かねてより、私のブログでことあるごとに、アロエ属やらハウォルチア属やらが再編されて、ゴニアロエ属だのクマラ属だのハウォルチオプシス属だのツリスタ属が分離して云々と聞かれてもいないのにうるさく書いてきました。しかし、いったい何の根拠があってそんなことを言っているのか疑問に思う方も、もしかしたらおられるかもしれません。まあ、どうでも良いと言われてしまいそうですが…
遺伝子を調べる
私がその根拠としているのは、2014年に出た『A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文です。適当に訳すと「ツルボラン科アロエ亜科の分子系統学と一般分類 : アロエ類における多系統の厄介な問題の最終的な解決?」といったところでしょうか。要するにアロエ類(アロエやハウォルチア、ガステリアなどの仲間の総称)の遺伝子を調べて、その近縁を解析しているわけです。
内容について見てみましょう。冒頭は解析した遺伝子について述べられています。遺伝子解析というと全ての遺伝子を調べる様に思えますが、実はそうではなくて特定の遺伝子の配列のみを調べるのです。この論文では、光合成に関わる葉緑体の4つの遺伝子と、細胞核の1つの遺伝子を解析しているようです。1つの遺伝子では不確実ですが、複数の遺伝子解析の結果が符合すれば確実性が増します。もしかしたら、調べる対象の得手不得手をカバーする目的もあるのかも知れません。
吸収された分類群
アロエ類は伝統的にアロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属、アストロロバ属に分けられてきました。さらに、ロマトフィルム属とコルトリリオン属、さらにポエルニッチア属を認める考え方もあります。
1, ロマトフィルム Lomatophyllum
ロマトフィルムは1811年に命名されました。マダガスカル周囲の島嶼部に分布し、果実が多肉質であることでアロエから区別されました。調べた限りではロマトフィルム属とされたことがあるのは28種類でした。しかし、そのうち3種類はドラセナ(Dracaena)で、6種類は同一種とされています。現在ではアロエ属とされています。
2, コルトリリオン Chortolirion
コルトリリオンが最初に命名されたのは1908年です。コルトリリオンは一見して球根植物の様な外見をしています。花はハウォルチアに良く似ていて、19世紀に命名された種は、実際にハウォルチアとされました。
私が確認したコルトリリオンは6種ですが、現在は全てアロエ属とされています。調べた限りではChortolirion angolenseはAloe welwitschii、Chortolirion subspicatumはAloe subspicata、Chortolirion latifoliumはAloe jeppeae、Chortolirion bergerianum=Chortolirion stenophyllum=Chortolirion tenuifoliumはAloe bergerianaとされているようです。
アロエの分子系統
ロマトフィルムやコルトリリオンは、アロエ属の中に組み込まれています。L. anivoranoensisのとなりにA. haworthioidesがありますが、となりに書いてあるから、より近縁というわけではありません。A. haworthioidesなどは兄弟姉妹みたいなもので、今はまだ誰が兄で誰が弟かは分かりません。さらに細かく調べれば、それも分かるかもしれません。アロエ属に絞って解析した論文があるかもしれませんから、見つけたらまた記事にします。
※アロエ属全種類を調べてはいません。
┏ ━Aloe nubigena
┃
┏╋━Aloe kniphofioides
┃┃
┃┗━Aloe ecklonis
┃
┣━━Aloe fouriei
┃
┣━━Aloe challisii
┃
┣━━Aloe vossii
