先日の夏のサボテン・多肉植物のビッグバザールで武勲丸を入手しました。武勲丸の学名はGymnocalycium ochoterenaeと言われています。しかし、ギムノカリキウム・バッテリーやインターテクスツムの学名もGymnocalycium ochoterenaeであると言われることがあります。どういうことなのでしょうか?
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武勲丸

先週、瑞昌玉の学名がGymnocalycium quehlianumかもしれないね、くらいの内容について記事にしました。そこで、G. quehlianumに近縁とされるG. ochoterenaeについても調べたわけで、ちょうど良く武勲丸を入手したこともあり記事にしてみました。

園芸名と学名の関係
武勲丸はギムノカリキウム属のサボテンです。しかし、ギムノカリキウムはギムノカリキウム属内の交雑が簡単にできることから、昔から趣味家の間でも交配が行われてきました。そのため、由来のわからない交配種が溢れ、どれが元々の交雑していない株かわからなくなるという悲劇が起こりました。これは、特に武勲丸、バッテリー、怪竜丸、瑞昌玉、竜頭あたりで顕著だったかのかもしれません。これらは、元々良く似ていて判別が難しい部類だからです。そのため、趣味家の集まりで各種の特徴を抽出して、その特徴を持つ系統の維持が行われました。これ自体は素晴らしい事なのですが、特徴を維持するために結果的に選抜が行われたとも言えます。本来、実生すると純系の株でも子株の特徴にはばらつきが出ます。ある程度の幅があるのが当たり前なのです。しかし、選抜が行われると園芸上好ましい特徴を持つ株以外は淘汰されるため、その種が本来持つ多様性を失わせてしまいます。とはいえ、この系統維持が行われなかったら、ギムノカリキウムは由来不明の交雑種ばかりになっていたかもしれませんから、感謝しなくてはなりません。

この選抜が行われてきた武勲丸たちは、現在学名がわからなくなっています。というのも、園芸名は輸入されてきたある特徴を持つ株に付けられ、しかも選抜されてきた結果だからです。原産地の野生株はかなりの変異幅があり、日本の選抜株と照合はなかなか難しいのです。そもそも、輸入されてきた現地球には学名が付けられてきているはずですが、実はそれも怪しいかもしれません。当時と現在では学名はかなり変わっていますから、業者によりあるいは時代により、様々な学名で呼ばれていた可能性があります。実際に現在の海外の有名種子業者の学名も業者によりまちまちで、同じ種を異なる学名で呼んでいるという事実があります。ただし、現状では武勲丸はオコテレナエ(G. ochoterenae)とされているようです。それがどれほど正しいかは、良くわかりません。
学名は1936年に命名されたGymnocalycium ochoterenae Backeb.です。

バッテリーとインターテクスツム
The World Checklist of Vascular Plants』によるとバッテリーとインターテクスツムは、やはりG. ochoterenaeとされています。ただし、Gymnocalycium quehlianumと同様にまだレビュー中とされているようです。G. ochoterenae全体としてはバッテリーやインターテクスツムは異名扱いですが、バッテリーやインターテクスツムの個別の詳細情報を見ると、未だに"Not Accepted"となっていないようです。まだ別種、あるいは亜種や変種扱いとされる目は残っているのかもしれません。

バッテリーは1950年に命名されGymnocalycium vatteri Buinigとされましたが、1993年にGymnocalycium ochoterenae subsp. vatteri (Buining) Papschとされ、これがAcceptされた名前です。

インターテクスツムは1987年に命名されGymnocalycium intertextum Backeb. ex H.Tillとされ、これがAcceptされた名前です。1993年にはGymnocalycium bodenbenderianum subsp. intertextum (Backeb. ex H.Till) H.Tillという学名もありますが、インターテクスツムはG. bodenbenderianum系ではなくG. ochoterenae系とされたので認められておりません。どうやら、インターテクスツムはかつてGymnocalycium sp. Hig.と呼ばれていたものらしいです。

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バッテリー
一本トゲのイボが目立たない古いタイプ。

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バッテリー
強刺でトゲは3本、平たく育ちイボが目立つ最近のタイプ。

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インターテクスツム

現状では武勲丸とバッテリー、インターテクスツムは同じG. ochoterenaeで、兄弟というかG. ochoterenaeの変異の幅に収まってしまうとされています。しかし、確実な証拠がない状態ですから、いつ変更となるかわかりませんし、その可能性は十二分にあります。場合によっては、近縁とされるG. quehlianumやG. bodenbenderianum、G. basiatrumあたりも交えて大幅に再編されることすら考えられます。
とりあえず、これでG. quehlianumとG. ochoterenaeについては解説しましたから、近日G. bodenbenderianumについても無駄に長い話をしようと思っております。



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