ミルクトロンと呼ばれる白いユーフォルビアを、最近よく見ます。白樺キリンとも呼ばれますが、いったい何者なのでしょうか。
白樺キリン(ミルクトロン)
Euphorbia mammillaris cv. Variegata
白樺キリンは鱗宝の突然変異で生まれた斑入りの白化個体といわれています。鱗宝の学名はEuphorbia mammillarisです。ですから、白樺キリンはEuphorbia mammillaris cv. Variegataとなります。cv.はcultivarの略ですが、学名では栽培品種を意味します。cv.は交配種の意味と書かれていることもありますが、これは間違いです。栽培品種は栽培していると現れる突然変異です。具体的には、斑入りになったり、花の色がかわったり、トゲが無くなったりします。ようするに、突然変異個体を固定した園芸品種ということです。また、野生状態で発見された突然変異はcv.ではないので注意が必要です。Variegataは斑入り品種のことです。見た目に反してアルビノではなく、内部には葉緑体があります。
白樺キリンを調べていたら、白樺キリンや鱗宝はEuphorbia mammillarisではなく、Euphorbia fimbriataであるというネットの記事を発見しました。マミラリスとフィンブリアタは分枝、トゲ、太さが異なり、混同されがちとあります。Euphorbia fimbriataで検索すると、海外のサイトでもマミラリスとは別種としてフィンブリアタが紹介されています。そこで、詳しく調べて見ることにしました。
調べた結果すぐにわかったこととして、Euphorbia fimbriataは現在学術的に認められている学名ではないということです。認められているのはEuphorbia mammillarisです。
しかし、別種とされていたという情報はどこから来たのでしょう。海外のサイトでは、Euphorbia fimbriata Scop.と書かれています。わざわざ学名を命名した発表者のScop.を表記したのには意味があります。実はEuphorbia fimbriata B.Heyne ex Rothという学名があるためです。同じ学名は存在し得ないので、どちらかが間違いです。さらに詳しく調べて見ました。
まず、Euphorbia fimbriata Scop.からです。どうもこちらは、Euphorbia nyikae var. neovolkensiiの異名とされることもあるようです。ニカエはタンザニアあたりに自生する柱状のユーフォルビアです。鱗宝・白樺キリンとは似ても似つかない姿の、高さ20mに達する大型種です。ではなぜニカエの異名が鱗宝・白樺キリンの学名とされたのでしょうか。ここら辺の詳しい事情はわかりません。しかし、どうやら学術的にも混乱しているようです。Euphorbia fimbriata Scop.で調べると、フランスの国立自然史博物館やイギリスのキュー王立植物園の所蔵標本では、標本の外見はニカエではなくマミラリスでした。さらに調べると、学術的にもマミラリスをフィンブリアタと呼ぶこともあったようです。フィンブリアタがニカエの異名という方が、どうやら何らかの誤記載なのではないでしょうか。まあ、いずれにせよ、Euphorbia fimbriataは現在では使われていない学名であるということです。
ちなみに、Euphorbia fimbriata B.Heyne ex Rothは、Euphorbia laciniataの異名です。ラキニアタはインド原産の草本で、多肉植物ではありません。ですから、Euphorbia fimbriataなる学名は存在しないのです。
さて、鱗宝・白樺キリンの学名がEuphorbia fimbriataではなく、Euphorbia mammillarisであることがわかりましたので、学名についてさらに調べて見ました。白樺キリンの原種である鱗宝の学名は、1753年に命名されたEuphorbia mammillaris L.です。マミラリスにはその他にも沢山の異名があります。
異名は1788年に命名されたEuphorbia fimbriata Scop.、1803年に命名されたEuphorbia enneagona Haw.、1814年に命名されたEuphorbia erosa Willd.、1902年に命名されたEuphorbia mammillaris var. submammillaris A.Berger、1932年に命名されたEuphorbia platymammillaris Croizat、1933年に命名されたEuphorbia latimammillaris Croizat、1940年に命名されたEuphorbia scopoliana Steud.が知られています。これだけ異名がある理由はわかりませんが、想像は出来ます。生息地の写真を見ると、マミラリスはかなり変異の幅が大きく、別種のように見える個体があります。ですから、この大きく個体差が複数の命名につながったのではないでしょうか。