┃
┏╋━━Aloe verecunda
┃┃
┃┣━━Aloe ferox
┃┃
┃┣━━Aloe thraskii
┃┃
┏┫┣━━Aloe excelsa
┃┃┃
┃┃┣━━Aloe arborescens
┃┃┃
┃┃┗━━Aloe saundersii
┃┃
┃┗━━━Aloe petricola
┃
┃┏━━━Aloe reynoldsii
┃┃
┃┣━━━Aloe striata
┣┫
┃┣━━━Aloe kouebokkeveldensis
┃┃
┃┗━━━Aloe buhrii
┃
┃ ┏━━Aloe brevifolia
┃┏┫
┃┃┗━━Aloe lineata
┣┫
┃┗━━━Aloe chabaudii
┃
┃┏━━━Aloe succotrina
┃┃
┏╋┫┏━━Aloe glauca
┃┃┃┃
┃┃┗┫┏━Aloe microstigma
┃┃ ┗┫
┃┃ ┗━Aloe pictifolia
┃┃
┃┃┏━━━Aloe spicata
┃┣┫
┃┃┗━━━Aloe lutescent
┃┃
┏┫┣━━━━Lomatophyllum anivoranoensis
┃┃┃ (=Aloe anivoranoensis)
┃┃┣━━━━Aloe haworthioides
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe comosa
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe rupestris
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe angelica
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe vryheidensis
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe hereroensis
┃┃┃
┃┃┗━━━━Aloe munchii
┃┃
┏┫┗━━━━━Chortolirion angolense
┃┃ (=Aloe angolense)
┃┃┏━━━━━Aloe chortolirioides
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe propagulifera
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe alooides
┃┃┃
┃┣╋━━━━━Aloe albida
┫┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe perfoliata
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe dewinteri
┃┃┃
┃┃┗━━━━━Aloe arenicola
┃┃
┃┗━━━━━━Aloe melanacantha
┃
┗━━━━━━━Aloe pearsonii
3, ポエルニッチア Poellnitzia
ポエルニッチアは最初に命名されたのは1940年です。ポエルニッチアはただ1種類のPoellnitzia rubrifloraがあり、赤系統の花を咲かせます。アストロロバに良く似ていますが、アストロロバはみな白花ですから、ルブリフロラ(rubri=赤い、flora=花)は特異的です。2000年にルブリフロラをアストロロバとする意見があり、現在ではルブリフロラはAstroloba rubrifloraが正式な学名です。しかし、未だにポエルニッチアを認める立場の研究者もいるそうです。
この論文ではルブリフロラはアストロロバに吸収されています。何でも、ルブリフロラは鳥が受粉を行っており、花はそれに合わせて変化したもののようです。

