4月に東京五反田TOCで開催された、春のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行った際に、サピニーという名前のユーフォルビアの苗を入手しました。購入したブースの生産者さんは、大変状態の良い優れた苗を毎回持ってきてくれますから、ついつい私も毎回購入してしまいます。
さて、そんなサピニーですが、ネットで検索してみても恐ろしいほど情報がありません。多少、販売情報はあるようですが、私の購入した苗と同サイズのサピニーが数倍の値段で売られていたりします。なんか怪しいですね。
あと、海外のネット上のフォーラムでは、サピニーは海外でも非常に珍しいみたいですね。中々ヨーロッパでも入手は困難なようです。
個人的に「サピニー」より「サピニイ」のほうがしっくりくるので、これより「サピニイ」表記で行きます。

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まだ小さい苗ですが、高さ1mほどになるそうです。

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トゲのある木質の茎がありますが、まだトゲは出ていません。

ネットでサピニイの画像を探していたら、ふと"猛毒三兄弟"こと、Euphorbia poissonii、Euphorbia venenifica、Euphorbia unispinaと似ている様な気がしました。そこで、分布を調べてみたら面白いことがわかりました。ポイソニイは西アフリカのギニア湾沿い、ユニスピナはギニア湾沿いから東に長くチャド・スーダンまでの西アフリカから東アフリカ、ベネニフィカは東アフリカ、サピニイは中央アフリカとなっています。分布が広いユニスピナ以外は、一部重なりながらも分布がアフリカの東部・中央部・西部にわかれているのが、分布域を拡げながら進化した様子が見受けられます。
ここで、2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文を見てみます。この論文では遺伝子を解析していますが、サピニイの分子系統は以外の通りです。

             ┏━━E. sudanica
         ┏┫
         ┃┗━━E. venenifica
     ┏┫
     ┃┗━━━E. unispina
 ┏┫
 ┃┗━━━━★E. sapinii
 ┫
 ┗━━━━━E. resinifera

ユーフォルビアの全種類を調べた訳ではありませんから、ポイソニイは入っていませんがおそらくは近縁でしょう。また、調べていないだけで、他にも近縁種があるかもしれません。
さて、一番根元にあるレシニフェラは普通の柱サボテン様の多肉ユーフォルビアで、サピニイやポイソニイには似ていませんね。もしかしたら、レシニフェラ(の祖先)からサピニイ(の祖先)が進化した時に、サピニイやポイソニイの様な形態に進化したのかもしれません。
しかし、不思議なこともあります。レシニフェラはモロッコ原産ですが、この仲間がモロッコからモーリタニアやマリに分布を拡げながら進化したとすると、モーリタニアからギニア湾を通って東アフリカに達するスダニカがレシニフェラに近縁な様にも思えます。しかし、レシニフェラに一番近縁なのは中央アフリカ原産のサピニイです。地理的にずいぶん離れています。どういうことなのでしょうか?
考えられるのは2つ。1つは、
マリにも分布するポイソニイがレシニフェラとサピニイの間を埋めている可能性です。もう1つは、レシニフェラ自体がサピニイの祖先と別れたときには、モロッコではない地域に分布しており、レシニフェラに進化した際にモロッコ原産となった場合です。この謎はすべての近縁種を調査してはじめてわかるのでしょう。今後の研究に期待。

サピニイの学名は1908年に命名されたEuphorbia sapinii De Wild.です。De Wild.はベルギーの植物学者・菌類学者の
Émile Auguste Joseph De Wildemanのことです。De Wildemanはコンゴの植物相の研究で知られています。サピニイの名前は中央アフリカで植物の収集をしていたフランスの植物学者である、Adolphe Sapinに因んで命名されました。



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