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白樺キリン(ミルクトロン)
Euphorbia mammillaris cv. Variegata
白樺キリンは鱗宝の突然変異で生まれた斑入りの白化個体といわれています。鱗宝の学名はEuphorbia mammillarisです。ですから、白樺キリンはEuphorbia mammillaris cv. Variegataとなります。cv.はcultivarの略ですが、学名では栽培品種を意味します。cv.は交配種の意味と書かれていることもありますが、これは間違いです。栽培品種は栽培していると現れる突然変異です。具体的には、斑入りになったり、花の色がかわったり、トゲが無くなったりします。ようするに、突然変異個体を固定した園芸品種ということです。また、野生状態で発見された突然変異はcv.ではないので注意が必要です。Variegataは斑入り品種のことです。見た目に反してアルビノではなく、内部には葉緑体があります。
白樺キリンを調べていたら、白樺キリンや鱗宝はEuphorbia mammillarisではなく、Euphorbia fimbriataであるというネットの記事を発見しました。マミラリスとフィンブリアタは分枝、トゲ、太さが異なり、混同されがちとあります。Euphorbia fimbriataで検索すると、海外のサイトでもマミラリスとは別種としてフィンブリアタが紹介されています。そこで、詳しく調べて見ることにしました。
調べた結果すぐにわかったこととして、Euphorbia fimbriataは現在学術的に認められている学名ではないということです。認められているのはEuphorbia mammillarisです。
しかし、別種とされていたという情報はどこから来たのでしょう。海外のサイトでは、Euphorbia fimbriata Scop.と書かれています。わざわざ学名を命名した発表者のScop.を表記したのには意味があります。実はEuphorbia fimbriata B.Heyne ex Rothという学名があるためです。同じ学名は存在し得ないので、どちらかが間違いです。さらに詳しく調べて見ました。
まず、Euphorbia fimbriata Scop.からです。どうもこちらは、Euphorbia nyikae var. neovolkensiiの異名とされることもあるようです。ニカエはタンザニアあたりに自生する柱状のユーフォルビアです。鱗宝・白樺キリンとは似ても似つかない姿の、高さ20mに達する大型種です。ではなぜニカエの異名が鱗宝・白樺キリンの学名とされたのでしょうか。ここら辺の詳しい事情はわかりません。しかし、どうやら学術的にも混乱しているようです。Euphorbia fimbriata Scop.で調べると、フランスの国立自然史博物館やイギリスのキュー王立植物園の所蔵標本では、標本の外見はニカエではなくマミラリスでした。さらに調べると、学術的にもマミラリスをフィンブリアタと呼ぶこともあったようです。フィンブリアタがニカエの異名という方が、どうやら何らかの誤記載なのではないでしょうか。まあ、いずれにせよ、Euphorbia fimbriataは現在では使われていない学名であるということです。
ちなみに、Euphorbia fimbriata B.Heyne ex Rothは、Euphorbia laciniataの異名です。ラキニアタはインド原産の草本で、多肉植物ではありません。ですから、Euphorbia fimbriataなる学名は存在しないのです。
さて、鱗宝・白樺キリンの学名がEuphorbia fimbriataではなく、Euphorbia mammillarisであることがわかりましたので、学名についてさらに調べて見ました。白樺キリンの原種である鱗宝の学名は、1753年に命名されたEuphorbia mammillaris L.です。マミラリスにはその他にも沢山の異名があります。
異名は1788年に命名されたEuphorbia fimbriata Scop.、1803年に命名されたEuphorbia enneagona Haw.、1814年に命名されたEuphorbia erosa Willd.、1902年に命名されたEuphorbia mammillaris var. submammillaris A.Berger、1932年に命名されたEuphorbia platymammillaris Croizat、1933年に命名されたEuphorbia latimammillaris Croizat、1940年に命名されたEuphorbia scopoliana Steud.が知られています。これだけ異名がある理由はわかりませんが、想像は出来ます。生息地の写真を見ると、マミラリスはかなり変異の幅が大きく、別種のように見える個体があります。ですから、この大きく個体差が複数の命名につながったのではないでしょうか。
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