Poellnitzia rubriflora
=Astroloba rubriflora
アストロロバの分子系統
アストロロバはポエルニッチアを含め、非常によくまとまったグループです。アストロロバはツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群を形成します。
┏━━━Gonialoe
┃
┏┫┏━━Tulista
┃┗┫
┃ ┗━━Aristaloe
┃
┫ ┏━Astroloba corrugata
┃ ┏┫
┃┏┫┗━Astroloba herrei
┃┃┃
┗┫┗━━Astroloba foliolosa
┃
┗━━━Poellnitzia rubriflora
(=Astroloba rubriflora)
分離した分類群
既存の分類群に吸収されたというか、元の鞘に戻ったものがいる一方、分離されたものもあります。先ずはアロエ属から分離した、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、クマラ属、アロイアンペロス属、アロイデンドロン属です。さらに、ハウォルチア属から分離したハウォルチオプシス属とツリスタ属があります。
近縁関係でいうと、クマラ属とハウォルチア属、アストロロバ属とアリスタロエ属とゴニアロエ属とツリスタ属、ハウォルチオプシス属とガステリア属はそれぞれグループを形成しています。
私が思うに、アロエ類の進化は葉が柔らかいアロイデンドロン属からアロエ属までと、葉が硬いアストロロバ属からガステリア属があるという風に理解しています。アロエ属には葉が柔らかいものと硬いものとがあり、アロエ属から別れたグループ(アストロロバ、アリスタロエ、ゴニアロエ、ツリスタ、ハウォルチオプシス、ガステリア)の葉はみな硬いということに、進化的な意味があるような気がします。
アロエ類の系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属
┃
┫ ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
┃
┃┏━━━━━━Aloiampelos属
┃┃
┗┫┏━━━━━Aloe属
┃┃
┗┫ ┏━━━Astroloba属
┃ ┃
┃┏┫┏━━Aristaloe属
┃┃┃┃
┃┃┗┫┏━Gonialoe属
┃┃ ┗┫
┗┫ ┗━Tulista属
┃
┃┏━━━Haworthiopsis属
┗┫
┗━━━Gasteria属
クマラ属とハウォルチア属
クマラ属とハウォルチア属は近縁です。ここでいうハウォルチアは軟葉系ハウォルチアのことで、硬葉系ハウォルチアと呼ばれたハウォルチオプシス属とツリスタ属を含みません。クマラ属はかつてアロエ属でしたが、アロエ属とは系統的に離れています。クマラ属とハウォルチア属はともにイボやトゲがないグループです。
顕花植物の分類は基本的に花の構造により行われてきました。しかし、ハウォルチア型の花はハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、コルトリリオン属(=アロエ属)で共通していますから、これらは系統的に近縁と考えられてきました。しかし、分子系統解析の結果から、ハウォルチア型の花はそれぞれ独立して進化したことが分かりました。花の蜜成分の含有量においても、異なるという報告もあり、花の類似は収斂進化の結果なのかもしれません。ハウォルチア型の花は昆虫媒花の結果として進化したようです。
クマラ属はKumara plicatilis(=Aloe plicatilis)とKumara haemanthifolia(=Aloe haemanthifolia)がありますが、この2種を比較するとやや離れています。とは言うものの、他のアロエ属と比較した場合には近縁ですから、この2種がまとまったグループであることは間違いないのでしょう。もしかしたら、過去に2種の間を埋めるような絶滅種がいたのかもしれません。
ハウォルチア属の分子系統
┏━Haworthia bayeri
┃
┏╋━Haworthia cymbiformis
┃┃
┃┗━Haworthia cooperi
┃
┃┏━Haworthia semiviva
┃┃
┏┫┣━Haworthia mucronata
┃┃┃
┃┗╋━Haworthia lockwoodii
┃ ┃
┏┫ ┣━Haworthia arachnoidea
┃┃ ┃
┃┃ ┗━Haworthia decipiens
┃┃
┃┗━━━Haworthia marxii
┃
┃┏━━━Haworthia mirabilis
┃┃
┃┣━━━Haworthia herbacea
┃┃
┣╋━━━Haworthia reticulata
┃┃
┃┣━━━Haworthia retusa
┃┃
┃┣━━━Haworthia mutica
┃┃
┃┗━━━Haworthia maculata
┃
┃┏━━━Haworthia truncata
┃┃
┣╋━━━Haworthia zantneriana
┃┃
┃┣━━━Haworthia vlokii
┃┃
┏┫┗━━━Haworthia outeniquensis
┃┃
┃┃┏━━━Haworthia chloracantha
┃┃┃
┃┃┣━━━Haworthia pygmaea
┃┃┃
┃┣╋━━━Haworthia variegata
┃┃┃
┃┃┣━━━Haworthia floribunda
┃┃┃
┃┃┗━━━Haworthia emelyae
┃┃
┃┗━━━━Haworthia wittebergensis
┃
┗━━━━━Haworthia blackburniae

