体はプロカズキアヌム亜種シミレですが、フィールドナンバー付きです。ともに、白い粉をまとった暗い色合いで平たい特徴は同じです。
そういえば、プロカズキアヌムには亜種があり、2006年に命名されたGymnocalycium prochazkianum subsp. ivoi Halda & Milt、2013年に命名されたGymnocalycium prochazkianum subsp. simile 
ŘepkaGymnocalycium prochazkianum subsp. simplex Řepkaがあります。

私の所有するプロカズキアヌム亜種シミレのフィールドナンバーは"VoS1417"ですが、これが不思議と情報がありません。ただ、フィールドナンバーを収集して検索できるサイトはいくつかありますが、すべてのフィールドナンバーが登録されている訳ではありませんから、こういうこともあります。しかし、VoSナンバーは"VoS00-0001"の様な形式が通常な気がしますから、何かおかしな感じもします。よくよくVoSナンバーの一覧を調べてみたのですが、"VoS13-1417"を見つけました。

Field number: VOS 13-1417
Collector: Volker Schädlich
Species: Gymnocalycium prochazkianum
Locality: South of Orcosuni, Cordoba, Argentina
Altitude: 743m
Date: 2013

おそらくはこれが正式なフィールドナンバーでしょう。以前、私の入手した他のサボテンでもやはりこのようにフィールドナンバーは略されるものがありましたから、まぁまぁあることなのかもしれません。しかし、いざ情報を探す段となった時に、このように略されてしまうと困ってしまいますね。
ちなみに、フィールドナンバーのデータでは、亜種シミレという記載ではありません。どうしてでしょうか? これは、簡単な話で採取時点の学名が記載されるからです。採取されたのが2013年で、亜種シミレが命名されたのも2013年ですから、採取時点では亜種シミレという学名は存在しなかったのでしょう。こういうことは良くあることなので、注意が必要です。学名が変更になった場合でも、フィールドナンバーは採取時点の学名で登録されていますから、現在ではまったく異なる学名であることは珍しくありません。

さて、ここまでプロカズキアヌムについて調べてきましたが、実のところG. prochazkianumという学名は現在認められておりません。プロカズキアヌムは2002年にはGymnocalycium valnicekianum subsp. prochazkianum (Šorma) T.Hill & Amerh、2013年にはGymnocalycium mostii subsp. prochazkianum (ŠormaG.J.Charlesと紅蛇丸Gymnocalycium mostiiの亜種とする意見もありました。
しかし、現在ではプロカズキアヌムは紅蛇丸Gymnocalycium mostii (Gürke) Britton & Roseと同一種とされています。G. mostiiは現在は亜種や変種が認められておりません。ただし、明らかに特徴の異なるプロカズキアヌムが亜種や変種扱いされていないのは、不自然にも感じます。G. bicolorや黒豹玉G. mostii var. kurtzianumなども、G. mostiiに集約されている状態ですから、これから整理がされていく可能性はあるように思えます。


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