Haworthia mucronata

Haworthia herbacea

Haworthia arachnoidea

Haworthia cooperi

Kumara plicatilis
=Aloe plicatilis
記事が長くなったので、2つに分けます。
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遺伝子を調べる
私がその根拠としているのは、2014年に出た『A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文です。適当に訳すと「ツルボラン科アロエ亜科の分子系統学と一般分類 : アロエ類における多系統の厄介な問題の最終的な解決?」といったところでしょうか。要するにアロエ類(アロエやハウォルチア、ガステリアなどの仲間の総称)の遺伝子を調べて、その近縁を解析しているわけです。
内容について見てみましょう。冒頭は解析した遺伝子について述べられています。遺伝子解析というと全ての遺伝子を調べる様に思えますが、実はそうではなくて特定の遺伝子の配列のみを調べるのです。この論文では、光合成に関わる葉緑体の4つの遺伝子と、細胞核の1つの遺伝子を解析しているようです。1つの遺伝子では不確実ですが、複数の遺伝子解析の結果が符合すれば確実性が増します。もしかしたら、調べる対象の得手不得手をカバーする目的もあるのかも知れません。
吸収された分類群
アロエ類は伝統的にアロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属、アストロロバ属に分けられてきました。さらに、ロマトフィルム属とコルトリリオン属、さらにポエルニッチア属を認める考え方もあります。
1, ロマトフィルム Lomatophyllum
ロマトフィルムは1811年に命名されました。マダガスカル周囲の島嶼部に分布し、果実が多肉質であることでアロエから区別されました。調べた限りではロマトフィルム属とされたことがあるのは28種類でした。しかし、そのうち3種類はドラセナ(Dracaena)で、6種類は同一種とされています。現在ではアロエ属とされています。
2, コルトリリオン Chortolirion
コルトリリオンが最初に命名されたのは1908年です。コルトリリオンは一見して球根植物の様な外見をしています。花はハウォルチアに良く似ていて、19世紀に命名された種は、実際にハウォルチアとされました。
私が確認したコルトリリオンは6種ですが、現在は全てアロエ属とされています。調べた限りではChortolirion angolenseはAloe welwitschii、Chortolirion subspicatumはAloe subspicata、Chortolirion latifoliumはAloe jeppeae、Chortolirion bergerianum=Chortolirion stenophyllum=Chortolirion tenuifoliumはAloe bergerianaとされているようです。
アロエの分子系統
ロマトフィルムやコルトリリオンは、アロエ属の中に組み込まれています。L. anivoranoensisのとなりにA. haworthioidesがありますが、となりに書いてあるから、より近縁というわけではありません。A. haworthioidesなどは兄弟姉妹みたいなもので、今はまだ誰が兄で誰が弟かは分かりません。さらに細かく調べれば、それも分かるかもしれません。アロエ属に絞って解析した論文があるかもしれませんから、見つけたらまた記事にします。
※アロエ属全種類を調べてはいません。
┏ ━Aloe nubigena
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┏╋━Aloe kniphofioides
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┃┗━Aloe ecklonis
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┣━━Aloe fouriei
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┣━━Aloe challisii
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┣━━Aloe vossii
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┏╋━━Aloe verecunda
┃┃
┃┣━━Aloe ferox
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┃┣━━Aloe thraskii
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┏┫┣━━Aloe excelsa
┃┃┃
┃┃┣━━Aloe arborescens
┃┃┃
┃┃┗━━Aloe saundersii
┃┃
┃┗━━━Aloe petricola
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┃┏━━━Aloe reynoldsii
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┃┣━━━Aloe striata
┣┫
┃┣━━━Aloe kouebokkeveldensis
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┃┗━━━Aloe buhrii
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┃ ┏━━Aloe brevifolia
┃┏┫
┃┃┗━━Aloe lineata
┣┫
┃┗━━━Aloe chabaudii
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┃┏━━━Aloe succotrina
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┏╋┫┏━━Aloe glauca
┃┃┃┃
┃┃┗┫┏━Aloe microstigma
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┃┃ ┗━Aloe pictifolia
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┃┃┏━━━Aloe spicata
┃┣┫
┃┃┗━━━Aloe lutescent
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┏┫┣━━━━Lomatophyllum anivoranoensis
┃┃┃ (=Aloe anivoranoensis)
┃┃┣━━━━Aloe haworthioides
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┃┃┣━━━━Aloe comosa
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┃┃┣━━━━Aloe rupestris
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┃┃┣━━━━Aloe angelica
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┃┃┣━━━━Aloe vryheidensis
┃┃┃
┃┃┣━━━━Aloe hereroensis
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┃┃┗━━━━Aloe munchii
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┏┫┗━━━━━Chortolirion angolense
┃┃ (=Aloe angolense)
┃┃┏━━━━━Aloe chortolirioides
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe propagulifera
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┃┃┣━━━━━Aloe alooides
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┃┣╋━━━━━Aloe albida
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┃┃┣━━━━━Aloe perfoliata
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┃┃┣━━━━━Aloe dewinteri
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┃┃┗━━━━━Aloe arenicola
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┃┗━━━━━━Aloe melanacantha
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┗━━━━━━━Aloe pearsonii
3, ポエルニッチア Poellnitzia
ポエルニッチアは最初に命名されたのは1940年です。ポエルニッチアはただ1種類のPoellnitzia rubrifloraがあり、赤系統の花を咲かせます。アストロロバに良く似ていますが、アストロロバはみな白花ですから、ルブリフロラ(rubri=赤い、flora=花)は特異的です。2000年にルブリフロラをアストロロバとする意見があり、現在ではルブリフロラはAstroloba rubrifloraが正式な学名です。しかし、未だにポエルニッチアを認める立場の研究者もいるそうです。
この論文ではルブリフロラはアストロロバに吸収されています。何でも、ルブリフロラは鳥が受粉を行っており、花はそれに合わせて変化したもののようです。

Poellnitzia rubriflora
=Astroloba rubriflora
アストロロバの分子系統
アストロロバはポエルニッチアを含め、非常によくまとまったグループです。アストロロバはツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群を形成します。
┏━━━Gonialoe
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┏┫┏━━Tulista
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┃ ┗━━Aristaloe
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┫ ┏━Astroloba corrugata
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┗┫┗━━Astroloba foliolosa
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┗━━━Poellnitzia rubriflora
(=Astroloba rubriflora)
分離した分類群
既存の分類群に吸収されたというか、元の鞘に戻ったものがいる一方、分離されたものもあります。先ずはアロエ属から分離した、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、クマラ属、アロイアンペロス属、アロイデンドロン属です。さらに、ハウォルチア属から分離したハウォルチオプシス属とツリスタ属があります。
近縁関係でいうと、クマラ属とハウォルチア属、アストロロバ属とアリスタロエ属とゴニアロエ属とツリスタ属、ハウォルチオプシス属とガステリア属はそれぞれグループを形成しています。
私が思うに、アロエ類の進化は葉が柔らかいアロイデンドロン属からアロエ属までと、葉が硬いアストロロバ属からガステリア属があるという風に理解しています。アロエ属には葉が柔らかいものと硬いものとがあり、アロエ属から別れたグループ(アストロロバ、アリスタロエ、ゴニアロエ、ツリスタ、ハウォルチオプシス、ガステリア)の葉はみな硬いということに、進化的な意味があるような気がします。
アロエ類の系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属
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┫ ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
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┃┏━━━━━━Aloiampelos属
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┗┫┏━━━━━Aloe属
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┗┫ ┏━━━Astroloba属
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┃┏┫┏━━Aristaloe属
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┗┫ ┗━Tulista属
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┃┏━━━Haworthiopsis属
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┗━━━Gasteria属
クマラ属とハウォルチア属
クマラ属とハウォルチア属は近縁です。ここでいうハウォルチアは軟葉系ハウォルチアのことで、硬葉系ハウォルチアと呼ばれたハウォルチオプシス属とツリスタ属を含みません。クマラ属はかつてアロエ属でしたが、アロエ属とは系統的に離れています。クマラ属とハウォルチア属はともにイボやトゲがないグループです。
顕花植物の分類は基本的に花の構造により行われてきました。しかし、ハウォルチア型の花はハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、コルトリリオン属(=アロエ属)で共通していますから、これらは系統的に近縁と考えられてきました。しかし、分子系統解析の結果から、ハウォルチア型の花はそれぞれ独立して進化したことが分かりました。花の蜜成分の含有量においても、異なるという報告もあり、花の類似は収斂進化の結果なのかもしれません。ハウォルチア型の花は昆虫媒花の結果として進化したようです。
クマラ属はKumara plicatilis(=Aloe plicatilis)とKumara haemanthifolia(=Aloe haemanthifolia)がありますが、この2種を比較するとやや離れています。とは言うものの、他のアロエ属と比較した場合には近縁ですから、この2種がまとまったグループであることは間違いないのでしょう。もしかしたら、過去に2種の間を埋めるような絶滅種がいたのかもしれません。
ハウォルチア属の分子系統
┏━Haworthia bayeri
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┏╋━Haworthia cymbiformis
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┃┗━Haworthia cooperi
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┃┏━Haworthia semiviva
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┏┫┣━Haworthia mucronata
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┃┗╋━Haworthia lockwoodii
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┏┫ ┣━Haworthia arachnoidea
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┃┃ ┗━Haworthia decipiens
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┃┗━━━Haworthia marxii
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┃┏━━━Haworthia mirabilis
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┃┣━━━Haworthia herbacea
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┣╋━━━Haworthia reticulata
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┃┣━━━Haworthia retusa
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┃┣━━━Haworthia mutica
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┃┏━━━Haworthia truncata
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┣╋━━━Haworthia zantneriana
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┃┣━━━Haworthia vlokii
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┏┫┗━━━Haworthia outeniquensis
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┃┃┏━━━Haworthia chloracantha
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┃┃┣━━━Haworthia pygmaea
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┃┣╋━━━Haworthia variegata
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┃┃┣━━━Haworthia floribunda
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┃┃┗━━━Haworthia emelyae
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┃┗━━━━Haworthia wittebergensis
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┗━━━━━Haworthia blackburniae

Haworthia mucronata

Haworthia herbacea

Haworthia arachnoidea

Haworthia cooperi

Kumara plicatilis
=Aloe plicatilis
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